説明

揺動機構

【課題】部材を揺動するトルクを低下させることなく小型の関節機構を実現する揺動機構を提供する。
【解決手段】回転部材と、回転部材と連結して揺動する揺動部材と、他の外部部材に固定され、回転部材の回転を支持する軸受孔および揺動部材の揺動運動をガイドするスリットが形成された支持部材とを備える。回転部材は、支持部材の軸受孔に貫通して回転可能に配置される軸部と、軸部の一方端部に固設され、その表面に軸部の回転軸を中心とした螺旋状の案内路が形成された凸球形状の凸球部とを含む。揺動部材は、凸球部と遊嵌し、スリットに沿って移動可能な遊嵌部と、遊嵌部内周面に設けられ、凸球部と遊嵌部とが遊嵌した状態で案内路と滑合する滑合子と、遊嵌部の外側面に固設され、遊嵌部の移動に応じてスリットが形成された方向に揺動することによって所定部材を揺動させる揺動部とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から受ける回転駆動力に応じて所定部材を揺動する揺動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットには、連結部を介して2つのアーム部それぞれの一方端部同士を連結する関節機構が設けられている。一般的に、上記関節機構は、一方のアーム部の中心軸線に対して他方のアーム部の揺動軸線が直交し、上記連結部を中心に、屈折するように揺動させる機能を有している。なお、以下では上記の一方のアーム部を第1アーム部と呼称し、他方のアーム部を第2アーム部と呼称する。
【0003】
上記関節機構を実現する第1の方法として、モータ等の原動機を上記連結部に取付ける方法がある。具体的には、原動機本体を第1アーム部の一方端部付近に固設する。そして、第1アーム部の長手方向に対して垂直となる方向に原動機の回転駆動軸を設け、当該回転駆動軸と第2アーム部の一方端部とを固設する。つまり、第2アーム部を揺動させたい方向と原動機の回転駆動軸の回転方向とが一致するように、原動機が第1アーム部に装着されることになる。このような関節機構では、原動機の回転駆動軸の回転角度に応じて、第2アーム部が第1アーム部に対して屈折するように揺動する。
【0004】
また、上記関節機構を実現する第2の方法として、傘歯車機構などを上記連結部に用いる方法が挙げられる。例えば、第2アーム部の一方端部に被動傘歯車が固設される。一方、第1アーム部の一方端部には、駆動傘歯車が一端に固定された駆動軸が内部に設けられる。そして、上記駆動傘歯車と上記被動傘歯車とが互いに直交して噛合うように、第1アーム部と第2アーム部とが所定の回転軸を介して連結される。また、第1アーム部に設けられた駆動軸の他端は、モータ等の原動機の回転駆動軸に接続され、当該回転駆動軸の回転動作に応じて当該駆動軸が回転する。このように、第1アーム部と第2アーム部との連結部は、駆動傘歯車と被動傘歯車とが噛合しており、原動機の駆動動作に応じて駆動傘歯車が回転する。このような関節機構では、原動機の回転駆動軸の回転に応じて上記駆動傘歯車が回転し、当該駆動傘歯車に噛合う被動傘歯車が回転して、第2アーム部が第1アーム部に対して屈折するように揺動する。
【0005】
また、上記関節機構を実現する第3の方法として、特許文献1では、連結部に内蔵された球面体にアクチュエータ機能を持たせたロボット関節が開示されている。上記特許文献1にて開示されるロボット関節では、上記第2アーム部に相当する腕6を連結する方向に開口した凹型球状を成す受部1が第1アーム部に相当する本体に取付けられる。そして、腕6の本体側に凸球形状を成す端部4が腕6に一体形成され、端部4と受部1の凹部とが組み合わせられる。上記受部1の凹部の内表面2には、電気制御で極性を変更可能な複数の磁石7が列設されている。一方、端部4の外表面5には、磁石8が列設されている。そして、受部1と端部4とは、内表面2と外表面5との間に間隙を空けて遊嵌し、上記連結部を構成する。そして、磁石7の極性を順次変化させることによって、磁石7と磁石8との間に生じる反発力が順次変化し、当該反発力に応じて端部4が受部1の凹部内部で回転して腕6が本体に対して屈折するように揺動する。
【特許文献1】特開昭61−288986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述した関節機構の用途によっては、小型の関節機構が必要となることがある。しかしながら、上記第1および第2の方法を用いた関節機構では、原動機、軸受、および歯車等の多数の部品が連結部に設けられているため、アーム部内において当該部品が占有する領域が増大して連結部が大きくなってしまう。したがって、上記第1および第2の方法を用いた関節機構では、小型の関節機構を得ることが困難となる。
【0007】
また、上記第3の方法による関節機構を小型化する場合にも、連結部を小さくする必要がある。即ち、受部1と端部4とを小型化する必要があり、結果的に内表面2および外表面5の面積が小さくなる。これに伴い、内表面2および外表面5にそれぞれ列設される磁石7および磁石8の列設数をそれぞれ減少させる、または磁石7および磁石8をそれぞれ小型にすることが必要となる。しかしながら、磁石7および磁石8の列設数を減少させる場合も、磁石7および磁石8を小型にする場合も、磁石7および磁石8それぞれの磁力が低下する。つまり、磁石7と磁石8との間に生じる反発力が低下するため、腕6を揺動させるトルクが低下してしまう。従って、上記特許文献1にて開示されるロボット関節を用いた場合、腕6を揺動させるために伝達されるトルクを低下させずに、関節機構を小型化することは困難である。
【0008】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、部材を揺動するトルクを低下させることなく従来の関節機構と比較して小型の関節機構が実現可能な揺動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下に述べるような特徴を有している。
【0010】
第1の発明は、外部から受ける回転駆動力に応じて所定部材を揺動する揺動機構である。揺動機構は、回転部材、揺動部材、および支持部材を備える。回転部材は、回転駆動力を受けて所定の回転方向に回転する。揺動部材は、回転部材と連結して所定の揺動方向に揺動する。支持部材は、他の外部部材に固定され、回転部材の回転を支持する軸受孔および揺動部材の揺動運動をガイドするスリットが形成される。回転部材は、軸部および凸球部を含む。軸部は、回転駆動力が入力され、支持部材の軸受孔に貫通して回転可能に配置される。凸球部は、軸部の一方端部に固設され、その表面に軸部の回転軸を中心とした螺旋状の案内路が形成された凸球形状である。揺動部材は、遊嵌部、滑合子、および揺動部を含む。遊嵌部は、凸球部の外周面と遊嵌する凹形状内周面を有し、スリットに沿って移動可能である。滑合子は、凹形状内周面に設けられ、凸球部と遊嵌部とが遊嵌した状態で当該凸球部に形成された案内路と滑合する。揺動部は、遊嵌部の外側面に固設され、遊嵌部の移動に応じてスリットが形成された方向に揺動することによって所定部材を揺動させる。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、支持部材は、軸部の回転軸に平行な平面に沿ってスリットが形成される。揺動部は、遊嵌部がスリットに沿って移動することによって軸部の回転軸に平行な平面に沿った方向に揺動する。
【0012】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、支持部材は、軸受孔およびスリットと連通して凸球部を配置する球状空間がその内部に形成される。凸球部は、球状空間内に配置された状態で所定の隙間を介して支持部材内壁と遊嵌する。
【0013】
第4の発明は、上記第1乃至第3の何れか1つの発明において、凸球部は、案内路と滑合子との静止摩擦係数μに対して、リード角γがγ≦tan-1(μ)で形成された螺旋状の案内路が形成される。
【0014】
第5の発明は、上記第1乃至第4の何れか1つの発明において、遊嵌部は、案内路と同時に嵌合する複数の滑合子が凹形状内周面に設けられる。
【0015】
第6の発明は、上記第5の発明において、凸球部は、その表面に軸部の回転軸を中心として螺旋の進行方向が異なる螺旋状の2つの案内路が形成される。複数の滑合子は、2つの案内路に沿ってそれぞれ嵌合する。
【0016】
第7の発明は、上記第1乃至第6の何れか1つの発明において、遊嵌部は、少なくとも凹形状内周面側に開口する筒孔が形成される。滑合子は、筒孔に遊挿される硬質部材である。遊嵌部は弾性体を含み、弾性体は硬質部材に対して遊嵌部の外側面側となる筒孔内に配され、当該硬質部材を当該筒孔に沿って案内路へ向かう方向に付勢する。
【0017】
第8の発明は、上記第7の発明において、筒孔は、遊嵌部の凹形状内周面側から外側面まで貫通して形成される。硬質部材および弾性体は、筒孔の外側面側開口部から付替可能に構成される。
【0018】
第9の発明は、上記第1乃至第8の何れか1つの発明において、凸球部表面に対して一定深さで彫設された螺旋状の条溝である。滑合子は、遊嵌部の凹形状内周面に突設され、条溝に嵌合可能な突起である。
【0019】
第10の発明は、上記第9の発明において、凹形状内周面は、所定の隙間を介して凸球部の凸球面を包み込む球面である。
【0020】
第11の発明は、上記第9の発明において、凹形状内周面は、所定の隙間を介して凸球部の凸球面と遊嵌する直円柱面である。
【0021】
第12の発明は、上記第1の発明において、案内路は、凸球部表面に対して一定高さで突出した螺旋状の突条である。滑合子は、遊嵌部の凹形状内周面に突設され、突条に嵌合可能な凹部を有する突起である。
【0022】
第13の発明は、上記第1乃至第12の何れか1つの発明において、支持部材回動機構を、さらに備える。支持部材回動機構は、外部部材に対して支持部材を所定の方向に回動させ、任意の角度で当該支持部材を固定する。
【0023】
第14の発明は、上記第1乃至第13の何れか1つの発明において、回転部材は、第1貫通孔を有する。第1貫通孔は、軸部の開放端から凸球部の表面まで貫通する。揺動部材は、第2貫通孔を有する。第2貫通孔は、遊嵌部の凹形状内周面から揺動部の開放端まで貫通する。第1貫通孔と第2貫通孔とは、互いに連通して配置される。
【0024】
第15の発明は、上記第1乃至第14の何れか1つの発明において、凸球部の外周面および遊嵌部の凹形状内周面の少なくとも一方側の一部に、潤滑剤を含む潤滑剤含有部材が設けられる。潤滑剤含有部材は、対向する面に摺接する。
【発明の効果】
【0025】
上記第1の発明によれば、外部から回転駆動力を受けて回転部材が回転して揺動部材を揺動させるため、機構全体の大きさに関わらず、回転駆動力に応じた力で揺動部材を揺動することが可能となる。また、回転部材の回転角度に対して揺動部材の揺動角度が小さくなるため、外部から受ける回転駆動力のトルクよりも高いトルクで揺動部材を揺動し、トルク増幅機能を兼ね備えることができる。
【0026】
上記第2の発明によれば、揺動部材が軸部の回転軸に平行な平面に沿った方向に揺動する関節機構を得ることができる。
【0027】
上記第3の発明によれば、凸球部が球状空間内に配置されて支持部材と遊嵌するため、回転部材がスラスト方向およびラジアル方向への外力を受けても何れの方向へも移動せず球面軸受として機能する。したがって、球面軸受を実現するための他の機構や部材が不要となる。また、回転部材の回転軸および揺動部材の揺動軸も、それぞれ軸受されているため、これらの軸を安定させるための軸受機構や軸受部材も不要となる。したがって、低コストで小型の揺動機構を得ることができる。
【0028】
上記第4の発明によれば、揺動部材がその揺動方向に外力が加えられても、案内路および滑合子の間の摩擦力によってその揺動位置で当該揺動部材が固定されるため、セルフロック機能を兼ね備えることができる。
【0029】
上記第5および第6の発明によれば、駆動中に滑合子や案内路に加わる荷重が分散されるため、滑合子や案内路の摩耗が低減して揺動機構の耐久性が向上する。また、案内路と何れかの滑合子との間に隙間が生じる場合にも、他の滑合子が適切に滑合することが期待できるため、揺動動作のトルクの低下を防ぐことができる。
【0030】
上記第7の発明によれば、滑合子が案内路へ向け付勢されつつ筒孔に沿って移動可能である。したがって、案内路と滑合子との距離がばらついても案内路と滑合子との隙間を埋めるように滑合子が移動するため、案内路と滑合子とが適切に滑合してバックラッシが低減する。また、滑合子が案内路上を摺動する際に、滑合子と案内路との間に過大な抵抗力が生じることが防止されるため、揺動機構の動作がスムーズとなり、エネルギーロスも低減されて、揺動機構の耐久性が向上する。
【0031】
上記第8の発明によれば、滑合子や弾性体が交換可能となるため、消耗部材を交換することによる揺動機構の耐久性向上が図れる。
【0032】
上記第9の発明によれば、案内路が単純な条溝で構成されるため、凸球部表面に容易に形成することができる。
【0033】
上記第10の発明によれば、前後、左右、および上下の全方向に対して遊嵌部と凸球部とを適切なクリアランスで遊嵌することができる。
【0034】
上記第11の発明によれば、遊嵌部の凹形状内周面が直円柱形状であるので、加工形成することが容易となる。また、遊嵌部と凸球部とを遊嵌させることが容易となる。
【0035】
上記第12の発明によれば、突条が形成されている部位以外の凸球部表面を彫り下げることによって、凸球部を軽量化することが可能である。
【0036】
上記第13の発明によれば、支持部材を外部部材に対して所定の方向へ回動して固定することが可能であるので、揺動部材の揺動方向の自由度を増すことができる。
【0037】
上記第14の発明によれば、連通する第1貫通孔および第2貫通孔にフレキシブルシャフト等を貫装することによって、当該フレキシブルシャフトと連結されて動作制御される各種機器を揺動機構に搭載して、当該機器を制御することができる。
【0038】
上記第15の発明によれば、揺動機構が揺動する過程で、潤滑剤含有部材が摺接する部材の表面に潤滑剤が塗布されるため、凸球部と遊嵌部とが滑らかに摺動して耐摩耗性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る揺動機構1について説明する。なお、図1(a)は、当該揺動機構の一例である揺動機構1aの斜視図である。また、図1(b)は、図1(a)のα−α線に沿って共回り防止ガイド16および揺動アーム14のみを切断した揺動機構1aの断面斜視図である。
【0040】
図1に示すように、揺動機構1aは、大略的に、駆動軸12、揺動アーム14、および共回り防止ガイド16から構成される。駆動軸12および揺動アーム14は、それぞれの端部に形成される凸球部121および凹球部141が回転摺動可能に遊嵌して互いに連結される。共回り防止ガイド16は、駆動軸12の軸部122および凸球部121をそれぞれ回転摺動可能に支持する。そして、軸部122の端部が、モータ等の原動機の回転駆動力が伝達される部材に連結されており、当該原動機の回転駆動に応じてその軸心を中心に駆動軸12が回転する。また、共回り防止ガイド16は、揺動アーム14の凹球部141の両側面を挟持して、揺動アーム14を上下に揺動可能に支持する。なお、駆動軸12、揺動アーム14、および共回り防止ガイド16が、それぞれ本発明における回転部材、揺動部材、および支持部材の一例に相当する。また、凹球部141が、本発明における遊嵌部の一例に相当する。
【0041】
以下、これらの構成部材について詳細に説明する。なお、上記の構成部品は、揺動機構1aの用途に応じて、所望の剛性や加工性を得られる部材や硬化成形部材で構成され、典型的にはジュラルミン等の金属や樹脂等で構成される。また、上記構成部品は、異なる部材を組み合わせてもかまわない。
【0042】
図2を参照して、駆動軸12について説明する。なお、図2は、駆動軸12の側面図である。
【0043】
図2において、駆動軸12は、軸部122および凸球部121を有している。軸部122は、所定長さの円柱状の棒材である。凸球部121は、軸部122の軸径より大きな直径の凸球形状を成す。凸球部121は、軸部122の一方端部に接合または一体成形されており、凸球部121の球体中心が軸部122の軸心と一致している。そして、軸部122は、他方端部が上述したモータ等の原動機の回転駆動力が伝達される部材に連結されているため、当該原動機の回転駆動に応じて軸部122および凸球部121が軸心を中心に回転する。
【0044】
凸球部121の表面である凸球面121Eには、螺旋状溝121FLが形成される。この螺旋状溝121FLは、駆動軸12の軸心を中心として、凸球面121Eに対して一定の溝深さで螺旋状に彫設される。図2では、螺旋状溝121FLの螺旋形成方向および螺旋長さは、一例として、軸部122側から見て凸球部121側へ左回り方向に巻き数約4回で彫設されている。なお、螺旋状溝121FLの螺旋形成方向および螺旋長さは、逆方向に彫設しても良いし、4回未満または4回以上の巻き数で彫設してもかまわない。また、螺旋状溝121FLの溝断面形状は、一例として半円であるが、U字やV字等の溝断面形状で彫設してもかまわない。ここで、螺旋状溝121FLの断面形状および溝幅や溝深さ等の寸法は、一定であることが好ましい。また、螺旋状溝121FLは、溝断面形状の溝底頂点が凸球部121の球体中心を向いて彫設されることが望ましい。これにより、駆動軸12の回転運動を揺動アーム14へスムーズに伝達することが可能となるが、詳細については後述する。なお、螺旋状溝121FLが、本発明の案内路の一例に相当する。
【0045】
次に、図3(a)および図3(b)を参照して、揺動アーム14について説明する。なお、図3(a)は、揺動アーム14の斜視図である。図3(b)は、揺動アーム14の側面図である。
【0046】
揺動アーム14は、揺動部142および凹球部141を有している。揺動部142は、円柱や角柱等の長軸部材で構成される。凹球部141は、環状部材の一部が開口した所定厚さのC型形状部材で構成され、当該C型形状部材の外周側面に相当する外周面141Eと揺動部142の端部とが接合または一体成形されている。なお、凹球部141は、所定厚さのC型形状部材で構成されており、上述した外周側面に相当する外周面141Eの他、C型形状部材の内周側面と、外周側面および内周側面を挟んで形成されるC型形状の一対の側面と、C型形状開口部を形成する一対の端面とを有している。以下、これらの面を区別するために、上記内周側面を内周面141I、上記一対の側面を側面141Lおよび側面141R、上記一対の端面を端面141Aaおよび端面141Abとして説明する。
【0047】
側面141Lおよび側面141Rは、互いに平行に配置され、揺動部142の延設方向と平行に形成される。一例として、側面141Lおよび側面141RのC型形状は、一定の距離で平行な2つの円弧と、2つの円弧の端点を結ぶ2直線とによって囲まれた形状である。そして、側面141Lおよび側面141Rの上記円弧の中心角は、例えば270°である。なお、側面141Lおよび側面141Rの円弧の中心角は、180°以上であれば他の角度であってもかまわない。内周面141Iは、凹球面状に形成される。具体的には、内周面141Iは、凸球部121の外径より所定のクリアランス分だけ大きい内径を有する凹形状の球面で形成されている。外周面141Eは、例えば内周面141Iと同心の凸球面状に形成されるが、円柱や角柱等の、他の側面形状で形成されてもかまわない。端面141Aaおよび端面141Abは、互いの最短距離Wが少なくとも凸球部121の外径より短くなる位置に形成される。
【0048】
なお、端面141Aaおよび端面141Abの形状は、揺動アーム14の揺動範囲を阻害しない形状であれば、端面141Aaおよび端面141Abが平面でなくても良い。このように、凹球部141は、一例として、中空球体を当該中空球体の球心を中心として側面141Lおよび側面141Rで輪切りにし、端面141Aaおよび端面141Abで輪の一部を開口させた形状になっている。この場合、輪切りにされた中空球体の内側球面が内周面141Iに相当し、外側側面が外周面141Eに相当する。
【0049】
凹球部141の内周面141Iには、螺旋状溝121FLと嵌合する滑合球体144が設けられる。以下、滑合球体144の構造および螺旋状溝121FLとの嵌合の様子について図4を用いて説明する。なお、図4は、図1(b)における滑合球体144近傍を拡大した側面図である。
【0050】
滑合球体144は、本発明の滑合子の一例であり、例えば球形状の硬質部材で構成される。滑合球体144は、孔141Hの孔内面に沿って、ばね145、ばね押さえピン146、および介在部材147によって摺動可能に支持される。孔141Hは、滑合球体144が所定のクリアランスを介して遊挿可能な円柱形状の孔であり、好ましくは孔141Hの中心が内周面141Iの球中心を通るように、外周面141Eから内周面141Iまで貫通して形成される。介在部材147は、孔141H内部で所定クリアランスを介してばね145および滑合球体144の間に挟持される。例えば、介在部材147は、円盤状の部材で、その一方面に滑合球体144と当接する凹球面が形成される。例えば、滑合球体144および介在部材147は、グリス等の潤滑剤が注入されて、孔141H内部にそれぞれ遊挿される。介在部材147なお、滑合球体144および、介在部材147が孔141H内部でそれぞれ摺動自在であれば潤滑剤を使用しなくても良い。孔141Hの外周面141E側開口部は、ばね押さえピン146が圧入されて閉口される。そして、孔141H内の介在部材147とばね押さえピン146との間に、本発明の弾性体の一例であるばね145が設けられる。ばね145は、その一方端がばね押さえピン146と当接し、その他方端が介在部材147の他方面と当接する。このばね145の付勢力によって、介在部材147を介して、滑合球体144が螺旋状溝121FL方向へ付勢され、孔141Hの内周面141I側開口部からその一部が突出し、突出部分で螺旋状溝121FLと滑合する。なお、孔141Hの外周面141E側開口部をばね押さえピン146で圧入して閉口する一例を説明したが、他の方式で外周面141E側開口部を閉口してもかまわない。例えば、孔141Hの外周面141E側開口部付近をねじ加工して、当該ねじに螺合する頭無しねじなどの部材によって外周面141E側開口部を閉口してもかまわない。この場合、当該部材の内部端面とばね145とが孔141H内部で当接することになる。
【0051】
螺旋状溝121FLの断面形状は、例えば半円形状である。この場合、螺旋状溝121FLとして、滑合される滑合球体144の外径と同等の直径を有する半円形状の条溝が凸球面121Eに形成される。なお、螺旋状溝121FLの断面形状は、滑合球体144の外径と同じまたは小さい直径を有する半円形状でもいいし、半円形状より浅い円弧形状の断面形状でもかまわない。そして、滑合球体144および螺旋状溝121FLの間にはグリス等の潤滑剤が注入され、この潤滑剤の層を介して滑合球体144が螺旋状溝121FLに滑合される。なお、滑合可能であれば、潤滑剤の注入はなくてもかまわない。
【0052】
なお、滑合球体144の形状は、螺旋状溝121FLと滑合可能で、孔141H内部を摺動可能ならば、球体に限らず、楕円球体や先端が球形の円柱体等であって良い。また、螺旋状溝121FLの断面形状が半円形状でない場合、滑合球体144を螺旋状溝121FLの断面形状に応じた形状で形成してもかまわない。例えば、螺旋状溝121FLがV字形状である場合、滑合球体144の形状は、円錐形状やくさび形状等の、螺旋状溝121FLの断面形状に応じた形状で構成すればよい。また、ばね押さえピン146は、ばね145の一方端を孔141H内で固定可能であれば、螺子やノックピン等の部材を用いて良い。また、ばね145は、上記のように孔141H内部で、滑合球体144およびばね押さえピン146の間に弾設可能な弾性部材であれば、例えば、ゴム性の棒状部材など、他の材質や形状の弾性体で構成してもかまわない。
【0053】
次に、図5(a)および図5(b)を参照して、共回り防止ガイド16について説明する。なお、図5(a)は、図1(a)のβ−β線に沿って切断した共回り防止ガイド16の断面斜視図である。図5(b)は、図1(a)のβ−β線に沿って切断した共回り防止ガイド16をε方向から見た断面図である。
【0054】
共回り防止ガイド16は、一対の頭部161および主部162により構成される。一対の頭部161は、それぞれ主部162の一端面に固定され、当該頭部161および主部162に囲まれる内部に凹球面状の凸球部支持面16Sが形成される。そして、共回り防止ガイド16の内部に、凸球部支持面16Sで囲まれた球状空間が形成される。凸球部支持面16Sは、凸球部121の球外径より所定のクリアランス分だけ大きい球内径を有している。主部162の内部には、上記球状空間と連通する軸受孔162Hが形成される。これによって、共回り防止ガイド16は、駆動軸12の凸球部121(図2等参照)を凸球部支持面16Sで支持し、軸部122を軸受孔162Hで支持して、当該駆動軸12を回転可能に支持する。
【0055】
また、共回り防止ガイド16は、頭部161および主部162に囲まれる内部に頭部161側から主部162の軸受孔162H方向へ向けて、上記球状空間および軸受孔162Hと連通するスリット空間16Dが形成される。上記スリット空間16Dは、上記球状空間の中心および軸受孔162Hの一部を横断して重なる方向に、側面141Lおよび側面141R(図3(a)等参照)の間隔より所定のクリアランス分広い幅で形成される。頭部161と主部162とに跨って形成される上記スリット空間16Dを形成する一対の平面をそれぞれスリット側面16Lおよびスリット側面16Rと称する。
【0056】
次に、図1〜図6を参照して、駆動軸12、揺動アーム14、および共回り防止ガイド16を組み合わせる方法について説明する。なお、図6は、揺動機構1aの組立図である。
【0057】
まず、駆動軸12および揺動アーム14を組み合わせる方法について説明する。駆動軸12および揺動アーム14は、凸球部121および凹球部141を遊嵌して連結する。しかしながら、内周面141Iが球面で、図3(b)に示す凹球部141の開口長さにおける最短距離Wが凸球部121の外径より短い場合、凹球部141に凸球部121を嵌め合わせることができない。このような場合、揺動アーム14の凹球部141を分割可能に構成する。例えば、揺動アーム14を図1(a)中α−α方向に分割可能に構成し、図6に示すように揺動アーム14を分割した状態で凸球部121を凹球部141内部に配し、その配置状態で揺動アーム14を分割面で接合する。これによって、凸球部121および凹球部141を遊嵌して駆動軸12および揺動アーム14を連結することができる。なお、揺動アーム14の分割方向は、上記方向に限らず、凹球部141に凸球部121が嵌る分割構成にして良い。また、凸球面121Eおよび内周面141Iの間隙には、他のクリアランス部と同様にグリス等の潤滑剤を注入し、それらの摺動を滑らかにする。なお、注入する潤滑剤は、グリス以外のものを使用しても良いし、凸球面121Eおよび内周面141Iが潤滑剤の塗布無しでも滑らかに摺動する場合には潤滑剤を注入しなくても良い。
【0058】
滑合球体144を凹球部141の孔141Hに遊挿する際(図4等参照)は、上述したように凹球部141および凸球部121を遊嵌させた後、孔141Hの外周面141E側開口部から滑合球体144を遊挿し、続いてばね145を遊挿し、ばね押さえピン146で当該開口部を閉口する。そして、滑合球体144および螺旋状溝121FLの間隙、並びに滑合球体144および孔141Hとの間隙には、上述したようにグリス等の潤滑剤が塗布され摺動を滑らかにする。なお、ばね押さえピン146の固定方法は問わないが、孔141Hの外周面141E側開口部から取り外し可能に構成するのが好ましい。ばね押さえピン146を孔141Hから取り外し可能とすることで、ばね145および滑合球体144も共に外周面141E側で凹球部141から取り外し可能となる。
【0059】
上述したように、連結した駆動軸12および揺動アーム14は、共に共回り防止ガイド16により支持される。駆動軸12および揺動アーム14が、各々共回り防止ガイド16に支持される様子について説明する。
【0060】
まず、共回り防止ガイド16を、一例として頭部161および主部162に分割した状態にする。そして、駆動軸12および揺動アーム14が連結された状態で、主部162のスリット空間16D側から駆動軸12の軸部122を軸受孔162Hに挿入する。そして、揺動アーム14の凹球部141が主部162のスリット空間16D内部でスリット側面16Lおよびスリット側面16Rの間に挟持され、凸球部121の凸球面121Eの一部が主部162の凸球部支持面16Sと当接する状態まで、揺動アーム14を主部162に挿入する。そして、一対の頭部161を主部162に取付ける。このとき、凹球部141の側面141Lおよび側面141Rが、それぞれ頭部161のスリット側面16Lおよびスリット側面16Rと当接する状態となって、凹球部141が一対の頭部161に挟まれる状態となる。また、凸球部121の凸球面121Eが頭部161のそれぞれの凸球部支持面16Sと当接する状態となる。そして、上述したように各構成部材のクリアランス部に、それぞれグリス等の潤滑剤を注入する。このように、駆動軸12は、軸部122の外周面が軸受孔162Hの内周面で、凸球面121Eが主部162および頭部161の凸球部支持面16Sで、それぞれ所定のクリアランスを介して支持される。また、揺動アーム14は、駆動軸12と連結された状態で、凹球部141が共回り防止ガイド16のスリット空間16D内に所定のクリアランスを介して配置される。ここで、上述した一例では、共回り防止ガイド16が頭部161および主部162に分割される態様を示したが、駆動軸12を上記の所定位置に配置することが可能であれば、共回り防止ガイド16の分割箇所を他の分割位置に設定してもかまわない。
【0061】
なお、図1(b)および図3(a)等に図示されているように、凹球部141の内周面141Iにフェルト143を固定してもかまわない。フェルト143は、所定の潤滑剤を含有しており、凸球部121の凸球面121Eと摺動可能に接する。そして、後述する揺動機構1aの揺動動作において、凸球部121が凹球部141の内部で回転すると、フェルト143に含有される潤滑剤が凸球面121Eに塗布されていく。これにより、凸球面121Eと内周面141Iとの隙間が常に潤滑剤で満たされ、凸球面121Eと内周面141Iとが滑らかに摺動可能となる。
【0062】
なお、フェルト143の配置される位置およびフェルト143の形状は、凸球面121Eと摺接可能であれば図示された態様に限らない。また、フェルト143は、潤滑剤を含有可能な部材であれば、どのような部材で構成してもかまわない。また、上記した例では、凹球部141の内周面141Iにフェルト143を設けたが、フェルト143を凸球部121の凸球面121Eに設けてもいいし、凹球部141の内周面141Iおよび凸球部121の凸球面121Eの両面にそれぞれ設けても良い。
【0063】
次に、図7を参照して、揺動機構1aにおいて駆動軸12の回転により揺動アーム14が揺動する様子について説明する。なお、図7(a)〜(d)は、駆動軸12を回転させて揺動アーム14を揺動させる各段階の揺動機構1aの部分断面図である。
【0064】
典型的には、図7(a)に示すように、揺動機構1aは、筐体やロボット本体などの当該揺動機構1aを搭載する対象物に、共回り防止ガイド16が固定されて搭載される。
【0065】
揺動機構1aが搭載された状態で、軸部122に連結された原動機を回転駆動させて軸部122を回転させると、凸球部121が同方向へ回転する。凸球部121の回転に応じて、螺旋状溝121FLに滑合している滑合球体144は、螺旋状溝121FLとの嵌合部からの反力を受けつつ、螺旋状溝121FLに沿って移動する。ここで、凹球部141は滑合球体144の移動に応じて移動する。
【0066】
ここで、図6に示すように、凹球部141の両側面である側面141Lおよび側面141Rは、共回り防止ガイド16の頭部161および主部162に跨って形成されるスリット側面16Lおよびスリット側面16Rと係合している。そのため、凹球部141は、スリット側面16Lおよびスリット側面16Rと平行な方向、すなわち、共回り防止ガイド16のスリット空間16Dが形成されている平面方向へのみ移動可能である。また、凹球部141は、凸球面121Eと遊嵌しているため、凸球部121と同心に回動可能である。すなわち、図7(b)および図7(c)に示すように揺動アーム14は、スリット側面16Lおよびスリット側面16Rに平行に、凸球部121の中心を揺動中心として揺動可能である。
【0067】
したがって、螺旋状溝121FLが駆動軸12を軸部122側から見て凸球部121側へ左回り方向に彫設されている場合、図7(a)に示す状態で駆動軸12を軸部122側から見て右回りのA矢印方向に回転させると、図7(a)〜(d)の順に示すように、滑合球体144が螺旋状溝121FLに沿って共回り防止ガイド16の頭部161側へ移動して、凹球部141が凸球面121Eに沿って図示C矢印方向へと回動する。これによって、揺動部142も図示C矢印方向に揺動する。
【0068】
そして、図7(d)に示すように、C矢印方向へ揺動する揺動アーム14は、凹球部141の開口部の端部である端面141Aaが軸部122に当接した場合、或いは滑合球体144が螺旋状溝121FLの一方終端に到達した場合、その揺動動作を停止する。一方、図7(a)に示すように、D矢印方向へ揺動する揺動アーム14は、端面141Abが軸部122に当接した場合、或いは滑合球体144が螺旋状溝121FLの他方終端に到達した場合、その揺動動作を停止する。このように、凹球部141の開口部の開口広さや螺旋状溝121FLを形成する長さが、揺動アーム14の揺動角度に影響する。つまり、揺動アーム14の揺動可能角度を大きくするためには、端面141Aaおよび端面141Abの開口角度が大きくなるように凹球部141の開口部を広げ、且つ、十分な長さの螺旋状溝121FLを形成することが必要となる。
【0069】
上記に示した揺動アーム14の揺動可能角度を拡大する他の方法として、例えば、凹球部141の開口部に切り込み141Dを形成する方法がある。以下、図8および図9を参照して、切り込み141Dについて説明する。なお、図8は、切り込み141Dが形成された揺動アーム14の斜視図を示す。図9は、切り込み141Dが形成された揺動アーム14を備える揺動機構1aの断面斜視図である。
【0070】
図8および図9に示すように、切り込み141Dは、端面141Aa側から揺動部142側へ所定長さ切れ込んで形成され、凹球部141の外周面141Eおよび内周面141I側にも開口するスリット状の空間である。ここで、切り込み141Dのスリット幅は、駆動軸12の軸部122が通過可能に形成される。
【0071】
凹球部141に上述した切り込み141Dが形成されている場合、揺動アーム14が揺動する過程において、軸部122は端面141Aaに当接せず、切り込み141Dの内部まで進入する。そして、揺動アーム14は、切り込み141Dの揺動部142側終端と軸部122とが当接するまで揺動可能である。このように、凹球部141に切り込み141Dが形成される場合、揺動アーム14が切り込み141Dの終端まで進入可能であるため、端面141Aaおよび端面141Abの開口角度以上に揺動アーム14を揺動することができる。すなわち、切り込み141Dが形成される場合、凹球部141は、端面141Aaおよび端面141Abの開口角度を揺動角度より小さくすることができるため、凹球部141と凸球部121とが外れにくくなる効果を得られる。但し、切り込み141Dが形成される場合においても、凸球部121には揺動角度に対して十分な長さの螺旋状溝121FLが形成されるものとする。
【0072】
図7に戻り、図7(d)の状態から駆動軸12をA矢印方向からB矢印方向へ逆回転させると、揺動アーム14はD矢印方向へ揺動する。なお、螺旋状溝121FLが彫設される螺旋方向が軸部122側から凸球部121側へ向けて右回りである場合、駆動軸12をA矢印方向へ回転させると揺動アーム14がD矢印方向へ揺動し、駆動軸12をB矢印方向へ回転させると揺動アーム14がC矢印方向へ揺動する。
【0073】
揺動機構1aは、当該揺動機構1aを搭載する対象物に対して、共回り防止ガイド16が回動可能に構成されてもかまわない。この場合、上記対象物に対して共回り防止ガイド16を任意の角度まで回動させて固定するモータ等が、さらに設けられる。この共回り防止ガイド16を回動させるモータが、本発明の支持部材回動機構の一例に相当する。このようなモータを設けることによって、共回り防止ガイド16を回動させると、スリット側面16Rおよびスリット側面16Lの向きが変化して揺動アーム14の揺動方向も変化するため、揺動アーム14の揺動方向の自由度が飛躍的に向上する。
【0074】
上記に説明した揺動機構1aが揺動する過程で、螺旋状溝121FLおよび滑合球体144の滑合にがたつきがあると、揺動アーム14が滑らかに揺動できなくなる。このような螺旋状溝121FLおよび滑合球体144の滑合のがたつきは、一例として滑合球体144が螺旋状溝121FLに沿って移動する過程で螺旋状溝121FLおよび滑合球体144の滑合状態が変化することによって発生する。そこで、好ましくは、螺旋状溝121FLは、全ての溝底頂点が凸球部121の球体中心を向いた形状で彫設される。これによって、滑合球体144が螺旋状溝121FLのどの部分で滑合しても、滑合状態が安定して、上記がたつきの発生を防止することができる。
【0075】
但し、螺旋状溝121FLの溝幅の加工および成形時に発生するばらつきや、滑合球体144の摩耗による形状変化を要因とする滑合状態の変化によりがたつきが発生する場合は、螺旋状溝121FLを溝断面形状の溝底頂点が凸球部121の球体中心を向くように彫設するのみではがたつきを防止できないことがある。このような問題を解決すべく、滑合球体144は、ばね145により螺旋状溝121FLへ向けて付勢され、溝幅や溝深さに応じて内周面141Iから突出または孔141H内部に退避することが可能である。例えば、溝幅が狭くなったり溝深さが浅くなったりした場合には滑合球体144が孔141H内部側に退避し、溝幅が広くなったり溝深さが深くなったりした場合には滑合球体144が内周面141Iから突出する。
【0076】
なお、滑合球体144が極度に摩耗して螺旋状溝121FLとの滑合できなくなる場合、または滑合にがたつきが発生する場合等には、摩耗した滑合球体144を孔141Hから取り外して新しい滑合球体144と交換することができる。上述したように、滑合球体144は、ばね押さえピン146およびばね145が孔141Hの外周面141E側から取り外し可能にしておくことにより、容易に交換することが可能である。
【0077】
上記に説明した揺動機構1aは、駆動軸12および揺動アーム14を軸受する軸受機能を有する。以下、揺動機構1aの軸受機能について説明する。駆動軸12は、軸部122の外周面で軸受孔162Hと係合し、共回り防止ガイド16により支持される。また、駆動軸12は、凸球面121Eが凸球部支持面16Sと遊嵌し、共回り防止ガイド16により支持されている。したがって、駆動軸12は、軸部122のスラスト方向およびラジアル方向への外力を受けても凸球面121Eと凸球部支持面16Sとが当接して、駆動軸12が同方向へ移動しない。したがって、共回り防止ガイド16は、駆動軸12の球面軸受の機能を有していることが分かる。そのため、揺動機構1aは、駆動軸12の球面軸受を実現するために、別の部品を追加して構成することが不要となる。
【0078】
また、凹球部141と凸球部121とが遊嵌することによって、凹球部141および凸球部121が球面軸受として機能する。また、凹球部141は、スリット側面16Lと側面141Lとが対向し、スリット側面16Rと側面141Rとが対向して共回り防止ガイド16のスリット内に挟持されるため、揺動アーム14は、スリット側面16Lおよびスリット側面16Rと平行な方向にのみ移動可能である。さらに、凸球面は、共回り防止ガイド16の凸球部支持面16Sにより支持される。したがって、揺動アーム14は、スリット側面16Lおよびスリット側面16Rに垂直で凸球部121の球体中心を通る直線を揺動中心として揺動する。つまり、凹球部141および凸球部121は、揺動アーム14の揺動軸受機能を有している。したがって、揺動アーム14の揺動軸受を実現するために、別の部品を追加して構成することが不要となる。このように、揺動機構1aは、大略して駆動軸12、揺動アーム14、および共回り防止ガイド16の3つの部品で構成されながら、様々な軸受機能を兼ね備えており、機構自体の小型化が容易である。
【0079】
上記に説明した揺動機構1aは、更に、駆動軸12に入力されたトルクを増幅して揺動アーム14を揺動する、トルク増幅機能を有する。以下、揺動機構1aのトルク増幅機能について説明する。図2で示すように凸球部121の球心を中心とした螺旋状溝121FLの1ピッチ当りの中心角をθ°とした場合、駆動軸12が360°回転する間に、凹球部141および揺動部142は中心角θ°だけ揺動する。したがって、駆動軸12の回転運動が減速して揺動アーム14の揺動運動として伝達される。すなわち揺動機構1aは、駆動軸12へ入力されるトルクを増幅して揺動アーム14へ伝達する機能を有している。具体例として、θ=22.5であるとすると、駆動軸12が360°回転する間に揺動アーム14が22.5°揺動する。この場合の減速比nは、n=360/θ=360/22.5=16である。したがって、摩擦を無視すれば揺動アーム14では駆動軸12に入力されるトルクの16倍のトルクを得ることができる。このように、揺動アーム14は、駆動軸12に入力されたトルクを減速比に応じて増幅させた出力トルクを得ることができる。
【0080】
上記に説明した揺動機構1aは、更に、揺動アーム14に外力をかけても揺動アーム14が移動しないセルフロック機能を有する。以下、揺動機構1aのセルフロック機能について説明する。螺旋状溝121FLおよび滑合球体144が滑合する箇所の静止摩擦係数がμである場合、螺旋状溝121FLの螺旋のリード角γを
γ≦tan-1(μ)
を満たすよう形成すると、揺動アーム14に対して揺動部142の揺動方向へ荷重を加えても揺動アーム14は当該揺動方向へ揺動せず、当該揺動アーム14に連結された駆動軸12も回転しない。このような機能は、一般的にはウォームギヤとホイールギヤを嵌合して得られるセルフロック機能として知られており、揺動機構1aもセルフロック機能を有していると言える。ここで、揺動機構1aにおいては、凸球部121をウォームギヤ、凹球部141を内歯式のホイールギヤとみなすことができる。
【0081】
以上のように、揺動機構1aは、例えば、ロボットに搭載される小型の関節機構に用いることが可能である。揺動機構1aの用途として、特に小型で高い出力や保持力を求められる人型ロボットの指関節等に最適である。また、揺動機構1aは、大型の工作機械や土木機械のアームの関節にも利用することができる。更に、揺動機構1aに原動機を連結したものを1つの関節とし、当該関節を複数連結することによって、多関節アームを構成することができる。この多関節アームは、各関節を遠隔操作で屈曲させれば入り口の狭い空間内部の任意の場所まで到達できるため、その先端に照明、カメラ、および小型マニュピレータ等の機器を搭載することによって、ファイバースコープやレスキューロボット等の様々な用途に利用することができる。
【0082】
図10に示すように、駆動軸12および揺動アーム14は、その内部に貫通孔が形成されてもかまわない。図10は、駆動軸12および揺動アーム14の内部に中空空間が形成された揺動機構1aの側断面図である。
【0083】
図10において、駆動軸12は、軸部122の開放端から凸球部121の表面まで貫通する貫通孔12Hが形成される。また、揺動アーム14は、凹球部141の内周面141Iから揺動部142の開放端まで貫通する貫通孔14Hが形成される。そして、貫通孔12Hと貫通孔14Hとは、所定の揺動角度において連通可能に形成されている。例えば、揺動機構1aが図10(a)の状態から図10(b)の状態になるまでの揺動角度においては、貫通孔12Hと貫通孔14Hとが連通状態にある。このように、駆動軸12および揺動アーム14の内部に互いに連通する貫通孔12Hおよび貫通孔14Hを形成すれば、フレキシブルシャフトや電源ケーブル等を当該貫通孔12Hおよび貫通孔14Hに挿入することが可能となる。したがって、貫通孔12Hおよび貫通孔14Hに挿入した部品を用いて、上記機器の動作制御が可能となるため、上記の機器を搭載しながら容易に制御することができる。
【0084】
(第1の変形例)
上記に説明した揺動機構1aにおいて、揺動アーム14の凹球部141の内周面141Iは、直円柱面で構成されてもかまわない。このような、直円柱状の内周面341Iを有する揺動軸を揺動アーム34とする。以下、本実施形態の第1の変形例として、揺動アーム34ついて図11を参照して説明する。なお、図11は、揺動アーム34の斜視図である。
【0085】
図11において、揺動アーム34は、上述した揺動アーム14の凹球部141に代えて、円筒部341を備える。揺動アーム34の他の構成については揺動アーム14と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0086】
円筒部341は、凹球部141と同様の環状部材の一部が開口した所定厚さのC型形状を成す部材で構成される。そして、円筒部341の内周面341Iは、直円柱面で構成される。内周面341Iは、凸球部121の外径より所定のクリアランス分だけ大きな直径の直円柱面であり、凹球部141と同様にして図6に示すように凸球部121の凸球面121Eと遊嵌する。ここで、内周面341Iは、直円柱面で形成されるため、球面で形成される凹球部141の内周面141Iと比較すると加工が容易である。また、円筒部341と凸球部121とを連結する場合、図11においてG矢印方向で示す円筒部341の左右方向から凸球部121を挿入することが可能であるため、双方の連結が容易であり連結のために円筒部341を分解可能に構成することも不要となる。
【0087】
(第2の変形例)
上記に説明した揺動機構1aにおいては、本実施形態の案内路の一例として条溝で構成される螺旋状溝121FLを用いたが、他の態様の案内路を駆動軸に設けてもかまわない。例えば、駆動軸の球体表面から螺旋状に突出した突条を本実施形態の案内路として設けてもかまわない。以下、図12〜図14を参照して、本実施形態の第2の変形例に係る揺動機構1bについて説明する。なお、図12は、螺旋状の突条を案内路とした揺動機構1bの部分断面図である。図13は、螺旋状の突条を案内路が形成された駆動軸22の側面図である。図14は、螺旋状の突条との滑合部近傍を拡大した側断面図である。
【0088】
図12において、揺動機構1bは、上述した揺動機構1aの駆動軸12が駆動軸22に変更された態様であり、他の構成要素については、揺動機構1aと同様であるため、詳細な説明は省略する。同様に、図13において、駆動軸22は、駆動軸12の凸球部121が凸球部221に変更された態様であり、他の構成要素については、駆動軸12と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0089】
凸球部221は、軸部122の軸径より大きな直径を有する凸球体である。凸球部221の表面である凸球面221Eには、螺旋状凸条221Mが付設される。この螺旋状凸条221Mは、駆動軸22の軸心を中心として、凸球面221Eに対して一定の高さで螺旋状に付設される。螺旋状凸条221Mの凸条断面形状は、一例として半円であるが、台形等の、他の断面形状の凸条を付設してもかまわない。なお、凸条断面形状が台形である場合、強度の向上等の効果が期待できる。ここで、螺旋状凸条221Mの断面形状および条幅や条高さ等の寸法は、一定であることが好ましい。また、螺旋状凸条221Mは、凸条断面形状の条頂点が凸球部221の球体中心から放射する方向へ付設されることが望ましい。これにより、駆動軸22の回転運動を揺動アーム14へスムーズに伝達することが可能となる。なお、螺旋状凸条221Mが、本発明の案内路の他の例に相当する。
【0090】
図14において、揺動機構1bにおける凹球部141の内周面141Iには、螺旋状凸条221Mと嵌合する切欠き部材244が設けられる。切欠き部材244は、本発明の滑合子の他の例であり、例えば螺旋状凸条221Mと嵌合可能な切欠きを一方端面に形成した円柱部材で構成される。切欠き部材244は、上述の螺旋状溝121FLに対する滑合球体144と同様に、孔141Hの孔内面およびばね145によって支持される。切欠き部材244は、ばね145の付勢力によって螺旋状凸条221M方向へ付勢され、孔141Hの内周面141I側開口部から、切欠きが形成されている端面側の一部が突出し、突出部分で螺旋状凸条221Mと滑合する。
【0091】
切欠き部材244の切欠き形状は螺旋状凸条221Mに断面形状に応じた形状で形成され、切欠き部材244と螺旋状凸条221Mと嵌合する。例えば、螺旋状凸条221Mの断面形状が半円形状である場合、滑合される切欠き部材244の切欠き形状も半円形状が望ましく、螺旋状凸条221Mの断面形状と同等の直径を有する半円形状の切欠きが切欠き部材244の一方端面に形成される。
【0092】
なお、図12に示すように、駆動軸22および揺動アーム14を組み合わせる方法や、連結された駆動軸22および揺動アーム14を共回り防止ガイド16に組み込む方法は、揺動機構1aと同様であるため、詳細な説明を省略する。ここで、図12から明らかであるが、駆動軸22の凸球部221は、螺旋状凸条221Mで凹球部141の内周面141Iと所定のクリアランスを介して遊嵌される。したがって、凸球部221は、螺旋状凸条221Mが形成されている部位以外の凸球面221Eを彫り下げることによって、凸球部221を軽量化することが可能である。
【0093】
(第3の変形例)
上記に説明した揺動機構1aにおいては、凹球部141の内周面141Iに滑合球体144が複数設けられてもかまわない。滑合球体144を複数設けると、滑合球体144を1個設ける場合に比べて滑合球体144の1個当りに加わる負荷が軽減される。そのため滑合球体144や螺旋状溝121FLの摩耗を低減する効果を得られる。なお、滑合球体144を複数設けることにより、何れかの滑合球体144と螺旋状溝121FLとの間に隙間が生じていても、他の滑合球体144が滑合するため、揺動アーム14を揺動させるトルクの低下を防ぐことができる。
【0094】
但し、凹球部141において滑合球体144が配設される位置によって、凹球部141が滑合球体144から受ける力の方向が異なり、凹球部141が回動する方向が異なる。具体的には、図7(a)において、揺動アーム14の揺動軸と駆動軸12の回転軸とを含む平面をωと呼称し、平面ωにより分断される一方の空間に含まれる凹球部141の領域を領域ζ、他方の空間に含まれる領域を領域ηと呼称する。複数の滑合球体144が領域ζおよび領域ηの両方の領域でそれぞれ同じ螺旋状溝121FLに滑合するよう凹球部141に配設され、駆動軸がA方向へ回転すると、凹球部141は、領域ζおよび領域ηに配置された各滑合球体144から相反するC方向およびD方向へ揺動する力を同時に受けて、何れの方向へも揺動できなくなる。したがって、凹球部141に滑合球体144を複数設ける場合には、領域ζまたは領域ηの何れか一方の領域内において、全ての滑合球体144が、螺旋状溝121FLに滑合するよう凹球部141に配設される必要がある。
【0095】
しかしながら、上記のように領域ζまたは領域ηの何れか一方に滑合球体144を複数設けられる場合、滑合球体144を1つ設けられる場合に比べ、揺動アーム14の揺動可能な範囲が小さくなることがある。これは、滑合球体144が1つ設けられる場合は、1つの滑合球体144が螺旋状溝121FLの始点から終点まで移動可能であるが、滑合球体144が複数設けられる場合は、螺旋状溝121FLの始点および終点に到達する滑合球体144が異なり、螺旋状溝121FL上における滑合球体144の移動範囲が小さくなるためである。
【0096】
以下では、図15〜図17を参照し、複数の箇所から回動するための力を受け、且つ揺動の範囲を広く構成できる揺動アーム44を備える揺動機構1cについて説明する。なお、図15は、第3の変形例に係る揺動機構1cの断面図である。図16および図17は、各々、T型部材344aを備える揺動機構1cの該部材近傍を拡大した一部透視斜視図およびT型部材344aを備える揺動機構1cの該部材近傍を拡大した断面図である。
【0097】
図15において、揺動機構1cは、凸球面321Eに螺旋状溝121FLと螺旋状溝121FRとが形成された駆動軸32を有する。螺旋状溝121FRは、螺旋状溝121FLと逆回りに進行し、螺旋状溝121FLとピッチ角が同じ螺旋状の溝である。このような螺旋状溝121FRおよび螺旋状溝121FLそれぞれに異なる滑合子が滑合すれば、滑合子の移動範囲が小さくならないため、揺動アーム44の揺動範囲が小さくなることがない。但し、螺旋状溝121FRおよび螺旋状溝121FLは、互いに交差して凸球面321Eに形成されるため、球形状の滑合子が交差する箇所で滑合すべき螺旋状溝と異なる螺旋状溝側へ滑合してしまい、揺動できなくなる場合がある。そこで、凹球部441は、滑合子としてT型部材344aおよびT型部材344bを備える。
【0098】
図16および図17を参照して、T型部材344aについて説明する。T型部材344aは、螺旋状溝121FLと滑合する滑合部344Taと、円柱部344Caとを有する。滑合部344Taは、螺旋状溝121FLと溝方向に所定の長さで滑合して凹球部441と凸球部321との間に配置される。そして、滑合部344Taは、螺旋状溝121FLの断面形状に応じた形状を底面とし、例えば長手方向に対して円弧状に曲成された柱形状を成す。なお、滑合部344Taは、螺旋状溝121FLが螺旋状溝121FRと交差している長さよりも長い長手長さを有する。一方、円柱部344Caは、円柱状を成す。円柱部344Caは、一方端部で滑合部344Taの一部に接合または一体成形される。
【0099】
次に、図17を参照して、T型部材344aが凹球部441及び凸球部321と系合する様子について説明する。T型部材344aは、孔141Haに円柱部344Caが遊挿されて支持される。孔141Haの内周面441I側開口部は、滑合部344Taが遊挿される凹空間が形成される。そして、滑合部344Taは、当該凹空間の内部で孔141Ha方向に摺動可能に支持される。なお、上記凹空間は、その内部でT型部材344aが孔141Ha方向に摺動するための所定の移動代を含む深さで形成される。孔141Haの外周面441E側開口部は、外周面441Eに沿って固定される板ばね445により塞がれる。板ばね445は、所定のねじ446により凹球部441の外周面441Eに固設される。ここで、T型部材344aは、滑合部344Taと螺旋状溝121FLとが滑合する際、必ず円柱部344Caの一方端部が板ばね445と当接する長さで形成される。そのため、T型部材344aは、板ばね445により螺旋状溝121FLへ向けて付勢され、上記に説明した滑合球体144と同様のバックラッシを低減する効果を得られる。
【0100】
図15において、T型部材344bも上記に説明したT型部材344aと同様にして螺旋状溝121FRと滑合する。ここで、滑合部344Taは領域ζで、滑合部344Tbは領域ηで、それぞれ螺旋方向の異なる螺旋状溝121FLおよび螺旋状溝121FRと滑合している。そのため、駆動軸32が回転すると、揺動アーム44に対してT型部材344aおよびT型部材344bの何れからも、揺動アーム44を同じ方向へ揺動させる力が働く。したがって、本変形例によれば、揺動機構1cは、揺動アーム44の揺動範囲を確保しながら、複数のT型部材344aおよびT型部材344bを設けることができる。なお、T型部材344aおよびT型部材344bを付勢するために、板ばね445の代りに上記の実施形態に示したばね145およびばね押さえピン146等が用いられても良い。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係る揺動機構は、任意のトルクで所定部材を揺動可能であり、小型のロボット関節や大型の機械等、様々な揺動機構として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る揺動機構1aの斜視図、(b)は揺動機構1aの断面斜視図
【図2】駆動軸12の側面図
【図3】(a)は揺動アーム14の斜視図、(b)は揺動アーム14の側面図
【図4】図1(b)における滑合球体144近傍を拡大した側面図
【図5】(a)は共回り防止ガイド16の断面斜視図、(b)は共回り防止ガイド16の断面図
【図6】揺動機構1aの組立図
【図7】図1の駆動軸12を回転させて揺動アーム14を揺動させる各段階の揺動機構1aの部分断面図
【図8】開口部に切り込み141Dが形成された揺動アーム14の斜視図
【図9】開口部に切り込み141Dが形成された揺動アーム14を備える揺動機構1aの断面斜視図
【図10】駆動軸12および揺動アーム14の内部に中空空間が形成された揺動機構1aの側断面図
【図11】揺動アーム34の斜視図
【図12】螺旋状の突条を案内路とした揺動機構1bの部分断面図
【図13】螺旋状の突条を案内路として形成された駆動軸22の側面図
【図14】螺旋状の突条との滑合部近傍を拡大した側断面図
【図15】第3の変形例に係る揺動機構1cの断面図
【図16】T型部材344を備える揺動機構1cの該部材近傍を拡大した一部透視斜視図
【図17】T型部材344を備える揺動機構1cの該部材近傍を拡大した断面図
【符号の説明】
【0103】
1 揺動機構
12、22、32 駆動軸
14、34、44 揺動アーム
16 共回り防止ガイド
121、221、321 凸球部
122 軸部
141、441 凹球部
142 揺動部
143 フェルト
144 滑合球体
145 ばね
146 ばね押さえピン
147 介在部材
161 頭部
162 主部
244 切欠き部材
341 円筒部
344 T型部材
445 板ばね
446 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から受ける回転駆動力に応じて所定部材を揺動する揺動機構であって、
前記回転駆動力を受けて所定の回転方向に回転する回転部材と、
前記回転部材と連結して所定の揺動方向に揺動する揺動部材と、
他の外部部材に固定され、前記回転部材の回転を支持する軸受孔および前記揺動部材の揺動運動をガイドするスリットが形成された支持部材とを備え、
前記回転部材は、
前記回転駆動力が入力され、前記支持部材の軸受孔に貫通して回転可能に配置される軸部と、
前記軸部の一方端部に固設され、その表面に前記軸部の回転軸を中心とした螺旋状の案内路が形成された凸球形状の凸球部とを含み、
前記揺動部材は、
前記凸球部の外周面と遊嵌する凹形状内周面を有し、前記スリットに沿って移動可能な遊嵌部と、
前記凹形状内周面に設けられ、前記凸球部と前記遊嵌部とが遊嵌した状態で当該凸球部に形成された前記案内路と滑合する滑合子と、
前記遊嵌部の外側面に固設され、前記遊嵌部の移動に応じて前記スリットが形成された方向に揺動することによって前記所定部材を揺動させる揺動部とを含む、揺動機構。
【請求項2】
前記支持部材は、前記軸部の回転軸に平行な平面に沿って前記スリットが形成され、
前記揺動部は、前記遊嵌部が前記スリットに沿って移動することによって前記軸部の回転軸に平行な平面に沿った方向に揺動する、請求項1に記載の揺動機構。
【請求項3】
前記支持部材は、前記軸受孔および前記スリットと連通して前記凸球部を配置する球状空間がその内部に形成され、
前記凸球部は、前記球状空間内に配置された状態で所定の隙間を介して前記支持部材内壁と遊嵌する、請求項1または請求項2に記載の揺動機構。
【請求項4】
前記凸球部は、前記案内路と前記滑合子との静止摩擦係数μに対して、リード角γが
γ≦tan-1(μ)
で形成された螺旋状の前記案内路が形成される、請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の揺動機構。
【請求項5】
前記遊嵌部は、前記案内路と同時に嵌合する複数の前記滑合子が前記凹形状内周面に設けられる、請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の揺動機構。
【請求項6】
前記凸球部は、その表面に前記軸部の回転軸を中心として螺旋の進行方向が異なる螺旋状の2つの案内路が形成され、
前記複数の滑合子は、前記2つの案内路に沿ってそれぞれ嵌合する、請求項5に記載の揺動機構。
【請求項7】
前記遊嵌部は、少なくとも前記凹形状内周面側に開口する筒孔が形成され、
前記滑合子は、前記筒孔に遊挿される硬質部材であり、
前記遊嵌部は、前記硬質部材に対して前記遊嵌部の外側面側となる前記筒孔内に配され、当該硬質部材を当該筒孔に沿って前記案内路へ向かう方向に付勢する弾性体を含む、請求項1乃至請求項6の何れか1つに記載の揺動機構。
【請求項8】
前記筒孔は、前記遊嵌部の凹形状内周面側から外側面まで貫通して形成され、
前記硬質部材および前記弾性体は、前記筒孔の外側面側開口部から付替可能に構成される、請求項7に記載の揺動機構。
【請求項9】
前記案内路は、前記凸球部表面に対して一定深さで彫設された螺旋状の条溝であり、
前記滑合子は、前記遊嵌部の凹形状内周面に突設され、前記条溝に嵌合可能な突起である、請求項1乃至請求項8の何れか1つに記載の揺動機構。
【請求項10】
前記凹形状内周面は、所定の隙間を介して前記凸球部の凸球面を包み込む球面である、請求項9に記載の揺動機構。
【請求項11】
前記凹形状内周面は、所定の隙間を介して前記凸球部の凸球面と遊嵌する直円柱面である、請求項9に記載の揺動機構。
【請求項12】
前記案内路は、前記凸球部表面に対して一定高さで突出した螺旋状の突条であり、
前記滑合子は、前記遊嵌部の凹形状内周面に突設され、前記突条に嵌合可能な凹部を有する突起である、請求項1に記載の揺動機構。
【請求項13】
前記外部部材に対して前記支持部材を所定の方向に回動させ、任意の角度で当該支持部材を固定する支持部材回動機構を、さらに備える、請求項1乃至請求項12の何れか1つに記載の揺動機構。
【請求項14】
前記回転部材は、前記軸部の開放端から前記凸球部の表面まで貫通する第1貫通孔を有し、
前記揺動部材は、前記遊嵌部の凹形状内周面から前記揺動部の開放端まで貫通する第2貫通孔を有し、
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とは、互いに連通して配置される、請求項1乃至請求項13の何れか1つに記載の揺動機構。
【請求項15】
前記凸球部の外周面および前記遊嵌部の凹形状内周面の少なくとも一方側の一部に、潤滑剤を含む潤滑剤含有部材が設けられ、
前記潤滑剤含有部材は、対向する面に摺接する、請求項1乃至請求項14の何れか1つに記載の揺動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−79632(P2009−79632A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248001(P2007−248001)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(507319171)
【出願人】(000100838)アイセル株式会社 (62)
【Fターム(参考)】