説明

搬送装置

【課題】搬送装置の重量を軽減する。
【解決手段】本搬送装置1の前記カムリング20は、それぞれ複数のカム溝形成部分22と前記カム溝形成部分同士を連結する連結部分23とからなり、前記カム溝21はカムリング20の半径方向に対して傾斜して設けられ、前記カム溝形成部分22は前記カム溝21に合わせて半径方向に傾斜した形状であり、前記連結部分23は前記傾斜部よりも幅狭に形成されている。また、前記カムリング20をスタンド10に回転自在に保持する複数のカムリング保持部を、前記カムリングの前記連結部分23と前記支持体とのそれぞれの対向面に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばタイヤやタイヤ構成部材等の円形物体を搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばタイヤを成型する場合にタイヤなどの円形物体を搬送するための搬送装置として、カムリングを用いるカムリング方式及びリンクを用いるリンク方式のものが知られている。
カムリング方式としては、例えば、図5に示すトランスファーリングと称する発明が知られている(特許文献1参照)。このトランスファーリング100は、環状フレーム101と、環状フレーム101に配設された複数のセグメント102と、セグメント102を径方向に同時に拡縮させワークWを把持可能とする拡縮機構103と、拡縮機構103を介してセグメント102を拡縮駆動させるロック機構付主エアーシリンダ104とを備えている。環状フレーム101は回転プレート105、第1保持プレート106a及び第2保持プレート106bと、レール107を走行可能なベースプレート108と、第1保持プレート106a及び第2保持プレート106bを鉛直状に立てた状態でベースプレート108に固定する固定部材109と、を備えている。回転プレート105は、第2保持プレート106bに周方向に形成された凹周溝へ、スライド自在に嵌め込まれており、かつ、第1保持プレート106aの内周縁には、周方向所定ピッチで複数の支持ローラが配設され、支持ローラは回転プレート105の内周面を摺接又は転動する構成になっている。
【0003】
また、リンク方式としては、円環体の把持装置が知られている(特許文献2参照)。この把持装置は、図6に示すように、未加硫ゴムを含むグリーンタイヤGを半径方向外側から把持する把持装置111と、この把持装置111を床面上に敷設されたレールに沿って移動することができる基台112を有する。前記基台112には前記タイヤ成形ドラムと同軸でグリーンタイヤGの外径より内径が大径である直立したリング体113とカムリング114が設けられている。カムリング114は、シリンダ115によりリング体113に支持されながら中心軸回りに回転するよう構成されている。
この装置では、カムリング114が回転すると、カムフォロア119を介して揺動アーム116に揺動力が付与され、該揺動アーム116が支持ピン117を中心に半径方向に同期揺動する。揺動アーム116が同期揺動することにより、揺動アーム116の先端部に連結された把持手段118を円弧に沿って半径方向に同期移動させ、グリーンタイヤGを把持する。
【0004】
ここで、上記カムリング方式では、回転プレート105は、第2保持プレート106bの周方向に形成された凹周溝にスライド自在にはめ込まれており、そのため、この方式では、回転プレート105は第2保持プレート106bの内周にあわせるためにその形状には自由度がない。また、上記リング方式では、リング体113を基準にしてカムリング114がカムフォロワ119などを支持しつつ回転するため、カムリング114やカムフォロワ119などの滑動面に精度を要し、かつ、この方式でもカムリング114は必ずリング体113の内周に合わせるためその形状に自由度がない。したがって、従来の上記方式を採るかぎり軽量化は困難である。
また、上記回転プレート105(特許文献1)及びカムリング114(特許文献2)は、セグメント拡縮機能のためだけに設けられたものであって、これらを支持するスタンドの剛性に配慮したものではない。そのため、スタンドの重量も軽減することはできない。加えて、リンク方式では、部品点数が多いため、部品の製作及び組立に精度を要し、コストアップとなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−170982号公報
【特許文献2】特開2005−169575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、円形物体を搬送する搬送装置において、カムリングのカム動作に不要な部分を肉抜き(削除)することで搬送装置全体の重量を軽減し、かつカムリングを剛性部材の一部として利用することでスタンドの剛性を補足して従来のスタンドの重量をさらに軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、カムリングを介して複数の把持手段を半径方向に拡縮作動する拡縮機構と、前記拡縮機構を駆動する駆動機構と、前記カムリングを支持する支持体を有し、円形物体を把持手段で把持して搬送する搬送装置であって、前記拡縮機構は、駆動機構により回転駆動されるカムリングと、カムリングに形成されたそれぞれ複数のカム溝と、前記カム溝に係合するカム従動子と、前記カム従動子を備え前記支持体に案内されて摺動する前記把持手段を有する摺動体とからなり、前記カムリングは、それぞれ複数のカム溝形成部分と前記カム溝形成部分同士を連結する連結部分とからなり、前記カム溝はカムリングの半径方向に対して傾斜して設けられ、前記カム溝形成部分は前記カム溝に合わせて半径方向に傾斜した形状であり、前記連結部分は前記カム溝形成部分よりも幅狭に形成されていることを特徴とする搬送装置である。
請求項2の発明は、請求項1に記載された搬送装置において、前記カムリングを前記支持体に回転自在に保持する複数のカムリング保持部を、前記カムリングの前記連結部分と前記支持体とのそれぞれの対向面に有することを特徴とする搬送装置である。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載された搬送装置において、前記カムリング保持部は、前記支持体及びカムリングのいずれか一方に設けられた湾曲した案内条と、他方に設けた前記案内条に係合するガイド部材からなることを特徴とする搬送装置である。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載された搬送装置において、前記支持体は、前記カムリングを介在させて互いに連結された略円環状の第1及び第2のプレートからなり、かつ、前記第1及び第2のプレートは移動自在な基台部に取り付けられ、かつ、前記駆動機構はピストン・シリンダ機構であり、前記基台部には前記ピストン・シリンダ機構のシリンダ端が回動自在に取り付けられていることを特徴とする搬送装置である。
請求項5の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載された搬送装置において、前記カムリングは、円環体から肉抜きして形成されたものであることを特徴とする搬送装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カムリング方式の搬送装置において、カムリングのカム動作に不要な箇所を肉抜きしたことにより搬送装置全体の重量を軽減し、カムリングを剛性部材の一部として利用することで、剛性を確保した状態で支持体を薄肉化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る円形物体の搬送装置の正面図である。
【図2】図1に示す搬送装置の側面図である。
【図3】搬送装置の要部を拡大した正面図である。
【図4】Rガイドとガイド部材の断面図である。
【図5】従来の搬送装置を示す正面図である。
【図6】従来の他の搬送装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る円形物体(円形の外周を有する物体を総称していう)の搬送装置の正面図を示し、図2は、その側面図である。
搬送装置1は概略的には、従来のカムリング方式の搬送装置と同様であり、搬送装置1を直立状態に支持する支持体である環状のパネルから成るスタンド10と、このスタンド10に回転自在に結合されたカムリング20と、スタンド10内でタイヤなどの円形物体を把持するため、円周状に等間隔に配置されかつ半径方向に拡縮自在に配置された複数の把持部であるセグメントSと、セグメントSを拡縮作動する拡縮機構30と、拡縮機構30を駆動する例えば空気ピストン機構などの流体ピストンから成るピストン機構Nとを備えている。
【0011】
スタンド10は、図2に示すように、一定間隔で平行に配置され互いに連結されたいずれも円環状の第1の環状プレート11及び第2の環状プレート12とから成り、第1の環状プレート11及び第2の環状プレート12を鉛直状に立てた状態で、図示しない走行レールに摺動自在に載置された基台部13に固定されている。また、上記第1及び第2の環状プレート11、12間にはカムリング20が配置されており、このカムリング20は後述のように第1の環状プレートに摺動又は回転自在に結合されている。
【0012】
それぞれ円環状を成す第1の環状プレート11及び第2の環状プレート12、カムリング20は、それぞれの円環の中央空所(孔)に例えば未加硫タイヤなどの搬送物体を挿入して、円弧状の当接面を備えた複数のセグメントSで、搬送物体の外周面をその外周側全面から把持するようになっている。
【0013】
カムリング20は、その半径方向に対して傾斜したカム溝21がその中央部に形成されたプレート状の複数のカム溝形成部分22と、そのカム溝形成部分22同士を連結する連結部分23とからなり、カム溝形成部分22はカムリング20の半径方向に対して上記カム溝21に合わせて、つまり同じ角度で傾斜して形成されており、かつ、連結部分23はカム溝形成部分22よりも幅狭に、例えばカム溝形成部分22からカム溝21を除去した幅と等しいかそれより幾分狭い幅に形成することもできる。したがって、カムリング20の外周は図1に示すように正面視で環状の鋸歯状の形成になっている。
【0014】
カムリング20は、図1に示すように、その外周から外径方向へ突出する突片28が形成されており、かつ、この突片28の先端には、ピストン機構Nのピストンロッドの先端が回動自在に連結されている。なお、ピストン機構Nの基端部は、基台部13に回動自在に連結されている。
【0015】
さらに、カムリング20のカム溝21には、カムフォロワであるカムローラ25が係合している。このカムローラ25は、半径方向に摺動自在な例えばプレート状の摺動体26の適所に回転自在に取り付けられている。
摺動体26は、例えば、第1の環状プレート11に周方向に所定間隔で配置された、複数の径方向のガイド溝(図示せず)に、夫々スライド自在に係合されている。
【0016】
第1の環状プレート11のカムリング20の対向面に、即ちカムリング20の連結部分23に対向した位置には、図3に示すように、その位置におけるカムリング20の回転径と同径の湾曲した案内条であるRガイド、つまり断面略T字状のガイドレール14が一定間隔(本実施形態では90°間隔で4個)で取り付けられている。他方、カムリング20の上記ガイドレール14の対向面には、図4に拡大して示すように、上記ガイドレール14のレールの略T字状の断面に対応した断面形状の溝27aを有するガイド部材27が設けられている。このガイド部材27とガイドレール14はカムリング保持部を構成し、それぞれカムリング20と第1の環状プレート11の円環形状に沿って等間隔で複数(本実施形態では4個)配置されている。
本実施形態では、このようにスタンド10とカムリング20とが上記カムリング保持部を介して摺動又は回転自在に結合することにより、互いに面と面で補強し合い剛性を強化することができる。つまりスタンドの剛性をカムリングの剛性で強化又は補強することができる。
【0017】
ピストン機構Nは、図1に示すように基台部13にシリンダの一端が回動自在に取り付けられ、反対側のピストンロッドの先端は、カムリング20の外周に設けられた突片28の先端に枢着されている。ピストン機構Nは、図示しない例えば駆動源からの流体(例えばエア)の供給を受けて駆動され、図1において、カムリング20を一定範囲で時計方向と反時計方向に可逆回転させる。
【0018】
以上の構成において、ピストン機構Nが作動すると、そのピストンと一体に連結されたカムリング20は、そのガイド部材27がスタンド10のガイドレール14に案内されながら図1の位置から時計方向に摺動又は回転する。
カムリング20が時計方向に回転すると、そのカム溝21に係合したカムローラ25はカム溝21の外周側傾斜面で半径方向内周側に押し込まれる。したがって、カムローラ25、及びカムローラ25と一体の摺動体26は半径方向内方に押し込まれ、摺動体26の半径方向内端に取り付けられた円弧状の把持部であるセグメントSを同様に半径方向内方に移動する。これにより、セグメントSはタイヤ等の円形物体に当接して把持する。
逆に、ピストン機構Nのピストンをシリンダ内に引き込むと、セグメントSは半径方向外方に向かって移動し、把持したタイヤなど解放する。
【0019】
以上、説明したように、本実施形態によれば、カムリング20とスタンド10の第1の環状プレート11とが上記ガイドレール14とガイド部材27を介して互いに面と面で結合しているため、カムリング20と第1の環状プレート11とは一体となって剛構造を構成することができる。
つまり、本実施形態ではカムリング20を剛体として利用し、スタンド10の剛性を補完することができ、その分スタンド10の剛性を低減することができる。換言すれば全体の重量を軽減することができる。
【0020】
スタンド10を構成する第1、第2の環状プレート11、12は、図示しない例えばボルト等の連結具で連結され、第1、第2の環状プレート11、12によって、カムリング20がそれに摺動又は回転自在に結合されると共に、摺動体26が径方向にスライド自在に保持される。
このカムリング20のカム溝21、カム溝21に案内駆動されるカムローラ25、カムローラ25が枢着された摺動体26、摺動体26を案内する第1の環状プレート11のガイド部により拡縮機構30が構成されている。また、カムリンク保持部によりスタンド10とカムリング20との連結部が構成されている。
【0021】
本実施形態によれば、カムリング20は複数のカム溝形成部分22を連結部とカム溝形成部分22同士を連結する連結部分23からなり、従来の円環状のカムリング20に比して余分な部分を肉抜きつまり削除した形状であるため、材料が削除されており、したがって従来のカムリング20に比してその重量が軽減されている。また、これに加えて、カムリング20は、従来は下部で回転自在に支持しているだけのものであるためスタンドの剛性強化にはならないが、本実施形態では、スタンドとカムリングとは面同士で互いに摺動又は回転自在に結合させているため、カムリング20の剛性により、スタンドの剛性を強化することができる。
そのため、従来のスタンドよりも剛性を下げることができる。したがって、スタンドの構成材料を減らすことができ、その面からも装置全体を軽量化できる。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記カムリング保持部を構成する上記ガイドレール14とガイド部材27は、カムリング20にガイドレール14を設けスタンド10側にガイド部材27を設けてもよい。また、上記カムリング保持部は、上記のものに限らずカムリングの連結部とスタンド(支持体)の対向面に設けられて両者を回転又は摺動自在に連結するものであれば、他の構成のものでもよい。その場合、例えば、クロスベアリングなどの軸受手段を用いることもできる。
【符号の説明】
【0023】
1・・・搬送装置、10・・・スタンド、11,12・・・第1及び第2の環状プレート、13・・・基台部、14・・・ガイドレール、20・・・カムリング、21・・・カム溝、22・・・カム溝形成部分、23・・・連結部分、25・・・カムローラ、26・・・摺動体、27・・・ガイド部材、28・・・突片、30・・・拡縮機構、S・・・セグメント(把持部)、N・・・ピストン機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムリングを介して複数の把持手段を半径方向に拡縮作動する拡縮機構と、前記拡縮機構を駆動する駆動機構と、前記カムリングを支持する支持体を有し、円形物体を把持手段で把持して搬送する搬送装置であって、
前記拡縮機構は、駆動機構により回転駆動されるカムリングと、カムリングに形成されたそれぞれ複数のカム溝と、前記カム溝に係合するカム従動子と、前記カム従動子を備え前記支持体に案内されて摺動する前記把持手段を有する摺動体とからなり、
前記カムリングは、それぞれ複数のカム溝形成部分と前記カム溝形成部分同士を連結する連結部分とからなり、前記カム溝はカムリングの半径方向に対して傾斜して設けられ、前記カム溝形成部分は前記カム溝に合わせて半径方向に傾斜した形状であり、前記連結部分は前記カム溝形成部分よりも幅狭に形成されていることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載された搬送装置において、
前記カムリングを前記支持体に回転自在に保持する複数のカムリング保持部を、前記カムリングの前記連結部分と前記支持体とのそれぞれの対向面に有することを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された搬送装置において、
前記カムリング保持部は、前記支持体及びカムリングのいずれか一方に設けられた湾曲した案内条と、他方に設けた前記案内条に係合するガイド部材からなることを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載された搬送装置において、
前記支持体は、前記カムリングを介在させて互いに連結された略円環状の第1及び第2のプレートからなり、かつ、前記第1及び第2のプレートは移動自在な基台部に取り付けられ、かつ、前記駆動機構はピストン・シリンダ機構であり、前記基台部には前記ピストン・シリンダ機構のシリンダ端が回動自在に取り付けられていることを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載された搬送装置において、
前記カムリングは、円環体から肉抜きして形成されたものであることを特徴とする搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−35452(P2012−35452A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175680(P2010−175680)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】