説明

携帯無線装置

【課題】携帯無線装置のスライド構造の開閉によるアンテナ特性への影響を、構成を複雑にすることなく改善する。
【解決手段】携帯無線装置1は、第1筐体10と第2筐体20が相互に重なり、スライド可能に連結されて構成されている。第2筐体20の第1筐体10に対向する側に、導電性材料からなり基板22の接地回路に接続されたスライド用部材21が取り付けられている。基板22に、不平衡型アンテナ25に対する給電点23が設けられている。第1筐体10の第2筐体20に対向する側に、スライド用部材係合部11が形成されている。スライド用部材21は、スライド用部材係合部11に対してスライド可能に係合する。第1筐体10のうち導電性材料からなる一部に下向きに導通用部材14が設けられ、スライド構造を開状態にしたときスライド用部材21が導通用部材14に接触して第1筐体10のうち導電性材料からなる一部と導通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯無線装置に係り、特にいわゆるスライド型の筐体構成を有する携帯無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話機等の携帯無線装置は、多機能、高性能化と小型化の要求を両立させるため、2筐体が開閉可能に連結されて構成されたものが主流を占めている。2筐体の連結には、折りたたみ型、2軸ヒンジを備えた折りたたみ型(ダブルスウィーベル型と呼ぶことがある。)、スライド型等の方式が用いられている。これらのうちスライド型は、開閉操作が簡便で、2筐体を閉じた状態でも表示画面を視認しやすいという特徴を有している。
【0003】
相互にスライド可能に係合した2筐体のうちいずれか一方に、アンテナが内蔵される。各筐体は、一部が金属等の導電性材料で形成されていることがある。各筐体は、回路基板の接地パターンのような導体部分を内包している。アンテナとこれらの筐体又は回路の導体部分の位置関係はスライド構造の開閉によって変化するため、アンテナ特性に影響することがある。
【0004】
このような事情を背景として、スライド型の携帯無線装置(スライド型携帯端末)の2筐体を相互に開き又は閉じたそれぞれの状態において、アンテナ特性を良好に保つことを目的とする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
上記の特許文献1に記載されたスライド型携帯端末は、導体部材が設けられた第1の筐体と、内蔵アンテナ及び給電回路が設けられた第2の筐体と、上記第1の筐体と前記第2の筐体をスライド可能に連結するスライド手段と、導体部材に接続されて同時にスライドすると共にスライド構造の開状態において上記内蔵アンテナ及び給電回路に接続されるように設けられた導電性結合部材とを備えている。
【0006】
特許文献1に記載されたスライド型携帯端末では、スライド構造の開状態において内蔵アンテナと第1の筐体側の導体部材が並列に第2の筐体側の給電回路に接続される。その結果、給電回路に対する接地回路(第2の筐体に含まれる接地部材)と第1の筐体側の導体部材がダイポールアンテナを構成し、内蔵アンテナと共に励振される(開状態において内蔵アンテナへの給電を遮断する変形例も記載されている。)。一方、スライド構造の閉状態においては内蔵アンテナのみが励振される。さらに開閉検出部と2つの整合回路を備え、開状態と閉状態のそれぞれに対してアンテナの整合条件を合わせるように2つの整合回路を切り換える構成も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開第2008−5207号公報(第7及び8ページ、図7、図8、図10、図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1に開示されたスライド型携帯端末では、スライド構造の開状態において第1の筐体側の導体部材が導電性結合部材を介して第2の筐体側の給電回路に接続されることにより、第1の筐体及び第2の筐体にまたがって構成されるダイポールアンテナが励振される。一方、スライド構造の閉状態においては、内蔵アンテナのみが励振される。
【0009】
特許文献1に開示されたスライド型携帯端末は、スライド構造の開閉に伴う上述した回路構成の変化に対応して、導電性結合部材による接続の切り換えとは別に、整合回路の切り換えや内蔵アンテナ接続の切り換えを必要とする。すなわち、回路構成を複雑にして筐体の小型化を難しくするという問題がある。
【0010】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、携帯無線装置のスライド構造の開閉によるアンテナ特性への影響を、構成を複雑にすることなく改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の携帯無線装置は、第1の筐体及び第2の筐体が相互にスライドすることにより開閉可能に連結されて構成された携帯無線装置において、前記第1の筐体の少なくとも一部を構成する導体部と、導電性材料からなり、前記第2の筐体に含まれる接地回路に接続されて前記第2の筐体に取り付けられると共に前記第1の筐体に対してスライド可能に係合して設けられたスライド用部材と、前記第2の筐体に設けられると共に前記第2の筐体に含まれる給電回路に接続された不平衡型のアンテナと、導電性材料からなり、前記第1の筐体の導体部に接続されると共に前記第1の筐体及び前記第2の筐体が相互に開いた状態において前記スライド用部材に接触し導通するように設けられた導通用部材とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一方の筐体に不平衡型のアンテナを設けたスライド型の携帯無線装置において、スライド構造を開状態にしたときに他方の筐体の導体部分が接地回路に接続されるように構成することにより、スライド構造の開閉によるアンテナ特性への影響を、構成を複雑にすることなく改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に係る携帯無線装置の主要な部分を、スライド構造の閉状態において表す斜視図。
【図2】本発明の実施例に係る携帯無線装置の主要な部分を、スライド構造の開状態において表す斜視図。
【図3】本発明の実施例に係る携帯無線装置の主要な部分を、スライド構造の閉状態において模式的に表す側面図。
【図4】本発明の実施例に係る携帯無線装置の主要な部分を、スライド構造の開状態において模式的に表す側面図。
【図5】本発明の実施例に係る携帯無線装置のアンテナの放射効率を評価した実験例のデータを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1ないし図5を参照して、本発明の実施例を説明する。なお以下の各図を参照しながら上下左右又は水平、垂直(鉛直)をいうときは、特に断らない限り、図が表された紙面における上下左右又は水平、垂直(鉛直)を意味するものとする。また、各図の間で同一の符号は、同一の構成を表すものとする。
【0015】
図1は、本発明の実施例に係る携帯無線装置1の主要な部分を表す斜視図である。携帯無線装置1は、第1筐体10と第2筐体20が相互に重なり、スライド可能に連結されて構成されている(図1は、説明の便宜上、第1筐体10と第2筐体20の間隔をやや空けて表している。図1の水平方向における第1筐体10と第2筐体20の位置関係は、スライド構造の閉状態に対応する。)。第1筐体10は、少なくとも一部が金属等により形成された導体部をなしている。
【0016】
第2筐体20の第1筐体10に対向する側に、金属等の導電性材料からなるスライド用部材21が取り付けられている。第1筐体10の第2筐体20に対向する側に、スライド用部材係合部11が形成されている。スライド用部材21は、第1筐体10と第2筐体20が連結されて携帯無線装置1が組み立てられた状態で、スライド用部材係合部11に対して係合する。図1の上部(第1筐体10の側)において、スライド用部材係合部11に対して係合した状態にあるスライド用部材21を破線で表している。
【0017】
スライド用部材21は、スライド用部材係合部11に対して両向きのブロック矢印で表すようにスライドすることができる。上記の各部からなるスライド構造は、スライドを円滑に行わせるための図示しないばね部材を含んでいてもよい。
【0018】
第2筐体20に固定されて取り付けられたスライド用部材21が第1筐体10のスライド用部材係合部11に対してスライド可能に係合することにより、第1筐体10と第2筐体20は相互にスライド可能に連結される。図1に示した左向きのブロック矢印は、スライド構造を開く(閉状態から開状態にする)ときの第2筐体20に対する第1筐体10のスライド方向を表す。
【0019】
上記の第1筐体10の導体部に含まれる箇所に、導通用部材14が下向きに設けられている。導通用部材14は、例えば金属又は導電性ガスケット等の導電性材料からなる。なお、第1筐体10の導体部の一部を下向き突状に加工することによって導通用部材14に相当する部分を形成してもよい。
【0020】
第2筐体20の内部に、接地回路を有してなる基板22(破線で表す。)が設けられている。基板22は、例えばスライド用部材21の左側長辺の切れ込みを通して配設される図示しないフレキシブル基板を介して、第1筐体10に内蔵された図示しない基板と接続されることができる。なお、スライド用部材21の形状は上記の例に限定されるものではない。
【0021】
基板22に設けられた給電点23において、不平衡型のアンテナ25が基板22に設けられた図示しない無線回路に接続されている。スライド用部材21は、基板22の接地回路に接続されている。アンテナ25が上記の無線回路によって励振されたとき、基板22の接地回路に誘起される不平衡電流が電磁波の放射源として作用する。なお、第2筐体20の少なくとも一部が導電性材料を用いて構成されたり加工されたりしていれば、基板22の接地回路に代えて(又は基板22の接地回路に加えて)第2筐体20の当該導電性を有する一部にスライド用部材21を接続してもよい。
【0022】
図2は、携帯無線装置1の主要な部分を図1と同様に表す斜視図である。ただし、図2の水平方向における第1筐体10と第2筐体20の位置関係は、スライド構造の開状態に対応する。図2に表した各部の符号は図1と同じであるから、再度の説明は省略する。ただしスライド構造が開状態にあるから、図1に示したのと異なりスライド用部材21がスライド用部材係合部11の右方に位置している。
【0023】
その結果、導通用部材14がスライド用部材21に接触する。上述したように、導通用部材14は導電性材料からなり、第1筐体10の導体部に含まれている。スライド用部材21は導電性材料からなり、基板22の接地回路に接続されている。したがって、図2に示したスライド構造の開状態においては、第1筐体10の導体部が基板22の接地回路に導通する。
【0024】
したがって、アンテナ25が上記の無線回路によって励振されたとき基板22の接地回路に誘起される不平衡電流は第1筐体10の導体部にまで分布するから、当該不平衡電流が分布する範囲をアンテナとみなしたときの放射効率(又は利得)を向上させることができる。アンテナ25に対する接続条件はスライド構造の開閉によって変わらないから、整合回路を切り換えたりする必要がない。
【0025】
図3は、図1に表した携帯無線装置1の主要な部分の位置関係を、側面方向(基板22の短辺に平行な方向)から見て模式的に表した図である。図4は、図2に表した携帯無線装置1の主要な部分の位置関係を、同じく側面方向から見て模式的に表した図である。
【0026】
図3に示すように、スライド構造の閉状態においては、導通用部材14とスライド用部材21が互いに離れている。その結果、第1筐体10の導体部が基板22の接地回路に導通していない。図3ではアンテナ25は左方にあって、図の左斜め上方から見たとき第1筐体10に完全に覆われることはない。したがって、第1筐体10の導体部が基板22の接地回路に導通していなくても放射効率の低下がある程度抑えられる。
【0027】
図4に示すように、スライド構造の開状態においては、導通用部材14とスライド用部材21が互いに接触する。その結果、前述したように第1筐体10の導体部が基板22の接地回路に導通する。図4ではアンテナ25は中央付近にあって、図の上方から見たとき第1筐体10にかなりの程度覆われてしまう。したがって、第1筐体10の導体部を基板22の接地回路に導通させることによって放射効率の低下を補うことに意味がある。
【0028】
上述したように、図2又は図4に示したスライド構造の開状態において、第1筐体10の導体部が導通用部材14及びスライド用部材21を介して基板22の接地回路に導通する。当該導通回路の一部にリアクタンス素子を挿入することによって、放射効率の低下を補う周波数を調整することもできる。
【0029】
図5は、携帯無線装置1のアンテナ25の放射効率を評価した実験例のデータを示すグラフである。図5の横軸は周波数(単位はメガヘルツ(MHz)。なお、数値を連続的に表すものではない。)、縦軸は放射効率(単位はデシベル(dB))を表す。実線のグラフは、携帯無線装置1の構成例(導通用部材14を設けている。)のデータを表す。破線のグラフは、導通用部材14を設けずにその他は同じとした構成例のデータを表す。図5に示すように、導通用部材14を設けたことにより、携帯電話用の周波数800MHz帯において放射効率が6ないし7dB程度改善されることがわかる。
【0030】
以上の実施例の説明において、携帯無線装置及びアンテナの方式、形状、構成、接続、その他の部材の形状、配置等は例示であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまな変形が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 携帯無線装置
10 第1筐体
11 スライド用部材係合部
14 導通用部材
20 第2筐体
21 スライド用部材
22 基板
23 給電点
25 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の筐体及び第2の筐体が相互にスライドすることにより開閉可能に連結されて構成された携帯無線装置において、
前記第1の筐体の少なくとも一部を構成する導体部と、
導電性材料からなり、前記第2の筐体に含まれる接地回路に接続されて前記第2の筐体に取り付けられると共に前記第1の筐体に対してスライド可能に係合して設けられたスライド用部材と、
前記第2の筐体に設けられると共に前記第2の筐体に含まれる給電回路に接続された不平衡型のアンテナと、
導電性材料からなり、前記第1の筐体の導体部に接続されると共に前記第1の筐体及び前記第2の筐体が相互に開いた状態において前記スライド用部材に接触し導通するように設けられた導通用部材と
を備えたことを特徴とする携帯無線装置。
【請求項2】
前記アンテナは、前記第1の筐体及び前記第2の筐体が相互に開いた状態において前記第1の筐体に対して重なる位置に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の携帯無線装置。
【請求項3】
前記導通用部材は、リアクタンス素子を介して前記第1の筐体の導体部と前記スライド用部材の間を導通させることを特徴とする請求項1に記載の携帯無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−217184(P2011−217184A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84340(P2010−84340)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(310022372)富士通東芝モバイルコミュニケーションズ株式会社 (219)
【Fターム(参考)】