説明

携帯端末、緊急通報システム、緊急通報方法およびプログラム

【課題】プラットホーム下への転落事故等、特定の場所または施設における事故を検出して通報することができ、設備投資及びメンテナンスコストの増大を抑制することができる携帯端末を提供する。
【解決手段】携帯端末100は、自端末の特定エリアへの入場および該特定エリアからの退場を検出する位置検出手段101と、自端末の移動状態を検出する移動状態検出手段102と、位置検出手段101が特定エリアへの入場を検出し、かつ、移動状態検出手段102が検出した移動状態が所定の移動状態と一致した場合に、所定の移動状態の発生を外部へ通知する通知手段103と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラットホーム下への転落事故等、特定の場所における事故の緊急通報を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ホーム転落事故を検出する技術として、感圧マットや圧電センサー、カメラ等を用いて、人がホームから線路内に転落することを検出する技術が知られている。しかし、感圧マットや圧電センサーをレール周辺の全域に亘って設けることは、設備コストの増大を招く。同様に、複数のカメラを用いてプラットホーム全体を監視することも、設備コストの増大を招く。
【0003】
特許文献1は、設備コストの増大を抑制することが可能な転落事故検出・通報システムを開示している。
【0004】
この転落事故検出・通報システムは、レールに沿って配置された、特定の周波数帯域の第1の信号(電波)を常時発信する複数の信号発信装置と、第1の信号を受信したときに、第1の信号とは異なる第2の信号(電波)を発信する移動端末と、レールに沿って配置された、第2の信号を受信したときに移動端末を携帯した使用者がプラットホーム下に転落したと判断する少なくとも1つの転落検出装置と、を有する。
【0005】
上記の転落事故検出・通報システムにおいて、移動端末は、プラットホーム下においてのみ、第1の信号を受信することができる。したがって、移動端末を携帯した使用者がプラットホーム下に転落すると、移動端末が第2の信号を発信し、転落検出装置が、移動端末からの第2の信号を受信し、使用者がプラットホーム下に転落したと判断し、転落事故の通報を行う。
【0006】
移動端末は、加速度センサーを備え、第1の信号を受信し、かつ、加速度センサーの出力値が設定値以上であることを検出した場合にのみ、第2の信号を発信するように構成されてもよい。この構成によれば、第1の信号だけでなく、加速度センサーを用いて、使用者がプラットホーム下に転落したか否かの判定を行うことができる。よって、より確実に転落事故を検出することができる。
【0007】
特許文献2は、転落事故ではないが、ユーザが事故に遭遇したことを自動的に検出して通報することが可能な通信端末を開示している。
【0008】
この通信端末は、移動通信網を介して外部装置と通信する通信部と、加速度センサーと、特定の移動手段(自転車、車、電車等)で移動中に事故に遭遇した場合の加速度センサーの出力パターンを想定される事故毎に保持するとともに、緊急連絡先の情報を保持する記憶部と、加速度センサーの出力が記憶部に保持した出力パターンのいずれかと一致した場合に、通信部を介して記憶部に保持された緊急連絡先に通報する制御部と、を有する。
【0009】
例えば、自転車を運転中に事故に遭遇した場合の加速度センサーの出力パターンが記憶部に保持されている。この場合、上記の通信端末を所持したユーザが自転車を運転中に事故に遭遇すると、加速度センサーの出力が記憶部に保持した出力パターンと一致し、緊急連絡先への通報が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−126120号公報
【特許文献2】特開2009−146225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の転落事故検出・通報システムにおいては、複数の信号発信装置および転落検出装置を駅毎に設置する必要があるため、設備投資及びメンテナンスコストが増大する。
【0012】
特許文献2に記載の通信端末においては、外部装置を必要とせず、自端末内の処理だけで移動中の事故を自動検出することができるため、外部装置に関わる設備投資及びメンテナンスコストの増大の問題は生じない。しかし、プラットホーム下への転落事故等、特定の場所における事故を検出することは困難である。
【0013】
本発明の目的は、プラットホーム下への転落事故等、特定の場所または施設における事故を検出して通報することができ、設備投資及びメンテナンスコストの増大を抑制することができる、携帯端末、緊急通報システム、緊急通報方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の携帯端末は、自端末の特定エリアへの入場および該特定エリアからの退場を検出する位置検出手段と、自端末の移動状態を検出する移動状態検出手段と、前記位置検出手段が前記特定エリアへの入場を検出し、かつ、前記移動状態検出手段が検出した移動状態が所定の移動状態と一致した場合に、前記所定の移動状態の発生を外部へ通知する通知手段と、を有する。
【0015】
本発明の緊急通報システムは、特定エリアへの入場を示す入場情報および該特定エリアからの退場を示す退場情報を発信する入退場装置と、前記特定エリアへの入場時に前記入退場装置から前記入場情報を受信し、前記特定エリアからの退場に前記入退場装置から前記退場情報を受信し、該受信した入場情報および退場情報を入退場記録情報として保持する携帯端末と、前記携帯端末と通信網を介して接続された緊急通知先装置と、を有する。前記携帯端末は、自端末の移動状態を検出する移動状態検出手段と、前記移動状態検出手段が検出した移動状態が前記所定の移動状態と一致した場合で、前記処理部が前記入退場記録情報として最後に保持した情報が前記入場情報である場合に、前記所定の移動状態の発生を示す所定の音声メッセージを前記緊急通知先装置へ送信する通知手段と、を有する。
【0016】
本発明の緊急通報方法は、位置検出手段が、自端末の特定エリアへの入場および該特定エリアからの退場を検出し、移動状態検出手段が、自端末の移動状態を検出し、通知手段が、前記位置検出手段が前記特定エリアへの入場を検出し、かつ、前記移動状態検出手段が検出した移動状態が所定の移動状態と一致した場合に、前記所定の移動状態の発生を外部へ通知することを含む。
【0017】
本発明のプログラムは、自端末の特定エリアへの入場および該特定エリアからの退場を検出する処理と、自端末の移動状態を検出する処理と、自端末の前記特定エリアへの入場を検出し、かつ、検出した前記自端末の移動状態が所定の移動状態と一致した場合に、前記所定の移動状態の発生を外部へ通知する処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、プラットホーム下への転落事故等、特定の場所または施設における事故を自動的に検出して通報することができ、かつ、設備投資及びメンテナンスコストの増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態である携帯端末を備える緊急通報システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す緊急通報システムの携帯端末が行う緊急通報処理の一手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態である携帯端末の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態である携帯端末を備える緊急通報システムの構成を示すブロック図である。
【0022】
図1を参照すると、緊急通報システムは、携帯端末1、各駅に設置された改札装置2、移動通信網を構成する基地局装置3および緊急通知先装置4を有する。図1中、改札装置2および基地局装置3は1台しか示されていないが、実際は、駅構内に複数配置されている。
【0023】
改札装置2は、ICカード機能に対応したものであり、所定の距離の範囲内で携帯端末1と無線通信を行うことができ、携帯端末1との間で、入退場を管理するのに必要な情報を送受信する。例えば、利用者が駅構内に入場する際に、所持している携帯端末1を改札装置2に近づけると、改札装置2は、無線通信を介して、入場したことを示す入場情報を携帯端末1に送信する。また、利用者が駅構内から退場する際に、所持している携帯端末1を改札装置2に近づけると、改札装置2は、無線通信を介して、退場したことを示す退場情報を携帯端末1に送信する。
【0024】
基地局装置3は、携帯電話装置との通信が可能な通信エリアを有し、そのエリア内に位置する携帯電話装置に対して、自身を識別するための基地局識別情報を含む情報を定期的に発信する。携帯端末1は、携帯電話装置に対応するものであり、通信エリア内において、基地局装置3から基地局識別情報を受信することができる。
【0025】
携帯端末1は、ICカード機能に対応した端末であって、その主要部は、制御部10、記憶部20、加速度センサー30、ICカード処理部40および通信部50を備える。
【0026】
通信部50は、基地局装置3との間で無線通信を行う。
【0027】
加速度センサー30は、携帯端末1の筐体の落下を検出するためのものであり、例えばxyzの3軸の方向における加速度を検出する3軸加速度センサーである。通常時(携帯端末1が静止状態の時)は、3軸加速度センサーの各軸方向の出力値は重力加速度に応じた値を示す。筐体が落下中の場合は、3軸加速度センサーの各軸方向の出力値は略0になるため、この状態を検出することで、筐体の落下を検知することができる。なお、加速度センサー30は、3軸加速度センサーに限定されるものではない。筐体の落下を検知することができるのであれば、加速度センサー30としてどのようなセンサーを用いてもよい。
【0028】
ICカード処理部40は、所定の距離の範囲内で改札装置2と無線通信を行うことができ、改札装置2との間で、入退場を管理するのに必要な情報を送受信する。具体的には、ICカード処理部40は、入場時に、改札装置2から入場情報を受信し、退場時に、改札装置2から退場情報を受信する。ICカード処理部40は、入場情報および退場情報を入退上記録情報として保持する。
【0029】
また、ICカード処理部40は、入場確認要求に応じて、入退場記録情報として保持した最後の情報が入場情報であるか否かを確認し、その結果を要求元に返す。
【0030】
記憶部20は、半導体メモリに代表される記憶装置であって、基地局/駅名対応表21、音声メッセージ情報22および緊急通知先情報23を保持している。
【0031】
基地局/駅名対応表21は、駅構内に設置されている基地局装置の識別情報が駅名毎に格納されたテーブルである。音声メッセージ情報22は、緊急通報用の音声メッセージを作成するのに必要な情報である。緊急通知先情報23は、緊急通知先装置4のアドレス(電話番号等)を示す情報である。
【0032】
例えば、利用者は、自身の携帯端末1または別の通信端末を通じて、緊急通報システムの運用者が管理するサーバにアクセスすることで、基地局/駅名対応表21や緊急通知先情報23を取得することができる。
【0033】
制御部10は、携帯端末1の各部の動作を制御するものであって、緊急通報に関わる処理(緊急通報処理)を実行する機能として、転落検知処理部11、基地局情報処理部12および自動音声メッセージ作成部13を有する。
【0034】
転落検知処理部11は、加速度センサー30の出力に基づいて携帯端末1の筐体の落下を検知する。筐体の落下を検知した場合は、転落検知処理部11は、ICカード処理部40に対して、入退場記録情報として保持した最後の情報が入場情報であるか否かを確認するための入場確認要求を送信する。
【0035】
最後の情報が入場情報である場合は、転落検知処理部11は、基地局情報処理部12に対して、利用者が落下した駅名を特定するための駅名確認要求を行う。駅名が特定された場合は、転落検知処理部11は、自動音声メッセージ作成部13に対して、特定した駅名の音声メッセージを作成させるためのメッセージ作成要求を行う。メッセージの作成後、転落検知処理部11は、作成された音声メッセージを記憶部20の緊急通先情報23に基づいて特定された宛先に送信する。
【0036】
基地局情報処理部12は、駅名確認要求に応じて、通信部50を介して、基地局装置3が定期的に発信している基地局識別情報を取得し、取得した基地局識別情報に基づいて、記憶部20の基地局/駅名対応表21から対応する駅名を取得する。基地局情報処理部12は、取得した駅名を転落検知処理部11に供給する。基地局装置3から供給された基地局識別情報が基地局/駅名対応表21中に存在しない場合は、基地局情報処理部12は、その旨を示す応答を転落検知処理部11に返す。
【0037】
自動音声メッセージ作成部13は、メッセージ作成要求に応じて、転落検知処理部11から供給された駅名と記憶部20に格納されている音声メッセージ情報22とに基づいて、その駅名を含む緊急通報用の音声メッセージを作成し、その作成した音声メッセージを転落検知処理部11に供給する。
【0038】
緊急通知先装置4は、鉄道会社の管理者が管理する装置である。緊急通知先装置4と携帯端末1は、ネットワークを介して通信可能である。ネットワークは、基地局装置3を含む移動通信網や、公衆電話網等である。携帯端末1からの音声メッセージは、ネットワークを介して緊急通知先装置4に送信される。緊急通知先装置4は、受信した音声メッセージを再生する。
【0039】
なお、移動通信網の基地局装置3の上位装置(無線ネットワーク制御装置等)と緊急通知先装置4とを専用回線で接続し、この専用回線を通じて、携帯端末1からの音声メッセージを緊急通知先装置4に送信してもよい。
【0040】
次に、緊急通報システムの動作を具体的に説明する。なお、改札装置2および基地局装置3は既存のものを適用することが可能であり、それらの動作は周知であるので、ここでは、その動作の説明は省略する。
【0041】
図2は、携帯端末1において行われる緊急通報処理の一手順を示すフローチャートである。
【0042】
転落検知処理部11が、加速度センサー30の出力信号に基づいて、携帯端末1が落下した否かを判定する(ステップS10)。携帯端末1が落下したと判定した場合は、転落検知処理部11は、ICカード処理部40に対して、入退場記録情報として保持した最後の情報が入場情報であるか否かを確認するための入場確認要求を送信する。
【0043】
ICカード処理部40は、入場確認要求に応じて、入退場記録情報として保持した最後の情報が入場情報であるか否かを確認し、その結果を要求元の転落検知処理部11に返す(ステップS11)。
【0044】
ステップS11で、ICカード処理部40が、最後の情報が入場情報でないと判定し、その旨を示す結果を転落検知処理部11に返した場合は、転落検知処理部11は、緊急通報処理を終了するための処理を実行する。
【0045】
ステップS11で、ICカード処理部40が、最後の情報が入場情報であると判定し、その旨を示す結果を転落検知処理部11に返した場合は、続いて、転落検知処理部11が、基地局情報処理部12に対して、利用者が落下した駅名を特定するための駅名確認要求を送信する。次いで、基地局情報処理部12が、駅名確認要求に応じて、通信部50を介して、基地局装置3が定期的に発信している基地局識別情報を取得する(ステップS12)。そして、基地局情報処理部12が、取得した基地局識別情報が基地局/駅名対応表21中に存在するか否かを確認し、その結果を要求元の転落検知処理部11に返す(ステップS13)。
【0046】
ステップS13で、基地局情報処理部12が、取得した基地局識別情報が基地局/駅名対応表21中に存在しないと判定し、その判定結果を転落検知処理部11に返した場合は、転落検知処理部11は、緊急通報処理を終了するための処理を実行する。
【0047】
ステップS13で、基地局情報処理部12が、取得した基地局識別情報が基地局/駅名対応表21中に存在すると判定した場合は、続いて、基地局情報処理部12が、取得した基地局識別情報に基づいて、基地局/駅名対応表21から対応する駅名を取得し、取得した駅名を転落検知処理部11に供給する(ステップS14)。
【0048】
転落検知処理部11は、基地局情報処理部12から駅名を受け取ると、その駅名を含むメッセージ作成要求を自動音声メッセージ作成部13に送信する。自動音声メッセージ作成部13は、メッセージ作成要求に応じて、転落検知処理部11から供給された駅名と音声メッセージ情報22とに基づいて音声メッセージを作成し、その作成した音声メッセージを転落検知処理部11に供給する(ステップS15)。
【0049】
最後に、転落検知処理部11が、自動音声メッセージ作成部13から受け取った音声メッセージを、緊急通先情報23に基づいて特定される宛先に送信する(ステップS16)。
【0050】
本実施形態の緊急通報システムによれば、携帯端末1を所持した利用者が駅のプラットホーム下に転落すると、携帯端末1において、図2に示した緊急通報処理が実施され、転落事故が発生した駅名が特定され、特定した駅名を含む音声メッセージが自動的に緊急通知先装置4に送信される。緊急通知先装置4は、受信した音声メッセージを再生する。鉄道会社の管理者は、緊急通知先装置4が再生した音声メッセージ(通報)を確認することで、転落事故が発生した駅を簡単に特定することができる。
【0051】
また、改札装置2や基地局装置3として既存のものを使用することができるので、鉄道会社による設備投資及びメンテナンスコストの増大を抑制することができる。
【0052】
携帯端末1は、ICカード機能および通信機能を備えた端末装置であるが、特には、携帯電話端末、スマートフォン、ゲーム機、タブレット端末、ノート型パーソナルコンピュータなどである。
【0053】
以上説明した実施形態の構成は、本発明の一例であって、その構成及び動作は適宜に変更することができる。
【0054】
例えば、基地局/駅名対応表21は記憶部20に予め格納されているが、入場時に、基地局情報処理部12が、基地局/駅名対応表21に関するデータを改札装置2から取得してそれを基地局/駅名対応表21として記憶部20に格納し、退場時に、基地局/駅名対応表21を記憶部20から消去してもよい。このように、基地局/駅名対応表21の格納および消去を入退場に応じて動的に実行することで、退場後の記憶部20の使用可能容量を増大することができる。
【0055】
上記の場合、入場時における基地局/駅名対応表21に関するデータの携帯端末1への供給を鉄道会社毎に行うようにしてもよい。例えば、鉄道会社Aの駅に入場した場合は、鉄道会社Aの基地局/駅名対応表が携帯端末1に供給され、鉄道会社Bの駅に入場した場合は、鉄道会社Aの基地局/駅名対応表が携帯端末1に供給される。このように鉄道会社毎に基地局/駅名対応表を携帯端末1に供給することで、基地局/駅名対応表のデータ容量を削減することができ、その結果、記憶部20の容量を削減することが可能となる。
【0056】
音声メッセージ情報22は、利用者のプロフィール情報(氏名、住所、生年月日などの個人情報)を含んでいてもよい。緊急通報用の音声メッセージに利用者のプロフィール情報を含ませることで、鉄道会社の管理者に、転落事故のより詳細な情報を提供することができる。加えて、緊急通報用の音声メッセージに含まれる利用者のプロフィール情報に基づいて、通報者を特定することができるので、転落偽装などのいたずらを防止することができる。
【0057】
また、図2に示した緊急通報処理において、ステップS13で駅名の一致が得られた場合、即座に、大音量ブザーを鳴動させるように、携帯端末1を構成してもよい。これにより、転落現場の近くに居る第三者が、ブザー音に気づき、駅構内に設けられた緊急停止ボタンを押下するといったことを期待することができる。加えて、転落偽装などのいたずらも防止することができる。
【0058】
また、携帯端末1は、プログラムに従って動作するコンピュータ(CPU:Central Processing unit)を用いて構成されてもよい。プログラムは、少なくとも、制御部10の緊急通報処理(図2参照)を、コンピュータに実行させることが可能なものである。プログラムは、記録媒体を用いて提供されてもよく、通信網(例えばインターネット)を介して提供されてもよい。
【0059】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態である携帯端末の構成示すブロック図である。
【0060】
図3を参照すると、携帯端末100は、自端末の特定エリアへの入場および該特定エリアからの退場を検出する位置検出手段101と、自端末の移動状態を検出する移動状態検出手段102と、位置検出手段101が特定エリアへの入場を検出し、かつ、移動状態検出手段102が検出した移動状態が所定の移動状態と一致した場合に、所定の移動状態の発生(事故発生)を外部へ通知する通知手段103と、を有する。
【0061】
特定エリアは、特定の場所または特定の施設(駅などの交通機関の施設や、工場などの会社の施設など)である。位置検出手段101は、特定エリアに対する入退場を検出することができるものであればどのような手段であってもよい。1つまたは複数の特定エリアを設定することが可能である。
【0062】
例えば、第1の実施形態で説明したような改札装置に対応する入退場装置が特定エリアに設けられている場合は、位置検出手段101は、入退場装置との間で、入場および退場を示す情報を送受信するような構成とされる。
【0063】
この他、位置検出手段101は、GPS(Global Positioning System)等を用いて携帯端末100の現在位置を検出し、その現在位置に基づいて特定エリアに対する入退場を検出するように構成されてもよい。
【0064】
所定の移動状態は、携帯端末100を所持した利用者が、転落事故や衝突事故(歩行中または自転車や車などを運転中の衝突事故など)など、特定の事故に遭遇した際の、携帯端末100の移動状態を示す。移動状態検出手段102は、加速度センサーなど、携帯端末100の移動状態に応じて出力値が変化するセンサーを有する。
【0065】
通知手段103は、例えば、携帯端末100が所定の移動状態となったときのセンサーの出力パターンを予め保持しており、移動状態検出手段102からの移動状態を示す出力信号に基づいて、携帯端末100の移動状態が所定の移動状態と一致するか否かを判定する。
【0066】
また、通知手段103は、例えば、携帯電話網や公衆電話網などの通信網を通じて外部装置へ情報を送信する通信機能を備えており、携帯端末100の移動状態が所定の移動状態と一致した場合は、通信網を介して、所定の移動状態の発生(事故発生)を示す情報を外部装置へ送信する。
【0067】
この他、通知手段103は、出力装置(スピーカ)を備え、携帯端末100の移動状態が所定の移動状態と一致した場合に、出力装置から警報音を出力させる。
【0068】
また、携帯端末100は、プログラムに従って動作するCPUを用いて構成されてもよい。プログラムは、少なくとも、位置検出手段101、移動状態検出手段102および通知手段103における通報動作に関わる処理を、コンピュータに実行させることが可能なものである。プログラムは、記録媒体を用いて提供されてもよく、通信網(例えばインターネット)を介して提供されてもよい。
【0069】
第1の実施形態の携帯端末の構成を本実施形態の携帯端末100に適用してもよい。例えば、移動状態検出手段102は、自端末に加わる加速度を検出する加速度センサーを有し、通知手段103は、加速度センサーの出力信号が示す携帯端末100の移動状態が所定の移動状態と一致するか否かを判定してもよい。この場合、所定の移動状態が自端末の落下を示す状態であってもよい。
【0070】
また、通知手段103は、駅構内に設置されている基地局装置の識別情報が駅名毎に格納された基地局/駅名対応表を記憶する記憶部と、移動状態検出手段102が検出した移動状態が所定の移動状態と一致した場合に、外部の基地局装置から該基地局装置の識別情報を含む信号を受信し、該受信した識別情報が基地局/駅名対応表に存在する場合に、該受信した識別情報に対応する駅名を基地局/駅名対応表から取得する基地局情報処理部と、基地局情報処理部が取得した駅名を含む音声メッセージを作成する音声メッセージ作成部と、外部への通知を行うために、音声メッセージ作成部が作成した音声メッセージを所定の宛先に送信する通信部と、を有していてもよい。
【0071】
さらに、位置検出手段101は、外部装置から特定エリアへの入場を示す入場情報および特定エリアからの退場を示す退場情報を受信し、該受信した情報を入退場記録情報として保持し、通知手段103は、移動状態検出手段102が検出した移動状態が所定の移動状態と一致した場合で、入退場記録情報として最後に保持した情報が入場情報である場合に、外部への通知を行うようにしてもよい。
【0072】
さらに、位置検出手段101は、特定エリアへの入場時に、外部装置から基地局/駅名対応表に関するデータを取得し、該データを記憶部に格納し、特定エリアからの退場時に、記憶部からそのデータを消去してもよい。
【0073】
さらに、位置検出手段101は、自端末の現在位置を検出し、該検出した現在位置に基づいて特定エリアに対する入退場を判定してもよい。
【0074】
以上説明した各実施形態の携帯端末は、本発明の一例であり、その構成および動作は適宜に変更することができる。
【0075】
本発明は、ICカード機能および通信機能を備えた端末装置全般に適用することができ、特には、携帯電話端末、スマートフォン、ゲーム機、タブレット端末、ノート型パーソナルコンピュータなどに適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
100 携帯端末
101 位置検出手段
102 移動状態検出手段
103 通知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自端末の特定エリアへの入場および該特定エリアからの退場を検出する位置検出手段と、
自端末の移動状態を検出する移動状態検出手段と、
前記位置検出手段が前記特定エリアへの入場を検出し、かつ、前記移動状態検出手段が検出した移動状態が所定の移動状態と一致した場合に、前記所定の移動状態の発生を外部へ通知する通知手段と、を有する携帯端末。
【請求項2】
前記移動状態検出手段は、自端末に加わる加速度を検出する加速度センサーを有し、
前記通知手段は、前記加速度センサーの出力信号が示す自端末の前記移動状態が前記所定の移動状態と一致するか否かを判定する、請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記所定の移動状態が自端末の落下を示す状態である、請求項2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記通知手段は、
駅構内に設置されている基地局装置の識別情報が駅名毎に格納された基地局/駅名対応表を記憶する記憶部と、
前記移動状態検出手段が検出した移動状態が所定の移動状態と一致した場合に、外部の基地局装置から該基地局装置の識別情報を含む信号を受信し、該受信した識別情報が前記基地局/駅名対応表に存在する場合に、該受信した識別情報に対応する駅名を前記基地局/駅名対応表から取得する基地局情報処理部と、
前記基地局情報処理部が取得した前記駅名を含む音声メッセージを作成する音声メッセージ作成部と、
前記外部への通知を行うために、前記音声メッセージ作成部が作成した前記音声メッセージを所定の宛先に送信する通信部と、を有する、請求項1から3のいずか1項に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記位置検出手段は、前記特定エリアへの入場時に、外部装置から前記基地局/駅名対応表に関するデータを取得し、該データを前記記憶部に格納し、前記特定エリアからの退場時に、前記記憶部から前記データを消去する、請求項4に記載の携帯端末。
【請求項6】
前記位置検出手段は、外部装置から前記特定エリアへの入場を示す入場情報および前記特定エリアからの退場を示す退場情報を受信し、該受信した情報を入退場記録情報として保持し、
前記通知手段は、前記移動状態検出手段が検出した移動状態が前記所定の移動状態と一致した場合で、前記入退場記録情報として最後に保持した情報が前記入場情報である場合に、前記外部への通知を行う、請求項1から5のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項7】
前記位置検出手段は、自端末の現在位置を検出し、該検出した現在位置に基づいて前記特定エリアに対する入退場を判定する、請求項1から4のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項8】
特定エリアへの入場を示す入場情報および該特定エリアからの退場を示す退場情報を発信する入退場装置と、
前記特定エリアへの入場時に前記入退場装置から前記入場情報を受信し、前記特定エリアからの退場に前記入退場装置から前記退場情報を受信し、該受信した入場情報および退場情報を入退場記録情報として保持する携帯端末と、
前記携帯端末と通信網を介して接続された緊急通知先装置と、を有し、
前記携帯端末は、
自端末の移動状態を検出する移動状態検出手段と、
前記移動状態検出手段が検出した移動状態が所定の移動状態と一致した場合で、前記入退場記録情報として最後に保持した情報が前記入場情報である場合に、前記所定の移動状態の発生を示す所定の音声メッセージを前記緊急通知先装置へ送信する通知手段と、を有する、緊急通報システム。
【請求項9】
位置検出手段が、自端末の特定エリアへの入場および該特定エリアからの退場を検出し、
移動状態検出手段が、自端末の移動状態を検出し、
通知手段が、前記位置検出手段が前記特定エリアへの入場を検出し、かつ、前記移動状態検出手段が検出した移動状態が所定の移動状態と一致した場合に、前記所定の移動状態の発生を外部へ通知する、緊急通報方法。
【請求項10】
自端末の特定エリアへの入場および該特定エリアからの退場を検出する処理と、
自端末の移動状態を検出する処理と、
自端末の前記特定エリアへの入場を検出し、かつ、検出した前記自端末の移動状態が所定の移動状態と一致した場合に、前記所定の移動状態の発生を外部へ通知する処理と、をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−6474(P2013−6474A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139575(P2011−139575)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】