説明

携帯無線端末

【課題】マルチアプリケーションシステムに対応し、かつ、そのアンテナ間のアイソレーションを十分に確保できる携帯無線端末を提供すること。
【解決手段】携帯無線端末において、第1筐体と、第2筐体と、第1筐体に設けられ、金属で構成された第1スライド部材と、第1のスライド部材の内部に設けられ,金属で構成された第2スライド部材と、第2スライド部材が第2の筐体に固定されることで、第1筐体と第2筐体とが伸縮自在に接続するスライド部と、第1筐体内に設けられた第1回路基板と、第2筐体内に設けられた第2回路基板と、第1回路基板に設けられた第1無線システムと、第2回路基板に設けられ、第1無線システムとは異なる動作周波数の第2無線システムを備え、第1無線システムのアンテナとして第1回路基板から第1スライド部材に給電し、第2無線システムのアンテナとして第2回路基板から第2スライド部材に給電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯無線端末に関し、特に複数の筐体が互いにスライド自在に連結された携帯無線端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1の筐体と第2の筐体とが互いにスライド自在に連結される携帯無線端末が知られている。この種のスライド式携帯無線端末としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがあった。
【0003】
図8は、前記特許文献1に記載された従来のスライド式携帯無線端末を示している。図8おいて、スライド式携帯無線端末は、スライドパーツ23とスライド溝21を設け、筐体が伸長した状態において、スライドパーツ23とスライド溝21とを勘合させ、電気的に導通させる。
【0004】
また、スライド溝21は導電線22を介して基板GND7と電気的に接続されており、筐体が伸長した状態ではスライドパーツと基板GND7は電気的に接続している。
【0005】
このような構成とすることで、第1の筐体と第2の筐体とが収納した状態(収納状態)、および伸長した状態(伸長状態)において、アンテナのGND条件を調整することができ、筐体の開閉状態によらず良好なアンテナ特性を得ることができる。
【0006】
また、特許文献2の図2には、スライド式携帯無線端末において、キー基板10の両端からLCD基板9へ給電するアンテナにおいて、それぞれの給電位相を逆相とすることで各基板の電流位相を同相とし、良好なアンテナ特性を得るスライド式携帯無線端末が記載されている。
【0007】
また、特許文献3には、スライドレール自体をアンテナとして動作させるスライド式携帯無線端末が記載されており、具体的には、スライド手段21に対して筐体1と筐体2の間で給電する給電手段7を備え、筐体1と筐体2とでダイポールアンテナとして動作させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−333387号公報(第11頁、第5図)
【特許文献2】特開2007−074667号公報(第11頁、第2図)
【特許文献3】国際公開第2006/092979号(第10頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の構成では、同時に動作する1つの周波数帯域に対応してGND条件を切り替える構成であったため、単一のアプリケーションに対応するアンテナの動作のみに対応し、同時に動作する複数のアプリケーションに対応するマルチアプリケーションシステムに対応する携帯無線端末に搭載することが困難であった。
【0010】
また、これらの従来技術には複数のアプリケーションを良好に動作させるアンテナを提供するために重要なパラメータであるそれぞれのアプリケーションに対応するアンテナ同士のアイソレーションを確保する技術が含まれていなかった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、マルチアプリケーションシステムに対応するアンテナを提供し、かつ、そのアンテナ間のアイソレーションを十分に確保できる携帯無線端末を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の携帯無線端末は、動作周波数が異なる複数の無線システムを搭載する携帯無線端末において、第1筐体と、第2筐体と、前記第1筐体に設けられ、金属で構成された第1スライド部材と、前記第1のスライド部材の内部に設けられ,金属で構成された第2スライド部材と、前記第2スライド部材が前記第2の筐体に固定されることで、前記第1筐体と前記第2筐体とが伸縮自在に接続するスライド部と、前記第1筐体内に設けられた第1回路基板と、前記第2筐体内に設けられた第2回路基板と、前記第1回路基板に設けられた第1無線システムと、前記第2回路基板に設けられ、前記第1無線システムとは異なる動作周波数の第2無線システムを備え、前記第1無線システムのアンテナとして前記第1回路基板から前記第1スライド部材に給電し、前記第2無線システムのアンテナとして前記第2回路基板から前記第2スライド部材に給電する構成を有する。
【0013】
この構成により、前記第1無線システムのアンテナと前記第2無線システムのアンテナとのアンテナの地板(以降アンテナGNDと記す)をそれぞれ異なる回路基板に分けることができ、良好なアンテナ間のアイソレーションを確保することができる。
【0014】
また、本発明の携帯無線端末は、前記第1スライド部材が、前記第1無線システムと前記第2無線システムのうち動作周波数の低い周波数1/10波長以上の長さを有したレールであり、前記第1筐体の一辺に沿って、筐体の伸縮方向に平行に配置される構成を有する。
【0015】
この構成により、前記無線システムの微小ではないアンテナとして動作させることができ、良好なアンテナ利得を得ることができる。
【0016】
また、本発明の携帯無線端末は、前記第2スライド部材が、前記第1スライド部材より筐体の伸縮方向の長さが短い構成を有する。
【0017】
この構成により、端末の伸縮/収納の自在さを損なうこと無く2つの無線システムのアンテナを構成することができる。
【0018】
また、本発明の携帯無線端末は、前記第1無線システムと前記第1スライド部材が電気的に接続される間に前記第2無線システムの動作周波数を遮断する第1フィルタ部を設ける構成を有する。
【0019】
この構成により、第2無線システムにおける第1無線システムの周波数帯域でのアイソレーションを確保することができ、無線システム全体としてより良好なアイソレーション特性を確保することができる。
【0020】
また、本発明の携帯無線端末は、前記第2無線システムと前記第2スライド部材が電気的に接続される間に前記第1無線システムの動作周波数を遮断する第2フィルタ部を設ける構成を有する。
【0021】
この構成により、第1無線システムにおける第2無線システムの周波数帯域でのアイソレーションを確保することができ、無線システム全体としてより良好なアイソレーション特性を確保することができる。
【0022】
また、本発明の携帯無線端末は、前記スライド部が収納された状態において、前記第1無線システムを前記スライド部の一方の端部から給電し、前記第2無線システムを前記スライド部の他方の端部から給電する構成を有する。
【0023】
この構成により、互いのアンテナのアンテナ給電点を物理的に離すことができ、より良好なアイソレーション特性を確保することができる。
【0024】
また、本発明の携帯無線端末は、前記スライド部の伸長および収納した状態を検出する検出手段と、前記第1スライド部材に設けられた第1給電部と、前記第1スライド部材の前記第1給電部とは異なる位置に設けられた前記第2給電部と、前記第1無線システムと、前記第1給電部または前記第2給電部を前記検出手段の検出結果によって切替接続する切替手段と、を備えた構成を有する。
【0025】
この構成により、スライド式携帯無線端末の伸縮/伸張状態で互いのアンテナ給電点を物理的に離すよう前記第1無線システムのアンテナ給電点を切り替えることができ、伸縮/収納状態によらず、良好なアイソレーション特性を確保することができる。
また、本発明の携帯無線端末は、前記第2スライド部材に設けられた前記第2無線システムの第3給電部を備え、前記切替手段は、前記携帯無線端末の伸縮状態によって前記第1給電部または前記第2給電部のいずれか一方から前記第3給電部とより距離を隔てた給電部を選択する構成を有する。
【0026】
この構成により、スライド式携帯無線端末の伸縮/伸張状態で互いのアンテナ給電点を物理的に離すよう前記第2無線システムのアンテナ給電点を切り替えることができ、伸縮/収納状態によらず、良好なアイソレーション特性を確保することができる。
【0027】
また、本発明の携帯無線端末は、同一周波数帯で動作する複数の無線システムを搭載する携帯無線端末において、第1筐体と、第2筐体と、前記第1筐体に設けられ金属で構成された少なくとも2つ以上の第1スライド部材と、前記第1のスライド部材の内部に設けられ、金属で構成された少なくとも2つ以上の第2スライド部材と、前記第2スライド部材が前記第2の筐体に固定されることで、前記第1筐体と前記第2筐体とが伸縮自在に接続するスライド部と、前記第1筐体内に設けられた第1回路基板と、前記第2筐体内に設けられた第2回路基板と、前記第1回路基板に設けられた第1無線システムと、前記第2回路基板に設けられ、前記第1無線システムとは異なる動作周波数の第2無線システムを備え、前記第1無線システムのアンテナとして前記第1回路基板から第1の前記第1スライド部材に給電し、前記第2無線システムのアンテナとして前記第2回路基板から前記給電した第1のスライド部材とは異なる前記第2スライド部材に給電する構成を有する。
【0028】
この構成により、同一周波数帯域で同時動作する複数のアンテナにおいて、アンテナGNDをそれぞれ異なる回路基板に分けることができ、良好なアンテナ間のアイソレーションを確保することができる。
【0029】
また、本発明の携帯無線端末は、前記第1スライド部材が、前記第1無線システムと前記第2無線システムのうち動作周波数の低い周波数1/10波長以上の長さを有したレールであり、前記第1筐体の一辺に沿って筐体の伸縮方向に平行に配置される構成を有する。
【0030】
この構成により、前記無線システムの微小ではないアンテナとして動作させることができ、良好なアンテナ利得を得ることができる。
【0031】
また、本発明の携帯無線端末は、前記第2スライド部材が、前記第1スライド部材より筐体の伸縮方向の長さが短い構成を有する。
【0032】
この構成により、端末の伸縮/収納の自在さを損なうこと無く2つの無線システムのアンテナを構成することができる。
【0033】
また、本発明の携帯無線端末は、前記第1回路基板と前記第2回路基板は、前記第1のスライド部材および第2のスライド部材と前記第1回路基板および前記第2回路基板が重なる部位の導電性材質を取り除く構成を有する。
【0034】
この構成により、前記スライド部材の周りから導体を遠ざけることができ、高利得・広帯域なアンテナを提供することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の携帯無線端末によれば、マルチアプリケーションシステムに対応するアンテナを提供し、かつ、そのアンテナ間のアイソレーションを十分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(a)本発明の実施の形態1における携帯無線端末の正面図、(b)本発明の実施の形態1における携帯無線端末の第1の筐体の背面図、(c)本発明の実施の形態1における携帯無線端末の第2の筐体の正面図
【図2】本発明の実施の形態1における携帯無線端末の側面図
【図3】(a)本発明の実施の形態1における携帯無線端末が収納状態のときの第1筐体の内部構造を示す図、(b)本発明の実施の形態1における携帯無線端末が収納状態のときの第2筐体の内部構造を示す図
【図4】(a)本発明の実施の形態1における携帯無線端末が伸長状態のときの第1筐体の内部構造を示す図、(b)本発明の実施の形態1における携帯無線端末が伸長状態のときの第2筐体の内部構造を示す図
【図5】本発明の実施の形態1における携帯無線端末の筐体伸長状態のアイソレーション特性のシミュレーション結果を示す図
【図6】本発明の実施の形態1における携帯無線端末の切替スイッチを1つとした場合の第1筐体の内部構造を示す図
【図7】本発明の実施の形態2における携帯無線端末が伸長状態のときの第1筐体の内部構造を示す図
【図8】従来のスライド式携帯無線端末を示す図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0038】
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明の実施の形態1における携帯無線端末の正面図である。また、図1(b)は、本発明の実施の形態1における携帯無線端末の第1の筐体の背面図である。また、図1(c)は、本発明の実施の形態1における携帯無線端末の第2の筐体の正面図である。
【0039】
第1の筐体1は、正面にディスプレイ部2、操作キー3aが備えられている。また、第1の筐体1は、背面にスライドレール5aおよび5b、スライダー6aおよび6b、スライダー側固定用穴8a〜8d、磁気センサ50が備えられている。
【0040】
ディスプレイ部2は、例えば、液晶表示装置(LCD)であり、携帯無線端末が受信した画像データ等を表示する。また、操作キー3aは、ディスプレイ部2の下部に配置され、ユーザの入力操作を受け付ける。
【0041】
スライドレール5aおよび5b(第1スライド部材)は金属で構成されており、長さは80mm程度であり、第1の筐体の長手方向に沿って設けられている。
【0042】
なお、スライドレール5aおよび5bは長さ80mm程度に限るものではなく、スライド伸張収納自在に可動することを阻害しなければ良い。
【0043】
スライドレール5a内にはレール内を自在に動くスライダー6aが設けられ、スライドレール5b内にはレール内を自在に動くスライダー6bがそれぞれ設けられている。スライダー6aおよび6b(第2スライド部材)は金属で構成されており、スライドレール5aおよび5bよりも短く構成されている。
【0044】
スライダー側固定用穴8aおよび8bは、スライダー6aの長手方向の一方の端部側と他方の端部側にそれぞれ設けられ、スライダー側固定用穴8cおよび8dは、スライダー6bの長手方向の一方の端部側と他方の端部側にそれぞれ設けられている。
【0045】
磁気センサ50は第1の筐体、マグネット51は第2の筐体にそれぞれ配置され、筐体が収納状態の場合は磁気センサ50はマグネット51の磁力を検出する。筐体が伸長状態の場合は両者が離れているため、磁力を検出できない。このようにして携帯無線端末の伸長、収納状態を検出する。
【0046】
第2の筐体4は、操作キー3b、筐体側固定用穴7a〜7d、マグネット51が設けられている。
【0047】
操作キー3bは、第2の筐体4に配置され、ユーザの入力操作を受け付ける。
【0048】
筐体側固定用穴7a〜7dは、第2の筐体4に配置され、第1の筐体1と第2の筐体4の固定に用いる。
【0049】
ここで、第2の筐体4に設けられた筐体側固定用穴7a〜7dは、スライダー6aおよび6bに備えられたスライダー側固定用穴8a〜8dと、ねじ(図示しない)にて結合される。これにより、第1の筐体1と第2の筐体4は、スライダー6aおよび6bが可動可能な範囲でスライド自在となる。
【0050】
また、スライドレール5aおよび5bとスライダー6aおよび6bとは、導体で構成されており、第1の筐体1と第2の筐体4とが閉状態の場合、もしくは、第1の筐体1と第2の筐体4とが開状態の場合、いずれの状態においても電気的に接続されている。
【0051】
図2は、本発明の実施の形態1における携帯無線端末の側面図である。
【0052】
第1の筐体1の内部には、第1の基板9が設けられている。また、第2の筐体4の内部には、第2の基板17が設けられている。
【0053】
ここで、第1の基板9と第2の基板17は、接続ケーブル22を介して電気的に接続されている。接続ケーブル22は、筐体、基板を開閉自在に可動させるため、100mm程度の長さを有する。
【0054】
なお、接続ケーブル22の長さは100mm程度に限るものではなく、携帯無線端末において、開閉自在に可動することを阻害しなければよい。
【0055】
図3(a)は、本発明の実施の形態1における携帯無線端末が閉状態のときの第1筐体1の内部構造を示す図である。
【0056】
第1の筐体1内部には、第1の基板9が内蔵されている。第1の基板9上には第1の無線システムを動作させるための第1の無線部10が実装されており、第1の整合回路11と第2の周波数帯遮断部12、切替スイッチ13、給電線路15、スライドレール接地用パッド16aもしくは16bを介してスライドレール5aに給電される。
【0057】
第1の無線部10は、例えば、デジタルTV放送サービスの一つであるワンセグメント放送(以降ワンセグと記す)受信用のシステムに対応するものであり、対応周波数帯域は473MHz〜770MHzである。
【0058】
切替スイッチ13は、例えば、SPDT(Single−Port Double−Throw)スイッチであり、開閉制御信号14を用いて経路を切り替える。
【0059】
開閉制御信号14は、例えば、第1の筐体1に磁気センサ50を配置、第2の筐体4にマグネット51を配置して筐体の開閉を検出し、その信号を電圧に置き換えて制御する。
【0060】
図3(a)に示すように、筐体閉時はスライダー6aが第1の筐体上部に存在する。このとき、第1の筐体1の上部側の切替スイッチ13aは第2の周波数遮断部12と接続されず開放状態、逆に第1の筐体1の下部側の切替スイッチ13bは第2の周波数遮断部12と接続するように開閉制御信号14を生成する。
【0061】
図3(b)は、本発明の実施の形態1における携帯無線端末が閉状態のときの第2筐体4の内部構造を示す図である。
【0062】
第2の筐体4内部には、第2の基板17が内蔵されている。第2の基板17には第2の無線システムを動作させるための第2の無線部18が実装されており、第2の整合回路19と第1の周波数帯遮断部20を介し、スライダー接地用パッド21を介してスライダー6aに給電される。
【0063】
第2の無線部18は、例えば、WCDMA方式のセルラー送受信に対応するものであり、対応周波数は830MHz〜885MHzである。
【0064】
スライドレール5aおよび5bの長さ80mmは、本実施例に示す一番低い周波数である473MHzの波長(λ≒634mm)に対して1/10以上となっている。
【0065】
なお、本実施例ではワンセグとWCDMA方式のセルラー対応周波数に関して記載しているが、例えばW−LAN(Wireless−Local Area Network)システム:対応周波数2.4GHz帯など、無線システムの対応周波数の波長がスライドレールの長さの1/10以上であれば同様の効果を得ることができる。
【0066】
図4(a)は、本発明の実施の形態1における携帯無線端末が開状態のときの第1筐体1の内部構造を示す図である。
【0067】
図4(a)に示すように、筐体開時はスライダー6aが第1の筐体下部に存在する。このとき、第1の筐体1の上部側の切替スイッチ13aは第2の周波数遮断部12と接続し、逆に第1の筐体1の下部側の切替スイッチ13bは第2の周波数遮断部12と接続されず開放されるように開閉制御信号14を生成する。
【0068】
図4(b)は、本発明の実施の形態1におけるスライド式携帯無線端末が開状態のときの第2筐体の内部構造を示す図である。第2の筐体4内部の構成については、図3(b)に示した構成と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0069】
ここで、アイソレーションについて簡単に説明する。アイソレーションとは、アンテナ間または無線システム間の「独立度」を示す値である。アンテナ間のアイソレーションで考えると、アイソレーションが0dBだった場合には、一方のアンテナで放射した電力が、そのまま他方のアンテナで全て受信してしまうことを示している。すなわち、空間に放射する電力がなくなるため、アンテナとしての動作が行われなくなる。
【0070】
また、アイソレーションが高いほど、一方のアンテナの変化による影響を他方のアンテナが受けにくくなる。マルチアプリケーションシステムを搭載する携帯無線端末において、アイソレーションは非常に重要なパラメータであり、各アンテナおよび無線システム間のアイソレーションが高ければ高いほど良好な無線システムを提供することができる。
【0071】
図5は、本発明の実施の形態1におけるスライド式携帯無線端末の筐体開状態のアイソレーション特性のシミュレーション結果を示す図である。
【0072】
アイソレーションを確保できることを示すため、シミュレーションにより、その効果を確認した。ここでは、筐体開き状態でのシミュレーションを実施した。その結果を図5に示す。今回実施したシミュレーションの条件を以下に示す。基板サイズは、100mm×45mm×0.5mm(長さ×幅×厚み)、スライドレールのサイズは80mm×5mm×2mm、スライダーのサイズは15mm×4mm×3mmとした。
【0073】
接続ケーブルのサイズは100mm×15mm×0.05mmとし、それぞれの基板に接続し、電気的に導通させる。その際のそれぞれの基板の間隔は10mmとした。
【0074】
筐体開状態の定義は、一方の基板を60mmスライドさせた状態とした。給電方法については、シミュレーションの簡略化のため、スライドレールおよびスライダーに別基板から直接給電するモデルを採用した。比較のため、1つの基板からスライドレールの両端に給電した場合のアイソレーション特性も図示する。図5に示すとおり、0.5GHz以上の周波数帯にて別基板から給電する構成のほうが10dB程度良好なアイソレーション特性を得られることがわかる。
【0075】
以上のことから、本構成により各々の無線システム間のアイソレーションを十分に確保することが確認され、本発明の有効性を示すことができる。
【0076】
なお、本実施の形態では切替スイッチ13を2つ設けているが、1つとしてもよい。
【0077】
図6は、本発明の実施の形態1における携帯無線端末の切替スイッチを1つとした場合の第1筐体1の内部構造を示す図である。
【0078】
切替制御信号14cにより、スライド端末が収納状態の場合は、切替スイッチ13はスライドレール接地用パッド16aと接続し、スライド端末が伸長状態の場合は、スライドレール接地用パッド16bと接続する。
【0079】
その場合も、切替スイッチ13を2つ設けているときと同様の効果を得ることができる。さらに切替スイッチを削減することができ、低コスト化を実現することができる。
【0080】
また、第1の基板9と第2の基板17について、給電されるスライドレール5aの周辺部分、本実施の形態では、スライドレール5aと第1の基板9および第2の基板17とが正面視で重なる箇所周辺のGNDを削除する。
【0081】
本構成によりスライドレール5aの放射素子としての放射特性を向上させることができ、良好なアンテナ特性を得ることができる。
【0082】
なお、本実施の形態では第1の筐体1側にスライドレール5を配置しているが、第2の筐体4側にスライドレール5を配置してもよい。その場合も同様の効果を得ることができる。
【0083】
以上のことから、本実施の形態1における構成により、専用の部材を配置することなく、かつ各アプリケーションのアイソレーションを確保することで、良好な特性が得られるマルチアプリケーション対応のスライド式携帯無線端末を提供することができる。
【0084】
また、開閉それぞれの状態で給電する場所を切り替えることにより、開閉それぞれの状態に関わらず良好な特性が得られる携帯無線端末を提供することができる。
【0085】
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態における携帯無線端末を示す。
【0086】
図7(a)は、本発明の実施の形態2における携帯無線端末の第1の筐体1の内部構造を示す。
【0087】
第1の筐体1内部には、第1の基板9が内蔵されている。第1の基板9上には第1の無線システムを動作させるための第1の無線部10が実装されており、第1の整合回路11と、給電線路15、スライドレール接地用パッド16cを介してスライドレール5aに給電される。
【0088】
図7(b)は、本発明の実施の形態2における携帯無線端末の第2の筐体4の内部構造を示す。
【0089】
第2の筐体4内部には、第2の基板17が内蔵されている。第2の基板17には第2の無線システムを動作させるための第2の無線部18が実装されており、第2の整合回路19、スライダー接地用パッド21を介してスライダー6bに給電される。
【0090】
第1の無線部10と第2の無線部18は、例えば、WCDMA方式のセルラー送受信に対応するものであり、対応周波数は830MHz〜885MHzである。
【0091】
スライドレール5aおよび5bの長さ80mmは、本実施例に示す一番低い周波数である830MHzの波長(λ≒361mm)に対して1/10以上となっている。
【0092】
なお、本実施例ではワンセグとWCDMA方式のセルラー対応周波数に関して記載しているが、例えばW−LAN(Wireless−Local Area Network)システム:対応周波数2.4GHz帯など、無線システムの対応周波数の波長がスライドレールの長さの1/10以上であれば同様の効果を得ることができる。
【0093】
また、第1の基板9と第2の基板17は接続ケーブル22を介して電気的に接続されている。第1の筐体1と第2の筐体4がスライドするのと同様に第1の基板9と第2の基板17もスライドする。接続ケーブル22は上下基板を電気的に接続するものであり、筐体・基板をスライド自在に可動させるため、100mm程度の長さを有する。
【0094】
なお、接続ケーブル22の長さは100mm程度に限るものではなく、スライド式携帯無線端末において、スライド自在に可動することを阻害しなければよい。
【0095】
また、第1の基板9と第2の基板17について、給電されるスライドレール5aおよび5bの周辺部分、本実施の形態では、スライドレール5aおよび5bと、第1の基板9および第2の基板17とが正面視で重なる箇所周辺のGND、を削除する。
【0096】
スライドレール5aにはスライダー6aを介して第1の基板9に実装された第1の無線部10から給電を行い、スライドレール5bには第2の基板17に実装された第2の無線部18から直接給電を行う。
【0097】
第1の実施の形態と異なり、スライドレール5bと正面視で重なる箇所のGNDも削除する理由は、スライドレール5bもアンテナとして動作させるためである。
【0098】
第1の実施の形態の場合と比べて、本構成は同一周波数帯で同時動作するアプリケーションを想定したものであり、例えばMIMO(Multi−Input Multi−Output)システムやW−LAN(Wireless−Local Area Network)システムに対応したスライド式携帯無線端末において、2つのアンテナ間のアイソレーションを確保することができ、良好な特性を有する無線端末を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明にかかる携帯無線端末は、複数のアプリケーションに対応したアンテナを省スペースに設置でき、かつ良好な特性を提供することができるので、複数のアンテナを搭載することのある携帯電話等に有用である。
【符号の説明】
【0100】
1 第1の筐体
2 ディスプレイ部
3 操作キー
4 第2の筐体
5 スライドレール
6 スライダー
7 筐体側固定用穴
8 スライダー側固定用穴
9 第1の基板
10 第1の無線部
11 第1の整合回路
12 第2の周波数遮断部
13 切替スイッチ
14 開閉制御信号
15 給電線路
16 スライドレール接地用パッド
17 第2の基板
18 第2の無線部
19 第2の整合回路
20 第1の周波数遮断部
21 スライダー接地用パッド
22 接続ケーブル
50 磁気センサ
51 マグネット
100 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作周波数が異なる複数の無線システムを搭載する携帯無線端末において、
第1筐体と、
第2筐体と、
前記第1筐体に設けられ、金属で構成された第1スライド部材と、
前記第1のスライド部材の内部に設けられ、金属で構成された第2スライド部材と、
前記第2スライド部材が前記第2の筐体に固定されることで、前記第1筐体と前記第2筐体とが伸縮自在に接続するスライド部と、
前記第1筐体内に設けられた第1回路基板と、
前記第2筐体内に設けられた第2回路基板と、
前記第1回路基板に設けられた第1無線システムと、
前記第2回路基板に設けられ、前記第1無線システムとは異なる動作周波数の第2無線システムを備え、
前記第1無線システムのアンテナとして前記第1回路基板から前記第1スライド部材に給電し、前記第2無線システムのアンテナとして前記第2回路基板から前記第2スライド部材に給電することを特徴とする携帯無線端末。
【請求項2】
前記第1スライド部材は、前記第1無線システムと前記第2無線システムのうち動作周波数の低い周波数1/10波長以上の長さを有したレールであり、前記第1筐体の一辺に沿って、筐体の伸縮方向に平行に配置されることを特徴とする請求項1記載の携帯無線端末。
【請求項3】
前記第2スライド部材は、前記第1スライド部材より筐体の伸縮方向の長さが短いことを特徴とする請求項2記載の携帯無線端末。
【請求項4】
前記第1無線システムと前記第1スライド部材が電気的に接続される間に前記第2無線システムの動作周波数を遮断する第1フィルタ部を設けることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の携帯無線端末。
【請求項5】
前記第2無線システムと前記第2スライド部材が電気的に接続される間に前記第1無線システムの動作周波数を遮断する第2フィルタ部を設けることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の携帯無線端末。
【請求項6】
前記スライド部が収納された状態において、前記第1無線システムを前記スライド部の一方の端部から給電し、前記第2無線システムを前記スライド部の他方の端部から給電することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の携帯無線端末。
【請求項7】
前記スライド部の伸長および収納した状態を検出する検出手段と、
前記第1スライド部材に設けられた第1給電部と、
前記第1スライド部材の前記第1給電部とは異なる位置に設けられた前記第2給電部と、
前記第1無線システムと、前記第1給電部または前記第2給電部を前記検出手段の検出結果によって切替接続する切替手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の携帯無線端末。
【請求項8】
前記第2スライド部材に設けられた前記第2無線システムの第3給電部を備え、
前記切替手段は、前記携帯無線端末の伸縮状態によって前記第1給電部または前記第2給電部のいずれか一方から前記第3給電部とより距離を隔てた給電部を選択することを特徴とする請求項7記載の携帯無線端末。
【請求項9】
同一周波数帯で動作する複数の無線システムを搭載する携帯無線端末において、
第1筐体と、
第2筐体と、
前記第1筐体に設けられ金属で構成された少なくとも2つ以上の第1スライド部材と、
前記第1のスライド部材の内部に設けられ、金属で構成された少なくとも2つ以上の第2スライド部材と、
前記第2スライド部材が前記第2の筐体に固定されることで、前記第1筐体と前記第2筐体とが伸縮自在に接続するスライド部と、
前記第1筐体内に設けられた第1回路基板と、
前記第2筐体内に設けられた第2回路基板と、
前記第1回路基板に設けられた第1無線システムと、
前記第2回路基板に設けられ、前記第1無線システムとは異なる動作周波数の第2無線システムを備え、
前記第1無線システムのアンテナとして前記第1回路基板から第1の前記第1スライド部材に給電し、前記第2無線システムのアンテナとして前記第2回路基板から前記給電した第1のスライド部材とは異なる前記第2スライド部材に給電することを特徴とする携帯無線端末。
【請求項10】
前記第1スライド部材は、前記第1無線システムと前記第2無線システムのうち動作周波数の低い周波数1/10波長以上の長さを有したレールであり、前記第1筐体の一辺に沿って筐体の伸縮方向に平行に配置されることを特徴とする請求項9記載の携帯無線端末。
【請求項11】
前記第2スライド部材は、前記第1スライド部材より筐体の伸縮方向の長さが短いことを特徴とする請求項10記載の携帯無線端末。
【請求項12】
前記第1回路基板と前記第2回路基板は、前記第1のスライド部材および第2のスライド部材と前記第1回路基板および前記第2回路基板が重なる部位の導電性材質を取り除くことを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の携帯無線端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−234179(P2011−234179A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103305(P2010−103305)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】