説明

携帯可能情報記録媒体及びそのプログラム

【課題】携帯可能情報記録媒体の内部で何かしらのトラブルが発生した場合に、その原因を特定しやすい携帯可能情報記録媒体及びそのプログラムを提供する。
【解決手段】ICカード(携帯可能情報記録媒体)10は、非接触通信部11a及び接触通信部11bを有する通信部11と、非接触通信部11a及び接触通信部11bを制御するCPU12と、CPU12が処理を行う作業領域などとして使用されるRAM13と、実行コードや各種パラメータなどが記憶されているROM14と、実行コードや固有情報などが記憶されているEEPROM15などとを備え、CPU12は、非接触通信部11aで主要な通信を行い、テストモードの場合に、非接触通信部11aから接触通信部11bに通信手段を切り替え、切り替えを行った接触通信部11bで内部処理情報としてのジャンプ先のアドレスの情報を接触用外部装置20bに通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の通信手段を備える携帯可能情報記録媒体及びこの携帯可能情報記録媒体のCPUに実行させる携帯可能情報記録媒体プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来のICカードとリーダライタとを示す図である。
ICカード10Aは、非接触式のICカードであり、外部装置としてのリーダライタ20Aから発生している磁界にカードかざすと、カード内のアンテに電流が生じ、ICチップが動作するようになっている(例えば、特許文献1)。
このICカード10Aは、非接触式の通信手段を備えるものであるが、その開発段階においては、開発機と実機との微妙な違い(実際の基材、プラスチックやアンテナなど)によって、しばしば通信不良が発生することがある。
しかし、一見、通信不良に見えても、実際には、ソフトウェアのバグ(プログラムの誤り)である可能性もあり、また、処理装置に負荷が集中したことによる電力不足である可能性もある。
したがって、開発中の製品は、「何が問題で通信ができないのか」を判断することが非常に困難であり、しばしばトライアンドエラーを繰り返すことになりかねない、という可能性があった。
【特許文献1】特開2002−133376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、携帯可能情報記録媒体の内部で何かしらのトラブルが発生した場合に、その原因を特定しやすい携帯可能情報記録媒体及びそのプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、第1及び第2の通信手段と、前記第1及び第2の通信手段を制御するCPUとを備える携帯可能情報記録媒体であって、前記CPUは、前記第1の通信手段で主要な通信を行い、所定の条件を満たした場合に、前記第1の通信手段から前記第2の通信手段に通信手段を切り替え、その第2の通信手段で内部処理情報を外部に通知すること、を特徴とする携帯可能情報記録媒体である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の携帯可能情報記録媒体において、前記第1の通信手段と前記第2の通信手段とは、同一の通信手段、異なる通信手段、同一の通信手段で異なる通信方式のうちのいずれかであること、を特徴とする携帯可能情報記録媒体である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の携帯可能情報記録媒体において、前記第1の通信手段は、非接触式の通信手段であり、前記第2の通信手段は、接触式の通信手段であること、を特徴とする携帯可能情報記録媒体である。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の携帯可能情報記録媒体において、前記CPUは、運用モード及びテストモードを実行可能であり、前記所定の条件は、前記テストモードの場合であること、を特徴とする携帯可能情報記録媒体である。
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の携帯可能情報記録媒体において、前記内部処理情報は、ジャンプ先のアドレスを含む情報であること、を特徴とする携帯可能情報記録媒体である。
請求項6の発明は、第1及び第2の通信手段と、前記第1及び第2の通信手段を制御するCPUとを備える携帯可能情報記録媒体のCPUに実行させる携帯可能情報記録媒体プログラムであって、前記第1の通信手段で主要な通信を行う主要通信手順と、前記主要通信手順で通信を行っている間に、所定の条件を満たすか否かを判断する条件判断手順と、前記条件判断手順が所定の条件を満たすと判断した場合に、前記第1の通信手段から前記第2の通信手段に通信手段を切り替える切替手順と、前記切替手順で切り替えを行った第2の通信手段で内部処理情報を外部に通知する通知手順と、を備える携帯可能情報記録媒体プログラムである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、携帯可能情報記録媒体の内部で動作不良が発生したり、第1の通信手段に通信不良が発生した場合であっても、第2の通信手段で内部処理情報を外部に通知するので、その原因を簡単に特定することができる。
また、第2の通信手段を、接触式の通信手段とすることで、通信が安定し、内部処理情報の通知を確実に行うことができる。
さらに、内部処理情報をジャンプ先のアドレスを含む情報とすることで、通知する情報に無駄がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、携帯可能情報記録媒体の内部で何かしらのトラブルが発生した場合に、その原因を特定しやすい携帯可能情報記録媒体及びそのプログラムを提供するという目的を、非接触式通信部で主要な通信を行い、接触式通信部で内部処理情報を外部に通知することにより実現する。
【実施例】
【0007】
以下、図面等を参照して、本発明の実施例について、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明による携帯可能情報記録媒体の実施例を示すブロック図である。
本実施例のICカード(携帯可能情報記録媒体)10は、通信部11と、CPU12と、RAM13と、ROM14と、EEPROM15などとを備える。
【0008】
通信部11は、CPU12及び各外部装置20a,20b間の通信を媒介する部分であり、非接触通信部(第1の通信手段)11aと、接触通信部(第2の通信手段)11bとを備え、非接触通信部11aと接触通信部11bとは、異なる通信手段である。
非接触通信部11aは、巻き線コイルなどのアンテナを備え、非接触式で非接触用外部装置20aと通信を行う部分であり、コマンドやデータなどといった主要な通信を行う。
接触通信部11bは、接触によって電気的導通を行う接触端子などを備え、接触式で接触用外部装置20bと通信を行う部分であり、デバッグ用の補助的な通信を行う。
【0009】
CPU12は、ICカード10や通信部11を統括制御する中央処理装置であって、四則演算や論理演算など算術的な処理を行なう演算装置を備え、通信部11を介して受信するコマンドに応じて、ROM14及びEEPROM15に記憶されている実行コード(プログラム)を実行する部分である。
また、CPU12は、内部フラグのON/OFFによって、運用時の動作を行う運用モードと、デバッグ時の動作を行うテストモードとを実行可能である。なお、セキュリティ性を確保するために、一旦、運用モードに設定したら、テストモードで動作できないようにしておくことが望ましい。プログラム上に新たな分岐を設けたり、後述するEEPROM15にテストモード用のプログラムを書き込んで、出荷時に消去したりすることで実現可能である。
【0010】
RAM13は、揮発性メモリであり、CPU12が処理を行う作業領域や、各外部装置20a,20bとデータをやり取りするための送受信用のバッファなどとして使用される。
ROM14は、不揮発性の読み出し専用のメモリであり、実行コードや各種パラメータなどが記憶されている。
【0011】
EEPROM15は、随時書き換え可能な不揮発性のメモリであり、実行コードや固有情報(カード固有の番号、会員番号)などが記憶されている。
【0012】
一方、非接触用外部装置20aは、ICカード10と非接触式で通信を行う装置であり、ICカード10に対して電源やクロックなどを供給し、コマンドやデータを送信する。
接触用外部装置20bは、ICカード10と接触式で通信を行う装置であり、ICカード10から内部処理情報を受信する(詳細は後述)。
【0013】
次に、図1を参照しながら、図2及び図3を用いて、ICカード10の動作を説明する。
図2及び図3は、本実施例によるICカードの動作を示すフローチャートである。
図2のステップ110(以下、「ステップ」を「S」という。)において、ICカード10は、起動待ちの状態である。
まず、非接触用外部装置20aから電力を受けて起動すると(S120)、CPU12は、通信方式が接触式か非接触式かを判断する(S130)。
接触式であると判断した場合には、接触式の処理を行う(S140)。この段階での接触式の処理は、用途に応じて様々な処理を設定することができるが、本実施例では、特に何もしない。
非接触式であると判断した場合には、データの受信待ちの状態となる(S150)。
【0014】
ついで、非接触通信部11aで主要な通信を行い(主要通信手順)、データを受信し、データの受信が完了すると(S160)、その受信したデータの処理を開始する(S170)。
ここで、CPU12は、運用モードかテストモードかの判断を行い(S180:条件判断手順)、運用モードであれば、S210に進む。
テストモード(所定の条件を満たした場合)であれば、非接触通信部11aから接触通信部11bに通信手段を切り替え(S190:切替手順)、「処理内容の通知」関数をコール(S200)する。
【0015】
図3に示すように、処理内容の通知関数では、受信したデータの処理を行いながら、その処理関数の実行コードがJMP(ジャンプ:リターン無しのジャンプ命令)又はJSR(ジャンプサブルーチン:リターン有りのジャンプ命令)であるか否かを判断する(S201)。
実行コードがJMP又はJSRであると判断した場合には、切り替えを行った接触通信部11bで、内部処理情報としてのジャンプ先のアドレスを接触用外部装置20bに通知する(S202:通知手順)。なお、接触用外部装置20bでは、受信したアドレスの情報を表示装置などに表示させると、デバッグ作業を行いやすい。
【0016】
そして、図2のS200に戻り、受信データの処理が完了するまで、S170からS200までの処理を繰り返す(S210)。
処理が完了したら、通信手段を非接触式の通信に切り替え(S220)、応答データを非接触用外部装置20aに送信し(S230)、再び受信待ちの状態となる(S150)。
【0017】
このように、本実施例のICカード10によれば、接触式のインターフェースを経由して、非接触通信中の動作に関する情報を外部に通知するので、ICカード10の開発段階における動作不良時の解析負荷を軽減することができる。
また、どのような処理を行っているかを、ジャンプ先アドレスを利用して外部に通知することにより、「ICカードの停止がソフトウェアのバグによるものなのか、通信障害によるものなのか、電力不足によるものなのか」を判断する材料を即座に入手することができる。
【0018】
さらに、内部処理情報の通知は、接触式の接触通信部11bで行っているので、通信が安定し、その通知を確実に行うことができる。
さらにまた、内部処理情報は、ジャンプ先のアドレスであるので、デバッグを行う者にとっては必要十分な情報であり、情報に無駄がない。
【0019】
一方、テストモードの場合に限り、内部処理情報の通知を行うので、ICカード10を出荷した後には、テストモードは実行されず、内部の動作が外部に漏れることはなく、セキュリティ性を保つことができる。
また、接触式と非接触式との通信手段を備えるデュアルインタフェースカードに好適である。
【0020】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)上述した実施例では、非接触式で主要な通信を行い、接触式で内部処理情報を通知する例で説明したが、これとは逆に、接触式で主要な通信を行い、非接触式で内部処理情報を通知するようにしてもよい。
【0021】
(2)第1の通信手段と第2の通信手段とは、異なる通信手段の例で説明したが、同一の通信手段や、同一の通信手段で異なる通信方式などとしてもよい。
同一の通信手段の場合は、2つの接触式の通信手段(例えば、2つの接触端子)を用いて実現可能であり、同一の通信手段で異なる通信方式の場合は、1つの非接触式の通信手段(例えば、1つのアンテナ)を用い、異なるプロトコルで通信を行うようにすれば実現可能である。
なお、同一の通信手段の場合は、上述した実施例のように、非接触式か接触式かの判断を行うのではなく、いずれの通信手段(方式)を使用しているかの判断を行い、それとは異なる通信手段で内部処理情報を通知するようにする。
【0022】
(3)上述した実施例では、本発明をICカードに適用した例を述べたが、本発明の適用は、ICカードに限定されるものではなく、CPUを内蔵した携帯可能情報記録媒体に広く及ぶものであり、また、セキュア媒体であれば、本発明の構成は有効である。例えば、ICカード機能付き携帯電話であれば、ICチップのアンテナなどを第1の通信手段とし、携帯電話に接続する接触端子を第2の通信手段とする。このようにすれば、携帯電話側に内部処理情報を通知することができ、携帯電話のディスプレイにその情報を表示させることもできる。
(4)EEPROM15は、フラッシュメモリやFeRAM(FRAM:ラムトロン・インターナショナル・コーポレーションの登録商標)などの他の不揮発性メモリであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による携帯可能情報記録媒体の実施例を示すブロック図である。
【図2】本実施例によるICカードの動作を示すフローチャートである。
【図3】本実施例によるICカードの動作を示すフローチャートである。
【図4】従来のICカードとリーダライタとを示す図である。
【符号の説明】
【0024】
10 ICカード(携帯可能情報記録媒体)
11 通信部
11a 非接触通信部(第1の通信手段)
11b 接触通信部(第2の通信手段)
12 CPU
13 RAM
14 ROM
15 EEPROM
20a 非接触用外部装置
20b 接触用外部装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の通信手段と、
前記第1及び第2の通信手段を制御するCPUとを備える携帯可能情報記録媒体であって、
前記CPUは、前記第1の通信手段で主要な通信を行い、所定の条件を満たした場合に、前記第1の通信手段から前記第2の通信手段に通信手段を切り替え、その第2の通信手段で内部処理情報を外部に通知すること、
を特徴とする携帯可能情報記録媒体。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯可能情報記録媒体において、
前記第1の通信手段と前記第2の通信手段とは、同一の通信手段、異なる通信手段、同一の通信手段で異なる通信方式のうちのいずれかであること、
を特徴とする携帯可能情報記録媒体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の携帯可能情報記録媒体において、
前記第1の通信手段は、非接触式の通信手段であり、
前記第2の通信手段は、接触式の通信手段であること、
を特徴とする携帯可能情報記録媒体。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の携帯可能情報記録媒体において、
前記CPUは、運用モード及びテストモードを実行可能であり、
前記所定の条件は、前記テストモードの場合であること、
を特徴とする携帯可能情報記録媒体。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の携帯可能情報記録媒体において、
前記内部処理情報は、ジャンプ先のアドレスを含む情報であること、
を特徴とする携帯可能情報記録媒体。
【請求項6】
第1及び第2の通信手段と、
前記第1及び第2の通信手段を制御するCPUとを備える携帯可能情報記録媒体のCPUに実行させる携帯可能情報記録媒体プログラムであって、
前記第1の通信手段で主要な通信を行う主要通信手順と、
前記主要通信手順で通信を行っている間に、所定の条件を満たすか否かを判断する条件判断手順と、
前記条件判断手順が所定の条件を満たすと判断した場合に、前記第1の通信手段から前記第2の通信手段に通信手段を切り替える切替手順と、
前記切替手順で切り替えを行った第2の通信手段で内部処理情報を外部に通知する通知手順と、
を備える携帯可能情報記録媒体プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−11419(P2007−11419A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−187550(P2005−187550)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】