説明

携帯情報通信端末

【課題】 複数用意されているアンテナを選択することはできるが、それらが必ずしも最適な位置であるわけではなかった。
【解決手段】 筺体10の外周に枠状に形成した溝構造12A,12B内に回転不能かつスライド可能なアンテナエレメント13A,13Bを収容するとともに、モータ15A,15Bにて回転駆動される回転軸16A,16Bにて同アンテナエレメント13A,13Bを貫通させ、螺旋形状を利用して回転運動をスライド運動に変換させることができるようにし、かつ、送受信回路11の受信感度や配向センサ18の検出結果によってアンテナ位置制御回路17がモータ15A,15Bの回転を制御し、アンテナエレメント13A,13Bを所定の最適位置に配置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筺体内にアンテナエレメントを収容する携帯情報通信端末に関し、特に、送受信機、すなわち送信機と受信機とが1つの構造ユニットを形成し、かつ少なくとも一部分は送信および受信機能のために用いられる携帯情報通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナエレメントを筺体内に収容する技術として以下のものが知られている。
特許文献1には、携帯型情報端末の画面の向きによって、手で覆われない位置にアンテナを配置し、画面の向きの変更に応じてアンテナを選択する技術が開示されている。
特許文献2には、無線通信機器の使用される向きや構成に基づいて無線通信機器の使用モードを判定し、4つのコーナーに配置された複数のアンテナのサブセットの中から、使用モードに対応する無線通信に対して、ユーザから最も遠位な縁にあるアンテナのサブセットである、横のアレイあるいは縦のアレイを選択する技術が開示されている。
【0003】
例えば、ハンド機器(202)が左手操作用の横位置で使用される場合、アンテナ(156,168)がユーザの手で覆われ、その際、ユーザから最も遠位な位置にあるアンテナ(152,154)が選択される。
特許文献3には、ユーザが携帯電話を把持したとき、左手持ち、右手持ちによってアンテナ特性の良い方の給電部3を選択する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−303856号公報
【特許文献2】特開2009−112024号公報
【特許文献3】特開2009−5142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数用意されているアンテナを選択することはできるが、それらが必ずしも最適な位置であるわけではなかった。
一方、携帯電話(特にワンセグなど)によく用いられるのがロッドアンテナで、向きの影響などを受ける。この場合、ロッドアンテナを引き出し、角度を調整可能とすることでアンテナ特性の劣化を補っている。
しかし、ロッドアンテナを引き出したままでは携帯できないし、また、ユーザーが手動で調整する必要があるため、安定した特性を得る位置の調整は困難だった。
【0006】
本発明は、携帯情報通信端末において、コンテンツにより縦や横に使用するユーザーの持ち手位置の変化によって、アンテナ特性が損なわれない携帯情報通信端末を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、筐体内にアンテナユニットと送受信部とを収容する携帯情報通信端末であって、上記筐体内にて周縁部に沿って枠状に形成される溝構造と、上記溝構造に沿って摺動移動可能なアンテナエレメントと、同アンテナエレメントと上記送受信部とを結線する結線構造と、回転動力を供給するモータと、螺旋形状を利用して回転運動をスライド運動に変換可能であり、回転軸と移動体を有し、同回転軸を上記モータに連結するとともに、同移動体を上記アンテナエレメントと連結して構成されるアンテナ駆動構造と、上記アンテナ駆動構造の駆動を制御して上記アンテナエレメントを所定位置に配置させるアンテナ位置制御手段とを具備する構成としてある。
【0008】
上記構成において、上記筐体内の周縁部に沿って溝構造が枠状に形成されており、この溝構造に沿ってアンテナエレメントが摺動移動可能とされている。ここで、アンテナ駆動構造は、螺旋形状を利用して回転運動をスライド運動に変換可能であり、回転軸と移動体を有し、回転動力を供給するモータに同回転軸を連結するとともに、同移動体を上記アンテナエレメントと連結している。従って、モータにて回転軸に回転駆動力を与えると、回転運動は螺旋形状を利用してスライド運動に変換され、スライド移動する移動体が上記アンテナエレメントを溝構造にそって摺動移動させる。
【0009】
このように移動可能なアンテナエレメントは結線構造にて上記送受信部と結線されており、アンテナ位置制御手段が上記アンテナ駆動構造の駆動を制御して上記アンテナエレメントを所定位置に配置させることで、上記送受信部は最適位置の同アンテナエレメントを介して良好な送受信を行うことが可能となる。
【0010】
また、上記回転軸は螺旋形のバネ状のガイドであり、上記アンテナエレメントは同バネ状のガイドにて貫通されつつ同ガイドに係止し、かつ、上記溝構造にて回転不能かつスライド可能に保持されるように構成しても良い。
上記アンテナエレメントが上記溝構造にて回転不能かつスライド可能に保持される状態で、回転軸である螺旋形のバネ状のガイドにて貫通されつつ同ガイドに係止しているので、上記回転軸が上記モータで回転駆動されると、回転不能のアンテナエレメントは螺旋形状に沿って軸方向にスライド移動する。また、回転軸がバネ状であることにより、溝構造が湾曲していても回転可能である。
【0011】
さらに、上記アンテナエレメントは一対備えられ、それぞれ上記筐体の縦辺と横辺における対称位置に上記アンテナ駆動構造にて配置されるように構成しても良い。
上記アンテナ駆動構造により、一対のアンテナエレメントのそれぞれが上記筐体の縦辺と横辺における対称位置に配置されると、横持ちの場合には縦辺の範囲で最適位置に配置し、縦持ちの場合は横辺の範囲で最適位置に配置できる。
さらに、上記アンテナ駆動構造は、一対備えられ、それぞれによって二つの上記アンテナエレメントを駆動するように構成しても良い。
二つの上記アンテナエレメントを対称位置に配置するため、一対のアンテナ駆動構造により駆動する。
【0012】
また、上記アンテナ駆動構造は、一つの回転軸に対して二つの上記アンテナエレメントを駆動するように構成しても良い。
二つの上記アンテナエレメントが対称位置にあればよいとのことであれば、互いに一定の間隔にあれば良いので、一つの回転軸で二つの上記アンテナエレメントを駆動することで実現できる。
【0013】
さらに、上記アンテナ位置制御手段は、上記送受信部における上記アンテナエレメントでの受信感度を検出し、感度向上位置で止めるように上記アンテナ駆動構造を制御するようにしてもよい。
上記送受信部における上記アンテナエレメントでの受信感度を検出できれば、感度向上位置で止めることができる。
また、上記モータは回転位置制御不能なものであり、上記上記アンテナ位置制御手段は上記送受信部における上記アンテナエレメントの受信感度を検出し、受信感度が所定のしきい値を超える最適位置で上記アンテナエレメントを停止させる。
モータには回転位置制御可能なものと不能なものがあるが、前者が複雑かつ高価であるのはいうまでもない。しかし、上記モータを回転させて上記アンテナエレメントを移動させながら、その受信感度を検出し、受信感度が所定のしきい値を超える位置となれば最適位置と想定でき、当該位置で上記アンテナエレメントを停止させればよい。すなわち、モータは回転位置制御不能であってもアンテナ位置を最適位置に配置できる。
また、上記モータを回転させて上記アンテナエレメントを移動させながら、その受信感度の変動を検出し、変動がプラスからマイナスとなればその位置が最高の感度と想定でき、当該位置で上記アンテナエレメントを停止させてもよい。
【0014】
その他、上記アンテナ位置制御手段は、上記筺体の配向方向を検出可能であり、予め決められた配向方向に対応した位置に上記アンテナエレメントを配置するようにしてもよい。
筺体の配向方向によって持ち手による送受信感度が低下するおおよその位置が分かる。したがって、配向方向に応じてかかる位置を外した位置に上記アンテナエレメントを配置すれば、送受信感度の低下を未然に防ぐことができる。
【0015】
その他、筐体内にアンテナユニットと送受信部とを収容する携帯情報通信端末であって、上記筐体内にて周縁部に沿って枠状に形成される溝構造と、上記溝構造に沿って摺動移動可能なアンテナエレメントと、同アンテナエレメントと送受信部とを結線する結線構造と、回転動力を供給するモータと、螺旋形状を利用して回転運動をスライド運動に変換可能であり、回転軸と移動体を有し、同回転軸と上記モータに連結するとともに、同移動体を上記アンテナエレメントと連結して構成されるアンテナ駆動構造と、上記アンテナ駆動構造の駆動を制御して上記アンテナエレメントを所定位置に配置させるアンテナ位置制御手段とを具備し、上記回転軸は螺旋形のバネ状のガイドであり、上記アンテナエレメントは同バネ状のガイドにて貫通されつつ同ガイドに係止し、かつ、上記溝構造にて回転不能かつスライド可能に保持され、上記アンテナ駆動構造と上記アンテナエレメントは一対備えられ、同上記アンテナエレメントはそれぞれ上記筐体の縦辺と横辺における対称位置に上記アンテナ駆動構造にて配置され、上記アンテナ位置制御手段は、上記筺体の配向方向を検出可能であり、予め決められた配向方向に対応した位置に上記アンテナを配置させるように構成しても良い。
【発明の効果】
【0016】
携帯情報端末をユーザーが縦、横どのような持ち方でも広帯域で良好なアンテナ特性が得られる。また、筺体内部をアンテナが稼働するためアンテナの突出が無く、携帯性が損なわれないスマートな携帯情報通信端末を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】携帯情報通信端末の概略ブロック図である。
【図2】アンテナ駆動構造の一部破断斜視図である。
【図3】アンテナ駆動構造の曲がり角の平面図である。
【図4】横持ちの場合のアンテナエレメントの配置を示す図である。
【図5】縦持ちの場合のアンテナエレメントの配置を示す図である。
【図6】受信感度とアンテナエレメントの位置を示す図である。
【図7】受信感度に応じてモータを制御する制御回路図である。
【図8】変形例に係る携帯情報通信端末の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面にもとづいて本発明の実施形態を説明する。
図1は、携帯情報通信端末の概略ブロック図である。
本携帯情報通信端末は、以下に説明する通信機能を有しており、図示しない情報表示パネルや操作パネルを利用して情報処理等が可能となっている。例えば、バックライト液晶パネル上に透明のタッチパネルを配設し、同バックライト液晶パネルに所定の情報を表示し、タッチパネルによる操作を受け付け、同操作に対応した情報処理を行って結果をバックライト液晶パネルに表示する。この際、必要に応じて無線LANやWANなどに接続して情報通信を行う。
【0019】
携帯情報端末は筺体10を有し、内部に各種の情報処理部品および送受信回路11などを収容している。送受信回路11は無線LANユニットなどであり、無線送受信を行うためのアンテナユニットが必要となる。なお、送受信回路11は送受信部に相当する。
【0020】
図2は、アンテナ駆動構造の一部破断斜視図である。
本筐体10は、当該筐体内における周縁部に沿って枠状に形成される溝構造12(12A,12B)を有している。溝構造12(12A,12B)は、第一アンテナユニット用の溝構造12Aと、第二アンテナユニット用の溝構造12Bとに対応して、二系統に分かれて形成されている。筐体10は、一対の長辺(縦辺)と短辺(横辺)とを有しているが、二系統は、それぞれ一つの縦辺と横辺とを結ぶ略L字型となっている。この二つのL字型の溝が筐体10の中心点で点対称となるように対面して、略枠状の溝を形成している。
【0021】
溝構造12A,12B内には当該溝構造12A,12Bに沿って摺動移動可能なアンテナエレメント13A,13Bが収容されている。溝構造12A,12B自体は三面の壁面を有する断面略コの字型となっており、アンテナエレメント13A,13Bはこのコの字型の凹部に挿入可能で、かつ、摺動可能な程度に隙間を有する断面形状となっている。また、弾性体からなり、図3に示すような溝構造12A,12Bの湾曲部分においては、湾曲形状に沿って変形し、摺動しつつ当該湾曲部分を通過できる。また、当該アンテナエレメント13A,13Bは周囲にアンテナとしての導電巻線構造を有しており、一部は外周面に露出している。
【0022】
また、溝構造12A,12Bの内壁面の一壁面には長さ方向の全面にわたって配設された電極14A,14Bが備えられており、この電極14A,14Bは、アンテナエレメント13A,13Bにおける外周面に露出した導電巻線構造に電気的に導通可能に接触する。一方、電極14A,14Bは一部において上記送受信回路11に接続されている。従って、電極14A,14Bと溝構造12A,12Bにて送受信回路11とアンテナエレメント13A,13Bとを電気的に接続しており、結線構造を構成している。
【0023】
溝構造12A,12Bの端部にはそれぞれ回転動力を供給するモータ15A,15Bが配設されている。ここで、モータ15A,15Bには、螺旋形状の回転軸16A,16Bが連結されている。回転軸16A,16Bは、図2に示すように、軸芯16A1,16B1と、これに貫通されるようにして配置されるバネ部材16A2,16B2とから形成されている。これらは端部において一体に固定されているものの、中間部分では固定されていない。これにより柔軟性を備えつつ、螺旋形状による駆動性を兼ね備えた構造となっている。なお、回転軸16A,16B(軸芯16A1,16B1と、バネ部材16A2,16B2)は、螺旋形のバネ状のガイドに相当する。
【0024】
軸芯16A1,16B1とバネ部材16A2,16B2は、上記アンテナエレメント13A,13Bを貫通している。上記アンテナエレメント13A,13Bは、軸芯16A1,16B1については単に貫通されるだけであるが、バネ部材16A2,16B2については当該アンテナエレメント13A,13B内で螺旋形状が螺合する形状、すなわちボルトとナットのように係止する形状となっている。上述したように、上記アンテナエレメント13A,13Bは溝構造12A,12B内で回転不能かつ摺動してスライド可能に収容されているため、モータ15A,15Bによって回転軸16A,16B(軸芯16A1,16B1と、バネ部材16A2,16B2)が回転させられると、バネ部材16A2,16B2に螺合しているアンテナエレメント13A,13Bは溝構造12A,12Bにそってスライド運動する。従って、これらにより、螺旋形状を利用して回転運動をスライド運動に変換可能となっており、アンテナ駆動構造を構成している。なお、本実施形態においては、導電巻線構造を備えたアンテナエレメント13A,13Bが移動体と本来のアンテナエレメントを兼ねている。
【0025】
モータ15A,15Bは、アンテナ位置制御回路17に接続され、回転駆動を制御されている。モータ15A,15Bの回転駆動制御は、上記アンテナ駆動構造の駆動を制御してアンテナエレメント13A,13Bを溝構造12A,12B内の所定位置に配置させることに相当する。従って、アンテナ位置制御回路17がアンテナ位置制御手段に相当する。また、一対のモータ15A,15Bはそれぞれ同期して回転するように駆動制御されており、かつ、アンテナエレメント13A,13Bの溝構造12A,12B内での初期位置が対称位置としている。従って、アンテナエレメント13A,13Bは一対備えられ、それぞれ上記筐体10の縦辺と横辺における対称位置に上記アンテナ駆動構造にて配置されることになる。
【0026】
また、第一アンテナユニット用の溝構造12Aと、第二アンテナユニット用の溝構造12Bとに表れるように、アンテナ駆動構造自体が一対備えられ、それぞれによって二つのアンテナエレメント13A,13Bを駆動している。
アンテナ位置制御回路17には配向センサ18も接続されている。配向センサ18は重力センサであり、筺体10が縦向き(長辺が鉛直方向に配向される状態)であるか、横向き(短辺が鉛直方向に配向される状態)であるかを検出し、検出結果をアンテナ位置制御回路17に出力している。アンテナ位置制御回路17は同検出結果に基づいてモータ15A,15Bを制御し、予め定めた位置にアンテナエレメント13A,13Bを移動させる。すなわち、筺体10の配向方向を検出可能であり、予め決められた配向方向に対応した位置にアンテナエレメント13A,13Bを配置する。
【0027】
図4は横持ち(横向き)の場合のアンテナエレメントの配置を示し、図5は縦持ち(縦向き)の場合のアンテナエレメントの配置を示す図である。
この携帯情報通信端末をユーザーが持つ場合、筐体10の向きに応じて自ずから手で把持する部分が決まると考えられる。図4は横持ち(横向き)の場合であるが、横長の筺体10を横持ちするのであれば、通常は左右(両方、あるいは一方)の短辺のあたりを保持する。手で筺体10を把持すれば手の中の水分の影響を受けて受信感度は低下する。すなわち、同図に示すように短辺のあたりは手の影響範囲であり、このあたりでアンテナエレメント13A,13Bを移動させても感度の向上は望めない。
【0028】
同様に、図5は縦持ち(縦向き)の場合であるが、縦持ちするのであれば、通常は筺体の裏側から左右の長辺を挟み込むようにして保持する。従って、この場合は左右の長辺および、下側の短辺のあたりが手の影響範囲となり、このあたりでアンテナエレメント13A,13Bを移動させても感度の向上は望めない。
このような状況を予め反映させるべく、アンテナ位置制御回路17は、配向センサ18によって横持ち(横向き)と検出されればアンテナエレメント13A,13Bの初期配置として長辺(縦辺)の中程あたりを、配向センサ18によって縦持ち(縦向き)と検出されればアンテナエレメント13A,13Bの初期配置として短辺(横辺)の中程あたりを指定するようにしている。
【0029】
次に、より受信感度を上げるべくアンテナ位置制御回路17は、送受信回路11から受信感度(受信レベル)を入力し、同受信感度が最大となる位置にアンテナエレメント13A,13Bを停止させるようにモータ15A,15Bを制御する。
図6は、受信感度とアンテナエレメントの位置を示す図である。同図には受信感度が一定のしきい値Thを超える位置で、受信感度が最大となる位置を最適な停止位置とする関係を示している。むろん、最適位置でなくても一定のしきい値Thを超えれば感度向上位置として停止させるようにしてもよい。これにより、受信感度の多少の変動時に敏感に反応して最適位置を探すような動作を行わないようにすることができる。
【0030】
一般的には、モータ15A,15Bとしてステッピングモータを採用し、回転位置を制御してアンテナエレメント13A,13Bの配置を制御することが考えられる。しかしながら、より簡易な構成で実現する手法がある。
図7は、受信感度に応じてモータを制御する制御回路図である。
この例ではアンテナ位置制御回路17として、オペアンプ17aと反転制御回路17bとを備えている。オペアンプ17aには直流成分の受信感度と、しきい値判定用の分圧電圧が入力されており、当該オペアンプ17aは、受信感度が一定のしきい値以下となると、モータ15A,15Bへの駆動電力を出力する。ここで溝構造12A,12Bにおけるそれぞれの両端にはプッシュ式のスイッチ17b1(図1)が配設されており、アンテナエレメント13A,13Bが溝構造12A,12B内を一定方向にスライドして端部に到達すると同スイッチ17b1を導通させる。反転制御回路17bは、この導通状態の変化を検出すると、モータ15A,15Bへの駆動電力をそれまでの状態と反転させる。
【0031】
このように構成していると、受信感度がしきい値を下回った時点でオペアンプ17aからモータ15A,15Bに駆動電力が出力され、回転軸16A,16Bを回転させるので、アンテナエレメント13A,13Bを溝構造12A,12B内で一定方向にスライドさせる。このとき、図6の左半分の領域で右側に移動するのであれば、受信感度が徐々に大きくなり、しきい値を超えた時点でオペアンプ17aが駆動電力を出力しなくなり、モータ15A,15Bは停止し、アンテナエレメント13A,13Bは溝構造12A,12B内で停止する。しかし、図6の右半分の領域で右側に移動するのであれば、受信感度は徐々に小さくなり、アンテナエレメント13A,13Bは溝構造12A,12B内の端部に到達する。しかし、この時点でアンテナエレメント13A,13Bはプッシュ式のスイッチ17b1を導通させるので、反転制御回路17bが駆動電力を反転させる。すると、アンテナエレメント13A,13Bは溝構造12A,12B内を反対方向に移動し始め、先ほどとは逆に受信感度が徐々に大きくなり、しきい値を超えた時点でオペアンプ17aが駆動電力を出力しなくなり、モータ15A,15Bは停止し、アンテナエレメント13A,13Bは溝構造12A,12B内で停止する。
【0032】
このようにモータ15A,15Bが回転位置制御不能なものであっても、上記アンテナ位置制御回路17のオペアンプ17aは送受信回路11からの受信感度を検出し、受信感度が所定のしきい値を超える最適位置で停止させることができる。
また、しきい値との比較に限らず、受信感度の変動を検出し、変動がプラスからマイナスになる位置で上記アンテナエレメントを停止させるようにしてもよい。すなわち、受信感度からその変動を検出し、変動がプラスからマイナスになる位置でアンテナエレメント13A,13Bを停止させる。
なお、二つのアンテナエレメント13A,13Bのそれぞれの受信感度を検知して、個別にオペアンプ17aと反転制御回路17bで駆動するようにしてもよい。
【0033】
次に、図8は、変形例に係る携帯情報通信端末の概略ブロック図である。
上述した実施形態では、上記アンテナ駆動構造として二つの溝構造12A,12B、二つのモータ15A,15B、二つの回転軸16A,16Bを備えているが、アンテナエレメント13A,13Bを長辺、あるいは短辺における対称位置に停止させるという目的では同図に示すように溝構造12を一つとし、一つのモータ15で回転軸16を回転させ、初期位置として対称位置に配設した二つのアンテナエレメント13A,13Bを常に対称位置に配置するということが可能となる。すなわち、一つの回転軸にて二つのアンテナエレメントを駆動する。
【0034】
このように、筺体10の外周に枠状に形成した溝構造12A,12B内に回転不能かつスライド可能なアンテナエレメント13A,13Bを収容するとともに、モータ15A,15Bにて回転駆動される回転軸16A,16Bにて同アンテナエレメント13A,13Bを貫通させ、螺旋形状を利用して回転運動をスライド運動に変換させることができるようにし、かつ、送受信回路11の受信感度や配向センサ18の検出結果によってアンテナ位置制御回路17がモータ15A,15Bの回転を制御し、アンテナエレメント13A,13Bを所定の最適位置に配置することができる。
【0035】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0036】
10…筺体、11…送受信回路、12(12A,12B)…溝構造、13A,13B…アンテナエレメント、14A,14B…電極、15(15A,15B)…モータ、16(16A,16B)…回転軸、16A1,16B1…軸芯、16A2,16B2…バネ部材、17…アンテナ位置制御回路、17a…オペアンプ、17b…反転制御回路、17b1…スイッチ、18…配向センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内にアンテナユニットと送受信部とを収容する携帯情報通信端末であって、
上記筐体内にて周縁部に沿って枠状に形成される溝構造と、
上記溝構造に沿って摺動移動可能なアンテナエレメントと、
同アンテナエレメントと上記送受信部とを結線する結線構造と、
回転動力を供給するモータと、
螺旋形状を利用して回転運動をスライド運動に変換可能であり、回転軸と移動体を有し、同回転軸を上記モータに連結するとともに、同移動体を上記アンテナエレメントと連結して構成されるアンテナ駆動構造と、
上記アンテナ駆動構造の駆動を制御して上記アンテナエレメントを所定位置に配置させるアンテナ位置制御手段とを具備することを特徴とする携帯情報通信端末。
【請求項2】
上記回転軸は螺旋形のバネ状のガイドであり、上記アンテナエレメントは同バネ状のガイドにて貫通されつつ同ガイドに係止し、かつ、上記溝構造にて回転不能かつスライド可能に保持されることを特徴とする請求項1に記載の携帯情報通信端末。
【請求項3】
上記アンテナエレメントは一対備えられ、それぞれ上記筐体の縦辺と横辺における対称位置に上記アンテナ駆動構造にて配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の携帯情報通信端末。
【請求項4】
上記アンテナ駆動構造は、一対備えられ、それぞれによって二つの上記アンテナエレメントを駆動することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の携帯情報通信端末。
【請求項5】
上記アンテナ駆動構造は、一つの回転軸にて二つの上記アンテナエレメントを駆動することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の携帯情報通信端末。
【請求項6】
上記アンテナ位置制御手段は、上記送受信部における上記アンテナエレメントでの受信感度を検出し、感度向上位置で止めるように上記アンテナ駆動構造を制御することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の携帯情報通信端末。
【請求項7】
上記モータは回転位置制御不能なものであり、上記上記アンテナ位置制御手段は上記送受信部における上記アンテナエレメントの受信感度を検出し、受信感度が所定のしきい値を超える最適位置で上記アンテナエレメントを停止させることを特徴とする請求項6に記載の携帯情報通信端末。
【請求項8】
上記アンテナ位置制御手段は、上記筺体の配向方向を検出可能であり、予め決められた配向方向に対応した位置に上記アンテナエレメントを配置することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の携帯情報通信端末。
【請求項9】
筐体内にアンテナユニットと送受信部とを収容する携帯情報通信端末であって、
上記筐体内にて周縁部に沿って枠状に形成される溝構造と、
上記溝構造に沿って摺動移動可能なアンテナエレメントと、
同アンテナエレメントと送受信部とを結線する結線構造と、
回転動力を供給するモータと、
螺旋形状を利用して回転運動をスライド運動に変換可能であり、回転軸と移動体を有し、同回転軸と上記モータに連結するとともに、同移動体を上記アンテナエレメントと連結して構成されるアンテナ駆動構造と、
上記アンテナ駆動構造の駆動を制御して上記アンテナエレメントを所定位置に配置させるアンテナ位置制御手段とを具備し、
上記回転軸は螺旋形のバネ状のガイドであり、上記アンテナエレメントは同バネ状のガイドにて貫通されつつ同ガイドに係止し、かつ、上記溝構造にて回転不能かつスライド可能に保持され、
上記アンテナ駆動構造と上記アンテナエレメントは一対備えられ、同上記アンテナエレメントはそれぞれ上記筐体の縦辺と横辺における対称位置に上記アンテナ駆動構造にて配置され、
上記アンテナ位置制御手段は、上記筺体の配向方向を検出可能であり、予め決められた配向方向に対応した位置に上記アンテナエレメントを配置させることを特徴とする携帯情報通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−109407(P2011−109407A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262261(P2009−262261)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】