説明

携帯ナビゲーション装置

【課題】比較的簡易な構成で、視覚に頼らずに目的地方向をユーザに提示することができる携帯ナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】筐体70の異なる位置に振動素子60a−60dが配置される。目的地方向Vnと端末方向Vdの角度差θに基づいて振動素子60a−60dの各々の振動強度を決定する。決定された振動強度で振動素子60a−60dをそれぞれ制御する。振動素子60a−60dの振動の融合した結果として得られる振動PS61の位置がユーザに感知される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが筐体を保持した状態でユーザの移動時(主として歩行時)のナビゲーションの支援を行う携帯ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の搭乗者に対しGPS(Global Positioning System)などを利用して目的地までの経路を提示し、目的地到着支援を行うカーナビゲーションシステムが普及している。
【0003】
一方、歩行者に対してのナビゲーションとしては、従来から地図を用いる方法が一般的である。これについて、近年、携帯電話が一般に普及し、携帯端末の画面に地図情報などを表示して歩行者を案内するナビゲーションシステムが実用化されている。
【0004】
このような携帯端末を用いた歩行者に対するナビゲーションシステムとして、特許文献1、2に目的地案内装置が提案されている。これらの目的地案内装置は、携帯電話端末のユーザが目的地へ移動する際に、ユーザの現在位置を基準とした目的地への進行方向を携帯電話端末の画面上に矢印等で表示するものである。
【0005】
ユーザは、目的地の方向を認識するためにこのような画面上での指示表示のみに頼る場合、歩行中に画面上の地図を絶えず注視しなければならない。その視覚依存性により、前方や周囲の確認がおろそかになり、ユーザの身体に危険が及ぶ可能性が懸念される。すなわち、画面上に表示された地図を凝視したまま歩行する(または車両を運転)ことによってユーザが交通事故に遭ったり、他の歩行者の迷惑になったりするおそれが生じる。
【0006】
このような問題に対して、触覚刺激を利用して方向案内を行う技術が提案されている。例えば、特許文献3には、携帯端末に内蔵されたバイブレータを、目的地方向と進行方向の差に応じて制御するシステムが提案されている。特許文献4には、ユーザの指、手、肘などを触覚刺激するアクチュエータを用いて目的地方向をユーザに提示する、電動車椅子に備えられる方向提示システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−083762号公報
【特許文献2】特開2005−241385号公報
【特許文献3】特開2002−168647号公報
【特許文献4】特開2008−180652号公報
【特許文献5】特開2001−025510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ユーザインタフェースとして触覚刺激を利用する従来技術においても次のような課題がある。
【0009】
すなわち、特許文献3の端末において方向を提示するために振動を利用する場合、端末(ひいてはユーザ)が目標物の方向を向いているか否かを、振動の有無によりユーザに知らしめるものに過ぎない。そのため、ユーザが目的地方向を向いている場合にはその確認ができるが、向いていない場合にはユーザ自身が端末の向きを変えながら目的地方向を能動的に探る必要があった。したがって、実際上、方向案内のユーザインタフェースは画面上の表示指示が主となり、振動は補助的なものとならざるを得ない。
【0010】
また、特許文献4のようなシステムでは、アクチュエータ自体の制御装置が大がかりになり、その装置のコストが大きくなる。
【0011】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、比較的簡易な構成で、視覚に頼らずに目的地方向をユーザに提示することができる携帯ナビゲーション装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施の形態は、人間の振動知覚特性のひとつである振動PS(ファントムセンセーション)を用いて、目的地方向の提示を行うものである。振動PSとは、皮膚上の複数点に振動刺激を与えると、人間はその中間点に一つの振動として融合して知覚するという現象であり、またそれぞれの振動強度の比を変化させることで振動が融合して感じる位置も変化するというものである。振動PSに関しては特許文献5のように電気刺激を用いて誘起させるシステムもみられる。
【0013】
本発明の一態様では、このような振動PSの現象を利用し、携帯端末の筐体の異なる位置に配置された少なくとも3個の振動素子によってユーザの掌内に誘起させた振動PSの位置を目的地方向に応じて移動させる。
【0014】
より具体的には、本発明の実施の形態による携帯ナビゲーション装置は、筐体と、現在位置を検出する位置検出部と、目的地を指定する入力を受ける入力部と、前記現在位置から目的地へ向かう目的地方向を検出する目的地方向検出部と、前記筐体の端末方向を検出する端末方向検出部と、前記筐体上または筐体内の異なる位置に配置された少なくとも3個の能動素子と前記目的地方向と前記端末方向の角度差を算出する角度差算出部と、前記角度差に基づいて前記少なくとも3個の能動素子の各々の知覚強度を決定し、前記少なくとも3個の能動素子を前記知覚強度で制御する能動素子制御部と、を備えた携帯ナビゲーション装置とを備えて構成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施の形態に係る携帯ナビゲーション装置によれば、ユーザが端末を保持していることにより、振動により目的地方向の提示を行うことができる。その結果、直感的でわかりやすくかつ視覚に依存しない、スムーズで安全なナビゲーションシステムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係る携帯端末の主要な機能を示すブロック図である。
【図2】図1に示した携帯端末のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【図3】携帯端末の向きと目的地方向の角度差θの関係を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態において、式(1)により表されたv1(θ)−v4(θ)を表すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態において、角度差θと各振動素子の振動強度比、および振動PSの位置の関係を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態における画面表示の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における携帯端末の概略の処理を示すフローチャートである。
【図8】図7に示した地図情報提示処理(S10)の具体的な処理例を示したフローチャートである。
【図9】図7に示したナビゲーション処理(S20)の具体的な処理例を示したフローチャートである。
【図10】図9に示した目的地方向ベクトル算出処理(S24)の具体的な処理例を示すフローチャートである。
【図11】図9に示した角度差算出処理(S25)の具体的な処理例を示すフローチャートである。
【図12】図9に示した振動出力処理(S26)の具体的な処理例を示すフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態におけるナビゲーションシステムの全体の動作例を示すシーケンス図である。
【図14】図12に示した振動出力処理(S263)の変形例としての振動出力処理(S263a)の処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態では、携帯ナビゲーション装置の一例として携帯端末を例として説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る携帯端末の主要な機能を示すブロック図である。以下、携帯端末は単に端末ともいう。
【0019】
携帯端末100は、処理部10、現在位置検出部20、端末方向検出部30、入力部35、地図データベース(DB)・目的地位置検出部40、表示部50および振動部60を備える。
【0020】
処理部10は、中央処理装置(CPU)を含み、携帯端末100全体の制御および必要な処理を実行する。例えば、ナビゲーション開始操作があった場合の携帯端末100の全体の制御を司る。処理部10は、具体的には、地図情報提示処理部11、目的地方向ベクトル算出部12、角度差算出部13、振動制御部14等の各機能ブロックを構成する。これらの各機能ブロックの働きについては後述する。
【0021】
現在位置検出部20は、携帯端末100の現在の位置、すなわち地球上のその位置の緯度および経度を検出する。現在位置検出部20としては、GPS受信部等の位置検出手段を利用することができる。但し、本発明の現在位置検出部はGPS受信部に限るものではない。
【0022】
端末方向検出部30は、携帯端末100の長手方向先端が向く方向としての端末方向Vdを検出する。具体的には、例えば地磁気センサのような方角検出手段を用いて、経線(または緯線)等の基準方向に対して端末の先端が向いている方向を端末方向Vdとして求めることができる。通常、ユーザは携帯端末100を利用する場合、表示画面を見るために、その筐体の長手方向が鉛直方向から若干傾いた状態で把持する。本発明における振動による方向案内時には必ずしも画面を見る必要がないので、ユーザは筐体を水平状態(もしくは水平に近い状態)で把持することも考えられる。いずれにせよ、そのような状態において地磁気センサにより端末方向Vdを認識することができる。端末方向Vdは水平面上にない場合、実際の端末方向を水平面上に投影して得られる方向としてもよい。その場合、端末の姿勢(鉛直方向に対する筐体の傾き)を検出するために加速度センサを用いてもよい。
【0023】
入力部35は、ユーザが携帯端末100に対して指示や情報を入力するための部位である。入力部35は、操作キー、タッチパネル等の任意の入力デバイスにより構成されうる。
【0024】
目的地位置検出部40は、地図データベースを利用して、ユーザによって選択された目的地の、地図上での位置(緯度および経度)を検出する。地図データベースは携帯端末内に格納されているものを利用する構成、および、外部に格納されているものを通信ネットワーク経由で利用する構成のいずれであってもよい。大容量の地図データを格納するための記憶スペース(メモリ容量)および地図データ更新の必要性等を考慮すると、後者の利用がより現実的と考えられる。
【0025】
表示部50は、液晶表示装置(LCD)等の、表示画面上にテキストやイメージ等の情報を表示する表示デバイスである。本実施の形態では、表示部50は、特に、目的地選択のための地図情報、および携帯端末100から見た目的地方向の表示を行う。
【0026】
振動部60は、振動を発生することにより、筐体を把持するユーザに対して触覚を介して情報を提供するデバイスである。本実施の形態では、振動部60として4個(少なくとも3個)の振動素子を、携帯端末の筐体の異なる位置(本実施の形態では筐体の4隅)に配置し、ユーザに対して、目的地の方向をそれらの振動素子の駆動により知らしめる。各振動素子の振動の周波数は、基本的には、共通の所定の周波数(例えば200Hz程度)である。本明細書における振動素子は、振動を発生する任意のデバイスである。特に限定しないが、例えば、振動モータ、圧電素子、リニアアクチュエータなどを含みうる。
【0027】
処理部10が担う各部の処理は次のとおりである。
【0028】
地図情報提示処理部11は、ユーザによって入力部35からナビゲーション開始操作が行われた場合、目的地位置を決定するために、地図DBから地図情報を取得し、表示画面上に表示することによりユーザに提示する。また、決定された目的地位置情報をメモリ(図1には図示せず)上に保存する。
【0029】
目的地方向ベクトル算出部12は、検出された現在位置を起点として目的地へ向かう目的地方向を検出する目的地方向検出部を構成する。具体的には、地図情報提示処理部11で保存された目的地位置情報と、現在位置検出部20からの現在位置情報を基に、携帯端末100の現在位置を起点とした、経線および緯線で定まる平面上での目的地方向ベクトルVnを求める。
【0030】
角度差算出部13は、目的地方向ベクトル算出部12で算出された目的地方向ベクトルVnの基準方向(例えば経線に沿った北方向)とのなす角度と、端末方向検出部30から得られた端末方向Vdの、基準方向とのなす角度の差(角度差θ)を求める。換言すれば、この角度差θは目的地方向ベクトルVnと端末方向Vdとのなす角度に他ならない。
【0031】
振動制御部14は、角度差算出部13から算出された角度差θを基に、端末の4隅に設置された振動素子の振動強度の比を算出する。また、その振動強度比に応じて各振動素子を駆動制御する。4個の振動素子の振動強度を変化させることにより、携帯端末を把持するユーザの掌に振動PSを誘起させる。振動強度比の具体例については後述する。
【0032】
図2は、図1に示した携帯端末100のハードウェア構成例を示すブロック図である。このような携帯端末の構成は、既存の携帯電話端末に応用することが可能である。
【0033】
処理部10は、中央処理装置(CPU)およびメモリ等により構成される。メモリには、CPUが実行するプログラムおよび各種データが格納される。メモリはまた、CPUの作業領域およびデータの一時保存領域として利用される。
【0034】
GPS受信部21は、現在位置検出部20の一例であり、複数の衛星からの電波(GPS衛星信号)を受信することにより、現在位置(緯度および経度)を検出する機能を有する。
【0035】
地磁気センサ31は、端末方向検出部30の一例であり、現在位置における地磁気の方位(例えば北方向)を検出し、これに基づいて端末が現在向いている方向を検出することができる。
【0036】
操作部36は、入力部35の一例であり、テンキーや制御キー、方向指示キー等の複数のキーにより構成される。操作部36に加えて、または代えて、表示画面に重なったタッチ入力エリアを有するタッチパネルを用いてもよい。
【0037】
通信部41は、インターネット等の外部の通信ネットワークと接続するための部位であり、携帯電話通信部の他、無線LANやBluetooth(登録商標)等の通信手段を利用することができる。図2の構成の場合、地図DB・目的地位置検出部40の地図DBは外部の通信ネットワーク上に存在し、目的地位置の検出は地図DBから得られた地図情報を利用し、操作部36および表示部50と協働して処理部10において行われる。
【0038】
振動素子60a−60dは、振動部60の一例であり、この例では4個の振動素子を含む。
【0039】
図示しないが、携帯端末100は、さらに、オーディオ信号を音や音声として出力するためのスピーカ、音や音声をオーディオ信号に変換するマイクロフォン、等、通常の携帯電話端末が有している構成要素を備えてもよい。
【0040】
図3に、ユーザにより把持された携帯端末100の向き(その先端の方向)と目的地方向の角度差θの関係を示す。この図において、振動部60を構成する4個の振動素子60a,60b,60c,60dは携帯端末のほぼ直方体形状の筐体70の4隅に配置している。図では筐体70から外部へ突出した形式で誇張して示している。実際には、このように外部へ突出する必要はない。
【0041】
目的地方向ベクトルVnは、GPS受信部21から得られた現在位置(緯度経度)を起点とした、地図データベースに基づいてユーザによって決定された目的地位置(緯度経度)の方向として求める。上述したように、角度差θは、目的地方向ベクトルVnと経線(北方向)のなす角度θ2と、地磁気センサによって得られた端末方向Vdと経線(北方向)のなす角度θ1との差である。
【0042】
図5により、角度差θと各振動素子の振動強度比、および振動PSの位置の関係を説明する。
【0043】
角度差θを用いて、各振動素子の振動強度Vl,V2,V3,V4は、例えば次式(1)によって求められる。
v1(θ)=(1/4)×{1+sinθsin(π/4)+cosθsin(π/4)}
v2(θ)=(1/4)×{1+sinθsin(π/4)-cosθsin(π/4)}
v3(θ)=(1/4)×{1-sinθsin(π/4)+cosθsin(π/4)}
v4(θ)=(1/4)×{1-sinθsin(π/4)-cosθsin(π/4)} (1)
【0044】
ここに、v1(θ)−v4(θ)は、それらの総和が1となるような相互の比率(振動強度比)の値を表している。実際には、v1(θ)−v4(θ)の各値に共通の係数を乗算して用いてもよい。
【0045】
なお、振動強度と人間が振動を知覚する強度とはリニアではなく、対数関係となることが知られている。そこで、v1(θ)=log(V1)となるようなV1を用いてもよい。v2(θ),v3(θ),v4(θ)についても同様である。
【0046】
図4に、式(1)により表されたv1(θ)−v4(θ)のグラフを示す。横軸は角度θ、縦軸はv1(θ)−v4(θ)の各々の大きさを示している。角度θは0度から360度までの範囲を示している。
【0047】
このように、それぞれv1(θ)−v4(θ)に基づく4個の振動素子60a−60dの制御により、図5に示すように、振動素子60a−60dによって誘起された振動PS61が得られる。すべての振動素子60a−60dの振動の融合した結果として得られる振動PS61の位置がユーザに感知される。すなわち、この振動PS61は、携帯端末を保持するユーザの掌において、4個の振動素子60a−60dのそれぞれの振動強度に依存した位置に、あたかも単一の振動素子のみが存在するように認識される。
【0048】
ユーザが端末を保持した状態で進行方向を変えたり、端末の向きを変えた場合、あるいは、進行の経過により目的地方向が変化した場合、角度差θも変化する。その結果、4個の振動素子60a−60dの振動強度の比率が変わり、ユーザの掌内の振動PSの位置が目的地方向を示す位置に移動する。これにより、ユーザは、視覚によらず触覚により目的地方向を認識することができる。
【0049】
このように振動PSにより目的地方向をユーザに提示するので、表示画面上の表示は必須ではないが、確認のために、例えば図6に示すような画面表示51を行ってもよい。この例は、画面のほぼ中心位置を基点として目的地方向Vnを示す矢印を表示したものである。端末方向Vdは端末の長手方向上方の方向である。画面表示51はこのような矢印の表示に限るものではない。
【0050】
なお、本発明では地図表示は必須ではないので、この時点ではそれを行っていない。但し、本発明は、確認のために矢印の背景に現在位置を中心とした地図を表示することを排除するものではない。
【0051】
図7−図12により、本実施の形態における携帯端末の動作を司る処理部10の実行する処理を説明する。
【0052】
本実施の形態における処理部10の処理は、図7に示すように、概略、地図情報提示処理S10と、ナビゲーション処理S20を含む。
【0053】
地図情報提示処理S10は、地図情報提示処理部11により実行される処理であり、ユーザによってナビゲーション開始操作があった場合、目的地位置を決定するために地図DBからユーザに地図情報を画面上に表示して提示する。また、ユーザにより決定された目的地位置情報を一時的にメモリに保存する。
【0054】
ナビゲーション処理S20は、目的地方向ベクトル算出部12、角度差算出部13および振動制御部14により実行される処理である。具体的には、地図情報提示処理S10で保存された目的地位置情報を基に振動出力処理を行うまでの一連の処理である。
【0055】
図8は、地図情報提示処理(S10)の具体的な処理例を示したフローチャートである。
【0056】
まず、操作部36からユーザによるナビゲーション開始操作を待機する(S11)。ついで、GPS受信部21によりGPS衛星信号を受信し、これに基づいて現在位置(の緯度経度)を検出する(S12)。
【0057】
ついで、地図DBから当該現在位置の周辺を中心とした地図情報を画面上に表示するための地図描画を行う(S13)。このように提示された地図に対してユーザによる操作部36による地図のエリアの更新、スクロール、スケール変更等を伴う目的地選択操作を受け付ける(S14)。この操作に基づき、処理部10は、必要に応じて、再度新たな地図情報を取得したり、地図描画をやり直したりする。
【0058】
目的地の選択操作が終了したら、その目的地位置情報をメモリに保存する(S15)。その後、図7の処理に戻り、次のステップS20へ進む。
【0059】
図9は、ナビゲーション処理(S20)の具体的な処理例を示したフローチャートである。
【0060】
まず、現在、GPS受信部21によるGPS衛星信号受信が可能な状態かどうかを判定する(S21)。受信不能であれば、所定のエラーメッセージを、画面表示または音声や音で出力して(S22)、再度GPS衛星信号受信を試みる。
【0061】
GPS衛星信号が受信されたら、それに基づいて現在位置情報を取得し、メモリに一時的に保存する(S23)。
【0062】
その後、目的地方向ベクトル算出処理(S24)、角度差算出処理(S25)、および振動出力処理(S26)を実行する。これらの処理の詳細については後述する。
【0063】
ついで、目的地方向を示す、上述した矢印等の画面表示51の表示を行うための画面描画を行う(S27)。この画像描画は、複数の区間(マルチセグメント)を含む経路に沿って、方向転換毎に指示を行う場合を含むものであってもよい。この場合、目的地方向ベクトルは、初期的には1つの中間地点(たとえば第1の転換点)を指示し、その後、ユーザが第1の転換点に達したら、異なる方向を指示するものに変わる。この形態は、特に、歩道のような、特定の予め定められた経路を辿らなければならない市街地を歩行している際に有用である。
【0064】
ナビゲーション終了を示す操作があるまで(S28)、ステップS21に戻り、上述した処理を繰り返して実行する。この繰り返しの周期により、振動PSの位置が更新されることになる。例えばステップS21,S23からS27までの処理の繰り返し周期を短く設定すれば、目的地方向の変化をほぼ連続的に提示することができる。
【0065】
図10は、目的地方向ベクトル算出処理(S24)の具体的な処理例を示すフローチャートである。この処理は目的地方向ベクトル算出部12により実現される。
【0066】
まず、メモリに保存されている現在位置および目的地位置の情報を参照する(S241)。ついで、上記ステップS23およびS15においてそれぞれ保存された現在位置および目的地位置を参照し、これらの位置に基づいて、目的地方向ベクトルVnを求める(S242)。
【0067】
図11は、角度差算出処理(S25)の具体的な処理例を示すフローチャートである。この処理は角度差算出部13により実現される。
【0068】
まず、地磁気センサ31の出力に基づいて、端末の方向を表す端末方向ベクトルVdが基準方向となす角度θ1を算出する(S251)。
【0069】
ついで、目的地方向ベクトルVnが基準方向となす角度θ2を算出する(S252)。さらに、両角度θ1とθ2の角度差θを算出する(S253)。
【0070】
図12は、振動出力処理(S26)の具体的な処理例を示すフローチャートである。この処理は振動制御部14により実現される。
【0071】
まず、ステップS253で算出された角度差θを参照する(S261)。ついで、この角度差θに基づいて、上記式(1)により4個の振動素子の振動強度比を算出する(S262)。そこで、この振動強度比に基づいて、4個の振動素子を駆動する(S263)。
【0072】
図13は、このナビゲーションシステムの全体の動作例を示すシーケンス図である。
【0073】
ユーザから、携帯端末に対して、ナビゲーション開始操作があったとき(S101)、携帯端末における地図情報提示処理が開始される。
【0074】
そこで、携帯端末はGPS衛星信号を受信し(S102)、現在位置検出部20に現在位置情報を参照する。
【0075】
ついで、地図情報提示処理により地図DBを用いて地図の描画が開始され(S103)、画面に地図が表示される。
【0076】
更にユーザによる目的地選択操作の完了に応じて(S104)、地図情報の表示が終了し、目的地位置情報が保存される(S106)。
【0077】
その後、ナビゲーション処理が開始される(S107)。
【0078】
ナビゲーション処理では、まず、現在位置検出部20により得られた現在位置情報を参照する(S108)。ついで、先に保存された保存された目的地位置情報を参照する(S109)。
【0079】
そこで、端末方向検出部30により地磁気センサの出力に基づいて、端末方向ベクトルVdを確認する(S110)。
【0080】
これらの処理の結果、目的地位置情報および現在位置情報に基づく目的地方向ベクトルVnと、端末方向ベクトルVdとを基に、4個の振動素子の振動強度比を算出し、それに応じて、振動出力処理によりそれらの振動素子を駆動する(S111)。
【0081】
これに伴い、携帯端末100の現在位置を基準とした目的地方向を、例えば上記矢印の画面描画により、視覚的に表示する(S1l2)。
【0082】
上述した説明では、振動部60の周波数は一定としたが、状況に応じて可変としてもよい。例えば、現在位置と目的地位置の距離に応じて、振動の特性を変化させるようにしてもよい。
【0083】
図14に、上記振動出力処理(S263)の変形例としての振動出力処理(S263a)の処理例を示す。この変形例では、目的地方向ベクトル算出部12が、現在位置と目的地位置との間の距離を算出する距離算出部を兼ねる。
【0084】
まず、現在位置から目的地位置までの距離を算出する(S31)。ついで、この距離に応じて振動部60(振動素子60a−60d)の振動の特性を決定する(S32)。
【0085】
この場合、距離は複数の範囲(例えば、近距離、中距離、遠距離)に分類し、どの範囲に属するかによって振動の特性を変えることができる。複数の範囲の数は少なくとも2個以上とする。振動の特性とは、振動の周波数、振動の断続周波数、断続パターンおよび振動の強度の少なくとも一つである。
【0086】
ステップS32で決定された振動の特性で、4個の振動素子を制御する(S33)。
【0087】
振動の周波数の変更例としては、例えば距離が近いほど周波数を低くするなどである。
【0088】
振動の断続周波数とは、振動時間と停止時間からなる周期の繰り返しの周波数である。すなわち、m秒(例えば0.5秒)振動した後、n秒(例えば0.5秒)停止という断続パターンを繰り返す場合、(m+n)秒が断続周波数である。距離に応じた振動の断続周波数の変更例としては、例えば目的地までの距離が近いほど断続周波数を低くする。
【0089】
断続パターンの変更とは上記振動期間と停止期間の長さの組み合わせの異なるパターンを切り替えて用いることを意味する。距離に応じた断続パターンの変更例としては、例えば距離が近いほど緊迫した感じをユーザに与えるパターンとする。
【0090】
振動の特性としての振動の強度は、上記4個の振動素子の振動強度比に共通に掛ける係数に相当する。本発明では振動強度比に係数を掛けたものを振動時間とし、振動時間と停止時間の割合で最終的な振動の強度を変化させている。但し、振動強度の変化方法はそれに限るものではない。距離に応じた振動の強度の変更例としては、例えば目的地までの距離が近いほど係数を大きくし、振動強度を増加させる。
【0091】
以上説明したように、本実施の形態によれば、端末方向が目的地方向に合致しているか否かの情報のみならず、端末方向と目的地方向が一致しない場合にも目的地方向を振動により認識することができる。また、本システムは連続的に目的地方向がユーザに提示することができる。
【0092】
本発明による振動による目的地方向の認識により、目的地方向を探ることによる周囲への注意の散漫が解消され、より安全な目的地到着支援が可能となる。代替可能な実施の形態として、知覚される感覚のレベルを制御できる発熱素子、収縮素子、電気的刺激素子のような知覚能動素子で、振動素子を置換または補足してもよい。この発熱素子は、電流に感応し、ユーザに特定の方向を指示できるように分散した形態で熱を発生するものである。例えば、ユーザは、2つの素子が他の2つの素子より実質的に多くの熱を発生していることを知覚することができる。それらの素子の知覚される熱量の比は、ユーザにとって、目的地方向ベクトルVnの方向に関する知覚的な手がかりとなる。他の例として、目的地方向ベクトルVnは、圧力制限変換器(pressure restrictive transducers)を備えた手袋、または他の装身具を装着したユーザに知覚されるものであってもよい。この場合の圧力制限変換器は、目的の案内方向に関する感覚的な手がかりとして、それぞれの指や手首等を締め付ける(squeeze)、またはチクチク刺激する(tingle)。例えば米国特許第5,067,478号(その全内容は、参照により本出願に取り込まれる)に記載されたような手袋を用いれば、本機能を支援するのに容易に採用することができる。
【0093】
また、特許文献4のようなアクチュエータ自体の制御装置が大がかりになったシステムと比較して、装置構造が単純な本システムはより手軽な使用が可能となる。
【0094】
目的地の決定後は地図表示を行わないようにすることにより、地図情報の取得および表示の処理に要する負荷および時間を削減することができる。
【0095】
上述した本発明の実施の形態では、
筐体と、
現在位置を検出する位置検出部と、
目的地を指定する入力を受ける入力部と、
前記現在位置から目的地へ向かう目的地方向を検出する目的地方向検出部と、
前記筐体の端末方向を検出する端末方向検出部と、
前記筐体上または筐体内の異なる位置に配置された少なくとも3個の能動素子と
前記目的地方向と前記端末方向の角度差を算出する角度差算出部と、
前記角度差に基づいて前記少なくとも3個の能動素子の各々の知覚強度を決定し、前記少なくとも3個の能動素子を前記知覚強度で制御する能動素子制御部と、
を備えた携帯ナビゲーション装置、について説明している。
【0096】
また、前記携帯ナビゲーション装置において、
前記少なくとも3個の能動素子は少なくとも3個の振動素子であり、
前記能動素子制御部は、前記少なくとも3個の振動素子のそれぞれの振動強度を決定して、前記振動強度に応じて前記少なくとも3個の振動素子を制御する振動制御部である携帯ナビゲーション装置、について説明している。
【0097】
さらに、この携帯ナビゲーション装置において、
現在位置と前記目的地の間の距離を算出する距離算出部を備え、
前記振動制御部は、前記算出された距離に基づいて前記少なくとも3個の振動素子の属性を変更する携帯ナビゲーション装置、について説明している。
【0098】
前記携帯ナビゲーション装置において、
前記目的地を入力するための地図を表示する表示部をさらに備えた携帯ナビゲーション装置、について説明している。
【0099】
前記表示部は目的地を表示する携帯ナビゲーション装置、について説明している。
【0100】
前記入力部は、複数の区間を含む経路の1区間に沿った初期中間点として前記目的地を設定する携帯ナビゲーション装置、について説明している。
【0101】
前記目的地方向検出部は、前記複数区間経路に沿った異なる方向変換において、方向変換毎に振動指示を提供して前記複数区間経路に沿って移動するよう前記目的地方向を変更する携帯ナビゲーション装置、について説明している。
【0102】
前記少なくとも3個の振動素子は、前記筐体が保持されているとき、前記すっく無くとも3個の振動素子のそれぞれの振動強度がユーザに対してファントムセンセーションを与えるよう、前記筐体周りに配置されている携帯ナビゲーション装置、について説明している。
【0103】
前記振動制御部は、前記ファントムセンセーションが前記目的地方向に合致させる携帯ナビゲーション装置、について説明している。
【0104】
前記筐体は携帯電話筐体である携帯ナビゲーション装置、について説明している。
【0105】
前記少なくとも3個の能動素子は、発熱素子、収縮素子、および電気的刺激素子のうちの少なくとも1つを有する携帯ナビゲーション装置、について説明している。
【0106】
前記角度差算出部は、
前記端末方向と基準方向の間の角度θ1と、
前記目的地方向と前記基準方向の間の角度θ2とを算出し、
角度θ1と角度θ2に基づいて、前記角度差を算出する
携帯ナビゲーション装置、について説明している。
【0107】
前記振動制御部は、前記それぞれの振動強度を決定することの一部として、前記少なくとも3個の振動素子のそれぞれの間の振動強度比を算出する携帯ナビゲーション装置、について説明している。
【0108】
前記少なくとも3個の振動素子は、基本的に4個の振動素子により構成される携帯ナビゲーション装置、について説明している。
【0109】
また、知覚検知ナビゲーション方法であって、
携帯ナビゲーション装置の現在位置を、前記携帯ナビゲーション装置の位置検出部で検出するステップと、
目的地を指定する入力を受けるステップと、
前記現在位置から前記目的地へ向かう目的地方向を検出するステップと、
前記目的地方向と前記端末方向の間の角度差を、プロセッサで算出するステップと、
能動素子制御部で、前記携帯ナビゲーション装置の筐体上または内部の異なる位置に配置された少なくとも3個の能動素子のそれぞれの知覚可能なセンセーション強度を決定するステップと、
前記決定された知覚可能なセンセーション強度に従って前記少なくとも3個の能動素子を駆動する
ナビゲーション方法、について説明している。
【0110】
前記ナビゲーション方法において、
前記少なくとも3個の能動素子は少なくとも3個の振動素子であり、
前記決定するステップは、前記少なくとも3個の振動素子のそれぞれの振動強度を決定することを含み、
前記駆動するステップは、前記それぞれの振動強度にしたがって前記少なくとも3個の振動素子を駆動することを含む
ナビゲーション方法、について説明している。
【0111】
このナビゲーション方法において、前記現在位置と前記目的地の間の距離を前記プロセッサで算出するステップと、
前記プロセッサにより算出された距離に基づいて前記少なくとも3個の振動素子の属性を変化させるステップと
をさらに備えたナビゲーション方法、について説明している。
【0112】
前記ナビゲーション方法において、さらに、
前記目的地を入力するために前記携帯ナビゲーション装置の表示部上に地図を表示するステップを備えるナビゲーション方法、について説明している。
【0113】
このナビゲーション方法において、
前記表示するステップは、前記目的地方向を表示することを含む
ナビゲーション方法、について説明している。
【0114】
前記ナビゲーション方法において、
複数の区間を含む経路の第1の区間に沿った初期中間点として前記目的地を設定することを含むナビゲーション方法、について説明している。
【0115】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形、変更を行うことが可能である。
【0116】
例えば、振動の周波数や強度、パターンが固定の場合であっても、ユーザがそれらを可変設定できるようにしてもよい。
【0117】
上記の説明では、4個の振動素子による4点の振動による振動PSの制御を行うものを示したが、振動強度比の計算アルゴリズム(計算式)を変更することにより、4点以外の個数の振動による振動PSの制御も可能である。3点の振動の場合、振動素子の個数が少ないことによる振動PSの制御の難しさ、機能面・デザイン面での効率的な振動素子の配置の難しさなどの制約がある。しかし、三角形状の頂点位置に振動素子を配置し、当該計算アルゴリズムを調節することにより、4点の振動を使用する場合と同様に二次元平面上の方向情報が提示可能である。この場合、若干精度や効率の面で劣るが、なお、本発明の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0118】
10…処理部、11…地図情報提示処理部、12…目的地方向ベクトル算出部、13…角度差算出部、14…振動制御部、20…現在位置検出部、21…GPS受信部、30…端末方向検出部、31…地磁気センサ、35…入力部、36…操作部、40…地図DB・目的地位置検出部、41…通信部、50…表示部、51…画面表示、60…振動部、60a,60b,60c,60d…振動素子、70…筐体、100…携帯端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
現在位置を検出する位置検出部と、
目的地を指定する入力を受ける入力部と、
前記現在位置から目的地へ向かう目的地方向を検出する目的地方向検出部と、
前記筐体の端末方向を検出する端末方向検出部と、
前記筐体上または筐体内の異なる位置に配置された少なくとも3個の能動素子と
前記目的地方向と前記端末方向の角度差を算出する角度差算出部と、
前記角度差に基づいて前記少なくとも3個の能動素子の各々の知覚強度を決定し、前記知覚強度で前記少なくとも3個の能動素子を制御する能動素子制御部と、
を備えた携帯ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−127940(P2012−127940A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232967(P2011−232967)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(501431073)ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社 (810)
【Fターム(参考)】