説明

接触式転写手段及びこれを用いた連続紙対応静電印刷装置

【課題】連続紙対応の静電印刷装置において、接触式転写部材である転写ローラの長寿命・高耐久化及び、用紙に圧接し回転する転写ローラが張力を持って高速搬送される用紙から受ける反発力によって生じる振動に基づく転写不良の防止。
【解決手段】接触式転写部材を、導電性ベルトを駆動する駆動ローラ、導電性ベルトに従動して回転する導電性ゴムローラ及びテンションローラから構成され、導電性ゴムローラを回動する導電性ベルトを介して連続紙をトナー像担持体に圧接する構成とする。導電性ゴムローラの芯金には電源からトナーと逆極性の電圧を印加する。また、転写部における導電性ベルトと連続紙との接触ニップ領域幅が、用紙とトナー像担持体との接触ニップ領域幅よりも狭くなるように、導電性ゴムローラと導電性ベルトの構成(厚み、ゴム硬度等)、導電性ゴムローラの用紙、トナー像担持体への圧接力の適正化を図った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接触式転写手段に係わり、特に、ローラ紙やボックス紙(ミシン目有り)等の連続紙に好適な高速・高耐久の接触式転写手段、及び、これを用いた連続紙対応静電印刷装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術を応用した静電印刷装置はオンデマンド印刷という特徴を有し、最近では高画質化、カラー化のニーズに加え、両面印刷や多種用紙(凹凸の大きな粗面紙や人工的に表面に凹凸を形成したエンボス紙等の表面が平坦でない用紙、プレプリント紙等)への印刷等の顧客ニーズが高まっている。ローラ紙やボックス紙(ミシン目有り)等の連続紙対応の静電印刷装置では、カット紙対応の静電印刷装置で高速搬送時に問題となる用紙がジャムるという現象が生じないため、高速で安定した印刷ができるという特長がある。両面印刷のニーズに対しては、静電印刷装置を2台用い、1台目で表面(第1面)を印刷後、用紙を反転させ2台目で裏面(第2面)の印刷を行うタンデム運転方式が用いられる。
【0003】
この場合の課題である第1面印刷時のトナー画像定着時での水分蒸発に伴う用紙の高抵抗化に対しては、第2面印刷持の転写条件を適正化する技術が特許文献1に開示されている。また、転写スリップによるトナー飛散が原因となる画質劣化の防止対策として、転写部において連続紙に適度な弛みを持たせて搬送し、少なくとも、転写ニップ部において用紙とトナー像担持体(感光ドラム)との速度差をゼロにするという特許文献2に開示されている。
【0004】
一方、非接触式転写手段であるコロナ転写方式では、表面の凹凸の大きな転写材に転写する場合は転写材とトナー像担持体面の密着性が低下するため、局部的に転写されない状態、所謂、転写ヌケが発生するという問題がある。また、カラー印刷の場合には中間転写ベルト上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)トナーからなる多層トナー像を転写材に一括転写する必要があるが、転写材の表面から最も離れたトナー像、すなわち、中間転写ベルト面と接触するトナー像の転写性が悪い。これらの課題を解決する手段として、接触式転写であるローラ転写方式やベルト転写方式があり、40ppmクラス以下の中低速のカット紙対応の静電印刷装置で用いられている。
【0005】
図8は、ローラ転写方式を用いたカット紙対応の静電印刷装置の転写部構成例を示したものである。レジストローラ32a、32bにより送出された用紙31は案内部材33a,33bによって転写部に至る。用紙31はトナーの帯電極性(図8では負帯電)と逆極性(正極性)の転写電圧が印加された転写ローラ11によって、トナー像が形成された感光ドラム1の面に押しつけられることによって、感光ドラム上のトナー像2aは用紙31に転写され、用紙受け部材34を経由して定着装置35に送られる。転写ローラ11は金属製の芯金部材11aの外周に導電性のゴム系スポンジ部材や導電性ゴム層11bが形成されたものである。
【0006】
用紙の間隙間で、転写ローラに印加する電圧の極性を逆転させる(図8では負極性)ことにより、転写ローラ11の表面に付着するトナーや紙粉等は、感光ドラム1に移行させ、感光ドラムの清掃部材(図示せず)により清掃除去することができる。このため、カット紙対応の静電印刷装置では転写ローラ表面の清掃部材を必要としない。
【0007】
図9は、ベルト転写方式を用いたカット紙対応の静電印刷装置の転写部構成例を示したものである。転写ベルト12は駆動ローラ13、従動ローラ36、テンションローラ14により回動され、転写ベルト12は、駆動ローラ13、従動ローラ36によりトナー像担持体である感光ドラム面に巻き付けられ、ニップ領域を形成する。
【0008】
レジストローラ32a、32bにより送出されたカット紙31は、ベルト12の面に吸着されてニップ領域(転写領域)に運ばれる。転写ベルトは用紙の搬送手段を兼務している。ここで、37はコロナ転写器で、コロナワイヤにトナーの帯電極性(図9では負極性)と逆極性(正極性)の転写電圧(電流)を印加することにより、ベルトの裏面(転写材が接触する面と反対側)にトナーの帯電極性と逆極性の電荷が付与され、感光ドラム1上に形成されたトナー像2aが用紙31に転写される。
【0009】
また、特許文献3には、感光体と転写器との間に搬送される連続紙の転写器側の面に略全幅に渡って密着されるとともに前記連続紙と同速で移動する記録紙保護部材を設けることにより連続紙と転写器との間を遮断する技術が開示されている。さらに、転写効率を高めるために、記録紙保護部材(ベルト)の移動方向における転写器の上流近傍に配置された加圧部材により、記録紙保護部材を感光体側に加圧することも開示されている。特許文献3によれば、連続紙と記録紙保護部材とが同速で移動するので、連続紙の裏面が加圧部材によって擦られることが無く、連続紙に転写した転写画像の乱れを防止できる。
【0010】
【特許文献1】特開2005−24577号公報
【特許文献2】特開2001−335208号公報
【特許文献3】特開平10−104962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図8、図9で説明した両方式は、転写材とトナー像担持体を密着させた状態でトナーの帯電極性と逆極性の電圧を転写材に印加してトナー像をトナー像担持体から転写材に転写する方式であるため、表面の凹凸のある用紙や多層トナー像を一括転写するカラー画像への転写に適している。しかし、連続紙を用いた静電印刷装置の場合、用紙の長さは数十m〜数百mに及ぶ。このため、図9に示すような用紙をベルトに吸着させて搬送するという形態を取ることは出来ない。
【0012】
一方、転写ローラや転ベルトが高速連続紙対応の静電印刷装置で用いられると、用紙との摺擦力により、転写ローラや転ベルト表面の摩耗等の劣化に伴う寿命低下等の問題が生じる。
【0013】
図5(a)は転写材として連続紙を用い、転写方式としてローラ転写方式を用いた場合の連続紙対応静電印刷装置の転写部及び用紙搬送路を示す図である。印刷動作時は、画像形成手段によって、アルミ素管1aの表面に光導電層1bを形成した感光ドラム1上にトナー像2aが形成される。用紙の両サイドにスプロケット(送り穴)が形成された連続紙5は、トラクタ3aにより搬送され、入口側用紙ガイド4aに案内されて転写部に送られ、感光ドラム1の面に接触した後、出口側用紙ガイド4bに案内され、トラクタ3bにより定着装置(図示せず)に送られる。転写ローラ11は、金属の棒材11aを芯金とし、その外側に導電性弾性層11bを形成し、その表面に、トナーや紙粉等の異物に対する清掃性の向上のため離型層8を設けたものである。棒材11aにはトナーの帯電極性(正帯電)と逆極性(負極性)の電圧が転写電源10により印加される。
【0014】
転写ローラ11を圧接力9aで押しつけた場合、導電性弾性層11bが変形し、転写ローラ11と用紙5との間に接触幅(ニップ幅)Wtpが形成される。この領域において、トナー像が転写される。
【0015】
(1)課題1
100ppm(A4サイズのカット紙換算)以上の高速連続紙プリンタでは、直径150〜260mmの大径感光ドラムが使用され、かつ、起動・停止時に高トルクを要すること、また用紙搬送系も用紙を転写部から定着部まで長尺で高速搬送する必要があることから、感光ドラム駆動系と用紙搬送駆動系、そして、転写ローラはそれぞれ、独立した駆動源を持っている。
【0016】
このため、高速機では、感光ドラムの周速、用紙搬送速度、及び転写ローラの周速を一致させることは難しく、それぞれの間で速度差が生じる。
【0017】
図7(a)は中速機クラスのカット紙対応静電印刷装置(プリンタ)に用いられる転写ローラ7の構造を示す。ステンレスや鉄系の芯金7aの外側にウレタンやEPDM(エチレンプロピレンジエン共重合ゴム)にカーボン等を添加した導電性ゴム層(体積抵抗率:10〜10Ω・cm)7bを形成し、この外側に、表面の清掃性を考慮した被膜層8が外層として形成された多層構造である。被膜層8としては、ウレタン系の樹脂やフッ素系樹脂のコート層や、同樹脂材料を用いたチューブにより導電性ゴムローラをチュービングしたものが用いられる。チュービング法としては熱収縮タイプのチューブをかぶせた後に高温で加熱収縮させる方法と非収縮チューブを接着剤を用いて接着する方法がある。
【0018】
転写ローラ7は用紙を介して感光ドラム等のトナー像担持体面に圧接された状態で使用される。前述のように、高速連続紙プリンタでは、用紙搬送速度と転写ローラの周速が異なるため、導電性ゴム層7bと被膜層8の界面に働く剪断力が大きくなることに加え、転写ローラが高速回転するため、比較的短時間(A4サイズのカット紙換算で20から30万頁)で、図7(b)に示すような被膜層8と導電性ゴム層7bとの間での界面剥離7cが生じ寿命に至る。これは、目標寿命である200から300万頁の一桁低い値である。
【0019】
(2)課題2
図5(b)は、用紙5の搬送状態が転写特性に与える影響を説明する図である。用紙5は用紙ガイド4a、4bによって曲率を有する感光ドラム面1bに巻き付けられ、感光ドラムと用紙との接触幅(ニップ幅)Wppが形成される。また、用紙5は用紙ガイド間で張力28a、28bで引っ張られた状態で搬送される。このため、基本的にWppは用紙ガイド4a、4bの取り付け位置と感光ドラムの曲率によって決まる。
【0020】
しかし、実際には、高速機対応の大径(〜260mm)、長尺(〜530mm)感光ドラムの高速回転時のドラム偏芯(〜±0.1mm)や用紙の高速搬送時の用紙走行変動によってWppの値が変動する。転写ローラ11と用紙5との接触幅(ニップ幅)WtpがWppよりも大きくなると、転写ローラ11は、図5(b)の空隙27の上部から用紙5を押しつけることになるため、転写ローラ11は用紙から反発力26を受け、押圧9aと反発力26が相乗した結果として転写ローラに振動が生じる。
【0021】
この結果、図6(b)に示すように、ベタトナー画像を印刷する場合であっても、転写ローラの振動に伴う密着不良が原因となって転写不良部30が生じる。逆に、WppがWtpよりも大きい場合には、図6(a)に示すように、偏芯の影響を受けず均一な転写が可能である。
【0022】
本発明の目的は、連続紙対応の静電印刷装置特有の現象である大径・長尺感光ドラムの回転偏芯と高速搬送時の走行変動の影響を排除することにある。
本発明が解決しようとする第1の課題は、連続紙対応の静電印刷装置における、感光ドラムの周速、用紙搬送速度、及び転写ローラの周速の差に起因する界面剥離の発生を防止することにある。
【0023】
本発明が解決しようとする第2の課題は、連続紙対応の静電印刷装置における、転写ローラの振動に伴う密着不良の問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0025】
トナー像担持体上に形成されたトナー像を転写材に転写する転写手段であって、導電性ベルトと、該導電性ベルトを駆動する駆動ローラと、前記導電性ベルトに従動して回転する導電性ゴムローラ及びテンションローラを含み、前記導電性ゴムローラの芯金にトナーと逆極性の電圧を印加する電源を有し、前記導電性ゴムローラと前記テンションローラのうちの少なくとも前記導電性ゴムローラの位置が変更可能であり、該位置の変更により、前記導電性ベルトを前記転写材や前記トナー像担持体に対して接触もしくは非接触のいずれかの状態に選択できるように構成されており、前記導電性ベルトを介して前記導電性ゴムローラを前記転写材と前記トナー像担持体に圧接することにより、前記導電性ベルトと前記転写材との間に転写ニップ領域を形成する、ことを特徴とする接触式転写手段。
【0026】
本発明では、前記課題1の界面剥離の解決手段として、導電性ゴム層を有するローラとベルトとを別体とし、記導電性ゴムローラの芯金にトナーと逆極性の電圧を印加する電源を有する新たな転写ローラ機構を構成した。この構成により、過度のストレスが導電性ゴムローラとベルトにかかっても、滑り性によりストレスが解放され、通常の転写ローラで生ずる界面剥離が発生しない。すなわち、導電性ゴムローラを回動する導電性ベルトを介して連続紙をトナー像担持体に圧接する構成とし、離型性のあるベルトと導電性ゴムローラに分離したことにより、2層一体構造の転写ローラで問題となった界面剥離という寿命劣化を防止でき、長寿命・高耐久の新規な接触式転写手段を得ることが出来る。
【0027】
図4を用いてこれを説明する。転写手段は表面が離型処理された導電性を有するゴム製のベルト12が駆動ローラ13、テンションローラ14、そして、導電性ゴム層を有するローラ110により回動され、かつ、ローラ110により、ベルト12を介して用紙5をトナー像担持体1に圧接する構成とする。記導電性ゴムローラ110の芯金110aにトナーと逆極性の(±いずれか一方の極性の)電圧を印加する直流電源10を有する。13は駆動ローラであり、ステンレス等の金属棒で中央部の外径を両端部の外径に比較して僅かに小さくした構造である。また、14はテンションローラであり、荷重をベルトに与えて張力を発生させ、ベルトのたるみを無くす。導電性ゴムローラ110はベルト12を圧接し転写ニップを形成する。この転写手段は導電性ゴムローラ110と駆動ローラ13とベルト12とから構成される転写ローラと考えることもできる。これは、図9に示す従来の転写ベルト方式とは異なり、ローラ転写とベルト転写の両機能を備えた新規構成である。用紙搬送速度と転写ローラの周速差が無いため、導電性ゴム層と被膜層8の界面に剪断力が作用せず、面剥離が発生しない。
【0028】
なお、ゴム製ベルトの表面の離型処理法としては、導電性ゴム層の表面に離型性の部材を被膜層として形成するのでなく、ゴムそのものの表面をフッ素や塩素ガスにより化学的に改質することにより、非粘着性、滑り性を付加した。
【0029】
また、本発明では、課題2の対策手段として、転写部における導電性ベルトと連続紙との接触ニップ領域幅が、用紙とトナー像担持体との接触ニップ領域幅よりも狭くなるように、導電性ゴムローラと導電性ベルトの構成(厚み、ゴム硬度等)、導電性ゴムローラの用紙、トナー像担持体への圧接力の適正化を図ることにより解決した。
【0030】
すなわち、転写部において、導電性ゴム層を有するローラ110が、ベルト12を連続紙5に押しつけることによって形成されるベルトと連続紙との接触領域幅、すなわち転写ニップ幅Wtpが、連続紙とトナー像担体1との接触領域幅、すなわちニップ幅Wppよりも小さくなるように導電性ゴム層を有するローラの構成(外径、ゴム層厚み、ゴム硬度)や転写ベルトの構成(ゴム層厚み、ゴム硬度)の適正化、圧接力の適正化や制御を行う。
【0031】
WtpをWppと一致させることは感光ドラムの回転偏芯や用紙の高速搬送時の用紙走行変動等を考慮すると難しく、WtpをWppの50〜90%程度にすることが望ましい。
【0032】
また、ベルト表面の清掃は駆動ローラ13と対向する位置でブラシやブレードをベルト面に接触させることにより行い、駆動ローラ13の回転周速を常に一定になるように制御する。図4に示した清掃機構12は導電性ブラシを用いたバイアスクリーナである。
【発明の効果】
【0033】
(1)本発明の接触式転写手段は、図4に示すように、表面に離型性を有する導電性のゴム製のベルト12が導電性ゴム層からなるローラ110の周りを回動する構成である。即ち、離型性を有する部材(ベルト)と導電性ゴム層ローラは別体であるため、図7(b)で示したような一体構造の転写ローラで生じた界面剥離現象は発生しない。さらに、ベルトを構成するゴム表面が化学的に改質されているため、離型性能の安定性に優れ、長寿命である。
【0034】
(2)本発明によれば、感光ドラム回転時のドラム偏芯があっても、ベルト12と連続紙5との接触領域幅(転写ニップ幅)Wtpを連続紙と感光ドラムの接触領域幅Wppよりも小さく設定しているため、ベルトと連続紙間での振動が生じることはなく、バラツキのない良好な転写性能が得られる。また、ベルト表面が離型処理されて滑り性のあること、またベルト表面の清掃を一定周速で回転するように制御された駆動ローラ13と対向する位置でファーブラシやブレードを接触させて行うため、清掃によるベルトの回転への影響を無くすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0036】
まず、図1および図4を用いて本発明の実施例1を説明する。感光ドラム1のプロセス速度は40(インチ/秒)であり、A4カット紙換算で280ppm(頁/分)の高速静電印刷装置である。正帯電OPC層1bを直径260mmのアルミ製のドラム表面1aの表面に形成した感光ドラム1の表面に正帯電のトナー像2aが形成されている。連続紙5がトタクタ3aにより転写部に搬入され、トラクタ3bより転写部から搬出される。用紙5が入り口側の用紙ガイド4aと出口側の用紙ガイド4bによって感光ドラム1に巻き付けられる。用紙5が感光ドラム1の面と接触・ニップされる領域幅Wppは、感光ドラムの曲率と入り口側の用紙ガイド4aと出口側の用紙ガイド4bの取り付け位置によって変わるが、ドラム静止状態で6mmとした。
【0037】
導電性ゴムローラ110は、直径16mmの金属棒110aを芯金として厚み22mmのウレタンゴム層110bを形成したもので、ゴム硬度が40度(JIS−A)、体積抵抗率は10Ω・cmである。
【0038】
転写ベルトである導電性ベルト12はウレタンを主材料として押しだし成型等により製作されたシームレスベルトであり、厚み0.5mm、ベルトの体積抵抗率は1011〜1012Ω・cmである。表面はフッ素処理による離型性を有している。13はステンレス等の金属棒からなる駆動ローラで、ベルト12の安定走行を確保するため、中央部の外径を両端部の外径に比較して約3mm小さくした形状とした。
【0039】
14はテンションローラとしての金属ローラであり、圧力9bをこのテンションローラに与えることにより、ベルト12に張力を発生させ、転写ベルトと各ローラ間の滑りやベルトのたるみが生じないようにした。バネ用鋼線材からなるスプリング(図示せず)を用いて、線荷重6×10−3kgf/mmの押圧9aにて従動回転する導電性ゴムローラ110をベルト12,用紙5を介して感光ドラム1に圧接した。転写ベルト面と用紙との接触幅Wtpは5mmで、接触領域(転写ニップ部)での面圧力は150g/cm であり、中抜け現象が発生しない圧力条件(180g/cm以下)を満足するように設定した。
【0040】
トナーが正帯電なので、導電性ゴムローラ110の芯金110aにバイアス電源10により負極性の転写電圧を印加する。16はバイアスクリーナであり、カーボン入りレーヨン繊維からなる導電性ブラシ15a、金属製の回収ローラ15b、ブレード15cから構成される。ベルト上に付着したトナーや紙粉等はー400Vが印加された導電性ブラシ15aにより捕集され、捕集されたトナーや紙分等はー700Vが印加された回収ローラ15bに移送され、ブレード15cにより掻き落とされてバイアスクリーナの回収ボックス15d内に集められる。導電性ブラシ15aによる転写ベルト12の表面の清掃は、清掃部材の接触を受けても一定の回転周速で回転するように制御された駆動ローラ13に対向した領域で行われるため、ベルトの走行への影響は無く転写特性上の問題は無い。
【0041】
厚みが80μmの連続紙を通紙し、バイアス電源10により導電性ゴムローラ110の芯金110aに−1200Vの転写電圧を印加し、転写性を評価した。用紙5が感光ドラム1面と接触・ニップする領域幅Wppは、印刷時、ドラム偏芯や用紙走行速度変動等により、5.5〜6.5mmとなる。一方、導電性ゴムローラ110によって用紙5と感光体ドラム1に押しつけられた転写ベルト12の表面が用紙と接触・ニップする領域Wtp(5mm)は、Wpp内に含まれるため、用紙5に接触して回転する転写ベルト及び導電性ゴムローラ110は、高速搬送される用紙の影響を受けず、振動等もなく安定に回転する。この結果、均一な転写が得られることがわかった。転写効率も95%以上の高い転写性能が得られた。
【0042】
また、転写ベルト12は導電性ゴムローラ110の周りを回動するため、一体構造の転写ローラで生じた問題(界面剥離)は発生しない。ここでは転写ベルトとしてカーボンを添加した導電性ウレタンゴムを主材料として押しだし成型により製作されたシームレスベルトを使用したが、フッ素系の導電性ベルトを用いることもできる。
【0043】
また、本実施例ではトナー担持体が正帯電のOPC感光ドラムを用いた場合を示したが、負帯電のOPCドラムでも良い。また、トナー担持体の形状はドラム形状にこだわることなく、ベルト状であっても良いことは言うまでもない。
【実施例2】
【0044】
図2および図4を用いて、本発明の実施例2を説明する。実施例2では、連続紙を静電気録装置に装填時の接触式転写手段の動作を中心に説明する。
【0045】
アルミ製のドラム1aの表面にセレン系の光導電体層1bを表面に形成した感光ドラム1が用いられる。用紙装填時は、接触式転写手段の導電性ゴムローラ110が用紙5,感光ドラム1からリトラクトされる。リクラクト量が大きく、ベルト12に弛みが生じる場合には、圧力9bを加えてテンションローラ14を下方に移動することによりベルトの弛みを低減することができる。
【0046】
図2の例では、連続紙5が,トラクタ3aにより搬送され、用紙ガイド4a、4bにより感光ドラム1に、ドラム静止時にニップ幅Wppが7mmで巻き付けるように設定した。その後,バネ用鋼線材からなるスプリング(図示せず)を用いて、線荷重7×10−3kgf/mmの押圧9aにて従動回転する導電性ゴムローラ110をベルト12,用紙5を介して感光ドラム1に圧接することにより、転写ベルト12の表面が用紙とニップする領域幅Wtpを5.5mmとした。導電性ゴムローラ110は直径16mmの金属棒110aを芯金として厚み22mmのEPDMのゴム層110bを形成したもので、ゴム硬度は40度(JIS−A)、体積抵抗率は10Ω・cmである。転写ベルトである導電性ベルト12はウレタンを主材料として押しだし成型等により製作されたシームレスベルトであり、厚み0.5mm、ベルトの体積抵抗率は1011〜1012Ω・cmである。表面は塩素ガス処理により離型性を有している。感光ドラムのプロセス速度は32.5(インチ/秒)であり、A4カット紙換算で229ppm(頁/分)の高速機である。ベルトの清掃機構16は実施例1と同じものを用いた。
【0047】
実施例1では印刷中、常にベルトの清掃を行う方式を示したが、本実施例では、静電印刷装置の非印刷時、例えば用紙の装填時、あるいは、休止時にベルト12が用紙5と非接触の状態で清掃操作を行うことができる。この場合は駆動ローラ13の回転数を上げることにより、比較的短時間でベルトの清掃を行うことができる。また、導電性ゴムローラ110を圧接し続けることはゴムの劣化の原因となるため、ベルトの清掃後も静電印刷装置が休止時は、リトラクトしておくことが望ましい。
【0048】
印刷中のドラム回転時における用紙5と感光ドラム1面とのニップ領域幅Wppはドラム偏芯等の影響で6.5〜7.5mmの間で変動する。一方、ベルト面と用紙5とのニップ領域幅Wtpは5.5mmで、Wppよりも小さいため、用紙5に接触して従動回転するベルト12は、高速搬送される用紙の影響を受けず、振動等もなく安定に回転する。この結果、均一な転写が得られることがわかった。また、ベルトは導電性ゴム層の表面を改質し、離型性を有する構造のため、清掃性に優れ、かつ、長寿命である。また、転写効率は95%以上と高い転写性能が得られた。本実施例ではトナー担持体が感光ドラムの場合を示したが、感光体ベルトであっても良いことは言うまでもない。
【実施例3】
【0049】
本発明の別の実施例として、連続紙対応のフルカラープリンタに適用した実施例3を、図3を用いて説明する。18はトナー像担持体である中間転写ベルトであり、カーボンブラックを分散したポリイミドベルトで、体積抵抗率が1010Ω・cm,表面抵抗は1012Ω/□である。中間転写ベルト18は駆動ローラ19、ステアリングローラ20a、テンションローラ20b、ローラ21a,21bによって回動される。ここで、駆動ローラ19は直径50mmの金属ローラで、中間転写ベルト18の駆動ローラ19への巻き付け角は40度で、巻き付け幅は約17mmである。また、トラクタ3aにより転写部に送られた連続紙5が中間転写ベルトと接触・ニップする幅Wppは3mmである。22,23,24,25はそれぞれ、Y(イエロ)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)のトナー画像形成手段である。トナー画像形成手段の構成を、K(黒)のトナー画像を形成するトナー画像形成手段25で説明すると、25aは負帯電OPCドラム、25bはレーザ光源やLED等の露光系、25Cは現像機、25dは感光ドラム25a上に形成されたK(黒)のトナー像を中間転写ベルト18に転写するための転写ローラである。また、使用するトナーは負帯電トナーである。
【0050】
負帯電OPCドラムは図3では、駆動ローラ19よりも小さく描かれているが、実際の感光ドラムの直径は100〜150mmである。
【0051】
転写手段は、図4に示した構成の接触式転写手段と同じものである。
導電性ゴムローラ110は直径14mmの金属棒110aを芯金とし、厚み13mmのEPDMの導電性ゴム層を形成したものである。
【0052】
従動回転する導電性ゴムローラ110に押圧を加え、用紙及び中間転写ベルトを介して中間転写ベルトの駆動ローラ19への圧接力とした。ベルト面と用紙との接触幅Wtpは2.6mmに設定した。フルカラープリンタのプロセス速度は20(インチ/秒)である。印刷が開始するとY、M、C、Kの画像形成手段から中間転写ベルト18上に、それぞれ順にY、M、C、Kのトナー画像が転写され、転写部に至る。
【0053】
この例では、使用するトナーが負帯電トナーであるので、導電性ゴムロ−ラ11の芯金110aにはバイアス電源10により+1000Vの転写電圧が印加され、これにより中間転写ベルト18上に形成されたトナー画像が用紙5に一括転写される。
【0054】
本構成の中間転写ベルトの回動手段であり、ベルト12や用紙と接触する駆動ローラ19の直径は、50mmと比較的小径であるため、回転偏芯量は極めて小さい。このため、中間転写ベルトが回転中に連続紙5と接触・ニップする領域幅Wppは3mmに保持される。
【0055】
一方、転写ローラ面と用紙との接触幅Wtpは2.6mmで、Wppよりも小さい。このため、用紙5と接触するベルト12は用紙走行時の振動を受けることなく安定に回転し、画質が均一で良好な転写が得られることがわかった。また、従来の転写ローラに比べて、本発明の接触式転写手段は長寿命であり、連続紙対応の高速フルカラーの静電印刷装置に適する。本実施例では中間転写ベルトを用いたカラープロセスの場合を示したが、カラープロセスとしては、感光体ベルト上でY、M、C、Kの4色のトナー像の色重ねを行い、用紙上に一括転写する方式がある。この場合は、図3において、中間転写ベルト18が感光体ベルトに相当し、トナー画像形成手段22、23,24,25が、それぞれ、Y、M、C、Kの現像機に相当することになる。この場合にも、本発明は適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
電子写真方式を用いた静電印刷装置であるプリンタは高速で可変情報を用紙等の記録媒体に印刷できるという特長を活かし、業務用印刷の分野から個人用途まで幅広い分野で使用されるようになった。特に、用紙としてローラ紙やボックス紙(ミシン目有り)等の連続紙に印刷する連続紙プリンタは、カット紙のような用紙搬送時の用紙ジャム発生という問題がないため、薄紙、厚紙、粗面紙等の多種用紙を高速で搬送して印刷できるという特長がある。その用途は、ダイレクトメール、マニュアルや書物等のBook印刷まで拡がっており、より高精細・高画質、カラー化に対応する必要がある。加えて、地球環境の保護の面から両面印刷による紙使用量の削減、再生パルプを用いた再生紙や粗面紙の使用等が望まれている。このための主要技術は表面の凹凸の大きな用紙やカラー印刷時の多層トナー像の均一な転写技術である。
本発明は、これに対応できる長寿命で均一な転写が可能な接触式転写手段と、これを用いた連続紙対応静電印刷装置を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施例になる接触式転写手段を示す図。
【図2】本発明の第2の実施例になる接触式転写手段を示す図。
【図3】本発明の第3の実施例になる接触式転写を示す図。
【図4】本発明の各実施例に採用される転写手段の具体的な構成例を示す図。
【図5】転写ローラを用いた連続紙プリンタの転写部の構成を説明する図。
【図6】連続紙プリンタに転写ローラを適用する場合の課題を説明する図。
【図7】転写ローラの断面を示す図。
【図8】従来の転写ローラを用いたカット紙プリンタの転写部の構成を説明する図。
【図9】従来の転写ベルトを用いたカット紙プリンタの転写部の構成を説明する図。
【符号の説明】
【0058】
1:感光ドラム
2:トナー像
3:トラクタ
4b:出口側用紙ガイド
5:連続紙
6:転写ローラ
8:表面離型層
9:圧力
11:導電性ゴムローラ
12:転写ベルト
13:転写ベルトの駆動ローラ
14:テンションローラ
18:中間転写ベルト
19:中間転写ベルトの駆動ローラ
27:連続紙とトナー像担持体の接触・ニップ領域近傍の空隙
28:連続紙に働く張力
29:良好な転写領域
30:転写不良領域
31:カット紙
32:レジストローラ
33:案内部材
37:コロナ転写器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像担持体上に形成されたトナー像を転写材に転写する転写手段であって、
導電性ベルトと、該導電性ベルトを駆動する駆動ローラと、前記導電性ベルトに従動して回転する導電性ゴムローラ及びテンションローラを含み、
前記導電性ゴムローラの芯金にトナーと逆極性の電圧を印加する電源を有し、
前記導電性ゴムローラと前記テンションローラのうちの少なくとも前記導電性ゴムローラの位置が変更可能であり、該位置の変更により、前記導電性ベルトを前記転写材や前記トナー像担持体に対して接触もしくは非接触のいずれかの状態に選択できるように構成されており、
前記導電性ベルトを介して前記導電性ゴムローラを前記転写材と前記トナー像担持体に圧接することにより、前記導電性ベルトと前記転写材との間に転写ニップ領域を形成する、
ことを特徴とする接触式転写手段。
【請求項2】
前記導電性ゴムローラの前記導電性ベルトへの圧接力を変えることにより、前記導電性ベルトと前記転写材との接触領域幅を可変としたことを特徴とする請求項1に記載の接触式転写手段。
【請求項3】
前記導電性ベルトが導電性ゴムであって、表面がフッ素あるいは塩素ガスにより表面改質されていることを特徴とする請求項1または2に記載の接触式転写手段。
【請求項4】
トナー像担持体と、該トナー像担持体上にトナー像を形成する画像形成手段と、転写材搬送手段と、前記トナー像担持体上に形成されたトナー像を転写材に転写する接触式転写手段とを有し、
前記トナー像担持体が、少なくとも転写領域において曲面形状を成し、かつ、前記転写材が連続紙であり、
該転写材の搬送方向に対して前記転写領域の上流側に設けられた第1用紙ガイドと下流側に設けられた第2用紙ガイドによって、前記転写材が前記トナー像担持体に巻き付けられることにより、該転写材と前記トナー像担持体にニップ領域が形成されるものであり、
前記接触式転写手段が、導電性ベルトと、該導電性ベルトを駆動する駆動ローラと、前記導電性ベルトに従動して回転する導電性ゴムローラ及びテンションローラを含み、前記導電性ゴムローラの芯金にトナーと逆極性の電圧を印加する電源を有し、前記導電性ゴムローラと前記テンションローラのうちの少なくとも前記導電性ゴムローラの位置が変更可能であり、該位置の変更により、前記導電性ベルトを前記転写材や前記トナー像担持体に対して接触もしくは非接触のいずれかの状態に選択できるように構成されており、
前記導電性ベルトを介して前記導電性ゴムローラを前記転写材と前記トナー像担持体に圧接することにより、前記導電性ベルトと前記転写材との間に転写ニップ領域を形成するように構成されている、ことを特徴とする連続紙対応静電印刷装置。
【請求項5】
前記導電性ベルトが導電性ゴムであって、表面がフッ素あるいは塩素ガスにより表面改質されていることを特徴とする請求項4に記載の連続紙対応静電印刷装置。
【請求項6】
前記転写領域において、前記接触式転写手段と前記転写材との間に形成される接触領域幅が、前記転写材と前記トナー像担持体との接触幅よりも小さくなるように、前記導電性ゴムローラの圧接力を調整することを特徴とする請求項4または5に記載の連続紙対応静電印刷装置。
【請求項7】
前記転写材搬送手段により前記連続紙が装填される際は、前記第1用紙ガイドと前記第2用紙ガイドによって、前記転写材が前記トナー像担持体に巻き付けが完了するまで、前記導電性ベルトが前記転写材やトナー像担持体に対して接非接触状態となるように、前記導電性ゴムローラを退避する機構を有することを特徴とする請求項4または5に記載の連続紙対応静電印刷装置。
【請求項8】
前記接触式転写手段により前記転写材を前記トナー像担持体に圧接する圧力が180g/cm以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の連続紙対応静電印刷装置。
【請求項9】
前記トナー像担持体が、感光ドラム、感光体ベルト、中間転写ベルトであることを特徴とする請求項4または5に記載の連続紙対応静電印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−218949(P2007−218949A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36147(P2006−36147)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】