説明

描画装置

【課題】溶存気体の含有量が少ないインクがインク供給装置の内部に留まることで、溶存気体の含有量が少ないことに起因する不具合が発生することを抑制することができる、描画装置及びインク供給装置を提供する。
【解決手段】描画装置は、活性エネルギーを受けることによって硬化する性質を有するインクを貯留するインク貯留部と、インクを吐出する吐出ヘッドと、インクを吐出ヘッドに導く導液路と、導液路から分岐し、導液路内のインクを排出する排出路と、排出されたインクを貯留する排出インク貯留部と、導液路に設けられた切替部と、排出インク貯留部におけるインクの気体の溶存量を増加させる溶存気体増加部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出する吐出装置にインクを供給するインク供給装置、及びインクを吐出する吐出装置を備え、吐出装置から被描画媒体に向けてインクを吐出し、被描画媒体上にインクを配置して描画する描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液状体を吐出する吐出ヘッドを備え、吐出した液滴を被描画媒体の任意の位置に着弾させることによって、被描画媒体上に任意の画像などを描画する描画装置が知られている。例えばインクジェット方式の吐出ヘッドを備える描画装置は、所定の量のインクを所定の位置に精度よく配置することができる。このような吐出ヘッドの多くは、インクに溶存する溶存気体が増加すると、正常な吐出が困難になり、吐出量や着弾位置の精度が損なわれる可能性が高くなるという課題があった。
【0003】
インクの溶存気体を減少させるために、減圧機構を設けて、インク循環機構の外部インクタンク内のインクから溶存気体を脱気する描画装置が提案されている。特許文献1には、インクジェットプリンターに搭載される装置として好適に使用できる、脱気用中空糸膜モジュール及びこれを用いた脱気装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−114170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インクジェットプリンターで用いられるインクの中には、溶存気体の含有量が減少することによってインクの寿命が短くなるものがある。例えば、溶存酸素によって重合開始剤の活動が阻害されるようなインクが存在する。一般的に、溶存気体が脱気されることによって溶存酸素も脱気される。したがって、溶存酸素によって重合開始剤の活動が阻害されるようなインクにおいては、溶存気体が脱気されることによって、重合開始剤の活動が活発になる。重合開始剤の活動が活発になることによって、インクの硬化が促進される。これにより、吐出用のインクとしての機能が損なわれるまでの時間、すなわち吐出用のインクとしての寿命が短くなるという課題があった。インクが描画装置のタンクに貯留されている状態で、重合開始剤の活動が活発になることによって、当該インクが、吐出用として不適切なものとなり、廃棄することが必要になる可能性もあるという課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる描画装置は、活性エネルギーを受けることによって硬化する性質を有するインクを貯留するインク貯留部と、前記インクを吐出する吐出ヘッドと、前記インクを前記吐出ヘッドに導く導液路と、前記導液路から分岐し、前記導液路内の前記インクを排出する排出路と、排出された前記インクを貯留する排出インク貯留部と、前記導液路に設けられた切替部と、前記排出インク貯留部における前記インクの気体の溶存量を増加させる溶存気体増加部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本適用例にかかる描画装置によれば、切替部が、インクを導く先を、吐出ヘッド又は排出インク貯留部に切り替えるため、吐出ヘッドが稼働していない場合には、インクを導く先を排出インク貯留部に切り替えて、脱気されたインクを、排出インク貯留部に送ることができる。これにより、脱気されたインクが導液路に留まることを抑制することができる。溶存気体増加部は、排出インク貯留部におけるインクの気体の溶存量を増加させる。これにより、脱気されたインクの溶存気体を増加させることができる。溶存気体を増加させることで、溶存気体が減少することに起因して硬化し易くなる特性を有するインクを、脱気されたままである場合にくらべて、硬化し難くすることができる。溶存気体が減少することに起因して硬化し易くなる特性を有するインクは、例えば、重合開始剤が活性化することで、硬化が促進されるインクであって、例えば溶存酸素によって、重合開始剤の活動が抑制されるインクである。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる描画装置は、前記切替部が前記インクを導く先が前記吐出ヘッドに切り替えられた状態において前記溶存気体増加部を稼働させる溶存気体増加部制御部をさらに備えることが好ましい。
【0010】
この描画装置によれば、インクを導く先が吐出ヘッドに切り替えられた状態で、溶存気体増加部が稼働させられる。したがって、吐出ヘッドにインクが送られている状態で、溶存気体増加部による溶存気体を増加させる工程が実施される。これにより、吐出ヘッドによる吐出の実施と略並行して、溶存気体増加部による溶存気体を増加させる工程を実施することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる描画装置において、前記溶存気体増加部は、気体を前記排出インク貯留部に送り込むことが好ましい。
【0012】
この描画装置によれば、溶存気体増加部によって、気体が排出インク貯留部に送り込まれる。排出インク貯留部に送り込まれた気体によって、排出タンク内のインクに接触する気体の圧力が高くなり、当該気体をインクに溶け込ませて、インクの溶存気体を増加させることができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる描画装置において、前記導液路に、前記インクの溶存気体を脱気する脱気部が設けられていることが好ましい。
【0014】
この描画装置によれば、溶存気体脱気部が、導液路においてインクを脱気して、溶存気体を減少させる。これにより、脱気されて溶存気体が減少したインクを吐出ヘッドに供給することができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例にかかる描画装置において、前記排出インク貯留部は、前記インク貯留部であることが好ましい。
【0016】
この描画装置によれば、排出インク貯留部は、吐出ヘッドに供給されるインクを貯留するインク貯留部である。これにより導液路から戻ったインクを、吐出ヘッドに供給することができる。溶存気体増加部は、インク貯留部におけるインクの溶存気体を増加させる。これにより、インク貯留部におけるインクが、溶存気体が減少することに起因して硬化し易くなることを抑制することができる。また、インク貯留部から導液路、及び排出路を通ってインク貯留部に戻る流路において、インクを循環させることができる。排出インク貯留部で導入した気体が溶けているインクを再度吐出ヘッドに導くことができない。そのため、導液路に脱気部を設けることでインクから気体を取り除き再度吐出ヘッドにインクを導くことが可能になる。
【0017】
[適用例6]上記適用例にかかる描画装置は、前記排出インク貯留部から前記インク貯留部へ前記インクを戻すための接続路、をさらに備えることが好ましい。
【0018】
この描画装置によれば、接続路を介して、インクが排出インク貯留部からインク貯留部に送られる。これにより、排出インク貯留部において溶存気体増加部によって溶存気体を増加させたインクを、インク貯留部に戻すことができる。すなわち、溶存気体が減少することに起因して硬化し易くなることを抑制したインクを、インク貯留部に戻して貯留し、吐出ヘッドに供給することができる。また、インク貯留部から導液路、排出路、排出インク貯留部、及び接続路を通ってインク貯留部に戻る流路において、インクを循環させることができる。排出インク貯留部で導入した気体が溶けているインクを再度吐出ヘッドに導くことができない。そのため、導液路に脱気部を設けることでインクから気体を取り除き再度吐出ヘッドにインクを導くことが可能になる。
【0019】
[適用例7]上記適用例にかかる描画装置は、前記インクが、重合性化合物、及び重合開始剤を含むことが好ましい。
【0020】
この描画装置によれば、インクは、重合性化合物、及び重合開始剤を含む。当該インクは、重合開始剤が活性化することで、重合性化合物が重合して硬化する。例えば溶存酸素は、重合開始剤の活動を抑制することができるため、溶存気体増加部によって溶存気体を増加させることで、溶存気体が減少することに起因して重合開始剤が活性化することを抑制することができる。これにより、インクが硬化することを抑制することができる。
【0021】
[適用例8]上記適用例にかかる描画装置は、前記インクが、光硬化型のインクであることが好ましい。
【0022】
この描画装置によれば、インクは、光硬化型のインクである。光硬化型のインクは、例えば紫外線などの光が照射されることによって、例えば重合開始剤が活性化することで、硬化する。例えば溶存酸素は、重合開始剤の活動を抑制することができるため、溶存気体増加部によって酸素を含む溶存気体を増加させることで、光硬化型のインクが硬化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】液滴吐出装置全体の概略構成を示す外観斜視図。
【図2】インク供給部の構成を示す模式図。
【図3】インク供給部の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、描画装置について、図面を参照して説明する。本実施形態は、描画装置としての液滴吐出装置、及び液滴吐出装置が備えるインク供給部を例にして説明する。当該液滴吐出装置は、インクジェット方式の液滴吐出ヘッドを備える装置である。なお、以下の説明において参照する図面では、図示の便宜上、部材又は部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0025】
<液滴吐出装置>
最初に、液滴吐出装置1の全体構成について、図1を参照して説明する。図1は、液滴吐出装置全体の概略構成を示す外観斜視図である。
【0026】
図1に示すように、液滴吐出装置1は、ヘッド機構部2と、ワーク機構部3と、インク供給部4と、保守装置部5と、吐出装置制御部7と、支持脚8と、定盤9とを備えている。ヘッド機構部2は、インク40(図2参照)を液滴として吐出する液滴吐出ヘッド20を有している。ワーク機構部3は、液滴吐出ヘッド20から吐出された液滴の吐出対象であるワークWを載置するワーク載置台33を有している。
インク供給部4は、インクタンク41や、供給管61(図2参照)などを有し、当該供給管61などを介して、インク40がインクタンク41から液滴吐出ヘッド20に供給される。保守装置部5は、液滴吐出ヘッド20の検査又は保守を実施する各装置を備えている。吐出装置制御部7は、これら各機構部などを総括的に制御する。複数の支持脚8が床上に設置されており、複数の支持脚8の上に定盤9が設置されている。ヘッド機構部2やワーク機構部3は、定盤9の上に配設されている。
【0027】
ヘッド機構部2は、液滴吐出ヘッド20を有するヘッドユニット21と、ヘッドユニット21を支持するヘッドキャリッジ22とを有し、ヘッドキャリッジ22をY軸方向に移動させることで、液滴吐出ヘッド20をY軸方向に自在に移動させる。また、移動した位置に保持する。ワーク機構部3は、ワーク載置台33をX軸方向に移動させることで、ワーク載置台33に載置されたワークWをX軸方向に自在に移動させる。また、移動した位置に保持する。
【0028】
液滴吐出ヘッド20を、Y軸方向の吐出位置まで移動させて停止させ、下方にあるワークWのX軸方向の移動に同調させて、インク40を液滴として吐出させる。X軸方向に移動させるワークWと、Y軸方向に移動させる液滴吐出ヘッド20とを相対的に制御することにより、ワークW上の任意の位置に液滴を着弾させることで、所望する描画などを行うことが可能である。
【0029】
インク供給部4は、インクタンク41や、供給管62や、循環管64や、脱気ユニット71や、加圧ユニット72や、バルブ保持枠44や、切替バルブ43などを有している。バルブ保持枠44は、ヘッド機構部2のヘッドキャリッジ22に固定されている。切替バルブ43は、バルブ保持枠44に保持されることで、バルブ保持枠44を介してヘッドキャリッジ22に固定されている。ヘッドキャリッジ22に固定された切替バルブ43は、液滴吐出ヘッド20のY軸方向の移動と一緒に、Y軸方向に移動する。
液滴吐出ヘッド20が、吐出ヘッドに相当する。インク供給部4が、インク供給装置に相当する。
【0030】
<インク供給部>
次に、インク供給部4の構成について、図2を参照して詳細に説明する。図2は、インク供給部の構成を示す模式図である。
図2に示すように、インク供給部4は、インクタンク41と、切替バルブ43と、脱気ユニット71と、圧力調整弁77と、配管接続部材67と、を備えている。また、これらのタンクなどの間及び液滴吐出ヘッド20を連通しており、インク40をインクタンク41から液滴吐出ヘッド20へ供給するための流路を構成する供給管61、供給管62、供給管63、循環管64、及び配液管66を備えている。インク供給部4は、また、加圧ユニット72及びポンプ73を備えている。ポンプ73は、インク40をインクタンク41から液滴吐出ヘッド20へ送る圧力をインク40に付与する。加圧ユニット72は、空気をインクタンク41に供給し、インクタンク41の内圧を高くする。
脱気ユニット71と、加圧ユニット72と、ポンプ73と、切替バルブ43とは、図2に破線で示したように吐出装置制御部7と電気的に接続されており、吐出装置制御部7によって制御される。液滴吐出ヘッド20も、吐出装置制御部7と電気的に接続されており、吐出装置制御部7によって制御される。
【0031】
インクタンク41と脱気ユニット71とは、供給管61を介して連通している。ポンプ73が供給管61の途中に配設されている。インク40は、ポンプ73によって、供給管61を経由してインクタンク41から脱気ユニット71に送出される。インクタンク41は、液滴吐出ヘッド20に送出するインクを貯留するためのタンクである。
上述したように、バルブ保持枠44は、ヘッド機構部2のヘッドキャリッジ22に固定されている。切替バルブ43は、バルブ保持枠44に保持されることで、バルブ保持枠44を介してヘッドキャリッジ22に固定されている。ヘッドキャリッジ22に固定された切替バルブ43は、液滴吐出ヘッド20のY軸方向の移動と一緒に、Y軸方向に移動する。
【0032】
脱気ユニット71と切替バルブ43とは、供給管62を介して連通している。したがって、インクタンク41と切替バルブ43とは、供給管61、脱気ユニット71、及び供給管62を介して連通している。インクタンク41と切替バルブ43とは、また、循環管64を介しても連通している。インク40は、ポンプ73によって、供給管61、脱気ユニット71、及び供給管62を経由して、インクタンク41から切替バルブ43に送出される。
切替バルブ43には、液滴吐出ヘッド20の方にインクを送出する経路である供給管63も接続されている。切替バルブ43は、供給管62に連通する流路を、循環管64又は供給管63に切替える。
【0033】
切替バルブ43によって、供給管62に連通する流路が、供給管63に接続されている状態では、切替バルブ43に供給されたインク40は液滴吐出ヘッド20に供給される。インクタンク41から切替バルブ43に供給されるインク40は、途中の脱気ユニット71を通過する際に、脱気される。このため、液滴吐出ヘッド20に供給されるインク40は、溶存気体が脱気されたものである。
【0034】
切替バルブ43によって、供給管62に連通する流路が、循環管64に接続されている状態では、切替バルブ43に供給されたインク40は、循環管64を経由して、インクタンク41に戻される。インクタンク41と、供給管61と、脱気ユニット71と、供給管62と、切替バルブ43と、循環管64とを備える、循環路が形成されており、当該循環路において、インク40を循環させることができる。循環路において、インク40を循環させることにより、インク40に含まれる顔料などが沈降することを抑制することができる。
【0035】
インクタンク41には、加圧ユニット72が接続されており、上述したように、加圧ユニット72は、空気をインクタンク41に供給する。切替バルブ43によって、供給管62に連通する流路が、循環管64に接続されている状態では、加圧ユニット72によって空気がインクタンク41に送り込まれることで、インクタンク41内の気圧が高くなる。インクタンク41内の気圧が高くなることによって、空気に含まれる酸素などが、インクタンク41内のインク40の溶存気体となる。脱気ユニット71で脱気されて、循環管64を経由して、インクタンク41に戻されたインク40にも、加圧ユニット72によって、溶存気体が付加される。
【0036】
インク40を液滴吐出ヘッド20に供給することを必要としていない場合は、流路を循環管64側に切り替えて、インク40を循環させることができる。インク40を液滴吐出ヘッド20に供給することを必要としている場合は、液滴吐出ヘッド20からインク40を吐出している場合や、液滴吐出ヘッド20からインク40が吸引されている場合などである。その他の場合には、インク40を循環させることができる。例えば、休止期間や、立ち上げ時にも、インク40を循環させてもよい。
【0037】
切替バルブ43と圧力調整弁77とは、供給管63を介して連通している。
圧力調整弁77は調整弁支持枠77aに固定されて支持されている。調整弁支持枠77aは、ヘッドユニット21を構成するユニットプレート23に固定されている。したがって、圧力調整弁77は、調整弁支持枠77aを介して、ユニットプレート23に固定されている。圧力調整弁77は、例えば大気圧を利用して、流入したインク40の液圧を一定の液圧に調整して出力する。圧力調整弁77によって、液滴吐出ヘッド20に供給されるインク40の液圧が一定の液圧に調整される。
圧力調整弁77と液滴吐出ヘッド20とは、配液管66を介して連通している。配液管66の液滴吐出ヘッド20側は、2本に分岐しており、分岐した先端には、それぞれ配管接続部材67が固定されている。配管接続部材67が液滴吐出ヘッド20の接続針26と嵌合して、接続針26に形成された導入孔を介して、液滴吐出ヘッド20の内部と配液管66の流路とが連通されている。
【0038】
上述したように、インク40は、ポンプ73によって、送出される。インク40は、インクタンク41から供給管61を介して脱気ユニット71へ至り、脱気ユニット71から供給管62を介して切替バルブ43に至る。インク40は、インクタンク41と、供給管61と、脱気ユニット71と、供給管62と、切替バルブ43と、循環管64とを備える循環路を循環しながら、インク供給部4の内部に保持されている。
【0039】
液滴吐出ヘッド20からインク40が吐出される場合には、切替バルブ43は、供給管62に連通する流路を、循環管64から、供給管63に切替える。循環路を循環していたインク40は、供給管63及び配液管66を介して、切替バルブ43から液滴吐出ヘッド20に、供給される。インク40は、供給管61と供給管62との間に配置された脱気ユニット71によって溶存気体が脱気され、圧力調整弁77によって適切な圧力に調整されて、液滴吐出ヘッド20に供給される。
【0040】
インクタンク41が、インク貯留部に相当すると共に、排出インク貯留部に相当する。供給管61、脱気ユニット71、供給管62、供給管63、及び配液管66が、導液路に相当する。切替バルブ43が、切替部に相当する。循環管64が、排出路に相当する。脱気ユニット71が、脱気部に相当する。加圧ユニット72が、溶存気体増加部に相当する。
【0041】
<他のインク供給部>
次に、インク供給部4とは一部が異なる構成を有するインク供給部104の構成について、図3を参照して説明する。図3は、インク供給部の構成を示す模式図である。図3において、インク供給部104の構成要素におけるインク供給部4の構成要素と略同等の構成要素には、同じ符号を付してある。インク供給部104は、液滴吐出装置1と同様の装置におけるインク供給装置である。
【0042】
図3に示すように、インク供給部104は、インクタンク141と、切替バルブ43と、循環路タンク142と、脱気ユニット71と、圧力調整弁77と、配管接続部材67と、を備えている。また、これらのタンクなどの間及び液滴吐出ヘッド20を連通しており、インク40をインクタンク141から液滴吐出ヘッド20へ供給するための流路を構成する供給管61、供給管62、供給管63、配液管66、循環管164、及びタンク循環管165、を備えている。インク供給部104は、また、加圧ユニット72、ポンプ73、及びタンクバルブ42を備えている。ポンプ73は、インク40をインクタンク141から液滴吐出ヘッド20へ送る圧力をインク40に付与する。加圧ユニット72は、空気を循環路タンク142に供給する。
【0043】
脱気ユニット71と、加圧ユニット72と、ポンプ73と、切替バルブ43と、タンクバルブ42とは、図3に破線で示したように吐出装置制御部7と電気的に接続されており、吐出装置制御部7によって制御される。液滴吐出ヘッド20も、吐出装置制御部7と電気的に接続されており、吐出装置制御部7によって制御される。
【0044】
インクタンク141と脱気ユニット71とは、供給管61を介して連通している。ポンプ73が供給管61の途中に配設されている。インク40は、ポンプ73によって、供給管61を経由してインクタンク141から脱気ユニット71に送出される。インクタンク141は、液滴吐出ヘッド20に送出するインクを貯留するためのタンクである。
上述したインク供給部4と同様に、インク供給部104のバルブ保持枠44は、ヘッド機構部2のヘッドキャリッジ22に固定されている。切替バルブ43は、バルブ保持枠44に保持されることで、バルブ保持枠44を介してヘッドキャリッジ22に固定されている。ヘッドキャリッジ22に固定された切替バルブ43は、液滴吐出ヘッド20のY軸方向の移動と一緒に、Y軸方向に移動する。
【0045】
脱気ユニット71と切替バルブ43とは、供給管62を介して連通している。したがって、インクタンク141と切替バルブ43とは、供給管61、脱気ユニット71、及び供給管62を介して連通している。切替バルブ43と循環路タンク142とは、循環管164を介して連通している。循環路タンク142とインクタンク141とは、タンク循環管165を介して連通している。タンクバルブ42がタンク循環管165の途中に配設されている。したがって、インクタンク141と切替バルブ43とは、循環管164、循環路タンク142、及びタンク循環管165を介しても連通している。
インク40は、ポンプ73によって、供給管61、脱気ユニット71、及び供給管62を経由してインクタンク141から切替バルブ43に送出される。
切替バルブ43には、液滴吐出ヘッド20にインクを送出する経路である供給管63も接続されている。切替バルブ43は、供給管62に連通する流路を、循環管164又は供給管63に切替える。
【0046】
切替バルブ43によって、供給管62に連通する流路が、供給管63に接続されている状態では、切替バルブ43に供給されたインク40は液滴吐出ヘッド20に供給される。インクタンク141から切替バルブ43に供給されるインク40は、途中の脱気ユニット71を通過する際に、脱気される。このため、液滴吐出ヘッド20に供給されるインク40は、溶存気体が脱気されたものである。
【0047】
切替バルブ43によって、供給管62に連通する流路が、循環管164に接続されている状態では、切替バルブ43に供給されたインク40は、循環管164を経由して、循環路タンク142に送られる。
循環路タンク142には、加圧ユニット72が接続されており、上述したように、加圧ユニット72は、空気を循環路タンク142に供給する。切替バルブ43によって、供給管62に連通する流路が、循環管164に接続されており、タンク循環管165に設けられたタンクバルブ42が閉じられている状態では、加圧ユニット72によって循環路タンク142に空気が送り込まれることで、循環路タンク142内の気圧が高くなる。循環路タンク142内の気圧が高くなることによって、空気に含まれる酸素などが、循環路タンク142内のインク40の溶存気体となる。脱気ユニット71で脱気されて、循環管164を経由して、循環路タンク142に送られたインク40に、加圧ユニット72によって、溶存気体が付加される。
【0048】
インクタンク141と、供給管61と、供給管62と、切替バルブ43と、循環管164と、循環路タンク142と、タンク循環管165と、を備える循環路が形成されている。供給管62に連通する流路が、循環管164に接続されており、タンクバルブ42が開放されている状態で、当該循環路において、インク40を循環させることができる。循環路において、インク40を循環させることにより、インク40に含まれる顔料などが沈降することを抑制することができる。
【0049】
インク40を液滴吐出ヘッド20に供給することを必要としていない場合は、流路を循環管164側に切り替えて、インク40を循環させることができる。インク40を液滴吐出ヘッド20に供給することを必要としている場合は、液滴吐出ヘッド20からインク40を吐出している場合や、液滴吐出ヘッド20からインク40が吸引されている場合などである。その他の場合には、インク40を循環させることができる。例えば、休止期間や、立ち上げ時にも、インク40を循環させてもよい。
【0050】
上述したように、インク40は、ポンプ73によって、送出される。インク40は、インクタンク141から供給管61を介して脱気ユニット71へ至り、脱気ユニット71から供給管62を介して切替バルブ43に至る。インク40は、インクタンク141と、供給管61と、脱気ユニット71と、供給管62と、切替バルブ43と、循環管164と、循環路タンク142と、タンク循環管165と、を備える循環路を循環しながら、インク供給部104の内部に保持されている。
【0051】
液滴吐出ヘッド20からインク40が吐出される場合には、切替バルブ43は、供給管62に連通する流路を、循環管164から、供給管63に切替える。切替バルブ43から液滴吐出ヘッド20に至る構成は、インク供給部4と同様である。循環路を循環していたインク40は、供給管63及び配液管66を介して、切替バルブ43から液滴吐出ヘッド20に、供給される。インク40は、供給管61と供給管62との間に配置された脱気ユニット71によって溶存気体が脱気され、圧力調整弁77によって適切な圧力に調整されて、液滴吐出ヘッド20に供給される。
【0052】
インクタンク141が、インク貯留部に相当する。循環路タンク142が、排出インク貯留部に相当する。供給管61、脱気ユニット71、供給管62、供給管63、及び配液管66が、導液路に相当する。切替バルブ43が、切替部に相当する。循環管164が、排出路に相当する。脱気ユニット71が、溶存気体脱気部に相当する。加圧ユニット72が、溶存気体増加部に相当する。タンク循環管165が、接続路に相当する。
【0053】
<インク>
インク40は、例えば、紫外線硬化型インクである。本実施形態におけるインク(以下、「インク組成物」ともいう。)の組成は、特に限定されない。インクが紫外線硬化型インクである場合、重合性化合物及び光重合開始剤を少なくとも含む。さらに、上記インクがクリアインク以外の有色インクである場合には、色材も含む。以下、インク組成物に含まれるか又は含まれ得る各成分を説明する。
【0054】
(重合性化合物)
重合性化合物は、後述する光重合開始剤の作用により紫外線の照射時に重合し、固化する化合物であれば、特に制限はない。例えば、単官能基、2官能基、及び3官能基以上の多官能基を有する種々のモノマー及びオリゴマーが使用可能である。
【0055】
ここで、本明細書における「モノマー」とは、重量平均分子量が100〜3,000の分子を意味する。本明細書における「オリゴマー」とは、重量平均分子量が500〜20,000の分子を意味する。
【0056】
上記モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸やそれらの塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタンが挙げられる。
他の単官能モノマーや多官能モノマーとして、N−ビニル化合物を含んでいてもよい。N−ビニル化合物としては、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、及びそれらの誘導体等が挙げられる。
【0057】
また、上記オリゴマーとしては、例えば、直鎖オリゴマーや多分岐オリゴマー等の上記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0058】
上記で列挙したものの中でも(メタ)アクリル酸のエステル、即ち(メタ)アクリレートが好ましい。重合性化合物として(メタ)アクリレートを使用した場合、インクの硬化性、及び硬化膜の被着体への密着性を良好にすることができる。
なお、本明細書における「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びそれに対応するメタクリルを意味する。
【0059】
上記(メタ)アクリレートのうち、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0060】
上記(メタ)アクリレートのうち、2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0061】
上記(メタ)アクリレートのうち、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0062】
これらの中でも、硬化時の塗膜(塗布層)の伸び性が高く、且つ低粘度であるため、インクジェット記録時の射出安定性が得られやすいという観点から、重合性化合物として、単官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。さらに塗布層の硬さが増すという観点から、単官能(メタ)アクリレートと2官能(メタ)アクリレートとを併用することがより好ましい。
【0063】
上記で列挙した(メタ)アクリレートの中でも、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び1,6−ヘキサンジオールアクリレートからなる群より選択される一種以上が好ましく、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートのうち少なくとも一方がより好ましい。この場合、粘度、硬化性、及び皮膚刺激性のバランスに優れるため、吐出の際に粘度の影響を受けやすいインクジェット用インクに有効であり、かつ皮膚刺激性も少なくなる。
また、光重合性化合物は、(メタ)アクリレートモノマーに加えて従来公知の(メタ)アクリレートオリゴマーをさらに含んでもよい。
上記の重合性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
(光重合開始剤)
重合開始剤は、紫外線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば特に制限されない。ラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤を使用することができ、中でもラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。ラジカル重合開始剤を使用することにより、カチオン重合の場合のような湿度による重合阻害を受けないため、印字環境を選ばないという有利な効果が得られる。また、ラジカル重合開始剤は、酸素阻害があり、インク中の溶存酸素により反応性が変化する。
なお、カチオン重合開始剤として、特に限定されないが、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメ−ジング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ、技術情報協会、「光硬化技術」、2001年に紹介されている光酸発生剤)。本実施形態に好適な化合物例として、まず、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム等の芳香族オニウム化合物のB(C6F5)4−,PF6−,AsF6−,SbF6−,CF3SO3−塩を挙げることができる。対アニオンとしてボレート化合物を持つものが、酸発生能力が高いため、好ましい。また、スルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、及び鉄アレン錯体も好適に挙げられる。カチオン重合開始剤の市販品として、例えばUV1−6992(トリフェニルスルフォニウム塩、ダウケミカル社(The Dow Chemical Company)製)等が挙げられる。
【0065】
上記のラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
【0066】
ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドが挙げられる。
【0067】
ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸)、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、チバ・ジャパン社(Ciba Japan K.K.)製)、KAYACURE DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、及びユベクリルP36(UCB社製)などが挙げられる。
上記光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
(色材)
本実施形態におけるインク組成物は、色材をさらに含んでもよい。上記色材は、顔料及び染料のうち少なくとも一方である。これらの中でも、撹拌しながら超音波脱気を行うことを特徴とするインクジェット記録方法及びこれに使用するインクジェット記録装置を適用する効果が非常に大きいため、液体の一例であるインク(インクジェット記録用インク)は顔料を含有する液体組成物であることが好ましく、金属酸化物を含有する液体組成物であることがより好ましく、顔料系のホワイトインクであることがさらに好ましい。
【0069】
(1.顔料)
本実施形態において、色材として顔料を用いることにより、インク組成物の耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
【0070】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。これらの中でも、上述したように、顔料系インクがホワイトインクの場合、白色度を良好に維持する観点から、酸化チタンを使用することが好ましい。
【0071】
また、有機顔料として、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
【0072】
上記顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水に不溶であればいずれも使用できる。
【0073】
(2.染料)
本実施形態において、色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料及び塩基性染料が使用可能である。上記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。
【0074】
また、上記のインク組成物は、色材を含まないクリアインクにも適用可能である。つまり、顔料を含まないクリアインクにおいても、超音波脱気を行う超音波脱気工程を有するシステムにより、優れた印字安定性を達成できる。これに加えて攪拌機構も備えることによりこの脱気工程をさらに有効に活用できるが、この場合、この脱気工程は粘度の高いインクにおいて一層顕著にその有効性を得ることができる。
【0075】
また、上記顔料は、後述する分散剤又は界面活性剤中に分散させて用いることができる。
【0076】
(その他の成分)
本実施形態におけるインク組成物は、上記に挙げた成分以外の成分を含んでもよい。当該成分として、特に限定されないが、例えば分散剤が挙げられる。
【0077】
上記の分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、味の素ファインテクノ(株)製のアジスパーシリーズ、アビシア(株)製のソルスパーズシリーズ、BYKChemie社製のディスパービックシリーズ、楠本化成(株)製のディスパロンシリーズ等が挙げられる。上記高分子分散剤として、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、並びにエポキシ樹脂等のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。
【0078】
上記の界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。具体例としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(ビックケミー・ジャパン社(BYK Japan KK)製)を挙げることができる。
【0079】
さらに、インク組成物は、重合促進剤、スリップ剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、防黴剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤を含んでもよい。
【0080】
以下、実施形態による効果を記載する。本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)インク供給部4においては、インクタンク41と、供給管61と、脱気ユニット71と、供給管62と、切替バルブ43と、循環管64とを備える、循環路が形成されており、当該循環路において、インク40を循環させることができる。インク供給部104においては、インクタンク141と、供給管61と、脱気ユニット71と、供給管62と、切替バルブ43と、循環管164と、循環路タンク142と、タンク循環管165と、を備える循環路が形成されており、当該循環路において、インク40を循環させることができる。これにより、インク40が静止した状態で貯留される場合にくらべて、インク40が静止した状態で維持されることによって固化しやすくなることを抑制することができる。
【0081】
(2)インク供給部4及びインク供給部104は、脱気ユニット71を備えている。脱気ユニット71によって、液滴吐出ヘッド20に供給するインク40を脱気して、溶存気体濃度を減少させることができる。
【0082】
(3)インク供給部4及びインク供給部104において、インクタンク41又は循環路タンク142に送られたインク40に、加圧ユニット72によって、溶存気体が付加される。これにより、脱気ユニット71によって脱気されて減少した溶存気体を増加させることができる。溶存気体を増加させることで、溶存気体を減少させたことに起因してインク40が硬化しやすくなることを抑制することができる。
【0083】
(4)インク供給部104において、循環路タンク142は、インクタンク141から液滴吐出ヘッド20に至るインク供給路から外れている。この構成により、インク供給部104においては、液滴吐出ヘッド20が稼働している状態で、循環路タンク142におけるインク40の溶存気体濃度を増加させることができる。
【0084】
(5)インク供給部4及びインク供給部104は、圧力調整弁77を備えている。圧力調整弁77によって、インク供給路におけるインク40の液圧に関わりなく、液滴吐出ヘッド20に供給するインク40の液圧を一定の液圧に調整することができる。
【0085】
(6)圧力調整弁77は、インク40が液滴吐出ヘッド20に供給される供給路において、脱気ユニット71の下流に配設されている。これによって、圧力調整弁77によって調整されたインク40の液圧が、脱気ユニット71によって影響を受けることを実質的になくすることができる。
【0086】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、前記実施形態に限らない。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0087】
(変形例1)前記実施形態においては、インク40は紫外線硬化型インクであったが、インク40が紫外線硬化型インクであることは必須ではない。例えば、他の波長の光によって硬化が進行するインクや、熱硬化型のインクであってもよい。溶存気体によって硬化の進行が影響を受けるようなインクを扱うインク供給装置又は描画装置であれば、上記実施形態で説明したインク供給部4又はインク供給部104のような構成を好適に適用して、インクが装置内で硬化することを抑制することができる。すなわち、インクが装置内に貯留されている間に特性が劣化することを抑制することができる。
【0088】
(変形例2)前記実施形態においては、加圧ユニット72は、空気をインクタンク41又は循環路タンク142の内部に送り込むことで供給していた。溶存気体増加部は、空気をインク内に直接送り込む構成であってもよい。空気をインク内に直接送り込むことで、インクの溶存気体を、効率よく増加させることができる。
【0089】
(変形例3)前記実施形態においては、1個の液滴吐出ヘッド20に対して1個の脱気ユニット71及び加圧ユニット72が設けられていた。しかし、1個の溶存気体脱気部と溶存気体増加部とを備えるインク供給装置からインクが供給される吐出ヘッドが1個であることは必須ではない。1個の溶存気体脱気部と溶存気体増加部とを備えるインク供給装置から、複数の吐出ヘッドにインクが供給される構成であってもよい。
【0090】
(変形例4)前記実施形態においては、切替部に相当する切替バルブ43は、供給管62に連通する流路を、循環管64又は供給管63に切替える装置であった。しかし、インクを導く先を、吐出ヘッド又は排出インク貯留部に切り替える切替部が、切替バルブ43のような装置であることは必須ではない。例えば、分岐部と吐出ヘッドの間において導液路を開閉するバルブを設け、分岐部と排出インク貯留部の間において排出路を開閉するバルブを設ける構成であってもよい。この場合、導液路を開閉するバルブ及び排出路を開閉するバルブが、切替部に相当する。
【0091】
(変形例5)前記実施形態においては、溶存気体増加部としての加圧ユニット72の稼働時期については特に規定されないが、インクの溶存気体の含有量が充分である場合には、溶存気体増加部の稼働を停止させてもよい。例えば、インク40が循環路タンク142に一定の時間を越えて滞留している場合には、予め定めた所定の時間だけ、加圧ユニット72を稼働させ、その後インク40が再び流動させられるまでは、加圧ユニット72の稼働を停止させてもよい。
【0092】
(変形例6)前記実施形態においては、インク供給部4及びインク供給部104は、圧力調整弁77を備えていたが、吐出ヘッドに供給するインクの液圧を一定の液圧に調整する装置が圧力調整弁77のような装置であることは必須ではない。例えば、インクの供給経路の途中に液溜りを設け、当該液溜りに供給されたインクの液位と、吐出ヘッドにおけるインクの液位との水頭差を一定に維持することによって、吐出ヘッドに供給するインクの液圧を一定の液圧に調整する装置であってもよい。
【0093】
(変形例7)前記実施形態においては、切替部に相当する切替バルブ43がヘッドキャリッジ22に固定されており、ヘッドキャリッジ22(液滴吐出ヘッド20)と一緒に移動する構成であったが、切替部が吐出ヘッドと一緒に移動することは必須ではない。移動する吐出ヘッドに対して、切替部は固定されている構成であってもよい。
切替部が固定されている場合、切替部とインク貯留部とを近接させて配置することが可能となるため、第一流路及び循環流路を短くすることができる。
【0094】
(変形例8)前記実施形態においては、液滴吐出装置1は、ヘッドユニット21を1個備えていた。しかし、描画装置が備えるヘッドユニットが1個であることは必須ではない。描画装置が備えるヘッドユニットは、いくつであってもよい。描画装置が複数のヘッドユニットを備える場合、ヘッドユニットごとに、吐出させるインクの種類を異ならせてもよい。
【0095】
(変形例9)前記実施形態においては、X軸走査機構によってワーク載置台33をX軸方向に移動させることでワークWをX軸方向に移動し、Y軸走査機構によって、液滴吐出ヘッド20(ヘッドユニット21)をY軸方向に移動することで、ワークWと液滴吐出ヘッド20とを平面方向において相対移動させていた。ワークWのような被描画媒体と吐出ヘッドとを相対移動させるために被描画媒体と吐出ヘッドとの両方を移動させることは必須ではない。被描画媒体と吐出ヘッドのいずれか一方を平面方向に移動させることで、被描画媒体と吐出ヘッドとを相対移動させる構成であってもよい。
【0096】
(変形例10)前記実施形態においては、液滴吐出装置1に吐出させるインクの種類については特に記載しなかったが、色が異なるなど種類の異なるインクを吐出してもよい。色が異なる複数種類のインクを吐出させることでカラー描画も可能である。インクの種類は、例えば、液滴吐出ヘッドごとに異ならせる。インクを吐出させる開口である吐出ノズルごとにインクを個別に供給できる液滴吐出ヘッドを用いて、吐出ノズルごとに異なるインクを吐出してもよい。
種類の異なるインクを使用する描画装置においては、循環路を、インク供給装置のすべてに、設けてもよいし、一部のインク供給装置にのみ設けてもよい。循環路を設けたインク供給装置からは、循環路を設けることが特に有効なインクを供給することが好ましい。循環路を設けることが特に有効なインクとしては、白インク、メタリックインクなど、含有している顔料が大きいものなどが挙げられる。
【0097】
(変形例11)前記実施形態においては、脱気ユニット71は、インク40が送られる際には稼働していた。しかし、インクが溶存気体脱気部を通過している際に、溶存気体脱気部が必ず稼働することは必須ではない。インクが循環経路を循環している場合には、溶存気体脱気部を停止させてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1…液滴吐出装置、2…ヘッド機構部、3…ワーク機構部、4…インク供給部、7…吐出装置制御部、20…液滴吐出ヘッド、21…ヘッドユニット、33…ワーク載置台、40…インク、41…インクタンク、42…タンクバルブ、43…切替バルブ、61…供給管、62…供給管、63…供給管、64…循環管、66…配液管、71…脱気ユニット、72…加圧ユニット、73…ポンプ、77…圧力調整弁、104…インク供給部、141…インクタンク、142…循環路タンク、164…循環管、165…タンク循環管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギーを受けることによって硬化する性質を有するインクを貯留するインク貯留部と、
前記インクを吐出する吐出ヘッドと、
前記インクを前記吐出ヘッドに導く導液路と、
前記導液路から分岐し、前記導液路内の前記インクを排出する排出路と、
排出された前記インクを貯留する排出インク貯留部と、
前記導液路に設けられた切替部と、
前記排出インク貯留部における前記インクの気体の溶存量を増加させる溶存気体増加部と、を備えることを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記切替部が前記インクを導く先が前記吐出ヘッドに切り替えられた状態において前記溶存気体増加部を稼働させる溶存気体増加部制御部をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記溶存気体増加部は、気体を前記排出インク貯留部に送り込むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の描画装置。
【請求項4】
前記導液路において、前記インクの溶存気体を脱気する脱気部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項5】
前記排出インク貯留部は、前記インク貯留部であることを特徴とする、請求項4に記載の描画装置。
【請求項6】
前記排出インク貯留部から前記インク貯留部へ前記インクを戻すための接続路をさらに備えることを特徴とする、請求項4に記載の描画装置。
【請求項7】
前記インクは、重合性化合物、及び重合開始剤を含むことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項8】
前記インクは、光硬化型のインクであることを特徴とする、請求項7に記載の描画装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−22491(P2013−22491A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157588(P2011−157588)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】