説明

携帯用電子機器の金属被覆構造部品

【解決手段】 携帯用電子機器の構造部品を金属でコーティングした合成樹脂で作製した。部品は軽量である一方で剛性等の優れた物理的特性を有する。それらは携帯電話、携帯DVDプレーヤー、および携帯情報端末等の有用な機器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
金属で被覆した合成樹脂は、携帯電話等の携帯用電子機器の構造部材である。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、携帯情報端末(personal digital assistants:PDAs)、音楽記録再生装置(例えば、i−Pods(登録商標))、携帯DVDプレーヤー、電子マルチメーター、ノート型パソコン等の携帯用電子機器(portable electronic devices:PEDs)は、現在多くの社会で至る所に存在する。便宜上、それら機器は小さく、および/または軽量であることがしばしば望まれる一方で、それらは通常の操作で損傷しないように、およびできれば落とすといった時々の事故に耐えるように、一定の構造強度をさらに保持する必要がある。
【0003】
従って、それら機器へ組み込まれる構造部材の主要機能は、前記機器へ強度および/または剛性および/または耐衝撃性を提供することであり、できれば前記機器の様々な内部構成部品および/またはPEDケース(アウターハウジング)の一部または全部の取り付け場所もまた提供することである。それら部材に要求される強度および/または剛性のため、それらは通常は金属、時にマグネシウムまたはアルミニウム等の低密度金属で作製する。しかし、それら部品への金属の使用は難点を有する。マグネシウム等の一部の低密度金属は幾分高価であり、必要とされる小さく、および/または複雑な部品の製造は通常高い費用がかかる。金属の使用はまた、時に設計の柔軟性を制限する。
【0004】
熱硬化性樹脂および熱可塑性物質等の合成樹脂は、複雑な部品の製作および低密度等のいくつかの制限を克服できるが、しかし典型的な合成樹脂はPEDsの構成部材とするための強度および/または剛性を通常は有しない。従って、PEDsのための改良した構造部材が必要である。
【0005】
米国特許第5,352,266号および第5,433,797号明細書は、金属上へのナノ結晶金属のめっきを記述している。合成樹脂のコーティングについては述べられていない。
【0006】
米国特許第5,837,086号明細書は、成形型中でのプラスティック部品の金属箔によるコーティングを記述している。当該発明は電気的に遮蔽された電子ケースを提供するために記述されている。構造部材または携帯用電子機器については述べられていない。
【0007】
米国特許第6,966,425号明細書は、ハウジング上の多層金属コーティングを有する携帯電話ハウジングを記述している。構造部品については述べられていない。
【0008】
米国公開特許第2006/0135281号は、微粒子金属コーティングで被覆した様々な品目を記述し、米国公開特許第2006/0135282号は微粒子金属コーティングで被覆した高分子材料を記述している。いずれの公報にも電子機器については述べられていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、表面の少なくとも一部が金属によって被覆された合成樹脂組成物を含む携帯用電子機器の構成部材に関するものである。
【0010】
本発明は、表面の少なくとも一部が金属によって被覆された合成樹脂組成物を含む1若しくはそれ以上の構成部材を含む携帯用電子機器に関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
構造部材は合成樹脂を含む。合成樹脂とは、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂等の合成高分子固形材料を意味する。合成樹脂は(半)結晶性またはガラス質とすることができる。有用な熱硬化性樹脂は、エポキシ、フェノール、およびメラミン樹脂を含む。部品は、RIM成形(reaction injection molding)または圧縮成形等の従来法によって熱硬化性樹脂から成形することができる。
【0012】
熱可塑性樹脂が好ましい。有用な熱可塑性樹脂は、ポリ(オキシメチレン)およびその共重合体;ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)、およびポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)等のポリエステル;ナイロン−6,6、ナイロン−6、ナイロン−12、ナイロン−11、ナイロン−10,10、および芳香族脂肪族共重合ポリアミド等のポリアミド;ポリエチレン(すなわち、低密度、直鎖低密度、高密度等の全ての形態)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスチレン/ポリ(フェニレンオキシド)混合物、ポリ(ビスフェノール−Aカーボネート)等のポリカーボネート、等のポリオレフィン;テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンの共重合体等の全フッ素化ポリマーおよび部分フッ素化ポリマー、ポリ(フッ化ビニル)、およびエチレンおよびフッ化ビニリデンまたはフッ化ビニルの共重合体を含むフッ素重合体;ポリ(p−フェニレンスルフィド)等の多硫化物;ポリ(エーテル−ケトン)、ポリ(エーテル−エーテル−ケトン)、ポリ(エーテル−ケトン−ケトン)等のポリエーテルケトン;ポリ(エーテルイミド);アクリロニトリル−1,3−ブタジエンスチレンコポリマー;ポリ(メチルメタクリレート)等の熱硬化性(メタ)アクリル系重合体;および、ポリ(塩化ビニル)、ポリイミド、ポリアミドイミド、塩化ビニル共重合体、およびポリ(塩化ビニリデン)等の塩素含有重合体を含む。本願明細書では、「サーモトロピック液晶ポリマー("thermotropic liquid crystalline polymer":LCP)」とは、この参照によって本願明細書に取り込まれるところの米国特許第4,118,372号明細書に記述されているTOT試験またはその妥当なあらゆる変形を用いて試験した場合に異方性である高分子を意味する。有用なLCPsは、ポリエステル、ポリ(エステル−アミド)、およびポリ(エステル−イミド)を含む。高分子の1つの好ましい形態は「全芳香族」、すなわち高分子の主鎖の全ての基が芳香族(エステル基等の連結基を除いて)であり、しかし芳香族ではない側基が存在するものである。熱可塑性物質は、射出成形、熱成形、圧縮成形、押し出し成形、およびそれらに類する方法等の通常の方法によって部品へと成形できる。
【0013】
合成樹脂は、熱硬化性樹脂または熱可塑性物質のいずれの組成物であっても、充填剤、ガラスおよび炭素繊維等の補強材、色素、染料、安定剤、強化剤、核形成剤、抗酸化剤、難燃剤、加工助剤、および接着促進剤等の、そうした組成物に通常見られる他の原料を含むことができる。他の種類の材料は、樹脂上へ被覆して金属の樹脂への付着を促進する物質である。それらのいくつかは、上に挙げた1若しくはそれ以上の分類にもまた適合するものであっても良い。いくつかの事例では、構造部品が複雑な形状を有する場合には射出成形等の形成中に歪む可能性があり、反りを少なくするよう特別に設計した合成樹脂組成物の利用が好都合である。
【0014】
合成樹脂(組成物)は、PEDが到達すると予想される最大実用温度にて著しく軟化しないことが好ましい。それは改善された構造的目的のために存在するのであるから、軟化が生じなければ、その全体の物理的特性をより良く維持する。従って好ましくは、合成樹脂は合成樹脂の最も高い使用温度またはそれ以上における融点および/またはガラス転移温度および/または軟化を有する。例えば、合成樹脂、特に熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、ASTM方式のASTM D3418−82を用いて測定した場合、好ましくは少なくとも約50℃、より好ましくは少なくとも約100℃、および最も好ましくは少なくとも約150℃である。ガラス転移温度は、転移の中間点で測定する。他の好ましい一形態では、半結晶性の熱可塑性樹脂は、ASTM方式のASTM D3418−82を用いて測定した場合、好ましくは約100℃またはそれ以上、より好ましくは約150℃またはそれ以上の融点を有するべきである。融点は融解吸熱のピークで測定する。
【0015】
熱硬化性樹脂とは、架橋した高分子材料、すなわち溶媒中で不溶性であり、融解しないことを意味する。それは、架橋する前ではあるが、しかし最後の段階で架橋する、その種の高分子材料もまた意味する。0.455MPa(66psi)の負荷にてASTM方式 D648−07で測定した場合に、好ましくは架橋した熱硬化性樹脂組成物は約50℃、より好ましくは約100℃、最も好ましくは約150℃またはそれ以上の熱たわみ温度を有する。
【0016】
合成樹脂組成物はまた、比較的高い曲げ弾性率を有することが好ましい。それらは構造部品であり、通常は固いことが好ましいため、高い曲げ弾性率は、金属被覆構造部品の全体の剛性を向上させる。合成物質は、好ましくは少なくとも約1GPa、より好ましくは少なくとも約2GPa、および最も好ましくは少なくとも約10GPaの曲げ弾性率を有するべきである。曲げ弾性率は好ましくは3.2mm厚(1/8インチ)、および幅12.7mm(0.5インチ)の成形品に対して、標準的な研究室での気圧の下、ASTM方式D790−03の手順Aによって測定する。
【0017】
金属によるコーティングを達成するためのあらゆる既知の方法、例えば真空蒸着(蒸着する金属の様々な加熱法を含む)、化学めっき法、電気めっき、化学気相蒸着、金属スパッタリング、および電子線蒸着等によって、合成樹脂を金属でコーティングすることができる。好ましい方法は化学めっき法および電気めっき、およびそれら2つの組合せである。特別な処理なしでも金属は合成樹脂へ良く付着するものの、通常は付着を促進する何らかの方法を用いる。その方法は、合成樹脂表面を粗面化するための単純な摩耗から、接着促進剤、化学エッチング、プラズマおよび/または放射(例えば、レーザーまたはUV放射)への曝露による表面の機能化、またはそれらのあらゆる組合せまでの範囲にわたる。いずれの方法を用いるのかは、コーティングする合成樹脂組成物および望みの付着に依存する。多くの合成樹脂への被覆金属の付着を促進する方法は当該技術分野において周知である。1つ以上の金属または金属合金を合成樹脂上へめっきすることができる。例えば、接着性の良い1つの金属または合金を合成樹脂表面上へ直接めっきして、より高い強度および/または剛性を有するもう1つの金属または合金をその上へめっきすることができる。
【0018】
金属コーティングを形成するための有用な金属および合金は、銅、ニッケル、鉄−ニッケル、コバルト、コバルト−ニッケル、およびクロム、および異なる層中のそれらの組み合わせを含む。好ましい金属および合金は銅、ニッケル、および鉄−ニッケルであり、より好ましいのはニッケルである。
【0019】
構造部品の合成樹脂表面は、金属で完全にまたは部分的にコーティングすることができる。好ましくは、表面領域の50%以上をコーティングし、より好ましくは表面の全てをコーティングする。部品の異なる領域では、金属層の厚みおよび/または数、および/または金属層の組成を変化させることができる。構造部品の特定の部分の1若しくはそれ以上の特性を効率的に改善するために、金属は模様としてコーティングすることができる。
【0020】
電気めっきの際には、蒸着する金属の粒子サイズを電気めっきの条件によって制御できることが知られている。それについては例えば、この参照によってそれらの全てが本願明細書に取り込まれるところの、米国特許第5,352,266号および第5,433,797号明細書および米国公開特許第20060125282を参照されたい。好ましい一形態では、蒸着する金属層の少なくとも1つは約5nm〜約200nm、より好ましくは約10nm〜約100nmの範囲の平均粒子サイズを有する。電気めっきする金属の好ましい他の一形態では、金属は少なくとも500nm、好ましくは少なくとも約1000nmの平均粒子サイズを有する。それら全ての粒子サイズの選好については、もし1つ以上の層があるならば、最も厚い金属層を特定の粒子サイズとすることが好ましい。
【0021】
合成樹脂上へ蒸着する金属層の厚みは決定的なものではなく、係数、強度および/または剛性等の特定の最小限の物理的特性を提供する一方で、重量を最小限にする望みによって多くは決定するものである。それら全体の特性は一定の範囲で、使用する金属または合金の厚みおよび種類だけでなく、構造部品の設計および合成樹脂組成物の特性にもまた依存する。
【0022】
本願明細書で記述する部品の主要な目的は、剛性、強度、耐衝撃性等の適切な構造の全体性をPEDに提供することである。金属コーティングは多くの場合、それらの向上した特性を提供する。金属被覆構造部品は、他の便益および/または機能性を提供する。例えば、金属コーティングはEMI遮蔽を向上させ、または機器の熱した特定の部分の冷却を助ける。例えば、電子モジュールが局所的に多くの熱を発生した場合に、近傍の金属被覆構造部品はその熱の一部を吸収して、金属コーティングがその特定の場所から熱を伝導する。金属コーティングはまた、スライド型携帯電話でのスライドする部品のうち重要な部分に耐摩耗性および/または低摩擦を提供する。構造部品の金属コーティングは、例えば(適切な設計をすれば)携帯電話の内部に一体化したアンテナとして、および/またはEMF遮蔽としてもまた働く。
【0023】
好ましい一実施形態では、金属被覆構造部品の曲げ弾性率は、コーティングしない合成樹脂組成物の曲げ弾性率の少なくとも約2倍、より好ましくは少なくとも約3倍である。これは以下の方法で測定する。使用する手順はISO 178であり、厚み4mmおよび幅110mmの大きさの成形した試験用棒を用いる。試験速度は2.0mm/分である。構造部品を作製する組成物を試験用棒に成形して、次に構造部品をコーティングするのに用いるのと同じ金属で同じ手順を用いていくつかの棒を完全に(選択的に、試験結果に影響しない末端は除いて)コーティングする。棒上の金属コーティングの厚みは構造部品上のものと同一である。もし構造部品上の厚みが変化するのであれば、構造部品上の金属の最大の厚みで試験棒をコーティングする。次にコーティングしたものとしない棒の曲げ弾性率を測定して、それらの値を用いて曲げ弾性率の比率(コーティングしたものの曲げ弾性率/コーティングなしの曲げ弾性率)を決定する。金属コーティングが厚いほど、コーティングなしとコーティングありの合成樹脂部品との間の曲げ弾性率の比率は大きくなる。
【0024】
さらに、同じ厚みの金属コーティングでは、相対的な剛性の向上は、厚い合成樹脂部品よりも薄い合成樹脂部品に対してのほうが大きくなる。例えば、1mm厚および4mm厚の典型的な中身の詰まった合成樹脂を用いての、NiFe合金の100μm厚のコーティングでの剛性の相対的な増加では、4mm厚の合成樹脂部品でのコーティング部品の剛性の増加はコーティングした部分の剛性の約2〜4倍である一方、1mm厚の樹脂部品ではコーティングしない部品の剛性の約13倍まで剛性が増加する。特定の携帯用電子機器はより小さく(薄く)なっているため、金属コーティングの便益は劇的に増加する。好ましい一形態では、最終的に携帯用電子機器全体の寸法のうちで最も薄い部分の寸法(通常、厚みと称されるもの)において、合成樹脂(金属コーティングの前)の最も厚い部分の厚みは2mmまたはそれ以下の厚みであり、より好ましくは1mm厚またはそれ以下である。例えば携帯電話では、これが携帯電話の厚みとなるであろう。
【0025】
構造部材としての利用においては、例えば衝撃に耐えることができるといったように、めっきした合成樹脂組成物が多くの場合に頑丈であることもまた重要である。驚いたことに、本発明の金属めっき合成樹脂組成物のいくつかは驚異的に頑丈であることが見いだされた。中身の詰まっていないまたは多少詰まっているポリオレフィンの額は、Crめっきした同様の物と比較して、壊すためにより多くの衝撃エネルギーを有することが以前に報告されている(M.Corley,et al.,Engineering Polyolefins for Metallized Decorative Applications,in Proceedings of TPOs in Automotive 2005,開催June 21〜23,2005,スイスGeneva,Executive Conference Manegement,米国ミシガン州Plymouth 48170,p.1〜6)。実際、めっきした額の衝撃強度は、非めっき額の衝撃強度の50〜86パーセントの範囲である。以下の実施例2〜7に見るとおり、めっきした額の衝撃最大エネルギーは非めっき額のそれより相当に高い。このことは使用した合成樹脂組成物のより高い充填剤量によるものと考えられ、本発明の部品では合成樹脂組成物は、好ましくは少なくとも約25重量パーセント、より好ましくは約35重量パーセント、特に好ましくは少なくとも約45重量パーセントの充填剤/補強材の存在を有する。存在する充填剤/補強材の好ましい最大量は約65重量パーセントである。それらのパーセンテージは存在する全ての原料の総重量に基づく。典型的な補強材/充填剤は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、粘土(様々な種類)等の微粒子ミネラル、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム(石灰石を含む)、酸化亜鉛、珪灰石、カーボンブラック、二酸化チタン、アルミナ、タルク、カオリン、ミクロスフェア、アルミナ三水和物、硫酸カルシウム、および他のミネラルを含む。
【0026】
金属めっき構造部材のISO179衝撃エネルギー(手順は以下を参照)は、好ましくは非めっき合成樹脂組成物の1.2倍またはそれ以上、より好ましくは1.5倍またはそれ以上である。合成樹脂組成物の棒を作製し、構造部材を作製するのと同じ方法で、塗布する金属の厚みを同じにして試験を行う。構造部材の(主要な表面の)両側を金属めっきするならば試験棒は両側をめっきし、構造部材の(主要な表面の)片側を金属めっきするならば試験棒は片側をめっきする。めっきした棒の衝撃エネルギーを非めっき合成樹脂組成物の棒の衝撃エネルギーと比較する。
【0027】
金属コーティングは好ましくは約0.010mm〜約1.3mm厚、より好ましくは約0.025mm〜約1.1mm厚、さらに好ましくは約0.050〜約1.0mm厚、および特に好ましくは約0.10〜約0.7mm厚とする。上述のいずれの最小の厚みも、上述のいずれの最大の厚みと組み合わせて、異なる好ましい厚みの範囲を設定することができることを理解されたい。それら厚みは必ずしも部品の全ての表面に適用するものではなく、特に部品の凹部または穴ではそうである。それらは金属コーティングがその部品のその部分または部位の剛性の増加に最も効果的な部品のそれら部位へ特に適用する。特定の曲げ弾性率を獲得するために必要な厚みはコーティング用に選択した金属にもまた依存する。金属の引張係数が高いほど、所与の剛性(曲げ弾性率)の達成に必要とされるものが少ない。
【0028】
それら目的のためには、それら構造部品の多くまたは全てはしばしば見ることができない、すなわちそれらはPEDの内部にあり、(もしPEDを部分的に分解すれば、それらは見ることができるものの)PEDを通常使用する配置では普通は見えない。従って、全体の外側表面領域のうち、好ましくは50%以下、より好ましくは25%以下、特に好ましくは10%以下、および最も好ましくは0%を、本願明細書の構造部品が占める。すなわち、例えば、PEDの見ることができる全体の外側表面領域の10%以下(または上述の他の制限のいずれか)が構造部品である。
【0029】
構造部品は、その望みの機能を実行するために、あらゆる形状とすることができる。例えば、PEDの外周を囲む全体的または部分的な「フレーム」、1若しくはそれ以上の分離した梁および/または格子状のいくつもの梁、またはそれらのあらゆる組み合わせとすることができる。例えば取り付け穴または、それ自身と回路基板、マイク、スピーカー、ディスプレイ、バッテリー、カバー、ハウジング、電気または電子コネクタ、蝶番、アンテナ、スイッチ、およびスイッチボタン等のPEDの他の品目との間のスナップ式コネクタ等の他の締結装置等のその品目へと構造部品を形成することができる。
【0030】
本発明の構造部品が有用であるPEDsは、携帯電話、携帯情報端末(personal digital assistants:PDAs)、音楽記録再生装置(例えば、i−Pods(登録商標))、携帯DVDプレーヤー、電子マルチメーター、携帯電子ゲーム装置(mobile electronic game consoles)、モバイルPC(例えば、ノート型パソコン等)を含む。
【0031】
(実施例1)
部分芳香族ポリアミド組成物を、70mm Werner & Pfleiderer twin screw extruder中での混合によって作製した: 15% ポリアミド6,6; 1,6−ヘキサンジアミン、イソフタル酸、テレフタル酸(イソフタル酸:テレフタル酸の比率は3:7)から生成したものを含む34.1%のポリアミド; 0.4%のChimassorb(登録商標)944(Ciba Specialty Chemical,米国ニューヨーク州10591,Tarrytownの安定剤); 0.2%のIrganox(登録商標)1098(抗酸化剤、Ciba); 0.3%のCAV102(Clariant Corp.,米国ノースカロライナ州28205,Charlotteのワックス); および50%のPPG3660微細なガラス繊維(chopped glass fiber)(PPG Industries,米国ペンシルバニア州、Pittsburgh)。下流で横から供給する微細なガラス繊維以外の全ての原料は押出成形機の後ろ側で添加した。押出成形機の樽は280〜300℃に保った。組成物から顆粒を形成した。
【0032】
組成物を次に、溶融温度280〜300℃および型温60℃において射出成形機で携帯電話のプロトタイプフレームへと成形した。ほぼ直角で長い寸法の側に1本の横木(crosspiece)を有するフレームは、全体で約10.5cm×4.8cmの寸法を有した。フレームそのものの寸法は変化するが、しかし多くは概して1mm×2.5mm(必ずしも長方形ではなく、いくつかの箇所では円筒形)である。フレームへ部品を取り付けるおよび/またはフレームそのものを電話に取り付けるための突起等のように、携帯電話の部品がかみ合う箇所の凹凸をフレームへ成形した。
【0033】
Rohm&Haas Chemicals LLC,米国ペンシルバニア州19106,Philadelphiaから入手し、報告によるとエチレングリコールおよび塩酸の混合であるところのAddipost(登録商標)PM847 etchを使用してフレームの幾つかをエッチングした。1μm厚以下の銅の層を無電解的に塗布して、次に8μm厚の銅の層を電解的に形成した(表面は可能な限り完全に被覆した)。
【0034】
フレームは次に、この参照によってそれらの全てが本願明細書に含まれるところの米国特許第5,352,266号および第5,433,797号明細書、および米国公開特許第2006/0135282号に記述されているとおり、公称50μm厚のニッケル層でIntegran Technologies Inc.,カナダTorontoによって電解的に被覆した。これによりそれら特許/出願に記述されているいわゆるナノメーター粒子サイズのニッケル被覆を生じる。
【0035】
ニッケル被覆フレームおよび非被覆フレーム(コントロール)を次に、「ねじり」および「屈曲」の両方の剛性のために特別に設計した治具で試験した。屈曲試験では、所与の量だけフレームを屈曲するために、ASTM試験D790(3点)に従った屈曲特性の測定にいくぶん類似した試験を行った。それを達成するために必要な力を測定した。ねじり剛性と同様に、フレームを所与の量だけねじり、必要な力を測定した。屈曲試験ではニッケル被覆フレームに必要な力量は非被覆フレームのそれの約3〜3.5倍であり、ねじり試験では被覆フレームに必要な(0°〜2°ひねるための)力量は非被覆フレームに必要なそれの約2倍であった。これらの結果は、携帯電話のプロトタイプ構造フレームにおいて、わずか50μm厚のニッケル層のコーティングがフレームの剛性を著しく増加させることを示している。
【0036】
(実施例2〜7)
使用原料、表における使用原料の名称
充填剤1−か焼、アミノシラン被覆、カオリン、Polarite(登録商標)102A、Imerys Co.,フランスParisより入手可能。
【0037】
充填剤2−Calmote(登録商標)UF、炭酸カルシウム、Omya UK,Ltd.,英国Derby DE21 6LYより入手可能。
【0038】
充填剤3−Nyad(登録商標)G、珪灰石、Nyco Minerals,米国ニューヨーク州12996Willsboroより入手可能。
【0039】
充填剤4−M10−52タルク、Barretts Minerals,Inc.,米国モンタナ州Dillonが製造。
【0040】
充填剤5−Translink(登録商標)445、処理カオリン、BASF Corp.,米国ニュージャージー州07932Florham Parkより入手可能。
【0041】
GF1−微細な(公称の長さ3.2mm)ガラス繊維、PPG(登録商標)3660、PPG Industries,米国ペンシルバニア州15272Pittsburghより入手可能。
【0042】
GF2−微細な(公称の長さ3.2mm)ガラス繊維、PPG(登録商標)3540、PPG Industries,米国ペンシルバニア州15272Pittsburghより入手可能。
【0043】
HS1−重量で78%KI、11%ジステアリン酸アルミニウム、および11%CuIを含む熱安定剤
HS2−重量で7%KI、11%ジステアリン酸アルミニウム、および0.5%CuIを含む熱安定剤
Lube−Licowax(登録商標)PE190 − 離型剤として使用するポリエチレン・ワックス、Clariant Corp.米国ノースカロライナ州28205,Charlotteから入手可能。
【0044】
高分子A−ポリアミド−6,6、Zytel(登録商標)101、DuPont de Nemours & Co.,Inc.米国デラウェア州19810Wilmingtonより入手可能。
【0045】
高分子B−ポリアミド−6、Durethan(登録商標)B29、Laxness AG,ドイツ、51369 Leverkusenより入手可能。
【0046】
高分子C−3重量パーセントの無水マレイン酸と融合したエチレン/プロピレン共重合体
高分子D−テレフタル酸、1,6−ジアミノヘキサン、および2−メチル−1,5−ジアミノペンタンの共重合体であるコポリアミドであり、それぞれのジアミンが等モル量ずつ存在するもの。
【0047】
高分子E−Engage(登録商標)8180、エチレン/1−オクテン共重合体、Dow Chemical Co.,米国ミシガン州Midlandより入手可能。
【0048】
ワックス1−N,N’−エチレンビスステアラミド
ワックス2−Licowax(登録商標)OP、Clariant Corp.米国ノースカロライナ州28205,Charlotteより入手可能。
【0049】
これら実施例で用いた有機高分子組成物を表1に列挙した。組成物は、30mm Werner&Pfleiderer 30mm twin screw extruder中での原料の溶融ブレンドによって生成する。
【0050】
【表1】

【0051】
7.62×12.70×0.30cmの額または4mm厚、口径幅10mmのISO 527試験棒である試験用ピースは、表2に与えた条件下で射出成形によって作製した。成形前に、高分子組成物は表示した温度下の除湿した空気中で6〜8時間乾燥して、成形前に含水率<0.1%とした。
【0052】
【表2】

【0053】
それら試験片は次にスルホクロム酸またはRohm & Haas Chrome free etching solution中でエッチングして、Niの非常に薄い層の無電解めっきによって全ての表面に導電性を与えた。続く8μmのCuのガルバニック析出に続いて、微粒子サイズ金属コーティングの作製に関する米国特許第5,352,266号明細書中に記述されているとおりに、パルス電流を用いて微粒子N−Fe(重量55〜45)の100μm厚の層の蒸着を行った。
【0054】
サンプルは以下の方法のうち1つまたは両方で試験した。
【0055】
ISO 6603−2 − Machine Instron(登録商標) Dynatup Model 8250,サポートリング直径40mm、半球状タップ直径20mm,速度2.2m/s、衝撃重量44.45kg、温度23℃、出来上がった状態で乾燥している。試験は上述の額で行う。
【0056】
ISO 179−1eU − サンプルには触れない、振り子エネルギー25J、衝撃速度3.7m/s、温度23℃、出来上がった状態で乾燥している。試験は上述のISO 527試験棒の口径部で行う。
【0057】
試験結果を表3に示す。
【0058】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の少なくとも一部が金属でコーティングされた合成樹脂組成物を含む、携帯電子機器の構造部材。
【請求項2】
請求項1記載の構造部材において、前記有機高分子は、熱可塑性物質が約100℃またはそれ以上のガラス転移点を有する場合、または熱硬化性樹脂が0.455MPaの負荷において約100℃またはそれ以上の熱たわみ温度を有する場合、である。
【請求項3】
請求項1または3記載の構造部材において、前記金属コーティングの少なくとも1層は約5nm〜約200nmの平均粒子サイズを有するものである。
【請求項4】
請求項1または2記載の構造部材において、前記金属コーティングの最も厚い層は少なくとも約500nmの平均粒子サイズを有するものである。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の構造部材において、前記金属コーティングは約0.010mm〜約1.3mmの厚みである。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の構造部材において、前記金属コーティングは約0.025mm〜約1.3mmの厚みである。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の構造部材において、前記構造部材の曲げ弾性率は前記合成樹脂組成物のそれの少なくとも2倍である。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の構造部材において、前記構造部材の曲げ弾性率は前記合成樹脂組成物のそれの少なくとも3倍である。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の構造部材は、アンテナとしてもまた機能するものである。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つの1若しくはそれ以上の構造部材を含む携帯用電子機器。
【請求項11】
請求項10記載の携帯用電子機器において、前記構造部材は、前記携帯用電子機器の外側全体の目に見える表面領域の50%以下である。
【請求項12】
請求項10記載の携帯用電子機器において、前記構造部材は、前記携帯用電子機器の外側全体の目に見える表面領域の25%以下である。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1つに記載の携帯用電子機器は、携帯電話、携帯情報端末、音楽記録再生装置、携帯DVDプレーヤー、電子マルチメーター、携帯電子ゲーム装置、またはモバイルPCである。
【請求項14】
請求項10〜12のいずれか1つに記載の携帯用電子機器は携帯電話である。

【公表番号】特表2010−541279(P2010−541279A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527974(P2010−527974)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/011358
【国際公開番号】WO2009/045431
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(510094034)インテグラン テクノロジーズ インク. (1)
【出願人】(510094045)
【出願人】(510094056)
【出願人】(510094067)
【Fターム(参考)】