説明

携帯通信端末およびその端末に搭載する非接触カード

【課題】 非接触カードの不正読み取り等の防止設定と、使用者による非接触カードの正規使用設定との切り替えを、携帯通信端末の電源のオンまたはオフに関わらず行うことが可能な携帯通信端末の提供。
【解決手段】 非接触ICカード部40内のアンテナ回路2と非接触ICカード制御・メモリ部3との電気的接続を、機械式スイッチ1により制御する。機械式スイッチ1は携帯電話10の電源オン・オフに依存しないため、携帯電話10の電源オン・オフに関わらず上記電気的接続を制御することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯通信端末およびその端末に搭載する非接触カードに関し、特に非接触カードの不正読み取り防止機能を備えた携帯通信端末およびその端末に搭載する非接触カードに関する。
【背景技術】
【0002】
外部装置と非接触でデータの送受信を行う非接触カード、例えば非接触IC(integrated circuit)カードは知られている。また、この非接触カードを搭載した携帯通信端末、例えば携帯電話も知られている。
【0003】
この非接触カードは外部装置とデータの送受信を行う際に外部装置から電源の供給を受けるよう構成されているため、非接触カード内に電源を設ける必要はないのが一般的である。
【0004】
したがって、一例として携帯電話に搭載された非接触カードと外部装置との通信は、携帯電話の電源が入った状態(以下、オンまたはオン状態と記す)はもとより携帯電話の電源が切れた状態(以下、オフまたはオフ状態と記す)でも行うことが可能である。
【0005】
したがって、従来の携帯電話に搭載された非接触カードは常に内部データを不正読み取りされる等の危険性を有しているといえる。
【0006】
一方、この種の不正読み取りを防止する機能を備えた携帯電話の一例が知られている。図3は従来の非接触カードを搭載した携帯電話の一例の構成図である。
【0007】
同図を参照すると、従来の携帯電話21は非接触ICカード部4と、制御部11と、通信部12と、表示部13と、入力部14とを含んで構成される。
【0008】
また、非接触ICカード部4はアンテナ回路2と、非接触ICカード制御・メモリ部3と、電子スイッチ22とを含んで構成される。
【0009】
一方、電子スイッチ22を含まず、アンテナ回路2と非接触ICカード制御・メモリ部3とが直接接続される従来例も参考のため同図に併記している。
【0010】
まず、非接触ICカード部4の動作について説明する。非接触ICカード部4は電子スイッチ22がオンの場合にアンテナ回路2と非接触ICカード制御・メモリ部3が電気的に接続され、オフの場合はアンテナ回路2と非接触ICカード制御・メモリ部3が電気的に切り離されるよう構成されている。
【0011】
また、電子スイッチ22がオンの場合、携帯電話21とは別個に設けられたリーダー/ライター31と非接触ICカード4内の非接触ICカード制御・メモリ部3とがアンテナ回路2を介して通信可能となり、リーダー/ライター31からのデータを非接触ICカード制御・メモリ部3に書き込むことおよび非接触ICカード制御・メモリ部3に格納されたデータをリーダー/ライター31が読み出すことが可能となる。また、この場合、リーダー/ライター31から非接触ICカード部4に電源が供給される。
【0012】
一方、電子スイッチ22がオフの場合、リーダー/ライター31と非接触ICカード部4内の非接触ICカード制御・メモリ部3との通信は不可となる。
【0013】
次に、携帯電話21の電話機能について説明する。通信部12は図示しない電話用アンテナを介して他の電話機と通信する。表示部13は通信に必要な情報を表示する。入力部14は使用者がデータを入力する部位であり、一例としてキーボードである。制御部11は通信部12、表示部13および入力部14を制御するのみならず非接触ICカード部4内の非接触ICカード制御・メモリ部3をも制御する。
【0014】
すなわち、制御部11は通信部12、表示部13および入力部14を制御して携帯電話21の電話機能を制御するとともに、非接触ICカード制御・メモリ部3からのデータ入力および非接触ICカード制御・メモリ部3へのデータ出力をも制御するよう構成されている。
【0015】
ここで、電子スイッチ22が設けられている理由は、使用者本人が非接触ICカード部4の使用意思を持たないときに、悪意を持った他人に、外部から知らぬ間に非接触ICカード部4内のデータを読み取られること等を防止するためである。
【0016】
すなわち、電子スイッチ22をオフにしておけば、アンテナ回路2が非接触ICカード制御・メモリ部3と電気的に切り離されるため、悪意を持った他人が不正に非接触ICカード制御・メモリ部3からのデータを読み取ろうとしても、あるいは不正に非接触ICカード制御・メモリ部3へデータを書き込もうとしても、これを行うことができない。よって、これにより悪意を持った他人による非接触ICカード部4の不正読み取りおよび不正書き込みを防止することが可能となる。
【0017】
一方、携帯電話21の使用者本人は前述の電子スイッチ22をオンにしている間だけアンテナ回路2が非接触ICカード制御・メモリ部3と電気的に接続されるので、非接触ICカード制御・メモリ部3と外部のリーダー/ライター31との通信を行うことが可能となる。
【0018】
ところで、接触および非接触両方式を備えたICカードを搭載した携帯可能電子装置が特許文献1に開示されている。これは、接触方式のICカードを用いるかあるいは非接触方式のICカードを用いるかを切り替えスイッチで自動的に切り替えるようにしたものであり、混信を防止することを目的としている。
【0019】
他方、非接触方式のカード単品の発明で、非接触カード内の通信部と外部との不正な通信を防止するために、通信部とアンテナとの接続を切り離すスイッチを設けた非接触カードが特許文献2に開示されている。
【0020】
【特許文献1】特開2000−322544号公報(段落0019、0020、0030、図1)
【特許文献2】特開平11−085924号公報(段落0014、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかし、図3に示す電子スイッチ22は、トランジスタ等の能動素子を用いたスイッチであるため、その電子スイッチ22を動作させるためには別途電源が必要であり、本従来例では携帯電話21の電源がオンの場合に携帯電話21から電子スイッチ22へ電源を供給している。したがって、携帯電話21の電源がオフの場合には電子スイッチ22へ電源が供給されない。電子スイッチ22に電源が供給されない場合、電子スイッチ22を制御することはできない。
【0022】
すなわち、携帯電話21の電源がオフの場合は電子スイッチ22がオフとなるため、悪意を持った他人による非接触ICカード部4の不正読み取りおよび不正書き込みを防止することは可能であるが、その反面、使用者本人が非接触ICカード部4の使用意思を持ったとしても、電子スイッチ22を即座にオンにすることができないため、非接触ICカード部4を即座に使用できないという欠点がある。これは、携帯電話の電源オフが義務付けられた病院内等において起こり得る事態である。
【0023】
なお、電子スイッチ22をオンにするためには、一例として、まず携帯電話21の電源をオンにし、次に表示部13に示されるメニュー画面からオフをオンに切り替える。
【0024】
すなわち、非接触ICカード部4の不正読み取り等の防止設定と、使用者による非接触ICカード部4の正規使用設定との切り替えは、携帯電話21の電源がオンの場合にしかできないという欠点があった。
【0025】
一方、特許文献1開示の発明はスイッチを用いているとはいえ、そのスイッチは接触方式のICカードを用いるかあるいは非接触方式のICカードを用いるかを切り替える切り替えスイッチであり、ICカード内の非接触ICカード制御・メモリ部とアンテナとの接続を制御する本発明の断続スイッチとはその目的、構成、効果のいずれもが全く相違する。
【0026】
また、特許文献2開示の発明は非接触方式のカード単品として見た場合、本発明と共通するが、本発明はこれを携帯通信端末に搭載した場合に顕著な効果を奏するものであり、このような単品の非接触方式のカードに基づき本発明を想到することは困難である。
【0027】
そこで本発明の目的は、携帯通信端末およびその端末に搭載する非接触カードにおいて、非接触カードの不正読み取り等の防止設定と、使用者による非接触カードの正規使用設定との切り替えを、携帯通信端末の電源のオンまたはオフに関わらず行うことが可能な携帯通信端末およびその端末に搭載する非接触カードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
前記課題を解決するために本発明による携帯通信端末は、外部装置と非接触でデータの送受信を行う非接触カードを搭載する携帯通信端末であって、前記非接触カードはアンテナ回路と、非接触カード制御・メモリ部と、前記アンテナ回路と前記非接触カード制御・メモリ部とを電気的に接続または切断する機械式スイッチとを含むことを特徴とする。
【0029】
また、本発明による非接触カードは、携帯通信端末に搭載され、外部装置と非接触でデータの送受信を行う非接触カードであって、前記非接触カードはアンテナ回路と、非接触カード制御・メモリ部と、前記アンテナ回路と前記非接触カード制御・メモリ部とを電気的に接続または切断する機械式スイッチとを含むことを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、携帯通信端末の電源オンまたはオフに依存しない機械式スイッチを用いて、非接触カードのアンテナ回路と、非接触カード制御・メモリ部との電気的接続を制御する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、上記構成を含むことにより、非接触カードの不正読み取り等の防止設定と、使用者による非接触カードの正規使用設定との切り替えを、携帯通信端末の電源のオンまたはオフに関わらず行うことが可能となる。
【0032】
具体的には、第1の効果は非接触ICカード搭載の携帯通信端末において、専用の機械式スイッチを設け、非接触ICカードの外部との通信機能をスイッチを押している間だけ使用できるようにすることで、外部から本人が知らぬ間に内部情報を読み取られてしまうことを防止できることである。
【0033】
第2の効果は専用の機械式スイッチを設けているので、簡便な操作性で即時に非接触ICカードの外部との通信機能のオン、オフを切り替えられることである。
【0034】
第3の効果は機械式スイッチにて機能を実現するので、非接触ICカードがそのまま使うことができる携帯電話本体の電源がオフの時でも、非接触ICカードの外部との通信機能のオン、オフを、携帯電話を一度も立ち上げることなく、即時に切り替えられることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る携帯通信端末の一例の構成図である。なお、図3と同様の構成部分については同一番号を付し、その説明を省略する。
【0036】
同図を参照すると、非接触カードを搭載した携帯通信端末の一例が示されている。また、携帯通信端末の一例として携帯電話が示され、非接触カードの一例として非接触IC(integrated circuit)カードが示されている。
【0037】
同図を参照すると、携帯電話10は非接触ICカード部40と、制御部11と、通信部12と、表示部13と、入力部14とを含んで構成される。
【0038】
また、非接触ICカード部40はアンテナ回路2と、非接触ICカード制御・メモリ部3と、機械式スイッチ1とを含んで構成される。
【0039】
この機械式スイッチ1は電子スイッチ22(図3参照)と異なり、電源を別途供給する必要はない。すなわち、機械式スイッチ1のボタン1aを押下している間だけスイッチが閉じ(オンとなり)、それ以外はスイッチが開く(オフとなる)よう構成されている。したがって、携帯電話10の電源のオンまたはオフに関わらず機械式スイッチ1を動作させることが可能である。
【0040】
まず、非接触ICカード部40の動作について説明する。非接触ICカード部40は機械式スイッチ1がオン(ON)の場合にアンテナ回路2と非接触ICカード制御・メモリ部3が電気的に接続され、オフ(OFF)の場合はアンテナ回路2と非接触ICカード制御・メモリ部3が電気的に切り離されるよう構成されている。
【0041】
また、機械式スイッチ1がオンの場合、携帯電話10とは別個に設けられたリーダー/ライター31と非接触ICカード40内の非接触ICカード制御・メモリ部3とがアンテナ回路2を介して通信可能となり、リーダー/ライター31からのデータを非接触ICカード制御・メモリ部3に書き込むことおよび非接触ICカード制御・メモリ部3に格納されたデータをリーダー/ライター31が読み出すことが可能となる。また、この場合、リーダー/ライター31から非接触ICカード部40に電源が供給されるよう構成されている。
【0042】
一方、機械式スイッチ1がオフの場合、リーダー/ライター31と非接触ICカード部40内の非接触ICカード制御・メモリ部3との通信は不可となる。
【0043】
次に、携帯電話10の電話機能について説明する。通信部12は図示しない電話用アンテナを介して他の電話機と通信する。表示部13は通信に必要な情報を表示する。入力部14は使用者がデータを入力する部位であり、一例としてキーボードである。制御部11は通信部12、表示部13および入力部14を制御するのみならず非接触ICカード部40内の非接触ICカード制御・メモリ部3をも制御する。
【0044】
すなわち、制御部11は通信部12、表示部13および入力部14を制御して携帯電話10の電話機能を制御するとともに、非接触ICカード制御・メモリ部3からのデータ入力および非接触ICカード制御・メモリ部3へのデータ出力をも制御するよう構成されている。
【0045】
ここで、機械式スイッチ1が設けられている理由は、悪意を持った他人から無線によりアンテナ回路2を介して、不正に非接触ICカード制御・メモリ部3からのデータを読み取られることおよび非接触ICカード制御・メモリ部3に不正なデータが書き込まれるのを防止するためである。
【0046】
すなわち、機械式スイッチ1をオフ(ボタン1aを押下しない状態)にしておけば、アンテナ回路2が非接触ICカード制御・メモリ部3と電気的に切り離されるため、悪意を持った他人が不正に非接触ICカード制御・メモリ部3からのデータを読み取ろうとしても、あるいは不正に非接触ICカード制御・メモリ部3へデータを書き込もうとしても、これを行うことができない。よって、これにより悪意を持った他人による非接触ICカード部4の不正読み取りおよび不正書き込みを防止することが可能となる。
【0047】
一方、携帯電話10の使用者本人は前述の機械式スイッチ1をオン(ボタン1aを押下する状態)にしている場合だけアンテナ回路2が非接触ICカード制御・メモリ部3と電気的に接続されるので、非接触ICカード制御・メモリ部3と外部のリーダー/ライター31との通信を行うことが可能となる。
【0048】
すなわち、本発明では機械式スイッチ1を用いているため、携帯電話10の電源がオフの状態でも機械式スイッチ1をオフにすることができ、これにより携帯電話10の電源がオフの状態でも悪意を持った他人による非接触ICカード部40の不正読み取りおよび不正書き込みを防止することが可能となる。
【0049】
一方、本発明では機械式スイッチ1を用いているため、携帯電話10の電源がオフの状態でも機械式スイッチ1をオンにすることができ、これにより携帯電話10の電源がオフの状態でも非接触ICカード制御・メモリ部3と外部のリーダー/ライター31との通信を行うことが可能となる。
【0050】
これに対し、機械式スイッチ1をオフにして、アンテナ回路2と非接触ICカード制御・メモリ部3とを電気的に切り離した状態にしていた場合でも、携帯電話10の電源をオンにさえしておけば、制御部11を介して非接触ICカード制御・メモリ部3から非接触ICカード部40の内容、たとえば電子マネー残高、会員証情報等を閲覧することが可能となる。すなわち、悪意を持った他人による非接触ICカード部40の不正読み取り等の防止設定を行った状態で、電子マネー残高、会員証情報等を閲覧することが可能となる。
【0051】
図2は本発明に係る携帯通信端末に搭載可能な非接触カードの一例の構成図である。なお、図1と同様の構成部分には同一番号を付し、その説明を省略する。同図を参照すれば明らかなように、非接触カード40の構成は図1と同様である。この非接触カード40が単品の非接触カード40と異なる点は、携帯電話10に搭載が可能に構成されている点である。
【0052】
すなわち、本非接触カード部40を携帯電話10に搭載することにより、非接触カード部40の不正読み取り等の防止設定と、使用者による非接触カード部40の正規使用設定との切り替えを、携帯電話10の電源のオンまたはオフに関わらず行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る携帯通信端末の一例の構成図である
【図2】本発明に係る携帯通信端末に搭載可能な非接触カードの一例の構成図である。
【図3】従来の非接触カードを搭載した携帯通信端末の一例の構成図である。
【符号の説明】
【0054】
1 機械式スイッチ
2 アンテナ回路
3 非接触ICカード制御・メモリ部
10 携帯電話
11 制御部
12 通信部
13 表示部
14 入力部
40 非接触ICカード部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置と非接触でデータの送受信を行う非接触カードを搭載する携帯通信端末であって、
前記非接触カードはアンテナ回路と、非接触カード制御・メモリ部と、前記アンテナ回路と前記非接触カード制御・メモリ部とを電気的に接続または切断する機械式スイッチとを含むことを特徴とする携帯通信端末。
【請求項2】
前記機械式スイッチは前記携帯通信端末の電源オンまたはオフに依存しないことを特徴とする請求項1記載の携帯通信端末。
【請求項3】
前記携帯通信端末は電話機能を制御する制御部を含み、前記制御部はさらに前記非接触カードの非接触カード制御・メモリ部を制御することを特徴とする請求項1または2記載の携帯通信端末。
【請求項4】
前記携帯通信端末は携帯電話であることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の携帯通信端末。
【請求項5】
携帯通信端末に搭載され、外部装置と非接触でデータの送受信を行う非接触カードであって、
前記非接触カードはアンテナ回路と、非接触カード制御・メモリ部と、前記アンテナ回路と前記非接触カード制御・メモリ部とを電気的に接続または切断する機械式スイッチとを含むことを特徴とする非接触カード。
【請求項6】
前記機械式スイッチは前記携帯通信端末の電源オンまたはオフに依存しないことを特徴とする請求項5記載の非接触カード。
【請求項7】
前記携帯通信端末は電話機能を制御する制御部を含み、前記制御部はさらに前記非接触カードの非接触カード制御・メモリ部を制御することを特徴とする請求項5または6記載の非接触カード。
【請求項8】
前記携帯通信端末は携帯電話であることを特徴とする請求項5から7いずれかに記載の非接触カード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−134838(P2007−134838A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324242(P2005−324242)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】