説明

携帯端末装置及びそれに用いる消費電力削減方法並びにそのプログラム

【課題】 MBSFNデータ送信とユニキャストデータ送信とが混在する場合でも、消費電力の増大を防ぐことが可能な携帯端末装置を提供する。
【解決手段】 携帯端末装置(1)は、少なくともMBMSのサービス受信状況及びユニキャスト受信状況からMBSFNサブフレームにおいてユニキャストデータが送信される可能性を判定する判定手段(制御チャネル復調復号部12、PDSCH・PMCH復調復号部13、MBMSタイミング管理部14)と、判定手段の判定結果に応じてユニキャストデータ用のチャネル推定処理の制御を行う制御手段(チャネル推定部11、MBMSタイミング管理部14)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯端末装置及びそれに用いる消費電力削減方法並びにそのプログラムに関し、特にLTE(Long Term Evolution)でチャネル推定にかかる消費電力を削減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムにおけるデータ送信方法としては、基地局と携帯端末装置との間で1対1で行うユニキャスト(unicast)通信と、基地局から複数の携帯端末装置に対して同じデータを同時に送信するMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)とがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
MBMSでは、ブロードキャストメッセージサービスや高速ビデオストリーミングサービスを可能としている。また、MBMSでは、複数の基地局から同じMBMSデータが送信される場合、携帯端末装置が複数の基地局からの同じMBMSデータをソフト合成することにより、MBMSデータを高品質に受信することができる[いわゆる、MBSFN(MBMS over a Single−Frequency Network)]。
【0004】
3GPP(3rd Generation Partnership Project) Rel10(Release 10)では、MBSFNサブフレーム(subframe)においてMBSFNデータが送信されない場合、通常のユニキャストデータ送信を可能とすることが合意されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−267988号公報(段落「0002」,「0003」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のデータ送信における受信方法では、端末がPDCCH(Physical Downlink Control Channel)を復号して初めてユニキャストデータが送信されてきたことがわかるため、そこからチャネル推定処理等を行うと、時間的に復号処理が間に合わず、事前にユニキャストデータ受信を想定したチャネル推定とMBMSデータ受信を想定したチャネル推定との双方を実施しておく必要がある。そのため、上記のデータ受信方法では、消費電力が増大するという問題がある。
【0007】
また、上記のデータ受信方法では、事前にユニキャスト用のチャネル推定も実施しておく必要があるが、チャネル推定値の補間等を考慮すると、ユニキャストデータが送信されていた場合と送信されていなかった場合、さらにはMBSFN用のチャネル推定との並列処理となるため、消費電力が増大する。
【0008】
そこで、本発明の目的は上記の問題点を解消し、MBSFNデータ送信とユニキャストデータ送信とが混在する場合でも、消費電力の増大を防ぐことができる携帯端末装置及びそれに用いる消費電力削減方法並びにそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による携帯端末装置は、少なくともMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)のサービス受信状況及びユニキャスト受信状況からMBSFN(MBMS over a Single−Frequency Network)サブフレームにおいてユニキャストデータが送信される可能性を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に応じて前記ユニキャストデータ用のチャネル推定処理の制御を行う制御手段とを備えている。
【0010】
本発明による消費電力削減方法は、携帯端末装置が、少なくともMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)のサービス受信状況及びユニキャスト受信状況からMBSFN(MBMS over a Single−Frequency Network)サブフレームにおいてユニキャストデータが送信される可能性を判定する判定処理と、前記判定処理の判定結果に応じて前記ユニキャストデータ用のチャネル推定処理の制御を行う制御処理とを実行することを特徴とする。
【0011】
本発明によるプログラムは、携帯端末装置内の中央処理装置に実行させるプログラムであって、
少なくともMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)のサービス受信状況及びユニキャスト受信状況からMBSFN(MBMS over a Single−Frequency Network)サブフレームにおいてユニキャストデータが送信される可能性を判定する判定処理と、前記判定処理の判定結果に応じて前記ユニキャストデータ用のチャネル推定処理の制御を行う制御処理とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記のような構成及び動作とすることで、MBSFNデータ送信とユニキャストデータ送信とが混在する場合でも、消費電力の増大を防ぐことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態による携帯端末装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に用いるMBSFNサブフレームにおいてMBMSデータが送信された場合の配置例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に用いるMBSFNサブフレームにおいてユニキャストデータが送信された場合の配置例を示す図である。
【図4】3GPP Rel9以前のMBSFNサブフレームの構成を示す図である。
【図5】3GPP Rel10でのMBSFNサブフレームの構成を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態による消費電力削減処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、本発明による携帯端末装置の概要について説明する。本発明による携帯端末装置は、LTE(Long Term Evolution)でチャネル推定にかかる消費電力を削減する手段を有している。
【0015】
この消費電力を削減する手段は、MBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)のサービス受信状況、ユニキャスト(unicast)受信状況等からMBSFN(MBMS over a Single−Frequency Network)サブフレーム(subframe)においてユニキャストデータが送信される可能性を判定し、ユニキャストデータ用チャネル推定処理の制御を行い、消費電力の低減を行っている。
【0016】
これによって、本発明による携帯端末装置は、MBSFNデータ送信とユニキャストデータ送信とが混在する場合でも、消費電力の増大を防ぐことができる。
【0017】
図1は本発明の実施の形態による携帯端末装置の構成例を示すブロック図である。図1において、携帯端末装置1は、チャネル推定部11と、制御チャネル復調復号部12と、PDSCH(Physical Downlink Shared Channel)・PMCH(Physical Multicast Channel)復調復号部13と、MBMSタイミング管理部14とを含んで構成されている。尚、携帯端末装置1の無線通信系、各種処理系、入出力系、制御系それぞれの構成及び動作は、よく知られているのでその説明を省略する。
【0018】
チャネル推定部11は、受信データからチャネル推定値を計算する。MBSFNサブフレームにおいては、MBMS用のチャネル推定もしくはMBMSタイミング管理部14の指示に応じてユニキャスト用チャネル推定処理を行う。
【0019】
制御チャネル復調復号部12は、制御チャネルの復調復号を行う。制御チャネル復調復号部12は、制御チャネルの復号結果からMBMSが送信されるタイミングをMBMSタイミング管理部14に報告する。
【0020】
PDSCH・PMCH復調復号部13は、ユニキャストデータ、MBMSデータの復調復号を行う。PDSCH・PMCH復調復号部13は、復調、復号したデータの種類(ユニキャスト、MBMS)、CRC(Cyclic Redundancy Check)結果をMBMSタイミング管理部14に報告する。
【0021】
MBMSタイミング管理部14は、MBMSが送信されるタイミング情報やユニキャスト情報のCRC結果等を管理する。MBMSタイミング管理部14は、上記の管理情報に基づいてMBSFNサブフレームにおけるMBMS用チャネル推定やユニキャスト用チャネル推定の処理の制御を行う。
【0022】
図2は本発明の実施の形態に用いるMBSFNサブフレームにおいてMBMSデータが送信された場合の配置例を示す図である。図2において、サブフレームの先頭2 OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)シンボル分は、PDCCH(Physical Downlink Control Channel)データが送信され、その後にMBSFNデータが送信される。
【0023】
PDCCHの先頭 OFDMシンボルには、通常のユニキャスト用リファレンスシグナルが含まれ、MBSFNデータが送信されるOFDMシンボルの#1,#5,#9には、MBSFN用のリファレンスシグナルが含まれる。
【0024】
ユニキャストデータとMBSFNデータとでは、基地局(図示せず)の送信ポートが異なり、特にMBSFNデータは、複数の基地局からのデータが伝送路上で合成されている可能性もあるため、それぞれ独立したチャネル推定を行う必要がある。
【0025】
具体的には、先頭2 OFDMシンボルの各リソースのチャネル推定値は、先頭 OFDMシンボルにマッピングされたユニキャスト用リファレンスシグナルにその共役を乗じたZF(Zero Forcing)値を利用したチャネル推定値から補間等によって計算され、3番目以降のOFDMシンボルの各リソースについては、MBSFN用リファレンスシグナルにその共役を乗じたZF値を利用したチャネル推定値から補間することによりチャネル推定値を得る。
【0026】
図3は本発明の実施の形態に用いるMBSFNサブフレームにおいてユニキャストデータが送信された場合の配置例を示す図である。図3において、サブフレームは、通常のユニキャストサブフレームと同様の構成となり、#1,#5,#8,#12のOFDMシンボルにユニキャスト用リファレンスシグナルが含まれている。
【0027】
携帯端末装置1では、このユニキャスト用リファレンスシグナルにその共役を乗じたZF値を利用したチャネル推定値から補間等によって該当サブフレーム全てのリソースに対するチャネル推定値を得る。
【0028】
図4は3GPP(3rd Generation Partnership Project) Rel9(Release 9)以前のMBSFNサブフレームの構成を示す図である。図4において、MBSFNサブフレームは、フレーム(frame)の中で半固定的に割り当てられている。MBMSデータが送信されない場合には、MBSFNサブフレームが先頭2 OFDMシンボルでPDCCH等の制御データが送信される以外は、データが送信されない。
【0029】
図5は3GPP Rel10(Release 10)でのMBSFNサブフレームの構成を示す図である。図5において、MBSFNサブフレームは、フレームの中で半固定的に割り当てられている。MBMSデータが送信されない場合には、ユニキャストデータが送信される場合がある。
【0030】
図6は本発明の実施の形態による消費電力削減処理の流れを示すフローチャートである。これら図1〜図6を参照して本発明の実施の形態による消費電力削減処理について説明する。尚、図6に示す処理は、図1に示す携帯端末装置1の図示せぬ制御部[CPU(中央処理装置)等]が制御用のプログラムを実施することで実現可能である。
【0031】
無線通信では、無線伝送路で受ける様々な歪みを補正するため、データチャネルと多重されているリファレンスシグナルとを利用してチャネル推定を行う必要がある。
【0032】
Rel10では、MBSFNサブフレームにおいてMBMSデータが送信されていない場合にユニキャスト用データを送信することが可能となっている。その場合、MBSFNサブフレームであっても、図2に示すPDCCH受信後にMBMSデータを受信する場合と、図3に示すように、PDCCH受信後にユニキャストデータを受信する場合が混在する。
【0033】
本発明の実施の形態では、図6に示すように、消費電力削減のため、携帯端末装置1がMBSFNサブフレーム毎に以下のような処理を実施する。
【0034】
まず、携帯端末装置1は、MBMSのスケジューリング情報を保持しているかどうかの判定を行う(図6ステップS1)。MBMSのスケジューリング情報を保持していた場合(図6ステップS1のYES)、携帯端末装置1は、該当MBSFNサブフレームにおいてMBMSがスケジューリングされているかどうかの判定を行う(図6ステップS2)。
【0035】
MBMSがスケジューリングされていた場合(図6ステップS2のYES)、携帯端末装置1は、該当MBSFNサブフレームにおいてユニキャストデータが送信されることがないと判断して、ユニキャスト用チャネル推定を停止する(図6ステップS5)。
【0036】
MBMSのスケジューリング情報を保持していなかった場合(図6ステップS1のNO)、携帯端末装置1は、前MBSFNサブフレームでのユニキャストデータの受信の有無の判定を行う(図6ステップS3)。
【0037】
ユニキャストデータを受信していた場合(図6ステップS3のYES)、携帯端末装置1は、ユニキャスト用チャネル推定を実施する(図6ステップS6)。ユニキャストデータを受信していなかった場合(図6ステップS3のNO)、携帯端末装置1は、該当MBSFNサブフレームの8〜15サブフレーム前に受信したユニキャストデータでCRC NGとなっていて、かつ再送データを未受信のものの有無を判定する(図6ステップS4)。
【0038】
上記のようなユニキャストデータが存在した場合(図6ステップS4のYES)、携帯端末装置1は、ユニキャスト用チャネル推定を実施する(図6ステップS6)。上記のようなユニキャストデータが存在しなかった場合(図6ステップS4のNO)、携帯端末装置1は、ユニキャスト用チャネル推定を停止する(図6ステップS5)。
【0039】
このように、本実施の形態では、MBMSのサービス受信状況、ユニキャスト受信状況等からMBSFNサブフレームにおいてユニキャストデータが送信される可能性を判定し、ユニキャストデータ用チャネル推定処理の制御を行い、消費電力の低減を行っているので、MBSFNデータ送信とユニキャストデータ送信とが混在する場合でも、消費電力の増大を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、3GPP Rel10で規定されたLTE仕様に対応した携帯端末装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 携帯端末装置
11 チャネル推定部
12 制御チャネル復調復号部
13 PDSCH・PMCH復調復号部
14 MBMSタイミング管理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)のサービス受信状況及びユニキャスト受信状況からMBSFN(MBMS over a Single−Frequency Network)サブフレームにおいてユニキャストデータが送信される可能性を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に応じて前記ユニキャストデータ用のチャネル推定処理の制御を行う制御手段とを有することを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
前記MBMSのスケジューリング情報を保持しかつ該当MBSFNサブフレームにおいて前記MBMSがスケジューリングされていた場合に該当MBSFNサブフレームにおいて前記ユニキャストデータが送信されることがないと判定された場合に前記ユニキャスト用のチャネル推定を停止することを特徴とする請求項1記載の携帯端末装置。
【請求項3】
前記MBMSのスケジューリング情報を保持せずかつ前MBSFNサブフレームでユニキャストデータを受信していた場合に前記ユニキャスト用のチャネル推定を実施することを特徴とする請求項2記載の携帯端末装置。
【請求項4】
前記MBMSのスケジューリング情報を保持せずかつ前MBSFNサブフレームでユニキャストデータを受信しておらず、さらに該当MBSFNサブフレームの8〜15サブフレーム前に受信したユニキャストデータでCRC(Cyclic Redundancy Check)結果がNGとなっていてかつ再送データを未受信の場合にユニキャスト用チャネル推定を実施し、当該ユニキャストデータが存在しなかった場合に前記ユニキャスト用のチャネル推定を停止することを特徴とする請求項3記載の携帯端末装置。
【請求項5】
携帯端末装置が、少なくともMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)のサービス受信状況及びユニキャスト受信状況からMBSFN(MBMS over a Single−Frequency Network)サブフレームにおいてユニキャストデータが送信される可能性を判定する判定処理と、前記判定処理の判定結果に応じて前記ユニキャストデータ用のチャネル推定処理の制御を行う制御処理とを実行することを特徴とする消費電力削減方法。
【請求項6】
前記携帯端末装置が、前記MBMSのスケジューリング情報を保持しかつ該当MBSFNサブフレームにおいて前記MBMSがスケジューリングされていた場合に該当MBSFNサブフレームにおいて前記ユニキャストデータが送信されることがないと判定された場合に前記ユニキャスト用のチャネル推定を停止することを特徴とする請求項5記載の消費電力削減方法。
【請求項7】
前記携帯端末装置が、前記MBMSのスケジューリング情報を保持せずかつ前MBSFNサブフレームでユニキャストデータを受信していた場合に前記ユニキャスト用のチャネル推定を実施することを特徴とする請求項6記載の消費電力削減方法。
【請求項8】
前記携帯端末装置が、前記MBMSのスケジューリング情報を保持せずかつ前MBSFNサブフレームでユニキャストデータを受信しておらず、さらに該当MBSFNサブフレームの8〜15サブフレーム前に受信したユニキャストデータでCRC(Cyclic Redundancy Check)結果がNGとなっていてかつ再送データを未受信の場合にユニキャスト用チャネル推定を実施し、当該ユニキャストデータが存在しなかった場合に前記ユニキャスト用のチャネル推定を停止することを特徴とする請求項7記載の消費電力削減方法。
【請求項9】
携帯端末装置内の中央処理装置に実行させるプログラムであって、
少なくともMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)のサービス受信状況及びユニキャスト受信状況からMBSFN(MBMS over a Single−Frequency Network)サブフレームにおいてユニキャストデータが送信される可能性を判定する判定処理と、前記判定処理の判定結果に応じて前記ユニキャストデータ用のチャネル推定処理の制御を行う制御処理とを含むことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−176511(P2011−176511A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38054(P2010−38054)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】