損失線路
【課題】ディジタル回路やスイッチング回路において、信号線路間のクロストークを低減させるとともに、整合終端回路が不要で、EMCやシグナルインテグリティに関する問題を解決する伝送線路構造を提供する。
【解決手段】
図4において、損失線路は、絶縁基板15と、絶縁基板15の一つの面に貼付された金属箔16と、セパレータ17と、セパレータ17を挟んで絶縁基板15の他の面に対向して配置される金属箔18と、セパレータ17に含浸されて金属箔18と絶縁基板15の間に形成される固体電解質層19とから構成され、金属箔16と金属箔18を電極とする平行板損失線路として機能する。損失線路をスイッチング信号やスイッチング電力の伝送用に使用することにより、信号線路間のクロストークを低減させるとともに、整合終端回路が不要となり、また、EMCやシグナルインテグリティに関する問題が解決する。
【解決手段】
図4において、損失線路は、絶縁基板15と、絶縁基板15の一つの面に貼付された金属箔16と、セパレータ17と、セパレータ17を挟んで絶縁基板15の他の面に対向して配置される金属箔18と、セパレータ17に含浸されて金属箔18と絶縁基板15の間に形成される固体電解質層19とから構成され、金属箔16と金属箔18を電極とする平行板損失線路として機能する。損失線路をスイッチング信号やスイッチング電力の伝送用に使用することにより、信号線路間のクロストークを低減させるとともに、整合終端回路が不要となり、また、EMCやシグナルインテグリティに関する問題が解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路または回路部品に関し、特に、高速スイッチング素子を使用する、情報技術装置やディジタルデータ通信機器のディジタル信号伝送回路、並びにDC−DCコンバータ等のスイッチングモード電力伝送回路に使用し、小型軽量化が可能で、変換効率、信号品位(シグナルインテグリティ)、および電磁環境適合性(EMC)を向上させることが出来る損失線路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報技術装置やマルチメディア機器のさらなる高性能化、高機能化のために、トランジスタの高速化が進んでいる。情報技術装置やマルチメディア機器、並びに電力変換器には、また、省エネルギー化や小型軽量化の要求も強い。
【0003】
しかし、高速スイッチング素子を使用する回路や機器においては、高いレベルの電磁ノイズが発生するという問題があり、コンデンサ等の従来の部品を使用する回路設計技術では、EMC対策部品やシールド材を使用しても信号品位やEMCの向上が困難で、省エネルギー化や小型軽量化への要求に応えることも難しかった。また、伝送線路構造のディジタル信号伝送回路においては、信号品位向上のために整合終端処理が必須であった。
【0004】
回路設計技術の理論を支配するのは物理学であり、より直接的には電磁気学である。電磁気学によると、回路の状態には活性状態(exited states)、定常状態(stationary states)および、実用上は定常状態と見なせる準定常状態(quasi
stationary states)が存在する。活性状態とは、回路上の電界と磁界が変化または振動している状態であり交流回路はその一例である。振動する電界と磁界は電磁波となって絶縁体中を進行する。該絶縁体が真空空間の場合は、電磁波は光速で進行する。
【0005】
定常状態とは、回路上の電界と磁界が静止している状態であり直流回路はその一例である。準定常状態とは、電界と磁界が電磁波となって回路上を進行するが、電磁波の波長が回路長に対して非常に長く回路内での電磁波の挙動が強弱振動だけと見なしても実用上不都合が生じない状態である。低周波アナログ回路や、およそ1[ns]以上の立ち上がり時間を有するスイッチング素子を10[cm]以下の配線長を有する回路で使用する場合は、準定常状態と見なすことが出来る一例である。
【0006】
電磁気学によると、活性状態にある回路の電流はアンペールの法則として定義され次式で示される。
【0007】
【数1】
【0008】
電磁気学によると、電位Vは、電界の及ばない無限遠から導線の一点までの電界の積分値と定義されるが実用的にはグランド面から導線の一点までの電界の積分値として、また、電界Eは電位Vの傾きとしてそれぞれ次式から求められる。
【0009】
【数2】
【0010】
マックスウエルは、磁界に関する理論と電界に関する理論を融合したマックスウエルの方程式を1873年に発表し、続いてこの式をダランベールの波動方程式の形式に変形し、ベクトル波動方程式を導出した。マックスウエルは、1862年頃から主張していた、電磁波と光はともに光速で伝搬することをこの式を用いて理論的に証明し、線形電磁波理論(以下電磁波理論)を完成させ、これにより電磁気学が完成した。ヘルツは、1887年に、実験によって電磁波の存在を実証し、マックスウエルの電磁波理論の正しさを証明した。
【0011】
電磁気学によると、時間的に変化する電界と磁界は相互に作用しつつ横波となって空間または誘電体中を伝搬する。真空中を伝搬する電磁波の速度は光速である。伝搬する電磁波はポインチングベクトル理論に従って電力を伝搬する。空間を伝搬する電磁波は、周期および極性が一致し振幅ベクトルが進行方向に対して直交する電界波と磁界波とから構成される。この状態の電磁波はTEM(transverse electromagnetic)波と呼ばれる。TEM波を構成する電界波の振幅を磁界波の振幅で割った値は波動インピーダンス(surge
impedanceまたはwave impedance)と呼ばれる。
【0012】
電磁気学によると、電磁波は空間だけでなく媒体中も進行する。損失のない誘電体中を進行する電磁波の速度は、光速に対して比誘電率の平方根だけ遅くなり、波長は比誘電率の平方根だけ短くなる。後者は、波長圧縮と呼ばれる。
【0013】
電磁気学によると、損失のある媒体中を進行する電磁波は、次式で示される減衰定数γに従い、進行に伴って振幅が減少し位相が変化する。γの実数項であるαは減衰定数、γの虚数項であるβは位相定数と呼ばれる。αは、nep/m(ネパー/メートル)の単位で表される。1 [nep/m]は、1メートル進行して振幅がexp-1または0.368倍に減衰することを意味する。
【0014】
【数3】
【0015】
電磁気学によると、式(3)中のγ 2を変形して得られる次式の括弧の項は、損失のある誘電体に関する複素誘電率と定義され、虚数部(σ/ε0ω)を実数部(εr)で割った値を誘電体損失の正接と呼び、tanδで表す。但し、tanδは、電磁気学上、深い意味を持たない。
【0016】
【数4】
【0017】
電磁波が導体中を進行する場合は、導体中では電磁波に作用する電荷は存在せず導電率σは ωεに比べて非常に大きいので、γは次式で表される。次式中における減衰定数α の逆数であるδは、表皮厚さと呼ばれる。
【0018】
【数5】
【0019】
電磁気学によると、導体中を進行する電磁波の電界と磁界の比である固有インピーダンスZ0は、損失のある媒体中の固有インピーダンスにおいて導電率σがωεに比べて非常に大きいとして、次式で与えられる。
【0020】
【数6】
【0021】
回路上の電界と磁界が変化または振動している活性状態または準定常状態においては電磁波理論が回路を支配し、この場合は導体中を電磁波が進むことは困難である。しかし回路上の電界と磁界が静止している定常状態においては導体中を電流が比較的容易に移動することが出来る。
【0022】
物理学によると、導体中には無尽蔵に近い自由電子すなわち電荷が存在する。しかし、導体中の総電荷量は物性に依存して決まり定常的にはその値は一定である。直流電源に静的負荷が接続されている場合は導体中の電荷の移動による電流が流れるが、一般に、電荷の移動軸にはわずかな電界しか印加出来ないので電荷の平均移動速度は極めて遅い。
【0023】
例えば、1平方ミリメートルの断面を有する銅線中を導体中の電荷の速度(dq/dt)で定義される10アンペアの電流が進行しているときの電流の進行速度は、物理学に従って計算すると常温で0.368[mm/s]となる。導体中の電荷は、遅いながらも移動は可能であるので、導体の他端で定常的に電荷が消費される際に導体の一端から同量の電荷が定常的に供給されれば、導体の他端に接続される抵抗器等の定常負荷へのエネルギー供給が支障なく行われる。
【0024】
伝送線路上の電気信号の進行を扱うのが電気通信工学である。電気通信工学によると、直流的に絶縁された2本の導体間に電気信号を与えると、電気信号は電流波と電圧波となって伝送線路を進行するとしている。
【0025】
電気通信工学では、交流回路理論と同様に、電流を導体中の電荷の平均速度(dq/dt)すなわち導体電流としている。しかし、電磁気学の基礎を成すマックスウエルの方程式においては、導体電流は、時間の関数ではない電流密度Jに対応させている。
【0026】
交流回路理論や電気通信工学が電流をdq/dtと定義しているのは以下の理由によると考えられる。交流回路理論を支える重要な法則の一つであるキルヒホッフの法則が発表されたのが1845年で、マックスウエルが電磁波の存在を理論的に証明しヘルツによって実験で電磁波の存在が確認される42年前である。また、電気通信工学を支える重要な理論の一つである電信方程式が開発されたのが1874年で、同様に電磁波の存在が確認される13年前である。従って、交流回路理論および電気通信工学が実用化された当時は、回路の作用を電磁波の作用とする考え方がそもそも存在していなかった。さらに、その後も理論の修正が行われなかった。
【0027】
電気通信工学の基礎を成す電信方程式において、導体電流が光速で流れることが出来るとしている根拠となっているのはダランベールの波動方程式である。ダランベールの波動方程式では波動の主体を、スカラー量のラプラシアンとするベクトル関数で表現し、特定していない。導体電流が導体間電圧とともに波となることがは、電気回路を支配する電磁気学と整合していなので、電圧と電流に関する回路方程式をダランベールの波動方程式に対比させて得られる電信方程式は、電磁気学とは無関係であり、また電磁気学に反していることになる。
【0028】
電流の定義が電磁気学に反すると、線路の電圧や、インピーダンス、電磁波との関係、さらには伝送損失に関しても電磁気学と矛盾する考え方が生じる。電気通信工学にはこの矛盾が散見されるが、歴史が古く現在でも伝送線路設計への豊富な適用実績があることから、従来通りの連続波を対象とする伝送線路設計では電磁気学との矛盾は顕在化していない。
【0029】
スイッチング波またはディジタル波のような間欠波を対象とする伝送線路設計においても電気通信工学に基づくと効率的であると言う考え方が支配的である。しかし電気通信工学のディジタル回路への実用実績が少ないため電磁気学と対比しつつ慎重に設計や解析を行わないと、電磁気学との前記矛盾が顕在化する可能性がある。
【0030】
電磁気学によれば伝送線路を構成する2本の導体に挟まれる絶縁体が真空である場合は、TEM波の電磁波は光速で真空中を進行する。つまり、この場合の電流や電圧は、伝送線路の導体ではなくて絶縁体中を進み、それぞれ式(1)および式(2)から求められる値となる。実際の電流や電圧は磁界や電界であるので絶縁体中を波となって準光速で進むことが可能となる。伝送線路上のTEM波を構成する電界波の振幅を磁界波の振幅で割った値が、特性インピーダンスである。
【0031】
電気通信工学によると、伝送線路上を進行する信号の挙動は、伝送線路の特性インピーダンスと伝搬定数によって決まる。理想的な平板導体が理想的な絶縁体を挟んで平行に対向している平行板線路の特性インピーダンスZ0は、伝送線路の物理定数によって次式から求められる。平板導体や絶縁体の材料特性は、伝送線路の特性インピーダンスに対して実用上大きな影響を及ぼさない。
【0032】
【数7】
【0033】
電気通信工学によると、既知の特性インピーダンス(Z0)を有する伝送線路を通して未知の特性インピーダンス(Z1)を有する伝送線路に電磁波を注入したときの、
前記二つの伝送線路の接続点における反射係数(S11)は、次式で表される。
【0034】
【数8】
【0035】
電気通信工学によると、損失を有する伝送線路すなわち損失線路の透過係数(S21α)は、次式で表される。
【0036】
【数9】
【0037】
電磁気学によると、実用的な伝送線路の減衰定数は、電磁波が損失のある誘電体内を進行するときの減衰と、電磁波が誘電体内を進行する過程でその一部が導体内に侵入して熱になる導体損と、伝送線路外に漏れ出る放射損との和となると考えることが出来る。
【0038】
高速ディジタルデータ通信機器の配線設計は電気通信工学に従って行われている。しかし、電気通信工学は正弦波等の連続波を扱う伝送線路設計には適するが、前述のようにディジタル信号のような間欠波を扱う伝送線路設計には、電磁気学との矛盾があり適さない。
【0039】
情報技術装置や高速ディジタルデータ通信機器等に使用される直流電源は、回路に電荷を供給すると考えられている。
【0040】
電磁気学によると、マックスウエルは、単位(試験)点電荷に働く力の原因は、単位点電荷の存在する場所における電界にあるとし、クーロンの法則を修正した。この事実はあまり知られていない。
【0041】
修正された電磁気学によると、電界に関する静電(electrostatic)エネルギーwEは、次式で表される。
【0042】
【数10】
【0043】
このように、静電エネルギー(wE)は電荷が持っているのではなくて電界Eと電束密度Dの積または電界Eとして媒質に蓄積していることになる。
【0044】
なお、電圧Vが印加された容量Cの対向電極間に蓄積されている静電エネルギーwCは、電極距離をd、電極面積をSとすると、次式で表される。
【0045】
【数11】
【0046】
非特許文献1および非特許文献2に示される孤立電磁波コンセプトによると、スイッチング素子は、スイッチングの瞬間に、非線形波動またはソリトンの一種である孤立電磁波を励起する。一般のスイッチング機器のスイッチング素子も、同様のメカニズムで、スイッチングの瞬間に非線形波動またはソリトンの一種である孤立電磁波を励起する。
【0047】
スイッチング素子のスイッチング動作時の孤立電磁波の励起メカニズムは、1834年にJohn Scott Russell がソリトンを発見する際に行った種々の実験の内の水を貯めた水門(ゲート)を急に開くことによって生じたソリトンの発生メカニズムや、ソリトンの一種であると確認されている津波の生成過程に極めて類似している。
【0048】
非特許文献1および非特許文献2に示される孤立電磁波コンセプトによると、スイッチング素子がオフからオンにスイッチングする瞬間に、スイッチング素子が電源線路と信号線路を接続する点の電位は、前記直流電源の電圧を電源線路と信号線路の特性インピーダンス分割した値になる。従って、電源線路には電圧を分割電圧まで下げる極性の孤立電磁波が、信号線路には電圧を分割電圧まで上げる極性の孤立電磁波がそれぞれ同時に励起され、電磁波理論に従い、互いにその振幅ベクトルが直交する孤立電界波と孤立磁界波を伴って伝送線路上を進行する。
【0049】
図1は、孤立電磁波の挙動を説明するためのプッシュプル回路1に関する等価回路の一例である。図1において、特性インピーダンスZ0の伝送線路の途中にプッシュプル回路1が接続されており、特性インピーダンスZ0の電源線路5は直流電源4とプッシュプル回路1との間に接続されて電源線路を構成し、特性インピーダンスZ0の信号線路6はプッシュプル回路1と整合終端抵抗7との間に接続されて信号線路を構成している。プッシュプル回路1は、PチャネルMOS
FET2とNチャネルMOS FET3によって構成されている。
【0050】
図1において、プッシュプル回路1のオン状態とは、PチャネルMOS FET2がオンでNチャネルMOS FET3がオフの状態であり、プッシュプル回路1のオフ状態はその逆である。伝送線路を進行するTEM波に関する磁界と電流の関係および電界と電位の関係は、電磁気学においてそれぞれアンペアの法則および電位の定義として示される。
【0051】
図2に、プッシュプル回路1がオフからオンに変化する時の信号線路6上の電位波形9と、電磁気学に示される電位の定義から逆算して求められる信号線路6上を進む電界波形8とを示す。図3は、プッシュプル回路1がオフからオンに変化する時の電源線路5上の電位波形11と、電磁気学に示される電位の定義から逆算して求められる電源線路5上を進む電界波形10とを示す。
【0052】
図2および図3に示すように、プッシュプル回路1のスイッチングによって生じる電界の時間微分波形は、スイッチング素子の立ち上がり波形の最大傾斜部の接線を立ち上がり波形と見なして求める立ち上がり時間と円周率との積の逆数として求められる周波数で定義される実効周波数(significant frequency)を有する正弦波の半波形に近似している。実効周波数の考え方を引用すると、前記近似の確かさ(accuracy)は、92%以上と見込まれる。従って、設計だけに限ると実用上実効周波数で行うことが出来る。
【0053】
図1から図3において、プッシュプル回路1がオフからオンに変化すると、図1中のB点とC点の電位は等しくE/2[V]となる。プッシュプル回路1によって励起された、お互い逆極性を有する信号線路6上を進む孤立電界波8と電源線路5上を進む孤立電界波10は、それぞれプッシュプル回路1を背にして反対方向に進む。信号線路6上を進む孤立電界波8は、信号線路6の電位を0[V]からE/2[V]に上昇させつつ進み、整合終端抵抗7で消滅する。一方、電源線路5上を進む孤立電界波10は、電源線路5の電位をE[V]からE/2[V]に降下させつつ直流電源4に向かって、それぞれの伝送線路を構成する絶縁体中を準光速で進行する。
【0054】
直流電源4が端子インピーダンスゼロの理想電源である場合は、電源線路5上を進行する孤立電磁波は直流電源4で、反射し、信号線路6上に励起された孤立電磁波と同極性となり、電源線路5および信号線路6の電位をE/2[V]からE[V]に上昇させつつ進行し、整合終端抵抗7で消滅する。
【0055】
非特許文献1および非特許文献2によると、伝送線路上を進行する孤立電磁波の波長は次式で定義される。
【0056】
【数13】
【0057】
従来のディジタル信号伝送回路、並びにスイッチングモード電力伝送回路並びに前記の本特許のアイデアの理論的な根拠については、下記の特許文献や非特許文献に記載されている。従来のディジタル信号伝送回路、並びにスイッチングモード電力伝送回路の要点は後述される。
【特許文献1】特開平7−295700
【特許文献2】特開平8−18583
【特許文献3】特開平9−46006
【特許文献4】特開2000−124565(P2000−124565A)
【特許文献5】特開2001−144452(P2001−144452A)
【特許文献6】特開2003−78402(P2003−78402A)
【特許文献7】特開2004−363315(P2004−363315A)
【特許文献8】特開2006−19590(P2006−19590A)
【特許文献9】特開2006−66454(P2006−66454A)
【非特許文献1】HirokazuTohya and Noritaka Toya著 「A NovelDesign Methodology of the On - Chip Power Distribution Network Enhancing thePerformance and Suppressing EMI of the SoC」、IEEE International Symposium on Circuits and Systems 2007、 pp. 889-892、May 2007.
【非特許文献2】遠矢弘和、遠矢紀尚 著 「SoCの性能とEMCを大きく改善するオンチップ電源分配回路の新しい設計法」、電子情報通信学会 信学技報、Vol.107、No. 149、 EE2007-20、pp.73-78、2007年7月.
【非特許文献3】Stephan Kirchmeyer and KnudReuter著 「Scientific importance, properties and growing applications ofpoly(3,4-ethylendioxythiophene)、The Royal Society of Chemistry、Journal ofMaterials Chemistry.,2005、pp. 2077-2088、2005.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0058】
解決しようとする問題点の第1は、特許文献1に関する。特許文献1は、SCSIバスライン終端装置に関し、バスラインの過電流を未然に防止しノイズスパイクを除去する技術を開示している。しかし、バスラインを構成する信号線路毎に、プルアップ終端抵抗、トランジスタ回路で構成される信号ライン増強電流キッカー回路、および信号線路上のトランジェントを除去するために上限電圧と下限電圧の範囲を制限する抑止回路手段を有する信号ラインインピーダンス整合終端装置とで構成されており、設計が複雑であり使用部品数も多かった。また、開示されている技術によって、LSIの性能を最大限引き出すことが困難であった。
【0059】
解決しようとする問題点の第2は、特許文献2に関する。特許文献2は、バスの終端での消費電力を低く抑え、かつ高速伝送を可能とすることを目的として、終端電源と伝送線路との間に2個の抵抗が直列に接続され、2個の抵抗器の接続部とグランドとの間にコンデンサが接続され、伝送線路に接続されている伝送線路の特性インピーダンスにほぼ等しい値を有する抵抗とコンデンサとローカットフィルタを形成する伝送線路終端方法を開示している。しかし、電源の端子インピーダンスやコンデンサのインピーダンスを必要とされる広い帯域に亘って充分低い値とすることが非常に困難なことや、抵抗器は電磁気学に基づく素子ではないため、開示されている技術によって、高ビットレートのディジタル信号を高品位で伝送することは困難であった。
【0060】
解決しようとする問題点の第3は、特許文献3に関する。特許文献3は、グランド層の上に誘電体がありその上に導体が複数本あるマイクロストリップラインにおいて、信号線路間のクロストークを低減させることを目的として、信号線路用ストリップ線の間にグランド層に一部が接続されたストリップ線を挟む技術を開示している。しかし、ストリップ線の数が増えるために、開示されている技術によって、配線密度の高い伝送線路構造を実現することは非常に困難であった。
【0061】
解決しようとする問題点の第4は、特許文献4に関する。特許文献4は、グランド層の上に誘電体がありその上に導体が複数本あるマイクロストリップラインにおいて、信号線路間のクロストークを低減させることを目的として、信号線路の間にグランド層に両端が整合終端され送受回路に接続されていないダミー線路を挟む技術を開示している。しかし、ストリップ線路および終端抵抗の数が増えるために、開示されている技術によって、配線密度の高い伝送線路構造を実現することは非常に困難であった。
【0062】
解決しようとする問題点の第5は、特許文献5に関する。特許文献5は、多層プリント基板における配線のクロストークを低減し、しかも多層プリント基板の大型化とコストアップを防止することを目的として、多層プリント基板を、二つの第1の誘電体層と、これら二つの誘電体層に挟まれるように形成された第2の誘電体層と、二つの第1の誘電体層の上面と下面に形成されたGNDプレーン層と、二つの第1の誘電体層の間に挟まれかつ垂直方向に対向するように配置された二本の信号線とで構成し、第2の誘電体層の比誘電率を第1の誘電体層の比誘電率より小さくする技術を開示している。しかし、第1の誘電体層と第2の誘電体層の比誘電率の差を、クロストークを低減するほど大きくすることは実用上困難であり、信号線を広範囲に亘って垂直方向に対向するように配置することも実用上困難であった。
【0063】
解決しようとする問題点の第6は、特許文献6に関する。特許文献6は、トランジス
タの動作時における出力電圧の傾きを緩やかにして急激な電圧変動が発生しないようにすることによって、LSIオンチップインターコネクトでの、クロストークノイズを安定して減少させ、クロストークノイズに起因する回路誤動作を確実に防止することを目的として、入力に2個のトランジスタを使用して共通出力端の電圧を段階的に変化させる技術を開示している。しかし、信号の上昇及び降下時間が長くなり性能を低下させてしまう、2段階で変化させてもクロストークノイズが1/2しか低減されない、およびトランジスタや配線の数が増えてしまうといった問題があり、実用化するのは困難であった。
【0064】
解決しようとする問題点の第7は、特許文献7に関する。特許文献7は、クロストークノイズにより信号の伝送品質を劣化させることなく、高密度に配線パターンを配線することができるプリント配線板を得ることを目的として、一対のストリップ線路とグラウンド層との間にグラウンドパターンを形成し、他の一対のストリップ線路とグラウンド層との間にグラウンドパターンを形成する技術を開示している。しかし、グラウンドパターンを形成するための配線層が増えるために、開示されている技術によって、配線密度の高い伝送線路構造を実現することは困難であった。
【0065】
解決しようとする問題点の第7は、特許文献7に関する。特許文献7は、クロストークノイズにより信号の伝送品質を劣化させることなく、高密度に配線パターンを配線することができるプリント配線板を得ることを目的として、一対のストリップ線路とグラウンド層との間にグラウンドパターンを形成し、他の一対のストリップ線路とグラウンド層との間にグラウンドパターンを形成する技術を開示している。しかし、グラウンドパターンを形成するための配線層が増えるために、開示されている技術によって、配線密度の高い伝送線路構造を実現することは困難であった。
【0066】
解決しようとする問題点の第8は、特許文献8に関する。特許文献8は、外部から侵入する電磁波に対する耐性の向上、及び基板内から発生する電磁波に対する放出の抑制とともに、シグナルインテグリティ特性の劣化を防止することを目的として、信号用のライン配線が設けられた信号層と、最上層及び/又は最下層に積層され、磁性材料と絶縁材との複合材料からなる磁性層とを備え、磁性層には信号用のライン配線を設けないとする多層プリント回路基板技術を開示している。しかし、開示されている技術は、多層プリント回路基板の外部空間での電磁干渉に関してはある程度有効であるが、シグナルインテグリティに直接関わる、多層プリント回路基板の内部での電磁干渉に関しては効果が無い。従って、開示されている技術によって、シグナルインテグリティ特性の劣化を効果的に防止すること困難であった。
【0067】
解決しようとする問題点の第9は、特許文献9に関する。特許文献9は、基板間通信を誘導性結合によって実現する場合に、複数の通信チャネルを近接して並列に並べてもクロ
ストークの発生を実際上無視できる程度に小さくすることができる電子回路を提供することを目的として、送信コイルを下のチップに、受信コイルを上のチップに設けて、チップ間の距離をX、通信チャネル間の距離(すなわち、コイル中心間の水平距離)をYとしたとき、所定のYoにおいて、送信コイルに起因する受信コイル内の磁束密度が0になる位置が存在する。すなわち、Yが小さいと大きなクロストークが発生し、Yが大きいと逆符号の小さなクロストークが発生するため、その途中で磁束密度Bを受信コイル内で積分した値が0になる位置が必ず存在することになる。この位置においては原理的にクロストークが発生しないとする電子回路を開示している。しかし、開示されている技術は、時間的に変化する電磁界は電磁波となって線路上を進行するという電磁気学に従っていない。停止している静磁界の分布によってクロストークの生じない位置を特定出来るとしているが、クロストークは線路上を進行するTEM波以外の、不定の方向に進む漏洩電磁波によって生じるので、クロストークの生じない位置を特定することは原理的に出来ない。従って、開示されている技術によって、実用上、クロストークを抑圧することは不可能であった。
【0068】
非特許文献1および非特許文献2は本特許の理論的な根拠を成す重要文献であるがすでに詳述した。非特許文献3も本特許の理論的な根拠の一つである。非特許文献3は、ナノサイズの粒子にしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレン・スルホン酸の錯体の例が示されている。このように薬品メーカからナノサイズの固体電解質材料が供給されれば、これを使用する部品メーカ等での化学重合反応工程が不要になる。非特許文献3のような化学メーカの努力により、100
[S/m]以上の導電率を有する平均粒径は100[nm]以下の固体電解質材料の商品化は間近となっている。
【0069】
アナログ回路は、回路状態の変化が比較的緩やかで始まりと終わりが明確でないことが多い。アナログ回路の歴史は古く、特に工学においては経験則等の適用によって、電磁気学に戻らなくても、従来の交流回路理論や電気通信工学に従う回路設計において、実用上、問題が生じることはほとんど無かった。
【0070】
一方、アナログ回路の場合と異なり、スイッチング回路における状態の変化の始まりと終わりは明確である。スイッチング回路の状態の変化は非常に急激であり、急激な電界または磁界の変化は当然ながら大きなレベルの電磁波を励起する。スイッチング回路における電界または磁界の変化は間歇的である。さらに、半導体集積回路中の約9割を占めるデータ処理回路においては、一般にスイッチングの周期は不定である。
【0071】
以上のようにアナログ回路とスイッチング回路は、電磁気学の観点からは大きく異なっている。しかし、従来の電気通信工学や交流回路理論では、間欠的な回路動作を想定した回路すなわちパルス回路の設計は、電磁気学とは関係のない前述のような手法で行われ、解析は、スイッチング波をひずみ波の一種と考えるフーリエ変換法が適用されてきた。
【0072】
フーリエ変換法によると、ひずみ波は正弦波である多数の高調波から構成されている。これらの高調波は始まりと終わりが無い多数の正弦波である。回路上の信号を高調波毎に解析してその結果を加算すれば、スイッチング回路の解析が可能となる。しかし、フーリエ変換法は数学の一手法であり、上位理論である電磁気学との整合性を確認した上で電気電子回路の設計や解析に採用されている訳ではないため、ディジタル回路で発生する瞬時現象の解析は、現実との乖離が甚だしく、不可能である。
【0073】
たとえばデューティが1/10で繰り返し周波数が1[GHz]のスイッチング波をフーリエ変換すると振幅の1/10の値の直流成分と1[GHz]を基本波とする高調波とに分解できる。直流電流はほとんど流さないCMOS回路を使用する半導体集積回路内のある長さの配線または伝送線路が、1[GHz]の振幅を1/2に低下させる損失を有しているとすると、配線または伝送線路の終端でのスイッチング波の振幅は、解析結果ではほぼ1/2以下に低下する。
【0074】
しかし、電磁気学に従うと、スイッチング波の振幅は直流電源から供給される静電エネルギーによって維持される。静電エネルギーは波ではないので配線または伝送線路の損失の作用は受けない。従って、伝送線路の終端で観測されるスイッチング波の振幅は減衰しないはずである。
【0075】
この事実は、スイッチング波をひずみ波として扱うことが誤りであることを示している。また、この事実は、フーリエ変換法に基づいて生じる群速度の概念に従う、ディジタル信号配線における信号品位(シグナルインテグリティ)に関する従来の理論には修正が必要であることを示している。すなわち、この事実は、スイッチング回路やディジタル回路上での瞬時の変化と比較的長い期間の挙動を矛盾無く説明できる、統一した設計および解析のための理論が、新たに構築されなければならないことを示唆している。
【0076】
本発明は、上記問題を根本的に解決する手段を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0077】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、損失線路に係り、絶縁基板と、前記絶縁基板の一つの面に貼付された第1の金属箔と、セパレータと、該セパレータを挟んで前記絶縁基板の他の面に対向して配置される第2の金属箔と、前記セパレータに含浸されて前記第2の金属箔と前記絶縁基板の間に形成される固体電解質層とから成り、前記第1の金属箔と前記第2の金属箔を電極とする平行板損失線路として機能することを特徴としている。
【0078】
また、請求項2記載の発明は、損失線路に係り、請求項1記載の損失線路において、該損失線路が、前記絶縁基板と、該絶縁基板の一つの面に貼付された前記第1の金属箔と、前記絶縁基板の他の面に形成される前記固体電解質層と、該固体電解質層の上面に形成される導電性カーボンペースト層と、前記第2の金属箔と、該第2の金属箔を前記導電性カーボンペースト層に貼付するために用いられる導電性金属粉ペースト層とから成り、前記第1の金属箔と前記第2の金属箔を電極とする平行板損失線路として機能することを特徴としている。
【0079】
また、請求項3記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項2記載の損失線路において、該損失線路が、前記絶縁基板と、該絶縁基板の一つの面に貼付された前記第1の金属箔と、前記絶縁基板の他の面に形成される、誘電体酸化皮膜の形成処理が施された弁作用金属粒子を含む弁作用金属粒子ペースト層と、該弁作用金属粒子ペースト層上に形成される前記固体電解質層と、該固体電解質層上に形成される前記導電性カーボンペースト層と、前記第2の金属箔と、該第2の金属箔を前記導電性カーボンペースト層に貼付するために用いられる前記導電性金属粉ペースト層とから成り、前記第1の金属箔と前記第2の金属箔を電極とする平行板損失線路として機能することを特徴としている。
【0080】
また、請求項4記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項3記載の損失線路において、該損失線路が、1つ以上のスイッチング素子を有するスイッチング回路間の信号の送受信のために設けられる伝送線路の全てまたは一部に使用され、前記第1の金属箔が前記信号線路を構成する信号導体の全てまたは一部を構成し、前記第2の金属箔が前記信号線路を構成するグランド導体に並列に接続されることを特徴としている。
【0081】
また、請求項5記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項4記載の損失線路において、前記伝送線路が、半導体集積回路内の半導体チップ上に形成されるインターコネクト構造、または印刷配線基板に形成される配線構造、またはシャーシ内に形成されるワイヤハーネス、またはケーブルの、一部または全てを構成することを特徴としている。
【0082】
また、請求項6記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項5記載の損失線路において、前記第1および第2の固体電解質層が、10[S/m]以上の導電率を有することを特徴としている。
【0083】
また、請求項7記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項6記載の損失線路において、該損失線路が、100[MHz]以上の帯域において100 [nep/m](ネパー/メートル)以上の減衰定数を有することを特徴としている。
【0084】
また、請求項8記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項7記載の損失線路において、該損失線路が、前記伝送線路の特性インピーダンスと等しいかまたは実用上等しいと判断できる特性インピーダンスを有していることを特徴としている。
【0085】
また、請求項9記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項8記載の損失線路において、前記絶縁基板が、FR−2(フェノール綿紙)、FR−3 (綿紙エポキシ) 、FR−4(ガラス布エポキシ), FR−5 (ガラス布エポキシ),FR−6(つや消しガラスポリエステル) 、G−10 (ガラス布エポキシ) 、CEM−1(綿紙エポキシ), CEM−2(綿紙エポキシ) 、 CEM−3(ガラス布エポキシ) 、CEM−4(ガラス布エポキシ) 、 CEM−5(ガラス布ポリエステル)、ポリイミドフィルム、(CaO−Al2O3−SiO3−B2O3)+Al2O3(LTCC)、Al2O3(アルミナ)のいずれかから成ることを特徴としている。
【0086】
また、請求項10記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項9記載の損失線路において、前記第2の固体電解質層が、モノマーピロールまたはモノマー(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を酸化剤で重合して形成されることを特徴としている。
【0087】
また、請求項11記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項10記載の損失線路において、前記酸化剤が、ブタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、エチレングリコールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸、またはヨウ素酸の水溶液であることを特徴としている。
【0088】
また、請求項12記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項11記載の損失線路において、前記第1の固体電解質層が、100[nm]以下の平均粒径を有するポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)導電性ポリマーをエタノールまたはブタノール溶液中に浸漬することによって形成されることを特徴としている。
【0089】
また、請求項13記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項12記載の損失線路において、前記弁作用金属粒子ペースト層が、1[μm]以下の平均粒径を有する化成膜形成処理が施されたアルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム、またはそれらの合金の粒子を重量比で50%以上含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含むことを特徴としている。
【0090】
また、請求項14記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項13記載の損失線路において、前記導電性カーボンペースト層が、導電性材料として固定炭素分が97質量%以上であり平均粒子径が1〜13[μm]でありアスペクト比が10以下であり粒子径32[μm]以上の粒子が12質量%以下である人造黒鉛を重量比で80%以上含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含むことを特徴としている。
【0091】
また、請求項15記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項14記載の損失線路において、前記導電性金属粉ペースト層が、10[μm]以下の長径を有する、金粒子、銀粒子、銅粒子、錫粒子、インジウム粒子、パラジウム粒子、ニッケル粒子、およびこれらの任意の合金粒子から選ばれる少なくとも1種の金属粒子を含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含むことを特徴としている。
【0092】
また、請求項16記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項15記載の損失線路において、前記セパレータが、ビニロン、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド(アラミド)、半芳香族ポリアミド、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリルニトリル、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、全芳香族ポリカーボネート、全芳香族ポリアゾメチン、ポリフェニレンスルフィド(
P P S) 、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール( P B Z T ) 、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール( P B O ) 、ポリベンゾイミダゾール(
P B I ) 、ポリエーテルエーテルケトン( P E E K ) 、ポリアミドイミド( P A I ) 、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン( P T F
E )、またはセルロース原料とする繊維から1種類以上を選択して100[μm]以下の厚さに形成される不織布から成ることを特徴としている。
【0093】
また、請求項17記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項16記載の損失線路において、前記セパレータが、湿熱融着樹脂であるポバールまたは熱融着樹脂であるポリエステルから成るバインダーを含むことを特徴としている。
【0094】
また、請求項18記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項17記載の損失線路において、前記誘電体酸化皮膜が、前記弁作用金属粒子を化成液に5分から120分間浸漬して化成されることを特徴としている。
【0095】
また、請求項19記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項18記載の損失線路において、前記化成液が、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0096】
孤立電磁波コンセプトに基づく本発明を部品または印刷配線基板に適用すると、電磁気学に忠実な多層配線構造の設計や解析を交流回路理論や電気通信工学に従う場合に比べて容易に行うことが出来る。
【0097】
孤立電磁波コンセプトに基づく本発明をディジタル信号伝送回路、並びにスイッチングモード電力伝送回路に適用すると、電磁気学に忠実な設計や解析を交流回路理論や電気通信工学に従う場合に比べて容易に行うことが出来る。
【0098】
また、孤立電磁波コンセプトに基づく本発明をディジタル信号伝送回路、並びにスイッチングモード電力伝送回路に適用すると、スイッチングの周期が不定であるデータ処理回路を、電磁気学に基づく設計または解析を容易に行うことが可能となる。
【0099】
また、孤立電磁波コンセプトに従う本発明をディジタル信号伝送回路、並びにスイッチングモード電力伝送回路に適用すると、タイミング設計や信号品位設計を、従来とほぼ同様の手法で従来に比べて高い精度で行うことが出来る。
【0100】
また、孤立電磁波コンセプトに基づく本発明をディジタル信号伝送回路、並びにスイッチングモード電力伝送回路に適用すると、高速ディジタル信号や高速スイッチングモード電力伝送を伝送する線路に不可欠であった整合終端処理が全く不要となる。
【0101】
また、孤立電磁波コンセプトに基づく本発明をディジタル信号伝送回路、並びにスイッチングモード電力伝送回路に適用すると、クロストークを初めとする回路内や回路間での電気干渉問題が大幅に改善される。
【0102】
また、孤立電磁波コンセプトに基づく本発明をディジタル信号伝送回路に適用すると、クロストーク問題が大幅に改善されるため、信号配線レイアウトや信号配線長、隣接信号配線間のタイミング調整等の設計作業が大幅に簡易化される。
【0103】
また、孤立電磁波コンセプトに基づく本発明をディジタル信号伝送回路に適用すると、同一基板上に高速ディジタル回路と微少信号を扱うアナログ回路を搭載し、安定に動作させることが可能となる。
【0104】
また、孤立電磁波コンセプトに基づく本発明をディジタル信号伝送回路、並びにスイッチングモード電力伝送回路に適用すると、整合終端処理用の部品が不要となりまた、回路設計が大幅に簡易化されるため、高速スイッチング素子を使用する情報技術装置、ディジタルデータ通信機器、並びに高周波DC−DCコンバータ等の省エネルギー、小型軽量化、製造コスト低減、設計期間短縮の効果が生じ、また、高信号品位(シグナルインテグリティ)と、および高電磁環境適合性(EMC)を両立させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0105】
以下、本発明に係る 最良の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0106】
(実施の形態1)
図4は、損失線路の一例である。
【0107】
図4において、損失線路は、絶縁基板15と、絶縁基板15の一つの面に貼付された金属箔16と、セパレータ17と、セパレータ17を挟んで絶縁基板15の他の面に対向して配置される金属箔18と、セパレータ17に含浸されて金属箔18と絶縁基板15の間に形成される固体電解質層19とから構成され、金属箔16と金属箔18を電極とする平行板損失線路として機能する。
【0108】
また、図4において、絶縁基板15は、FR−2(フェノール綿紙)、FR−3 (綿紙エポキシ) 、FR−4(ガラス布エポキシ), FR−5 (ガラス布エポキシ),FR−6(つや消しガラスポリエステル) 、G−10 (ガラス布エポキシ) 、CEM−1(綿紙エポキシ), CEM−2(綿紙エポキシ) 、 CEM−3(ガラス布エポキシ) 、CEM−4(ガラス布エポキシ) 、 CEM−5(ガラス布ポリエステル)、ポリイミドフィルム、(CaO−Al2O3−SiO3−B2O3)+Al2O3(LTCC)、Al2O3(アルミナ)のいずれかで形成される。
【0109】
また、図4において、固体電解質層19は、100[nm]以下の平均粒径を有するポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)導電性ポリマーをエタノールまたはブタノール溶液中に浸漬することによって形成される。
【0110】
また、図4において、セパレータ17は、ビニロン、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド(アラミド)、半芳香族ポリアミド、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリルニトリル、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、全芳香族ポリカーボネート、全芳香族ポリアゾメチン、ポリフェニレンスルフィド(
P P S) 、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール( P B Z T ) 、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール( P B O ) 、ポリベンゾイミダゾール(
P B I ) 、ポリエーテルエーテルケトン( P E E K ) 、ポリアミドイミド( P A I ) 、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン( P T F
E )、またはセルロース原料とする繊維から1種類以上を選択して100[μm]以下の厚さに形成される不織布から成る。
【0111】
また、図4において、セパレータは、必要に応じて、湿熱融着樹脂であるポバールまたは熱融着樹脂であるポリエステルから成るバインダーを含む。
【0112】
(実施の形態2)
図5は、損失線路の他の一例である。
【0113】
図5において、損失線路は、絶縁基板15と、絶縁基板15の一つの面に貼付された金属箔16と、絶縁基板15の他の面に形成される固体電解質層19と、固体電解質層19の上面に形成される導電性カーボンペースト層20と、金属箔18と、金属箔18を導電性カーボンペースト層20に貼付するために用いられる導電性金属粉ペースト層21とから構成され、金属箔16と金属箔18を電極とする平行板損失線路として機能する。
【0114】
また、図5において、絶縁基板15は、FR−2(フェノール綿紙)、FR−3 (綿紙エポキシ) 、FR−4(ガラス布エポキシ), FR−5 (ガラス布エポキシ),FR−6(つや消しガラスポリエステル) 、G−10 (ガラス布エポキシ) 、CEM−1(綿紙エポキシ), CEM−2(綿紙エポキシ) 、 CEM−3(ガラス布エポキシ) 、CEM−4(ガラス布エポキシ) 、 CEM−5(ガラス布ポリエステル)、ポリイミドフィルム、(CaO−Al2O3−SiO3−B2O3)+Al2O3(LTCC)、Al2O3(アルミナ)のいずれかで形成される。
【0115】
また、図5において、固体電解質層19は、モノマーピロールまたはモノマー(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を、ブタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、エチレングリコールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸、またはヨウ素酸の水溶液からなる酸化剤で重合して形成される。
【0116】
また、図5において、導電性カーボンペースト層20は、導電性材料として固定炭素分が97質量%以上であり平均粒子径が1〜13[μm]でありアスペクト比が10以下であり粒子径32[μm]以上の粒子が12質量%以下である人造黒鉛を重量比で80%以上含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含んで形成される。
【0117】
また、図5において、導電性金属粉ペースト層21は、10[μm]以下の長径を有する、金粒子、銀粒子、銅粒子、錫粒子、インジウム粒子、パラジウム粒子、ニッケル粒子、およびこれらの任意の合金粒子から選ばれる少なくとも1種の金属粒子を含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含んで形成される。
【0118】
(実施の形態3)
図6は、損失線路の他の一例である。
【0119】
図6において、損失線路は、絶縁基板15と、絶縁基板15の一つの面に貼付された金属箔16と、絶縁基板15の他の面に形成される、誘電体酸化皮膜形成処理が施された弁作用金属粒子を含む弁作用金属粒子ペースト層22と、弁作用金属粒子ペースト層22の上面に形成される固体電解質層19と、固体電解質層19の上面に形成される導電性カーボンペースト層20と、金属箔18と、金属箔18を導電性カーボンペースト層20に貼付するために用いられる導電性金属粉ペースト層21とから構成され、金属箔16と金属箔18を電極とする平行板損失線路として機能する。
【0120】
また、図6において、絶縁基板15は、FR−2(フェノール綿紙)、FR−3 (綿紙エポキシ) 、FR−4(ガラス布エポキシ), FR−5 (ガラス布エポキシ),FR−6(つや消しガラスポリエステル) 、G−10 (ガラス布エポキシ) 、CEM−1(綿紙エポキシ), CEM−2(綿紙エポキシ) 、 CEM−3(ガラス布エポキシ) 、CEM−4(ガラス布エポキシ) 、 CEM−5(ガラス布ポリエステル)、ポリイミドフィルム、(CaO−Al2O3−SiO3−B2O3)+Al2O3(LTCC)、Al2O3(アルミナ)のいずれかで形成される。
【0121】
また、図6において、固体電解質層19は、モノマーピロールまたはモノマー(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を、ブタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、エチレングリコールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸、またはヨウ素酸の水溶液からなる酸化剤で重合して形成される。
【0122】
また、図6において、弁作用金属粒子ペースト層22は、1[μm]以下の平均粒径を有する化成膜形成処理が施されたアルミニウムの粒子を重量比で50%以上含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含んで形成される。
【0123】
また、図6において、導電性カーボンペースト層20は、導電性材料として固定炭素分が97質量%以上であり平均粒子径が1〜13[μm]でありアスペクト比が10以下であり粒子径32[μm]以上の粒子が12質量%以下である人造黒鉛を重量比で80%以上含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含んで形成される。
【0124】
また、図6において、導電性金属粉ペースト層21は、10[μm]以下の長径を有する、金粒子、銀粒子、銅粒子、錫粒子、インジウム粒子、パラジウム粒子、ニッケル粒子、およびこれらの任意の合金粒子から選ばれる少なくとも1種の金属粒子を含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含んで形成される。
【0125】
また、図6において、弁作用金属粒子ペースト層22を構成する弁作用金属粒子表面の誘電体酸化皮膜は、弁作用金属粒子を、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液に5分から120分間浸漬して化成される。
【0126】
(実施の形態4)
【0127】
図7は、損失線路を信号線路に使用するディジタル基本回路の等価回路の一例である。
【0128】
図7において、ディジタル基本回路の等価回路は、直流電源4、プッシュプル回路1およびプッシュプル回路13、プッシュプル回路1を構成するPチャネルMOS FET2およびNチャネルMOS FET3、電源線路5ならびに損失信号線路12から構成されている。ここで、電源線路5と損失信号線路12の特性インピーダンスは等しいと仮定し、直流電源4の端子インピーダンスはゼロであるとする。
【0129】
図7において、プッシュプル回路1のオン状態とオフ状態の定義は前述と同様であり、伝送線路上の電界と伝送線路の電位との関係は電磁気学に従う。
【0130】
図2は、プッシュプル回路1がオフからオンに変化する時の損失信号線路12のC点の電位波形と、損失信号線路12のC点に励起される孤立電界波形を表し、図3は、電源線路5のB点の電位波形と電源線路5のB点に励起される孤立電界波形を表しており、図1の場合と同様である。
【0131】
図7において、図3(a)に示す孤立電界波が、電源線路5上を直流電源5に向かって進行し、端子インピーダンスがゼロの直流電源4で反射する。反射した孤立電磁波のプッシュプル回路1に至るまで挙動は、図1の場合と同じである。
【0132】
図8は、孤立電界波が損失信号線路12上を進行する時の様子である。
【0133】
図7のC点に励起された孤立電界波は、および、直流電源4で反射してC点に到達した孤立電界波は、損失信号線路12上を、図8のように振幅を減衰させながらD点に向かって進行する。しかし、式(13)で定義した孤立電磁波の波長は、図7のC点からD点の間で変化することは無い。
【0134】
孤立電界波がC点からD点に向かって進行する場合の電界の変化は、図8に示すように、孤立電界波自身と、孤立電界波の減衰する振幅の包絡線の2つが重なっていると考えることが出来る。
このように考えると、損失信号線路12上を進行する孤立電界波のC点からD点までの電位は、電磁気学での電位の定義に基づいて次式から求められる。
【0135】
【数14】
【0136】
図7において、損失信号線路12のD点にはプッシュプル回路13が接続されており整合終端は無いので終端開放状態にある。従って、損失信号線路12には導体電流は無い。
一方、式(14)から、孤立電界波は損失信号線路12上を進行中に減衰するが、直流電源4で反射した孤立電磁波によって、損失信号線路12の電位は、直流電源4によって与えられる定常電位となり、定常電位の減衰は生じないと言うことが出来る。この事実は、スイッチング電圧波形またはディジタル電圧波形の平坦な波高部分すなわち定常電位が静電磁気エネルギーに支配されるべきとする、電磁気学の考え方に符合する。
【0137】
また、前述のように損失信号線路12上を進行中の孤立電界波の波長は変化しないので、損失信号線路12の途中にインピーダンス不整合個所が無い限り、スイッチング電圧波形またはディジタル電圧波形の上昇または降下時間が進行中に長くなることは無い。
【0138】
一般に、伝送線路から進行中の電磁波の一部が漏洩すると、クロストークにより信号品位を劣化しEMC問題も引き起こすが、信号線路を損失信号線路とすることにより、これらの問題が大きく改善されるし、超高速回路において設計が難しく線路毎に必要な整合終端回路が不要となる。
【0139】
(実施の形態5)
図9は、低インピーダンスを有する損失線路の試作例である。
【0140】
試作した低インピーダンスを有する損失線路は、陰極層50、弁作用金属を使用した陽極箔51、誘電体酸化皮膜52、固体電解質層53、および導電性カーボングラファイト層54とで構成され、弁陽極箔51は線路長方向に引き出されている。引き出された陽極箔51の線路長方向の両端が陽極端子となり、陰極層50の線路長方向の両端が陰極端子となる。
【0141】
試作した低インピーダンスを有する損失線路の幅は1[mm]で長さが4[mm]から16[mm]であり。エッチング処理が施されたアルミニウム箔が陽極箔51として使用されている。陽極箔51は235[μm]の厚さを有し、両面に約50[μm]の厚さのスポンジ状のエッチング加工が施され、エッチング表面には約10[nm]の厚さの酸化アルミニウム被膜が化成処理によって形成され、エッチング部に固体電解質であるポリピロールが含浸されている。
【0142】
ポリピロールの上に約30[μm]の厚さにカーボングラファイトペーストが塗布されて導電性カーボンペースト層54を構成し、その上に約50[μm]の銀ペーストが塗布されて陰極層が形成されている。ポリピロールの実効導電率を1.5×104[S/m]、絶縁体として使用する酸化アルミニウムの比誘電率を8.5と見なしている。
【0143】
図10は、試作した低インピーダンスを有する損失線路の透過係数S21の周波数特性の一例である。
【0144】
図10には、低インピーダンスを有する損失線路の部分の長さを4[mm]、8[mm]、16[mm]および24[mm]としたときのS21特性が示されている。長さが16[mm]と24[mm]については幅が1[mm]
および1.5[mm]としたとき、長さが4[mm]と8[mm]については幅が1.5[mm]としたときの特性が示されている。併せて、従来の2種類のチップセラミックコンデンサの特性も示されている。
【0145】
低インピーダンスを有する損失線路を構成する平行板の静電容量をCとすると、エッチングによる対向面積の拡大率kは、次式から得られる。
【0146】
【数15】
【0147】
周波数をf、静電容量をC[F]とするとコンデンサのインピーダンスZCは、 (2πfC)−1[Ω]であって、コンデンサが、特性インピーダンスが50[Ω]
の測定系の線路に並列に接続されたときの透過係数(S21C)は、次式から求めることが出来る。
【0148】
【数16】
【0149】
試作した低インピーダンスを有する損失線路は平行板線路構造であるので、特性インピーダンスは式(7)から求めることが出来る。但し、線路幅がエッチングにより拡大されているので、本実施の形態においては、式(7)中のwの代わりに拡大率kを考慮したwk1/2を使用すると、試作した低インピーダンス損失線路の特性インピーダンスは9.1×10−6と非常に小さい値になる。
【0150】
試作した低インピーダンスを有する損失線路の特性インピーダンスをZ1とすると、測定系の50[Ω]のケーブルに接続したときの反射の影響による試作した低インピーダンスを有する損失線路への透過係数(S21R)は、次式から求めることが出来る。
【0151】
【数17】
【0152】
試作した低インピーダンスを有する損失線路の端部間の距離をzとしたときの端部間の静電容量CTを CT0/zとし、周波数がfのときのCTのインピーダンスをZTとすると、周波から1[GHz]以上の高周波に亘る透過係数(S21T)は、次式から求めることが出来る。
【0153】
【数18】
【0154】
Z1の特性インピーダンスを有する損失線路を構成する絶縁体の導電率が無限大、半導体の導電率がσPである場合、絶縁体中を進行するインピーダンスZ1を有する電磁波の一部が固有インピーダンスZPを有する半導体中に侵入する。該半導体中に進行中にした電磁波はTEM波以外の通信に役立たない電磁波であって全てが損失となる。半導体の導電率を実際に損失に関わる割合で修正した値を半導体の実効導電率と定義すると、実効導電率 σ
P1は次式から求めることができる。
【0155】
【数19】
【0156】
実効導電率がσ P1のときの減衰定数αP1は次式から求めることが出来る。
【0157】
【数20】
【0158】
試作した低インピーダンスを有する損失線路の低周波から1[GHz]以上の高周波に亘るおおよその透過係数(S21A)は、S21αに式(23)から求めたαP1を代入して、次式から求めることが出来る。
【0159】
【数21】
【0160】
線路幅を1[mm]とし、端子間静電容量を構成するCT0を5×10−20[F/m]とした場合の、試作した低インピーダンスを有する損失線路の透過特性は以下のように求められる。
4[mm]長チップの場合は、100[kHz]で−36dB、1[MHz] で−53dB、10[MHz] で−65dB、100[MHz]
で−84dB、1[GHz] で−102dBとなる。8[mm]長チップの場合は、100[kHz]で−42dB、1[MHz] で−58dB、10[MHz] で−72dB、100[MHz]
で−107dB、1[GHz] で−108dBとなる。16[mm]長チップの場合は、100[kHz]で−48dB、1[MHz] で−63dB、10[MHz] で−83dB、100[MHz]
で−133dB、1[GHz] で−114dBとなる。24[mm]長チップの場合は、100[kHz]で−51dB、1[MHz] で−67dB、10[MHz] で−94dB、100[MHz]
で−138dB、1[GHz] で−117dBとなる。
【0161】
これらの特性は、図10の特性と大略一致する。実測と計算結果との間に生じる主な差異は、アルミニウム薄膜のエッチング部の構造が非常に複雑であるためである。電磁界シミュレーションを試みたが、エッチング部の構造のモデル化が非常に困難であるため、現在の技術水準では、シミュレーションによって正確な特性インピーダンスやS21特性を得ることは不可能である。
【0162】
以上から、低インピーダンスを有する損失線路部品の設計だけでなく本発明に係る損失線路の設計においては、式(21)を使用することが実用的であると考えられる。
【0163】
(実施の形態6)
実施の形態5で得られた知見に従い、図4の構造の損失線路について行った詳細設計例を以下に示す。
【0164】
図4において、絶縁基板15と金属箔16は比誘電率が4のFR−4を使用した銅張り積層板を使用する。絶縁基板の厚さは200[μm]、金属箔16の厚さは35[μm]とする。セパレータ17にはセルロースを原料とし、ポリエステルからなるバインダーを含む厚さが50[μm]の不織布を使用する。固体電解質層19には、30[nm]以下の平均粒径を有するポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)導電性ポリマーを使用し、エタノールまたはブタノール溶液中に浸漬することによって形成する。固体電解質層19の導電率を104[S/m]または100[S/cm]とする。金属箔18には厚さが50[μm]の銅箔を使用する。損失線路の特性インピーダンスは50[Ω]とし、1
[GHz]における透過係数(S21)の目標値を−100[dB]以下とする。
【0165】
式(7)から、金属箔16の幅を0.75[mm]とすると、損失線路の特性インピーダンスは50.2[Ω]となる。式(19)から、固体電解質層の導電率を実際に損失に関わる割合で修正した値である固体電解質層の実効導電率σ
P1は1 [GHz]において2.2×103となる。このときの損失線路の減衰定数αP1は6.3×103となる。金属箔16の長さが5[mm]のときの透過係数(S21α)は3.87×10−7となる。損失線路が挿入される信号線路の特性インピーダンスを50[Ω]とすると、挿入に伴う反射損は無いので式(18)から求められる透過係数(S21R)は1、損失線路に端子が無いので式(18)から求められる透過係数(S21T)は0となる。損失線路の1[m]あたりの静電容量値は金属箔16の幅に絶縁基板15の誘電率を掛けて絶縁基板15の厚さで割れば求められ、1 [GHz]における透過係数(S21C)は6.37×10−12となる。以上の値を式(21)に代入すると、損失線路の透過係数(S21A)は、透過係数(S21α)に等しい3.87×10−7、すなわち−128.3dBとなり、前記目標値を充分満たす。
【0166】
実施の形態6に示した損失線路を信号線路の送端側に挿入すると、信号線路上には送信回路のスイッチングによって発生する孤立電磁波のレベルが実用上無視できる程度に減少するので、クロストークが生じる可能性が無くなる。併せて、電源線路を実施の形態5に示した低インピーダンスを有する損失線路とすることにより、信号線路の信号電圧の上昇/降下時間を送信回路のトランジスタの性能通りとすることが出来るので、信号品位も向上する。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明はスイッチング回路を内蔵する半導体集積回路並びに、半導体集積回路を内蔵する情報技術機器、マルチメディア機器、電力変換機器の高性能化、設計容易化と設計期間の短縮化、小型軽量化、低消費電力化、低コスト化、電磁干渉問題の解消又は低減、電磁のノイズによる誤動作の低減、信号品位の向上、および機器の品質・信頼性向上を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】図1は、ディジタル基本回路の等価回路の一例である。
【図2】図2は、信号線路の電位波形と信号線路上を進行する孤立電界波形である。
【図3】図3は、電源線路の電位波形と電源線路上を進行する孤立電界波形である。
【図4】図4は、損失線路の一例である。
【図5】図5は、損失線路の他の一例である。
【図6】図6は、損失線路の他の一例である。
【図7】図7は、損失線路を信号線路に使用するディジタル基本回路の等価回路の一例である。
【図8】図8は、孤立電界波が損失信号線路上を進行する時の様子である。
【図9】図9は、低インピーダンスで損失を有する線路の試作例である。
【図10】図10は、試作した低インピーダンスを有する損失線路の透過係数S21の周波数特性の一例である。
【符号の説明】
【0169】
1、13 プッシュプル回路
2 PチャネルMOS トランジスタ
3 NチャネルMOS トランジスタ
4 直流電源
5 電源線路
6 信号線路
7 抵抗器
8 信号線路上の孤立電界波
9 信号線路の電位波形
10 電源線路上の孤立電界波
11 電源側の線路の電位波形
12 損失信号線路
15 絶縁基板
16、18 金属箔
17 セパレータ
19、53 固体電解質層
20、54 導電性カーボンペースト層
21 導電性金属粉ペースト層
22 弁作用金属粒子ペースト層
50 陰極層
51 陽極箔
52 誘電体酸化皮膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路または回路部品に関し、特に、高速スイッチング素子を使用する、情報技術装置やディジタルデータ通信機器のディジタル信号伝送回路、並びにDC−DCコンバータ等のスイッチングモード電力伝送回路に使用し、小型軽量化が可能で、変換効率、信号品位(シグナルインテグリティ)、および電磁環境適合性(EMC)を向上させることが出来る損失線路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報技術装置やマルチメディア機器のさらなる高性能化、高機能化のために、トランジスタの高速化が進んでいる。情報技術装置やマルチメディア機器、並びに電力変換器には、また、省エネルギー化や小型軽量化の要求も強い。
【0003】
しかし、高速スイッチング素子を使用する回路や機器においては、高いレベルの電磁ノイズが発生するという問題があり、コンデンサ等の従来の部品を使用する回路設計技術では、EMC対策部品やシールド材を使用しても信号品位やEMCの向上が困難で、省エネルギー化や小型軽量化への要求に応えることも難しかった。また、伝送線路構造のディジタル信号伝送回路においては、信号品位向上のために整合終端処理が必須であった。
【0004】
回路設計技術の理論を支配するのは物理学であり、より直接的には電磁気学である。電磁気学によると、回路の状態には活性状態(exited states)、定常状態(stationary states)および、実用上は定常状態と見なせる準定常状態(quasi
stationary states)が存在する。活性状態とは、回路上の電界と磁界が変化または振動している状態であり交流回路はその一例である。振動する電界と磁界は電磁波となって絶縁体中を進行する。該絶縁体が真空空間の場合は、電磁波は光速で進行する。
【0005】
定常状態とは、回路上の電界と磁界が静止している状態であり直流回路はその一例である。準定常状態とは、電界と磁界が電磁波となって回路上を進行するが、電磁波の波長が回路長に対して非常に長く回路内での電磁波の挙動が強弱振動だけと見なしても実用上不都合が生じない状態である。低周波アナログ回路や、およそ1[ns]以上の立ち上がり時間を有するスイッチング素子を10[cm]以下の配線長を有する回路で使用する場合は、準定常状態と見なすことが出来る一例である。
【0006】
電磁気学によると、活性状態にある回路の電流はアンペールの法則として定義され次式で示される。
【0007】
【数1】
【0008】
電磁気学によると、電位Vは、電界の及ばない無限遠から導線の一点までの電界の積分値と定義されるが実用的にはグランド面から導線の一点までの電界の積分値として、また、電界Eは電位Vの傾きとしてそれぞれ次式から求められる。
【0009】
【数2】
【0010】
マックスウエルは、磁界に関する理論と電界に関する理論を融合したマックスウエルの方程式を1873年に発表し、続いてこの式をダランベールの波動方程式の形式に変形し、ベクトル波動方程式を導出した。マックスウエルは、1862年頃から主張していた、電磁波と光はともに光速で伝搬することをこの式を用いて理論的に証明し、線形電磁波理論(以下電磁波理論)を完成させ、これにより電磁気学が完成した。ヘルツは、1887年に、実験によって電磁波の存在を実証し、マックスウエルの電磁波理論の正しさを証明した。
【0011】
電磁気学によると、時間的に変化する電界と磁界は相互に作用しつつ横波となって空間または誘電体中を伝搬する。真空中を伝搬する電磁波の速度は光速である。伝搬する電磁波はポインチングベクトル理論に従って電力を伝搬する。空間を伝搬する電磁波は、周期および極性が一致し振幅ベクトルが進行方向に対して直交する電界波と磁界波とから構成される。この状態の電磁波はTEM(transverse electromagnetic)波と呼ばれる。TEM波を構成する電界波の振幅を磁界波の振幅で割った値は波動インピーダンス(surge
impedanceまたはwave impedance)と呼ばれる。
【0012】
電磁気学によると、電磁波は空間だけでなく媒体中も進行する。損失のない誘電体中を進行する電磁波の速度は、光速に対して比誘電率の平方根だけ遅くなり、波長は比誘電率の平方根だけ短くなる。後者は、波長圧縮と呼ばれる。
【0013】
電磁気学によると、損失のある媒体中を進行する電磁波は、次式で示される減衰定数γに従い、進行に伴って振幅が減少し位相が変化する。γの実数項であるαは減衰定数、γの虚数項であるβは位相定数と呼ばれる。αは、nep/m(ネパー/メートル)の単位で表される。1 [nep/m]は、1メートル進行して振幅がexp-1または0.368倍に減衰することを意味する。
【0014】
【数3】
【0015】
電磁気学によると、式(3)中のγ 2を変形して得られる次式の括弧の項は、損失のある誘電体に関する複素誘電率と定義され、虚数部(σ/ε0ω)を実数部(εr)で割った値を誘電体損失の正接と呼び、tanδで表す。但し、tanδは、電磁気学上、深い意味を持たない。
【0016】
【数4】
【0017】
電磁波が導体中を進行する場合は、導体中では電磁波に作用する電荷は存在せず導電率σは ωεに比べて非常に大きいので、γは次式で表される。次式中における減衰定数α の逆数であるδは、表皮厚さと呼ばれる。
【0018】
【数5】
【0019】
電磁気学によると、導体中を進行する電磁波の電界と磁界の比である固有インピーダンスZ0は、損失のある媒体中の固有インピーダンスにおいて導電率σがωεに比べて非常に大きいとして、次式で与えられる。
【0020】
【数6】
【0021】
回路上の電界と磁界が変化または振動している活性状態または準定常状態においては電磁波理論が回路を支配し、この場合は導体中を電磁波が進むことは困難である。しかし回路上の電界と磁界が静止している定常状態においては導体中を電流が比較的容易に移動することが出来る。
【0022】
物理学によると、導体中には無尽蔵に近い自由電子すなわち電荷が存在する。しかし、導体中の総電荷量は物性に依存して決まり定常的にはその値は一定である。直流電源に静的負荷が接続されている場合は導体中の電荷の移動による電流が流れるが、一般に、電荷の移動軸にはわずかな電界しか印加出来ないので電荷の平均移動速度は極めて遅い。
【0023】
例えば、1平方ミリメートルの断面を有する銅線中を導体中の電荷の速度(dq/dt)で定義される10アンペアの電流が進行しているときの電流の進行速度は、物理学に従って計算すると常温で0.368[mm/s]となる。導体中の電荷は、遅いながらも移動は可能であるので、導体の他端で定常的に電荷が消費される際に導体の一端から同量の電荷が定常的に供給されれば、導体の他端に接続される抵抗器等の定常負荷へのエネルギー供給が支障なく行われる。
【0024】
伝送線路上の電気信号の進行を扱うのが電気通信工学である。電気通信工学によると、直流的に絶縁された2本の導体間に電気信号を与えると、電気信号は電流波と電圧波となって伝送線路を進行するとしている。
【0025】
電気通信工学では、交流回路理論と同様に、電流を導体中の電荷の平均速度(dq/dt)すなわち導体電流としている。しかし、電磁気学の基礎を成すマックスウエルの方程式においては、導体電流は、時間の関数ではない電流密度Jに対応させている。
【0026】
交流回路理論や電気通信工学が電流をdq/dtと定義しているのは以下の理由によると考えられる。交流回路理論を支える重要な法則の一つであるキルヒホッフの法則が発表されたのが1845年で、マックスウエルが電磁波の存在を理論的に証明しヘルツによって実験で電磁波の存在が確認される42年前である。また、電気通信工学を支える重要な理論の一つである電信方程式が開発されたのが1874年で、同様に電磁波の存在が確認される13年前である。従って、交流回路理論および電気通信工学が実用化された当時は、回路の作用を電磁波の作用とする考え方がそもそも存在していなかった。さらに、その後も理論の修正が行われなかった。
【0027】
電気通信工学の基礎を成す電信方程式において、導体電流が光速で流れることが出来るとしている根拠となっているのはダランベールの波動方程式である。ダランベールの波動方程式では波動の主体を、スカラー量のラプラシアンとするベクトル関数で表現し、特定していない。導体電流が導体間電圧とともに波となることがは、電気回路を支配する電磁気学と整合していなので、電圧と電流に関する回路方程式をダランベールの波動方程式に対比させて得られる電信方程式は、電磁気学とは無関係であり、また電磁気学に反していることになる。
【0028】
電流の定義が電磁気学に反すると、線路の電圧や、インピーダンス、電磁波との関係、さらには伝送損失に関しても電磁気学と矛盾する考え方が生じる。電気通信工学にはこの矛盾が散見されるが、歴史が古く現在でも伝送線路設計への豊富な適用実績があることから、従来通りの連続波を対象とする伝送線路設計では電磁気学との矛盾は顕在化していない。
【0029】
スイッチング波またはディジタル波のような間欠波を対象とする伝送線路設計においても電気通信工学に基づくと効率的であると言う考え方が支配的である。しかし電気通信工学のディジタル回路への実用実績が少ないため電磁気学と対比しつつ慎重に設計や解析を行わないと、電磁気学との前記矛盾が顕在化する可能性がある。
【0030】
電磁気学によれば伝送線路を構成する2本の導体に挟まれる絶縁体が真空である場合は、TEM波の電磁波は光速で真空中を進行する。つまり、この場合の電流や電圧は、伝送線路の導体ではなくて絶縁体中を進み、それぞれ式(1)および式(2)から求められる値となる。実際の電流や電圧は磁界や電界であるので絶縁体中を波となって準光速で進むことが可能となる。伝送線路上のTEM波を構成する電界波の振幅を磁界波の振幅で割った値が、特性インピーダンスである。
【0031】
電気通信工学によると、伝送線路上を進行する信号の挙動は、伝送線路の特性インピーダンスと伝搬定数によって決まる。理想的な平板導体が理想的な絶縁体を挟んで平行に対向している平行板線路の特性インピーダンスZ0は、伝送線路の物理定数によって次式から求められる。平板導体や絶縁体の材料特性は、伝送線路の特性インピーダンスに対して実用上大きな影響を及ぼさない。
【0032】
【数7】
【0033】
電気通信工学によると、既知の特性インピーダンス(Z0)を有する伝送線路を通して未知の特性インピーダンス(Z1)を有する伝送線路に電磁波を注入したときの、
前記二つの伝送線路の接続点における反射係数(S11)は、次式で表される。
【0034】
【数8】
【0035】
電気通信工学によると、損失を有する伝送線路すなわち損失線路の透過係数(S21α)は、次式で表される。
【0036】
【数9】
【0037】
電磁気学によると、実用的な伝送線路の減衰定数は、電磁波が損失のある誘電体内を進行するときの減衰と、電磁波が誘電体内を進行する過程でその一部が導体内に侵入して熱になる導体損と、伝送線路外に漏れ出る放射損との和となると考えることが出来る。
【0038】
高速ディジタルデータ通信機器の配線設計は電気通信工学に従って行われている。しかし、電気通信工学は正弦波等の連続波を扱う伝送線路設計には適するが、前述のようにディジタル信号のような間欠波を扱う伝送線路設計には、電磁気学との矛盾があり適さない。
【0039】
情報技術装置や高速ディジタルデータ通信機器等に使用される直流電源は、回路に電荷を供給すると考えられている。
【0040】
電磁気学によると、マックスウエルは、単位(試験)点電荷に働く力の原因は、単位点電荷の存在する場所における電界にあるとし、クーロンの法則を修正した。この事実はあまり知られていない。
【0041】
修正された電磁気学によると、電界に関する静電(electrostatic)エネルギーwEは、次式で表される。
【0042】
【数10】
【0043】
このように、静電エネルギー(wE)は電荷が持っているのではなくて電界Eと電束密度Dの積または電界Eとして媒質に蓄積していることになる。
【0044】
なお、電圧Vが印加された容量Cの対向電極間に蓄積されている静電エネルギーwCは、電極距離をd、電極面積をSとすると、次式で表される。
【0045】
【数11】
【0046】
非特許文献1および非特許文献2に示される孤立電磁波コンセプトによると、スイッチング素子は、スイッチングの瞬間に、非線形波動またはソリトンの一種である孤立電磁波を励起する。一般のスイッチング機器のスイッチング素子も、同様のメカニズムで、スイッチングの瞬間に非線形波動またはソリトンの一種である孤立電磁波を励起する。
【0047】
スイッチング素子のスイッチング動作時の孤立電磁波の励起メカニズムは、1834年にJohn Scott Russell がソリトンを発見する際に行った種々の実験の内の水を貯めた水門(ゲート)を急に開くことによって生じたソリトンの発生メカニズムや、ソリトンの一種であると確認されている津波の生成過程に極めて類似している。
【0048】
非特許文献1および非特許文献2に示される孤立電磁波コンセプトによると、スイッチング素子がオフからオンにスイッチングする瞬間に、スイッチング素子が電源線路と信号線路を接続する点の電位は、前記直流電源の電圧を電源線路と信号線路の特性インピーダンス分割した値になる。従って、電源線路には電圧を分割電圧まで下げる極性の孤立電磁波が、信号線路には電圧を分割電圧まで上げる極性の孤立電磁波がそれぞれ同時に励起され、電磁波理論に従い、互いにその振幅ベクトルが直交する孤立電界波と孤立磁界波を伴って伝送線路上を進行する。
【0049】
図1は、孤立電磁波の挙動を説明するためのプッシュプル回路1に関する等価回路の一例である。図1において、特性インピーダンスZ0の伝送線路の途中にプッシュプル回路1が接続されており、特性インピーダンスZ0の電源線路5は直流電源4とプッシュプル回路1との間に接続されて電源線路を構成し、特性インピーダンスZ0の信号線路6はプッシュプル回路1と整合終端抵抗7との間に接続されて信号線路を構成している。プッシュプル回路1は、PチャネルMOS
FET2とNチャネルMOS FET3によって構成されている。
【0050】
図1において、プッシュプル回路1のオン状態とは、PチャネルMOS FET2がオンでNチャネルMOS FET3がオフの状態であり、プッシュプル回路1のオフ状態はその逆である。伝送線路を進行するTEM波に関する磁界と電流の関係および電界と電位の関係は、電磁気学においてそれぞれアンペアの法則および電位の定義として示される。
【0051】
図2に、プッシュプル回路1がオフからオンに変化する時の信号線路6上の電位波形9と、電磁気学に示される電位の定義から逆算して求められる信号線路6上を進む電界波形8とを示す。図3は、プッシュプル回路1がオフからオンに変化する時の電源線路5上の電位波形11と、電磁気学に示される電位の定義から逆算して求められる電源線路5上を進む電界波形10とを示す。
【0052】
図2および図3に示すように、プッシュプル回路1のスイッチングによって生じる電界の時間微分波形は、スイッチング素子の立ち上がり波形の最大傾斜部の接線を立ち上がり波形と見なして求める立ち上がり時間と円周率との積の逆数として求められる周波数で定義される実効周波数(significant frequency)を有する正弦波の半波形に近似している。実効周波数の考え方を引用すると、前記近似の確かさ(accuracy)は、92%以上と見込まれる。従って、設計だけに限ると実用上実効周波数で行うことが出来る。
【0053】
図1から図3において、プッシュプル回路1がオフからオンに変化すると、図1中のB点とC点の電位は等しくE/2[V]となる。プッシュプル回路1によって励起された、お互い逆極性を有する信号線路6上を進む孤立電界波8と電源線路5上を進む孤立電界波10は、それぞれプッシュプル回路1を背にして反対方向に進む。信号線路6上を進む孤立電界波8は、信号線路6の電位を0[V]からE/2[V]に上昇させつつ進み、整合終端抵抗7で消滅する。一方、電源線路5上を進む孤立電界波10は、電源線路5の電位をE[V]からE/2[V]に降下させつつ直流電源4に向かって、それぞれの伝送線路を構成する絶縁体中を準光速で進行する。
【0054】
直流電源4が端子インピーダンスゼロの理想電源である場合は、電源線路5上を進行する孤立電磁波は直流電源4で、反射し、信号線路6上に励起された孤立電磁波と同極性となり、電源線路5および信号線路6の電位をE/2[V]からE[V]に上昇させつつ進行し、整合終端抵抗7で消滅する。
【0055】
非特許文献1および非特許文献2によると、伝送線路上を進行する孤立電磁波の波長は次式で定義される。
【0056】
【数13】
【0057】
従来のディジタル信号伝送回路、並びにスイッチングモード電力伝送回路並びに前記の本特許のアイデアの理論的な根拠については、下記の特許文献や非特許文献に記載されている。従来のディジタル信号伝送回路、並びにスイッチングモード電力伝送回路の要点は後述される。
【特許文献1】特開平7−295700
【特許文献2】特開平8−18583
【特許文献3】特開平9−46006
【特許文献4】特開2000−124565(P2000−124565A)
【特許文献5】特開2001−144452(P2001−144452A)
【特許文献6】特開2003−78402(P2003−78402A)
【特許文献7】特開2004−363315(P2004−363315A)
【特許文献8】特開2006−19590(P2006−19590A)
【特許文献9】特開2006−66454(P2006−66454A)
【非特許文献1】HirokazuTohya and Noritaka Toya著 「A NovelDesign Methodology of the On - Chip Power Distribution Network Enhancing thePerformance and Suppressing EMI of the SoC」、IEEE International Symposium on Circuits and Systems 2007、 pp. 889-892、May 2007.
【非特許文献2】遠矢弘和、遠矢紀尚 著 「SoCの性能とEMCを大きく改善するオンチップ電源分配回路の新しい設計法」、電子情報通信学会 信学技報、Vol.107、No. 149、 EE2007-20、pp.73-78、2007年7月.
【非特許文献3】Stephan Kirchmeyer and KnudReuter著 「Scientific importance, properties and growing applications ofpoly(3,4-ethylendioxythiophene)、The Royal Society of Chemistry、Journal ofMaterials Chemistry.,2005、pp. 2077-2088、2005.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0058】
解決しようとする問題点の第1は、特許文献1に関する。特許文献1は、SCSIバスライン終端装置に関し、バスラインの過電流を未然に防止しノイズスパイクを除去する技術を開示している。しかし、バスラインを構成する信号線路毎に、プルアップ終端抵抗、トランジスタ回路で構成される信号ライン増強電流キッカー回路、および信号線路上のトランジェントを除去するために上限電圧と下限電圧の範囲を制限する抑止回路手段を有する信号ラインインピーダンス整合終端装置とで構成されており、設計が複雑であり使用部品数も多かった。また、開示されている技術によって、LSIの性能を最大限引き出すことが困難であった。
【0059】
解決しようとする問題点の第2は、特許文献2に関する。特許文献2は、バスの終端での消費電力を低く抑え、かつ高速伝送を可能とすることを目的として、終端電源と伝送線路との間に2個の抵抗が直列に接続され、2個の抵抗器の接続部とグランドとの間にコンデンサが接続され、伝送線路に接続されている伝送線路の特性インピーダンスにほぼ等しい値を有する抵抗とコンデンサとローカットフィルタを形成する伝送線路終端方法を開示している。しかし、電源の端子インピーダンスやコンデンサのインピーダンスを必要とされる広い帯域に亘って充分低い値とすることが非常に困難なことや、抵抗器は電磁気学に基づく素子ではないため、開示されている技術によって、高ビットレートのディジタル信号を高品位で伝送することは困難であった。
【0060】
解決しようとする問題点の第3は、特許文献3に関する。特許文献3は、グランド層の上に誘電体がありその上に導体が複数本あるマイクロストリップラインにおいて、信号線路間のクロストークを低減させることを目的として、信号線路用ストリップ線の間にグランド層に一部が接続されたストリップ線を挟む技術を開示している。しかし、ストリップ線の数が増えるために、開示されている技術によって、配線密度の高い伝送線路構造を実現することは非常に困難であった。
【0061】
解決しようとする問題点の第4は、特許文献4に関する。特許文献4は、グランド層の上に誘電体がありその上に導体が複数本あるマイクロストリップラインにおいて、信号線路間のクロストークを低減させることを目的として、信号線路の間にグランド層に両端が整合終端され送受回路に接続されていないダミー線路を挟む技術を開示している。しかし、ストリップ線路および終端抵抗の数が増えるために、開示されている技術によって、配線密度の高い伝送線路構造を実現することは非常に困難であった。
【0062】
解決しようとする問題点の第5は、特許文献5に関する。特許文献5は、多層プリント基板における配線のクロストークを低減し、しかも多層プリント基板の大型化とコストアップを防止することを目的として、多層プリント基板を、二つの第1の誘電体層と、これら二つの誘電体層に挟まれるように形成された第2の誘電体層と、二つの第1の誘電体層の上面と下面に形成されたGNDプレーン層と、二つの第1の誘電体層の間に挟まれかつ垂直方向に対向するように配置された二本の信号線とで構成し、第2の誘電体層の比誘電率を第1の誘電体層の比誘電率より小さくする技術を開示している。しかし、第1の誘電体層と第2の誘電体層の比誘電率の差を、クロストークを低減するほど大きくすることは実用上困難であり、信号線を広範囲に亘って垂直方向に対向するように配置することも実用上困難であった。
【0063】
解決しようとする問題点の第6は、特許文献6に関する。特許文献6は、トランジス
タの動作時における出力電圧の傾きを緩やかにして急激な電圧変動が発生しないようにすることによって、LSIオンチップインターコネクトでの、クロストークノイズを安定して減少させ、クロストークノイズに起因する回路誤動作を確実に防止することを目的として、入力に2個のトランジスタを使用して共通出力端の電圧を段階的に変化させる技術を開示している。しかし、信号の上昇及び降下時間が長くなり性能を低下させてしまう、2段階で変化させてもクロストークノイズが1/2しか低減されない、およびトランジスタや配線の数が増えてしまうといった問題があり、実用化するのは困難であった。
【0064】
解決しようとする問題点の第7は、特許文献7に関する。特許文献7は、クロストークノイズにより信号の伝送品質を劣化させることなく、高密度に配線パターンを配線することができるプリント配線板を得ることを目的として、一対のストリップ線路とグラウンド層との間にグラウンドパターンを形成し、他の一対のストリップ線路とグラウンド層との間にグラウンドパターンを形成する技術を開示している。しかし、グラウンドパターンを形成するための配線層が増えるために、開示されている技術によって、配線密度の高い伝送線路構造を実現することは困難であった。
【0065】
解決しようとする問題点の第7は、特許文献7に関する。特許文献7は、クロストークノイズにより信号の伝送品質を劣化させることなく、高密度に配線パターンを配線することができるプリント配線板を得ることを目的として、一対のストリップ線路とグラウンド層との間にグラウンドパターンを形成し、他の一対のストリップ線路とグラウンド層との間にグラウンドパターンを形成する技術を開示している。しかし、グラウンドパターンを形成するための配線層が増えるために、開示されている技術によって、配線密度の高い伝送線路構造を実現することは困難であった。
【0066】
解決しようとする問題点の第8は、特許文献8に関する。特許文献8は、外部から侵入する電磁波に対する耐性の向上、及び基板内から発生する電磁波に対する放出の抑制とともに、シグナルインテグリティ特性の劣化を防止することを目的として、信号用のライン配線が設けられた信号層と、最上層及び/又は最下層に積層され、磁性材料と絶縁材との複合材料からなる磁性層とを備え、磁性層には信号用のライン配線を設けないとする多層プリント回路基板技術を開示している。しかし、開示されている技術は、多層プリント回路基板の外部空間での電磁干渉に関してはある程度有効であるが、シグナルインテグリティに直接関わる、多層プリント回路基板の内部での電磁干渉に関しては効果が無い。従って、開示されている技術によって、シグナルインテグリティ特性の劣化を効果的に防止すること困難であった。
【0067】
解決しようとする問題点の第9は、特許文献9に関する。特許文献9は、基板間通信を誘導性結合によって実現する場合に、複数の通信チャネルを近接して並列に並べてもクロ
ストークの発生を実際上無視できる程度に小さくすることができる電子回路を提供することを目的として、送信コイルを下のチップに、受信コイルを上のチップに設けて、チップ間の距離をX、通信チャネル間の距離(すなわち、コイル中心間の水平距離)をYとしたとき、所定のYoにおいて、送信コイルに起因する受信コイル内の磁束密度が0になる位置が存在する。すなわち、Yが小さいと大きなクロストークが発生し、Yが大きいと逆符号の小さなクロストークが発生するため、その途中で磁束密度Bを受信コイル内で積分した値が0になる位置が必ず存在することになる。この位置においては原理的にクロストークが発生しないとする電子回路を開示している。しかし、開示されている技術は、時間的に変化する電磁界は電磁波となって線路上を進行するという電磁気学に従っていない。停止している静磁界の分布によってクロストークの生じない位置を特定出来るとしているが、クロストークは線路上を進行するTEM波以外の、不定の方向に進む漏洩電磁波によって生じるので、クロストークの生じない位置を特定することは原理的に出来ない。従って、開示されている技術によって、実用上、クロストークを抑圧することは不可能であった。
【0068】
非特許文献1および非特許文献2は本特許の理論的な根拠を成す重要文献であるがすでに詳述した。非特許文献3も本特許の理論的な根拠の一つである。非特許文献3は、ナノサイズの粒子にしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレン・スルホン酸の錯体の例が示されている。このように薬品メーカからナノサイズの固体電解質材料が供給されれば、これを使用する部品メーカ等での化学重合反応工程が不要になる。非特許文献3のような化学メーカの努力により、100
[S/m]以上の導電率を有する平均粒径は100[nm]以下の固体電解質材料の商品化は間近となっている。
【0069】
アナログ回路は、回路状態の変化が比較的緩やかで始まりと終わりが明確でないことが多い。アナログ回路の歴史は古く、特に工学においては経験則等の適用によって、電磁気学に戻らなくても、従来の交流回路理論や電気通信工学に従う回路設計において、実用上、問題が生じることはほとんど無かった。
【0070】
一方、アナログ回路の場合と異なり、スイッチング回路における状態の変化の始まりと終わりは明確である。スイッチング回路の状態の変化は非常に急激であり、急激な電界または磁界の変化は当然ながら大きなレベルの電磁波を励起する。スイッチング回路における電界または磁界の変化は間歇的である。さらに、半導体集積回路中の約9割を占めるデータ処理回路においては、一般にスイッチングの周期は不定である。
【0071】
以上のようにアナログ回路とスイッチング回路は、電磁気学の観点からは大きく異なっている。しかし、従来の電気通信工学や交流回路理論では、間欠的な回路動作を想定した回路すなわちパルス回路の設計は、電磁気学とは関係のない前述のような手法で行われ、解析は、スイッチング波をひずみ波の一種と考えるフーリエ変換法が適用されてきた。
【0072】
フーリエ変換法によると、ひずみ波は正弦波である多数の高調波から構成されている。これらの高調波は始まりと終わりが無い多数の正弦波である。回路上の信号を高調波毎に解析してその結果を加算すれば、スイッチング回路の解析が可能となる。しかし、フーリエ変換法は数学の一手法であり、上位理論である電磁気学との整合性を確認した上で電気電子回路の設計や解析に採用されている訳ではないため、ディジタル回路で発生する瞬時現象の解析は、現実との乖離が甚だしく、不可能である。
【0073】
たとえばデューティが1/10で繰り返し周波数が1[GHz]のスイッチング波をフーリエ変換すると振幅の1/10の値の直流成分と1[GHz]を基本波とする高調波とに分解できる。直流電流はほとんど流さないCMOS回路を使用する半導体集積回路内のある長さの配線または伝送線路が、1[GHz]の振幅を1/2に低下させる損失を有しているとすると、配線または伝送線路の終端でのスイッチング波の振幅は、解析結果ではほぼ1/2以下に低下する。
【0074】
しかし、電磁気学に従うと、スイッチング波の振幅は直流電源から供給される静電エネルギーによって維持される。静電エネルギーは波ではないので配線または伝送線路の損失の作用は受けない。従って、伝送線路の終端で観測されるスイッチング波の振幅は減衰しないはずである。
【0075】
この事実は、スイッチング波をひずみ波として扱うことが誤りであることを示している。また、この事実は、フーリエ変換法に基づいて生じる群速度の概念に従う、ディジタル信号配線における信号品位(シグナルインテグリティ)に関する従来の理論には修正が必要であることを示している。すなわち、この事実は、スイッチング回路やディジタル回路上での瞬時の変化と比較的長い期間の挙動を矛盾無く説明できる、統一した設計および解析のための理論が、新たに構築されなければならないことを示唆している。
【0076】
本発明は、上記問題を根本的に解決する手段を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0077】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、損失線路に係り、絶縁基板と、前記絶縁基板の一つの面に貼付された第1の金属箔と、セパレータと、該セパレータを挟んで前記絶縁基板の他の面に対向して配置される第2の金属箔と、前記セパレータに含浸されて前記第2の金属箔と前記絶縁基板の間に形成される固体電解質層とから成り、前記第1の金属箔と前記第2の金属箔を電極とする平行板損失線路として機能することを特徴としている。
【0078】
また、請求項2記載の発明は、損失線路に係り、請求項1記載の損失線路において、該損失線路が、前記絶縁基板と、該絶縁基板の一つの面に貼付された前記第1の金属箔と、前記絶縁基板の他の面に形成される前記固体電解質層と、該固体電解質層の上面に形成される導電性カーボンペースト層と、前記第2の金属箔と、該第2の金属箔を前記導電性カーボンペースト層に貼付するために用いられる導電性金属粉ペースト層とから成り、前記第1の金属箔と前記第2の金属箔を電極とする平行板損失線路として機能することを特徴としている。
【0079】
また、請求項3記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項2記載の損失線路において、該損失線路が、前記絶縁基板と、該絶縁基板の一つの面に貼付された前記第1の金属箔と、前記絶縁基板の他の面に形成される、誘電体酸化皮膜の形成処理が施された弁作用金属粒子を含む弁作用金属粒子ペースト層と、該弁作用金属粒子ペースト層上に形成される前記固体電解質層と、該固体電解質層上に形成される前記導電性カーボンペースト層と、前記第2の金属箔と、該第2の金属箔を前記導電性カーボンペースト層に貼付するために用いられる前記導電性金属粉ペースト層とから成り、前記第1の金属箔と前記第2の金属箔を電極とする平行板損失線路として機能することを特徴としている。
【0080】
また、請求項4記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項3記載の損失線路において、該損失線路が、1つ以上のスイッチング素子を有するスイッチング回路間の信号の送受信のために設けられる伝送線路の全てまたは一部に使用され、前記第1の金属箔が前記信号線路を構成する信号導体の全てまたは一部を構成し、前記第2の金属箔が前記信号線路を構成するグランド導体に並列に接続されることを特徴としている。
【0081】
また、請求項5記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項4記載の損失線路において、前記伝送線路が、半導体集積回路内の半導体チップ上に形成されるインターコネクト構造、または印刷配線基板に形成される配線構造、またはシャーシ内に形成されるワイヤハーネス、またはケーブルの、一部または全てを構成することを特徴としている。
【0082】
また、請求項6記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項5記載の損失線路において、前記第1および第2の固体電解質層が、10[S/m]以上の導電率を有することを特徴としている。
【0083】
また、請求項7記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項6記載の損失線路において、該損失線路が、100[MHz]以上の帯域において100 [nep/m](ネパー/メートル)以上の減衰定数を有することを特徴としている。
【0084】
また、請求項8記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項7記載の損失線路において、該損失線路が、前記伝送線路の特性インピーダンスと等しいかまたは実用上等しいと判断できる特性インピーダンスを有していることを特徴としている。
【0085】
また、請求項9記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項8記載の損失線路において、前記絶縁基板が、FR−2(フェノール綿紙)、FR−3 (綿紙エポキシ) 、FR−4(ガラス布エポキシ), FR−5 (ガラス布エポキシ),FR−6(つや消しガラスポリエステル) 、G−10 (ガラス布エポキシ) 、CEM−1(綿紙エポキシ), CEM−2(綿紙エポキシ) 、 CEM−3(ガラス布エポキシ) 、CEM−4(ガラス布エポキシ) 、 CEM−5(ガラス布ポリエステル)、ポリイミドフィルム、(CaO−Al2O3−SiO3−B2O3)+Al2O3(LTCC)、Al2O3(アルミナ)のいずれかから成ることを特徴としている。
【0086】
また、請求項10記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項9記載の損失線路において、前記第2の固体電解質層が、モノマーピロールまたはモノマー(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を酸化剤で重合して形成されることを特徴としている。
【0087】
また、請求項11記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項10記載の損失線路において、前記酸化剤が、ブタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、エチレングリコールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸、またはヨウ素酸の水溶液であることを特徴としている。
【0088】
また、請求項12記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項11記載の損失線路において、前記第1の固体電解質層が、100[nm]以下の平均粒径を有するポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)導電性ポリマーをエタノールまたはブタノール溶液中に浸漬することによって形成されることを特徴としている。
【0089】
また、請求項13記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項12記載の損失線路において、前記弁作用金属粒子ペースト層が、1[μm]以下の平均粒径を有する化成膜形成処理が施されたアルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム、またはそれらの合金の粒子を重量比で50%以上含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含むことを特徴としている。
【0090】
また、請求項14記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項13記載の損失線路において、前記導電性カーボンペースト層が、導電性材料として固定炭素分が97質量%以上であり平均粒子径が1〜13[μm]でありアスペクト比が10以下であり粒子径32[μm]以上の粒子が12質量%以下である人造黒鉛を重量比で80%以上含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含むことを特徴としている。
【0091】
また、請求項15記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項14記載の損失線路において、前記導電性金属粉ペースト層が、10[μm]以下の長径を有する、金粒子、銀粒子、銅粒子、錫粒子、インジウム粒子、パラジウム粒子、ニッケル粒子、およびこれらの任意の合金粒子から選ばれる少なくとも1種の金属粒子を含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含むことを特徴としている。
【0092】
また、請求項16記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項15記載の損失線路において、前記セパレータが、ビニロン、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド(アラミド)、半芳香族ポリアミド、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリルニトリル、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、全芳香族ポリカーボネート、全芳香族ポリアゾメチン、ポリフェニレンスルフィド(
P P S) 、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール( P B Z T ) 、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール( P B O ) 、ポリベンゾイミダゾール(
P B I ) 、ポリエーテルエーテルケトン( P E E K ) 、ポリアミドイミド( P A I ) 、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン( P T F
E )、またはセルロース原料とする繊維から1種類以上を選択して100[μm]以下の厚さに形成される不織布から成ることを特徴としている。
【0093】
また、請求項17記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項16記載の損失線路において、前記セパレータが、湿熱融着樹脂であるポバールまたは熱融着樹脂であるポリエステルから成るバインダーを含むことを特徴としている。
【0094】
また、請求項18記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項17記載の損失線路において、前記誘電体酸化皮膜が、前記弁作用金属粒子を化成液に5分から120分間浸漬して化成されることを特徴としている。
【0095】
また、請求項19記載の発明は、損失線路に係り、請求項1から請求項18記載の損失線路において、前記化成液が、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0096】
孤立電磁波コンセプトに基づく本発明を部品または印刷配線基板に適用すると、電磁気学に忠実な多層配線構造の設計や解析を交流回路理論や電気通信工学に従う場合に比べて容易に行うことが出来る。
【0097】
孤立電磁波コンセプトに基づく本発明をディジタル信号伝送回路、並びにスイッチングモード電力伝送回路に適用すると、電磁気学に忠実な設計や解析を交流回路理論や電気通信工学に従う場合に比べて容易に行うことが出来る。
【0098】
また、孤立電磁波コンセプトに基づく本発明をディジタル信号伝送回路、並びにスイッチングモード電力伝送回路に適用すると、スイッチングの周期が不定であるデータ処理回路を、電磁気学に基づく設計または解析を容易に行うことが可能となる。
【0099】
また、孤立電磁波コンセプトに従う本発明をディジタル信号伝送回路、並びにスイッチングモード電力伝送回路に適用すると、タイミング設計や信号品位設計を、従来とほぼ同様の手法で従来に比べて高い精度で行うことが出来る。
【0100】
また、孤立電磁波コンセプトに基づく本発明をディジタル信号伝送回路、並びにスイッチングモード電力伝送回路に適用すると、高速ディジタル信号や高速スイッチングモード電力伝送を伝送する線路に不可欠であった整合終端処理が全く不要となる。
【0101】
また、孤立電磁波コンセプトに基づく本発明をディジタル信号伝送回路、並びにスイッチングモード電力伝送回路に適用すると、クロストークを初めとする回路内や回路間での電気干渉問題が大幅に改善される。
【0102】
また、孤立電磁波コンセプトに基づく本発明をディジタル信号伝送回路に適用すると、クロストーク問題が大幅に改善されるため、信号配線レイアウトや信号配線長、隣接信号配線間のタイミング調整等の設計作業が大幅に簡易化される。
【0103】
また、孤立電磁波コンセプトに基づく本発明をディジタル信号伝送回路に適用すると、同一基板上に高速ディジタル回路と微少信号を扱うアナログ回路を搭載し、安定に動作させることが可能となる。
【0104】
また、孤立電磁波コンセプトに基づく本発明をディジタル信号伝送回路、並びにスイッチングモード電力伝送回路に適用すると、整合終端処理用の部品が不要となりまた、回路設計が大幅に簡易化されるため、高速スイッチング素子を使用する情報技術装置、ディジタルデータ通信機器、並びに高周波DC−DCコンバータ等の省エネルギー、小型軽量化、製造コスト低減、設計期間短縮の効果が生じ、また、高信号品位(シグナルインテグリティ)と、および高電磁環境適合性(EMC)を両立させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0105】
以下、本発明に係る 最良の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0106】
(実施の形態1)
図4は、損失線路の一例である。
【0107】
図4において、損失線路は、絶縁基板15と、絶縁基板15の一つの面に貼付された金属箔16と、セパレータ17と、セパレータ17を挟んで絶縁基板15の他の面に対向して配置される金属箔18と、セパレータ17に含浸されて金属箔18と絶縁基板15の間に形成される固体電解質層19とから構成され、金属箔16と金属箔18を電極とする平行板損失線路として機能する。
【0108】
また、図4において、絶縁基板15は、FR−2(フェノール綿紙)、FR−3 (綿紙エポキシ) 、FR−4(ガラス布エポキシ), FR−5 (ガラス布エポキシ),FR−6(つや消しガラスポリエステル) 、G−10 (ガラス布エポキシ) 、CEM−1(綿紙エポキシ), CEM−2(綿紙エポキシ) 、 CEM−3(ガラス布エポキシ) 、CEM−4(ガラス布エポキシ) 、 CEM−5(ガラス布ポリエステル)、ポリイミドフィルム、(CaO−Al2O3−SiO3−B2O3)+Al2O3(LTCC)、Al2O3(アルミナ)のいずれかで形成される。
【0109】
また、図4において、固体電解質層19は、100[nm]以下の平均粒径を有するポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)導電性ポリマーをエタノールまたはブタノール溶液中に浸漬することによって形成される。
【0110】
また、図4において、セパレータ17は、ビニロン、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド(アラミド)、半芳香族ポリアミド、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリルニトリル、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、全芳香族ポリカーボネート、全芳香族ポリアゾメチン、ポリフェニレンスルフィド(
P P S) 、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール( P B Z T ) 、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール( P B O ) 、ポリベンゾイミダゾール(
P B I ) 、ポリエーテルエーテルケトン( P E E K ) 、ポリアミドイミド( P A I ) 、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン( P T F
E )、またはセルロース原料とする繊維から1種類以上を選択して100[μm]以下の厚さに形成される不織布から成る。
【0111】
また、図4において、セパレータは、必要に応じて、湿熱融着樹脂であるポバールまたは熱融着樹脂であるポリエステルから成るバインダーを含む。
【0112】
(実施の形態2)
図5は、損失線路の他の一例である。
【0113】
図5において、損失線路は、絶縁基板15と、絶縁基板15の一つの面に貼付された金属箔16と、絶縁基板15の他の面に形成される固体電解質層19と、固体電解質層19の上面に形成される導電性カーボンペースト層20と、金属箔18と、金属箔18を導電性カーボンペースト層20に貼付するために用いられる導電性金属粉ペースト層21とから構成され、金属箔16と金属箔18を電極とする平行板損失線路として機能する。
【0114】
また、図5において、絶縁基板15は、FR−2(フェノール綿紙)、FR−3 (綿紙エポキシ) 、FR−4(ガラス布エポキシ), FR−5 (ガラス布エポキシ),FR−6(つや消しガラスポリエステル) 、G−10 (ガラス布エポキシ) 、CEM−1(綿紙エポキシ), CEM−2(綿紙エポキシ) 、 CEM−3(ガラス布エポキシ) 、CEM−4(ガラス布エポキシ) 、 CEM−5(ガラス布ポリエステル)、ポリイミドフィルム、(CaO−Al2O3−SiO3−B2O3)+Al2O3(LTCC)、Al2O3(アルミナ)のいずれかで形成される。
【0115】
また、図5において、固体電解質層19は、モノマーピロールまたはモノマー(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を、ブタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、エチレングリコールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸、またはヨウ素酸の水溶液からなる酸化剤で重合して形成される。
【0116】
また、図5において、導電性カーボンペースト層20は、導電性材料として固定炭素分が97質量%以上であり平均粒子径が1〜13[μm]でありアスペクト比が10以下であり粒子径32[μm]以上の粒子が12質量%以下である人造黒鉛を重量比で80%以上含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含んで形成される。
【0117】
また、図5において、導電性金属粉ペースト層21は、10[μm]以下の長径を有する、金粒子、銀粒子、銅粒子、錫粒子、インジウム粒子、パラジウム粒子、ニッケル粒子、およびこれらの任意の合金粒子から選ばれる少なくとも1種の金属粒子を含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含んで形成される。
【0118】
(実施の形態3)
図6は、損失線路の他の一例である。
【0119】
図6において、損失線路は、絶縁基板15と、絶縁基板15の一つの面に貼付された金属箔16と、絶縁基板15の他の面に形成される、誘電体酸化皮膜形成処理が施された弁作用金属粒子を含む弁作用金属粒子ペースト層22と、弁作用金属粒子ペースト層22の上面に形成される固体電解質層19と、固体電解質層19の上面に形成される導電性カーボンペースト層20と、金属箔18と、金属箔18を導電性カーボンペースト層20に貼付するために用いられる導電性金属粉ペースト層21とから構成され、金属箔16と金属箔18を電極とする平行板損失線路として機能する。
【0120】
また、図6において、絶縁基板15は、FR−2(フェノール綿紙)、FR−3 (綿紙エポキシ) 、FR−4(ガラス布エポキシ), FR−5 (ガラス布エポキシ),FR−6(つや消しガラスポリエステル) 、G−10 (ガラス布エポキシ) 、CEM−1(綿紙エポキシ), CEM−2(綿紙エポキシ) 、 CEM−3(ガラス布エポキシ) 、CEM−4(ガラス布エポキシ) 、 CEM−5(ガラス布ポリエステル)、ポリイミドフィルム、(CaO−Al2O3−SiO3−B2O3)+Al2O3(LTCC)、Al2O3(アルミナ)のいずれかで形成される。
【0121】
また、図6において、固体電解質層19は、モノマーピロールまたはモノマー(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を、ブタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、エチレングリコールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸、またはヨウ素酸の水溶液からなる酸化剤で重合して形成される。
【0122】
また、図6において、弁作用金属粒子ペースト層22は、1[μm]以下の平均粒径を有する化成膜形成処理が施されたアルミニウムの粒子を重量比で50%以上含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含んで形成される。
【0123】
また、図6において、導電性カーボンペースト層20は、導電性材料として固定炭素分が97質量%以上であり平均粒子径が1〜13[μm]でありアスペクト比が10以下であり粒子径32[μm]以上の粒子が12質量%以下である人造黒鉛を重量比で80%以上含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含んで形成される。
【0124】
また、図6において、導電性金属粉ペースト層21は、10[μm]以下の長径を有する、金粒子、銀粒子、銅粒子、錫粒子、インジウム粒子、パラジウム粒子、ニッケル粒子、およびこれらの任意の合金粒子から選ばれる少なくとも1種の金属粒子を含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含んで形成される。
【0125】
また、図6において、弁作用金属粒子ペースト層22を構成する弁作用金属粒子表面の誘電体酸化皮膜は、弁作用金属粒子を、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液に5分から120分間浸漬して化成される。
【0126】
(実施の形態4)
【0127】
図7は、損失線路を信号線路に使用するディジタル基本回路の等価回路の一例である。
【0128】
図7において、ディジタル基本回路の等価回路は、直流電源4、プッシュプル回路1およびプッシュプル回路13、プッシュプル回路1を構成するPチャネルMOS FET2およびNチャネルMOS FET3、電源線路5ならびに損失信号線路12から構成されている。ここで、電源線路5と損失信号線路12の特性インピーダンスは等しいと仮定し、直流電源4の端子インピーダンスはゼロであるとする。
【0129】
図7において、プッシュプル回路1のオン状態とオフ状態の定義は前述と同様であり、伝送線路上の電界と伝送線路の電位との関係は電磁気学に従う。
【0130】
図2は、プッシュプル回路1がオフからオンに変化する時の損失信号線路12のC点の電位波形と、損失信号線路12のC点に励起される孤立電界波形を表し、図3は、電源線路5のB点の電位波形と電源線路5のB点に励起される孤立電界波形を表しており、図1の場合と同様である。
【0131】
図7において、図3(a)に示す孤立電界波が、電源線路5上を直流電源5に向かって進行し、端子インピーダンスがゼロの直流電源4で反射する。反射した孤立電磁波のプッシュプル回路1に至るまで挙動は、図1の場合と同じである。
【0132】
図8は、孤立電界波が損失信号線路12上を進行する時の様子である。
【0133】
図7のC点に励起された孤立電界波は、および、直流電源4で反射してC点に到達した孤立電界波は、損失信号線路12上を、図8のように振幅を減衰させながらD点に向かって進行する。しかし、式(13)で定義した孤立電磁波の波長は、図7のC点からD点の間で変化することは無い。
【0134】
孤立電界波がC点からD点に向かって進行する場合の電界の変化は、図8に示すように、孤立電界波自身と、孤立電界波の減衰する振幅の包絡線の2つが重なっていると考えることが出来る。
このように考えると、損失信号線路12上を進行する孤立電界波のC点からD点までの電位は、電磁気学での電位の定義に基づいて次式から求められる。
【0135】
【数14】
【0136】
図7において、損失信号線路12のD点にはプッシュプル回路13が接続されており整合終端は無いので終端開放状態にある。従って、損失信号線路12には導体電流は無い。
一方、式(14)から、孤立電界波は損失信号線路12上を進行中に減衰するが、直流電源4で反射した孤立電磁波によって、損失信号線路12の電位は、直流電源4によって与えられる定常電位となり、定常電位の減衰は生じないと言うことが出来る。この事実は、スイッチング電圧波形またはディジタル電圧波形の平坦な波高部分すなわち定常電位が静電磁気エネルギーに支配されるべきとする、電磁気学の考え方に符合する。
【0137】
また、前述のように損失信号線路12上を進行中の孤立電界波の波長は変化しないので、損失信号線路12の途中にインピーダンス不整合個所が無い限り、スイッチング電圧波形またはディジタル電圧波形の上昇または降下時間が進行中に長くなることは無い。
【0138】
一般に、伝送線路から進行中の電磁波の一部が漏洩すると、クロストークにより信号品位を劣化しEMC問題も引き起こすが、信号線路を損失信号線路とすることにより、これらの問題が大きく改善されるし、超高速回路において設計が難しく線路毎に必要な整合終端回路が不要となる。
【0139】
(実施の形態5)
図9は、低インピーダンスを有する損失線路の試作例である。
【0140】
試作した低インピーダンスを有する損失線路は、陰極層50、弁作用金属を使用した陽極箔51、誘電体酸化皮膜52、固体電解質層53、および導電性カーボングラファイト層54とで構成され、弁陽極箔51は線路長方向に引き出されている。引き出された陽極箔51の線路長方向の両端が陽極端子となり、陰極層50の線路長方向の両端が陰極端子となる。
【0141】
試作した低インピーダンスを有する損失線路の幅は1[mm]で長さが4[mm]から16[mm]であり。エッチング処理が施されたアルミニウム箔が陽極箔51として使用されている。陽極箔51は235[μm]の厚さを有し、両面に約50[μm]の厚さのスポンジ状のエッチング加工が施され、エッチング表面には約10[nm]の厚さの酸化アルミニウム被膜が化成処理によって形成され、エッチング部に固体電解質であるポリピロールが含浸されている。
【0142】
ポリピロールの上に約30[μm]の厚さにカーボングラファイトペーストが塗布されて導電性カーボンペースト層54を構成し、その上に約50[μm]の銀ペーストが塗布されて陰極層が形成されている。ポリピロールの実効導電率を1.5×104[S/m]、絶縁体として使用する酸化アルミニウムの比誘電率を8.5と見なしている。
【0143】
図10は、試作した低インピーダンスを有する損失線路の透過係数S21の周波数特性の一例である。
【0144】
図10には、低インピーダンスを有する損失線路の部分の長さを4[mm]、8[mm]、16[mm]および24[mm]としたときのS21特性が示されている。長さが16[mm]と24[mm]については幅が1[mm]
および1.5[mm]としたとき、長さが4[mm]と8[mm]については幅が1.5[mm]としたときの特性が示されている。併せて、従来の2種類のチップセラミックコンデンサの特性も示されている。
【0145】
低インピーダンスを有する損失線路を構成する平行板の静電容量をCとすると、エッチングによる対向面積の拡大率kは、次式から得られる。
【0146】
【数15】
【0147】
周波数をf、静電容量をC[F]とするとコンデンサのインピーダンスZCは、 (2πfC)−1[Ω]であって、コンデンサが、特性インピーダンスが50[Ω]
の測定系の線路に並列に接続されたときの透過係数(S21C)は、次式から求めることが出来る。
【0148】
【数16】
【0149】
試作した低インピーダンスを有する損失線路は平行板線路構造であるので、特性インピーダンスは式(7)から求めることが出来る。但し、線路幅がエッチングにより拡大されているので、本実施の形態においては、式(7)中のwの代わりに拡大率kを考慮したwk1/2を使用すると、試作した低インピーダンス損失線路の特性インピーダンスは9.1×10−6と非常に小さい値になる。
【0150】
試作した低インピーダンスを有する損失線路の特性インピーダンスをZ1とすると、測定系の50[Ω]のケーブルに接続したときの反射の影響による試作した低インピーダンスを有する損失線路への透過係数(S21R)は、次式から求めることが出来る。
【0151】
【数17】
【0152】
試作した低インピーダンスを有する損失線路の端部間の距離をzとしたときの端部間の静電容量CTを CT0/zとし、周波数がfのときのCTのインピーダンスをZTとすると、周波から1[GHz]以上の高周波に亘る透過係数(S21T)は、次式から求めることが出来る。
【0153】
【数18】
【0154】
Z1の特性インピーダンスを有する損失線路を構成する絶縁体の導電率が無限大、半導体の導電率がσPである場合、絶縁体中を進行するインピーダンスZ1を有する電磁波の一部が固有インピーダンスZPを有する半導体中に侵入する。該半導体中に進行中にした電磁波はTEM波以外の通信に役立たない電磁波であって全てが損失となる。半導体の導電率を実際に損失に関わる割合で修正した値を半導体の実効導電率と定義すると、実効導電率 σ
P1は次式から求めることができる。
【0155】
【数19】
【0156】
実効導電率がσ P1のときの減衰定数αP1は次式から求めることが出来る。
【0157】
【数20】
【0158】
試作した低インピーダンスを有する損失線路の低周波から1[GHz]以上の高周波に亘るおおよその透過係数(S21A)は、S21αに式(23)から求めたαP1を代入して、次式から求めることが出来る。
【0159】
【数21】
【0160】
線路幅を1[mm]とし、端子間静電容量を構成するCT0を5×10−20[F/m]とした場合の、試作した低インピーダンスを有する損失線路の透過特性は以下のように求められる。
4[mm]長チップの場合は、100[kHz]で−36dB、1[MHz] で−53dB、10[MHz] で−65dB、100[MHz]
で−84dB、1[GHz] で−102dBとなる。8[mm]長チップの場合は、100[kHz]で−42dB、1[MHz] で−58dB、10[MHz] で−72dB、100[MHz]
で−107dB、1[GHz] で−108dBとなる。16[mm]長チップの場合は、100[kHz]で−48dB、1[MHz] で−63dB、10[MHz] で−83dB、100[MHz]
で−133dB、1[GHz] で−114dBとなる。24[mm]長チップの場合は、100[kHz]で−51dB、1[MHz] で−67dB、10[MHz] で−94dB、100[MHz]
で−138dB、1[GHz] で−117dBとなる。
【0161】
これらの特性は、図10の特性と大略一致する。実測と計算結果との間に生じる主な差異は、アルミニウム薄膜のエッチング部の構造が非常に複雑であるためである。電磁界シミュレーションを試みたが、エッチング部の構造のモデル化が非常に困難であるため、現在の技術水準では、シミュレーションによって正確な特性インピーダンスやS21特性を得ることは不可能である。
【0162】
以上から、低インピーダンスを有する損失線路部品の設計だけでなく本発明に係る損失線路の設計においては、式(21)を使用することが実用的であると考えられる。
【0163】
(実施の形態6)
実施の形態5で得られた知見に従い、図4の構造の損失線路について行った詳細設計例を以下に示す。
【0164】
図4において、絶縁基板15と金属箔16は比誘電率が4のFR−4を使用した銅張り積層板を使用する。絶縁基板の厚さは200[μm]、金属箔16の厚さは35[μm]とする。セパレータ17にはセルロースを原料とし、ポリエステルからなるバインダーを含む厚さが50[μm]の不織布を使用する。固体電解質層19には、30[nm]以下の平均粒径を有するポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)導電性ポリマーを使用し、エタノールまたはブタノール溶液中に浸漬することによって形成する。固体電解質層19の導電率を104[S/m]または100[S/cm]とする。金属箔18には厚さが50[μm]の銅箔を使用する。損失線路の特性インピーダンスは50[Ω]とし、1
[GHz]における透過係数(S21)の目標値を−100[dB]以下とする。
【0165】
式(7)から、金属箔16の幅を0.75[mm]とすると、損失線路の特性インピーダンスは50.2[Ω]となる。式(19)から、固体電解質層の導電率を実際に損失に関わる割合で修正した値である固体電解質層の実効導電率σ
P1は1 [GHz]において2.2×103となる。このときの損失線路の減衰定数αP1は6.3×103となる。金属箔16の長さが5[mm]のときの透過係数(S21α)は3.87×10−7となる。損失線路が挿入される信号線路の特性インピーダンスを50[Ω]とすると、挿入に伴う反射損は無いので式(18)から求められる透過係数(S21R)は1、損失線路に端子が無いので式(18)から求められる透過係数(S21T)は0となる。損失線路の1[m]あたりの静電容量値は金属箔16の幅に絶縁基板15の誘電率を掛けて絶縁基板15の厚さで割れば求められ、1 [GHz]における透過係数(S21C)は6.37×10−12となる。以上の値を式(21)に代入すると、損失線路の透過係数(S21A)は、透過係数(S21α)に等しい3.87×10−7、すなわち−128.3dBとなり、前記目標値を充分満たす。
【0166】
実施の形態6に示した損失線路を信号線路の送端側に挿入すると、信号線路上には送信回路のスイッチングによって発生する孤立電磁波のレベルが実用上無視できる程度に減少するので、クロストークが生じる可能性が無くなる。併せて、電源線路を実施の形態5に示した低インピーダンスを有する損失線路とすることにより、信号線路の信号電圧の上昇/降下時間を送信回路のトランジスタの性能通りとすることが出来るので、信号品位も向上する。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明はスイッチング回路を内蔵する半導体集積回路並びに、半導体集積回路を内蔵する情報技術機器、マルチメディア機器、電力変換機器の高性能化、設計容易化と設計期間の短縮化、小型軽量化、低消費電力化、低コスト化、電磁干渉問題の解消又は低減、電磁のノイズによる誤動作の低減、信号品位の向上、および機器の品質・信頼性向上を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】図1は、ディジタル基本回路の等価回路の一例である。
【図2】図2は、信号線路の電位波形と信号線路上を進行する孤立電界波形である。
【図3】図3は、電源線路の電位波形と電源線路上を進行する孤立電界波形である。
【図4】図4は、損失線路の一例である。
【図5】図5は、損失線路の他の一例である。
【図6】図6は、損失線路の他の一例である。
【図7】図7は、損失線路を信号線路に使用するディジタル基本回路の等価回路の一例である。
【図8】図8は、孤立電界波が損失信号線路上を進行する時の様子である。
【図9】図9は、低インピーダンスで損失を有する線路の試作例である。
【図10】図10は、試作した低インピーダンスを有する損失線路の透過係数S21の周波数特性の一例である。
【符号の説明】
【0169】
1、13 プッシュプル回路
2 PチャネルMOS トランジスタ
3 NチャネルMOS トランジスタ
4 直流電源
5 電源線路
6 信号線路
7 抵抗器
8 信号線路上の孤立電界波
9 信号線路の電位波形
10 電源線路上の孤立電界波
11 電源側の線路の電位波形
12 損失信号線路
15 絶縁基板
16、18 金属箔
17 セパレータ
19、53 固体電解質層
20、54 導電性カーボンペースト層
21 導電性金属粉ペースト層
22 弁作用金属粒子ペースト層
50 陰極層
51 陽極箔
52 誘電体酸化皮膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、前記絶縁基板の一つの面に貼付された第1の金属箔と、セパレータと、該セパレータを挟んで前記絶縁基板の他の面に対向して配置される第2の金属箔と、前記セパレータに含浸されて前記第2の金属箔と前記絶縁基板の間に形成される固体電解質層とから成り、前記第1の金属箔と前記第2の金属箔を電極とする平行板損失線路として機能することを特徴とする、損失線路
【請求項2】
請求項1記載の損失線路において、該損失線路が、前記絶縁基板と、該絶縁基板の一つの面に貼付された前記第1の金属箔と、前記絶縁基板の他の面に形成される前記固体電解質層と、該固体電解質層の上面に形成される導電性カーボンペースト層と、前記第2の金属箔と、該第2の金属箔を前記導電性カーボンペースト層に貼付するために用いられる導電性金属粉ペースト層とから成り、前記第1の金属箔と前記第2の金属箔を電極とする平行板損失線路として機能することを特徴とする、損失線路
【請求項3】
請求項1から請求項2記載の損失線路において、該損失線路が、前記絶縁基板と、該絶縁基板の一つの面に貼付された前記第1の金属箔と、前記絶縁基板の他の面に形成される、誘電体酸化皮膜の形成処理が施された弁作用金属粒子を含む弁作用金属粒子ペースト層と、該弁作用金属粒子ペースト層上に形成される前記固体電解質層と、該固体電解質層上に形成される前記導電性カーボンペースト層と、前記第2の金属箔と、該第2の金属箔を前記導電性カーボンペースト層に貼付するために用いられる前記導電性金属粉ペースト層とから成り、前記第1の金属箔と前記第2の金属箔を電極とする平行板損失線路として機能することを特徴とする、損失線路
【請求項4】
請求項1から請求項3記載の損失線路において、該損失線路が、1つ以上のスイッチング素子を有するスイッチング回路間の信号の送受信のために設けられる伝送線路の全てまたは一部に使用され、前記第1の金属箔が前記信号線路を構成する信号導体の全てまたは一部を構成し、前記第2の金属箔が前記信号線路を構成するグランド導体に並列に接続されることを特徴とする、損失線路
【請求項5】
請求項1から請求項4記載の損失線路において、前記伝送線路が、半導体集積回路内の半導体チップ上に形成されるインターコネクト構造、または印刷配線基板に形成される配線構造、またはシャーシ内に形成されるワイヤハーネス、またはケーブルの、一部または全てを構成することを特徴とする、損失線路
【請求項6】
請求項1から請求項5記載の損失線路において、前記第1および第2の固体電解質層が、10[S/m]以上の導電率を有することを特徴とする、損失線路
【請求項7】
請求項1から請求項6記載の損失線路において、該損失線路が、100[MHz]以上の帯域において100 [nep/m](ネパー/メートル)以上の減衰定数を有することを特徴とする、損失線路
【請求項8】
請求項1から請求項7記載の損失線路において、該損失線路が、前記伝送線路の特性インピーダンスと等しいかまたは実用上等しいと判断できる特性インピーダンスを有していることを特徴とする、損失線路
【請求項9】
請求項1から請求項8記載の損失線路において、前記絶縁基板が、FR−2(フェノール綿紙)、FR−3 (綿紙エポキシ) 、FR−4(ガラス布エポキシ), FR−5 (ガラス布エポキシ),FR−6(つや消しガラスポリエステル) 、G−10 (ガラス布エポキシ) 、CEM−1(綿紙エポキシ), CEM−2(綿紙エポキシ) 、 CEM−3(ガラス布エポキシ) 、CEM−4(ガラス布エポキシ) 、 CEM−5(ガラス布ポリエステル)、ポリイミドフィルム、(CaO−Al2O3−SiO3−B2O3)+Al2O3(LTCC)、Al2O3(アルミナ)のいずれかから成ることを特徴とする、損失線路
【請求項10】
請求項1から請求項9記載の損失線路において、前記第2の固体電解質層が、モノマーピロールまたはモノマー(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を酸化剤で重合して形成されることを特徴とする、損失線路
【請求項11】
請求項1から請求項10記載の損失線路において、前記酸化剤が、ブタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、エチレングリコールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸、またはヨウ素酸の水溶液であることを特徴とする、損失線路
【請求項12】
請求項1から請求項11記載の損失線路において、前記第1の固体電解質層が、100[nm]以下の平均粒径を有するポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)導電性ポリマーをエタノールまたはブタノール溶液中に浸漬することによって形成されることを特徴とする、損失線路
【請求項13】
請求項1から請求項12記載の損失線路において、前記弁作用金属粒子ペースト層が、1[μm]以下の平均粒径を有する化成膜形成処理が施されたアルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム、またはそれらの合金の粒子を重量比で50%以上含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含むことを特徴とする、損失線路
【請求項14】
請求項1から請求項13記載の損失線路において、前記導電性カーボンペースト層が、導電性材料として固定炭素分が97質量%以上であり平均粒子径が1〜13[μm]でありアスペクト比が10以下であり粒子径32[μm]以上の粒子が12質量%以下である人造黒鉛を重量比で80%以上含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含むことを特徴とする、損失線路
【請求項15】
請求項1から請求項14記載の損失線路において、前記導電性金属粉ペースト層が、10[μm]以下の長径を有する、金粒子、銀粒子、銅粒子、錫粒子、インジウム粒子、パラジウム粒子、ニッケル粒子、およびこれらの任意の合金粒子から選ばれる少なくとも1種の金属粒子を含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含むことを特徴とする、損失線路
【請求項16】
請求項1から請求項15記載の損失線路において、前記セパレータが、ビニロン、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド(アラミド)、半芳香族ポリアミド、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリルニトリル、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、全芳香族ポリカーボネート、全芳香族ポリアゾメチン、ポリフェニレンスルフィド(
P P S) 、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール( P B Z T ) 、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール( P B O ) 、ポリベンゾイミダゾール(
P B I ) 、ポリエーテルエーテルケトン( P E E K ) 、ポリアミドイミド( P A I ) 、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン( P T F
E )、またはセルロース原料とする繊維から1種類以上を選択して100[μm]以下の厚さに形成される不織布から成ることを特徴とする、損失線路
【請求項17】
請求項1から請求項16記載の損失線路において、前記セパレータが、湿熱融着樹脂であるポバールまたは熱融着樹脂であるポリエステルから成るバインダーを含むことを特徴とする、損失線路
【請求項18】
請求項1から請求項17記載の損失線路において、前記誘電体酸化皮膜が、前記弁作用金属粒子を化成液に5分から120分間浸漬して化成されることを特徴とする、損失線路
【請求項19】
請求項1から請求項18記載の損失線路において、前記化成液が、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液であることを特徴とする、損失線路
【請求項1】
絶縁基板と、前記絶縁基板の一つの面に貼付された第1の金属箔と、セパレータと、該セパレータを挟んで前記絶縁基板の他の面に対向して配置される第2の金属箔と、前記セパレータに含浸されて前記第2の金属箔と前記絶縁基板の間に形成される固体電解質層とから成り、前記第1の金属箔と前記第2の金属箔を電極とする平行板損失線路として機能することを特徴とする、損失線路
【請求項2】
請求項1記載の損失線路において、該損失線路が、前記絶縁基板と、該絶縁基板の一つの面に貼付された前記第1の金属箔と、前記絶縁基板の他の面に形成される前記固体電解質層と、該固体電解質層の上面に形成される導電性カーボンペースト層と、前記第2の金属箔と、該第2の金属箔を前記導電性カーボンペースト層に貼付するために用いられる導電性金属粉ペースト層とから成り、前記第1の金属箔と前記第2の金属箔を電極とする平行板損失線路として機能することを特徴とする、損失線路
【請求項3】
請求項1から請求項2記載の損失線路において、該損失線路が、前記絶縁基板と、該絶縁基板の一つの面に貼付された前記第1の金属箔と、前記絶縁基板の他の面に形成される、誘電体酸化皮膜の形成処理が施された弁作用金属粒子を含む弁作用金属粒子ペースト層と、該弁作用金属粒子ペースト層上に形成される前記固体電解質層と、該固体電解質層上に形成される前記導電性カーボンペースト層と、前記第2の金属箔と、該第2の金属箔を前記導電性カーボンペースト層に貼付するために用いられる前記導電性金属粉ペースト層とから成り、前記第1の金属箔と前記第2の金属箔を電極とする平行板損失線路として機能することを特徴とする、損失線路
【請求項4】
請求項1から請求項3記載の損失線路において、該損失線路が、1つ以上のスイッチング素子を有するスイッチング回路間の信号の送受信のために設けられる伝送線路の全てまたは一部に使用され、前記第1の金属箔が前記信号線路を構成する信号導体の全てまたは一部を構成し、前記第2の金属箔が前記信号線路を構成するグランド導体に並列に接続されることを特徴とする、損失線路
【請求項5】
請求項1から請求項4記載の損失線路において、前記伝送線路が、半導体集積回路内の半導体チップ上に形成されるインターコネクト構造、または印刷配線基板に形成される配線構造、またはシャーシ内に形成されるワイヤハーネス、またはケーブルの、一部または全てを構成することを特徴とする、損失線路
【請求項6】
請求項1から請求項5記載の損失線路において、前記第1および第2の固体電解質層が、10[S/m]以上の導電率を有することを特徴とする、損失線路
【請求項7】
請求項1から請求項6記載の損失線路において、該損失線路が、100[MHz]以上の帯域において100 [nep/m](ネパー/メートル)以上の減衰定数を有することを特徴とする、損失線路
【請求項8】
請求項1から請求項7記載の損失線路において、該損失線路が、前記伝送線路の特性インピーダンスと等しいかまたは実用上等しいと判断できる特性インピーダンスを有していることを特徴とする、損失線路
【請求項9】
請求項1から請求項8記載の損失線路において、前記絶縁基板が、FR−2(フェノール綿紙)、FR−3 (綿紙エポキシ) 、FR−4(ガラス布エポキシ), FR−5 (ガラス布エポキシ),FR−6(つや消しガラスポリエステル) 、G−10 (ガラス布エポキシ) 、CEM−1(綿紙エポキシ), CEM−2(綿紙エポキシ) 、 CEM−3(ガラス布エポキシ) 、CEM−4(ガラス布エポキシ) 、 CEM−5(ガラス布ポリエステル)、ポリイミドフィルム、(CaO−Al2O3−SiO3−B2O3)+Al2O3(LTCC)、Al2O3(アルミナ)のいずれかから成ることを特徴とする、損失線路
【請求項10】
請求項1から請求項9記載の損失線路において、前記第2の固体電解質層が、モノマーピロールまたはモノマー(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を酸化剤で重合して形成されることを特徴とする、損失線路
【請求項11】
請求項1から請求項10記載の損失線路において、前記酸化剤が、ブタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、エチレングリコールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸、またはヨウ素酸の水溶液であることを特徴とする、損失線路
【請求項12】
請求項1から請求項11記載の損失線路において、前記第1の固体電解質層が、100[nm]以下の平均粒径を有するポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)導電性ポリマーをエタノールまたはブタノール溶液中に浸漬することによって形成されることを特徴とする、損失線路
【請求項13】
請求項1から請求項12記載の損失線路において、前記弁作用金属粒子ペースト層が、1[μm]以下の平均粒径を有する化成膜形成処理が施されたアルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム、またはそれらの合金の粒子を重量比で50%以上含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含むことを特徴とする、損失線路
【請求項14】
請求項1から請求項13記載の損失線路において、前記導電性カーボンペースト層が、導電性材料として固定炭素分が97質量%以上であり平均粒子径が1〜13[μm]でありアスペクト比が10以下であり粒子径32[μm]以上の粒子が12質量%以下である人造黒鉛を重量比で80%以上含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含むことを特徴とする、損失線路
【請求項15】
請求項1から請求項14記載の損失線路において、前記導電性金属粉ペースト層が、10[μm]以下の長径を有する、金粒子、銀粒子、銅粒子、錫粒子、インジウム粒子、パラジウム粒子、ニッケル粒子、およびこれらの任意の合金粒子から選ばれる少なくとも1種の金属粒子を含み、ポリエチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂のいずれかのバインダーを含むことを特徴とする、損失線路
【請求項16】
請求項1から請求項15記載の損失線路において、前記セパレータが、ビニロン、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド(アラミド)、半芳香族ポリアミド、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリルニトリル、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、全芳香族ポリカーボネート、全芳香族ポリアゾメチン、ポリフェニレンスルフィド(
P P S) 、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール( P B Z T ) 、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール( P B O ) 、ポリベンゾイミダゾール(
P B I ) 、ポリエーテルエーテルケトン( P E E K ) 、ポリアミドイミド( P A I ) 、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン( P T F
E )、またはセルロース原料とする繊維から1種類以上を選択して100[μm]以下の厚さに形成される不織布から成ることを特徴とする、損失線路
【請求項17】
請求項1から請求項16記載の損失線路において、前記セパレータが、湿熱融着樹脂であるポバールまたは熱融着樹脂であるポリエステルから成るバインダーを含むことを特徴とする、損失線路
【請求項18】
請求項1から請求項17記載の損失線路において、前記誘電体酸化皮膜が、前記弁作用金属粒子を化成液に5分から120分間浸漬して化成されることを特徴とする、損失線路
【請求項19】
請求項1から請求項18記載の損失線路において、前記化成液が、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液であることを特徴とする、損失線路
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−16771(P2010−16771A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177225(P2008−177225)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(706001123)株式会社アイキャスト (37)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(706001123)株式会社アイキャスト (37)
【Fターム(参考)】
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