説明

接続品質検査装置

【課題】導電性接着剤の電気的特性に基づき、導電性接着剤の接続品質を容易かつ適確に判断可能な接続品質検査装置の提供を目的とした。
【解決手段】検査装置1は、接続部BPおよび導電部s2に対して接触したピンプローブ20,21間に電圧発生源10により印加された印加電圧を掃引し、これにより発生する電流を電流測定計11で測定することができる。検査装置1は、印加電圧の推移に対する測定電流の変動状態に基づいて、接続部BPにおける接続品質の良否を判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続品質検査装置に関するものであり、特に導電性接着剤の接続品質の検査に適切なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、下記特許文献1に開示されている接続不良検知装置のようなものが、はんだ等によって形成された接続部分の接続品質を検査するために用いられている。また、近年、下記特許文献2に開示されているような導電性接着剤が、電子部品等の実装用や配線用として使用されつつある。
【特許文献1】特開2007−273875号公報
【特許文献2】特開2006−294600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、従来は電子部品の実装にはんだが用いられていたため、はんだの接続不良の検査に適した方法や装置が提供されていた。しかし、近年においてはんだに代替する接続材料として利用されつつある導電性接着剤については、その材質等が相違するにもかかわらず接続不良を検査するための装置として適切なものが提供されていないという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、導電性接着剤の電気的特性に基づき、導電性接着剤の接続品質を容易かつ適確に判断可能な接続品質検査装置の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決すべく提供される本発明の接続品質検査装置は、導電性を有する導電部に対し、接着樹脂と導電性フィラーとを含む導電性接着剤を接続することによって形成された接続部の接続品質を検査可能なものであって、前記導電性接着剤に対して電気的に接触可能な接続側接触手段と、前記導電部に対して電気的に接触可能な被接続側接触手段と、前記接続側接触手段および前記被接続側接触手段の間に電力を印加可能な電力印加手段と、当該電力印加手段により電力を印加した際の電気的特性値を検知可能な測定手段と、前記電力印加手段により印加される電力の印加条件を順次変化させることが可能な印加条件変動手段と、電力の印加条件を変化させることによって測定手段において測定される電気的特性値の変動状態に基づいて、導電部と導電性接着剤との接続品質を判断可能な判断手段と、を備えている(請求項1)。
【0006】
本発明者らは、接着樹脂と導電性フィラーとを含んだ導電性接着剤の電気的特性について検討したところ、接続不良がある場合は、電力の印加条件を順次変化させると、これに伴って測定される電気的特性値が、接続不良がない場合や、はんだ等に代表される他の接続剤を用いた場合には見られない特異な挙動を示すことを見いだした。本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、電力印加手段により印加される電力の印加条件の変動に伴う電気的特性値の変動状態に基づき、導電部と導電性接着剤との接続品質を判断可能とされている。そのため、本発明の接続品質検査装置によれば、接着樹脂と導電性フィラーとを含んだ導電性接着剤により形成された接続部における接続品質の良否を適確に判断することができる。
【0007】
なお、本発明、並びに、以下の記載において、「電気的特性値」とは、電流値、電圧値、抵抗値、インピーダンス値等のような電気的特性を示す数値や、これらの組み合わせを指す。また、本発明、並びに、以下の記載において、「電力の印加条件」とは、印加される電流値や電圧値、電源周波数等の条件や、これらの組み合わせを指す。
【0008】
上記した本発明の接続品質検査装置は、測定手段が、電力印加手段により電力を印加することに伴って発生する電流あるいは電圧を検知可能なものであり、印加条件変動手段が、前記電力印加手段により印加される印加電圧あるいは印加電流の大きさを順次変化させることが可能なものであり、判断手段が、前記電力印加手段により印加される印加電圧あるいは印加電流の大きさの変化に伴って変動する測定手段により測定される測定電流あるいは測定電圧の変動状態に基づいて、導電部と導電性接着剤との接続品質を判断可能なものとすることができる(請求項2)。
【0009】
本発明者らは、接着樹脂と導電性フィラーとを含んだ導電性接着剤を用いて行った接続品質に不良がある場合に、印加電圧あるいは印加電流の大きさを変化させると、これに伴って測定される測定電流あるいは測定電圧が、接続が良好である場合などと相違し、特異な挙動を示すことを見いだした。かかる知見に基づき、本発明では、電力印加手段により印加される印加電圧あるいは印加電流の大きさを変化させ、これに伴って変動する測定手段の測定電流あるいは測定電圧の変動状態に基づいて接続品質を判断することとしている。そのため、本発明の接続品質検査装置によれば、接着樹脂と導電性フィラーとを含んだ導電性接着剤により形成された接続部における接続品質の良否を適確に判断することができる。
【0010】
ここで、電力印加手段により印加される電力と、導電性接着剤の電気的特性との関係について本発明者らが検討を重ねたところ、電力印加手段により直流電圧を印加することにより発生する直流電流を測定すると、上述したような導電性接着剤の接続不良に伴って発生する電気的特性が顕著にあらわれることを見いだした。かかる知見に基づけば、上記した本発明の接続品質検査装置は、電力印加手段により直流電圧を印加することにより発生する直流電流が、測定手段により測定されることを特徴とするものであることが望ましい(請求項3)。
【0011】
かかる構成によれば、導電性接着剤の接続不良に伴って発生する電気的特性を適確に捉えることができ、より一層容易かつ正確に導電性接着剤の接続不良の有無を判断することができる。
【0012】
また、本発明者らが検討を重ねたところ、電力印加手段により直流電流を印加することにより発生する直流電圧を測定した場合についても、導電性接着剤の接続不良に伴って発生する電気的特性が顕著にあらわれることを見いだした。かかる知見に基づけば、上記した本発明の接続品質検査装置は、電力印加手段により直流電流を印加することにより発生する直流電圧が、測定手段により測定されることを特徴とするものであってもよい(請求項4)。
【0013】
かかる構成によれば、導電性接着剤の接続不良の有無を容易かつ適確に判断することができる。
【0014】
また、上述した本発明の接続品質検査装置は、直流四端子法により測定電流あるいは測定電圧を測定するものであることが望ましい(請求項5)。
【0015】
上記した本発明の接続品質検査装置は、印加条件変動手段が、印加電圧あるいは印加電流の大きさを順次大きくする正方向掃引と、印加電圧あるいは印加電流の大きさを順次小さくする逆方向掃引と、を実施可能であり、正方向掃引に伴って測定手段により測定される測定電流あるいは測定電圧の推移と、逆方向掃引に伴って測定手段により測定される測定電流あるいは測定電圧の推移との間にヒステリシスがあることを条件として、判断手段により、導電部と導電性接着剤の接続品質が不良であるものと判断されることが望ましい(請求項6)。
【0016】
本発明者らが上述した導電性接着剤の電気的特性について検討を重ねたところ、接続不良が存在すると、上述した正方向掃引を行う場合と逆方向掃引を行う場合とで測定電流あるいは測定電圧の推移にヒステリシスが生じる傾向にあることを見いだした。本発明は、かかる知見に基づくものであり、正方向掃引を行った場合と、逆方向掃引を実施した場合とで測定電流や測定電圧の推移にヒステリシスが生じるか否かを確認するだけで接続不良の有無を検知できる。従って、本発明によれば、接着樹脂と導電性フィラーとを含む導電性接着剤を用いた場合における接続品質の良否を、容易かつ適確に検知可能な接続品質検査装置を提供できる。
【0017】
上記した本発明の接続品質検査装置は、印加電圧の大きさを順次小さくする逆方向掃引を実施した場合に、印加電圧が0ボルトから所定の電圧までの電圧領域において測定手段により測定される測定電流が所定の変動幅以上変化しないことを条件として、判断手段により、導電部と導電性接着剤との接続品質が不良であるものと判断されるものであってもよい(請求項7)。
【0018】
本発明者らがさらに導電性接着剤の電気的特性について検討したところ、接続品質に不良があると、電力印加手段により印加される印加電圧の大きさを順次小さくする逆方向掃引を実施した場合に、印加電圧が0ボルトから所定の電圧までの電圧領域において測定電流が変化しなくなる特性があることを見いだした。本発明の接続品質検査装置は、かかる特性に着目してなされたものであり、上述した逆方向掃引を実施し、0ボルトを基準として所定の電圧までの電圧領域において測定電流が所定の変動幅以上変化するか否かを確認するだけで導電部と導電性接着剤との接続品質を判断することができる。
【0019】
上述した本発明の接続品質検査装置は、電力印加手段が、前記接続側接触手段および前記被接続側接触手段の間に交流電力を印加可能なものであり、測定手段が、電力印加手段により電力を印加することに伴って発生するインピーダンス値を検知可能なものであり、印加条件変動手段が、前記電力印加手段により印加される電源周波数を順次変化させることが可能なものであり、判断手段が、前記電力印加手段により印加される電源周波数の変化に伴って変動するインピーダンス値の変動状態に基づいて、導電部と導電性接着剤との接続品質を判断可能なものであってもよい(請求項8)。
【0020】
本発明者らが接続品質の良否による電気的特性の相違について検討したところ、導電性接着剤を用いて接続した場合は、電源周波数を順次変化させて交流電力を印加した際のインピーダンス値の変動状態が、接続不良の良否によって大きく相違することを見いだした。本発明の接続品質検査装置は、かかる電気的特性を測定すべく、電力印加手段により交流電力を印加可能とすると共に、印加条件変動手段により電源周波数を順次変化させることが可能な構成とし、測定手段により測定されるインピーダンス値を順次測定可能とされている。そのため、本発明の接続品質検査装置によれば、導電性接着剤特有の電気的特性を考慮した上で、接続品質の良否を適確に判断することができる。
【0021】
上記した本発明の接続品質検査装置は、測定手段により測定される電気的特性値の変化が非線形であることを条件として、判断手段により、導電部と導電性接着剤との接続品質が不良であるものと判断されるものであってもよい(請求項9)。
【0022】
本発明者らは、接続品質検査装置の検査対象である接着樹脂と導電性フィラーとを含んだ導電性接着剤において接続不良が生じている場合における電気的特性についてさらに検討したところ、接続不良があると、測定手段により測定される電流値や電圧値、インピーダンス値といったような電気的特性値の変化が非線形となることを見いだした。本発明は、かかる知見に基づくものであり、電力の印加条件を順次変化させた場合に測定される電気的特性値が非線形に変化するか否かを検知し、これに基づいて判断手段により接続不良の有無を検知できる構成とされている。従って、本発明によれば、接続品質の良否を容易かつ適確に検知可能な接続品質検査装置を提供できる。
【0023】
上述した本発明の接続品質検査装置は、電力印加手段による電力の印加条件の変化に伴い、測定手段において測定される電気的特性値の変動幅が所定の変動幅以上であることを条件として、判断手段により、導電部と導電性接着剤との接続品質が不良であるものと判断されるものであってもよい(請求項10)。
【0024】
本発明者らが導電性接着剤の電気的特性についてさらに検討を重ねたところ、導電性接着剤と導電部との接続品質が不良である場合には、印加電圧値や印加電流値、電源周波数等のような電力の印加条件を変化させると、これに伴って測定される測定電流値や測定電圧値、インピーダンス値などの電気的特性値が大幅に変動することが判明した。本発明は、かかる電気的特性に着目してなされたものであり、電力の印加条件の変化に伴って測定される電気的特性値が所定の変動幅以上変動することを条件として接続品質が不良であるものと判断することができる。そのため、本発明の接続品質検査装置によれば、導電性接着剤の電気的特性に基づき、接続品質の良否を容易かつ適確に検知することができる。
【0025】
また、同様の知見に基づくと、上記した本発明の接続品質検査装置は、電力印加手段による電力の印加条件の変化に伴い、測定手段において測定される電気的特性値の変化率が所定の変化率を越えることを条件として、判断手段により、導電部と導電性接着剤との接続品質が不良であるものと判断されるものとすることも可能である(請求項11)。
【0026】
かかる構成によれば、導電性接着剤の電気的特性に基づき、接続品質の良否を容易かつ適確に検知することができる。
【0027】
上述した本発明の接続品質検査装置は、電力印加手段による電力の印加条件の変化に対して、測定手段により測定される電気的特性値の推移において変曲点が存在することを条件として、判断手段により、導電部と導電性接着剤との接続品質が不良であるものと判断されるものであってもよい(請求項12)。
【0028】
本発明者らが導電性接着剤の電気的特性について検討した結果、導電性接着剤と導電部との接続品質が不良である場合に、電力の印加条件を変化させると、これに伴って測定される測定電流や測定電圧、インピーダンス値などの電気的特性値の推移において変曲点があらわれることが判明した。本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、電力の印加条件の変化に伴って測定される電気的特性値の推移において変曲点が存在するか否かを確認し、この結果に基づいて接続品質が不良であるか否かを判断できる構成とされている。従って、本発明の接続品質検査装置によれば、導電性接着剤の電気的特性を十分に考慮した上で、接続品質の良否を容易かつ適確に検知することができる。
【0029】
上述した本発明の接続品質検査装置は、電力印加手段により所定の条件で電力を印加することにより測定手段により検知される電気的特性値と、所定の基準特性値との差が、所定の許容値以上乖離していることを条件として、判断手段により、導電部と導電性接着剤との接続品質が不良であるものと判断されるものであってもよい(請求項13)。
【0030】
本発明者らが導電性接着剤の電気的特性について検討したところ、導電性接着剤と導電部との接続品質が不良である場合には、印加電圧や印加電流、電源周波数値を所定の条件に調整して電力を印加することにより測定される電気的特性値が、接続品質が良好であれば測定されると想定される電気的特性値に対して大幅に相違することが判明した。本発明では、かかる知見に基づくものであり、所定の条件で電力を印加した際に測定される電気的特性値と、所定の基準特性値との差を確認し、これらが所定の許容値以上乖離していることを条件として接続品質が不良である旨の判断を行う構成を採用した。従って、本発明によれば、導電性接着剤と導電部との接続品質の良否を容易かつ適確に検知することができる。
【0031】
上述した本発明の接続品質検査装置は、所定の温度環境を形成可能な温度環境形成手段を有し、当該温度環境形成手段によって形成された温度環境下において接続部に電力を印加可能な構成とすることも可能である(請求項14)。
【0032】
かかる構成とした場合、温度環境形成手段によって形成された所定の温度環境下に接続部がさらされるため、接続部に温度ストレスが作用する。そのため、本発明の接続品質検査装置で検査を行った場合は、接続部に接続不良があるとこれがさらに不良状態となり、接続品質が良好な場合と不良である場合との電気的特性の相違が顕著にあらわれることとなる。従って、本発明の接続品質検査装置によれば、接続品質の良否をより一層正確に判断することができる。
【0033】
また、本発明の接続品質検査装置は、所定の湿度環境を形成可能な湿度環境形成手段を有し、当該湿度環境形成手段によって形成された湿度環境下において接続部に電力を印加可能な構成とすることも可能である(請求項15)。
【0034】
かかる構成とした場合、湿度環境形成手段によって形成された所定の湿度環境下に接続部がさらされることとなるため、接続部に不良があるとこれがさらに不良状態になる。そのため、本発明の接続品質検査装置で検査を行った場合は、接続品質が良好な場合と不良である場合との電気的特性の相違が顕著にあらわれた状態で電気的特性値を確認することができ、接続品質の良否をより一層正確に判断することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、導電性接着剤の電気的特性に基づき、導電性接着剤の接続品質を容易かつ適確に判断可能な接続品質検査装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
続いて、本発明の一実施形態にかかる接続品質検査装置1(以下、単に検査装置1とも称す)について図面を参照しながら詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態の検査装置1は、基板SにICやコンデンサ、抵抗といったようなピンp1を持つ電子部品Pを実装し、導電性接着剤Bを用いて接続したものの接続部BPについて接続不良の有無を検知するためのものである。
【0037】
ここで、基板Sは、従来公知のものと同様にベークライトやエポキシ樹脂、セラミックスなどの電気を通さない非導電性材料からなる基材s1の表面に銅板や銅箔等のような導電性を有するものを接続して導電部s2を設けた構成とされている。導電部s2を構成する銅板等は、必要に応じてエッチング処理を施して回路を形成したり、メッキ処理を施した構成とされている。
【0038】
また、導電性接着剤Bは、接着樹脂と導電性フィラーとを主成分として含むものである。さらに詳細には、導電性接着剤Bは、銀(Ag)や金(Au)をはじめとする金属微粒子や金属メッキ樹脂粒子などの導電性フィラーをエポキシ樹脂などの有機バインダーにほぼ均一に分散させた有機・無機混合系の材料である。導電性接着剤Bは、加熱などにより外部からエネルギーを得ることで不可逆反応を起こして硬化し、電子部品P等を基板Sに接続することができるものである。
【0039】
検査装置1は、直流四端子法により接続部BPにおける導電性接着剤Bの接続不良の有無を検知するものである。図1に示すように、検査装置1は、電圧発生源10(電力印加手段)や、電流測定計11(測定手段)、制御手段12(印加条件変動手段)、判断手段13、表示手段15、記憶部16、入力手段17を備えている。電圧発生源10は、従来公知の定電圧電源によって構成されている。電圧発生源10には、ピンプローブ20(接続側接触手段)とピンプローブ21(被接続側接触手段)とが電気的に接続されており、ピンプローブ20,21間に電圧を印加することができる。電圧発生源10は、制御手段12に接続されており、制御手段12によって印加電圧Vnの大きさを調整することができる。すなわち、制御手段12は、電圧発生源10による電力の印加条件を順次変動させるための印加条件変動手段としての機能を電圧発生源10に対して発揮することができる。また、電圧発生源10は、従来公知のメモリやハードディスクなどの記憶媒体によって構成された記憶部16に対して接続されている。記憶部16には、電圧発生源10による印加電圧Vnの値が随時記録される。
【0040】
また、電流測定計11にも、ピンプローブ20,21が電気的に接続されており、ピンプローブ20,21間に流れる電流を電流測定計11で測定できる構成とされている。電流測定計11は、従来公知の電流計などによって構成されている。電流測定計11は、上述した記憶部16に接続されている。電流測定計11で測定された測定電流Inは、随時記憶部16に記録される。
【0041】
制御手段12は、上述した電圧発生源10や、後に詳述する判断手段13に対して電気的に接続されている。制御手段12は、従来公知のCPUや論理回路、パーソナルコンピュータなどによって構成することができる。制御手段12は、電圧発生源10の出力を調整し、印加電圧Vnを所定のステップ電圧毎に掃引して変化させることができる。また、制御手段12は、電圧発生源10による印加電圧Vnを低電圧側から高電圧側に掃引する正方向掃引、並びに、印加電圧Vnを高電圧側から低電圧側に掃引する逆方向掃引を実行させることができる。制御手段12には、入力手段17が接続されている。制御手段12には、入力手段17を介して検査装置1による接続不良の有無に関する検査の検査条件、すなわち印加電圧Vnの上下限値や、印加電圧Vnを掃引する際のステップ電圧値、印加電圧Vnの掃引方法等を入力し、設定することができる。また、制御手段12は、印加電圧Vnの掃引を行う際のステップ数nをカウントするためのカウンター機能も備えている。
【0042】
判断手段13は、上述した制御手段12や記憶部16に接続されている。判断手段13は、従来公知のCPUや論理回路、パーソナルコンピュータなどによって構成することができる。判断手段13は、記憶部16に記憶されている印加電圧Vnについてのデータや、電流測定計11により測定された電流値を参照することにより、これらのデータに基づいて接続不良の有無を判断することができる。
【0043】
具体的には、判断手段13は、記憶部16から上述した制御手段12により電圧発生源10の出力を調整し、印加電圧Vnを所定のステップ電圧毎に掃引して変化させた場合における各ステップnにおける印加電圧Vn、並びに、電流測定計11で測定された測定電流Inのデータを読み出す。判断手段13は、印加電圧Vnを正方向掃引した際の測定電流In(以下、正方向測定電流Ingとも称す)の推移と、逆方向掃引した際の測定電流In(以下、逆方向測定電流Inbとも称す)の推移とを比較し、両者の間にヒステリシスが存在するか否かを確認する。この結果、図2(a)に示すように、正方向測定電流Ingと逆方向測定電流Inbがほぼ同様の推移で変化する場合には、判断手段13により、接続部BPの接続品質が良好であるものと判断される。具体的には、同一の印加電圧Vnにおける正方向測定電流Ingと逆方向測定電流Inbとの差が所定の許容変動幅Ipの範囲内である場合や、同一の測定電流Inが測定された際の印加電圧Vnが正方向掃引した際と逆方向掃引した際とで所定の許容変動幅Vpの範囲内である場合には、判断手段13により、接続部BPの接続品質が良好であるものと判断される。
【0044】
一方、図2(b)に示すように、正方向測定電流Ingの推移と逆方向測定電流Inbの推移との間にヒステリシスがある場合には、判断手段13により、接続部BPの接続品質が不良であるものと判断される。具体的には、正方向測定電流Ingと逆方向測定電流Inbとの差が、同一の印加電圧Vnにおいて許容変動幅Ip以上相違する場合や、同一の測定電流Inが測定された際の印加電圧Vnが正方向掃引した際と逆方向掃引した際とで許容変動幅Vpを越えて相違する場合は、判断手段13により、接続部BPの接続品質が不良であるものと判断される。
【0045】
判断手段13には、従来公知の液晶パネルやセグメントディスプレイ、ブラウン管などによって構成された表示手段15が接続されている。表示手段15には、制御手段12から発信された信号に基づき、電圧発生源10により印加されている印加電圧Vnの値や掃引方法、ステップ電圧値などの検査条件や、電流測定計11で測定されている電流値を表示することができる。また、表示手段15には、判断手段13により導出された接続不良の有無についての判断結果を表示することもできる。
【0046】
続いて、検査装置1により接続部BPにおける接続不良の有無を検知する検知方法について、図3に示すフローチャートを参照しつつ説明する。検査装置1により接続部BPにおける接続不良の有無を検知する場合は、先ずステップ1において検査条件が設定されているか否かが確認される。ここで、検査装置1においては、制御手段12に入力手段17を介して、印加電圧Vnの上限電圧Vmaxや下限電圧Vmin、印加電圧Vnを掃引する際のステップ電圧値Vs、ステップ数nの設定値ns、印加電圧Vnの掃引方法等を検査条件として入力し、設定することができる。本実施形態において検査装置1により実施される接続不良の検査は、印加電圧Vnを下限電圧Vminから上限電圧Vmaxまでステップ電圧値Vs毎に段階的に上昇させる正方向掃引を実施し、その後上限電圧Vmaxから下限電圧Vminまでステップ電圧値Vs毎に段階的に降下させる逆方向掃引を実施することで行われる。そのため、ステップ数nが検査条件として設定された設定値nsの1/2に到達するまでは正方向掃引が実施され、その後は逆方向掃引が実施される。
【0047】
上記した各検査条件がステップ1において設定されたことが確認されると、制御フローがステップ2に移行する。ステップ2では、現状のステップ数nに対応して決定される印加電圧Vnが電圧発生源10によりピンプローブ20,21間に印加される。具体的には、接続不良の検査の開始直後に相当するステップ数nが1の状態においては、印加電圧Vnが下限電圧Vminとされる。また、ステップ数nが設定値nsの1/2に到達していない場合は、印加電圧Vnが、先に印加された印加電圧Vn−1よりもステップ電圧値Vsだけ高い電圧に設定される。逆に、ステップ数nが設定値nsの1/2を越えている場合は、印加電圧Vnが、先の印加電圧Vn−1よりもステップ電圧値Vsだけ低い電圧に設定される。これに伴い、ピンプローブ20,21間に印加された印加電圧Vnの値が、記憶部16に記憶される。
【0048】
上記したようにしてステップ2で印加電圧Vnが印加されると、制御フローがステップ3に進み、電流測定計11によりピンプローブ20,21間に流れる電流(測定電流In)が測定される。ステップ3で測定された測定電流Inは、記憶部16に記憶される。その後、制御フローがステップ4に進み、ステップ数nが1加算され、ステップ5においてステップ数nが設定値nsに達していないかが確認される。ここで、ステップ数nが設定値nsに到達していない場合は、制御フローがステップ2に戻され、印加電圧Vnの印加や測定電流Inの測定が実施される。一方、ステップ5においてステップ数nが設定値nsに到達している場合は、正方向掃引および逆方向掃引が終わった状態にある。そのため、この場合は、制御フローがステップ6に進められる。
【0049】
ステップ6では、記憶部16に記憶されている測定電流Inおよび印加電圧Vnについてのデータが判断手段13によって読み出され、接続不良の有無についての判断がなされる。具体的には、判断手段13は、印加電圧Vnを正方向掃引した際における測定電流In(正方向測定電流Ing)の推移と、逆方向掃引した際における測定電流(逆方向測定電流Inb)の推移とを比較し、両者の間にヒステリシスがないかを確認する。その結果、図2(a)に示すように正,逆方向測定電流Ing,Inbの間にヒステリシスがない場合は、判断手段13により接続不良がないものと判断される。これとは逆に、図2(b)に示すように正,逆方向測定電流Ing,Inbの間にヒステリシスがある場合は、判断手段13により接続不良があるものと判断される。その後、制御フローがステップ7に移行し、ステップ6で判断された接続品質を示すデータが表示手段15に送信され、表示手段15に接続品質の良否が表示される。これにより、一連の接続部BPにおける接続不良の検知動作が終了する。
【0050】
上記したように、本実施形態の検査装置1では、電圧発生源10により印加される印加電圧Vnを掃引するのに伴って変動する測定電流Inの推移を、正方向掃引した場合と逆方向掃引した場合とで比較し、両者間におけるヒステリシスの有無に基づいて接続部BPにおける接続品質の良否を判断可能とされている。そのため、検査装置1によれば、接着樹脂と導電性フィラーとを含んだ導電性接着剤Bに特有の電気的特性を利用し、接続部BPにおける接続品質の良否を適確に判断することができる。
【0051】
上記実施形態で示した検査装置1は、接続不良を起こしている場合に印加電圧Vnを正,逆方向掃引することによって測定される正,逆方向測定電流Ing,Inbの推移がヒステリシスを発現する特性を利用して接続不良の有無を検査するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の電気的特性に着目して接続不良の有無を検査するものであってもよい。具体的には、図2(a)に示すように、接続部BPの接続品質が良好である場合は、正,逆方向掃引のいずれを行った場合についても測定電流Inの変化が線形である。これに対して、接続部BPにおいて接続不良が起こっている場合は、図2(b)に示すように、正,逆方向掃引のいずれを行った場合についても測定電流Inの変化が非線形となる。かかる特性に鑑み、検査装置1は、上述したステップ6における接続品質の判断に際して、判断手段13により記憶部16から読み出した印加電圧Vnおよび正,逆方向測定電流Ing,Inbの推移について非線形の関係にあるか否かを確認し、非線形である場合に接続品質が不良である旨の判断を下すこととしてもよい。
【0052】
図2(a)に示すように、接続部BPの接続品質が良好である場合は、正,逆方向掃引のいずれを行った場合についても、印加電圧Vnの変動に対して測定電流Inに急激な変動は見られない。これに対し、接続部BPにおいて接続不良が起こっている場合は、図2(b)に示すように、正,逆方向掃引のいずれを行った場合についても印加電圧Vnの変動に対して測定電流Inが急激に上下する挙動を示す部分がある。そこで、かかる特性を考慮し、検査装置1は、上述したステップ6における接続品質の判断に際して、記憶部16から読み出したデータに基づき、判断手段13が印加電圧Vnの変動に伴い正,逆方向測定電流Ing,Inbが所定の変動幅以上に変動していないかを確認することとしてもよい。この場合、正方向測定電流Ingや逆方向測定電流Inbが所定の変動幅以上変動していることを条件として、接続品質が不良である旨の判断を下すことができる。
【0053】
図2(b)に示すように、接続部BPにおいて接続不良がある場合は、印加電圧Vnの変化に対する測定電流Inの変化率が推移の中途で大幅に変動する。そのため、印加電圧Vnの変化に対する測定電流Inの変化率Hを下記の(数式1)に基づいて各ステップ数n毎に導出したり、測定電流Inの推移を外挿する等して導出される関数を解析する等して測定電流Inの変化率Hが所定の基準変化率Hsを越えるか否かを確認し、基準変化率Hsを越える変化があったことが確認された場合に、接続不良があるものと判断することとしてもよい。
【0054】
H={In−I(n−1)}/{Vn−V(n−1)}・・・(数式1)
【0055】
また同様の観点からすると、接続部BPにおいて接続不良がある場合は、図2(b)に示すように印加電圧Vnの変化に対する測定電流Inの推移において変曲点が出現する。そのため、印加電圧Vnの変化に対する測定電流Inの変化率Hを上記の(数式1)に基づいて各ステップ数n毎に導出したり、測定電流Inの推移を関数化したものを二次微分する等して変曲点の有無を確認し、変曲点の存在が確認されることを条件として、判断手段13により接続不良があるものと判断される構成としてもよい。
【0056】
図2(a)に示すように、接続部BPにおいて接続不良がない場合は、正,逆方向掃引のいずれを行った場合についても、印加電圧Vnの変動に対して測定電流In(正方向測定電流Ing,逆方向測定電流Inb)に急激な変動は見られない。これに対し、図2(b)に示すように、接続部BPにおいて接続不良が存在する場合は、判断基準電圧Vjよりも高電圧側において測定電流In(正方向測定電流Ing,逆方向測定電流Inb)が急激に低下する電圧領域(以下、特定電圧領域Vspとも称す)がある。かかる電気的特性を考慮し、検査装置1は、特定電圧領域Vsp内の所定の印加電圧Vnを印加して測定される測定電流Inと、接続不良がないものにおいて同一の印加電圧Vnを印加した際に測定されるものと想定される標準電流Itとを比較し、これらが所定の電流値以上乖離していることを条件として接続品質が不良であるものと判断することとしてもよい。かかる方法により接続品質を検査することとすれば、測定点数を大幅に削減することができ、接続品質の良否の判断をより一層単純化することができる。
【0057】
また、図2(b)に示すように、接続部BPの接続品質が不良である場合、逆方向掃引を実施すると、印加電圧Vnが0ボルトから判断基準電圧Vjの間の電圧領域において測定電流Inがほぼ「0」であり、ほとんど変化しないという電気的特性が発現する。そのため、かかる特性に着目し、検査装置1は、逆方向掃引を実施した際に0ボルトから判断基準電圧Vjの間の電圧領域において印加電圧Vnを印加した際の測定電流Inがほぼ「0」となり所定の変動幅以上変化しないことを条件として接続部BPの接続品質が不良であるものと判断することとしてもよい。
【0058】
上記実施形態やこの変形例として示した検査装置1においては、印加電圧Vnを所定のステップ電圧Vs毎に掃引することで発生する電流(測定電流In)を測定し、測定電流Inの推移に基づいて接続不良の有無を検査する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、図4に示す接続品質検査装置30(以下、検査装置30とも称す)のように、上述した検査装置1において採用されていた電圧発生源10に代わって低電流電源等からなる電流発生源31が採用され、電流測定計11に代わって電圧測定計32が採用されたものとし、ピンプローブ20,21間に流す印加電流を所定のステップ電流毎に掃引すると共に、これに伴ってピンプローブ20,21間に発生する電圧を測定し、当該電圧値や当該電圧値の推移に基づいて接続不良の有無を検査するものであってもよい。
【0059】
図4に示す検査装置30において印加電流Ioをステップ電流Is毎に掃引した場合、接続部BPにおける接続品質が良好であれば、図5(a)に示すように印加電流Ioの変化に対して測定電圧Vmが直線的に変化する。また、この傾向は印加電流Ioを徐々に上昇させる正方向掃引、並びに、印加電流を徐々に下降させる逆方向掃引のいずれを実施した場合についても同様であり、両者の間にヒステリシスは殆どない。これに対して、接続部BPにおける接続品質が不良である場合は、図5(b)に示すように印加電流Ioの変化に対して測定電圧Vmが曲線的に変化する。この傾向は正方向掃引、並びに、逆方向掃引のいずれを実施した場合についても同様である。しかし、接続部BPにおける接続品質が不良である場合は、印加電流Ioを正方向掃引した際の測定電圧Vm(以下、正方向測定電圧Vmgとも称す)の推移と、逆方向掃引して測定された測定電圧Vm(以下、逆方向測定電圧Vmbとも称す)の推移との間にヒステリシスが存在する。従って、検査装置30において、正方向測定電圧Vmgの推移と、逆方向測定電圧Vmbの推移との間にヒステリシスがないかを判断手段13により確認し、ヒステリシスの存在が確認されることを条件として接続不良があるものと判断することとしてもよい。
【0060】
また、図5(b)に示すように、接続部BPにおいて接続不良がある場合は、所定の基準電流Ijよりも低電流側の領域において、接続不良がない場合よりも印加電流Ioの昇降に伴う測定電圧Vmの変動幅が大きなる傾向にある。また、低電流側の領域では、測定電圧Vmの推移を関数化した場合の接線が、接続品質が良好である場合の測定電圧Vmの推移に基づいて形成される一次関数の傾きよりも大きくなる。一方、接続部BPにおいて接続不良がある場合は、基準電流Ijよりも高電流側の領域において、接続不良がない場合よりも印加電流Ioの昇降に伴う測定電圧Vmの変動幅が小さくなる傾向にある。また、基準電流Ijよりも高電流側の領域においては、接続不良がある場合についても測定電圧Vmが直線的に変化するが、この傾きは接続品質が良好である場合の測定電圧Vmの推移に基づいて形成される一次関数の傾きよりも小さくなる。従って、例えば特に印加電流Ioの昇降に伴う測定電圧Vmの変動幅や変化率の大きさが接続品質の良否次第で相違する低電流側の領域において測定電圧Vmの変動幅や変化率を確認し、これに基づいて判断手段13が接続品質の良否について判断することとしてもよい。
【0061】
上述したように、接続部BPにおける接続不良の有無次第で、印加電流Ioの昇降に伴う測定電圧Vmの変動幅や変化率が相違する。そのため、所定の印加電流Ioにおける測定電圧Vmが、接続品質が良好である場合に検知されると想定される電圧に対して所定値以上相違している場合に、接続品質が不良であるものと判断手段13が判断することとしてもよい。また、同様の知見から、接続品質が良好である場合における測定電圧Vmと印加電流Ioとの関係から、接続品質が良好である場合に所定の測定電圧Vmが測定される印加電流Ioの値を基準値として設定し、実際に測定電圧Vmが測定された際の印加電圧Ioが前記した基準値から所定値以上乖離している場合に接続品質が不良である旨の判断をすることとしてもよい。
【0062】
上記実施形態では、直流四端子法により直流電圧を印加したり、直流電流を印加した際の接続部BPにおける電気的特性を測定し、この測定結果に基づいて接続品質の良否を判断する例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、例えば従来公知の直流二端子法等、直流の電力を印加することで発現する電気的特性に基づいて接続品質の良否を判断するものであってもよい。
【0063】
また、従来公知の交流インピーダンス法のように、交流電源を接続部BPに印加して得られる電気的特性に関するデータに基づいて接続品質の良否を判断することも可能である。具体的には、例えば図6に示す接続品質検査装置50(以下、検査装置50とも称す)のように電流印加手段51(電力印加手段)と、測定手段52とを備えている。さらに、検査装置50は、上述した検査装置1,30と同様に、制御手段12や判断手段13、表示手段15、入力手段17、ピンプローブ20,21を備えている。
【0064】
電流印加手段51は、任意の周波数で正弦波電流を発生することができるものが採用されている。測定手段52は、A/D変換手段(図示せず)や、FFT処理手段(図示せず)に加え、電圧・電流測定手段53や、インピーダンス分析手段55を備えている。A/D変換手段は、電圧・電流検出手段53で検出された電圧値や電流値をアナログデータからデジタルデータに変換する機能を有するものである。また、FFT処理手段は、A/D変換手段でデジタルデータに変換された電流値や電圧値についてのデータについてフーリエ変換処理を実行可能なものである。電圧・電流測定手段53は、電流印加手段51により電流を印加した際の出力電圧を検知する電圧検出機能と、出力電流を検知する電流検出機能とを備えたものである。インピーダンス分析手段55は、従来公知の周波数特性分析器などによって構成されており、前述したFFT処理手段で処理された電圧成分や電流成分からインピーダンス値を導出する機能を備えている。
【0065】
制御手段12は、上述した電流印加手段51により印加される印加電流Ioの周波数fnを所定のステップ周波数fs毎に掃引する機能を有する。制御手段12において印加電流Ioの周波数fnが掃引されると、これに伴って電圧・電流測定手段53において出力電圧と、出力電流とが検出される。ここで検出された出力電圧および出力電流についてのデータは、インピーダンス分析手段55において処理され、接続部BPについてのインピーダンス値Snが導出される。
【0066】
判断手段13は、上述したようにしてインピーダンス分析手段55で導出されたインピーダンス値Snを、接続不良のない場合に導出されると想定されるインピーダンス値(以下、基準インピーダンス値Ssとも称す)とステップ周波数fs毎に比較する。その結果、導出されたインピーダンス値Snが、基準インピーダンス値Ssから所定の許容幅以上乖離していることが確認された場合は、判断手段13により接続不良がある旨の判断がなされる。
【0067】
上述したように、検査装置50は、接続不良の有無に伴うインピーダンス特性の相違に着目し、交流インピーダンス法により印加電流Ioの周波数fnを変化させた際のインピーダンス値Snを測定し、周波数fnを掃引した際のインピーダンス値Snの推移に基づいて接続不良の有無を適確に検知することができる。
【0068】
上記した検査装置50では、測定データに基づいて導出されたインピーダンス値Snを、基準インピーダンス値Ssとステップ周波数fs毎に比較し、両者の差が所定の許容幅以上であることを条件として接続不良がある旨の判断をするものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、上述した検査装置1,30のように、直流電力を印加して検査した場合と同様に、接続部BPに接続不良があると、測定により導出されるインピーダンス値Snが周波数fnの変動に対して所定の許容幅以上変動するものと想定される。そのため、検査装置50は、インピーダンス分析手段55により導出されたインピーダンス値Snの推移を確認し、これが所定の許容幅以上変動したり、所定の変化率以上の変化率で変化したことが確認されることを条件として、判断手段13により接続不良があるものと判断されるものであってもよい。
【0069】
また、導電性接着剤Bを用いて形成した接続部BPにおいて接続不良があると、測定結果に基づいて導出されたインピーダンス値Snが、周波数fnの掃引に伴って局所的に変動し、全体として非線形の挙動を示すものと想定される。そのため、このような導電性接着剤Bに特有の電気的特性を考慮し、検査装置50は、周波数fnの掃引に伴って導出されたインピーダンス値Snの推移が非線形であることを条件として、接続不良があるものと判断する構成としてもよい。
【0070】
さらに、上述したようにインピーダンス値Snが周波数fnの掃引に伴って局所的に変動する場合は、インピーダンス値Snの推移を関数化した場合に変曲点があらわれるものと想定される。そのため、検査装置50は、インピーダンス値Snの推移を示す関数を二次微分する等して変曲点の存在を確認し、変曲点が存在することを条件として接続不良があるものと判断する構成としてもよい。
【0071】
上記した検査装置50は、測定データに基づいて導出されたインピーダンス値Snを、予め設定された基準インピーダンス値Ssとステップ周波数fs毎に比較するものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、検査装置50は、周波数fnを順次上昇させる正方向掃引と、周波数fnを順次下降させる逆方向掃引とを実施し、正方向掃引により測定されたインピーダンス値Snの推移と、逆方向掃引により測定されたインピーダンス値Snの推移とを比較し、両者の間にヒステリシスがないかを確認することとしてもよい。
【0072】
上記実施形態では、基板S上に実装される電子部品Pのピンp1と、基板Sに設けられた導電部s2とを接続するために形成された接続部BPにおける接続不良の有無を検知するために検査装置1,30,50を適用する例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、検査装置1,30,50は例えば導電性接着剤Bを用いて形成された配線パターンの接続不良や導電性不良を検査するためなどに適用されてもよい。
【0073】
上記した各実施形態では、接続部BPに電力を印加することで測定される測定電流Inや測定電圧Vm、インピーダンス値Snといった電気的特性値を様々な条件の下で検討し、これらの電気的特性値や電気的特性値の推移が接続不良の際に発現する特性に合致する場合に接続不良である旨の判断を下す例を示したが、検査装置1,30,50は、接続不良の判断において上述した接続不良と判断するための全ての条件を満足する場合に接続不良と判断することとしてもよい。また、検査装置1,30,50は、上述した各条件のうち一部でも満足すれば接続不良があるものと判断することとしてもよい。
【0074】
上記実施形態で示した検査装置1,30,50は、いずれも基板Sに対して試験環境に変化を与えることなく電気的特性を検知し、これに基づいて接続不良の有無を判断するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、基板Sを所定の試験環境下にさらした状態で電気的特性を検知し、これに基づいて接続不良の有無を判断する構成としてもよい。かかる構成の具体例としては、例えば図7に示す接続品質検査装置60(以下、単に検査装置60とも称す)のようなものが考えられる。
【0075】
検査装置60は、上述した検査装置1と大部分が同様の構成であるが、基板Sを収容可能な恒温恒湿空間61と、環境調整手段62とをさらに備えている点が検査装置1と相違する。恒温恒湿空間61は、従来公知の恒温恒湿槽などによって構成されており、内部に検査対象である基板Sや、ピンプローブ20,21を収容可能な大きさとされている。また、環境調整手段62は、恒温恒湿空間61の内部雰囲気を所定の温度および湿度に調整するためのものであり、送風手段63と、温調手段65と、加湿手段66とを備えている。送風手段63は、環境調整手段62により温度および湿度が調整された空気を恒温恒湿空間61内に送り込むものである。また、温調手段65は、従来公知のヒーターや冷却器などによって構成することができ、恒温恒湿空間61に送り込まれる空気の温度を調整することができる。加湿手段66は、従来公知の加湿器などによって構成されており、恒温恒湿空間61に送り込まれる空気の湿度を調整する機能を有する。送風手段63や温調手段65、加湿手段66の出力は、制御手段12により制御されている。これにより、恒温恒湿空間61内に形成される基板Sの試験環境の雰囲気温度および湿度が所定の設定値となるように調整される。
【0076】
検査装置60は、上述した環境調整手段62により基板Sの試験環境の雰囲気温度および湿度を調整した上で、上述した検査装置1と同様にして接続不良の有無について検査を行うことができる。そのため、検査装置60によって検査を行う場合は、接続部BPに接続不良があると、この不良が温度ストレスや湿度の影響により促進された状態で電気的特性を検知することができる。従って、検査装置60によって検査を行った場合は、接続部BPにおける接続不良により発現する電気的特性がより一層顕著にあらわれることとなり、接続不良の有無を正確に判断することができる。
【0077】
上記した検査装置60は、環境調整手段62により、基板Sの試験環境について、雰囲気温度および湿度の双方を任意に調整して検査可能なものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば温調手段65あるいは加湿手段66のいずれか一方を省略した構成としてもよい。かかる構成とした場合についても、試験環境の雰囲気温度や、湿度のいずれかを変化させることにより、接続部BPの接続不良の発生を促進し、接続不良の有無について正確に検査することができる。
【0078】
検査装置60は、上述した検査装置1の構成に加えて恒温恒湿空間61や環境調整手段62を設け、基板Sについての試験環境を調整可能なものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、上述した検査装置30,50についても、検査装置60と同様に恒温恒湿空間61や環境調整手段62を設け、基板Sを所定の試験環境下にさらした状態で電気的特性を検知し、接続不良の有無を判断可能な構成としてもよい。
【0079】
上記した検査装置60は、環境調整手段62により温度および湿度を調整した空気を恒温恒湿空間61に供給して雰囲気温度や湿度を調整可能なものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、検査装置60は、図8に示すように環境調整手段62を設ける代わりに、基板Sに面接触するように配置されるヒータや冷却器を備えたプレート式の温調手段70を設けた構成としてもよい。かかる構成とした場合は、温調手段70の出力を制御手段12により制御することで、試験環境温度を調整可能である。
【0080】
また、上述した検査装置60のうち、環境調整手段62を備えたものは、恒温恒湿空間61内の雰囲気温度や湿度を調整するものであり、温調手段70を備えたものは基板Sの温度を調整するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、接続部BPを直接的に加熱や冷却することができるものであってもよい。具体的には、図9に示すように、接続部BPを部分的に温度調整可能な温調手段75を設け、これにより加熱あるいは冷却した状態で接続部BPの電気的特性を検知し、接続不良の有無を判断可能な構成としてもよい。
【0081】
上記実施形態で示した検査装置60において、温調手段62,70,75は、いずれも加熱および冷却可能の双方を実施可能なものであっても、いずれか一方のみを実施可能なものであってもよい。また、図8や図9に示す変形例においては、恒温恒湿空間61内を加湿する手段を備えていないが、これらについても図7に示す検査装置60と同様に加湿可能な構成を設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態にかかる接続品質検査装置の構成を示す概念図である。
【図2】導電性接着剤により形成された接続部に直流電圧を印加し、掃引した際の測定電流の推移を概念的に示したグラフであり、(a)は接続状態が良好である場合、(b)は前記接続状態が不良である場合を示す。
【図3】接続品質の検査方法の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の別の実施形態にかかる接続品質検査装置の構成を示す概念図である。
【図5】導電性接着剤により形成された接続部に直流電流を印加し、掃引した際の測定電圧の推移を概念的に示したグラフであり、(a)は接続状態が良好である場合、(b)は前記接続状態が不良である場合を示す。
【図6】本発明のさらに別の実施形態にかかる接続品質検査装置の構成を示す概念図である。
【図7】本発明のさらに別の実施形態にかかる接続品質検査装置の構成を示す概念図である。
【図8】図7に示す接続品質検査装置の変形例を示す概念図である。
【図9】図7に示す接続品質検査装置の別の変形例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0083】
1,30,50,60 接続品質検査装置(検査装置)
10 電圧発生源(電力印加手段)
11 電流測定計(測定手段)
12 制御手段(印加条件変動手段)
13 判断手段
20 ピンプローブ(接続側接触手段)
21 ピンプローブ(被接続側接触手段)
31 電流発生源
32 電圧測定計
51 電流印加手段(電力印加手段)
52 測定手段
65,70,75 温調手段(温度環境形成手段)
66 加湿手段(湿度環境形成手段)
B 導電性接着剤
BP 接続部
Vn 印加電圧
Vp 許容変動幅
Vj 判断基準電圧
Vsp 特定電圧領域
Vm 測定電圧
In 測定電流
Ip 許容変動幅
It 標準電流
Io 印加電流
Ij 基準電流
fn 周波数
Sn インピーダンス値
Ss 基準インピーダンス値
H 変化率
Hs 基準変化率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する導電部に対し、接着樹脂と導電性フィラーとを含む導電性接着剤を接続することによって形成された接続部の接続品質を検査可能な接続品質検査装置であって、
前記導電性接着剤に対して電気的に接触可能な接続側接触手段と、
前記導電部に対して電気的に接触可能な被接続側接触手段と、
前記接続側接触手段および前記被接続側接触手段の間に電力を印加可能な電力印加手段と、
当該電力印加手段により電力を印加した際の電気的特性値を検知可能な測定手段と、
前記電力印加手段により印加される電力の印加条件を順次変化させることが可能な印加条件変動手段と、
電力の印加条件を変化させることによって測定手段において測定される電気的特性値の変動状態に基づいて、導電部と導電性接着剤との接続品質を判断可能な判断手段と、を備えていることを特徴とする接続品質検査装置。
【請求項2】
測定手段が、電力印加手段により電力を印加することに伴って発生する電流あるいは電圧を検知可能なものであり、
印加条件変動手段が、前記電力印加手段により印加される印加電圧あるいは印加電流の大きさを順次変化させることが可能なものであり、
判断手段が、前記電力印加手段により印加される印加電圧あるいは印加電流の大きさの変化に伴って変動する測定手段により測定される測定電流あるいは測定電圧の変動状態に基づいて、導電部と導電性接着剤との接続品質を判断可能なものであることを特徴とする請求項1に記載の接続品質検査装置。
【請求項3】
電力印加手段により直流電圧を印加することにより発生する直流電流が、測定手段により測定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の接続品質検査装置。
【請求項4】
電力印加手段により直流電流を印加することにより発生する直流電圧が、測定手段により測定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の接続品質検査装置。
【請求項5】
直流四端子法により測定電流あるいは測定電圧が測定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の接続品質検査装置。
【請求項6】
印加条件変動手段が、
印加電圧あるいは印加電流の大きさを順次大きくする正方向掃引と、
印加電圧あるいは印加電流の大きさを順次小さくする逆方向掃引と、を実施可能であり、
正方向掃引に伴って測定手段により測定される測定電流あるいは測定電圧の推移と、逆方向掃引に伴って測定手段により測定される測定電流あるいは測定電圧の推移との間にヒステリシスがあることを条件として、判断手段により、導電部と導電性接着剤の接続品質が不良であるものと判断されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の接続品質検査装置。
【請求項7】
印加電圧の大きさを順次小さくする逆方向掃引を実施した場合に、印加電圧が0ボルトから所定の電圧までの電圧領域において測定手段により測定される測定電流が所定の変動幅以上変化しないことを条件として、判断手段により、導電部と導電性接着剤との接続品質が不良であるものと判断されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の接続品質検査装置。
【請求項8】
電力印加手段が、前記接続側接触手段および前記被接続側接触手段の間に交流電力を印加可能なものであり、
測定手段が、電力印加手段により電力を印加することに伴って発生するインピーダンス値を検知可能なものであり、
印加条件変動手段が、前記電力印加手段により印加される電源周波数を順次変化させることが可能なものであり、
判断手段が、前記電力印加手段により印加される電源周波数の変化に伴って変動するインピーダンス値の変動状態に基づいて、導電部と導電性接着剤との接続品質を判断可能なものであることを特徴とする請求項1に記載の接続品質検査装置。
【請求項9】
測定手段により測定される電気的特性値の変化が非線形であることを条件として、判断手段により、導電部と導電性接着剤との接続品質が不良であるものと判断されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の接続品質検査装置。
【請求項10】
電力印加手段による電力の印加条件の変化に伴い、測定手段において測定される電気的特性値の変動幅が所定の変動幅以上であることを条件として、判断手段により、導電部と導電性接着剤との接続品質が不良であるものと判断されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の接続品質検査装置。
【請求項11】
電力印加手段による電力の印加条件の変化に伴い、測定手段において測定される電気的特性値の変化率が所定の変化率を越えることを条件として、判断手段により、導電部と導電性接着剤との接続品質が不良であるものと判断されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の接続品質検査装置。
【請求項12】
電力印加手段による電力の印加条件の変化に対して、測定手段により測定される電気的特性値の推移において変曲点が存在することを条件として、判断手段により、導電部と導電性接着剤との接続品質が不良であるものと判断されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の接続品質検査装置。
【請求項13】
電力印加手段により所定の条件で電力を印加することにより測定手段により検知される電気的特性値と、所定の基準特性値との差が、所定の許容値以上乖離していることを条件として、判断手段により、導電部と導電性接着剤との接続品質が不良であるものと判断されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の接続品質検査装置。
【請求項14】
所定の温度環境を形成可能な温度環境形成手段を有し、
当該温度環境形成手段によって形成された温度環境下において接続部に電力を印加可能であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の接続品質検査装置。
【請求項15】
所定の湿度環境を形成可能な湿度環境形成手段を有し、
当該湿度環境形成手段によって形成された湿度環境下において接続部に電力を印加可能であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の接続品質検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−216659(P2009−216659A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63039(P2008−63039)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】