説明

接着材リール及びこれを用いた回路接続体の製造方法

【課題】異方導電テープを使用する際の静電気の影響を十分に低減できる接着材リール及びこれを用いた回路接続体の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の接着材リール10は、テープ状の基材6及びその一方面上に設けられた接着剤層8を有する異方導電テープ5と、回転軸20aを挿入するための軸穴1aが内面F1によって形成されると共に、異方導電テープ5が外面F2上に巻かれた筒状の巻芯1とを備え、この巻芯1は、その外面F2と内面F1との間に導電路を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電テープが巻かれた接着材リール及びこれを用いた回路接続体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の電極を有する被接続部材同士を電気的に接続するための接続材料として、異方導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)が使用されている。異方導電フィルムはプリント配線基板、LCD用ガラス基板、フレキシブルプリント基板等の基板に、IC、LSI等の半導体素子やパッケージなどの被接続部材を接続する際、相対する電極同士の導通状態を保ち、隣接する電極同士の絶縁を保つように電気的接続と機械的固着を行う接続材料である。
【0003】
異方導電フィルムは、熱硬化性樹脂を含有する接着剤成分と、必要により配合される導電粒子とを含み、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)などの基材上にフィルム状に形成される。基材上に形成された異方導電フィルムの原反を用途に適した幅となるようにテープ状に切断し、これを芯材に巻き付けて接着材リールが製造される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来、異方導電フィルムの接着剤成分としては、高接着性であり且つ高信頼性を示すエポキシ樹脂を用いた熱硬化性樹脂が多く用いられている(例えば、特許文献2参照)。また、反応活性種であるラジカルの反応性が高く、短時間での硬化が可能である点から、ラジカル硬化型接着剤が注目されている(例えば、特許文献3、4参照)。ラジカル硬化型接着剤は、アクリレート誘導体やメタアクリレート誘導体とラジカル重合開始剤である過酸化物とを併用したものである。
【特許文献1】特開2003−34468号公報
【特許文献2】特開平01−113480号公報
【特許文献3】特開2002−203427号公報
【特許文献4】国際公開第98/044067号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、異方導電フィルムは、上記の通り、テープ状に裁断され、リールに巻かれた状態で使用される。この異方導電テープは、PETなどの基材上に接着剤層を幅10〜50cm程度に形成した後、一旦巻き取って原反を作製し、これを巻き出しながら連続的に幅0.5〜5mm程度の細幅に裁断して、再度巻芯に巻き取ることによって作製される。
【0006】
このような異方導電テープを使用する際、リールからの巻出工程、基材の剥離工程等において静電気が発生する場合がある。そうすると、静電気の影響により、異方導電テープの貼付工程において、回路基板やパネルに対して異方導電テープが曲がって貼り付いたり、ツールやクッション材に吸い寄せられる吸着異常が発生したりする。このようなトラブルは、液晶パネルモジュールなどを製造する工程における作業効率の低下の一因となる。
【0007】
特に、近年、液晶テレビの生産は40インチ級以上の大型のものが主流になり、液晶パネルモジュールも一辺が数十cmから数百cmの大きなガラスが使用される。これに伴い、異方導電テープの使用量が増大する傾向にあり、異方導電テープに関する作業効率の低下は、液晶テレビ等の生産効率に影響し得る。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、異方導電テープを使用する際の静電気の影響を十分に低減できる接着材リール及びこれを用いた回路接続体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、異方導電テープが巻かれたリールを圧着装置等の回転軸に装着し、使用開始からしばらくの間は静電気の問題は発生せず、時間が経過するに従って静電気の問題が生じるようになることに着目した。一般に、異方導電テープが巻かれるリールは、巻芯と、巻き崩れを防止するための側板とを備える。リールを構成する巻芯及び側板は、通常、帯電防止材が練り込まれたプラスチックからなる。このようなリールでは異方導電テープの巻出工程や基材の剥離工程において発生した静電気は逃げ場がないため、上記のように時間の経過とともに静電気が異方導電テープに蓄積して問題が発生するとの知見を得た。かかる知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の接着材リールは、テープ状の基材及びその一方面上に設けられた接着剤層を有する異方導電テープと、回転軸を挿入するための軸穴が内面によって形成されると共に、異方導電テープが外面上に巻かれた筒状の巻芯とを備え、この巻芯が外面と内面との間に導電路を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の接着材リールによれば、圧着装置等の巻き出し用の回転軸(例えば、ステンレス製)に当該接着材リールを装着すると巻芯の内面と回転軸とが接触するため、異方導電テープに発生した静電気を、巻芯の導電路及び回転軸を通じて外部へと放電できる。したがって、異方導電テープに静電気が蓄積することを十分に防止でき、貼付工程等において静電気に起因したトラブルを十分に回避できる。その結果、作業効率が十分に向上する。
【0012】
本発明に係る接着材リールの巻芯は、全体が導電性材料で形成されていてもよい。
【0013】
また、本発明は、上記接着材リールを用いた回路接続体の製造方法を提供する。すなわち、本発明に係る方法は、対向配置された一対の回路部材の間に回路接続材料を介在させ、全体を加熱及び加圧して、回路接続材料の硬化物からなり、一対の回路部材の間に介在しそれぞれの回路部材が有する回路電極同士が電気的に接続されるように回路部材同士を接着する接続部を形成する工程を備え、上記回路接続材料は、回転軸に装着された状態の本発明に係る上記接着材リールから巻き出され、所定の長さに切断された異方導電テープの接着剤層であり、異方導電テープを巻き出す際に接着材リール内に生じた静電気を、巻芯及び回転軸を通じて外部に逃がすことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る回路接続体の製造方法によれば、巻芯の導電路及び回転軸を通じて静電気を外部に逃がすことで、異方導電テープの貼付工程等において静電気に起因したトラブルを十分に回避でき、作業効率の向上が図られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、異方導電テープを使用する際の静電気の影響を十分に低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る接着材リールを示す斜視図である。図1に示す接着材リール10は、筒状の巻芯1及びその両端にそれぞれ設けられた円形の側板2を備える。巻芯1には異方導電テープ5が巻かれ、巻重体を構成している。接着材リール10の巻芯1は、圧着装置20の回転軸20aが挿入される軸穴1aを有し、軸穴1aには回転軸20aに設けられた凸部20bと嵌合する切欠き部1bが設けられている(図2を参照)。
【0018】
巻芯1は全体が導電性材料で形成されており、異方導電テープ5に生じた静電気を巻芯1を通じて外部へと逃がすことができるようになっている。より具体的には、図2に示すように、接着材リール10が圧着装置20の回転軸20aに装着されると、巻芯1の内面F1が回転軸20aと接した状態となり、巻芯1の外面F2において接する異方導電テープ5に発生した静電気が回転軸20aを介して圧着装置20側へと流れる。
【0019】
そして、図3に示すように、圧着装置20をアースすることで、異方導電テープ5からの静電気は圧着装置20にも蓄積することなく同図に示す矢印のように流れる。このように静電気が放電されることにより、異方導電テープ5における静電気の蓄積を抑制できる。その結果、静電気に起因した作業効率の低下を十分に回避できる。なお、圧着装置20の回転軸20aは、導電性材料(例えば、ステンレス鋼)で形成されている。
【0020】
巻芯1を形成する材料としては、導電性を有するものであれば特に制限はないが、成型が容易であることから、導電性高分子やカーボンなどの導電性材料を練り込んだプラスチック材料を使用することが好ましい。また、側板2を形成する材料としては、特に制限はないが、種々のプラスチック材料等を使用でき、巻芯1と同様、導電性を有するものを使用してもよい。
【0021】
次に、巻芯1に巻かれた異方導電テープ5について説明する。図4は、異方導電テープ5の長手方向に垂直な断面を示す図である。この異方導電テープ5は、基材6とその一方面上に設けられた接着剤層8とを有する。
【0022】
基材6はテープ状の形状を有する。基材6は、長さが1〜200m程度であり、厚さが4〜200μm程度であり、幅が0.5〜30mm程度である。基材6の長さ、厚さ及び幅は上記の範囲に限定されるものではない。なお、基材6の幅は、その上に付設される接着剤層8の幅よりも広いことが好ましい。
【0023】
基材6は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、合成ゴム系、液晶ポリマー等からなる各種テープを使用することが可能である。もっとも、基材6を構成する材質はこれらに限定されるものではない。また、基材6として、接着剤層8との当接面等に離型処理が施されたものを使用してもよい。
【0024】
接着剤層8は、接着剤組成物からなり、この接着剤組成物は接着剤成分8aと導電粒子8bとを含有する。接着剤層8の厚さは、使用する接着剤成分及び被接着物の種類等に合わせて適宜選択すればよいが、5〜100μmであることが好ましい。また、接着剤層8の幅は、使用用途に合わせて調整すればよいが、一般には0.5〜5mm程度である。
【0025】
接着剤層8の接着剤成分8aとしては、熱や光により硬化性を示す材料が広く適用できる。接続後の耐熱性や耐湿性に優れていることから、架橋性材料の使用が好ましい。なかでも熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を主成分として含有するエポキシ系接着剤は、短時間硬化が可能で接続作業性がよく、分子構造上接着性に優れている等の特徴から好ましい。
【0026】
エポキシ系接着剤は、例えば高分子量エポキシ、固形エポキシ又は液状エポキシ、あるいは、これらをウレタン、ポリエステル、アクリルゴム、ニトリルゴム(NBR)、合成線状ポリアミド等で変性したエポキシを主成分とするものを使用することができる。エポキシ系接着剤は、主成分をなす上記エポキシに硬化剤、触媒、カップリング剤、充填剤等を添加してなるものが一般的である。
【0027】
なお、ICチップをガラス基板やフレキシブルプリント基板(FPC)上に実装する場合、ICチップと基板の線膨張係数の差から生じる基板の反りを抑制する観点から、内部応力の緩和作用を発揮する成分を接着剤成分に配合することが好ましい。具体的には、接着材成分に、アクリルゴムやエラストマ成分を配合することが好ましい。
【0028】
導電粒子8bは、接着剤成分8a中に分散している。導電粒子8bとしては、例えばAu、Ag、Pt、Ni、Cu、W、Sb、Sn、はんだ等の金属やカーボンの粒子が挙げられる。あるいは、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核を上記の金属やカーボンで被覆した被覆粒子を使用してもよい。導電粒子8bの平均粒径は分散性、導電性の観点から1〜18μmであることが好ましい。なお、導電粒子を絶縁層で被覆してなる絶縁被覆粒子を使用してもよく、隣接する電極同士の絶縁性を向上させる観点から導電粒子と絶縁性粒子とを併用してもよい。
【0029】
導電粒子8bの配合割合は、接着剤層8に含まれる接着剤成分100体積部に対して、0.1〜30体積部であることが好ましく、0.1〜10体積部であることがより好ましい。この配合割合が0.1体積部未満であると対向する電極間の接続抵抗が高くなる傾向にあり、30体積部を超えると隣接する電極間の短絡が生じやすくなる傾向がある。
【0030】
(回路接続体)
次に、異方導電テープの接着剤層8を回路接続材料として使用して製造された回路接続体について説明する。図5は、回路電極同士が接続された回路接続体を示す概略断面図である。図5に示す回路接続体100は、相互に対向する第1の回路部材30及び第2の回路部材40を備えており、第1の回路部材30と第2の回路部材40との間には、これらを接続する接続部50aが設けられている。
【0031】
第1の回路部材30は、回路基板31と、回路基板31の主面31a上に形成された回路電極32とを備えている。第2の回路部材40は、回路基板41と、回路基板41の主面41a上に形成された回路電極42とを備えている。
【0032】
回路部材の具体例としては、半導体チップ(ICチップ)、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品などが挙げられる。これらの回路部材は、回路電極を備えており、多数の回路電極を備えているものが一般的である。上記回路部材が接続される、もう一方の回路部材の具体例としては、金属配線を有するフレキシブルテープ、フレキシブルプリント配線板、インジウム錫酸化物(ITO)が蒸着されたガラス基板などの配線基板が挙げられる。外部に静電気を放電可能な接着材リール10から巻き出した異方導電テープ5を使用することで、回路部材同士を効率的且つ高い接続信頼性をもって接続することができる。したがって、本実施形態に係る異方導電テープ5は、微細な接続端子(回路電極)を多数備えるチップ部品の配線基板上へのCOG実装もしくはCOF実装に好適である。
【0033】
各回路電極32,42の表面は、金、銀、錫、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金及びインジウム錫酸化物(ITO)から選ばれる1種で構成されてもよく、2種以上で構成されていてもよい。また、回路電極32,42の表面の材質は、すべての回路電極において同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0034】
接続部50aは接着剤層8に含まれる接着剤成分8aの硬化物8Aと、これに分散している導電粒子8bとを備えている。そして、回路接続体100においては、対向する回路電極32と回路電極42とが、導電粒子8bを介して電気的に接続されている。すなわち、導電粒子8bが、回路電極32,42の双方に直接接触している。
【0035】
このため、回路電極32,42間の接続抵抗が十分に低減され、回路電極32,42間の良好な電気的接続が可能となる。他方、硬化物8Aは電気絶縁性を有するものであり、隣接する回路電極同士は絶縁性が確保される。従って、回路電極32,42間の電流の流れを円滑にすることができ、回路の持つ機能を十分に発揮することができる。
【0036】
(回路接続体の製造方法)
次に、回路接続体100の製造方法について説明する。図6は、本発明に係る回路接続体の製造方法の一実施形態を概略断面図により示す工程図である。本実施形態では、異方導電テープ5の接着剤層8を熱硬化させ、最終的に回路接続体100を製造する。
【0037】
まず、圧着装置20の回転軸20aに接着材リール10を装着する(図2参照)。この接着材リール10から異方導電テープ5を、接着剤層8が下方に向くようにして巻き出し、基材6を剥離すると共に、所定の長さに切断する。そして、所定の長さに切断された接着剤層8を第1の回路部材30の回路電極32が形成されている面上に載せる(図6(a))。
【0038】
次に、図6(b)の矢印A及びB方向に加圧し、接着剤層8を第1の回路部材30に仮接続する(図6(c))。このときの圧力は回路部材に損傷を与えない範囲であれば特に制限されないが、一般的には0.1〜30.0MPaとすることが好ましい。また、加熱しながら加圧してもよく、加熱温度は接着剤層8が実質的に硬化しない温度とする。加熱温度は一般的には50〜190℃にするのが好ましい。これらの加熱及び加圧は0.5〜120秒間の範囲で行うことが好ましい。
【0039】
次いで、図6(d)に示すように、第2の回路部材40を、第2の回路電極42を第1の回路部材30の側に向けるようにして接着剤層8上に載せる。そして、接着剤層8を加熱しながら、図6(d)の矢印A及びB方向に全体を加圧する。このときの加熱温度は、接着剤層8の接着剤成分8aが硬化可能な温度とする。加熱温度は、60〜180℃が好ましく、70〜170℃がより好ましく、80〜160℃が更に好ましい。加熱温度が60℃未満であると硬化速度が遅くなる傾向があり、180℃を超えると望まない副反応が進行し易い傾向がある。加熱時間は、0.1〜180秒が好ましく、0.5〜180秒がより好ましく、1〜180秒が更に好ましい。
【0040】
接着剤成分8aの硬化により接続部50aが形成されて、図5に示すような回路接続体100が得られる。接続の条件は、使用する用途、接着剤組成物、回路部材によって適宜選択される。なお、接着剤層8の接着剤成分として、光によって硬化するものを使用した場合には、接着剤層8に対して活性光線やエネルギー線を適宜照射すればよい。活性光線としては、紫外線、可視光、赤外線等が挙げられる。エネルギー線としては、電子線、エックス線、γ線、マイクロ波等が挙げられる。
【0041】
本実施形態に係る接着材リール10を圧着装置20の回転軸20aに装着して用いることで、異方導電テープ5の巻出工程、基材6の剥離時に発生した静電気を、巻芯1及び回転軸20aを通じて圧着装置20側へと逃がすことができる(図3参照)。そのため、例えば、液晶パネルモジュールなどの製造過程において接着剤層8の貼付工程、仮圧着工程などにおける静電気に起因した吸着異常などの不具合を改善することができる。したがって、液晶パネルモジュール等の生産効率を向上することができる。また、異方導電テープ5は、一旦パネル上に付設されると接着剤層8が転写してしまい、再度、貼り直すことはできないため、上記不具合が改善されることで、異方導電テープ5のロスを低減できる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0043】
例えば、上記実施形態では、単層構造の接着剤層8を有する異方導電テープ5が巻芯1に巻かれた接着材リール10を例示したが、多層構造の接着剤層を有する異方導電テープが巻芯1に巻かれたものであってもよい。多層構造の接着剤層を有する異方導電テープは、接着剤成分及び導電粒子の種類あるいはこれらの含有量が異なる層を基材6上に複数積層することによって製造することができる。
【0044】
図7(a)は、基材6と、その一方面上に形成された二層構造の接着剤層18とを備える異方導電テープを示す断面図である。図7(a)に示す異方導電テープ15Aの接着剤層18は、導電粒子を含有しない導電粒子非含有層18a及び導電粒子を含有する導電粒子含有層18bによって構成されている。なお、導電粒子非含有層18a及び導電粒子含有層18bの接着剤成分としては、上述の接着剤層8の接着剤成分と同様のものを使用できる。
【0045】
二層構造の接着剤層18を回路接続材料として使用すると、回路部材同士の接合時に、接着剤成分の流動に起因する回路電極上における導電粒子の個数の減少を十分に抑制することができる。このため、例えば、ICチップをCOG実装もしくはCOF実装によって基板上に接続する場合、ICチップの金属バンプ上の導電粒子の個数を十分に確保することができる。この場合、ICチップの金属バンプを備える面と導電粒子非含有層18aとが、他方、ICチップを実装すべき基板と導電粒子含有層18bとが、それぞれ当接するように接着剤層18を配置することが好ましい。
【0046】
図7(b)に示す異方導電テープ15Bは、導電粒子含有層18bの表面上に更にカバーレイ6aが付設されていることの他は、上記の異方導電テープ15Aと同様の構成を有している。カバーレイ6aを付設することで接着剤層18にほこりや水分が付着することを防止できる。また、カバーレイ6a及び/又は基材6の材料として、導電性材料を用いると、異方導電テープ15Bに生じた静電気がこれらを介して巻芯1へと流れやすくなるという利点がある。ただし、圧着装置の構成によっては、貼付工程等において基材6は切断されることがあり、導電性を有する断片が回路電極等に付着すると短絡が生じる可能性がある。一方、カバーレイ6aは、一般に切断されずに接着剤層から剥離されるため、その材質として導電性を有するものを採用することが好ましい。
【0047】
図7(c)に示す異方導電テープ15Cは、接着剤層8の表面上に導電粒子を含有しない薄膜層8cが更に形成されていることの他は、上記の異方導電テープ5と同様の構成を有している。薄膜層8cの接着剤成分としては、上述の接着剤層8の接着剤成分と同様のものを使用できる。薄膜層8cの厚さは、1〜3μmであることが好ましい。このような薄膜層8cを設けることで、接着剤層8表面のタック性を調整できると共に、隣接する電極間の絶縁性を向上させることができる。なお、このような薄膜層8cを異方導電テープ15Bの接着剤層18の表面に付設してもよい。
【0048】
また、巻芯1の外面F2と内面F1との間に導電路が形成されていれば、巻芯1は、必ずしも全体が導電性材料で形成されている必要はなく、例えば、部分的に導電性材料で形成されたものであってもよく、カーボンテープ、導電性テープ又はエナメル線等の導線によって導電路が形成されたものであってもよい。また、巻芯として表面全体にインジウム錫酸化物(ITO)又はCu等の金属を蒸着したものを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る接着材リールの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の接着材リールが圧着装置の回転軸に装着された状態を示す断面図である。
【図3】接着材リールに生じた静電気が流れる経路を示す模式図である。
【図4】本発明に係る接着材リールの異方導電テープの一態様を示す断面図である。
【図5】回路電極同士が接続された回路接続体を示す概略断面図である。
【図6】本発明に係る回路接続体の製造方法の一実施形態を概略断面図により示す工程図である。
【図7】(a)〜(c)は本発明に係る接着材リールの異方導電テープの他の態様をそれぞれ示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1…巻芯、1a…軸穴、2…側板、5,15A,15B,15C…異方導電テープ、6…基材、8,18…接着剤層(回路接続材料)、8A…接着剤層の硬化物、10…接着材リール、20a…圧着装置の回転軸、30,40…回路部材、31,41…回路基板、32,42…回路電極、50a…接続部、100…回路接続体、F1…巻芯の内面、F2…巻芯の外面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状の基材及びその一方面上に設けられた接着剤層を有する異方導電テープと、
回転軸を挿入するための軸穴が内面によって形成されると共に、前記異方導電テープが外面上に巻かれた筒状の巻芯と、
を備え、
前記巻芯は、前記外面と前記内面との間に導電路を有することを特徴とする接着材リール。
【請求項2】
前記巻芯の全体が導電性材料で形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の接着材リール。
【請求項3】
対向配置された一対の回路部材の間に回路接続材料を介在させ、全体を加熱及び加圧して、前記回路接続材料の硬化物からなり、前記一対の回路部材の間に介在しそれぞれの回路部材が有する回路電極同士が電気的に接続されるように前記回路部材同士を接着する接続部を形成する工程を備える回路接続体の製造方法において、
前記回路接続材料は、回転軸に装着された状態の請求項1又は2に記載の接着材リールから巻き出され、所定の長さに切断された前記異方導電テープの前記接着剤層であり、
前記異方導電テープを巻き出す際に前記接着材リール内に生じた静電気を、前記巻芯及び前記回転軸を通じて外部に逃がすことを特徴とする回路接続体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−303067(P2008−303067A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306279(P2007−306279)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】