説明

携帯機器、それに用いる制御方法および制御用プログラム

【課題】非常時にその直前の時刻における周囲の状況を示す情報を保存しておくことを可能とする。
【解決手段】ユーザ操作を受け付けるユーザ操作受付部101と、当該携帯機器の周囲の状況を示すデータである周囲状況データを取得する周囲状況データ取得部102と、周囲状況データを含む所定の形式の記録データを少なくとも1つ記憶するためのメモリ領域を有する記憶部103と、最新の周囲状況データを含む記録データを、記憶部にある予め決められたサイズのメモリ領域内に記憶させる制御部104とを備え、制御部104は、ユーザによる継続のための所定の操作が行われた場合に、最新の周囲状況データを含む記録データのメモリ領域内への記憶処理を継続させることを特徴とする。すなわち、制御部104は、ユーザによる継続のための所定の操作が行われない場合に、少なくとも該記憶処理を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者に携帯される情報処理装置である携帯機器、該携帯機器の制御方法、制御用プログラムに関し、特に、該携帯機器の非常時のデータ記録機能に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの携帯機器では、防犯機能として、非常時にその周囲の情報(例えば、画像情報、位置情報、音声情報等)を取得して、所定の受信装置に送信する機能を有してるものがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、非常ボタンを押下すると、そのことを検知した制御部が、カメラ部と位置情報認識部と時計部とを起動して情報(犯行現場情報)を取得して記憶部に記憶すると共に、記憶部に記憶された犯行現場情報と端末の所有者に関する情報とを予め記憶しておいたメールアドレスに送信する防犯機能付き携帯端末が記載されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、緊急時であることを検知する検知手段によって緊急時であると、緊急時である旨が検知されると、自己の位置情報と自己の周囲情報とを取得し、取得された位置情報と周囲情報とを所定のサーバに送信する携帯端末が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−289364号公報
【特許文献2】特開2005−39700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている携帯端末では、非常ボタンの押下をきっかけにして、犯行現場情報の取得と電子メールの送信とが一連の動作として連続的に実行することによって、非常時であっても緊急連絡先に犯行現場情報を送信することを可能にする。しかし、非常時に携帯端末のユーザが非常ボタンを押下できるとは限らず、例えば、携帯端末に触ることが難しい状況など非常ボタンを押下できない状況にいた場合には、そのときの状況を示す情報を取得して記憶したり、送信したりすることができない。また、非常ボタンを押下した後で取得される犯行現場情報には、その状況に至るまでの周囲の情報が含まれていないため、情報として不十分であることも考えられる。非常事態が発生した場合には、その非常事態に至るまでの状況を示す情報(特に、直近の情報)が、不慮の事件・事故などの際の貴重な情報となりうるが、特許文献1に記載されている携帯端末では、非常時にその直近の情報を保持しておくことはできない。
【0007】
また、特許文献2に記載されている携帯端末では、例えばヘルプキーが操作された場合に緊急時である旨を検出して、自己位置の取得や周囲風景の撮影や周囲音の集音を行い、RAMに記憶する。なお、特許文献2に記載されている携帯端末を利用すれば、緊急時である旨の検出方法によっては、ユーザがボタンを押下できない状況であっても、そのときの状況を示す情報を取得して送信することができるかもしれない。しかし、特許文献2には、ヘルプキーが操作された場合に緊急時である旨を検出する以外の方法は何ら開示されていない。また、緊急時である旨を検出したときに周囲の情報を取得する方法では、特許文献1と同様に、非常時を検出するまでの直近の情報が取得できないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、非常時にその直前の時刻における周囲の状況を示す情報を保存しておくことが可能な携帯機器、該携帯機器の制御方法、制御用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による携帯機器は、ユーザ操作を受け付けるユーザ操作受付部と、当該携帯機器の周囲の状況を示すデータである周囲状況データを取得する周囲状況データ取得部と、周囲状況データを含む所定の形式の記録データを少なくとも1つ記憶するためのメモリ領域を有する記憶部と、最新の周囲状況データを含む記録データを、記憶部にある予め決められたサイズのメモリ領域内に記憶させる制御部とを備え、制御部は、ユーザ操作受付部を介してユーザによる継続のための所定の操作が行われた場合に、最新の周囲状況データを含む記録データのメモリ領域内への記憶処理を継続させることを特徴とする。
【0010】
また、携帯機器は、ユーザ操作を受け付けるユーザ操作受付部と、当該携帯機器の周囲の状況を示すデータである周囲状況データを取得する周囲状況データ取得部と、周囲状況データを含む所定の形式の記録データを少なくとも1つ記憶するためのメモリ領域を有する記憶部と、最新の周囲状況データを含む記録データを、記憶部の中の予め決められたサイズのメモリ領域内に記憶させる制御部とを備え、制御部は、ユーザ操作受付部を介してユーザによる継続のための所定の操作が行われない場合に、少なくとも最新の周囲状況データを含む記録データのメモリ領域内への記憶処理を停止することを特徴とする。
【0011】
また、本発明による携帯機器の制御方法は、ユーザに携帯され、当該携帯機器の周囲の状況を示すデータである周囲状況データを取得する周囲状況データ取得部と、周囲状況データを含む所定の形式の記録データを少なくとも1つ記憶するためのメモリ領域を有する記憶部と、プログラムに従って動作する制御部とを備えた携帯機器に適用される制御方法であって、制御部が、ユーザからの開始指示を受け付けた場合に、周囲状況データ取得部によって取得される周囲状況データを含む所定の形式の記録データを、記憶部にある予め決められたサイズのメモリ領域内に記憶させる処理を開始し、制御部が、所定の期間内にユーザによる継続のための所定の操作が行われた場合に、最新の周囲状況データを含む記録データのメモリ領域内への記憶処理を継続させることを特徴とする。
【0012】
また、携帯機器の制御方法は、ユーザに携帯され、当該携帯機器の周囲の状況を示すデータである周囲状況データを取得する周囲状況データ取得部と、周囲状況データを含む所定の形式の記録データを少なくとも1つ記憶するためのメモリ領域を有する記憶部と、プログラムに従って動作する制御部とを備えた携帯機器に適用される制御方法であって、制御部が、ユーザからの開始指示を受け付けた場合に、周囲状況データ取得部によって取得される周囲状況データを含む所定の形式の記録データを、記憶部にある予め決められたサイズのメモリ領域内に記憶させる処理を開始し、制御部が、所定の期間内にユーザによる継続のための所定の操作が行われない場合に、少なくとも最新の周囲状況データを含む記録データのメモリ領域内への記憶処理を停止することを特徴とする。
【0013】
また、本発明による携帯機器の制御用プログラムは、ユーザに携帯され、当該携帯機器の周囲の状況を示すデータである周囲状況データを取得する周囲状況データ取得部と、周囲状況データを含む所定の形式の記録データを少なくとも1つ記憶するためのメモリ領域を有する記憶部とを備えた携帯機器に適用される制御用プログラムであって、コンピュータに、ユーザからの開始指示を受け付けた場合に、周囲状況データ取得部によって取得される周囲状況データを含む所定の形式の記録データを、記憶部にある予め決められたサイズのメモリ領域内に記憶させる処理を開始させ、所定の期間内にユーザによる継続のための所定の操作が行われた場合に、最新の周囲状況データを含む記録データのメモリ領域内への記憶処理を継続させることを特徴とする。
【0014】
また、携帯機器の制御用プログラムは、ユーザに携帯され、当該携帯機器の周囲の状況を示すデータである周囲状況データを取得する周囲状況データ取得部と、周囲状況データを含む所定の形式の記録データを少なくとも1つ記憶するためのメモリ領域を有する記憶部とを備えた携帯機器に適用される制御用プログラムであって、コンピュータに、ユーザからの開始指示を受け付けた場合に、周囲状況データ取得部によって取得される周囲状況データを含む所定の形式の記録データを、記憶部にある予め決められたサイズのメモリ領域内に記憶させる処理を開始させ、所定の期間内にユーザによる継続のための所定の操作が行われない場合に、少なくとも最新の周囲状況データを含む記録データのメモリ領域内への記憶処理を停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、非常時にその直前の時刻における周囲の状況を示す情報を保存しておくことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態である携帯電話機の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態である携帯電話機の動作の一例を示すフローチャートである。
【図3】周囲状況データのメモリへの格納例を示す説明図である。
【図4】本発明の概要を示す説明図である。
【図5】本発明による携帯機器の他の構成例を示す説明図である。
【図6】本発明による携帯機器の他の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の携帯機器の一実施形態である携帯電話機の構成例を示すブロック図である。本発明による携帯電話機1は、携帯電話機としての通信サービスを実現するための機能部に加えて、さらに、周囲の音を録音するための機能部と、現在位置を取得するための機能部と、日時情報を取得するための機能部と、ユーザからパスワードを入力するための機能部とを備える。より具体的には、図1に示すように、制御部11と、メモリ12と、通信部13と、表示部14と、マイク(マイクロフォン)15と、スピーカ16と、キー17と、バイブレータ18と、カメラ19と、GPS受信部20と、計時部21とを備えている。
【0018】
制御部11は、当該携帯電話機1が備える各機能部の動作を制御する、例えばCPU等のプログラムに従って動作するプロセッサユニットである。メモリ12は、制御部11によって実行されるプログラムや各種データを記憶する記憶装置である。
【0019】
通信部13は、外部機器または当該携帯電話機1が加入している通信サービスを提供している通信システムにおける基地局との間の通信(データの送受信)を行う。例えば、基地局との通信を行う通信部13の場合、通信部13は、無線信号の送受信を行う無線部と無線信号の処理を行うデバイスとによって実現される。
【0020】
表示部14は、情報の表示を行う。表示部14は、例えば、モニタ等の出力装置と該出力装置を駆動するためのデバイスによって実現される。
【0021】
マイク15は、周囲の音(ユーザまたは近くに居る人の音声を含む)を集め音声データとして出力する。スピーカ16は、入力された音声データをアナログの音として出力する。
【0022】
キー17は、ユーザ操作に応じて予め割り当てられたキー情報を入力する。キー17の他に、ユーザ認証のための情報(指紋情報等)を入力する入力装置を備えていてもよい。バイブレータ18は、制御部11からの制御に応じて、振動を発生させる。
【0023】
カメラ19は、周囲の状況を撮影し、画像データを出力する。カメラ19は、例えば、CCDやCMODといった画像を取り込む撮像モジュールと、該撮像モジュールによって取り込まれた画像を符号化して処理するデバイスとによって実現される。
【0024】
GPS受信部20は、GPS(Global Positioning System)によって出力されているGPS信号を受信して、当該携帯電話機1の位置情報(緯度経度)を取得する。
【0025】
計時部21は、時刻を計時し時計情報を出力する。計時部21は、例えば、RTC(Real Time Clock)によって実現される。
【0026】
以下、本実施形態の動作について説明する。本発明では、周囲の状況を示す情報(以下、周囲状況データ)を一定間隔で継続的に記録しつづける周囲状況記録モードを実装し、その周囲状況記録モードの終了(すなわち周囲状況データの継続的な記録動作の終了)を、ユーザから記録継続のためのパスワード入力がされなかったことをもって検知し行うことによって、その時点までに取得され記憶されている周囲状況データを上書き消去しないようにする。これにより、不慮の事故・事件などでユーザが操作できない事態に陥ったときに、最新の周囲状況データがメモリ12に保持されたままの状態を確保する。
【0027】
図2は、本実施形態の動作の一例を示すフローチャートである。本実施形態では、周囲状況データとして、周囲の音声を録音した音声データと、そのときの現在位置を示す位置情報と、これらの情報を取得した日時を示す日時情報とを対応づけて、メモリに格納する例を説明する。図2に示す例では、周囲状況記録モードの開始を指示する操作として、ユーザからキー17を介して録音開始操作がなされると(ステップS101)、その旨(録音開始操作)を受け付けた制御部11は、周囲状況記録モードに移行し、録音処理を開始するとともに、録音継続タイマをリセット(起動)する(ステップS102,S103)。
【0028】
制御部11は、例えば、録音処理の開始動作として、マイク15に集音の開始を指示し、所定時間分の音声データの出力を開始させるようにしてもよい。なお、制御部11は、録音処理を開始した以降は、断続的に、マイク15に集音をさせ、音声データを出力させる。例えば、音声データの出力通知を受けて音声データを引き取った後に、再度集音の開始を指示することによって、断続的に音声データを出力させてもよい。制御部11は、録音処理が継続中であれば、マイク15から引き取った音声データをその都度メモリ12に格納させる。
【0029】
また、録音継続タイマは、ユーザの継続指示なしに録音処理を継続させられる時間である録音継続時間を計るためのタイマであって、この録音継続タイマが満了するまで、すなわち、録音継続時間が経過するまでは、断続的に音声データ(より具体的には音声データを含む周囲状況データ)をメモリに格納可能とする。録音継続時間(すなわち、録音継続タイマの設定値)は、メモリ容量や機器性能が許す範囲であれば、どの程度の間隔とするかは任意である。具体的には、非常時の直近データとして当該録音継続タイマの設定値である録音継続時間分の周囲状況データがメモリに保持できれば、どのような間隔であってもよいが、頻繁にユーザに継続のための操作をさせる煩雑さを感じさせない程度の長い間隔であることが好ましい。
【0030】
制御部11は、録音継続タイマの計時処理によって予め設定された録音継続時間が経過したことを検知すると(ステップS104のYes)、スピーカ16による音やバイブレータ18による振動などを発生させて、ユーザに録音継続時間の終了を通知する(ステップS108)。制御部11は、その際、表示部14を用いてユーザにパスワードの入力を求め、所定の時間内に正規のパスワードの入力がされれば(ステップS109のYes)、周囲状況記録モードのままであるとし、再び録音継続タイマをリセットして録音処理を継続する(ステップS103に戻る)。制御部11は、例えば、入力されたパスワードと、予め登録されているユーザのパスワードとを比較し、両者が合致した場合に正規のパスワードが入力されたか否かを判定すればよい。
【0031】
一方、ユーザにパスワードの入力を求めたが、所定の時間内にパスワードの入力がされなかった場合には(ステップS109のNo)、周囲状況記録モードを終了させる。本実施形態では、周囲状況記録モードを終了するための処理として、録音処理を停止させる(ステップS107)。制御部11は、録音処理の停止動作として、マイク15に集音の終了を指示し、音声データの出力を停止させるようにしてもよい。なお、制御部11は、録音処理を停止させる前に、マイク15からそれまでに集音された分の音声データを引き取って、最新の音声データとしてメモリ12に格納させてもよい。
【0032】
また、制御部11は、録音処理の継続中に、予め設定された現在位置測位時間間隔が経過したことを検知すると(ステップ105のYes)、GPS受信部20を用いて現在位置を測位させる(ステップS110)。制御部11は、例えば、録音処理を開始した際に、測位間隔タイマの計時をスタートさせてもよい。測位間隔タイマは、現在位置を取得する処理を行う間隔である現在位置測位時間間隔を断続的に計るためのタイマであって、この測位間隔タイマが満了する度に現在位置を取得する。現在位置測位時間間隔(すなわち、測位間隔タイマの設定値)は、メモリ容量や機器性能が許す範囲であれば、どの程度の時間間隔とするかは任意であるが、位置の変化をより細かく検知したい場合には、小さな値であることが好ましい。なお、本実施形態では、設定した録音継続時間中に、複数回の現在位置の測位を行うことが可能なように、録音継続タイマと測位間隔タイマとを分けて設けている。
【0033】
測位間隔タイマの満了の度に取得される現在位置の情報は、周囲状況データの一部としてメモリ12に格納される。制御部11は、例えば、GPS受信部20から取得した現在位置の情報を、現在位置情報として別途保持しておき、音声データのメモリ格納のタイミングで参照することによって、周囲状況データに反映させメモリ12に格納してもよい。また、例えば、測位間隔タイマが満了したときにマイク15から1回分の音声データを引き取るようにし、現在位置の測位と音声データの取得とを一連の処理で行うようにしてもよい。
【0034】
また、制御部11は、周囲状況データをメモリ12に格納する際に、予めサイズ設定されたメモリエリアを繰り返し使用するものとし、常に最新のデータがメモリ12に保持されるよう、最も古いデータに上書きするように書き込み位置を制御する。
【0035】
制御部11は、録音継続時間が経過したときにパスワード入力がされないことによって周囲状況記録モードを終了させる他に、ユーザから周囲状況記録モードの終了を指示する操作として録音終了の操作がなされた場合にも(ステップS106のYes)、周囲状況記録モードを終了させる。すなわち、録音処理を停止させる(ステップS107)。
【0036】
図3は、周囲状況データのメモリへの格納例を示す説明図である。図3では、メモリ12に対して、n個の周囲状況データが格納できるようサイズ設定された例が示されている。また、図3では、格納データ0領域が最も古い周囲状況データを格納している領域である場合を例に示している。このような場合には、制御部11は、新たに取得した周囲状況データを、最も古い周囲状況データが格納されている領域である格納データ0領域に上書きすればよい。なお、次のタイミングでは、その時点で最も古い周囲状況データが格納されている領域である格納データ1領域に上書きすればよい。なお、図3に示す例では、周囲状況データとして、日時情報と位置情報と音声データとを格納している。
【0037】
なお、周囲状況記録モード中における周期状況データの取得・記録処理は、例えば、デバイスからの割り込み処理などを利用することによって、通常動作とは独立に実行させることが好ましい。
【0038】
また、上記例では、音声データと位置情報と日時情報とを周囲状況データとして保持する例を示したが、例えば、メモリ12に格納するタイミングでカメラ機能部19を用いて周囲の画像データを取得し、周囲状況データに含めることも可能である。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、ユーザ操作がなかったことを検知して録音処理を停止させることにより、それまでに断続的に記憶させてきた周囲状況データが上書きされることを防止しているので、ユーザが不慮の事件や事故に遭遇して操作ができなくなるような状況に陥っても、周囲状況記録モード中であれば、そこに至るまでの直近のデータをメモリに保持させておくことができる。すなわち、ユーザ操作を記録の継続(すなわち上書き許可)のために利用することにより、ユーザ操作を受けて録音処理を停止させる方法や、所定の時間経過により自動的に停止させる方法では確実に保持しておくことができなかった最新データを確実に保存しておくことを可能にしている。
【0040】
また、上記例では、記録を継続するか否かをユーザに確認するために、パスワード入力を求める例を示したが、パスワード入力に限らず、ユーザ本人による操作であることを確認できるような情報入力およびユーザ認証方法であれば、どのような方法であってもよい。例えば、指紋情報を入力させ、予め登録されているユーザの指紋情報とを比較してユーザ本人による操作であるか否かを判定してもよい。
【0041】
また、本実施形態では、携帯機器が携帯電話機である場合を例に説明したが、携帯機器は、例えば、ICレコーダや音楽再生機器等の携帯型の情報処理装置であってもよい。
【0042】
また、携帯機器が通信機能を有している場合には、ユーザがパスワード入力操作を行わなかった場合に、通信機能を利用して、異常の発生を通知するようにしてもよい。その際に、保持されている周囲状況データを送信してもよい。例えば、上記例では、ユーザがパスワード入力操作を行わなかった場合に、制御部11がさらに通信部13を制御して、予め設定した宛先に予め設定しておいたメッセージを送信するなどして、異常の発生を通知するようにしてもよい。なお、メッセージを送信する手段は、音声通信でも、データ通信でも電子メールであってもよい。データ通信や電子メールによる通知を行う場合には、その際に、メモリ12に保持されている周囲状況データを送信してもよい。
【0043】
また、現在位置情報の取得が、基地局から得られる場合には、通信部13によって取得することも可能である。
【0044】
次に、本発明の概要について説明する。図4は、本発明の概要を示す説明図である。本発明の携帯機器100は、ユーザ操作受付部101と、周囲状況データ取得部102と、記憶部103と、制御部104とを備える。
【0045】
ユーザ操作受付部101(例えば、キー17および制御部11)は、ユーザ操作を受け付ける。周囲状況データ取得部102(例えば、マイク15、カメラ19、GPS受信部20)は、当該携帯機器100の周囲の状況を示すデータである周囲状況データを取得する。記憶部103(例えば、メモリ12)は、周囲状況データを含む所定の形式の記録データを少なくとも1つ記憶するためのメモリ領域を有する記憶装置である。制御部104は、最新の周囲状況データを含む記録データを、記憶部103にある予め決められたサイズのメモリ領域内に記憶させる。制御部104は、メモリ領域内に複数の記録データが格納できる場合には、最新の記録データを記憶する際に、取得された時刻が最も古いデータから順に上書きすることによって、常に最新の記録データが格納されている状態とする。
【0046】
制御部104は、ユーザ操作受付部101を介してユーザによる継続のための所定の操作が行われた場合に、最新の周囲状況データを含む記録データのメモリ領域内への記憶処理を継続させる。これは、ユーザ操作受付部101を介してユーザによる継続のための所定の操作が行われない場合に、少なくとも最新の周囲状況データを含む記録データのメモリ領域内への記憶処理を停止することを意味する。
【0047】
このような構成によって、非常時にその直前の時刻における周囲の状況を示す情報を保存しておくことが可能になる。
【0048】
また、制御部104は、ユーザによる継続のための所定の操作として、操作者が正規のユーザであることを予め登録されている情報を用いて認証可能な情報である認証情報の入力操作が行われたか否かを判断してもよい。認証情報は、例えば、パスワードであってもよい。
【0049】
また、本発明の携帯機器100は、例えば、図5に示すような構成であってもよい。図5は、本発明による携帯機器100の他の構成例を示す説明図である。図5に示すように、本発明による携帯機器100は、周囲状況データ取得部102として、収音手段1021と、現在位置取得手段1022とを備えていてもよい。
【0050】
収音手段1021(例えば、マイク15)は、周囲の音を収音する。現在位置取得手段1022(例えば、GPS受信部20)は、現在位置の情報を取得する。
【0051】
このような場合、制御部104は、収音手段1021によって収音された音声データと、現在位置取得手段1021によって取得される現在位置の情報とを周囲状況データとして含み、かつ周囲状況データの少なくともいずれかの取得日時を示す日時データを含む記録データを記憶部103にある所定のメモリ領域内に記憶させてもよい。
【0052】
また、本発明の携帯機器100は、例えば、図6に示すような構成であってもよい。図6は、本発明による携帯機器100の他の構成例を示す説明図である。図6に示すように、本発明による携帯機器100は、さらに送信部105を備えていてもよい。
【0053】
送信部105(例えば、通信部13)は、情報を送信する。このような場合、制御部104は、ユーザによる継続のための所定の操作が行われない場合に、送信部105を用いて記憶部103の所定のメモリ領域内に記憶されている記録データを予め指定された通知先に送信してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
利用者に携帯される情報処理機器であって、録音機能や位置情報取得機能などによって周囲の状況を示すデータを取得可能で、かつ取得したデータを記憶しておくことができるメモリを備えている情報処理機器であれば、好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 携帯電話機
11 制御部
12 メモリ
13 通信部
14 表示部
15 マイク
16 スピーカ
17 キー
18 バイブレータ
19 カメラ
20 GPS受信部
21 計時部
100 携帯機器
101 ユーザ操作受付部
102 周囲状況データ取得部
103 記憶部
104 制御部
105 送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ操作を受け付けるユーザ操作受付部と、
当該携帯機器の周囲の状況を示すデータである周囲状況データを取得する周囲状況データ取得部と、
前記周囲状況データを含む所定の形式の記録データを少なくとも1つ記憶するためのメモリ領域を有する記憶部と、
最新の周囲状況データを含む記録データを、前記記憶部にある予め決められたサイズのメモリ領域内に記憶させる制御部とを備え、
前記制御部は、前記ユーザ操作受付部を介してユーザによる継続のための所定の操作が行われた場合に、最新の周囲状況データを含む記録データの前記メモリ領域内への記憶処理を継続させる
ことを特徴とする携帯機器。
【請求項2】
ユーザ操作を受け付けるユーザ操作受付部と、
当該携帯機器の周囲の状況を示すデータである周囲状況データを取得する周囲状況データ取得部と、
前記周囲状況データを含む所定の形式の記録データを少なくとも1つ記憶するためのメモリ領域を有する記憶部と、
最新の周囲状況データを含む記録データを、前記記憶部の中の予め決められたサイズのメモリ領域内に記憶させる制御部とを備え、
前記制御部は、前記ユーザ操作受付部を介してユーザによる継続のための所定の操作が行われない場合に、少なくとも最新の周囲状況データを含む記録データの前記メモリ領域内への記憶処理を停止する
ことを特徴とする携帯機器。
【請求項3】
周囲状況データ取得部として、少なくとも周囲の音を収音する収音手段と、現在位置の情報を取得する現在位置取得手段とを備え、
制御部は、前記収音手段によって収音された音声データと、前記現在位置取得手段によって取得される現在位置の情報とを周囲状況データとして含み、かつ周囲状況データの少なくともいずれかの取得日時を示す日時データを含む記録データを記憶させる
請求項1または請求項2に記載の携帯機器。
【請求項4】
情報を送信する送信部を備え、
制御部は、ユーザによる継続のための所定の操作が行われない場合に、前記送信部を用いて記憶部の所定のメモリ領域内に記憶されている記録データを予め指定された通知先に送信する
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の携帯機器。
【請求項5】
制御部は、ユーザによる継続のための所定の操作として、操作者が正規のユーザであることを予め登録されている情報を用いて認証可能な情報である認証情報の入力操作が行われたか否かを判断する
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の携帯機器。
【請求項6】
ユーザに携帯され、当該携帯機器の周囲の状況を示すデータである周囲状況データを取得する周囲状況データ取得部と、前記周囲状況データを含む所定の形式の記録データを少なくとも1つ記憶するためのメモリ領域を有する記憶部と、プログラムに従って動作する制御部とを備えた携帯機器に適用される制御方法であって、
前記制御部が、ユーザからの開始指示を受け付けた場合に、前記周囲状況データ取得部によって取得される周囲状況データを含む所定の形式の記録データを、前記記憶部にある予め決められたサイズのメモリ領域内に記憶させる処理を開始し、
前記制御部が、所定の期間内にユーザによる継続のための所定の操作が行われた場合に、最新の周囲状況データを含む記録データの前記メモリ領域内への記憶処理を継続させる
ことを特徴とする携帯機器の制御方法。
【請求項7】
ユーザに携帯され、当該携帯機器の周囲の状況を示すデータである周囲状況データを取得する周囲状況データ取得部と、前記周囲状況データを含む所定の形式の記録データを少なくとも1つ記憶するためのメモリ領域を有する記憶部と、プログラムに従って動作する制御部とを備えた携帯機器に適用される制御方法であって、
前記制御部が、ユーザからの開始指示を受け付けた場合に、前記周囲状況データ取得部によって取得される周囲状況データを含む所定の形式の記録データを、前記記憶部にある予め決められたサイズのメモリ領域内に記憶させる処理を開始し、
前記制御部が、所定の期間内にユーザによる継続のための所定の操作が行われない場合に、少なくとも最新の周囲状況データを含む記録データの前記メモリ領域内への記憶処理を停止する
ことを特徴とする携帯機器の制御方法。
【請求項8】
制御部が、ユーザによる継続のための所定の操作が行われない場合に、記憶部にある所定のメモリ領域内に記憶されている記録データを、予め指定された通知先に送信するための制御を行う
請求項6または請求項7に記載の携帯機器の制御方法。
【請求項9】
ユーザに携帯され、当該携帯機器の周囲の状況を示すデータである周囲状況データを取得する周囲状況データ取得部と、前記周囲状況データを含む所定の形式の記録データを少なくとも1つ記憶するためのメモリ領域を有する記憶部とを備えた携帯機器に適用される制御用プログラムであって、
コンピュータに、
ユーザからの開始指示を受け付けた場合に、前記周囲状況データ取得部によって取得される周囲状況データを含む所定の形式の記録データを、前記記憶部にある予め決められたサイズのメモリ領域内に記憶させる処理を開始させ、
所定の期間内にユーザによる継続のための所定の操作が行われた場合に、最新の周囲状況データを含む記録データの前記メモリ領域内への記憶処理を継続させる
ための制御用プログラム。
【請求項10】
ユーザに携帯され、当該携帯機器の周囲の状況を示すデータである周囲状況データを取得する周囲状況データ取得部と、前記周囲状況データを含む所定の形式の記録データを少なくとも1つ記憶するためのメモリ領域を有する記憶部とを備えた携帯機器に適用される制御用プログラムであって、
コンピュータに、
ユーザからの開始指示を受け付けた場合に、前記周囲状況データ取得部によって取得される周囲状況データを含む所定の形式の記録データを、前記記憶部にある予め決められたサイズのメモリ領域内に記憶させる処理を開始させ、
所定の期間内にユーザによる継続のための所定の操作が行われない場合に、少なくとも最新の周囲状況データを含む記録データの前記メモリ領域内への記憶処理を停止させる
ための制御用プログラム。
【請求項11】
コンピュータに、
ユーザによる継続のための所定の操作が行われない場合に、記憶部にある所定のメモリ領域内に記憶されている記録データを、予め指定された通知先に送信する処理を実行させる
請求項9または請求項10に記載の制御用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−239183(P2010−239183A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81939(P2009−81939)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】