説明

搬送システム

【課題】絶縁性のワークを搬送する際の帯電を抑制することが可能な搬送システムおよびコンベア装置を提供する。
【解決手段】搬送システム100は、ガラス基板Wをトレイ1に載置して搬送する搬送システムであって、ローラ25と、トレイ1とを備えている。ローラ25は、搬送方向に並んで複数配置されている。トレイ1は、絶縁性のガラス基板Wを載置する。そして、トレイ1とローラ25とにおいて、少なくとも互いの接触部(外側フランジ11およびローラ25)が導電性を有しており、接触部は接地されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性のワークを搬送する搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、薄型表示装置の製造工程等において、ガラス基板に代表される絶縁性の物品(ワーク)を搬送する技術が必要となっている。そして、このようなワークを搬送する装置としては、搬送方向に複数のローラを並べたコンベア装置が一般的に使用されている。
コンベア装置においてガラス基板を搬送する際には、ローラとの摩擦によって基板表面に静電気が発生することがある。その場合、空気中の塵やごみ(いわゆる、パーティクル)が基板表面に付着したり、基板の電気回路に不具合が発生したりする。
このような問題を解決するために、従来より基板に対して除電を行う技術が提案されている。例えば、特許文献1においては、ローラの少なくとも基板と接触する部分を導電性の柔らかい部材で形成し、さらに導電性柔軟材料をアースしている。
【特許文献1】特開2002−274642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来のコンベア装置は、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、導電性のローラを使用しても、ローラと基板との接触部分しか除電することができない。つまり、除電の程度が十分でなく、そのため前述の問題を回避できない。
また、近年はガラス基板の大型化が進んでいるため、帯電量がさらに増加することが懸念されている。
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、絶縁性のワークを搬送する際の帯電を抑制することが可能な搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の搬送システムは、絶縁性のワークを搬送する搬送システムであって、トレイと、複数のローラとを備えている。トレイはワークを載置する。複数のローラは、トレイを搬送するために搬送方向に並んで配置されている。ローラとトレイにおいて、少なくとも互いの接触部は導電性を有している。接触部は接地されている。
このシステムでは、トレイの搬送時において、トレイとローラとの摩擦によって発生する静電気はより確実に放電される。つまり、絶縁性のワークを搬送する際の帯電が抑制される。その結果、例えば、ワークにパーティクルが吸引される等の問題が生じにくい。
【0005】
請求項2に記載の搬送システムでは、請求項1において、トレイは導電性材料により形成されている。
このシステムでは、トレイが導電性材料によって形成されているため、ローラが直接接触する部分以外に蓄えられた静電気も放電することが可能である。
【0006】
請求項3に記載の搬送システムは、請求項1または2において、ローラは、所定量の導電性材料を含有した樹脂により形成されている。
このシステムでは、樹脂製のローラを用いているため、搬送時にトレイを傷つけにくい。
【0007】
請求項4に記載の搬送システムは、請求項3において、ローラは、1〜50wt%の導電性材料を含有している。
このシステムでは、ワークの帯電量を抑制するためにローラに求められる導電性を十分に確保している。
【0008】
請求項5に記載の搬送システムは、請求項4において、ローラは、1〜30wt%の導電性材料を含有している。
このシステムでは、ワークの帯電量を抑制するためにローラに求められる導電性を十分に確保している。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る搬送システムによれば、絶縁性のワークを搬送する際の帯電を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る搬送システム100について、図1〜図5を用いて説明すれば以下の通りである。
[全体構成]
搬送システム100は、図1および図2に示すように、薄板状のワークを搬送用トレイ1(以下、「トレイ1」とする)に載置して、搬送経路に沿って所定の位置にまで搬送する装置である。本実施形態の搬送システム100で搬送する薄板状のワークとしては、例えば、電子ディスプレイ(液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等)に用いられる板状ワークや、有機ELに用いられる樹脂板等がある。
[搬送コンベア20]
搬送コンベア20は、図1および図2に示すように、支持フレーム21と、ローラ25と、駆動装置(図示せず)とを備えている。
【0011】
支持フレーム21は、導電性材料によって形成されており、ローラ25の駆動力伝達機構を格納する本体21aと、本体21aを床面上方に支持する支持脚21bとを有している。
ローラ25は、搬送方向に沿って複数配置されている。具体的には、ローラ25は、搬送方向に沿って配置された一対のローラ群から構成されている。各ローラ25は、導電性のシャフト26を介して本体21aに取り付けられている。シャフト26は、本体21a内に配置された軸受(図示せず)を介して回動可能に支持されており、さらに本体21a内に配置された駆動装置(図示せず)に連結されている。ローラ25は、カーボン入りMCナイロンにより形成されている。本実施形態においては、1〜50wt%のカーボンブラックを含有することによって、ローラ25には所定の導電性が確保されている。
【0012】
[搬送用トレイ1]
図4は、搬送用トレイ1の一実施形態の構成を示す斜視図であり、図5はトレイ1の上面図である。
トレイ1は、薄板状のワークを載置して搬送するために用いられる。トレイ1は、主に、矩形状の外枠2と、外枠2の対向する枠部材の間に掛け渡された複数の桟4とを備えている。なお、ここでは、薄板状のワークとしてガラス基板Wを用いて説明する。
外枠2は、4本の枠部材2aから構成される。本実施例における枠部材2aには一定の板厚のアルミ押し出し材が使用されており、枠部材2aは2本の長辺枠部材と2本の短辺枠部材とから構成されている。
枠部材2aは、外側フランジ(接触部)11と、外側フランジ11よりも高い位置に形成される内側フランジ12とを備えており、外側フランジ11と内側フランジ12との間に傾斜部13が設けられている。内側フランジ12は、傾斜部13の上端部から内方に延出しており、外側フランジ11は、傾斜部13の下端部から外方に延出している。傾斜部13は、外枠2が形成されたときに下方に向けて広がった形状となるように角度が付けられている。
【0013】
桟4は、外枠2の対向する枠部材2aの間に複数掛け渡されて、ガラス基板Wの載置部を構成している。桟4は、一定の板厚のアルミ押し出し材が使用されている。
桟4は、ガラス基板Wを支持するために複数の載置ピン4aを有している。載置ピン4aは、耐磨耗性の高いポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)で形成されており、ガラス基板Wを繰り返し搭載しても、磨耗によるダストがほとんど発生せず、ガラス基板Wを汚染しない。また、ガラス基板Wとの接触面が少ないため、トレイ1とガラス基板Wとの摩擦あるいは剥離による帯電を抑制することができる。
トレイ1は、搬送コンベア20で搬送される際には、図1に示すように、左右両側がローラ25の各ローラ群の上に置かれる。より具体的には、図3に示すように、トレイ1の外側フランジ11がローラ25の上に置かれる。
【0014】
この状態で、図示しない駆動装置がローラ25を回転させると、トレイ1が複数のローラ25上を搬送される。
以上の構造において、支持フレーム21は、支持脚21bによって接地されている。これにより、ローラ25は、シャフト26および支持フレーム21を介して接地されていることとなる。また、トレイ1もローラ25上に載置されることによって、ローラ25、シャフト26,支持フレーム21を介して接地されることになる。以上の接地構造により、トレイ1とローラ25との搬送時の接触による帯電が抑制される。
このシステムでは、トレイ1が導電性材料によって形成されているため、ローラ25が直接接触する部分以外に蓄えられた静電気も放電することが可能である。
このシステムでは、樹脂製のローラ25を用いているため、搬送時にトレイを傷つけにくい。
【実施例1】
【0015】
本発明の搬送システム100における絶縁性ワークにおける帯電抑制効果を確認するために、下記に示す項目について実験を行った。
なお、以下の実験においては、片道搬送距離0.5mのトレイ耐久試験装置と小型の試験用トレイとを使用して行い、室温25度、湿度45%の環境試験室にて測定を行った。また、絶縁性ワークとして240mm、または、400mmのガラス基板を使用して行った。また、ガラス基板の帯電量の測定は、表面電位計によって行い、搬送速度の測定は、小型の試験用トレイおよびガラス基板に貼り付けたスケール(25mmピッチ)とフォトセンサによって行った。また、ローラの回転数は、ローラ回転軸に一体に取り付けたパルス円板とフォトセンサとによって測定した。
なお、本試験用トレイは、寸法以外の構成については、前述のトレイと同様の構成要素から成る。
(1)ガラス基板を単体で搬送した場合の帯電電位の測定(従来技術)
最初に、従来の搬送方法、すなわち、接地された導電性のローラ(例えば、カーボン入りMCナイロン)に対してガラス基板を接触させて搬送する場合において、ガラス基板に発生する帯電電位を測定した。
【0016】
具体的には、ガラス基板をローラ上に載置した後、十分に除電し、ローラ加減速有りの場合と無しの場合との条件に分けてガラス基板を繰り返し往復搬送し、ガラス基板の上面と下面とにおける帯電電位(V)を測定した。ここで、加減速無しの場合の速度カーブは、図7に示すとおりであり、加減速有りの場合の速度カーブは、図8に示すとおりである。即ち、ローラ加減速無しの場合は、ローラとガラス基板との間に滑りが発生し、加減速有りの場合は、ローラとガラス基板との間に滑りがないため、こすられることなく搬送されていることが分かる。
この結果、図6に示すように、何れの条件(加減速有りの場合と無しの場合)で測定した場合も、ガラス基板の帯電電位は、搬送距離に比例して大きくなることが確認できた。すなわち、ガラス基板をローラに接触させて搬送する場合、ガラス基板と接触するローラを導電性の材料で形成し、さらに接地させたとしても、十分な除電効果がないことが確認された。これは、搬送されるガラス基板が絶縁性である限り、ローラとの摩擦による帯電は避けることができず、また、接地された導電性のローラを使用して除電しようとしても、実際にはローラとガラス基板との接触部分しか除電できないことによると考えられる。すなわち、上記従来の搬送方法では、ガラス基板の帯電を十分に抑制することができない。
【0017】
(2)搬送物の種類別の帯電電位の測定(本発明と従来技術の比較)
次に、接地された導電性ローラに対して、搬送物の種類ごとに、それぞれのガラス基板の上面と下面とにおける帯電電位(V)を測定した。搬送物は、以下の3種類である。
(a)ガラス基板単体(従来技術)
(b)アルミトレイに載置したガラス基板(本発明)
(c)SUSトレイに載置したガラス基板(本発明)
ここで、ガラス基板単体(ガラスサイズ:400mm)を搬送させた時の速度カーブは図7、SUSトレイに載置したガラス基板(ガラスサイズ:240mm)、アルミトレイに載置したガラス基板(ガラスサイズ:240mm)を搬送させた時の速度カーブは、それぞれ図10(a)、図10(b)に示すとおりである。
この結果、図9に示すように、ガラス基板単体を搬送する場合に比べて、SUSトレイ、アルミトレイを用いてガラス基板を搬送する場合に、ガラス基板の帯電電位が極めて小さいことを確認することができた。そして、搬送距離が大きくなった場合に、その違いは顕著である。これにより、接地された導電性ローラ上を搬送させる場合において被搬送物の帯電を抑制するためには、ガラス基板単体を搬送するのではなく、導電性材料からなるトレイを用いてガラス基板を搬送するのが有利であることが確認できた。
【0018】
(3)トレイおよびローラの材質別の帯電電位の測定(本発明とそれ以外の技術との比較)
次に、トレイを用いてガラス基板(ガラスサイズ:240mm)を搬送することを前提として、トレイおよびローラ導電性の有無の各組合せごとに、ガラス基板の帯電電位(V)を測定した。組合せは以下の3通りである。
(a)UPE(超高分子量ポリエチレン)のローラ(絶縁性)とアルミのフランジ(導電性)との組み合わせ(本発明以外の技術)
(b)カーボン入りMCナイロンのローラ(導電性)とアルミのフランジ(導電性)との組み合わせ(本発明)
(c)カーボン入りMCナイロンのローラ(導電性)と表面にPVCテープが貼付されたフランジ(絶縁性)との組み合わせ(本発明以外の技術)
以上3例について、トレイに載置されたガラス基板の上面と下面との帯電電位(V)を測定した。ここで、トレイにおけるローラとの接触部分は、フランジ(図4における外側フランジ11に該当)である。
【0019】
この結果、図11に示すように、ローラとフランジとが互いに導電性部材のとき、すなわち、上記(b)の組み合わせのとき、ガラス基板の帯電電位が極めて小さいことが確認できた。一方、(a)、(c)の組み合わせの時は、(b)に比べてガラス基板の帯電電位が大きくなることが確認できた。
以上の結果により、絶縁性のガラス基板をトレイを用いて搬送する際の帯電電位を抑制するためには、トレイ及びローラの両方(少なくとも接触部分)を導電性とすることが効果的であることが確認できた。
(4)ガラス基板をアルミトレイに載置して搬送した場合の帯電電位の測定(本発明)
最後に、ガラス基板をアルミトレイに載置し、搬送速度や加減速を変えて搬送した場合におけるガラス基板の帯電電位(V)を測定した。具体的には、図13〜図16に示す速度カーブのように、15m/min・加減速あり(図13参照)、30m/min・加減速あり(図14参照)、45m/min・加減速あり(図15参照)、45m/min・加減速なし(図16参照)の条件で搬送した場合のガラス基板の上面と下面とにおける帯電電位(V)を測定した。
【0020】
この結果、図12に示すように、何れの条件で測定した場合も、ガラス単体で搬送する場合(図6参照)に比べて帯電電位の上昇を大きく抑制することが可能となることが確認できた。
以上(1)〜(4)の測定によって、絶縁性のワークをコンベア装置等のローラによって搬送する場合には、導電性トレイに絶縁性ワークを載置し、トレイと接地された導電性ローラとを接触させて搬送する方法が有効であることが確認できた。
なお、(2)〜(4)で用いたトレイの載置ピンは、いずれもPEEK製であり、絶縁体である。
(5)トレイにガラス基板を載置する際の帯電電位の測定(本発明)
実使用時は、ガラスをトレイに出し入れする工程がある。即ち、トレイ下方より、桟の間を貫通させて突き出しピン、もしくは、ローラが昇降することにより、ガラス基板がトレイ載置ピンとの接触・離間を繰り返す。
【0021】
そこで、トレイにガラス基板を載置する際の帯電電位について、載置ピンおよび突き出しピンおよびローラの材質を互いに変え、ガラス基板の帯電電位(V)の測定を行った。具体的には、
(a)PEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)の載置ピンおよび突き出しピン(絶縁性)とカーボン入りMCナイロンのローラ(導電性)との組み合わせ
(b)アルミ箔巻き付けたPEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)の載置ピンおよび突き出しピン(導電性)とカーボン入りMCナイロンのローラ(導電性)との組み合わせ
(c)PEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)の載置ピンおよび突き出しピン(絶縁性)と表面にPVCテープが貼付されたローラ(絶縁性)との組み合わせ
(d)アルミ箔巻き付けたPEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)の載置ピンおよび突き出しピン(導電性)とPVCテープが貼付されたローラ(絶縁性)との組み合わせについて、昇降速度をレーザ変位計によって測定しながら、ローラ上にトレイを載置した状態で、桟の間を昇降する突き出しピンにより、ガラス基板を昇降させる。この時、ガラス基板は、載置ピン上にある時は突き出しピンと離間し、突き出しピン上にある時は載置ピンとは離間している。即ち、各ピンと接触・剥離を繰り返す。そして、それぞれのトレイに載置されたガラス基板の上面と下面との帯電電位(V)を測定した。なお、ガラス基板は、+(プラス)またはマイナス(−)に1kV以上帯電させた後に測定を開始した。また、突き出しピンの昇降速度は、加減速なしの1.0m/minとした。
【0022】
この結果、何れの条件においても、昇降を繰り返しても帯電電位の変化はほとんど無く、剥離帯電らしき現象を認めることはできなかった。これは、ガラス基板と載置ピンとの接触面積が非常に小さいためと考えられる。これにより、トレイ上にガラス基板を載置し、取り出すことによる不具合がないことが確認できた。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態の搬送システム100では、絶縁性のガラス基板Wを搬送するトレイ1が、図4および図5に示すような桟4を有している例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
例えば、ガラス基板Wを載置する部分が、導電性の平板によって形成されていてもよい。
(B)
上記実施形態の搬送システム100では、ローラ25の全体が、導電性材料により形成されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図17に示すように、ローラ25のうち、トレイ1と接触する接触部25aが導電性材料により形成されていてもよい。この場合、接触部25aが適切に設定され、どこかで接地されていれば、上記の実施形態に係る搬送システム100と同様の効果を得ることができる。
また、全てのローラが導電性である必要はなく、所定の効果が得られる範囲で部分的に取り付けられるようにしてもよい。
【0024】
(C)
上記実施形態の搬送システム100では、ローラ25が、カーボン入りMCナイロンにより形成された例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、導電性材料を含有した超高分子量ポリエチレンやポリエーテルイミド等の樹脂によって形成してもよい。また、導電性金属によってローラを形成してもよい。
なお、本実施例では、カーボン入りMCナイロンによる実験データを示したが、カーボン入りUPEにおいても、同様の効果が得られることを確認した。
(D)
上記実施形態の搬送システム100では、ローラ25が、1〜50wt%のカーボンブラックを含有することによって導電性が確保されたMCナイロンで形成されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
例えば、1〜50wt%のカーボンファイバーをMCナイロンに含有させてもよい。また、1〜30wt%のカーボンナノチューブやカーボンナノファイバーを含有させてもよい。この場合も、上記の実施形態に係る搬送システム100と同様の効果を得ることができる。
(E)
上記実施形態の搬送システム100では、トレイ1の全体が、導電性のアルミ押し出し部材から形成された例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ローラ25との接触部分である外側フランジ11のみ導電性の材質によって形成してもよい。
【0026】
また、図9で示したようにSUS製のトレイでも同様の効果が得られることから、他の導電性の金属、あるいは、導電性の表面処理を施したものであっても、同様の効果を得ることができる。
(F)
上記実施形態の搬送システム100では、トレイに載置して搬送するワークとしてガラス基板Wを例として説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、電子ディスプレイ(液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等)に用いられる板状ワークや、有機ELディスプレイや照明に用いられる樹脂板等であっても、上記の実施形態に係る搬送システム100と同様の効果を得ることができる。
(G)
上記実施形態の搬送システム100では、桟4に形成された載置ピン4aが形成された例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
例えば、トレイ1とガラス基板Wとの間で相対移動、すなわち、滑りが発生しないように、搬送コンベア20におけるトレイ1の搬送速度を制御してもよい。この場合も、トレイ1とガラス基板Wとの間で発生する摩擦あるいは剥離による帯電を抑えることが可能となる。これにより、絶縁性のワークを搬送する際の帯電を抑制する効果を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送システムの外観図。
【図2】本発明の一実施形態に係る搬送システムの横断図。
【図3】図1および図2に含まれるローラ周辺の拡大断面図。
【図4】図1の搬送システムによって搬送される搬送用トレイの外観図。
【図5】図1の搬送システムによって搬送される搬送用トレイの平面図
【図6】従来の搬送方法によってガラス基板を搬送した場合の帯電電位の測定結果。
【図7】図6の測定をした際の速度カーブ(加減速なし)を示したグラフ。
【図8】図6の測定をした際の速度カーブ(加減速あり)を示したグラフ。
【図9】各種搬送メディアを従来の搬送方法によって搬送した場合の帯電電位の測定結果。
【図10】(a)は、図9の測定をした際のSUSトレイにおける速度カーブを示したグラフ。(b)は、図9の測定をした際のアルミトレイにおける速度カーブを示したグラフ。
【図11】トレイおよびローラにおける材質を変えて測定した場合の帯電電位の測定結果。
【図12】ガラス基板をアルミトレイに載置して搬送した場合の帯電電位の測定結果。
【図13】図12の測定をした際の速度カーブ(15m/min・加減速なし)を示したグラフ。
【図14】図12の測定をした際の速度カーブ(30m/min・加減速なし)を示したグラフ。
【図15】図12の測定をした際の速度カーブ(45m/min・加減速あり)を示したグラフ。
【図16】図12の測定をした際の速度カーブ(45m/min・加減速なし)を示したグラフ。
【図17】本発明の他の実施形態におけるローラ周辺の拡大断面図。
【符号の説明】
【0029】
1 搬送用トレイ(トレイ)
2 外枠
2a 枠部材
4 桟
4a 載置ピン
11 外側フランジ(接触部)
12 内側フランジ
13 傾斜部
20 搬送コンベア
21 支持フレーム
21a 本体
21b 支持脚
25 ローラ(接触部)
25a 接触部
26 シャフト
100 搬送システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性のワークを搬送する搬送システムであって、
前記ワークを載置するトレイと、
前記トレイを搬送するために搬送方向に並んで配置された複数のローラと、を備えており、
前記ローラおよび前記トレイにおいて、少なくとも互いの接触部は導電性を有しており、
前記接触部は接地されている、搬送システム。
【請求項2】
前記トレイは、導電性材料により形成されている、
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記ローラは、所定量の導電性材料を含有した樹脂により形成されている、
請求項1または2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記ローラは、1〜50wt%の前記導電性材料を含有している、
請求項3に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記ローラは、1〜30wt%の前記導電性材料を含有している、
請求項4に記載の搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−184764(P2009−184764A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24435(P2008−24435)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】