搬送装置
【課題】被搬送体に外部物体が接触したことを迅速に検知する。
【解決手段】記録ヘッドを搭載したキャリッジを主走査方向に搬送して用紙に画像を形成する画像形成装置には、リニアエンコーダが設けられている。リニアエンコーダは、主走査方向に沿う用紙搬送面に対して垂直に設置された主走査方向に長尺なエンコーダフェンス551と、エンコーダフェンスを挟む発光素子及び受光素子を有するエンコーダセンサとを備える。エンコーダセンサは、キャリッジに固定されている。一方、エンコーダフェンスに設けられたスリット551aは、エンコーダフェンスの側面で、主走査方向に垂直な基準線Lに対して所定角度傾いて設けられている。従って、キャリッジが上方向に変位し、エンコーダセンサのエンコーダフェンスに対する位置が変化すると、エンコーダ信号のパルス幅は変化する。画像形成装置は、このパルス幅の変化に基づきキャリッジと用紙との接触を検知する。
【解決手段】記録ヘッドを搭載したキャリッジを主走査方向に搬送して用紙に画像を形成する画像形成装置には、リニアエンコーダが設けられている。リニアエンコーダは、主走査方向に沿う用紙搬送面に対して垂直に設置された主走査方向に長尺なエンコーダフェンス551と、エンコーダフェンスを挟む発光素子及び受光素子を有するエンコーダセンサとを備える。エンコーダセンサは、キャリッジに固定されている。一方、エンコーダフェンスに設けられたスリット551aは、エンコーダフェンスの側面で、主走査方向に垂直な基準線Lに対して所定角度傾いて設けられている。従って、キャリッジが上方向に変位し、エンコーダセンサのエンコーダフェンスに対する位置が変化すると、エンコーダ信号のパルス幅は変化する。画像形成装置は、このパルス幅の変化に基づきキャリッジと用紙との接触を検知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送体を所定の搬送方向に搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送装置としては、記録ヘッド(インクジェットヘッド等)が搭載されたキャリッジを、主走査方向に搬送することにより、下方に載置されたシート(用紙等)に画像を形成する画像形成装置が知られている。また、この種の装置では、癖のついたシートや折れ曲がったシートが供給されると、ヘッドやキャリッジとシートとが接触して、ジャムが発生することが知られている。
【0003】
ところで、記録ヘッドとしてインクジェットヘッドを備えた画像形成装置では、インクジェットヘッドのノズル部分が衝撃に弱く、ノズル部分にシートが接触して力が加わると、その部分が傷ついてしまう可能性がある。このため、例えば、キャリッジの搬送制御を司る制御系に与えた目標位置や目標速度と、エンコーダにより計測されたキャリッジの計測位置や計測速度とを比較し、目標値と計測値との差が閾値を超えると、キャリッジに動力を付与するモータの負荷がジャム等により異常上昇したとみなして、モータを緊急停止させ、キャリッジ搬送を中断する対応が従来採られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−240026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、目標値と計測値との比較により搬送異常を検知してモータを緊急停止する手法では、ヘッドやキャリッジとシートとの接触が重度に進行して、モータの負荷が上昇しない限り、異常を検知することができない。このため、従来手法では、実際にヘッドやキャリッジとシートとの接触が始まってから、ヘッドやキャリッジが停止するまでに大きなタイムラグがあり、この期間にヘッドが傷ついてしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、被搬送体にシート等の外部物体が接触して異常が発生したことを、迅速に検知な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためになされた本発明の搬送装置は、被搬送体と、被搬送体を支持しながら被搬送体を所定の搬送方向に案内するガイド体と、被搬送体をガイド体に沿って上記搬送方向に搬送する搬送手段と、被搬送体の変位に対応したエンコーダ信号を出力するリニアエンコーダと、リニアエンコーダから出力されるエンコーダ信号のエッジ間の時間間隔を計測する計測手段と、計測手段により計測された計測値の変動に基づき、被搬送体に固定されて被搬送体と連動するエンコーダセンサの基準面とは垂直な方向への変位の有無を判定する判定手段と、を備えるものである。尚、上記基準面は、上記ガイド体が被搬送体を支持する方向とは直交する面のことを言う。
【0008】
この搬送装置において、リニアエンコーダは、上記基準面とは交差する面である交差面上に設けられた搬送方向に長尺なエンコーダフェンスであって、交差面に沿う側面に、光を透過する透光部と光を遮断する遮光部とが搬送方向に交互に複数配列されたエンコーダフェンスと、被搬送体に固定されたエンコーダセンサであって、エンコーダフェンスの透光部及び遮光部が形成された面を挟む位置関係で発光素子及び受光素子を備え、発光素子の出力光を受光する受光素子の受光状態に応じた矩形状のエンコーダ信号を出力するエンコーダセンサと、を備える。
【0009】
また、エンコーダフェンスは、互いに隣接する透光部と遮光部との境界線上における第1の地点と、第1の地点とは「エンコーダフェンスの側面に沿う方向であって上記搬送方向とは垂直な方向における位置」が異なる当該境界線上の第2の地点とが、搬送方向において異なる位置となるように、透光部及び遮光部が形成された構成にされている(請求項1)。
【0010】
この搬送装置によれば、被搬送体がガイド体に支持されているため、ガイド体から被搬送体への力の作用方向(支持方向)と同方向に、外部から力が働く事象が発生すると、被搬送体は、ガイド体から離間するなどして、基準面に対して垂直な方向に変位し、同時にエンコーダセンサも、基準面に対して垂直な方向に変位する。また、この際には、エンコーダフェンスにおける透光部と遮光部との境界線が上述したように構成されていることから、エンコーダ信号のエッジ間隔が変化する。
【0011】
従って、本発明によれば、エッジ間隔の変化を指標に、エンコーダセンサが基準面とは垂直な方向へ変位したか否かを判定することができ、更には間接的に、上記事象が発生したことを検知することができ、結果として、被搬送体と接触すると上述した事象が発生する外部物体に関して、被搬送体と当該外部物体との接触を検知することができる。従って、この搬送装置によれば、被搬送体に外部物体が接触して異常が発生したことを迅速に検知することができる。
【0012】
即ち、本発明の搬送装置では、搬送負荷が上昇した時点で外部物体と被搬送体との接触を検知する従来技術とは異なり、外部物体と被搬送体とが接触してエンコーダセンサが基準面とは垂直な方向に変位した時点で、異常を検知することができる。このため、被搬送体に外部物体が接触して異常が発生したことを迅速に検知することができるのである。
【0013】
従って、本発明では、例えば、被搬送体と外部物体との接触が進行して、被搬送体が傷ついてしまうのを、早期に被搬送体の搬送を停止することで抑えることができる。結果、本発明によれば、優れた搬送装置を提供することができる。
【0014】
ところで、判定手段は、計測手段による最新の計測値が、前回の計測値に対して所定量以上変化している場合に、基準面と垂直な方向への変位が有ったと判定し、所定量以上変化していない場合に、基準面と垂直な方向への変位が無かったと判定する構成にすることができる(請求項2)。更に言えば、判定手段は、計測手段による最新の計測値が、前回の計測値に対して所定割合以上変化しているか否かによって、基準面と垂直な方向への変位の有無を判定する構成にすることができる。
【0015】
このように判定手段を構成すれば、簡単な処理で、エンコーダセンサの上記基準面とは垂直な方向へ変位の有無を判定することができる。
また、エンコーダフェンスには、透光部と遮光部との境界線が上記搬送方向とは垂直な方向に対し所定角度傾いて延びる直線状となるように、当該透光部及び遮光部を搬送方向に配列して、リニアエンコーダを構成することができる(請求項3)。
【0016】
このようにエンコーダフェンスを構成すれば、被搬送体が通常位置から基準面と垂直な方向へ瞬間的に大きく変位する程、計測手段による計測値が大きく変化する。従って、本発明によれば、例えば、計測手段による計測値の変化が微小である場合には、エンコーダセンサが変位したとは判定せず、計測値の変化が大きい場合には、エンコーダセンサが変位したと判定することで、振動等による計測値の変化の影響を余り受けることなく、被搬送体と外部物体との接触によるエンコーダセンサの変位の有無を、精度よく判定することができる。
【0017】
また、エンコーダフェンスは、透光部と遮光部との境界線が、搬送方向とは垂直な方向に沿う直線形状の第1の領域と搬送方向とは垂直な方向に対し所定角度傾いて延びる直線形状の第2の領域とで構成されるように、構成されてもよい(請求項4)。
【0018】
通常時には、エンコーダセンサが上記第1の領域で発光・受光動作を行い、外部物体との接触時には、エンコーダセンサが上記第2の領域に移動して発光・受光動作を行うように、上記第1及び第2の領域を定めてエンコーダフェンスを構成すると、振動等によるエンコーダセンサの微小な変位では、計測手段の計測値に振動に伴う変動が生じなくて済む。
【0019】
従って、このようにエンコーダフェンスを構成すれば、振動等の影響を余り受けることなく、被搬送体と外部物体との接触によるエンコーダセンサの変位の有無を、判定することができる。また、リニアエンコーダから出力されるエンコーダ信号に基づき、被搬送体の位置や速度を計測して、この計測値を被搬送体の搬送制御に用いる場合には、振動等による位置や速度の計測誤差を抑えることができて、振動等による悪影響が搬送制御に及ぶのを抑えることができる。
【0020】
この他、エンコーダフェンスは、透光部と遮光部との境界線が、搬送方向とは垂直な方向に接線を採る地点を有する湾曲形状となるように、形成されてもよい(請求項5)。通常時にエンコーダセンサによる発光・受光動作が行われる地点周辺に上記接点を配置してエンコーダフェンスを構成すれば、上述した構成のエンコーダフェンスと同様、振動等によるエンコーダセンサの微小な変位を原因とした計測手段の計測値の変動を抑えることができる。
【0021】
また、境界線を湾曲形状とすれば、被搬送体が通常位置から基準面と垂直な方向へ瞬間的に大きく変位する程、計測手段による計測値が大きく変化する。従って、このようにエンコーダフェンスを構成すれば、被搬送体と外部物体との接触によるエンコーダセンサの変位の有無を、高感度で精度よく判定することができる。
【0022】
また、上記搬送装置には、判定手段により上記基準面と垂直な方向への変位が有ったと判定されると、搬送手段による被搬送体の搬送動作を禁止する搬送禁止手段を設けるとよい(請求項6)。
【0023】
このように構成された搬送装置によれば、被搬送体と外部物体との接触に迅速に反応して、被搬送体の搬送を停止させることができる。従って、この搬送装置によれば、従来よりも、被搬送体と外部物体との接触初期に、被搬送体の搬送を停止させることができて、被搬送体と外部物体との接触が進行することにより、例えば、被搬送体が傷ついてしまうのを抑えることができる。
【0024】
また、上記搬送装置には、判定手段により上記基準面と垂直な方向への変位が有ったと判定されると、ユーザに対して異常を報知する異常報知手段を設けてもよい(請求項7)。このように搬送装置を構成すれば、被搬送体の停止理由をユーザに対して伝えることができ、更には、被搬送体停止後の処理(例えば、外部物体を取り除く処理)を行うように、ユーザに促すことができる。
【0025】
また、本発明は、画像形成装置としての機能を有する搬送装置に適用することができる。即ち、本発明は、対向配置されるシートに画像を形成する記録ヘッドを構成要素とする被搬送体を、上記基準面に沿う所定の搬送方向に、搬送する搬送装置であって、被搬送体を、上記搬送方向に移動させながら、記録ヘッドに、シートに対する画像形成動作を実行させることにより、シートに、搬送方向に沿う一連の画像を形成する画像形成装置としての機能を有した搬送装置に適用することができる(請求項8)。
【0026】
このように構成された搬送装置によれば、記録ヘッドとシートとの接触に迅速に反応して、例えば記録ヘッドの搬送を停止することができ、記録ヘッドがシートにより傷つくのを抑えることができる。
【0027】
また、この搬送装置には、シートを記録ヘッドによる画像形成位置に供給し、更には、画像形成位置での画像形成が完了したシートを画像形成位置から排出するシート搬送手段を制御して、判定手段により基準面と垂直な方向への変位が有ったと判定された場合には、シート搬送手段に、画像形成位置に供給されているシートを排出させる異常時排出手段を設けるとよい(請求項9)。
【0028】
従来装置では、記録ヘッドとシートとの接触によるジャムの発生プロセスが十分に進行しないと異常を検知できなかったが、本発明によれば、ジャムの発生初期において異常を検知できるので、シートを自動排出することができなくなる前に、記録ヘッドの搬送を停止することができる。そこで、本発明では、判定手段により変位が有ったと判定されると、シートを排出させるようにしているのである。
【0029】
このように構成された本発明の搬送装置によれば、従来のようにユーザに対して手作業でシートの詰まりを解消させなくて済み、ユーザにとっては、大変便利である。
また、外部物体がシートのような変形可能な物体であって、被搬送体に重量がある場合には、被搬送体に外部物体が接触しても、被搬送体に接触による変位が生じにくい。従って、被搬送体は、ガイド体に支持される本体に、当該本体よりも軽量な付属体が、上記基準面と垂直な方向に変位可能に設けられた構成にされるとよい。また、エンコーダセンサは、付属体に設けられるとよい(請求項10)。
【0030】
このように構成された搬送装置によれば、被搬送体本体に重量があり、本体に外部物体が接触しても容易には被搬送体が変位しない場合にも、軽量な付属体と外部物体との接触により、エンコーダセンサの出力(エンコーダ信号)が変化するので、被搬送体と外部物体との接触によるエンコーダセンサの変位の有無を判定することができる。よって、本発明によれば、高感度に、被搬送体と外部物体との接触を検知することができる。
【0031】
また、付属体は、被搬送体の搬送時に少なくとも一部領域が本体に対して先行するように取り付けられるとよい(請求項11)。
このように付属体を設ければ、被搬送体の搬送過程において、先に付属体が外部物体に接触する可能性が高くなる。従って、本体に外部物体が接触する前に、判定手段によってエンコーダセンサの変位が有りと判定することができ、本体を保護して早期に異常を検知することができる。従って、本体が傷つきやすいものである場合には、本体が外部物体との接触により傷ついてしまうのを抑えることができる。
【0032】
また、ガイド体に支持されるキャリッジに記録ヘッドが搭載された上記記録ヘッドを構成要素に備える被搬送体を搬送する搬送装置に、付属体を設ける場合には、具体的に、次のように、付属体を取り付けることができる。即ち、付属体は、被搬送体の搬送時に少なくとも一部領域が記録ヘッドに対して先行するようにキャリッジに対して取り付けることができる。勿論、付属体は、キャリッジに対して基準面と垂直な方向に変位可能に取り付ける(請求項12)。
【0033】
このように構成された搬送装置によれば、付属体が記録ヘッドに先行するように取り付けられているため、記録ヘッドの搬送過程において、シートに折れや反りが生じていて被搬送体とシートとが接触するような原因があっても、先に付属体がシートに接触する可能性が高い。
【0034】
従って、この搬送装置によれば、傷つきやすい記録ヘッドを保護しつつ、記録ヘッドにシートが接触する前に、付属体とシートとの接触に伴うエンコーダの変位を検知することができる。この結果、例えば、記録ヘッドにシートが接触する前にキャリッジを緊急停止することができ、記録ヘッドが傷つくのを一層効果的に抑えることができる。
【0035】
尚、付属体は、記録ヘッド及びキャリッジの総重量よりも軽量に構成されるのが好ましい。このように搬送装置を構成すれば、記録ヘッドにインクカートリッジが装着される場合のように、記録ヘッド及びキャリッジの総重量が大きい場合でも、シートとの接触を高感度に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】画像形成装置1の電気的構成を表すブロック図である。
【図2】キャリッジ搬送機構40及び用紙搬送機構60の断面図である。
【図3】キャリッジ搬送機構40の上面図である。
【図4】エンコーダセンサ553による光の送受位置を示した図である。
【図5】エンコーダフェンス551のスリット形状を示した図である。
【図6】エンコーダセンサ553の変位とエンコーダ信号との対応関係を示した図である。
【図7】エンコーダセンサ553が上方向にy0変化したときにパルス幅T0の変化率がΔTとなるスリットの角度θbについて説明した図である。
【図8】エラー判定部109が実行するキャリッジ搬送エラー判定処理を表すフローチャートである。
【図9】変形例のスリット形状を示した図である。
【図10】画像形成装置2におけるキャリッジ41’の周辺構成を示した図である。
【図11】用紙との干渉に伴う枠部材90の変位の態様を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に本発明の実施例について、図面と共に説明する。
[第一実施例]
図1(a)は、本実施例の画像形成装置1の電気的構成を表すブロック図であり、図1(b)は、制御部10にて実現される機能について説明したブロック図である。
【0038】
本実施例の画像形成装置1は、記録ヘッド31を通じ、インクジェット方式で画像を用紙に形成する画像形成装置であり、CPU11、CPU11が実行するプログラムを記憶するROM13、CPU11によるプログラム実行時に作業領域として使用されるRAM15、及び、外部装置(PC3等)とのインタフェース19を備えた制御部10が、装置全体を統括制御し、各種機能を実現する構成にされている。尚、制御部10には、CPU11の他、各種機能を実現するための回路群も設けられており、制御部10は、ソフトウェア及びハードウェア回路を用いて各種機能を実現する。
【0039】
詳述すると、画像形成装置1には、ユーザに対してメッセージを表示するための表示部21(液晶ディスプレイ等)と、ユーザからの指令を受け付けるための操作部25と、が設けられており、制御部10は、表示部21を制御することにより、表示部21にエラーメッセージ等を表示し、更には、操作部25を通じて入力されたユーザの指令に対応した処理を実行する。
【0040】
また、画像形成装置1には、記録ヘッド31及び記録ヘッド31を駆動するための駆動回路33が設けられており、制御部10は、ソフトウェア及びハードウェア回路の協働により、図1(b)に示すように印字制御部101として機能し、記録ヘッド31からのインク液滴の吐出を制御する。具体的に、印字制御部101は、駆動回路33に制御信号を入力することにより、記録ヘッド31からのインク液滴の吐出を制御し、用紙搬送機構60により搬送された用紙に外部装置(PC3等)から提供された印刷対象の画像データに基づく画像を形成する。
【0041】
この他、画像形成装置1には、キャリッジ搬送機構40が備える上記記録ヘッド31を搭載したキャリッジ41に動力を与えるための直流モータであるCRモータ51と、CRモータ51を駆動するための駆動回路53と、キャリッジ41の位置や速度を計測するためのリニアエンコーダ55と、用紙搬送機構60が備えるメインローラ61及び排紙ローラ63を回転させて用紙を記録ヘッド31による画像形成位置へと搬送するための直流モータであるLFモータ71と、LFモータ71を駆動するための駆動回路73と、LFモータ71の回転量を計測するためのロータリエンコーダ75と、用紙搬送機構60が備える給紙ローラ68を回転させて給紙トレイ69(図2参照)からメインローラ61側へと用紙を供給する直流モータであるPFモータ81と、PFモータ81を駆動するための駆動回路83と、PFモータ81の回転量を計測するためのロータリエンコーダ85と、が設けられている。
【0042】
即ち、制御部10は、これら駆動回路53,73,83に制御信号を入力することにより、給紙から排紙までの用紙搬送を制御すると共に、キャリッジ41(ひいては記録ヘッド31)の搬送を制御する。
【0043】
この点について詳述すると、制御部10は、リニアエンコーダ55から入力される矩形状のエンコーダ信号に基づき、キャリッジ41の位置及び速度を計測するエンコーダ信号処理部103として機能し、エンコーダ信号処理部103では、周知技術と同様、エンコーダ信号としてリニアエンコーダ55から入力されるA相信号及びB相信号に基づき、キャリッジ41の移動方向(正方向/負方向)及びキャリッジ41の主走査方向における位置Xを計測する。
【0044】
また、エンコーダ信号処理部103では、上記A相信号及びB相信号の何れか一方について、前回立ち上がりエッジが入力されてから今回立ち上がりエッジが入力されるまでの経過時間T0(以下、パルス幅T0という。)を計測することにより、キャリッジ41の主走査方向における速度を計測する。
【0045】
尚、詳細にはパルス幅T0の逆数がキャリッジ41の速度に対応するが、本実施例では、不要な演算を抑えるために、速度と等価なパルス幅T0を指標にして、キャリッジ41の速度を、目標速度に制御する。
【0046】
具体的に、制御部10は、CR搬送制御部102として機能し、CR搬送制御部102では、エンコーダ信号処理部103から入力される位置X及びパルス幅T0に基づき、CRモータ51を制御して、キャリッジ41を主走査方向に搬送する。
【0047】
例えば、用紙に対する画像形成時には、用紙搬送に合わせて、記録ヘッド31を搭載したキャリッジ41を主走査方向に往復運動させる。具体的には、用紙が上記主走査方向とは垂直な副走査方向に所定量送り出される度に、キャリッジ搬送方向を切り替えて、キャリッジ41を主走査方向に沿って折返し地点まで搬送する。これにより、間欠的に搬送される用紙の搬送停止時に、キャリッジ41を主走査方向に搬送する。尚、往復運動時には、印字制御部101の動作により、記録ヘッド31から印刷対象の画像データに対応したパターンでインク液滴が用紙に吐出され、この動作によって、用紙には、副走査方向への紙送り量に対応したライン分の画像が主走査方向に形成される。
【0048】
また、画像形成時には、キャリッジ41が主走査方向における折返し地点より所定距離手前に到達するまでの期間、キャリッジ41を目標速度に速度制御することにより、記録ヘッド31によるインク液滴の吐出領域において、キャリッジ41を等速運動させ、折返し時点より所定距離手前に到達した後には、キャリッジ41を目標位置に位置制御することにより、キャリッジ41を高精度に所定の停止位置(折返し地点)に停止させる。
【0049】
また、制御部10は、用紙搬送制御部104として機能し、用紙搬送制御部104では、LFモータ71を制御して、メインローラ61と従動ローラ62との間に挟持された用紙を副走査方向に搬送する。例えば、画像形成に際しては、所定量ずつ用紙を副走査方向に送り出すように、LFモータ71を制御する。
【0050】
詳述すると、制御部10は、ロータリエンコーダ75から出力されるエンコーダ信号に基づき、用紙搬送量を計測するエンコーダ信号処理部105として機能し、用紙搬送制御部104では、エンコーダ信号処理部105によって計測された用紙搬送量に基づき、LFモータ71を制御して、例えば、所定量ずつ用紙を副走査方向に搬送する。
【0051】
尚、LFモータ71によって発生する動力は、動力伝達機構65(図1(a)参照)を通じてメインローラ61だけでなく、メインローラ61の副走査方向下流(用紙搬送路下流)に位置する排紙ローラ63にも伝達される。即ち、排紙ローラ63は、メインローラ61に連動して回転し、対向する従動ローラ64との間に、メインローラ61から搬送されてくる用紙を挟持して、用紙を、図示しない排紙トレイに排出する。
【0052】
この他、制御部10は、給紙制御部106として機能し、給紙制御部106では、PFモータ81を制御して、給紙トレイ69に載置された用紙に当接される給紙ローラ68を回転させることにより、給紙トレイ69の最上層に載置された用紙を用紙搬送路の下流へと搬送し、用紙搬送路下流に位置するメインローラ61と従動ローラ62との間に、用紙を供給する。
【0053】
尚、制御部10は、ロータリエンコーダ85から出力されるエンコーダ信号に基づき、用紙搬送量を計測するエンコーダ信号処理部107としても機能し、給紙制御部106では、エンコーダ信号処理部107によって計測された用紙搬送量に基づき、PFモータ81を制御する。
【0054】
このような制御部10の機能により、給紙トレイ69に載置された用紙は、図2に示すように、給紙トレイ69から一枚ずつ分離されて、用紙搬送路を構成するUターンパス67に送り出され、用紙搬送路下流に位置するメインローラ61と従動ローラ62との挟持位置に搬送される。また、メインローラ61及び従動ローラ62の回転により用紙搬送路下流に引き込まれた用紙は、用紙搬送路を構成するプラテン66に下方を支持されながら、プラテン66と記録ヘッド31が搭載されたキャリッジ41との隙間を通って、記録ヘッド31の下方で画像形成される。また、この用紙は、プラテン66の用紙搬送路下流端部に位置する排紙ローラ63及び従動ローラ64に挟持されて、図示しない排紙トレイへと排出される。
【0055】
続いて、キャリッジ搬送機構40及びキャリッジ41の構成について、図2及び図3を用いて説明する。キャリッジ搬送機構40は、キャリッジ41と、キャリッジ41を主走査方向に案内するフレーム43,44と、ベルト機構47(図3参照)と、からなり、キャリッジ41は、主走査方向に延びるフレーム43,44に対して摺動可能に取り付けられ、ベルト機構47を構成する無端ベルト471に連結された構成にされている。
【0056】
詳述すると、フレーム43は、キャリッジ41の側面において主走査方向に平行に設けられた溝部411(図2参照)の上面と接触し、キャリッジ41を下方から上方に支持する。また、フレーム44は、長手方向(主走査方向)に垂直な断面がL字形状にされ、キャリッジ41を主走査方向に案内するガイドレールとして機能する。具体的に、フレーム44は、キャリッジ41の下面において主走査方向に平行に設けられた溝部413の上面と接触し、キャリッジ41を下方から上方に支持すると共に、主走査方向に案内する。
【0057】
これによって、キャリッジ41は、フレーム43とフレーム44とによって支持される上下方向と直交する面を基準面として、この基準面に沿って、主走査方向に案内されることとなる。尚、キャリッジ41の下方には、搬送用紙を支持するプラテン66が基準面と平行に設けられており、用紙は、キャリッジ41の下方においてこの基準面と平行となるように、搬送される。
【0058】
この他、フレーム43は、図2に示すように、キャリッジ41の後方(副走査方向上流)に設けられ、フレーム44は、キャリッジ41の前方に設けられている。即ち、本実施例では、フレーム43にてキャリッジ41後方を支持し、フレーム44によりキャリッジ41前方を支持することにより、キャリッジ41が前後方向に傾かないように保持し、キャリッジ41をフレーム43,44に沿って安定的に主走査方向に搬送可能としている。
【0059】
また、ベルト機構47は、無端ベルト471と、フレーム44の主走査方向両端に配置された一対のプーリー473,474とを備え、無端ベルト471がプーリー473,474の間に掛けられた構成にされている。
【0060】
尚、上述のCRモータ51は、プーリー473,474の一方にギヤ(図示せず)を介して接続されて、当該一方を回転可能に設けられている。即ち、本実施例において、プーリー473,474の一方は、CRモータ51から発生する動力を、ギヤを介して受けて回転し、他方は、CRモータ51の動力を受けて回転する上記一方のプーリー473,474に、無端ベルト471を介して従動するように回転する。
【0061】
また、キャリッジ41は、無端ベルト471に固定され、フレーム43,44によって、その移動が主走査方向に規制されている。従って、キャリッジ41は、CRモータ51が回転すると、無端ベルト471の回転に連動して、主走査方向(正方向/負方向)に移動する。
【0062】
本実施例では、このようなキャリッジ搬送機構40の構成により、キャリッジ41を主走査方向に搬送する。また、キャリッジ搬送機構40には、記録ヘッド31のノズルをキャッピングするためのキャップ機構49が設けられており、画像形成装置1の休止時において、記録ヘッド31は、キャリッジ41と共に、このキャップ機構49が設けられた位置に搬送され、キャッピングされる。
【0063】
この他、キャリッジ41の位置及び速度を計測するためのリニアエンコーダ55は、図3に示すように、主走査方向に長尺なエンコーダフェンス551と、エンコーダフェンス551の側面を挟むようにしてキャリッジ41に固定されたエンコーダセンサ553と、からなる。
【0064】
エンコーダフェンス551は、上述した基準面に垂直な方向である上下方向に沿って、主走査方向に対して長尺に設けられており、この上下方向に沿う側面において、所定形状のスリット551a(図5参照:詳細後述)が複数配列された構成にされている。また、このエンコーダフェンス551は、キャリッジ41の上面において、主走査方向に平行に設けられた溝部415に、上方から挿入されるように設置されている。詳述すると、エンコーダフェンス551は、溝部415の下面と接触しないように、所定の間隙を有した状態で溝部415に納められている(図2参照)。
【0065】
また、エンコーダセンサ553は、発光素子と受光素子とが溝部415に挿入されたエンコーダフェンス551を挟むように配置されている。具体的に、エンコーダセンサ553は、発光素子及び受光素子のペアからなる検知回路553aを二組有し、一方の検知回路553aにて上述したA相信号を生成して出力し、他方の検知回路553aにて上述したB相信号を生成して出力する。
【0066】
尚、エンコーダフェンス551のスリット551a(図5参照)は、発光素子から出力された光を受光素子側へと透過させる透光部として機能し、エンコーダフェンス551のスリット551aが形成されていない部位は、発光素子から出力された光の受光素子側への伝達を遮断する遮光部として機能する。そして、検知回路553aは、周知のリニアエンコーダと同様、受光素子がスリット551aを通じて発光素子からの出力光を受光した場合、ロウ信号を出力し、それ以外の場合には、ハイ信号を出力することで、エンコーダセンサ553が固定されたキャリッジ41の主走査方向への変位に対応した矩形状のエンコーダ信号を出力する。
【0067】
以上には、画像形成装置1の基本構成について説明したが、この画像形成装置1は、更に、キャリッジ41の上方向への変位を検知することによって、キャリッジ41又はキャリッジ41に固定された記録ヘッド31と、記録ヘッド31の下方に位置する用紙との接触を検知する機能を有する。以下では、この機能について説明する。尚、本実施例の画像形成装置1は、上記機能を有することで、ジャムの発生プロセス初期において迅速に異常を検知することができる。
【0068】
まず、キャリッジ41の上方向への変位を検知する技術の基本原理について説明する。図4(a)は、キャリッジ41に固定されたエンコーダセンサ553における発光素子及び受光素子による光の送受位置を概略的に示した図であって、キャリッジ41に固定された記録ヘッド31と用紙とが干渉していない状態での光の送受位置を示した図であり、図4(b)は、記録ヘッド31と用紙とが干渉している状態での光の送受位置を示した図である。
【0069】
上述したように、画像形成装置1において、キャリッジ41は、フレーム43,44により下方から支持されて、その上下方向における位置を維持している。このため、下方から用紙が当るなどして、キャリッジ41を下方から押し上げるような力が発生すると、キャリッジ41は、上方向に浮き上がる。また、エンコーダセンサ553は、キャリッジ41に固定されているため、キャリッジ41の上方向への変位に合わせて上方向に変位し、これに合わせて、光の送受位置も上方向に変位する。
【0070】
一方、エンコーダフェンス551は、キャリッジ41とは独立して、画像形成装置1内に固定されているので、変位しない。従って、エンコーダフェンス551に対するエンコーダセンサ553による光の送受位置は、上方向に変位する。本実施例では、このような現象を利用して、キャリッジ41の上方向への変位を検知する。具体的には、図5に示すように、エンコーダフェンス551のスリット形状を工夫することによって、キャリッジ41の上方向への変位を検知する。尚、キャリッジ41の上方向への変位時には、キャリッジ41がフレーム43,44から浮き上がった状態となるため、以下では、キャリッジ41の上方向への変位を、「浮き上がり」とも表現する。
【0071】
図5(a)は、本実施例のエンコーダフェンス551のスリット形状を示した図であって、エンコーダフェンス551の上下方向に沿う側面図であり、図5(a)に示す非塗り潰し部分は、透光部として機能するスリット551aに対応し、塗り潰し部分は、遮光部に対応する。
【0072】
図5(a)に示すように、エンコーダフェンス551は、その側面に、キャリッジ41の搬送方向である主走査方向とは垂直な基準線L(上下方向)に対して非平行であり、主走査方向に対しても非平行な方向に延びるスリット551aを有する。従来の画像形成装置が有するエンコーダフェンスには、主走査方向に垂直な基準線Lに対して平行にスリットが形成されており、この点で、本実施例の画像形成装置1は、異なる。
【0073】
具体的に、本実施例のエンコーダフェンス551は、側面において、主走査方向とは垂直な基準線Lに対し所定角度θa傾いて延びる直線形状のスリット551aが、主走査方向に一致するエンコーダフェンス551の長手方向に複数配列された構成にされている。
【0074】
このようにエンコーダフェンス551が構成された画像形成装置1では、スリット551aのエッジ(側縁)が基準線Lに対して傾いているので、当該エッジ上の地点であって通常時の光の送受位置に対応する第1の地点と、エッジ上の地点であって浮き上がり時の光の送受位置に対応する第2の地点とでは、キャリッジ41の搬送方向における位置(主走査方向における位置)が異なる。
【0075】
従って、図5(b)に示すように、エンコーダセンサ553による光の送受位置が、キャリッジ41の浮き上がりによりエンコーダフェンス551に対して上方向に変位すると、図5(b)下段に示すように、エンコーダ信号のパルス幅T0が急激に変化する。本実施例では、このような現象を利用して、パルス幅T0の変化率ΔTが閾値TH以上となったとき、キャリッジ41が浮き上がったと検知する。
【0076】
尚、パルス幅T0は、スリット551aの向きとキャリッジ41の進行方向との関係によって、図6に示すように、長くなったり、短くなったりする。例えば、図6(a)に示すように、スリット551aが下方から上方に向けて、キャリッジ41の搬送方向上流側に傾いている場合には、キャリッジ41が浮き上がると、パルス幅T0は短くなる。一方、図6(b)に示すように、スリット551aが下方から上方に向けて、キャリッジ41の搬送方向下流側に傾いている場合には、キャリッジ41が浮き上がると、パルス幅T0は長くなる。
【0077】
従って、本実施例では、パルス幅T0の変化率ΔTとして、次式に示すように絶対値を採り、この変化率ΔTが閾値TH以上となったときに、キャリッジ41の浮き上がりを検知する。
【0078】
ΔT=|(Tn−Tp)/Tp| …式(1)
但し、時間Tnは、最新のパルス幅T0に対応するものであり、時間Tpは、時間的に一つ前のパルス幅T0に対応するものである。
【0079】
尚、図6(a)(b)は、キャリッジ41の進行方向に対応したパルス幅T0の変化の態様を示した図である。ここでは、ホームポジション(キャップ機構49)を基準にしてホームポジションから離れる方向にキャリッジ41が進行する場合を正方向と表現し、ホームポジションに近づく方向にキャリッジ41が進行する場合を負方向と表現して、スリット551aの向きとパルス幅T0の変化態様とを示す。
【0080】
また、スリット551aを形成する際には、基準線Lに対する角度θa及び閾値THの調整が必要であるので、ここでは、角度θa及び閾値THの調整の目安として、キャリッジ41(エンコーダセンサ553)が上方向にy0変化したときにパルス幅T0の変化率がΔTとなる角度θbについて説明する。尚、角度θbは、図7に示すように、主走査方向に対してスリット551aがなす角度を示し、角度θbは、θb=(π/2)−θa[ラジアン]に等しい。
【0081】
具体的に、キャリッジ41(エンコーダセンサ553)が上方向にy0変化したときにパルス幅T0の変化率がΔTとなる角度θbは、次式で算出することができる。
θb=arctan{y0/(α・ΔT)} …式(2)
ここで、定数αは、エンコーダフェンス551に形成されたスリット551aの主走査方向における配置間隔であり、エンコーダ信号1パルス当りのキャリッジ41の移動距離に対応する。本実施例を実施するに当っては、キャリッジ41が浮き上がったとみなす上方向への変位量y0と、変化率ΔTの計測誤差を考慮して、上式に従い、角度θa及び閾値THを調整すればよい。
【0082】
続いて、本実施例の画像形成装置1が、キャリッジ41の浮き上がりを検知するために実行するキャリッジ搬送エラー判定処理について説明する。本実施例の制御部10は、図1に示すように、エラー判定部109として機能し、エラー判定部109では、図8に示すキャリッジ搬送エラー判定処理を実行することにより、キャリッジ41の浮き上がりの有無を判定して、その判定結果に従うエラー処理を行う。図8は、CR搬送制御部102によりキャリッジ41に対する1パス分の搬送制御が行われる度に、エラー判定部109が実行するキャリッジ搬送エラー判定処理を表すフローチャートである。尚、1パス分の搬送制御とは、往復運動するキャリッジ41の往路及び復路夫々の搬送制御(換言すればキャリッジ41を折返し時点まで搬送する搬送制御)のことを言う。
【0083】
エラー判定部109は、CR搬送制御部102による1パス分の搬送制御の開始に合わせて、キャリッジ搬送エラー判定処理を開始すると、エンコーダ信号のエッジ検出回数を表す変数jをゼロに初期化すると共に、変数Tn,Tpを初期値INIT(例えば最大値)に設定する(S110)。
【0084】
また、この処理を終えるとエラー判定部109は、リニアエンコーダ55から入力されるエンコーダ信号の立ち上がりエッジがエンコーダ信号処理部103により検出されたか否かを判断し(S120)、立ち上がりエッジが検出された場合には(S120でYes)、S130に移行し、立ち上がりエッジが検出されなかった場合には(S120でNo)、S125に移行する。尚、ここでは、エンコーダ信号としてのA相信号及びB相信号の一方に着目して、当該信号の立ち上がりエッジが検出されたか否かを判断する。
【0085】
一方、S125に移行するとエラー判定部109は、キャリッジ41が折返し地点まで搬送されてCR搬送制御部102による1パス分の搬送制御が正常終了したか否かを判断し、正常終了していないと判断した場合には(S125でNo)、S120に移行して、立ち上がりエッジが検出されるか、1パス分の搬送制御が正常終了するまで待機する。
【0086】
また、立ち上がりエッジが検出されると(S120でYes)、エラー判定部109は、変数jを1加算した値に更新することで、変数jを通じて、立ち上がりエッジの検出回数をカウントする(S130)。更に、エラー判定部109は、変数Tpを、現在の変数Tnの値に更新すると共に(S140)、変数Tnを、今回の立ち上がりエッジの検出によりエンコーダ信号処理部103にて更新された最新のパルス幅T0と同一値に更新する(S145)。
【0087】
そして、S145の処理後には、S150に移行して、立ち上がりエッジが3回検出され、変数jが2より大きい値に更新されたか否かを判断する(即ちj>2であるか否かを判断する)。
【0088】
ここで、j≦2であると判断した場合には(S150でNo)、S120に移行し、j>2であると判断すると(S150でYes)、S160に移行する。尚、このように処理を切り替えているのは、立ち上がりエッジが3回以上検出されないと、パルス幅T0の変化率ΔTを正常に演算することができないためである。
【0089】
S160に移行すると、エラー判定部109は、上述した式(1)に従って、変化率ΔTを算出する。また、この処理を終えると、S170に移行して、算出した変化率ΔTに基づき、キャリッジ41において、重度の浮き上がりが発生しているか否かを判定する。
【0090】
具体的に、S170では、算出した変化率ΔTが、予め定められた閾値TH2以上であるか否かを判断することにより、重度の浮き上がりが発生しているか否かを判定する。
尚、本実施例の画像形成装置1は、ジャムの進行度を、変化率ΔTに基づき判定して、エラー処理を切り替える構成にされている。そして、この切替のために、画像形成装置1においては、上記閾値THとして、値の異なる二つの閾値TH1,TH2が予め設定されている。S170では、このように設定された閾値TH1,TH2の内、大きい値を採る閾値TH2(>TH1)と、変化率ΔTとを比較して、変化率ΔTが、予め定められた閾値TH2以上であるか否かを判断することにより、ジャムの発生プロセスが進行して、重度の浮き上がりが発生しているか否かを判定する。例えば、閾値TH2は、50%に設定することができる。
【0091】
そして、変化率ΔTが閾値TH2以上である場合には、重度の浮き上がりが発生していると判定して(S170でYes)、S180に移行し、CR搬送制御部102に対してキャリッジ搬送を緊急停止するように指令して、キャリッジ41を緊急停止させると共に、表示部21を制御して、ユーザに用紙を手動で取り除くように指示するエラーメッセージを表示し(S185)、当該キャリッジ搬送エラー判定処理を一旦終了する。
【0092】
一方、重度の浮き上がりが発生していないと判定すると(S170でNo)、エラー判定部109は、S175に移行して、上記変化率ΔTに基づき、軽度の浮き上がりが発生しているか否かを判定する。具体的には、閾値TH2より小さい値を採る閾値TH1と、変化率ΔTとを比較して、変化率ΔTが、予め定められた閾値TH1以上であるか否かを判断することにより、キャリッジ41において軽度の浮き上がりが発生しているか否かを判定する。例えば、閾値TH1は、30%に設定することができる。
【0093】
そして、変化率ΔTが閾値TH1未満である場合には、軽度の浮き上がりも発生していないと判定して(S175でNo)、S120に移行する。そして、新たに立ち上がりエッジが検出されるとS130以降の処理を実行し、1パス分の搬送制御が正常終了した場合には(S125でYes)、当該キャリッジ搬送エラー判定処理を終了する。
【0094】
一方、変化率ΔTが閾値TH1以上である場合には、軽度の浮き上がりが発生していると判定して(S175でYes)、S190に移行し、S180での処理と同様、CR搬送制御部102に対してキャリッジ搬送を緊急停止するように指令して、キャリッジ41を緊急停止させた後、CR搬送制御部102に対して、キャリッジ41をホームポジションに移動させるように指令入力する(S191)。更に、用紙搬送制御部104に対して排紙指令を入力する(S193)。尚、用紙搬送制御部104は、排紙指令の入力を受けると、排紙処理を実行することで、LFモータ71を回転させて、メインローラ61により用紙搬送路下流に引き込まれた用紙を、排紙トレイまで搬送する。
【0095】
また、用紙搬送制御部104による排紙処理の実行時、エラー判定部109は、当該排紙処理の実行経過を監視し、排紙途中でエラーが発生し排紙処理が正常終了しなかった場合には(S195でYes)、S185に移行し、エラーメッセージを通じてユーザに用紙を手動で取り除くように指示する。
【0096】
一方、排紙処理が正常終了すると(S195でNo)、キャリッジ搬送途中のエラーにより用紙を排出した旨のエラーメッセージを表示部21に表示した後(S197)、当該キャリッジ搬送エラー判定処理を終了する。
【0097】
以上、本実施例の画像形成装置1について説明したが、本実施例によれば、変化率ΔTが閾値TH1以上であると、用紙との接触によるキャリッジ41の浮き上がりが発生していると判定して、キャリッジ41を緊急停止させ、ジャムの発生プロセスの進行を回避する。従って、本実施例によれば、紙詰まりが酷くなり排紙が自動で行えなくなるのを抑えることができ、ユーザに不満が及ぶのを回避することができる。また、記録ヘッド31と用紙とが接触した際に、早期に異常を検知してキャリッジ41の搬送を停止することができるので、記録ヘッド31のノズル部分が傷つくのを抑えることができる。
【0098】
また、本実施例では、変化率ΔTが閾値TH2以上である場合には、ジャムが進行していると推定して、自動での排紙を行わないようにしたので、強引に排紙処理を実行することにより、かえって紙詰まりが酷くなり、紙詰まりを解消するのにユーザの手を煩わることになるのを回避することができる。
【0099】
尚、キャリッジ41の浮き上がりについては、キャリッジ41及び記録ヘッド31の重量の合計が大きい程、その浮き上がり量y0が小さくなり、早期に異常を検知して、キャリッジ41を停止させるのが難しくなるが、近年においては、インクカートリッジの取替の容易性から、インクカートリッジを記録ヘッド31に搭載する手法を止めて、インクカートリッジを外部からの取替が容易な場所に設置し、記録ヘッド31へはインクカートリッジからチューブにてインクを提供する手法を採用することが多くなってきている。
【0100】
このように記録ヘッド31にインクカートリッジが搭載されていない画像形成装置においては、キャリッジ41と記録ヘッド31との重量の合計が小さい。このため、比較的にジャムの発生プロセスの初期において、キャリッジ41が異常検知に十分に浮き上がる。
【0101】
従って、本実施例の手法は、記録ヘッド31にインクカートリッジが搭載されないタイプの画像形成装置に適用されると、その効果が一層発揮される。
尚、変化率ΔTの算出方法は、式(1)に基づくものだけではなく、計測されたパルス幅の変動を算出できれば良い。すなわち、時間的にひとつ前のパルス幅と最新のパルス幅の比を算出して、その値からキャリッジ41の浮き上がりを検知しても良い。また、式(1)におけるTpは、ひとつ前のパルス幅の値ではなく、複数のパルス幅の平均値であっても良いし、キャリッジ41を駆動する際の目標速度指令に対応した値であっても良い。
【0102】
ところで、上記実施例では、エンコーダフェンス551に、基準線L(上下方向)に対し所定角度θa傾いて延びる直線形状のスリット551aを設けて、リニアエンコーダ55を構成したが、エンコーダフェンス551は、例えば、図9(a)に示す形状のスリット551bを備えた構成にされてもよい。
【0103】
図9(a)は、スリット551bを備える第一変形例のエンコーダフェンス551の側面図である。図9(a)に示すように、第一変形例のエンコーダフェンス551は、その側面において、下部領域が主走査方向とは垂直な上下方向(基準線L)に沿う直線形状にされ、上部領域が主走査方向にとは垂直な上下方向(基準線L)に対し所定角度θa傾いて延びる直線形状にされたスリット551bを備える。
【0104】
エンコーダフェンス551に、このような形状のスリット551bを設ければ、キャリッジ41が、ある程度浮き上がるまでは、スリット551bが上下方向に対して傾いていることによる見かけ上のキャリッジ41の速度変動(パルス幅T0の変動)が生じない。
【0105】
この点について詳述すると、図5(a)に示す形状のスリット551aをエンコーダフェンス551に設けた場合には、用紙との接触以外の原因でも振動が発生すると、キャリッジ41が浮き上がることが原因で、見かけ上、キャリッジ41の速度変動(パルス幅T0の変動)が生じる。
【0106】
一方、図9(a)に示す形状のスリット551bをエンコーダフェンス551に設けた場合には、微小な振動が発生する程度では、エンコーダセンサ553における光の送受位置が、スリット551bの下部領域内を変位する程度であるため、変位に伴う見かけ上のキャリッジ41の速度変動は生じず、パルス幅T0から正確にキャリッジ41の速度を計測することができる。従って、図9(a)に示すようにスリット551bを構成すれば、微小な振動による速度計測の誤差発生を抑えることができて、振動に強い画像形成装置1を構成することができる。
【0107】
また、スリット551bと同様の効果は、図9(b)に示すような形状のスリット551cをエンコーダフェンス551に設けても達成することができる。
図9(b)は、スリット551cを備える第二変形例のエンコーダフェンス551の側面図である。図9(b)に示すように、第二変形例のエンコーダフェンス551は、その側面において、主走査方向とは垂直な上下方向に対する角度が上部領域程広がる曲線形状のスリット551cを備える。詳述すると、このスリット551cは、最下端で接線が上下方向に平行となるような曲線形状にされている。
【0108】
このように構成されたスリット551cによれば、キャリッジ41に浮き上がりが生じていない通常状態では、エンコーダセンサ553による光の送受位置が最下端周辺となるように、エンコーダセンサ553をキャリッジ41に固定すると、微小なキャリッジ41の浮き上がり程度では、パルス幅T0に大きな変化が生じない。
【0109】
一方、浮き上がり量y0が大きくなるほど、パルス幅T0の変化率ΔTも大きくなる。従って、このスリット551cの形状を採用すれば、振動には強く、用紙との接触によるキャリッジ41の浮き上がりについては高感度に検知可能な画像形成装置1を構成することができる。
【0110】
この他、エンコーダフェンス551には、図9(c)に示す形状のスリット551dを設けてもよい。
図9(c)は、スリット551dを備える第三変形例のエンコーダフェンス551の側面図である。図9(c)に示すように、第三変形例のエンコーダフェンス551は、その側面において、矩形状の孔で構成されるスリット構成体CSを主走査方向にずらしながら上方に複数個配列してなる、階段形状のスリット551dを備える。
【0111】
このスリット551dを備えるエンコーダフェンス551を用いれば、キャリッジ41の浮き上がり量y0に応じて、段階的に変化率ΔTが大きくなるため、変化率ΔTに基づき、キャリッジ41の浮き上がり量y0を、高精度に特定することができるといった効果が得られる。
[第二実施例]
続いて、第二実施例の画像形成装置2について説明する。但し、第二実施例の画像形成装置2は、キャリッジ41’に対して枠部材90が上下方向に移動可能に取り付けられ、枠部材90にエンコーダセンサ553が取り付けられた程度のものである。従って、以下では、第一実施例の画像形成装置1と同一構成部位については同一符号を付して説明を省略し、第二実施例の画像形成装置2に特徴的な構成を選択的に説明する。
【0112】
図10(a)に示すように、画像形成装置2においては、枠部材90が、キャリッジ41’に固定された螺子99に掛止されるようにして、キャリッジ41’に取り付けられている。図10(a)は、第二実施例の画像形成装置2におけるキャリッジ41’の周辺構成を示した図であり、図10(b)は、その上面図である。
【0113】
詳述すると、キャリッジ41’の左右側面には螺子99と螺合する螺子孔419が設けられている(図11参照)。一方、枠部材90は、上部構成体91と、上部構成体91の左右縁端から下方に延びる側部構成体92とが連結された構成にされ、側部構成体92の上記キャリッジ41’に設けられた螺子孔419に対応する位置には、上下方向に長尺な貫通孔92aが設けられている。
【0114】
そして、貫通孔92aは、図10及び図11に示すように、横幅が螺子99の径に対応する長さに設定され、上下の幅が螺子99の径よりも大きい長さに設定されている。
また、枠部材90の上部構成体91には、主走査方向に平行な溝部91aが設けられている。第二実施例では、この溝部91aに、エンコーダフェンス551が挿入される。具体的に、エンコーダフェンス551は、溝部91aの下端と接触しないように、所定の間隙を有した状態で溝部91aに納められる。
【0115】
また、上部構成体91の溝部91aに対応する位置には、溝部91aに挿入されたエンコーダフェンス551を挟むようにして、エンコーダセンサ553が埋め込まれている。
一方、キャリッジ41’は、第一実施例のキャリッジ41が備える溝部415周辺に対応する前方上部が窪んだ形状にされている。枠部材90は、このような形状のキャリッジ41’の上方から、キャリッジ41’の上面及び左右側面を包囲するように取り付けられ、この際、枠部材90に取り付けられたエンコーダセンサ553は、キャリッジ41’の上記窪んだ形状の領域に配置される。
【0116】
また、枠部材90が備える左右の貫通孔92aの夫々には、螺子99が挿通されており、螺子99は、キャリッジ41’の螺子孔419に螺合されている。この構成により、枠部材90は、キャリッジ41’に対して上方向に、貫通孔92aの上下方向の幅に相当する長さ分移動可能に取り付けられている。
【0117】
また、側部構成体92は、枠部材90がキャリッジ41’に取り付けられた際に、下端が記録ヘッドの下面(ノズル面)よりも下方に配置されるように、構成されている。
このように構成された画像形成装置2によれば、キャリッジ41’が主走査方向に移動する際に、側部構成体92が記録ヘッド31に先行して移動するので、ジャムの原因となる用紙の反りや折れが発生している場合、記録ヘッド31のノズル部分が用紙と接触する前に、まず用紙が側部構成体92に接触して、枠部材90が浮き上がり、枠部材90と連動して上方向にエンコーダセンサ553が変位することにより、エンコーダフェンス551に対してエンコーダセンサ553による光の送受位置が変化する。
【0118】
従って、この画像形成装置2では、第一実施例の画像形成装置1と同様にキャリッジ搬送エラー判定処理を実行すると、キャリッジ41’の進行方向に設けられた側部構成体92と用紙との接触により、記録ヘッド31のノズル部分が用紙に接触する前に、側部構成体92と用紙との接触を検知して、迅速にキャリッジ41’の搬送を停止することができる。
【0119】
よって、この画像形成装置2によれば、記録ヘッド31のノズル部分が用紙と接触して、記録ヘッド31が傷つくのを一層抑えることができる。また、本実施例によれば、キャリッジ41’及び記録ヘッド31に重量があって用紙との接触時にキャリッジ41’が浮き上がりにくい場合でも、枠部材90を軽量に構成することで、用紙との接触を早期に検知することができ、ジャムの発生プロセスの初期において迅速にキャリッジ41’の搬送を停止することができる。
【0120】
よって、本実施例によれば、記録ヘッド31にインクカートリッジを搭載するタイプの画像形成装置のような、記録ヘッド31に重量がある場合でも、ジャムの発生プロセスの初期において迅速にキャリッジ41’の搬送を停止することができる。尚、本実施例において、枠部材90は、具体的に、キャリッジ41’及び記録ヘッド31の重量の総計よりも軽量に構成されればよい。
【0121】
以上、本発明の実施例について説明したが、「特許請求の範囲」に記載の被搬送体は、第一実施例において、記録ヘッド31を搭載したキャリッジ41に対応し、第二実施例において、記録ヘッド31が搭載されると共に、付属体としての枠部材90が取り付けられたキャリッジ41’に対応する。また、リニアエンコーダは、フレーム43とフレーム44とによって支持される上下方向と直交する面を基準面としてのプラテン66に沿う用紙の搬送面とは垂直な面に沿ってエンコーダフェンス551が設けられたリニアエンコーダ55に対応する。
【0122】
この他、搬送手段は、キャリッジ搬送機構40及びCRモータ51及び駆動回路53及びCR搬送制御部102にて実現され、計測手段は、エンコーダ信号処理部103にて実現され、判定手段は、S110〜S175の処理により実現され、搬送禁止手段は、S180,S190の処理により実現され、異常報知手段は、S185,S197の処理により実現されている。また、シート搬送手段は、用紙搬送機構60及びLFモータ71及び駆動回路73及び用紙搬送制御部104等により実現され、異常時排出手段は、S193の処理により実現されている。
【0123】
また、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、上記実施例では、画像形成装置1,2に、本発明を適用した例を説明したが、本発明は、画像形成装置1,2以外の、リニアエンコーダを用いた種々の搬送装置に適用することができる。例えば、画像読取装置等の読取手段(ラインセンサ等)を被搬送体として本発明を適用し、読取手段の搬送時における基準面と直交する方向の変位を検出しても良い。
【0124】
この他、上記実施例では、キャリッジ41がフレーム43,44により支持される画像形成装置1,2の構成について説明したが、キャリッジ41は、例えば、キャリッジ41を貫通する一方のガイド軸によって支持されるように構成されてもよい。この場合には、キャリッジ41が用紙に接触すると、ガイド軸を中心にキャリッジ41が回転して傾き、このキャリッジ41の変位(回転に伴う変位)に連動して、エンコーダセンサ553が用紙の搬送面に対して垂直な上方向又は下方向に変位する。
【0125】
従って、この画像形成装置では、本発明の技術を利用して、エンコーダセンサ553が上方向又は下方向に変位したか否かを判定することで、用紙とキャリッジ41との接触を検知することが可能である。
【0126】
この他、上記実施例では、エンコーダフェンス551を、基準面に対して垂直な面に沿って設けたが、エンコーダフェンス551は、基準面とは交差する面に対して設ければ、十分である。基準面に対して垂直な面に沿って設けることで、キャリッジ41の変位がより確実に検出できるが、キャリッジ41の基準面に直交する方向の変位を検出できる程度に、交差していれば良い。また、用紙の搬送面と基準面とが一致していなくても良い。
【0127】
また、エラーメッセージの表示や、キャリッジ搬送の緊急停止は、必ずしも行う必要はなく、異常報知も、音や光などを装置本体から発生させることで行っても良い。
【符号の説明】
【0128】
1,2…画像形成装置、10…制御部、11…CPU、13…ROM、15…RAM、19…インタフェース、21…表示部、25…操作部、31…記録ヘッド、33,53,73,83…駆動回路、40…キャリッジ搬送機構、41…キャリッジ、411,413,415…溝部、419…螺子孔、43,44…フレーム、47…ベルト機構、471…無端ベルト、473,474…プーリー、49…キャップ機構、51…CRモータ、55,75,85…エンコーダ、60…用紙搬送機構、61…メインローラ、63…排紙ローラ、66…プラテン、68…給紙ローラ、69…給紙トレイ、71…LFモータ、81…PFモータ、90…枠部材、91…上部構成体、91a…溝部、92…側部構成体、92a…貫通孔、99…螺子、101…印字制御部、102…CR搬送制御部、103,105,107…エンコーダ信号処理部、104…用紙搬送制御部、106…給紙制御部、109…エラー判定部、551…エンコーダフェンス、551a,551b,551c,551d…スリット、553…エンコーダセンサ、553a…検知回路、CS…スリット構成体
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送体を所定の搬送方向に搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送装置としては、記録ヘッド(インクジェットヘッド等)が搭載されたキャリッジを、主走査方向に搬送することにより、下方に載置されたシート(用紙等)に画像を形成する画像形成装置が知られている。また、この種の装置では、癖のついたシートや折れ曲がったシートが供給されると、ヘッドやキャリッジとシートとが接触して、ジャムが発生することが知られている。
【0003】
ところで、記録ヘッドとしてインクジェットヘッドを備えた画像形成装置では、インクジェットヘッドのノズル部分が衝撃に弱く、ノズル部分にシートが接触して力が加わると、その部分が傷ついてしまう可能性がある。このため、例えば、キャリッジの搬送制御を司る制御系に与えた目標位置や目標速度と、エンコーダにより計測されたキャリッジの計測位置や計測速度とを比較し、目標値と計測値との差が閾値を超えると、キャリッジに動力を付与するモータの負荷がジャム等により異常上昇したとみなして、モータを緊急停止させ、キャリッジ搬送を中断する対応が従来採られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−240026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、目標値と計測値との比較により搬送異常を検知してモータを緊急停止する手法では、ヘッドやキャリッジとシートとの接触が重度に進行して、モータの負荷が上昇しない限り、異常を検知することができない。このため、従来手法では、実際にヘッドやキャリッジとシートとの接触が始まってから、ヘッドやキャリッジが停止するまでに大きなタイムラグがあり、この期間にヘッドが傷ついてしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、被搬送体にシート等の外部物体が接触して異常が発生したことを、迅速に検知な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためになされた本発明の搬送装置は、被搬送体と、被搬送体を支持しながら被搬送体を所定の搬送方向に案内するガイド体と、被搬送体をガイド体に沿って上記搬送方向に搬送する搬送手段と、被搬送体の変位に対応したエンコーダ信号を出力するリニアエンコーダと、リニアエンコーダから出力されるエンコーダ信号のエッジ間の時間間隔を計測する計測手段と、計測手段により計測された計測値の変動に基づき、被搬送体に固定されて被搬送体と連動するエンコーダセンサの基準面とは垂直な方向への変位の有無を判定する判定手段と、を備えるものである。尚、上記基準面は、上記ガイド体が被搬送体を支持する方向とは直交する面のことを言う。
【0008】
この搬送装置において、リニアエンコーダは、上記基準面とは交差する面である交差面上に設けられた搬送方向に長尺なエンコーダフェンスであって、交差面に沿う側面に、光を透過する透光部と光を遮断する遮光部とが搬送方向に交互に複数配列されたエンコーダフェンスと、被搬送体に固定されたエンコーダセンサであって、エンコーダフェンスの透光部及び遮光部が形成された面を挟む位置関係で発光素子及び受光素子を備え、発光素子の出力光を受光する受光素子の受光状態に応じた矩形状のエンコーダ信号を出力するエンコーダセンサと、を備える。
【0009】
また、エンコーダフェンスは、互いに隣接する透光部と遮光部との境界線上における第1の地点と、第1の地点とは「エンコーダフェンスの側面に沿う方向であって上記搬送方向とは垂直な方向における位置」が異なる当該境界線上の第2の地点とが、搬送方向において異なる位置となるように、透光部及び遮光部が形成された構成にされている(請求項1)。
【0010】
この搬送装置によれば、被搬送体がガイド体に支持されているため、ガイド体から被搬送体への力の作用方向(支持方向)と同方向に、外部から力が働く事象が発生すると、被搬送体は、ガイド体から離間するなどして、基準面に対して垂直な方向に変位し、同時にエンコーダセンサも、基準面に対して垂直な方向に変位する。また、この際には、エンコーダフェンスにおける透光部と遮光部との境界線が上述したように構成されていることから、エンコーダ信号のエッジ間隔が変化する。
【0011】
従って、本発明によれば、エッジ間隔の変化を指標に、エンコーダセンサが基準面とは垂直な方向へ変位したか否かを判定することができ、更には間接的に、上記事象が発生したことを検知することができ、結果として、被搬送体と接触すると上述した事象が発生する外部物体に関して、被搬送体と当該外部物体との接触を検知することができる。従って、この搬送装置によれば、被搬送体に外部物体が接触して異常が発生したことを迅速に検知することができる。
【0012】
即ち、本発明の搬送装置では、搬送負荷が上昇した時点で外部物体と被搬送体との接触を検知する従来技術とは異なり、外部物体と被搬送体とが接触してエンコーダセンサが基準面とは垂直な方向に変位した時点で、異常を検知することができる。このため、被搬送体に外部物体が接触して異常が発生したことを迅速に検知することができるのである。
【0013】
従って、本発明では、例えば、被搬送体と外部物体との接触が進行して、被搬送体が傷ついてしまうのを、早期に被搬送体の搬送を停止することで抑えることができる。結果、本発明によれば、優れた搬送装置を提供することができる。
【0014】
ところで、判定手段は、計測手段による最新の計測値が、前回の計測値に対して所定量以上変化している場合に、基準面と垂直な方向への変位が有ったと判定し、所定量以上変化していない場合に、基準面と垂直な方向への変位が無かったと判定する構成にすることができる(請求項2)。更に言えば、判定手段は、計測手段による最新の計測値が、前回の計測値に対して所定割合以上変化しているか否かによって、基準面と垂直な方向への変位の有無を判定する構成にすることができる。
【0015】
このように判定手段を構成すれば、簡単な処理で、エンコーダセンサの上記基準面とは垂直な方向へ変位の有無を判定することができる。
また、エンコーダフェンスには、透光部と遮光部との境界線が上記搬送方向とは垂直な方向に対し所定角度傾いて延びる直線状となるように、当該透光部及び遮光部を搬送方向に配列して、リニアエンコーダを構成することができる(請求項3)。
【0016】
このようにエンコーダフェンスを構成すれば、被搬送体が通常位置から基準面と垂直な方向へ瞬間的に大きく変位する程、計測手段による計測値が大きく変化する。従って、本発明によれば、例えば、計測手段による計測値の変化が微小である場合には、エンコーダセンサが変位したとは判定せず、計測値の変化が大きい場合には、エンコーダセンサが変位したと判定することで、振動等による計測値の変化の影響を余り受けることなく、被搬送体と外部物体との接触によるエンコーダセンサの変位の有無を、精度よく判定することができる。
【0017】
また、エンコーダフェンスは、透光部と遮光部との境界線が、搬送方向とは垂直な方向に沿う直線形状の第1の領域と搬送方向とは垂直な方向に対し所定角度傾いて延びる直線形状の第2の領域とで構成されるように、構成されてもよい(請求項4)。
【0018】
通常時には、エンコーダセンサが上記第1の領域で発光・受光動作を行い、外部物体との接触時には、エンコーダセンサが上記第2の領域に移動して発光・受光動作を行うように、上記第1及び第2の領域を定めてエンコーダフェンスを構成すると、振動等によるエンコーダセンサの微小な変位では、計測手段の計測値に振動に伴う変動が生じなくて済む。
【0019】
従って、このようにエンコーダフェンスを構成すれば、振動等の影響を余り受けることなく、被搬送体と外部物体との接触によるエンコーダセンサの変位の有無を、判定することができる。また、リニアエンコーダから出力されるエンコーダ信号に基づき、被搬送体の位置や速度を計測して、この計測値を被搬送体の搬送制御に用いる場合には、振動等による位置や速度の計測誤差を抑えることができて、振動等による悪影響が搬送制御に及ぶのを抑えることができる。
【0020】
この他、エンコーダフェンスは、透光部と遮光部との境界線が、搬送方向とは垂直な方向に接線を採る地点を有する湾曲形状となるように、形成されてもよい(請求項5)。通常時にエンコーダセンサによる発光・受光動作が行われる地点周辺に上記接点を配置してエンコーダフェンスを構成すれば、上述した構成のエンコーダフェンスと同様、振動等によるエンコーダセンサの微小な変位を原因とした計測手段の計測値の変動を抑えることができる。
【0021】
また、境界線を湾曲形状とすれば、被搬送体が通常位置から基準面と垂直な方向へ瞬間的に大きく変位する程、計測手段による計測値が大きく変化する。従って、このようにエンコーダフェンスを構成すれば、被搬送体と外部物体との接触によるエンコーダセンサの変位の有無を、高感度で精度よく判定することができる。
【0022】
また、上記搬送装置には、判定手段により上記基準面と垂直な方向への変位が有ったと判定されると、搬送手段による被搬送体の搬送動作を禁止する搬送禁止手段を設けるとよい(請求項6)。
【0023】
このように構成された搬送装置によれば、被搬送体と外部物体との接触に迅速に反応して、被搬送体の搬送を停止させることができる。従って、この搬送装置によれば、従来よりも、被搬送体と外部物体との接触初期に、被搬送体の搬送を停止させることができて、被搬送体と外部物体との接触が進行することにより、例えば、被搬送体が傷ついてしまうのを抑えることができる。
【0024】
また、上記搬送装置には、判定手段により上記基準面と垂直な方向への変位が有ったと判定されると、ユーザに対して異常を報知する異常報知手段を設けてもよい(請求項7)。このように搬送装置を構成すれば、被搬送体の停止理由をユーザに対して伝えることができ、更には、被搬送体停止後の処理(例えば、外部物体を取り除く処理)を行うように、ユーザに促すことができる。
【0025】
また、本発明は、画像形成装置としての機能を有する搬送装置に適用することができる。即ち、本発明は、対向配置されるシートに画像を形成する記録ヘッドを構成要素とする被搬送体を、上記基準面に沿う所定の搬送方向に、搬送する搬送装置であって、被搬送体を、上記搬送方向に移動させながら、記録ヘッドに、シートに対する画像形成動作を実行させることにより、シートに、搬送方向に沿う一連の画像を形成する画像形成装置としての機能を有した搬送装置に適用することができる(請求項8)。
【0026】
このように構成された搬送装置によれば、記録ヘッドとシートとの接触に迅速に反応して、例えば記録ヘッドの搬送を停止することができ、記録ヘッドがシートにより傷つくのを抑えることができる。
【0027】
また、この搬送装置には、シートを記録ヘッドによる画像形成位置に供給し、更には、画像形成位置での画像形成が完了したシートを画像形成位置から排出するシート搬送手段を制御して、判定手段により基準面と垂直な方向への変位が有ったと判定された場合には、シート搬送手段に、画像形成位置に供給されているシートを排出させる異常時排出手段を設けるとよい(請求項9)。
【0028】
従来装置では、記録ヘッドとシートとの接触によるジャムの発生プロセスが十分に進行しないと異常を検知できなかったが、本発明によれば、ジャムの発生初期において異常を検知できるので、シートを自動排出することができなくなる前に、記録ヘッドの搬送を停止することができる。そこで、本発明では、判定手段により変位が有ったと判定されると、シートを排出させるようにしているのである。
【0029】
このように構成された本発明の搬送装置によれば、従来のようにユーザに対して手作業でシートの詰まりを解消させなくて済み、ユーザにとっては、大変便利である。
また、外部物体がシートのような変形可能な物体であって、被搬送体に重量がある場合には、被搬送体に外部物体が接触しても、被搬送体に接触による変位が生じにくい。従って、被搬送体は、ガイド体に支持される本体に、当該本体よりも軽量な付属体が、上記基準面と垂直な方向に変位可能に設けられた構成にされるとよい。また、エンコーダセンサは、付属体に設けられるとよい(請求項10)。
【0030】
このように構成された搬送装置によれば、被搬送体本体に重量があり、本体に外部物体が接触しても容易には被搬送体が変位しない場合にも、軽量な付属体と外部物体との接触により、エンコーダセンサの出力(エンコーダ信号)が変化するので、被搬送体と外部物体との接触によるエンコーダセンサの変位の有無を判定することができる。よって、本発明によれば、高感度に、被搬送体と外部物体との接触を検知することができる。
【0031】
また、付属体は、被搬送体の搬送時に少なくとも一部領域が本体に対して先行するように取り付けられるとよい(請求項11)。
このように付属体を設ければ、被搬送体の搬送過程において、先に付属体が外部物体に接触する可能性が高くなる。従って、本体に外部物体が接触する前に、判定手段によってエンコーダセンサの変位が有りと判定することができ、本体を保護して早期に異常を検知することができる。従って、本体が傷つきやすいものである場合には、本体が外部物体との接触により傷ついてしまうのを抑えることができる。
【0032】
また、ガイド体に支持されるキャリッジに記録ヘッドが搭載された上記記録ヘッドを構成要素に備える被搬送体を搬送する搬送装置に、付属体を設ける場合には、具体的に、次のように、付属体を取り付けることができる。即ち、付属体は、被搬送体の搬送時に少なくとも一部領域が記録ヘッドに対して先行するようにキャリッジに対して取り付けることができる。勿論、付属体は、キャリッジに対して基準面と垂直な方向に変位可能に取り付ける(請求項12)。
【0033】
このように構成された搬送装置によれば、付属体が記録ヘッドに先行するように取り付けられているため、記録ヘッドの搬送過程において、シートに折れや反りが生じていて被搬送体とシートとが接触するような原因があっても、先に付属体がシートに接触する可能性が高い。
【0034】
従って、この搬送装置によれば、傷つきやすい記録ヘッドを保護しつつ、記録ヘッドにシートが接触する前に、付属体とシートとの接触に伴うエンコーダの変位を検知することができる。この結果、例えば、記録ヘッドにシートが接触する前にキャリッジを緊急停止することができ、記録ヘッドが傷つくのを一層効果的に抑えることができる。
【0035】
尚、付属体は、記録ヘッド及びキャリッジの総重量よりも軽量に構成されるのが好ましい。このように搬送装置を構成すれば、記録ヘッドにインクカートリッジが装着される場合のように、記録ヘッド及びキャリッジの総重量が大きい場合でも、シートとの接触を高感度に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】画像形成装置1の電気的構成を表すブロック図である。
【図2】キャリッジ搬送機構40及び用紙搬送機構60の断面図である。
【図3】キャリッジ搬送機構40の上面図である。
【図4】エンコーダセンサ553による光の送受位置を示した図である。
【図5】エンコーダフェンス551のスリット形状を示した図である。
【図6】エンコーダセンサ553の変位とエンコーダ信号との対応関係を示した図である。
【図7】エンコーダセンサ553が上方向にy0変化したときにパルス幅T0の変化率がΔTとなるスリットの角度θbについて説明した図である。
【図8】エラー判定部109が実行するキャリッジ搬送エラー判定処理を表すフローチャートである。
【図9】変形例のスリット形状を示した図である。
【図10】画像形成装置2におけるキャリッジ41’の周辺構成を示した図である。
【図11】用紙との干渉に伴う枠部材90の変位の態様を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に本発明の実施例について、図面と共に説明する。
[第一実施例]
図1(a)は、本実施例の画像形成装置1の電気的構成を表すブロック図であり、図1(b)は、制御部10にて実現される機能について説明したブロック図である。
【0038】
本実施例の画像形成装置1は、記録ヘッド31を通じ、インクジェット方式で画像を用紙に形成する画像形成装置であり、CPU11、CPU11が実行するプログラムを記憶するROM13、CPU11によるプログラム実行時に作業領域として使用されるRAM15、及び、外部装置(PC3等)とのインタフェース19を備えた制御部10が、装置全体を統括制御し、各種機能を実現する構成にされている。尚、制御部10には、CPU11の他、各種機能を実現するための回路群も設けられており、制御部10は、ソフトウェア及びハードウェア回路を用いて各種機能を実現する。
【0039】
詳述すると、画像形成装置1には、ユーザに対してメッセージを表示するための表示部21(液晶ディスプレイ等)と、ユーザからの指令を受け付けるための操作部25と、が設けられており、制御部10は、表示部21を制御することにより、表示部21にエラーメッセージ等を表示し、更には、操作部25を通じて入力されたユーザの指令に対応した処理を実行する。
【0040】
また、画像形成装置1には、記録ヘッド31及び記録ヘッド31を駆動するための駆動回路33が設けられており、制御部10は、ソフトウェア及びハードウェア回路の協働により、図1(b)に示すように印字制御部101として機能し、記録ヘッド31からのインク液滴の吐出を制御する。具体的に、印字制御部101は、駆動回路33に制御信号を入力することにより、記録ヘッド31からのインク液滴の吐出を制御し、用紙搬送機構60により搬送された用紙に外部装置(PC3等)から提供された印刷対象の画像データに基づく画像を形成する。
【0041】
この他、画像形成装置1には、キャリッジ搬送機構40が備える上記記録ヘッド31を搭載したキャリッジ41に動力を与えるための直流モータであるCRモータ51と、CRモータ51を駆動するための駆動回路53と、キャリッジ41の位置や速度を計測するためのリニアエンコーダ55と、用紙搬送機構60が備えるメインローラ61及び排紙ローラ63を回転させて用紙を記録ヘッド31による画像形成位置へと搬送するための直流モータであるLFモータ71と、LFモータ71を駆動するための駆動回路73と、LFモータ71の回転量を計測するためのロータリエンコーダ75と、用紙搬送機構60が備える給紙ローラ68を回転させて給紙トレイ69(図2参照)からメインローラ61側へと用紙を供給する直流モータであるPFモータ81と、PFモータ81を駆動するための駆動回路83と、PFモータ81の回転量を計測するためのロータリエンコーダ85と、が設けられている。
【0042】
即ち、制御部10は、これら駆動回路53,73,83に制御信号を入力することにより、給紙から排紙までの用紙搬送を制御すると共に、キャリッジ41(ひいては記録ヘッド31)の搬送を制御する。
【0043】
この点について詳述すると、制御部10は、リニアエンコーダ55から入力される矩形状のエンコーダ信号に基づき、キャリッジ41の位置及び速度を計測するエンコーダ信号処理部103として機能し、エンコーダ信号処理部103では、周知技術と同様、エンコーダ信号としてリニアエンコーダ55から入力されるA相信号及びB相信号に基づき、キャリッジ41の移動方向(正方向/負方向)及びキャリッジ41の主走査方向における位置Xを計測する。
【0044】
また、エンコーダ信号処理部103では、上記A相信号及びB相信号の何れか一方について、前回立ち上がりエッジが入力されてから今回立ち上がりエッジが入力されるまでの経過時間T0(以下、パルス幅T0という。)を計測することにより、キャリッジ41の主走査方向における速度を計測する。
【0045】
尚、詳細にはパルス幅T0の逆数がキャリッジ41の速度に対応するが、本実施例では、不要な演算を抑えるために、速度と等価なパルス幅T0を指標にして、キャリッジ41の速度を、目標速度に制御する。
【0046】
具体的に、制御部10は、CR搬送制御部102として機能し、CR搬送制御部102では、エンコーダ信号処理部103から入力される位置X及びパルス幅T0に基づき、CRモータ51を制御して、キャリッジ41を主走査方向に搬送する。
【0047】
例えば、用紙に対する画像形成時には、用紙搬送に合わせて、記録ヘッド31を搭載したキャリッジ41を主走査方向に往復運動させる。具体的には、用紙が上記主走査方向とは垂直な副走査方向に所定量送り出される度に、キャリッジ搬送方向を切り替えて、キャリッジ41を主走査方向に沿って折返し地点まで搬送する。これにより、間欠的に搬送される用紙の搬送停止時に、キャリッジ41を主走査方向に搬送する。尚、往復運動時には、印字制御部101の動作により、記録ヘッド31から印刷対象の画像データに対応したパターンでインク液滴が用紙に吐出され、この動作によって、用紙には、副走査方向への紙送り量に対応したライン分の画像が主走査方向に形成される。
【0048】
また、画像形成時には、キャリッジ41が主走査方向における折返し地点より所定距離手前に到達するまでの期間、キャリッジ41を目標速度に速度制御することにより、記録ヘッド31によるインク液滴の吐出領域において、キャリッジ41を等速運動させ、折返し時点より所定距離手前に到達した後には、キャリッジ41を目標位置に位置制御することにより、キャリッジ41を高精度に所定の停止位置(折返し地点)に停止させる。
【0049】
また、制御部10は、用紙搬送制御部104として機能し、用紙搬送制御部104では、LFモータ71を制御して、メインローラ61と従動ローラ62との間に挟持された用紙を副走査方向に搬送する。例えば、画像形成に際しては、所定量ずつ用紙を副走査方向に送り出すように、LFモータ71を制御する。
【0050】
詳述すると、制御部10は、ロータリエンコーダ75から出力されるエンコーダ信号に基づき、用紙搬送量を計測するエンコーダ信号処理部105として機能し、用紙搬送制御部104では、エンコーダ信号処理部105によって計測された用紙搬送量に基づき、LFモータ71を制御して、例えば、所定量ずつ用紙を副走査方向に搬送する。
【0051】
尚、LFモータ71によって発生する動力は、動力伝達機構65(図1(a)参照)を通じてメインローラ61だけでなく、メインローラ61の副走査方向下流(用紙搬送路下流)に位置する排紙ローラ63にも伝達される。即ち、排紙ローラ63は、メインローラ61に連動して回転し、対向する従動ローラ64との間に、メインローラ61から搬送されてくる用紙を挟持して、用紙を、図示しない排紙トレイに排出する。
【0052】
この他、制御部10は、給紙制御部106として機能し、給紙制御部106では、PFモータ81を制御して、給紙トレイ69に載置された用紙に当接される給紙ローラ68を回転させることにより、給紙トレイ69の最上層に載置された用紙を用紙搬送路の下流へと搬送し、用紙搬送路下流に位置するメインローラ61と従動ローラ62との間に、用紙を供給する。
【0053】
尚、制御部10は、ロータリエンコーダ85から出力されるエンコーダ信号に基づき、用紙搬送量を計測するエンコーダ信号処理部107としても機能し、給紙制御部106では、エンコーダ信号処理部107によって計測された用紙搬送量に基づき、PFモータ81を制御する。
【0054】
このような制御部10の機能により、給紙トレイ69に載置された用紙は、図2に示すように、給紙トレイ69から一枚ずつ分離されて、用紙搬送路を構成するUターンパス67に送り出され、用紙搬送路下流に位置するメインローラ61と従動ローラ62との挟持位置に搬送される。また、メインローラ61及び従動ローラ62の回転により用紙搬送路下流に引き込まれた用紙は、用紙搬送路を構成するプラテン66に下方を支持されながら、プラテン66と記録ヘッド31が搭載されたキャリッジ41との隙間を通って、記録ヘッド31の下方で画像形成される。また、この用紙は、プラテン66の用紙搬送路下流端部に位置する排紙ローラ63及び従動ローラ64に挟持されて、図示しない排紙トレイへと排出される。
【0055】
続いて、キャリッジ搬送機構40及びキャリッジ41の構成について、図2及び図3を用いて説明する。キャリッジ搬送機構40は、キャリッジ41と、キャリッジ41を主走査方向に案内するフレーム43,44と、ベルト機構47(図3参照)と、からなり、キャリッジ41は、主走査方向に延びるフレーム43,44に対して摺動可能に取り付けられ、ベルト機構47を構成する無端ベルト471に連結された構成にされている。
【0056】
詳述すると、フレーム43は、キャリッジ41の側面において主走査方向に平行に設けられた溝部411(図2参照)の上面と接触し、キャリッジ41を下方から上方に支持する。また、フレーム44は、長手方向(主走査方向)に垂直な断面がL字形状にされ、キャリッジ41を主走査方向に案内するガイドレールとして機能する。具体的に、フレーム44は、キャリッジ41の下面において主走査方向に平行に設けられた溝部413の上面と接触し、キャリッジ41を下方から上方に支持すると共に、主走査方向に案内する。
【0057】
これによって、キャリッジ41は、フレーム43とフレーム44とによって支持される上下方向と直交する面を基準面として、この基準面に沿って、主走査方向に案内されることとなる。尚、キャリッジ41の下方には、搬送用紙を支持するプラテン66が基準面と平行に設けられており、用紙は、キャリッジ41の下方においてこの基準面と平行となるように、搬送される。
【0058】
この他、フレーム43は、図2に示すように、キャリッジ41の後方(副走査方向上流)に設けられ、フレーム44は、キャリッジ41の前方に設けられている。即ち、本実施例では、フレーム43にてキャリッジ41後方を支持し、フレーム44によりキャリッジ41前方を支持することにより、キャリッジ41が前後方向に傾かないように保持し、キャリッジ41をフレーム43,44に沿って安定的に主走査方向に搬送可能としている。
【0059】
また、ベルト機構47は、無端ベルト471と、フレーム44の主走査方向両端に配置された一対のプーリー473,474とを備え、無端ベルト471がプーリー473,474の間に掛けられた構成にされている。
【0060】
尚、上述のCRモータ51は、プーリー473,474の一方にギヤ(図示せず)を介して接続されて、当該一方を回転可能に設けられている。即ち、本実施例において、プーリー473,474の一方は、CRモータ51から発生する動力を、ギヤを介して受けて回転し、他方は、CRモータ51の動力を受けて回転する上記一方のプーリー473,474に、無端ベルト471を介して従動するように回転する。
【0061】
また、キャリッジ41は、無端ベルト471に固定され、フレーム43,44によって、その移動が主走査方向に規制されている。従って、キャリッジ41は、CRモータ51が回転すると、無端ベルト471の回転に連動して、主走査方向(正方向/負方向)に移動する。
【0062】
本実施例では、このようなキャリッジ搬送機構40の構成により、キャリッジ41を主走査方向に搬送する。また、キャリッジ搬送機構40には、記録ヘッド31のノズルをキャッピングするためのキャップ機構49が設けられており、画像形成装置1の休止時において、記録ヘッド31は、キャリッジ41と共に、このキャップ機構49が設けられた位置に搬送され、キャッピングされる。
【0063】
この他、キャリッジ41の位置及び速度を計測するためのリニアエンコーダ55は、図3に示すように、主走査方向に長尺なエンコーダフェンス551と、エンコーダフェンス551の側面を挟むようにしてキャリッジ41に固定されたエンコーダセンサ553と、からなる。
【0064】
エンコーダフェンス551は、上述した基準面に垂直な方向である上下方向に沿って、主走査方向に対して長尺に設けられており、この上下方向に沿う側面において、所定形状のスリット551a(図5参照:詳細後述)が複数配列された構成にされている。また、このエンコーダフェンス551は、キャリッジ41の上面において、主走査方向に平行に設けられた溝部415に、上方から挿入されるように設置されている。詳述すると、エンコーダフェンス551は、溝部415の下面と接触しないように、所定の間隙を有した状態で溝部415に納められている(図2参照)。
【0065】
また、エンコーダセンサ553は、発光素子と受光素子とが溝部415に挿入されたエンコーダフェンス551を挟むように配置されている。具体的に、エンコーダセンサ553は、発光素子及び受光素子のペアからなる検知回路553aを二組有し、一方の検知回路553aにて上述したA相信号を生成して出力し、他方の検知回路553aにて上述したB相信号を生成して出力する。
【0066】
尚、エンコーダフェンス551のスリット551a(図5参照)は、発光素子から出力された光を受光素子側へと透過させる透光部として機能し、エンコーダフェンス551のスリット551aが形成されていない部位は、発光素子から出力された光の受光素子側への伝達を遮断する遮光部として機能する。そして、検知回路553aは、周知のリニアエンコーダと同様、受光素子がスリット551aを通じて発光素子からの出力光を受光した場合、ロウ信号を出力し、それ以外の場合には、ハイ信号を出力することで、エンコーダセンサ553が固定されたキャリッジ41の主走査方向への変位に対応した矩形状のエンコーダ信号を出力する。
【0067】
以上には、画像形成装置1の基本構成について説明したが、この画像形成装置1は、更に、キャリッジ41の上方向への変位を検知することによって、キャリッジ41又はキャリッジ41に固定された記録ヘッド31と、記録ヘッド31の下方に位置する用紙との接触を検知する機能を有する。以下では、この機能について説明する。尚、本実施例の画像形成装置1は、上記機能を有することで、ジャムの発生プロセス初期において迅速に異常を検知することができる。
【0068】
まず、キャリッジ41の上方向への変位を検知する技術の基本原理について説明する。図4(a)は、キャリッジ41に固定されたエンコーダセンサ553における発光素子及び受光素子による光の送受位置を概略的に示した図であって、キャリッジ41に固定された記録ヘッド31と用紙とが干渉していない状態での光の送受位置を示した図であり、図4(b)は、記録ヘッド31と用紙とが干渉している状態での光の送受位置を示した図である。
【0069】
上述したように、画像形成装置1において、キャリッジ41は、フレーム43,44により下方から支持されて、その上下方向における位置を維持している。このため、下方から用紙が当るなどして、キャリッジ41を下方から押し上げるような力が発生すると、キャリッジ41は、上方向に浮き上がる。また、エンコーダセンサ553は、キャリッジ41に固定されているため、キャリッジ41の上方向への変位に合わせて上方向に変位し、これに合わせて、光の送受位置も上方向に変位する。
【0070】
一方、エンコーダフェンス551は、キャリッジ41とは独立して、画像形成装置1内に固定されているので、変位しない。従って、エンコーダフェンス551に対するエンコーダセンサ553による光の送受位置は、上方向に変位する。本実施例では、このような現象を利用して、キャリッジ41の上方向への変位を検知する。具体的には、図5に示すように、エンコーダフェンス551のスリット形状を工夫することによって、キャリッジ41の上方向への変位を検知する。尚、キャリッジ41の上方向への変位時には、キャリッジ41がフレーム43,44から浮き上がった状態となるため、以下では、キャリッジ41の上方向への変位を、「浮き上がり」とも表現する。
【0071】
図5(a)は、本実施例のエンコーダフェンス551のスリット形状を示した図であって、エンコーダフェンス551の上下方向に沿う側面図であり、図5(a)に示す非塗り潰し部分は、透光部として機能するスリット551aに対応し、塗り潰し部分は、遮光部に対応する。
【0072】
図5(a)に示すように、エンコーダフェンス551は、その側面に、キャリッジ41の搬送方向である主走査方向とは垂直な基準線L(上下方向)に対して非平行であり、主走査方向に対しても非平行な方向に延びるスリット551aを有する。従来の画像形成装置が有するエンコーダフェンスには、主走査方向に垂直な基準線Lに対して平行にスリットが形成されており、この点で、本実施例の画像形成装置1は、異なる。
【0073】
具体的に、本実施例のエンコーダフェンス551は、側面において、主走査方向とは垂直な基準線Lに対し所定角度θa傾いて延びる直線形状のスリット551aが、主走査方向に一致するエンコーダフェンス551の長手方向に複数配列された構成にされている。
【0074】
このようにエンコーダフェンス551が構成された画像形成装置1では、スリット551aのエッジ(側縁)が基準線Lに対して傾いているので、当該エッジ上の地点であって通常時の光の送受位置に対応する第1の地点と、エッジ上の地点であって浮き上がり時の光の送受位置に対応する第2の地点とでは、キャリッジ41の搬送方向における位置(主走査方向における位置)が異なる。
【0075】
従って、図5(b)に示すように、エンコーダセンサ553による光の送受位置が、キャリッジ41の浮き上がりによりエンコーダフェンス551に対して上方向に変位すると、図5(b)下段に示すように、エンコーダ信号のパルス幅T0が急激に変化する。本実施例では、このような現象を利用して、パルス幅T0の変化率ΔTが閾値TH以上となったとき、キャリッジ41が浮き上がったと検知する。
【0076】
尚、パルス幅T0は、スリット551aの向きとキャリッジ41の進行方向との関係によって、図6に示すように、長くなったり、短くなったりする。例えば、図6(a)に示すように、スリット551aが下方から上方に向けて、キャリッジ41の搬送方向上流側に傾いている場合には、キャリッジ41が浮き上がると、パルス幅T0は短くなる。一方、図6(b)に示すように、スリット551aが下方から上方に向けて、キャリッジ41の搬送方向下流側に傾いている場合には、キャリッジ41が浮き上がると、パルス幅T0は長くなる。
【0077】
従って、本実施例では、パルス幅T0の変化率ΔTとして、次式に示すように絶対値を採り、この変化率ΔTが閾値TH以上となったときに、キャリッジ41の浮き上がりを検知する。
【0078】
ΔT=|(Tn−Tp)/Tp| …式(1)
但し、時間Tnは、最新のパルス幅T0に対応するものであり、時間Tpは、時間的に一つ前のパルス幅T0に対応するものである。
【0079】
尚、図6(a)(b)は、キャリッジ41の進行方向に対応したパルス幅T0の変化の態様を示した図である。ここでは、ホームポジション(キャップ機構49)を基準にしてホームポジションから離れる方向にキャリッジ41が進行する場合を正方向と表現し、ホームポジションに近づく方向にキャリッジ41が進行する場合を負方向と表現して、スリット551aの向きとパルス幅T0の変化態様とを示す。
【0080】
また、スリット551aを形成する際には、基準線Lに対する角度θa及び閾値THの調整が必要であるので、ここでは、角度θa及び閾値THの調整の目安として、キャリッジ41(エンコーダセンサ553)が上方向にy0変化したときにパルス幅T0の変化率がΔTとなる角度θbについて説明する。尚、角度θbは、図7に示すように、主走査方向に対してスリット551aがなす角度を示し、角度θbは、θb=(π/2)−θa[ラジアン]に等しい。
【0081】
具体的に、キャリッジ41(エンコーダセンサ553)が上方向にy0変化したときにパルス幅T0の変化率がΔTとなる角度θbは、次式で算出することができる。
θb=arctan{y0/(α・ΔT)} …式(2)
ここで、定数αは、エンコーダフェンス551に形成されたスリット551aの主走査方向における配置間隔であり、エンコーダ信号1パルス当りのキャリッジ41の移動距離に対応する。本実施例を実施するに当っては、キャリッジ41が浮き上がったとみなす上方向への変位量y0と、変化率ΔTの計測誤差を考慮して、上式に従い、角度θa及び閾値THを調整すればよい。
【0082】
続いて、本実施例の画像形成装置1が、キャリッジ41の浮き上がりを検知するために実行するキャリッジ搬送エラー判定処理について説明する。本実施例の制御部10は、図1に示すように、エラー判定部109として機能し、エラー判定部109では、図8に示すキャリッジ搬送エラー判定処理を実行することにより、キャリッジ41の浮き上がりの有無を判定して、その判定結果に従うエラー処理を行う。図8は、CR搬送制御部102によりキャリッジ41に対する1パス分の搬送制御が行われる度に、エラー判定部109が実行するキャリッジ搬送エラー判定処理を表すフローチャートである。尚、1パス分の搬送制御とは、往復運動するキャリッジ41の往路及び復路夫々の搬送制御(換言すればキャリッジ41を折返し時点まで搬送する搬送制御)のことを言う。
【0083】
エラー判定部109は、CR搬送制御部102による1パス分の搬送制御の開始に合わせて、キャリッジ搬送エラー判定処理を開始すると、エンコーダ信号のエッジ検出回数を表す変数jをゼロに初期化すると共に、変数Tn,Tpを初期値INIT(例えば最大値)に設定する(S110)。
【0084】
また、この処理を終えるとエラー判定部109は、リニアエンコーダ55から入力されるエンコーダ信号の立ち上がりエッジがエンコーダ信号処理部103により検出されたか否かを判断し(S120)、立ち上がりエッジが検出された場合には(S120でYes)、S130に移行し、立ち上がりエッジが検出されなかった場合には(S120でNo)、S125に移行する。尚、ここでは、エンコーダ信号としてのA相信号及びB相信号の一方に着目して、当該信号の立ち上がりエッジが検出されたか否かを判断する。
【0085】
一方、S125に移行するとエラー判定部109は、キャリッジ41が折返し地点まで搬送されてCR搬送制御部102による1パス分の搬送制御が正常終了したか否かを判断し、正常終了していないと判断した場合には(S125でNo)、S120に移行して、立ち上がりエッジが検出されるか、1パス分の搬送制御が正常終了するまで待機する。
【0086】
また、立ち上がりエッジが検出されると(S120でYes)、エラー判定部109は、変数jを1加算した値に更新することで、変数jを通じて、立ち上がりエッジの検出回数をカウントする(S130)。更に、エラー判定部109は、変数Tpを、現在の変数Tnの値に更新すると共に(S140)、変数Tnを、今回の立ち上がりエッジの検出によりエンコーダ信号処理部103にて更新された最新のパルス幅T0と同一値に更新する(S145)。
【0087】
そして、S145の処理後には、S150に移行して、立ち上がりエッジが3回検出され、変数jが2より大きい値に更新されたか否かを判断する(即ちj>2であるか否かを判断する)。
【0088】
ここで、j≦2であると判断した場合には(S150でNo)、S120に移行し、j>2であると判断すると(S150でYes)、S160に移行する。尚、このように処理を切り替えているのは、立ち上がりエッジが3回以上検出されないと、パルス幅T0の変化率ΔTを正常に演算することができないためである。
【0089】
S160に移行すると、エラー判定部109は、上述した式(1)に従って、変化率ΔTを算出する。また、この処理を終えると、S170に移行して、算出した変化率ΔTに基づき、キャリッジ41において、重度の浮き上がりが発生しているか否かを判定する。
【0090】
具体的に、S170では、算出した変化率ΔTが、予め定められた閾値TH2以上であるか否かを判断することにより、重度の浮き上がりが発生しているか否かを判定する。
尚、本実施例の画像形成装置1は、ジャムの進行度を、変化率ΔTに基づき判定して、エラー処理を切り替える構成にされている。そして、この切替のために、画像形成装置1においては、上記閾値THとして、値の異なる二つの閾値TH1,TH2が予め設定されている。S170では、このように設定された閾値TH1,TH2の内、大きい値を採る閾値TH2(>TH1)と、変化率ΔTとを比較して、変化率ΔTが、予め定められた閾値TH2以上であるか否かを判断することにより、ジャムの発生プロセスが進行して、重度の浮き上がりが発生しているか否かを判定する。例えば、閾値TH2は、50%に設定することができる。
【0091】
そして、変化率ΔTが閾値TH2以上である場合には、重度の浮き上がりが発生していると判定して(S170でYes)、S180に移行し、CR搬送制御部102に対してキャリッジ搬送を緊急停止するように指令して、キャリッジ41を緊急停止させると共に、表示部21を制御して、ユーザに用紙を手動で取り除くように指示するエラーメッセージを表示し(S185)、当該キャリッジ搬送エラー判定処理を一旦終了する。
【0092】
一方、重度の浮き上がりが発生していないと判定すると(S170でNo)、エラー判定部109は、S175に移行して、上記変化率ΔTに基づき、軽度の浮き上がりが発生しているか否かを判定する。具体的には、閾値TH2より小さい値を採る閾値TH1と、変化率ΔTとを比較して、変化率ΔTが、予め定められた閾値TH1以上であるか否かを判断することにより、キャリッジ41において軽度の浮き上がりが発生しているか否かを判定する。例えば、閾値TH1は、30%に設定することができる。
【0093】
そして、変化率ΔTが閾値TH1未満である場合には、軽度の浮き上がりも発生していないと判定して(S175でNo)、S120に移行する。そして、新たに立ち上がりエッジが検出されるとS130以降の処理を実行し、1パス分の搬送制御が正常終了した場合には(S125でYes)、当該キャリッジ搬送エラー判定処理を終了する。
【0094】
一方、変化率ΔTが閾値TH1以上である場合には、軽度の浮き上がりが発生していると判定して(S175でYes)、S190に移行し、S180での処理と同様、CR搬送制御部102に対してキャリッジ搬送を緊急停止するように指令して、キャリッジ41を緊急停止させた後、CR搬送制御部102に対して、キャリッジ41をホームポジションに移動させるように指令入力する(S191)。更に、用紙搬送制御部104に対して排紙指令を入力する(S193)。尚、用紙搬送制御部104は、排紙指令の入力を受けると、排紙処理を実行することで、LFモータ71を回転させて、メインローラ61により用紙搬送路下流に引き込まれた用紙を、排紙トレイまで搬送する。
【0095】
また、用紙搬送制御部104による排紙処理の実行時、エラー判定部109は、当該排紙処理の実行経過を監視し、排紙途中でエラーが発生し排紙処理が正常終了しなかった場合には(S195でYes)、S185に移行し、エラーメッセージを通じてユーザに用紙を手動で取り除くように指示する。
【0096】
一方、排紙処理が正常終了すると(S195でNo)、キャリッジ搬送途中のエラーにより用紙を排出した旨のエラーメッセージを表示部21に表示した後(S197)、当該キャリッジ搬送エラー判定処理を終了する。
【0097】
以上、本実施例の画像形成装置1について説明したが、本実施例によれば、変化率ΔTが閾値TH1以上であると、用紙との接触によるキャリッジ41の浮き上がりが発生していると判定して、キャリッジ41を緊急停止させ、ジャムの発生プロセスの進行を回避する。従って、本実施例によれば、紙詰まりが酷くなり排紙が自動で行えなくなるのを抑えることができ、ユーザに不満が及ぶのを回避することができる。また、記録ヘッド31と用紙とが接触した際に、早期に異常を検知してキャリッジ41の搬送を停止することができるので、記録ヘッド31のノズル部分が傷つくのを抑えることができる。
【0098】
また、本実施例では、変化率ΔTが閾値TH2以上である場合には、ジャムが進行していると推定して、自動での排紙を行わないようにしたので、強引に排紙処理を実行することにより、かえって紙詰まりが酷くなり、紙詰まりを解消するのにユーザの手を煩わることになるのを回避することができる。
【0099】
尚、キャリッジ41の浮き上がりについては、キャリッジ41及び記録ヘッド31の重量の合計が大きい程、その浮き上がり量y0が小さくなり、早期に異常を検知して、キャリッジ41を停止させるのが難しくなるが、近年においては、インクカートリッジの取替の容易性から、インクカートリッジを記録ヘッド31に搭載する手法を止めて、インクカートリッジを外部からの取替が容易な場所に設置し、記録ヘッド31へはインクカートリッジからチューブにてインクを提供する手法を採用することが多くなってきている。
【0100】
このように記録ヘッド31にインクカートリッジが搭載されていない画像形成装置においては、キャリッジ41と記録ヘッド31との重量の合計が小さい。このため、比較的にジャムの発生プロセスの初期において、キャリッジ41が異常検知に十分に浮き上がる。
【0101】
従って、本実施例の手法は、記録ヘッド31にインクカートリッジが搭載されないタイプの画像形成装置に適用されると、その効果が一層発揮される。
尚、変化率ΔTの算出方法は、式(1)に基づくものだけではなく、計測されたパルス幅の変動を算出できれば良い。すなわち、時間的にひとつ前のパルス幅と最新のパルス幅の比を算出して、その値からキャリッジ41の浮き上がりを検知しても良い。また、式(1)におけるTpは、ひとつ前のパルス幅の値ではなく、複数のパルス幅の平均値であっても良いし、キャリッジ41を駆動する際の目標速度指令に対応した値であっても良い。
【0102】
ところで、上記実施例では、エンコーダフェンス551に、基準線L(上下方向)に対し所定角度θa傾いて延びる直線形状のスリット551aを設けて、リニアエンコーダ55を構成したが、エンコーダフェンス551は、例えば、図9(a)に示す形状のスリット551bを備えた構成にされてもよい。
【0103】
図9(a)は、スリット551bを備える第一変形例のエンコーダフェンス551の側面図である。図9(a)に示すように、第一変形例のエンコーダフェンス551は、その側面において、下部領域が主走査方向とは垂直な上下方向(基準線L)に沿う直線形状にされ、上部領域が主走査方向にとは垂直な上下方向(基準線L)に対し所定角度θa傾いて延びる直線形状にされたスリット551bを備える。
【0104】
エンコーダフェンス551に、このような形状のスリット551bを設ければ、キャリッジ41が、ある程度浮き上がるまでは、スリット551bが上下方向に対して傾いていることによる見かけ上のキャリッジ41の速度変動(パルス幅T0の変動)が生じない。
【0105】
この点について詳述すると、図5(a)に示す形状のスリット551aをエンコーダフェンス551に設けた場合には、用紙との接触以外の原因でも振動が発生すると、キャリッジ41が浮き上がることが原因で、見かけ上、キャリッジ41の速度変動(パルス幅T0の変動)が生じる。
【0106】
一方、図9(a)に示す形状のスリット551bをエンコーダフェンス551に設けた場合には、微小な振動が発生する程度では、エンコーダセンサ553における光の送受位置が、スリット551bの下部領域内を変位する程度であるため、変位に伴う見かけ上のキャリッジ41の速度変動は生じず、パルス幅T0から正確にキャリッジ41の速度を計測することができる。従って、図9(a)に示すようにスリット551bを構成すれば、微小な振動による速度計測の誤差発生を抑えることができて、振動に強い画像形成装置1を構成することができる。
【0107】
また、スリット551bと同様の効果は、図9(b)に示すような形状のスリット551cをエンコーダフェンス551に設けても達成することができる。
図9(b)は、スリット551cを備える第二変形例のエンコーダフェンス551の側面図である。図9(b)に示すように、第二変形例のエンコーダフェンス551は、その側面において、主走査方向とは垂直な上下方向に対する角度が上部領域程広がる曲線形状のスリット551cを備える。詳述すると、このスリット551cは、最下端で接線が上下方向に平行となるような曲線形状にされている。
【0108】
このように構成されたスリット551cによれば、キャリッジ41に浮き上がりが生じていない通常状態では、エンコーダセンサ553による光の送受位置が最下端周辺となるように、エンコーダセンサ553をキャリッジ41に固定すると、微小なキャリッジ41の浮き上がり程度では、パルス幅T0に大きな変化が生じない。
【0109】
一方、浮き上がり量y0が大きくなるほど、パルス幅T0の変化率ΔTも大きくなる。従って、このスリット551cの形状を採用すれば、振動には強く、用紙との接触によるキャリッジ41の浮き上がりについては高感度に検知可能な画像形成装置1を構成することができる。
【0110】
この他、エンコーダフェンス551には、図9(c)に示す形状のスリット551dを設けてもよい。
図9(c)は、スリット551dを備える第三変形例のエンコーダフェンス551の側面図である。図9(c)に示すように、第三変形例のエンコーダフェンス551は、その側面において、矩形状の孔で構成されるスリット構成体CSを主走査方向にずらしながら上方に複数個配列してなる、階段形状のスリット551dを備える。
【0111】
このスリット551dを備えるエンコーダフェンス551を用いれば、キャリッジ41の浮き上がり量y0に応じて、段階的に変化率ΔTが大きくなるため、変化率ΔTに基づき、キャリッジ41の浮き上がり量y0を、高精度に特定することができるといった効果が得られる。
[第二実施例]
続いて、第二実施例の画像形成装置2について説明する。但し、第二実施例の画像形成装置2は、キャリッジ41’に対して枠部材90が上下方向に移動可能に取り付けられ、枠部材90にエンコーダセンサ553が取り付けられた程度のものである。従って、以下では、第一実施例の画像形成装置1と同一構成部位については同一符号を付して説明を省略し、第二実施例の画像形成装置2に特徴的な構成を選択的に説明する。
【0112】
図10(a)に示すように、画像形成装置2においては、枠部材90が、キャリッジ41’に固定された螺子99に掛止されるようにして、キャリッジ41’に取り付けられている。図10(a)は、第二実施例の画像形成装置2におけるキャリッジ41’の周辺構成を示した図であり、図10(b)は、その上面図である。
【0113】
詳述すると、キャリッジ41’の左右側面には螺子99と螺合する螺子孔419が設けられている(図11参照)。一方、枠部材90は、上部構成体91と、上部構成体91の左右縁端から下方に延びる側部構成体92とが連結された構成にされ、側部構成体92の上記キャリッジ41’に設けられた螺子孔419に対応する位置には、上下方向に長尺な貫通孔92aが設けられている。
【0114】
そして、貫通孔92aは、図10及び図11に示すように、横幅が螺子99の径に対応する長さに設定され、上下の幅が螺子99の径よりも大きい長さに設定されている。
また、枠部材90の上部構成体91には、主走査方向に平行な溝部91aが設けられている。第二実施例では、この溝部91aに、エンコーダフェンス551が挿入される。具体的に、エンコーダフェンス551は、溝部91aの下端と接触しないように、所定の間隙を有した状態で溝部91aに納められる。
【0115】
また、上部構成体91の溝部91aに対応する位置には、溝部91aに挿入されたエンコーダフェンス551を挟むようにして、エンコーダセンサ553が埋め込まれている。
一方、キャリッジ41’は、第一実施例のキャリッジ41が備える溝部415周辺に対応する前方上部が窪んだ形状にされている。枠部材90は、このような形状のキャリッジ41’の上方から、キャリッジ41’の上面及び左右側面を包囲するように取り付けられ、この際、枠部材90に取り付けられたエンコーダセンサ553は、キャリッジ41’の上記窪んだ形状の領域に配置される。
【0116】
また、枠部材90が備える左右の貫通孔92aの夫々には、螺子99が挿通されており、螺子99は、キャリッジ41’の螺子孔419に螺合されている。この構成により、枠部材90は、キャリッジ41’に対して上方向に、貫通孔92aの上下方向の幅に相当する長さ分移動可能に取り付けられている。
【0117】
また、側部構成体92は、枠部材90がキャリッジ41’に取り付けられた際に、下端が記録ヘッドの下面(ノズル面)よりも下方に配置されるように、構成されている。
このように構成された画像形成装置2によれば、キャリッジ41’が主走査方向に移動する際に、側部構成体92が記録ヘッド31に先行して移動するので、ジャムの原因となる用紙の反りや折れが発生している場合、記録ヘッド31のノズル部分が用紙と接触する前に、まず用紙が側部構成体92に接触して、枠部材90が浮き上がり、枠部材90と連動して上方向にエンコーダセンサ553が変位することにより、エンコーダフェンス551に対してエンコーダセンサ553による光の送受位置が変化する。
【0118】
従って、この画像形成装置2では、第一実施例の画像形成装置1と同様にキャリッジ搬送エラー判定処理を実行すると、キャリッジ41’の進行方向に設けられた側部構成体92と用紙との接触により、記録ヘッド31のノズル部分が用紙に接触する前に、側部構成体92と用紙との接触を検知して、迅速にキャリッジ41’の搬送を停止することができる。
【0119】
よって、この画像形成装置2によれば、記録ヘッド31のノズル部分が用紙と接触して、記録ヘッド31が傷つくのを一層抑えることができる。また、本実施例によれば、キャリッジ41’及び記録ヘッド31に重量があって用紙との接触時にキャリッジ41’が浮き上がりにくい場合でも、枠部材90を軽量に構成することで、用紙との接触を早期に検知することができ、ジャムの発生プロセスの初期において迅速にキャリッジ41’の搬送を停止することができる。
【0120】
よって、本実施例によれば、記録ヘッド31にインクカートリッジを搭載するタイプの画像形成装置のような、記録ヘッド31に重量がある場合でも、ジャムの発生プロセスの初期において迅速にキャリッジ41’の搬送を停止することができる。尚、本実施例において、枠部材90は、具体的に、キャリッジ41’及び記録ヘッド31の重量の総計よりも軽量に構成されればよい。
【0121】
以上、本発明の実施例について説明したが、「特許請求の範囲」に記載の被搬送体は、第一実施例において、記録ヘッド31を搭載したキャリッジ41に対応し、第二実施例において、記録ヘッド31が搭載されると共に、付属体としての枠部材90が取り付けられたキャリッジ41’に対応する。また、リニアエンコーダは、フレーム43とフレーム44とによって支持される上下方向と直交する面を基準面としてのプラテン66に沿う用紙の搬送面とは垂直な面に沿ってエンコーダフェンス551が設けられたリニアエンコーダ55に対応する。
【0122】
この他、搬送手段は、キャリッジ搬送機構40及びCRモータ51及び駆動回路53及びCR搬送制御部102にて実現され、計測手段は、エンコーダ信号処理部103にて実現され、判定手段は、S110〜S175の処理により実現され、搬送禁止手段は、S180,S190の処理により実現され、異常報知手段は、S185,S197の処理により実現されている。また、シート搬送手段は、用紙搬送機構60及びLFモータ71及び駆動回路73及び用紙搬送制御部104等により実現され、異常時排出手段は、S193の処理により実現されている。
【0123】
また、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、上記実施例では、画像形成装置1,2に、本発明を適用した例を説明したが、本発明は、画像形成装置1,2以外の、リニアエンコーダを用いた種々の搬送装置に適用することができる。例えば、画像読取装置等の読取手段(ラインセンサ等)を被搬送体として本発明を適用し、読取手段の搬送時における基準面と直交する方向の変位を検出しても良い。
【0124】
この他、上記実施例では、キャリッジ41がフレーム43,44により支持される画像形成装置1,2の構成について説明したが、キャリッジ41は、例えば、キャリッジ41を貫通する一方のガイド軸によって支持されるように構成されてもよい。この場合には、キャリッジ41が用紙に接触すると、ガイド軸を中心にキャリッジ41が回転して傾き、このキャリッジ41の変位(回転に伴う変位)に連動して、エンコーダセンサ553が用紙の搬送面に対して垂直な上方向又は下方向に変位する。
【0125】
従って、この画像形成装置では、本発明の技術を利用して、エンコーダセンサ553が上方向又は下方向に変位したか否かを判定することで、用紙とキャリッジ41との接触を検知することが可能である。
【0126】
この他、上記実施例では、エンコーダフェンス551を、基準面に対して垂直な面に沿って設けたが、エンコーダフェンス551は、基準面とは交差する面に対して設ければ、十分である。基準面に対して垂直な面に沿って設けることで、キャリッジ41の変位がより確実に検出できるが、キャリッジ41の基準面に直交する方向の変位を検出できる程度に、交差していれば良い。また、用紙の搬送面と基準面とが一致していなくても良い。
【0127】
また、エラーメッセージの表示や、キャリッジ搬送の緊急停止は、必ずしも行う必要はなく、異常報知も、音や光などを装置本体から発生させることで行っても良い。
【符号の説明】
【0128】
1,2…画像形成装置、10…制御部、11…CPU、13…ROM、15…RAM、19…インタフェース、21…表示部、25…操作部、31…記録ヘッド、33,53,73,83…駆動回路、40…キャリッジ搬送機構、41…キャリッジ、411,413,415…溝部、419…螺子孔、43,44…フレーム、47…ベルト機構、471…無端ベルト、473,474…プーリー、49…キャップ機構、51…CRモータ、55,75,85…エンコーダ、60…用紙搬送機構、61…メインローラ、63…排紙ローラ、66…プラテン、68…給紙ローラ、69…給紙トレイ、71…LFモータ、81…PFモータ、90…枠部材、91…上部構成体、91a…溝部、92…側部構成体、92a…貫通孔、99…螺子、101…印字制御部、102…CR搬送制御部、103,105,107…エンコーダ信号処理部、104…用紙搬送制御部、106…給紙制御部、109…エラー判定部、551…エンコーダフェンス、551a,551b,551c,551d…スリット、553…エンコーダセンサ、553a…検知回路、CS…スリット構成体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送体と、
前記被搬送体を支持しながら、前記被搬送体を所定の搬送方向に案内するガイド体と、
前記被搬送体を、前記ガイド体に沿って前記搬送方向に搬送する搬送手段と、
前記被搬送体の変位に対応したエンコーダ信号を出力するリニアエンコーダと、
を備える搬送装置であって、
前記リニアエンコーダは、
前記ガイド体が前記被搬送体を支持する方向とは直交する基準面に対して交差する面である交差面上に設けられた前記搬送方向に長尺なエンコーダフェンスであって、前記交差面に沿う側面に、光を透過する透光部と光を遮断する遮光部とが前記搬送方向に交互に複数配列されたエンコーダフェンスと、
前記被搬送体に固定されたエンコーダセンサであって、前記エンコーダフェンスの前記透光部及び前記遮光部が形成された面を挟む位置関係で発光素子及び受光素子を備え、前記発光素子の出力光を受光する前記受光素子の受光状態に応じた矩形状のエンコーダ信号を出力するエンコーダセンサと、
を備え、
前記エンコーダフェンスは、互いに隣接する前記透光部と前記遮光部との境界線上における第1の地点と、前記エンコーダフェンスの側面に沿う方向であって前記搬送方向とは垂直な方向における位置が前記第1の地点とは異なる前記境界線上における第2の地点とが、前記搬送方向において異なる位置となるように、前記透光部及び前記遮光部が形成された構成にされ、
当該搬送装置は、更に、
前記リニアエンコーダから出力される前記エンコーダ信号のエッジ間の時間間隔を計測する計測手段と、
前記計測手段により計測された計測値の変動に基づき、前記被搬送体と連動する前記エンコーダセンサの前記基準面と垂直な方向への変位の有無を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記計測手段による最新の計測値が、前回の計測値に対して所定量以上変化している場合には、前記基準面と垂直な方向への変位が有ったと判定し、所定量以上変化していない場合には、前記基準面と垂直な方向への変位が無かったと判定する構成にされていることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記エンコーダフェンスは、当該エンコーダフェンスの側面において、前記境界線が前記搬送方向とは垂直な方向に対し所定角度傾いて延びる直線形状となるように、前記透光部及び前記遮光部が前記搬送方向に配列された構成にされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記エンコーダフェンスは、当該エンコーダフェンスの側面において、前記境界線が前記搬送方向とは垂直な方向に沿う直線形状の第1の領域と、前記搬送方向とは垂直な方向に対し所定角度傾いて延びる直線形状の第2の領域とで構成されるように、前記透光部及び前記遮光部が前記搬送方向に配列された構成にされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の搬送装置。
【請求項5】
前記エンコーダフェンスは、当該エンコーダフェンスの側面において、前記境界線が前記搬送方向とは垂直な方向に接線を採る地点を有する湾曲形状となるように、前記透光部及び前記遮光部が前記搬送方向に配列された構成にされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の搬送装置。
【請求項6】
前記判定手段により前記基準面と垂直な方向への変位が有ったと判定されると、前記搬送手段による前記被搬送体の搬送動作を禁止する搬送禁止手段
を備えることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記判定手段により前記基準面と垂直な方向への変位が有ったと判定されると、ユーザに向けて異常を報知する異常報知手段
を備えることを特徴とする請求項6に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記被搬送体は、対向配置されるシートに画像を形成する記録ヘッドを構成要素とするものであり、
前記搬送手段は、前記基準面に沿う所定の搬送方向に、前記被搬送体を搬送する構成にされたものであり、
当該搬送装置は、前記被搬送体を、前記搬送手段を通じて前記搬送方向に移動させながら、前記記録ヘッドに、前記シートに対する画像形成動作を実行させることにより、前記シートに、前記搬送方向に沿う一連の画像を形成する画像形成装置として構成されていること
を特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記シートを前記記録ヘッドによる画像形成位置に供給し、前記画像形成位置での画像形成が完了した前記シートを前記画像形成位置から排出するシート搬送手段と、
前記判定手段により前記基準面と垂直な方向への変位が有ったと判定されると、前記シート搬送手段に、前記画像形成位置に供給されているシートを排出させる異常時排出手段と、
を備えることを特徴とする請求項8記載の搬送装置。
【請求項10】
前記被搬送体は、前記ガイド体に支持される本体と、前記本体に対して前記基準面と垂直な方向に変位可能に設けられた前記本体よりも軽量な付属体と、を有し、
前記エンコーダセンサは、前記付属体に設けられていること
を特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項11】
前記被搬送体は、前記ガイド体に支持される本体と、前記本体に対して前記基準面と垂直な方向に変位可能に設けられた付属体と、を有し、
前記付属体は、前記被搬送体の搬送時に少なくとも一部領域が前記本体に対して先行するように、取り付けられ、
前記エンコーダセンサは、前記付属体に設けられていること
を特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項12】
前記被搬送体は、前記記録ヘッドと、前記記録ヘッドを搭載すると共に前記ガイド体に支持されるキャリッジと、前記キャリッジに対して前記基準面と垂直な方向に変位可能に設けられた付属体と、を構成要素とするものであり、
前記付属体は、前記被搬送体の搬送時に少なくとも一部領域が前記記録ヘッドに対して先行するように、取り付けられ、
前記エンコーダセンサは、前記付属体に設けられていること
を特徴とする請求項8又は請求項9記載の搬送装置。
【請求項1】
被搬送体と、
前記被搬送体を支持しながら、前記被搬送体を所定の搬送方向に案内するガイド体と、
前記被搬送体を、前記ガイド体に沿って前記搬送方向に搬送する搬送手段と、
前記被搬送体の変位に対応したエンコーダ信号を出力するリニアエンコーダと、
を備える搬送装置であって、
前記リニアエンコーダは、
前記ガイド体が前記被搬送体を支持する方向とは直交する基準面に対して交差する面である交差面上に設けられた前記搬送方向に長尺なエンコーダフェンスであって、前記交差面に沿う側面に、光を透過する透光部と光を遮断する遮光部とが前記搬送方向に交互に複数配列されたエンコーダフェンスと、
前記被搬送体に固定されたエンコーダセンサであって、前記エンコーダフェンスの前記透光部及び前記遮光部が形成された面を挟む位置関係で発光素子及び受光素子を備え、前記発光素子の出力光を受光する前記受光素子の受光状態に応じた矩形状のエンコーダ信号を出力するエンコーダセンサと、
を備え、
前記エンコーダフェンスは、互いに隣接する前記透光部と前記遮光部との境界線上における第1の地点と、前記エンコーダフェンスの側面に沿う方向であって前記搬送方向とは垂直な方向における位置が前記第1の地点とは異なる前記境界線上における第2の地点とが、前記搬送方向において異なる位置となるように、前記透光部及び前記遮光部が形成された構成にされ、
当該搬送装置は、更に、
前記リニアエンコーダから出力される前記エンコーダ信号のエッジ間の時間間隔を計測する計測手段と、
前記計測手段により計測された計測値の変動に基づき、前記被搬送体と連動する前記エンコーダセンサの前記基準面と垂直な方向への変位の有無を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記計測手段による最新の計測値が、前回の計測値に対して所定量以上変化している場合には、前記基準面と垂直な方向への変位が有ったと判定し、所定量以上変化していない場合には、前記基準面と垂直な方向への変位が無かったと判定する構成にされていることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記エンコーダフェンスは、当該エンコーダフェンスの側面において、前記境界線が前記搬送方向とは垂直な方向に対し所定角度傾いて延びる直線形状となるように、前記透光部及び前記遮光部が前記搬送方向に配列された構成にされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記エンコーダフェンスは、当該エンコーダフェンスの側面において、前記境界線が前記搬送方向とは垂直な方向に沿う直線形状の第1の領域と、前記搬送方向とは垂直な方向に対し所定角度傾いて延びる直線形状の第2の領域とで構成されるように、前記透光部及び前記遮光部が前記搬送方向に配列された構成にされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の搬送装置。
【請求項5】
前記エンコーダフェンスは、当該エンコーダフェンスの側面において、前記境界線が前記搬送方向とは垂直な方向に接線を採る地点を有する湾曲形状となるように、前記透光部及び前記遮光部が前記搬送方向に配列された構成にされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の搬送装置。
【請求項6】
前記判定手段により前記基準面と垂直な方向への変位が有ったと判定されると、前記搬送手段による前記被搬送体の搬送動作を禁止する搬送禁止手段
を備えることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記判定手段により前記基準面と垂直な方向への変位が有ったと判定されると、ユーザに向けて異常を報知する異常報知手段
を備えることを特徴とする請求項6に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記被搬送体は、対向配置されるシートに画像を形成する記録ヘッドを構成要素とするものであり、
前記搬送手段は、前記基準面に沿う所定の搬送方向に、前記被搬送体を搬送する構成にされたものであり、
当該搬送装置は、前記被搬送体を、前記搬送手段を通じて前記搬送方向に移動させながら、前記記録ヘッドに、前記シートに対する画像形成動作を実行させることにより、前記シートに、前記搬送方向に沿う一連の画像を形成する画像形成装置として構成されていること
を特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記シートを前記記録ヘッドによる画像形成位置に供給し、前記画像形成位置での画像形成が完了した前記シートを前記画像形成位置から排出するシート搬送手段と、
前記判定手段により前記基準面と垂直な方向への変位が有ったと判定されると、前記シート搬送手段に、前記画像形成位置に供給されているシートを排出させる異常時排出手段と、
を備えることを特徴とする請求項8記載の搬送装置。
【請求項10】
前記被搬送体は、前記ガイド体に支持される本体と、前記本体に対して前記基準面と垂直な方向に変位可能に設けられた前記本体よりも軽量な付属体と、を有し、
前記エンコーダセンサは、前記付属体に設けられていること
を特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項11】
前記被搬送体は、前記ガイド体に支持される本体と、前記本体に対して前記基準面と垂直な方向に変位可能に設けられた付属体と、を有し、
前記付属体は、前記被搬送体の搬送時に少なくとも一部領域が前記本体に対して先行するように、取り付けられ、
前記エンコーダセンサは、前記付属体に設けられていること
を特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項12】
前記被搬送体は、前記記録ヘッドと、前記記録ヘッドを搭載すると共に前記ガイド体に支持されるキャリッジと、前記キャリッジに対して前記基準面と垂直な方向に変位可能に設けられた付属体と、を構成要素とするものであり、
前記付属体は、前記被搬送体の搬送時に少なくとも一部領域が前記記録ヘッドに対して先行するように、取り付けられ、
前記エンコーダセンサは、前記付属体に設けられていること
を特徴とする請求項8又は請求項9記載の搬送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8】
【図10】
【図11】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8】
【図10】
【図11】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【公開番号】特開2011−73317(P2011−73317A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227850(P2009−227850)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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