説明

接着剤配合物、その製造方法、及びその使用

本発明は、溶解したエポキシドを含む、強化ポリマー生成物の製造用に提供される、強化層の処理のための接着剤配合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解したエポキシドを含む、強化ポリマー生成物の製造用に提供される、強化層の処理のための接着剤配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化ゴム製品の製造においては、布帛強化層とゴムとの間の接着を向上させるために結合剤を用いると好ましいことが分かっている。かかる結合剤の使用は、特に、タイヤコード及び強化繊維を有する他の高負荷複合材料の分野において重要である。特にこの用途分野における最先端の技術から、合成繊維をゴム生成物に結合させるためにレゾルシノール−ホルムアルデヒド−ラテックス系(RFL)を用いることが公知である。
【0003】
これに関し、プロセスは、1工程か或いは2工程法で行うことができる。実際には、特に非活性化ポリエステル繊維の場合においては、実質的に2工程法のみが満足できる結果をもたらすことが示されている。2工程法においては、まず、第1工程において繊維の活性化を行って、繊維をエポキシド及び/又はイソシアネートで被覆する。一般に、これは、水性分散液中にイソシアネート及び/又はエポキシドが特定の固体含量で含まれる水性分散液を用いて行う。この第1工程に続いて、次に、第2工程においてレゾルシノール−ホルムアルデヒド−ラテックス系による被覆を行う。この2工程法により、第1工程において繊維の完全な活性化が達成されて、エポキシド及び/又はイソシアネートによる被覆によって繊維の表面上に活性官能基が形成され、第2工程によってラテックスによる処理を行うことができるようになる。RFLによる処理は、同様に水性分散液を用いて行う。
【0004】
しかしながら、2工程法は、プロセス工学の見地から複雑であり、また、二つの別々の分散液の準備及びその取り扱いが困難である。
【0005】
したがって、1工程法の形態の処理を行う試みが十分に行われている。1工程系は、例えばUS−2002/0122938及びUS−3,419,450に記載されている。しかしながら、1工程系、即ちRFL並びにエポキシド及びイソシアネートを有する水性分散液を適用することは、実施上、既に活性化された繊維の処理に関しても行うことができない。活性化繊維は、製造直後に被覆、例えばエポキシド被覆が与えられた繊維である。1工程法の場合においては、これらの予め活性化された繊維を再び分散液によって処理する。そこで、US−2002/0122938においては、RFL及びイソシアネートに加えて特別なエポキシドも含む1工程系を用いることが提案されている。しかしながら、US−2002/0122938においては、エポキシドは、また、分散液中の固体の形態で含まれる。この1工程系における欠点は、非活性化繊維には施すことができず、また、特に湿潤性及び接着性に関して、既に活性化されている繊維を用いた結果が満足できないものであるということである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここから出発して、本発明の目的は、1工程系の形態で施すことができ、非活性化繊維、特にPET繊維に対して良好な湿潤性及び良好な接着性並びに高い反応速度を与えることを意図する接着剤配合物を提案することである。本発明の更なる目的は、かかる配合物を製造する対応する方法を提案し、用途を示唆することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
接着剤配合物に関する目的は請求項1の特徴によって達成され、方法に関する目的は請求項13の特徴によって達成される。従属項は有利な展開を明らかにする。
【0008】
したがって、本発明によれば、エポキシドが全配合物1000gに対して0.001〜5モル%の濃度で溶解形態で含まれており、一方イソシアネート及びRFLが固体として存在し続けている、強化ポリマー生成物の製造用の、強化層を処理するための1工程系のための接着剤分散液が提案される。本出願人は、エポキシドが溶解形態で存在するかかる配合物を用い、1工程系によって操作し、かつ同時に、従来の2工程系の有利性、即ち被覆に関する選択性を達成することができることを示すことができた。しかしながら、本発明による接着剤配合物は、選択的な湿潤性をもたらす、即ちまず繊維の活性化を行い、次に分散液中に含まれる固体で被覆することだけでなく、本発明の接着剤配合物を用いれば、更に、ゴムに対する未処理のポリエステルコードの優れた接着性が達成される。更に、本発明の配合物を用いれば、浸透深さの減少が起こり、それにより接着剤の濃度を低下させることができたことが示された。この結果、被覆コードは、より剛性が低くなり、したがってより良好な安定性を有する。
【0009】
したがって、本発明による接着剤配合物の場合においては、エポキシドの濃度が、全配合物1000gあたり0.002〜0.2モルであると好ましい。分散液中に溶解する好適なエポキシドは、特に、50〜2000の分子量を有するものである。50〜1000の分子量、特に好ましくは50〜290の分子量を有するエポキシド、特に水溶性ポリグリシジルエーテル、エポキシ−ノボラック樹脂、多官能性アルキレンエポキシド、ジグリシドエーテル、及びビスフェノール−Aをベースとする樹脂が特に好ましい。しかしながら、本発明は、また、EP−1221456−A1において言及されている全てのエポキシドも包含する。
【0010】
本発明による接着剤配合物は、1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%の固体含量を有する。分散液中に存在する粒子、即ちイソシアネートの粒径は、<5μmである。
【0011】
したがって、分散液の固体の割合は、0.1〜20重量%のイソシアネート、及び0.1〜40重量%のRFLである。好ましくは、配合物は、固体の割合として、0.1〜10重量%のイソシアネート、及び10〜25重量%のRFLを含む。
【0012】
更に、イソシアネートとして、4,4−ジイソシアネート−ジフェニルメタン(MDI)、及び/又はトルエンジイソシアネート(TDI)、及び/又はナフチルイソシアネート(NDI)を用いた接着剤配合物が有利であることが分かった。しかしながら、本発明は、勿論、このタイプの接着剤配合物のために用いることのできる全ての他の公知のイソシアネートも包含する。この点に関しては、一例としてUS−2002/0122938−A1及びそこに記載されているジイソシアネートを参照されたい。
【0013】
本発明におけるイソシアネート、特にラクタムでブロック化されたイソシアネートにおいて好ましいブロック化剤が存在することが分かった。これらの例は、ε−カプロラクタム、d−バレロラクタムである。しかしながら、本発明は、勿論、他の公知のブロック化剤も包含する。これらは、オキシム、例えばメチルエチルケトオキシム(ブタノンオキシム)、メチルアミルケトオキシム、及びシクロヘキサノンオキシム;モノフェノール、例えばフェノール、レゾルシノール、クレゾール、トリメチルフェノール、tert−ブチルフェノール;第1級、第2級、及び第3級アルコール、グリコールエーテル、例えばアセト酢酸エステル、アセチルアセトン、マロン酸誘導体のような軽質エノール形成化合物;第2級芳香族アミン;イミド、メルカプタン、トリアゾール;である。
【0014】
また、本発明による接着剤配合物における反応速度の更なる上昇は、触媒を金属化合物の形態で加えることで達成することができる。これに関し、触媒としては、金属ナトリウム、カリウム、セシウム、ストロンチウム、銀、カドミウム、バリウム、セリウム、ウラン、チタン、クロム、スズ、アンチモン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、鉛、カルシウム、及び/又はジルコニウムの金属化合物が好適である。金属化合物の場合、亜鉛の化合物が好ましい。したがって、好適な化合物は、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、アセチルアセトン酸亜鉛、及び/又は塩化亜鉛である。酢酸亜鉛が非常に特に好ましい。触媒は、分散液中に溶解した形態で存在し、濃度は配合物1000gあたり0.0001〜0.1モルである。
【0015】
本発明にしたがって用いられるレゾルシノール−ホルムアルデヒド−ラテックス系(RFL)は、最先端の技術からそれ自体公知である。
【0016】
本発明は、更に、強化ポリマー生成物を製造するための強化層の処理方法に関する(請求項13)。本発明方法の場合においては、上記に記載の接着剤配合物を用いる。これに関し、本方法の場合においては、接着剤配合物は、また、個々の成分を混合することによって、所期の適用の直前に調製することもできる。これに関し、どのような形態の個々の成分が存在するかは重要ではなく、即ち、2種以上の成分を前もって混合することもできる。
【0017】
しかしながら、接着剤配合物を1工程系の形態で施す、即ち、全ての成分が処理前に既に水性分散液及び/又は溶液の形態で存在しなければならないことは、本発明において重要である。水性分散液を適用のどの程度十分な時間の前に単一の配合物として調製するか、或いは個々の成分を適用の少し前に混合するか否かは、成功を達成する上で重要ではない。
【0018】
更に、本出願人は、本発明による接着剤配合物が、特に未処理のポリエステル繊維の処理に好適であることを示すことができた。これにより優れた反応速度が達成され、これは、類似の系から従来知られているものを遙かに凌ぎ、同時に良好な湿潤速度が達成された。
【0019】
以下において、本発明を一態様に関してより詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
表1に示す組成を有する本発明による浸漬液を調製した。
【0021】
【表1】

【0022】
最先端技術の2工程浸漬液、及び表1に示す組成を有する本発明による浸漬液を用いて、非活性化PETコードを1回処理した。2工程浸漬の場合には、最先端技術の浸漬液を用いた。第1浸漬においては、ブロック化イソシアネートとして、スイスの会社であるEMS−Primid AGのGrilbond IL−6 50%F、及びエポキシドとしてGrilbond G1701を用いた。第2工程のための分散液は、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂及びブタジエン−スチレン−ビニルピリジンラテックスからの縮合生成物である。
【0023】
表2において、両方の浸漬液に関する結果を比較する。
【0024】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)全配合物1000gに対して0.001〜5モルの、溶解形態のエポキシド;
(b)固体として0.1〜20%の完全か又は部分的にブロック化されているイソシアネート;及び
(c)固体として0.1〜40%のレゾルシノール−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL);
を含む、強化ポリマー生成物の製造用の、強化層の処理のための、1〜50%の固体含量を有する水性分散液の形態の接着剤配合物。
【請求項2】
固体含量が5〜30%である、請求項1に記載の接着剤配合物。
【請求項3】
全配合物1000gに対して0.002〜0.20モルの、溶解形態のエポキシドを含む、請求項1又は2に記載の接着剤配合物。
【請求項4】
エポキシドが、50〜2000、好ましくは50〜1000、特に好ましくは50〜290の範囲の分子量を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤配合物。
【請求項5】
エポキシドが、ポリグリシジルエーテル、エポキシ−ノボラック樹脂、多官能性アルキレンエポキシド、ジグリシドエーテル、及びビスフェノール−Aをベースとする樹脂の群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤配合物。
【請求項6】
配合物が、触媒として、全配合物1000gに対して0.0001〜0.1モルの、溶解形態の金属化合物を含み、触媒が、金属亜鉛、ストロンチウム、カドミウム、ナトリウム、セシウム、カリウム、銀、バリウム、チタン、クロム、スズ、アンチモン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、セリウム、ウラン、銅、カルシウム、亜鉛、鉛、及びジルコニウムから選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の接着剤配合物。
【請求項7】
触媒が、酢酸亜鉛、アセチルアセトン酸亜鉛、酸化亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛、及び/又は硫酸亜鉛から選択される亜鉛化合物である、請求項6に記載の接着剤配合物。
【請求項8】
イソシアネートがラクタムによってブロック化されている、請求項1〜7のいずれかに記載の接着剤配合物。
【請求項9】
イソシアネートが、4,4−ジイソシアネート−ジフェニルメタン(MDI)、及び/又はトルエンジイソシアネート(TDI)、及び/又はナフチルジイソシアネート(NDI)から選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の接着剤配合物。
【請求項10】
更に添加剤及び/又は分散剤を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の接着剤配合物。
【請求項11】
固体として0.1〜10%のブロック化又は部分的にブロック化されているイソシアネート、並びに固体として10〜25%のRFLを含む、請求項1〜10のいずれかに記載の接着剤配合物。
【請求項12】
イソシアネート固体の粒径が<5μmである、請求項1〜11のいずれかに記載の接着剤配合物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の接着剤配合物を用いて処理を行うことを特徴とする、強化ポリマー生成物を製造するための、強化層、特にタイヤコードを処理する方法。
【請求項14】
接着剤配合物を、個々の成分を混合することによって、処理の直前に調製する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
接着剤配合物を、成分(a)及び(b)を有する混合物として既に存在している配合物中に成分(c)(RFL)を混合することによって、適用の直前に調製する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
非活性化タイヤコードを処理する、請求項13〜15のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2009−513807(P2009−513807A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538288(P2008−538288)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010333
【国際公開番号】WO2007/051562
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(507233291)エムズ−ヒェミー・アクチェンゲゼルシャフト (6)
【Fターム(参考)】