説明

携帯機器

【課題】複数のキーが設けられた携帯機器において、キー部分の局所的な温度上昇を抑える。
【解決手段】携帯機器としてのPDAは、基板20と、基板20の第1の主表面S1に設けられた発熱性の半導体素子30と、基板20の第2の主表面S2に設けられた複数のスイッチ22と、基板20の第2の主表面S2側に位置するキーマットと、基板20の第2の主表面S2と対向するキーマット40の一方の主表面に向けて複数のスイッチ22のそれぞれから突出する複数の突起部24と、キーマット40の他方の主表面に設けられ、キーマット40に対して押下げ可能なキー16とを備える。基板20の面方向における半導体素子30からの距離が所定範囲内にある特定スイッチ22aから突出する突起部24aとキーマット40との接触面は、特定スイッチ22a以外の非特定スイッチ22bから突出する突起部24bとキーマット40との接触面に比べて面積が小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人用携帯情報端末(PDA)、デジタルスチルカメラ(DSC)、デジタルビデオカメラ(DVC)、電子辞書、ノートパソコンなどの携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯情報端末(PDA)などの携帯機器には、その筐体表面に複数のキーが設けられ、このキーを押下することで、携帯機器の操作を行うことができるようになっている。
【0003】
このようなキーの構造に関して、次のような構造が開示されている(特許文献1参照)。すなわち、中央スイッチとその周囲に配設された複数の周囲スイッチに対向して配置される一体的構成のボタンキーであって、このボタンキーの中央部分の押下操作によって中央スイッチを作動させ、周辺部分の押下操作によって周辺スイッチを作動させる構成である。このような構成において、ボタンキーから各スイッチに対応して突設された複数の押圧突起部のうち、周囲の押圧突起部に対して、中央の押圧突起部の高さを若干高く形成している。これにより、ボタンキーの中央部分を押下した際に中央スイッチのみを作動させ、周囲の押圧突起部が対応する周囲スイッチを作動させないようにしている。
【特許文献1】特開2001−312944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、これらの携帯機器には、携帯機器を動作させるためのCPUなどの半導体素子が搭載されている。この半導体素子は、携帯機器の動作中に熱を発するものが多い。発熱性の半導体素子から発せられた熱は、基板上のスイッチからスイッチに対向配置された押圧突起部を介してキー側に伝わる。これにより、特に発熱源となる半導体素子に近いキー部分が局所的に高温になる。そのため当該キーの操作により、ユーザは手あるいは指に汗をかくこととなり、ユーザに不快感を与えるおそれがあった。
【0005】
また、携帯機器のユーザが把持する部分にキーが配設されている場合には、携帯機器本体とユーザの手との間に汗が介在して携帯機器のグリップ性が低下し、携帯機器の操作性が低下してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数のキーが設けられた携帯機器において、キー部分の局所的な温度上昇を抑える技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は携帯機器である。この携帯機器は、基板と、基板の第1の主表面に設けられた発熱性の半導体素子と、基板の第2の主表面に設けられ、押圧により接点を接続させる複数のスイッチと、基板の第2の主表面側に位置し、弾性部材からなるキーマットと、基板の第2の主表面と対向するキーマットの一方の主表面に向けて複数のスイッチのそれぞれから突出する複数の突起部と、キーマットの他方の主表面に設けられ、キーマットに対して押下げ可能なキーと、を備える。基板の面方向における半導体素子からの距離が所定範囲内にある特定スイッチから突出する突起部とキーマットとの接触面は、特定スイッチ以外の非特定スイッチから突出する突起部とキーマットとの接触面に比べて面積が小さい。
【0008】
この態様によれば、所定範囲外にある非特定スイッチから突出する突起部からキーマットに伝導される経路に迂回してキーに至る熱量が増加することとなる。そのため、半導体素子からの熱は周囲に分散されることとなり、半導体素子から所定範囲内にあるキー部分の局所的な温度上昇を抑えることができる。
【0009】
本発明の他の態様もまた、携帯機器である。この携帯機器は、基板と、基板の第1の主表面に設けられた発熱性の半導体素子と、基板の第2の主表面に設けられ、押圧により接点を接続させる複数のスイッチと、基板の第2の主表面側に位置し、弾性部材からなるキーマットと、基板の第2の主表面と対向するキーマットの一方の主表面に向けて複数のスイッチのそれぞれから突出する複数の突起部と、キーマットの他方の主表面に設けられ、キーマットに対して押下げ可能なキーと、を備える。基板の面方向における半導体素子からの距離が所定範囲内にある特定スイッチから突出する突起部とキーマットとの間に隙間が設けられ、特定スイッチ以外の非特定スイッチから突出する突起部とキーマットとは接触している。
【0010】
この態様によれば、所定範囲外にある非特定スイッチから突出する突起部からキーマットに伝導される経路に迂回してキーに至る熱量が増加することとなる。そのため、半導体素子からの熱は周囲に分散されることとなり、半導体素子から所定範囲内にあるキー部分の局所的な温度上昇を抑えることができる。
【0011】
上記態様において、所定範囲内にある特定スイッチは、基板の面方向における半導体素子からの距離が最短のスイッチであってもよい。
【0012】
本発明の他の態様もまた、携帯機器である。この携帯機器は、基板と、基板の第1の主表面にスペーサを介して設けられた発熱体としての電源と、基板の第2の主表面に設けられ、押圧により接点を接続させる複数のスイッチと、基板の第2の主表面側に位置し、弾性部材からなるキーマットと、基板の第2の主表面と対向するキーマットの一方の主表面に向けて複数のスイッチのそれぞれから突出する複数の突起部と、キーマットの他方の主表面に設けられ、キーマットに対して押下げ可能なキーと、を備える。基板の面方向におけるスペーサからの距離が所定範囲内にある特定スイッチから突出する突起部とキーマットとの接触面は、特定スイッチ以外の非特定スイッチから突出する突起部とキーマットとの接触面に比べて面積が小さい。
【0013】
この態様によれば、所定範囲外にある非特定スイッチから突出する突起部からキーマットに伝導される経路に迂回してキーに至る熱量が増加することとなる。そのため、電源からの熱は周囲に分散されることとなり、スペーサから所定範囲内にあるキー部分の局所的な温度上昇を抑えることができる。
【0014】
本発明の他の態様もまた、携帯機器である。この携帯機器は、基板と、基板の第1の主表面にスペーサを介して設けられた発熱体としての電源と、基板の第2の主表面に設けられ、押圧により接点を接続させる複数のスイッチと、基板の第2の主表面側に位置し、弾性部材からなるキーマットと、基板の第2の主表面と対向するキーマットの一方の主表面に向けて複数のスイッチのそれぞれから突出する複数の突起部と、キーマットの他方の主表面に設けられ、キーマットに対して押下げ可能なキーと、を備える。基板の面方向におけるスペーサからの距離が所定範囲内にある特定スイッチから突出する突起部とキーマットとの間に隙間が設けられ、特定スイッチ以外の非特定スイッチから突出する突起部とキーマットとは接触している。
【0015】
この態様によれば、所定範囲外にある非特定スイッチから突出する突起部からキーマットに伝導される経路に迂回してキーに至る熱量が増加することとなる。そのため、電源からの熱は周囲に分散されることとなり、スペーサから所定範囲内にあるキー部分の局所的な温度上昇を抑えることができる。
【0016】
上記態様において、所定範囲内にある特定スイッチは、基板の面方向におけるスペーサからの距離が最短のスイッチであってもよい。
【0017】
また、上記態様において、特定スイッチに隣接する非特定スイッチから突出する突起部とキーマットとの接触面は、他のスイッチから突出する突起部とキーマットとの接触面に比べて面積が大きくてもよい。
【0018】
また、上記態様において、キーは、複数のキーからなるテンキーであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数のキーが設けられた携帯機器において、キー部分の局所的な温度上昇を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る携帯機器としての個人用携帯情報端末(PDA)10の外観構成を示す模式図である。なお、本実施形態では携帯機器としてPDAを例に示すが、たとえば、デジタルスチルカメラ(DSC)、デジタルビデオカメラ(DVC)、電子辞書、ノートパソコンといった携帯機器であってもよい。
【0022】
図1に示されるように、PDA10は、表示部12と操作部14とをヒンジ部11で連結した構造を備え、表示部12と操作部14とがヒンジ部11を介して回動可能に形成されている。表示部12には液晶ディスプレイ(LCD)などからなる表示パネル13が設けられている。操作部14には、PDA10の各種の動作の実行を指示したり、文字などを入力するための複数のキー16が配列されている。
【0023】
図2は、図1に示すPDA10のA−A線分で切断した概略部分断面図である。
【0024】
図2に示されるように、PDA10の操作部14の筐体15内には、第1の主表面S1に発熱性の半導体素子30が設けられた基板20が配置されている。基板20の第1の主表面S1と反対側の第2の主表面S2には、押圧により接点を接続させる複数のスイッチ22が設けられている。基板20の第2の主表面S2側には弾性部材からなるキーマット40が配置されている。複数のスイッチ22のそれぞれからは、基板20の第2の主表面S2と対向するキーマット40の一方の主表面に向けて複数の突起部24が突出している。キーマット40の他方の主表面にはキーマット40に対して押下げ可能な複数のキー16が設けられている。キー16は、筐体15に穿設された貫通孔15aから筐体15外に露出している。また、基板20の第1の主表面S1側には、電源としてのバッテリ70が配置されている。
【0025】
基板20の第1の主表面S1に設けられた発熱性の半導体素子30としては、たとえばPDA10の動作制御を行うCPU、その他のプロセッサ、LCDコントローラなどが挙げられる。
【0026】
基板20の第2の主表面S2に設けられた複数のスイッチ22は、いわゆるメタルドームスイッチ(皿バネ式スイッチ)であり、接点電極(図示せず)上にメタルドーム(皿バネ)が設けられた構成である。キー16の押下げ操作にともなう後述の突起部24の下方向への移動によりメタルドームが押圧されると、メタルドームは接点電極側に弾性変形し、接点電極に接触する。接点電極へのメタルドームの接触離間により、スイッチ22のオン/オフ操作が行われる。なお、スイッチ22の構成は特にこれに限定されず、いわゆるメンブレンスイッチなどであってもよい。
【0027】
基板20の第2の主表面S2側には、キーマット40が配置されている。キーマット40は、シリコンゴムなどの弾性部材からなる。複数のスイッチ22のそれぞれからは、キーマット40に向けて複数の突起部24が突出している。突起部24は、たとえばキーマット40と同様にシリコンゴムからなり、スイッチ22に対して接着剤などにより固着されている。キーマット40の図中上面側には複数の突起部24のそれぞれに対応する位置に、キーマット40に対して押下げ可能な複数のキー16が設けられている。キー16は、たとえば接着剤によりキーマット40に固着される。キー16の配設方法としては特にこれに限定されず、図3に示すように、キー16とキーマット40とが一体成形された形状であってもよい。この場合、キー16およびキーマット40とは、たとえばポリカーボネートを用いて形成されてもよい。
【0028】
キー16が押下されると、キーマット40は弾性変形してたわみ、これにより突起部24が下方向(基板20側方向)に押圧される。突起部24の下方向への押圧によってメタルドームが押圧されて接点電極側に弾性変形し、これによりスイッチ22がオンされる。また、キー16の押下が解除されると、キーマット40は弾性で原状復帰する。またこれにより突起部24の押圧も解除され、メタルドームは自身の弾性で原状復帰し、スイッチ22はオフされる。
【0029】
突起部24は、基板20の面方向における発熱性の半導体素子30からの距離が所定範囲内にある特定スイッチ22aから突出する突起部24aとキーマット40との接触面が、特定スイッチ22a以外の非特定スイッチ22bから突出する突起部24bとキーマット40との接触面に比べて面積が小さくなっている。具体的には、特定スイッチ22aから突出する突起部24aとキーマット40の接触面積は、非特定スイッチ22bから突出する突起部24bとキーマット40との接触面積の1/3程度に小さくなっている。特定スイッチ22aから突出する突起部24aの形状としては、図4(A)〜(F)に示されるものが例として挙げられる。図4(A)はメサ型、(B)は長方形型、(C)は凸型、(D)は先端テーパ形状型、(E)は三角形型、(F)は先端および基部テーパ形状型である。
【0030】
ここで、半導体素子30からの距離とは、たとえば半導体素子30の中心点からの距離、あるいは温度が最も高くなるホットスポットからの距離である。またここで、所定範囲とは、特定スイッチ22aから突出する突起部24aとキーマット40との接触面を、非特定スイッチ22bから突出する突起部24bとキーマット40との接触面と同じ面積のままとした場合に、半導体素子30から発せられた熱が突起部24を介してキー16に伝導されて、キー16が所定温度以上、たとえばキー16の操作時などにキー16に手、指あるいは頬などの皮膚に触れて熱いと感じる温度以上となる範囲である。この温度は、たとえば6時間接触した状態で低温火傷が発生するおそれのある温度である約45℃、あるいは1時間接触した状態で低温火傷が発生するおそれのある温度である約47℃、あるいは1分間接触した状態で低温火傷が発生するおそれのある温度である約50℃、あるいは1秒間接触した状態で低温火傷が発生するおそれのある温度である約70℃以上である。あるいは所定範囲とは、たとえば基板20の面方向における半導体素子30、チップ、配線層、封止層、接続電極などを含むパッケージの存在する範囲である。あるいは、半導体素子30からの距離が近いスイッチほど、半導体素子30から伝導される熱量が大きくなるため、所定範囲内にある特定スイッチを、基板20の面方向における半導体素子30からの距離が最短のもの、としてもよい。
【0031】
またここで、発熱性の半導体素子30としては、上述のようにCPUや、LCDコントローラなど複数存在する場合があるが、その場合には、最も高熱を発する半導体素子30に対して、上述の構成をとるようにしてもよい。本実施形態のPDAの場合、最も高熱を発する半導体素子はCPUである。
【0032】
また、図5に示すように、半導体素子30から所定距離内に2個以上のスイッチ22が含まれる場合、たとえば半導体素子30からの距離が最短のスイッチ22が2個以上存在する場合には、それら2個以上のスイッチ22を特定スイッチ22aとして、上述の構成をとることができる。なお、図5では筐体15およびバッテリ70を省略している。
【0033】
このように、本実施形態では、半導体素子30からの距離が所定範囲内にある特定スイッチ22aから突出する突起部24aとキーマット40との接触面積が、他のものと比べて小さくなっている。したがって、突起部24bからキーマット40への経路よりも、突起部24aからキーマット40への経路の方が、熱が伝導されにくくなる。そのため、半導体素子30から発せられた熱が突起部24側からキーマット40側に伝導される際に、突起部24bからキーマット40に伝導される経路に迂回してキー16に至る熱量が増加することとなる。その結果、半導体素子30からの熱は周囲に分散されることとなり、半導体素子30から所定範囲内にあるキー16部分の局所的な温度上昇を抑えることができる。また、これによりキー操作によるユーザの手、あるいは指における発汗が抑えられ、ユーザがより快適に携帯機器を操作することができるようになる。さらには携帯機器のグリップ性の低下も抑制され、携帯機器の操作性が向上する。
【0034】
(実施形態2)
上述した実施形態1では、半導体素子30から所定距離内にある特定スイッチ22aから突出する突起部24aとキーマット40との接触面積を、他のものよりも小さくしたが、以下に示すような構成としてもよい。
【0035】
図6は、本実施形態に係る携帯機器の概略部分断面図である。本実施形態に係る携帯機器は、図1に示すPDA10と同一であり、図6は、図1に示すA−A線分と同じ位置で切断した断面である。なお、図6では筐体15およびバッテリ70を省略している。
【0036】
図6に示されるように、本実施形態では、基板20の面方向における半導体素子30からの距離が所定範囲内にある特定スイッチ22aから突出する突起部24aとキーマット40との間に隙間50が設けられ、非特定スイッチ22bから突出する突起部24bとキーマット40とが接触している。具体的には、たとえば、基板20の面方向における半導体素子30からの距離が最短の特定スイッチ22aから突出する突起部24aとキーマット40との間に隙間50が設けられ、非特定スイッチ22bから突出する突起部24bとキーマット40とが接触している。隙間50の大きさは、特定スイッチ22aから突出する突起部24aからキーマット40への熱の伝導が、非特定スイッチ22bから突出する突起部24bからキーマット40への伝導の場合に比べて伝導されにくくなる程度の大きさであり、たとえば約0.1mmである。
【0037】
このように、特定スイッチ22aから突出する突起部24aとキーマット40との間に隙間50が設けられることによっても、突起部24bからキーマット40への経路よりも、突起部24aからキーマット40への経路の方が、熱が伝導されにくくなる。そのため、半導体素子30から発せられた熱が突起部24側からキーマット40側に伝導される際に、突起部24bからキーマット40に伝導される経路に迂回してキー16に至る熱量が増加することとなる。その結果、半導体素子30からの熱は周囲に分散されるため、半導体素子30から所定範囲内にあるキー16部分の局所的な温度上昇を抑えることができる。また、これによりキー操作によるユーザの手、あるいは指における発汗が抑えられ、ユーザがより快適に携帯機器を操作することができるようになる。さらには携帯機器のグリップ性の低下も抑制され、携帯機器の操作性が向上する。
【0038】
なお、本実施形態においても、半導体素子30から所定距離内に2個以上のスイッチ22が含まれる場合、たとえば半導体素子30からの距離が最短のスイッチ22が2個以上存在する場合には、それら2個以上のスイッチ22を特定スイッチ22aとして、上述の構成をとることができる。
【0039】
(実施形態3)
本実施形態では、実施形態1あるいは2に示す構成に加えて、さらに次のような構成を設けている。
【0040】
図7(A)、(B)は、本実施形態に係る携帯機器の概略部分断面図である。図7(A)は実施形態1の構成に本実施形態の構成を設けた状態を示し、図7(B)は実施形態2の構成に本実施形態の構成を設けた状態を示している。本実施形態に係る携帯機器は、図1に示すPDA10と同一であり、図7(A)、(B)は、図1に示すA−A線分と同じ位置で切断した断面である。なお、図7では筐体15およびバッテリ70を省略している。
【0041】
図7(A)に示すように、本実施形態では、特定スイッチ22aから突出する突起部24aとキーマット40との接触面積が他のものに比べて小さいか、あるいは図7(B)に示すように、特定スイッチ22aから突出する突起部24aとキーマット40との間に隙間50が設けられる。そして、さらに非特定スイッチ22bのうち、特定スイッチ22aに隣接する非特定スイッチ22cから突出する突起部24cとキーマット40との接触面は、非特定スイッチ22c以外の他のスイッチ22(特定スイッチ22aおよび非特定スイッチ22b)から突出する突起部24(突起部24aおよび突起部24b)とキーマット40との接触面に比べて面積が大きくなっている。
【0042】
このように、本実施形態では、特定スイッチ22aから突出する突起部24aとキーマット40との接触面積が他のものと比べて小さいか、あるいはその間に隙間50が設けられ、さらに特定スイッチ22aに隣接する非特定スイッチ22cから突出する突起部24cとキーマット40との接触面積が、他のものよりも大きくなっている。したがって、特定スイッチ22aから突出する突起部24aからキーマット40へ熱が伝導されにくくなることに加え、特定スイッチ22aに隣接する非特定スイッチ22cから突出する突起部24cからキーマット40側へ熱が伝導されやすくなる。そのため、半導体素子30から発せられた熱を、突起部24cからキーマット40に伝導される経路の方により効率的に誘導することができる。その結果、半導体素子30から所定範囲内にあるキー16部分の局所的な温度上昇を抑えることができる。また、これによりキー操作によるユーザの手、あるいは指における発汗が抑えられ、ユーザがより快適に携帯機器を操作することができるようになる。さらには携帯機器のグリップ性の低下も抑制され、携帯機器の操作性が向上する。
【0043】
(実施形態4)
上述の各実施形態では、携帯機器としてPDA10を例に説明したが、本実施形態では、携帯電話機を例に説明する。
【0044】
図8は、本実施形態に係る携帯機器としての携帯電話機100の外観構成を示す模式図である。
【0045】
図8に示されるように、携帯電話機100は、表示部102と操作部104とをヒンジ部101で連結した構造を備え、表示部102と操作部104とはヒンジ部101を介して回動可能に形成されている。表示部102には文字や画像等の情報を表示する表示パネル103や、スピーカ部106が設けられている。操作部104には、携帯電話機100の各種の動作の実行を指示したり文字などを入力するための複数のキー16や、マイク部108が設けられている。
【0046】
図9は、本実施形態に係る携帯電話機100の操作部104の主要構成部分の分解斜視図である。
【0047】
図9に示されるように、ベースとなる基板20の第2の主表面S2に、押圧により接点を接続させる複数のスイッチ22が設けられている。複数のスイッチ22には図中上方向(キーマット40方向)に向けて突起部24が突出している。また基板20の第2の主表面S2側には弾性部材からなるキーマット40が配置されている。キーマット40の基板20と反対側の主表面(図中上側)にはキーマット40に対して押下げ可能な複数のキー16が設けられている。また、基板20における第2の主表面S2の反対側には、半導体素子およびバッテリ(図示せず)が配置されている。
【0048】
本実施形態に係る携帯電話機100についても、上述の各実施形態の構成を適用することが可能であり、図2、3および5〜7は、図8に示す携帯電話機100のB−B線分で切断した概略部分断面図に相当する。携帯電話機100における発熱性の半導体素子30としては、たとえば増幅器(パワーアンプ)、MSM(Mobile Station Modem)(登録商標)などが挙げられる。
【0049】
ここで、ユーザが携帯電話機100で通話する場合、ユーザはスピーカ部106を耳に、マイク部108を口に当てた状態で通話する。このとき、操作部104に設けられた複数のキー16、特にテンキー16a部分が、ユーザの頬やその周辺部に当接した状態となる。一方、携帯電話機100を用いた通話は数時間に及ぶ場合もある。そのため、操作部104内に配置された半導体素子からの熱でテンキー16aが局所的に高温になった場合は、高温になったテンキー16aがユーザの頬やその周辺部に当接した状態が長時間続き、ユーザの頬やその周辺部に、いわゆる低温火傷の症状が現れるおそれがある。
【0050】
しかしながら、本実施形態に係る携帯電話機100に、上述の各実施形態の構成を適用することで、半導体素子からの熱は周囲に分散され、テンキー16aの局所的な温度上昇を抑えることができる。そのため、上述の各実施形態における効果に加えて、携帯電話機100の安全性が向上するという効果が得られる。
【0051】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【0052】
たとえば、上述の各実施形態に示される構成は、図10に示すデジタルスチルカメラ、図11に示すデジタルビデオカメラ、図12に示す非折りたたみ型の電子辞書、電子手帳などの携帯機器にも適用可能である。図2、3および5〜7は、各図に示すC−C線分で切断した概略部分断面図に相当する。デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラにおける発熱性の半導体素子30としては、たとえば動作制御を行うCPU、電源ユニット、CCD、CCD駆動回路などが挙げられる。また、電子辞書や電子手帳における発熱性の半導体素子30としては、たとえば動作制御を行うCPU、その他のプロセッサ、LCDコントローラなどが挙げられる。なお、半導体素子30はこれら以外のものであってもよい。デジタルスチルカメラおよびデジタルビデオカメラ、電子辞書および電子手帳に搭載される発熱性の半導体素子のうち、最も高熱を発する半導体素子は、CPUである。
【0053】
また、上述の各実施形態では、複数のキーはそれぞれ別体としてキーマットに固着されているが、キーは、複数のキーが一体的に形成されたキーシート形状であってもよい。その場合には、キーシートが携帯機器の筐体の一部を構成するようにしてもよい。
【0054】
また、上述の各実施形態では、発熱体として半導体素子を例に説明したが、たとえば電源としてのバッテリも発熱体となり得る。図13に示すように、バッテリ70が基板20の第1の主表面S1側に配置される構成において、バッテリ70は、複数のスペーサ71を介して基板20に設けられている。この場合、バッテリ70から発せられた熱は、スペーサ71を介して基板20側に伝導される。そこで、基板20の面方向におけるスペーサ71からの距離が所定範囲内にあるスイッチ22、たとえばスペーサ71からの距離が最短のスイッチ22を特定スイッチ22aとして、特定スイッチ22aとこの特定スイッチ22aに向けて突出する突起部24aとの接触面積を、他のものよりも小さくしている。なお、特定スイッチ22aと突起部24aとの接触面積を小さくするのではなく、隙間を設けるなど、上述の各実施形態に示す構成を適宜設けることができる。
【0055】
上述のような構成により、バッテリ70と基板20との間に設けられたスペーサ71から所定範囲内にあるキー16部分の局所的な温度上昇を抑えることができる。また、これによりキー操作によるユーザの手あるいは指における発汗が抑えられ、ユーザがより快適に携帯機器を操作することができるようになる。さらには携帯機器のグリップ性の低下も抑制され、携帯機器の操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施形態1に係る個人用携帯情報端末(PDA)の外観構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すPDA10のA−A線分で切断した概略部分断面図である。
【図3】キーとキーマットとが一体成形された形状を示す概略部分断面図である。
【図4】特定スイッチから突出する突起部の形状を示す概略断面図である。
【図5】半導体素子から所定距離内に2個以上のスイッチが含まれる場合の概略部分断面図である。
【図6】実施形態2に係る携帯機器の概略部分断面図である。
【図7】実施形態3に係る携帯機器の概略部分断面図である。
【図8】実施形態4に係る携帯電話機の外観構成を示す模式図である。
【図9】携帯電話機の操作部の主要構成部分の分解斜視図である。
【図10】デジタルスチルカメラの外観構成を示す模式図である。
【図11】デジタルビデオカメラの外観構成を示す模式図である。
【図12】非折りたたみ型の電子辞書や電子手帳などの外観構成を示す模式図である。
【図13】バッテリが基板の第1の主表面側に配置された構成を示す概略部分断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10 PDA、 11 ヒンジ部、 12 表示部、 14 操作部、 15 筐体、 16 キー、 16a テンキー、 20 基板、 22 スイッチ、 22a 特定スイッチ、 22b、22c 非特定スイッチ、 24、24a、24b、24c 突起部、 30 半導体素子、 40 キーマット、 50 隙間、 70 バッテリ、 100 携帯電話機、 101 ヒンジ部、 102 表示部、 104 操作部、 106 スピーカ部、 108 マイク部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の第1の主表面に設けられた発熱性の半導体素子と、
前記基板の第2の主表面に設けられ、押圧により接点を接続させる複数のスイッチと、
前記基板の前記第2の主表面側に位置し、弾性部材からなるキーマットと、
前記基板の前記第2の主表面と対向する前記キーマットの一方の主表面に向けて前記複数のスイッチのそれぞれから突出する複数の突起部と、
前記キーマットの他方の主表面に設けられ、前記キーマットに対して押下げ可能なキーと、
を備え、
前記基板の面方向における前記半導体素子からの距離が所定範囲内にある特定スイッチから突出する前記突起部と前記キーマットとの接触面は、前記特定スイッチ以外の非特定スイッチから突出する前記突起部と前記キーマットとの接触面に比べて面積が小さいことを特徴とする携帯機器。
【請求項2】
基板と、
前記基板の第1の主表面に設けられた発熱性の半導体素子と、
前記基板の第2の主表面に設けられ、押圧により接点を接続させる複数のスイッチと、
前記基板の前記第2の主表面側に位置し、弾性部材からなるキーマットと、
前記基板の前記第2の主表面と対向する前記キーマットの一方の主表面に向けて前記複数のスイッチのそれぞれから突出する複数の突起部と、
前記キーマットの他方の主表面に設けられ、前記キーマットに対して押下げ可能なキーと、
を備え、
前記基板の面方向における前記半導体素子からの距離が所定範囲内にある特定スイッチから突出する前記突起部と前記キーマットとの間に隙間が設けられ、前記特定スイッチ以外の非特定スイッチから突出する前記突起部と前記キーマットとは接触していることを特徴とする携帯機器。
【請求項3】
前記所定範囲内にある特定スイッチは、前記基板の面方向における前記半導体素子からの距離が最短のスイッチであることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯機器。
【請求項4】
基板と、
前記基板の第1の主表面にスペーサを介して設けられた発熱体としての電源と、
前記基板の第2の主表面に設けられ、押圧により接点を接続させる複数のスイッチと、
前記基板の前記第2の主表面側に位置し、弾性部材からなるキーマットと、
前記基板の前記第2の主表面と対向する前記キーマットの一方の主表面に向けて前記複数のスイッチのそれぞれから突出する複数の突起部と、
前記キーマットの他方の主表面に設けられ、前記キーマットに対して押下げ可能なキーと、
を備え、
前記基板の面方向における前記スペーサからの距離が所定範囲内にある特定スイッチから突出する前記突起部と前記キーマットとの接触面は、前記特定スイッチ以外の非特定スイッチから突出する前記突起部と前記キーマットとの接触面に比べて面積が小さいことを特徴とする携帯機器。
【請求項5】
基板と、
前記基板の第1の主表面にスペーサを介して設けられた発熱体としての電源と、
前記基板の第2の主表面に設けられ、押圧により接点を接続させる複数のスイッチと、
前記基板の前記第2の主表面側に位置し、弾性部材からなるキーマットと、
前記基板の前記第2の主表面と対向する前記キーマットの一方の主表面に向けて前記複数のスイッチのそれぞれから突出する複数の突起部と、
前記キーマットの他方の主表面に設けられ、前記キーマットに対して押下げ可能なキーと、
を備え、
前記基板の面方向における前記スペーサからの距離が所定範囲内にある特定スイッチから突出する前記突起部と前記キーマットとの間に隙間が設けられ、前記特定スイッチ以外の非特定スイッチから突出する前記突起部と前記キーマットとは接触していることを特徴とする携帯機器。
【請求項6】
前記所定範囲内にある特定スイッチは、前記基板の面方向における前記スペーサからの距離が最短のスイッチであることを特徴とする請求項4または5に記載の携帯機器。
【請求項7】
前記特定スイッチに隣接する非特定スイッチから突出する前記突起部と前記キーマットとの接触面は、他のスイッチから突出する前記突起部と前記キーマットとの接触面に比べて面積が大きいことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の携帯機器。
【請求項8】
前記キーは、複数のキーからなるテンキーであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−110891(P2009−110891A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284595(P2007−284595)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】