説明

携帯端末装置

【課題】携帯端末装置の薄型化及び接続手段の耐久性の向上を図る。
【解決手段】表示部が配置された第1の筐体2と、第1の筐体を所定の方向へスライド自在に支持すると共に操作部24が配置された第2の筐体3と、第1の筐体の内部に配置され第1のコネクターが搭載された第1の回路基板と、第2の筐体の内部に配置され第2のコネクターが搭載された第2の回路基板と、両端部がそれぞれ第1のコネクターと第2のコネクターに接続された接続ケーブル32とを設け、接続ケーブルの中間部における2箇所の部分をそれぞれ保持する第1の保持部7a、7aと第2の保持部を設け、第1の筐体が第2の筐体に対してスライドされたときに接続ケーブルの第1の保持部と第2の保持部の間の部分がスライド方向に直交しかつ厚み方向に直交する方向において屈曲及び伸長されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯端末装置についての技術分野に関する。詳しくは、接続ケーブルの一部が第1の筐体の第2の筐体に対するスライド方向に直交しかつ第1の筐体と第2の筐体の厚み方向に直交する方向において屈曲及び伸長されるようにして薄型化等を図る技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、音声記録再生装置、画像記録再生装置、撮像装置、情報処理装置、ネットワーク通信装置等の各種の携帯端末装置には、第1の筐体が第2の筐体に対してスライドされる構成にされたものがある。
【0003】
このような携帯端末装置、例えば、携帯電話には、第1の筐体に表示部が配置され第2の筐体に操作部が配置され、第1の筐体と第2の筐体が互いに厚み方向において少なくとも一部が重ね合わされ、第1の筐体が厚み方向に直交する方向へ第2の筐体に対してスライドされるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された携帯電話にあっては、第1の筐体と第2の筐体の内部にそれぞれ回路基板が配置され、一方の回路基板に搭載されたコネクターと他方の回路基板に搭載されたコネクターとが接続手段として設けられたフレキシブルプリント配線板によって接続されている。
【0005】
フレキシブルプリント配線板は厚み方向が第1の筐体と第2の筐体の厚み方向に一致された状態で第1の筐体と第2の筐体の内部に配置され、第1の筐体が第2の筐体に対してスライドされるときには、厚み方向に折り重ねられるように屈曲され又は伸長される。
【0006】
【特許文献1】特開2006−157465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載された携帯端末装置にあっては、第1の筐体が第2の筐体に対してスライドされるときに、フレキシブルプリント配線板が厚み方向において折り重ねられるため、厚み方向において折り重ねられる分のスペースが必要であり、その分、薄型化に支障を来たしている。
【0008】
また、第1の筐体が第2の筐体に対してスライドされる毎にフレキシブルプリント配線板の一部が180°折り返されるように大きく屈曲され又は伸長される動作が繰り返し行われるため、接続手段に対する負荷が大きく、接続手段の耐久性が低いと言う問題もある。
【0009】
そこで、本発明携帯端末装置は、上記した問題点を克服し、携帯端末装置の薄型化及び接続手段の耐久性の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
携帯端末装置は、上記した課題を解決するために、少なくとも表示部が配置された第1の筐体と、前記第1の筐体を所定の方向へスライド自在に支持すると共に少なくとも操作部が配置された第2の筐体と、前記第1の筐体の内部に配置され第1のコネクターが搭載された第1の回路基板と、前記第2の筐体の内部に配置され第2のコネクターが搭載された第2の回路基板と、前記第1の筐体及び前記第2の筐体の内部に配置され両端部がそれぞれ前記第1のコネクターと前記第2のコネクターに接続された接続ケーブルとを備え、前記第1の筐体と前記第2の筐体は互いに厚み方向において少なくとも一部が重ね合わされ、前記第1の筐体と前記第2の筐体の一方又は双方の内部に前記接続ケーブルの中間部における2箇所の部分をそれぞれ保持すると共に前記第1の筐体の前記第2の筐体に対するスライド方向に離隔する第1の保持部と第2の保持部が設けられ、前記第1の筐体が前記第2の筐体に対してスライドされたときに前記接続ケーブルの前記第1の保持部と前記第2の保持部の間の部分が前記スライド方向に直交しかつ前記厚み方向に直交する方向において屈曲及び伸長されるようにしたものである。
【0011】
従って、携帯端末装置にあっては、第1の筐体と第2の筐体の厚み方向において接続ケーブルが屈曲する分のスペースが存在しない。
【0012】
上記した携帯端末装置においては、前記第1の筐体が前記第2の筐体に前記厚み方向に直交する面内において回転自在に支持され、前記第1の筐体の前記第2の筐体に対する回転支点部の内部に前記接続ケーブルの中間部を保持し前記第2の保持部として機能する保持孔が形成されることが望ましい。
【0013】
第1の筐体の第2の筐体に対する回転支点部の内部に接続ケーブルの中間部を保持し第2の保持部として機能する保持孔を形成することにより、第1の筐体が第2の筐体に対して回転されているときに接続ケーブルの屈曲状態が変化しない。
【0014】
上記した携帯端末装置においては、前記回転支点部に前記保持孔を有する筒状の保持部材を設け、前記保持孔を前記厚み方向に対して所定の角度傾斜させることが望ましい。
【0015】
回転支点部に保持孔を有する筒状の保持部材を設け、保持孔を厚み方向に対して所定の角度傾斜させることにより、接続ケーブルの保持孔に保持された部分が傾斜面に沿った状態で保持される。
【0016】
上記した携帯端末装置においては、前記第1の筐体又は前記第2の筐体に前記接続ケーブルの前記第1の保持部と前記第2の保持部の間の部分が収納される収納凹部が形成されることが望ましい。
【0017】
接続ケーブルの第1の保持部と第2の保持部の間の部分が収納される収納凹部が形成されることにより、接続ケーブルの第1の保持部と第2の保持部の間の部分の収納スペースが一定の範囲に限定される。
【0018】
上記した携帯端末装置においては、前記接続ケーブルにおける前記第1の保持部と前記第2の保持部にそれぞれ保持された各部分間の長さを、前記第1の筐体が前記第2の筐体に対してスライドされるときの最大ストロークの1.3倍乃至1.6倍にすることが望ましい。
【0019】
接続ケーブルにおける第1の保持部と第2の保持部にそれぞれ保持された各部分間の長さを、第1の筐体が第2の筐体に対してスライドされるときの最大ストロークの1.3倍乃至1.6倍にすることにより、第1の筐体のスライド時における全範囲において接続ケーブルに大きな負荷がかかることがない。
【0020】
上記した携帯端末装置においては、前記第1の保持部と前記第2の保持部を前記スライド方向に直交しかつ前記厚み方向に直交する方向において離隔して設けることが望ましい。
【0021】
第1の保持部と第2の保持部をスライド方向に直交しかつ厚み方向に直交する方向において離隔して設けることにより、接続ケーブルの屈曲方向が予め所定の方向になるように定められる。
【発明の効果】
【0022】
本発明携帯端末装置は、少なくとも表示部が配置された第1の筐体と、前記第1の筐体を所定の方向へスライド自在に支持すると共に少なくとも操作部が配置された第2の筐体と、前記第1の筐体の内部に配置され第1のコネクターが搭載された第1の回路基板と、前記第2の筐体の内部に配置され第2のコネクターが搭載された第2の回路基板と、前記第1の筐体及び前記第2の筐体の内部に配置され両端部がそれぞれ前記第1のコネクターと前記第2のコネクターに接続された接続ケーブルとを備え、前記第1の筐体と前記第2の筐体は互いに厚み方向において少なくとも一部が重ね合わされ、前記第1の筐体と前記第2の筐体の一方又は双方の内部に前記接続ケーブルの中間部における2箇所の部分をそれぞれ保持すると共に前記第1の筐体の前記第2の筐体に対するスライド方向に離隔する第1の保持部と第2の保持部が設けられ、前記第1の筐体が前記第2の筐体に対してスライドされたときに前記接続ケーブルの前記第1の保持部と前記第2の保持部の間の部分が前記スライド方向に直交しかつ前記厚み方向に直交する方向において屈曲及び伸長されるようにしている。
【0023】
従って、第1の筐体と第2の筐体の厚み方向において接続ケーブルが屈曲する分のスペースを必要とせず、その分、携帯端末装置の薄型化を図ることができる。
【0024】
また、第1の筐体がスライドされる毎に接続ケーブルが第1の筐体と第2の筐体の厚み方向において大きく折り返され又は伸長されることがなく、接続ケーブルの耐久性の向上を図ることができる。
【0025】
請求項2に記載した発明にあっては、前記第1の筐体が前記第2の筐体に前記厚み方向に直交する面内において回転自在に支持され、前記第1の筐体の前記第2の筐体に対する回転支点部の内部に前記接続ケーブルの中間部を保持し前記第2の保持部として機能する保持孔が形成されている。
【0026】
従って、第1の筐体が第2の筐体に対して回転される構成とされている場合においても、携帯端末装置の薄型化及び接続ケーブルの耐久性の向上を図ることができる。
【0027】
請求項3に記載した発明にあっては、前記回転支点部に前記保持孔を有する筒状の保持部材を設け、前記保持孔を前記厚み方向に対して所定の角度傾斜させている。
【0028】
従って、第1の筐体が第2の筐体に対してスライドしたときの接続ケーブルの屈曲方向を一定の方向に確実に定めることができる。
【0029】
請求項4に記載した発明にあっては、前記第1の筐体又は前記第2の筐体に前記接続ケーブルの前記第1の保持部と前記第2の保持部の間の部分が収納される収納凹部が形成されている。
【0030】
従って、接続ケーブルの第1の保持部と第2の保持部の間の部分の収納スペースが一定の範囲に限定され、その分、携帯端末装置の小型化を図ることができる。
【0031】
請求項5に記載した発明にあっては、前記接続ケーブルにおける前記第1の保持部と前記第2の保持部にそれぞれ保持された各部分間の長さを、前記第1の筐体が前記第2の筐体に対してスライドされるときの最大ストロークの1.3倍乃至1.6倍にしている。
【0032】
従って、第1の筐体のスライド時における全範囲において接続ケーブルに大きな負荷がかかることなく、接続ケーブルの良好な収納状態を確保することができる。
【0033】
請求項6に記載した発明にあっては、前記第1の保持部と前記第2の保持部を前記スライド方向に直交しかつ前記厚み方向に直交する方向において離隔して設けている。
【0034】
従って、接続ケーブルの屈曲方向が予め所定の方向になるように設定することができ、接続ケーブルの屈曲方向を一定の方向に確実に定めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明携帯端末装置の実施の形態を添付図面に従って説明する。
【0036】
以下に示した実施の形態は、本発明携帯端末装置を携帯電話に適用したものである。
【0037】
尚、本発明の適用範囲は携帯電話に限られることはない。本発明は、音声記録再生装置、画像記録再生装置、カメラ等の撮像装置、ネットワーク通信装置、パーソナルコンピューターやPDA(Personal Digital Assistant)等の情報処理装置等において第1の筐体が第2の筐体に対してスライド可能な構成にされた他の各種の携帯端末装置に広く適用することができる。
【0038】
以下の説明にあっては、第1の筐体側を前方とし第2の筐体側を後方とし第1の筐体が第2の筐体に対してスライドされる方向を上下方向として前後上下左右の方向を示すものとする。
【0039】
尚、以下に示す前後上下左右の方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0040】
[携帯端末装置の全体構成]
携帯端末装置(携帯電話)1は第1の筐体2と第2の筐体3を有している(図1乃至図4参照)。第1の筐体2と第2の筐体3はともに上下に長い矩形状に形成され厚み方向が前後方向にされている。
【0041】
第1の筐体2はカバー体4とベース体5が前後で結合されて成る。
【0042】
カバー体4は後方に開口された浅い箱状に形成され、カバー体4には表示部6が配置されている。
【0043】
ベース体5は前後方向を向くベース部7と該ベース部7の外周に設けられた枠状部8とが一体に形成されて成る。ベース部7の前面側にはベース部7の前面と枠状部8の前端部によって囲まれ前方に開口された第1の配置用凹部9が形成されている。ベース部7の後面側にはベース部7の後面と枠状部8の後端部によって囲まれ後方に開口された第2の配置用凹部10が形成されている。
【0044】
ベース部7の内側には前方に開口された浅い収納凹部11が形成されている。収納凹部11には左右方向における中央部に前後に貫通され上下に延びるケーブル挿入孔11aが形成されている。
【0045】
ベース部7の下端部には前方に開口された浅い凹部12が形成されている。ベース部7には収納凹部11と凹部12の間に前方に開口された保持溝13が形成され、該保持溝13は上端が収納凹部11に連通され下端が凹部12に連通されている(図5及び図6参照)。
【0046】
ベース部7には、図5及び図6に示すように、保持溝13の上端部に、互いに接する方向へ突出された第1の保持部7a、7aが設けられている。ベース部7には、保持溝13の下端部に、互いに接する方向へ突出された保持突部7b、7bが設けられている。第1の保持部7a、7a及び保持突部7b、7bは、例えば、それぞれ突出する方向へ凸の半円形状に形成されている。
【0047】
ベース部7には収納凹部11を前方から閉塞するシート状の押さえ板14が取り付けられる(図2乃至図4参照)。
【0048】
ベース体5の第1の配置用凹部9には第1の回路基板15が配置されて取り付けられる。第1の回路基板15の下端部には下方に開口された挿通用切欠15aが形成されている。第1の回路基板15の前面には、挿通用切欠15aの直ぐ上側の位置に第1のコネクター16が搭載されている。
【0049】
第2の筐体3は前側ケース17と後側ケース18と蓋体19から成る(図1乃至図4参照)。
【0050】
前側ケース17は後方に開口された箱状に形成され、上端側に前方に開口された取付用凹部17aと前後に貫通された挿通孔17bとを有している。
【0051】
後側ケース18は前方に開口された箱状に形成され、上端側に前後に貫通された連通孔18aを有している。後側ケース18の連通孔18aは蓋体19によって閉塞される。
【0052】
後側ケース18の連通孔18aが蓋体19によって閉塞された状態において、前側ケース17と後側ケース18が前後で結合されることにより、内部に配置用空間20が形成される(図3及び図4参照)。
【0053】
配置用空間20には前端側に第2の回路基板21が配置され、該第2の回路基板21の後面には第2のコネクター22が搭載されている。第2の回路基板21の上端部には上方に開口された挿通用切欠21aが形成されている。配置用空間20には後端側に第3の回路基板23が配置されている。
【0054】
前側ケース17の下端側には、例えば、複数の操作釦によって構成された操作部24が配置されている。尚、操作部24は第2の筐体3の他に第1の筐体2に配置されていてもよい。
【0055】
前側ケース17には取付用凹部17aに位置された回転ベース25が取り付けられている。回転ベース25は前後方向を向く板状に形成され、取付用凹部17aに取付ピン25a、25aによって取り付けられている。
【0056】
回転ベース25には円筒状のスリーブ26が取り付けられ、該スリーブ26の孔は配置孔26aとして形成されている。
【0057】
スリーブ26にはスライドベース27が回転自在に支持されている(図7及び図8参照)。スライドベース27は縦長の矩形状に形成され左右両側部にそれぞれガイドレール27a、27aを有している。ガイドレール27a、27aはそれぞれ内方に開口されたコ字状に形成されている。スライドベース27にはスリーブ26に支持された部分の周囲の位置に、周方向に離隔して係合孔27b、27b、・・・が形成されている。
【0058】
スライドベース27の後面と回転ベース25の前面との間にはクリックバネ28が配置されている。
【0059】
スライドベース27にはスライダー29が上下方向へスライド自在に支持されている。スライダー29は上下に長い矩形の板状に形成され、左右両端部が被ガイド部29a、29aとして設けられている。スライダー29は被ガイド部29a、29aがそれぞれガイドレール27a、27aに摺動自在に係合されてスライドベース27にスライド自在に支持されている。
【0060】
スライダー29は第1の筐体2のベース体5に形成された第2の配置用凹部10に配置されて取り付けられている。
【0061】
第2の筐体3の前側ケース17に取り付けられたスリーブ26の配置孔26aには保持部材30が配置されて取り付けられている(図3及び図4参照)。保持部材30は、例えば、ウレタンゴム等の弾性係数の高い材料によって形成されている。
【0062】
保持部材30は外形が円柱状に形成され、中心部から半径方向において、例えば、上斜め左方、即ち、左右方向に対して上方側に角度Aの方向へ延びるようにされた保持孔31を有している(図9参照)。角度Aは、例えば、20°〜40°にされている。保持孔31は、例えば、保持部材30の外周面に開口され、最も内側の内面が保持部材30の軸方向に対して傾斜された傾斜面31aとして形成されている。傾斜面31aは後方へ行くに従って上斜め左方に変位するように軸方向に対して角度Bだけ傾斜されている(図10参照)。
【0063】
第1の筐体2の内部に配置された第1の回路基板15に搭載された第1のコネクター16と第2の筐体3の内部に配置された第2の回路基板21に搭載された第2のコネクター22とは接続ケーブル32によって接続されている(図3及び図4参照)。
【0064】
接続ケーブル32は一端部32aが第1のコネクター16に接続され、第1の回路基板15の挿通用切欠15aを挿通され(図3及び図4参照)、中間部32b、32cがそれぞれ第1の筐体2の保持突部7b、7bと第1の保持部7a、7aに保持されている(図5及び図6参照)。接続ケーブル32の径は保持突部7b、7b間の距離及び第1の保持部7a、7a間の距離より僅かに大きくされており、保持突部7b、7b間及び第1の保持部7a、7a間にそれぞれ挿入された中間部32b、32cが弾性変形された状態で保持されている(図5の拡大図参照)。
【0065】
接続ケーブル32は中間部32cの上側に位置する部分が第1の筐体2の収納凹部11に収納された状態で保持されている。接続ケーブル32の収納凹部11に収納された部分は屈曲可能部33として設けられている。接続ケーブル32はケーブル挿入孔11aに挿入され保持部材30の保持孔31に中間部32dが保持されている(図9及び図10参照)。このように保持部材30の保持孔31は接続ケーブル32を保持する機能を有しており、保持孔31は接続ケーブル32を保持する第2の保持部として形成される。
【0066】
接続ケーブル32の径は保持孔31の幅より僅かに大きくされており、保持孔31に挿入された中間部32dは弾性変形された状態で保持されている。このとき接続ケーブル32の中間部32dは保持孔31の傾斜面31aに沿った状態で保持されている。
【0067】
接続ケーブル32は保持部材30の保持孔31から後方へ突出された部分が挿通孔17bを挿通されて第2の回路基板21の挿通用切欠21aを挿通され(図3及び図4参照)、他端部32eが第2のコネクター22に接続されている。
【0068】
携帯端末装置1においては、上記したように、スライドベース27にスライド自在に支持されたスライダー29が第1の筐体2に取り付けられており、第1の筐体2は第2の筐体3に対して上下方向へスライド可能とされている(図3乃至図6参照)。第1の筐体2は第2の筐体3に対して全体が厚み方向において重ね合わされ操作部24を閉塞する閉塞位置(図3及び図5参照)と上端部が第2の筐体3から上方へ突出され操作部24を開放する開放位置(図4及び図6参照)との間でスライドされる。
【0069】
第1の筐体2の閉塞位置と開放位置の間の移動量(最大ストローク)をL1(図6参照)とし、接続ケーブル32の収納凹部11に位置された部分である屈曲可能部33の長さをL2(図5参照)とすると、L2がL1の1.3倍〜1.6倍にされている。
【0070】
また、収納凹部11の左右方向における幅をL3(図6参照)とすると、L1がL3の2.5倍〜3.0倍にされている。
【0071】
[携帯端末装置の基本的動作]
携帯端末装置1は、上記したように、第1の筐体2が第2の筐体3にスライド自在に支持されており、第1の筐体2が第2の筐体3に対して操作部24を閉塞する閉塞位置と操作部24を開放する開放位置との間でスライドされる(図11及び図12参照)。
【0072】
また、第1の筐体2は開放位置にある状態において、第2の筐体3に対してスリーブ26及び該スリーブ26の内部に配置された保持部材30を支点部として厚み方向に直交する面内において回転可能とされている(図13及び図14参照)。従って、スリーブ26及び保持部材30は第1の筐体2の第2の筐体3に対する回転支点部とされる。
【0073】
第1の筐体2は第2の筐体3に直交する回転位置(図14参照)まで回転可能とされている。
【0074】
[携帯端末装置の動作時における接続ケーブルの状態]
次に、携帯端末装置1のスライド動作時及び回転動作時における接続ケーブル32の状態について説明する。
【0075】
第1の筐体2が操作部24を閉塞する閉塞位置にある状態においては、図3及び図5に示すように、接続ケーブル32の屈曲可能部33が収納凹部11において伸長され上下に延びる直線状にされている。
【0076】
このときクリックバネ28の一部がスライドベース27の係合孔27b、27b、・・・に係合され、第1の筐体2が閉塞位置に保持されている。
【0077】
第1の筐体2が第2の筐体3に対して閉塞位置から開放位置へ向けてスライドされていくと、接続ケーブル32の第1の保持部7a、7aによって保持された中間部32cが上方へ移動されていくため、屈曲可能部33が蛇行するように屈曲されていく(図15参照)。このとき保持部材30の保持孔31が上斜め左方へ延びるようにされ傾斜面31aを有しているため、屈曲可能部33の上端部が保持孔31の傾斜面31aに沿う方向へ延びるように屈曲される。従って、屈曲可能部33の上端部は右下がりに傾斜した状態となるように屈曲され、屈曲部33の全体が収納凹部11内においてS字を描くように屈曲される(図4及び図6参照)。
【0078】
第1の筐体2が開放位置において第2の筐体3に対して回転位置へ向けて回転されると、接続ケーブル32は保持部材30に保持された中間部32dを支点として第1の筐体2と一体になって回転される(図16参照)。このとき接続ケーブル32は回転支点部とされた保持部材30の保持孔31に保持されているため、S字の状態が保持され屈曲状態が変化することなく第1の筐体2と一体になって回転される。
【0079】
第1の筐体2が第2の筐体3に対して回転位置へ向けて回転されたときには、クリックバネ28の係合孔27b、27b、・・・に対する係合が一旦解除され、第1の筐体2が回転位置まで回転されたときにクリックバネ28が再び係合孔27b、27b、・・・に係合され、第1の筐体2が回転位置に保持される。
【0080】
第1の筐体2が回転位置から開放位置まで回転されるときにも、接続ケーブル32はS字の状態が保持され屈曲状態が変化することなく第1の筐体2と一体になって回転される。
【0081】
第1の筐体2が開放位置から閉塞位置へ向けてスライドされるときには、接続ケーブル32の第1の保持部7a、7aによって保持された中間部32cが下方へ移動されていくため、接続ケーブル32はS字の状態に屈曲されていた屈曲可能部33が収納凹部11において伸長され上下に延びる直線状にされる(図3及び図5参照)。
【0082】
尚、上記には、接続ケーブル32の中間部32cを保持する第1の保持部7a、7aを左右に離隔して上下方向において同じ位置に設けた例を示したが、例えば、第1の保持部7a、7aを左右に離隔して上下方向において異なる位置に設けることも可能である(図17参照)。
【0083】
このように第1の保持部7a、7aを上下方向において異なる位置に設けることにより、接続ケーブル32の屈曲方向が予め所定の方向(図17における方向C)になるように設定することができ、接続ケーブル32の屈曲方向を一定の方向に確実に定めることができる。上下方向に対するC方向の角度Dは、例えば、20°〜40°になるように第1の保持部7a、7aの位置を定めることが望ましい。
【0084】
また、例えば、第1の保持部7a、7aと第2の保持部として機能する保持部材30の保持孔31とを上下に離隔して左右方向において異なる位置に設けることも可能である(図18参照)。
【0085】
このように第1の保持部7a、7aと第2の保持部として機能する保持部材30の保持孔31とを左右方向において異なる位置に設けることにより、接続ケーブル32の屈曲方向が予め所定の方向(図18における方向E)になるように設定することができ、接続ケーブル32の屈曲方向を一定の方向に確実に定めることができる。
【0086】
[まとめ]
以上に記載した通り、携帯端末装置1にあっては、第1の筐体2が第2の筐体3に対してスライドされたときに接続ケーブル32の屈曲可能部33がスライド方向に直交しかつ厚み方向に直交する方向において屈曲及び伸長される。
【0087】
従って、第1の筐体2と第2の筐体3の厚み方向において接続ケーブル32が屈曲する分のスペースを必要とせず、その分、携帯端末装置1の薄型化を図ることができる。
【0088】
また、第1の筐体2がスライドされる毎に接続ケーブル32が第1の筐体2と第2の筐体3の厚み方向において大きく折り返され又は伸長されることがなく、接続ケーブル32の耐久性の向上を図ることができる。
【0089】
さらに、携帯端末装置1にあっては、第1の筐体2の第2の筐体3に対する回転支点部として機能する保持部材30の保持孔31に接続ケーブル32が保持されているため、第1の筐体2が第2の筐体3に対して回転されているときに接続ケーブル32の屈曲状態が変化されることがない。
【0090】
従って、第1の筐体2が第2の筐体3に対して回転される構成とされている場合においても、携帯端末装置1の薄型化及び接続ケーブル32の耐久性の向上を図ることができる。
【0091】
さらにまた、第2の保持部として機能する保持部材30の保持孔31に厚み方向に対して所定の角度傾斜された傾斜面31aを形成しているため、接続ケーブル32の屈曲方向を一定の方向に確実に定めることができる。
【0092】
また、携帯端末装置1には、接続ケーブル32の屈曲可能部33が収納される収納凹部11が形成されているため、屈曲可能部33の収納スペースが一定の範囲に限定され、その分、携帯端末装置1の小型化を図ることができる。
【0093】
加えて、携帯端末装置1にあっては、上記したように、接続ケーブル32の屈曲可能部33の長さを第1の筐体2が第2の筐体3に対してスライドされるときの最大ストロークの1.3倍乃至1.6倍にしている。従って、第1の筐体2の閉塞位置から開放位置の全範囲において屈曲可能部33に大きな負荷がかかることなく、屈曲可能部33の良好な収納状態を確保することができる。
【0094】
尚、上記には、第1の筐体2の内部において接続ケーブル32の屈曲可能部33が屈曲及び伸長される例を示したが、屈曲可能部33が屈曲及び伸長される部分は第1の筐体2の内部に限られることはなく、第2の筐体3の内部において屈曲可能部33が屈曲及び伸長されるように構成することも可能である。
【0095】
この場合には、屈曲可能部33が収納される収納凹部11が第2の筐体3の内部に形成される。
【0096】
上記した最良の形態において示した各部の具体的な形状及び構造は、何れも本発明を実施する際の具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図2乃至図18と共に本発明携帯端末装置の実施の形態を示すものであり、本図は、携帯端末装置の斜視図である。
【図2】携帯端末装置の分解斜視図である。
【図3】第1の筐体が閉塞位置にある状態における携帯端末装置の断面図である。
【図4】第1の筐体が開放位置にある状態における携帯端末装置の断面図である。
【図5】第1の筐体が閉塞位置にある状態において一部を断面にして示す携帯端末装置の正面図である。
【図6】第1の筐体が開放位置にある状態において一部を断面にして示す携帯端末装置の正面図である。
【図7】第1の筐体が閉塞位置にある状態においてスライドベースとスライダーの拡大正面図である。
【図8】第1の筐体が開放位置にある状態におけるスライドベースとスライダーの拡大側面図である。
【図9】保持部材等を示す拡大正面図である。
【図10】保持部材等を示す拡大断面図である。
【図11】図12乃至図14と共に携帯端末装置の動作を示すものであり、本図は第1の筐体が閉塞位置にある状態を示す正面図である。
【図12】第1の筐体が開放位置にスライドされた状態を示す正面図である。
【図13】第1の筐体が開放位置と回転位置の間で回転されている途中の状態を示す正面図である。
【図14】第1の筐体が回転位置に回転された状態を示す正面図である。
【図15】第1の筐体がスライドされたときに接続ケーブルが屈曲されている状態を一部を断面にして示す正面図である。
【図16】第1の筐体が回転されたときの接続ケーブルの状態を一部を断面にして示す正面図である。
【図17】第1の保持部が上下方向において異なる位置に設けられた例を示す拡大正面図である。
【図18】第1の保持部と第2の保持部が左右方向において異なる位置に設けられた例を示す拡大正面図である。
【符号の説明】
【0098】
1…携帯端末装置、2…第1の筐体、3…第2の筐体、6…表示部、11…収納凹部、15…第1の回路基板、16…第1のコネクター、24…操作部、30…保持部材、31…保持孔、32…接続ケーブル、32c…中間部、32d…中間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表示部が配置された第1の筐体と、
前記第1の筐体を所定の方向へスライド自在に支持すると共に少なくとも操作部が配置された第2の筐体と、
前記第1の筐体の内部に配置され第1のコネクターが搭載された第1の回路基板と、
前記第2の筐体の内部に配置され第2のコネクターが搭載された第2の回路基板と、
前記第1の筐体及び前記第2の筐体の内部に配置され両端部がそれぞれ前記第1のコネクターと前記第2のコネクターに接続された接続ケーブルとを備え、
前記第1の筐体と前記第2の筐体は互いに厚み方向において少なくとも一部が重ね合わされ、
前記第1の筐体と前記第2の筐体の一方又は双方の内部に前記接続ケーブルの中間部における2箇所の部分をそれぞれ保持すると共に前記第1の筐体の前記第2の筐体に対するスライド方向に離隔する第1の保持部と第2の保持部が設けられ、
前記第1の筐体が前記第2の筐体に対してスライドされたときに前記接続ケーブルの前記第1の保持部と前記第2の保持部の間の部分が前記スライド方向に直交しかつ前記厚み方向に直交する方向において屈曲及び伸長されるようにした
携帯端末装置。
【請求項2】
前記第1の筐体が前記第2の筐体に前記厚み方向に直交する面内において回転自在に支持され、
前記第1の筐体の前記第2の筐体に対する回転支点部の内部に前記接続ケーブルの中間部を保持し前記第2の保持部として機能する保持孔が形成された
請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項3】
前記回転支点部に前記保持孔を有する筒状の保持部材を設け、
前記保持孔を前記厚み方向に対して所定の角度傾斜させた
請求項2に記載の携帯端末装置。
【請求項4】
前記第1の筐体又は前記第2の筐体に前記接続ケーブルの前記第1の保持部と前記第2の保持部の間の部分が収納される収納凹部が形成された
請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項5】
前記接続ケーブルにおける前記第1の保持部と前記第2の保持部にそれぞれ保持された各部分間の長さを、前記第1の筐体が前記第2の筐体に対してスライドされるときの最大ストロークの1.3倍乃至1.6倍にした
請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項6】
前記第1の保持部と前記第2の保持部を前記スライド方向に直交しかつ前記厚み方向に直交する方向において離隔して設けた
請求項1に記載の携帯端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−199766(P2011−199766A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66757(P2010−66757)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】