説明

携帯電話機

【課題】複数画面を用いて1つの画像を表示させる場合においても、より一体的な表示が可能となる携帯電話機を提供すること。
【解決手段】表示部3の内部には、サブLCD15L,15Rが収納されており、横方向にスライドさせて引き出すことができる。そして、サブLCD15L,15Rが収納されているときには、メインLCD6においてのみ画像表示を行い、サブLCD15L,15Rが引き出されると、メインLCD6に表示されていた画像を、メインLCD6およびサブLCD15L,15Rに一体的に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字または画像を表示する画像表示装置を備えた携帯電話機に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一般に広く普及している携帯電話機は、電話通信機能のみならず、インターネットアクセス機能、電子メール機能などのデータ通信端末としての機能も有している。また、デジタルカメラ機能やムービー機能を搭載し、静止画像や動画を記録できる携帯電話機も登場している。これらの機能を有する携帯電話機には、文字や画像を表示するための画像表示装置が備えられている。この画像表示装置としては、一般に液晶表示装置が用いられているが、その画面サイズは携帯電話機本体の大きさに制約されるため、2〜3インチ程度のものが主流になっている。よって、画面に表示可能な文字数や、静止画像や動画の大きさが制限され、十分な情報量を表示することが困難になっている。
【0003】
そこで、画像表示装置の画面を大型化するための工夫を施した携帯電話機が過去において提案されている。たとえば、特許文献1には、複数台の携帯電話機が各々備えている画像表示装置の画面を、1つの画面として扱って大画面データを配信するサーバが開示されている。すなわち、当該サーバに登録されている複数台の携帯電話機の画面を一列に並べて当該サーバから配信された画像をみると、これら複数の携帯電話機の画面を一つの大きな画面とみなした画像が表示される。
【0004】
また、特許文献2に開示されている携帯電話機では、通常時は前面表示部の背面側に位置し、前面表示部の表示内容とは独立した内容の表示を行う背面表示部をヒンジにより展開可能に支持し、背面表示部を展開したときは、前面表示部の画面と背面表示部の画面とが略同一面で左右に並んだ状態となる構造を有している。そして、背面表示部を展開した状態のときに、前面表示部と背面表示部の2つの画面を一つの画面とみなした画像表示を行うことことで、画面の大型化を実現している。
【0005】
【特許文献1】特開2003−5947
【特許文献2】特開2005−223507
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しなしながら、特許文献1に開示された方法により携帯電話機の画面に大画面画像を表示するには、複数台の携帯電話機が必要となるため、一個人が大画面画像を見るのに適しているとはいいがたい。これに対して、特許文献2に開示された携帯電話機は、1台の携帯電話機において大画面化を実現しているが、背面表示部を展開したときに、前面表示部と背面表示部の画面が略同一面で左右に並ぶ状態となるため、両画面の間において、前面表示部の枠部分と背面表示部の枠部分とが隣接することとなり、両画面の間隔が必然的に広くなってしまう。よって、携帯電話機の画面サイズを勘案すると、両画面の間隔が離れ過ぎてしまうこととなり、前面表示部と背面表示部の両画面を1つの画面とみなして1つの画像を表示させたとしても、見る者に対しては、画像が分断されているという印象を与え、一体的な表示が困難となる可能性がある。
【0007】
そこで本発明は、複数画面を用いて1つの画像を表示させる場合においても、より一体的な表示が可能となる携帯電話機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、外部と通信を行う携帯電話機であって、画像を表示する表示画面および該表示画面を囲繞する枠部を有する第1の画像表示装置と、画像を表示する表示画面および該表示画面を囲繞する枠部を有し、前記第1の画像表示装置の背面側に隠れる位置に設けられ、前記第1の画像表示装置の表示画面横方向へスライドさせることにより引き出し可能な第2の画像表示装置と、前記第2の画像表示装置が引き出されたときに、前記第1および第2の画像表示装置の表示画面に対して1つの画像を一体的に表示する画像表示制御部とを有してなり、前記第2の画像表示装置の表示画面は、引き出されたときに前記第1の画像表示装置の表示画面と並行した位置となり、前記第2の画像表示装置を最大限引き出したときでも、少なくとも前記第2の画像表示装置の枠部が、第1の画像表示装置の背面側に隠れたままの状態となることを特徴としている。
【0009】
ここで、「少なくとも前記第2の画像表示装置の枠部」とは、第2の画像表示装置を最大限引き出した状態のときに、枠部にとどまらず、第2の画像表示装置の表示画面の一部が第1の画像表示装置の背面側に隠れたままの状態となるものも含む。また、第2の画像表示装置は1つとは限定されず、2つ設けて、第1画像表示装置の右側および左側からそれぞれ横方向へ引き出し可能にしてもよい。この場合、表示制御部は、第1の画像表示装置の画面と、2つの第2の画像表示装置の画面の、3つの画面に1つの画像を一体的に表示させることとなる。
【0010】
上述した携帯電話によれば、第2の画像表示装置を引き出すと、第1および第2の表示画面が横に並んだ状態となり、両表示画面に対して1つの画像が一体的に表示される。また、第2の画像表示装置を引き出したときに、第2の画像表示装置の表示画面において、少なくとも第2の画像表示装置の枠部分が第1の画像表示装置の背後に隠れるため、第1および第2の画像表示装置の画面の間には、第1の画像表示装置の枠部だけが存在することとなり、両表示画面の間隔を狭くすることができる。このため、両画像表示装置の画面に1つの画像を表示する場合、より一体的な表示が可能となる。
【0011】
また、本発明は、上記の携帯電話機において、前記第2の画像表示装置が引き出されている状態を検出する検出手段を有し、前記表示制御部は、前記検出手段により前記第2の画像表示装置が引き出されている状態が検出されない時には、前記第1の画像表示装置のみによって画像を表示し、前記検出手段により前記第2の画像表示装置が引き出された状態を検出した時には、前記第1の画像表示装置に表示している画像を、前記第1および第2の画像表示装置の画面に一体的に表示することを特徴としている。
【0012】
上記の携帯電話機によれば、第2の画像表示装置が第1の画像表示装置の背後に隠されている状態のときに第1の画像表示装置に表示されていた画像が、第2の画像表示装置が引き出されたときに、第1および第2の画像表示装置の両表示画面に一体的に表示される。これにより、第2の画像表示装置を引き出したときの表示切替えが自動的に切り替わることとなるため、表示切替えに関する使用者の手間を軽減することができる。
【0013】
また、本発明は、上述した各携帯電話機において、前記表示制御部は、前記画像表示制御部は、前記第1の画像表示装置の表示画面を構成する各画素に対応した記憶領域を有し、該記憶領域に前記第1の画像表示装置の表示画面に表示する画像データを記憶する第1の画像記憶手段と、前記第2の画像表示装置の表示画面を構成する各画素に対応した記憶領域を有し、該記憶領域に前記第2の画像表示装置の表示画面に表示する画像データを記憶する第2の画像記憶手段とを具備してなり、前記第2の画像表示装置の表示画面における縦方向の2つの辺のうち、引出方向とは反対側の辺から所定の幅を有する表示画面領域に該当する画素に対応した前記第2の画像記憶手段における記憶領域以外の記憶領域に、前記第2の画像表示装置の画面に表示する画像データを記憶させることを特徴としている。
【0014】
上述した携帯電話機によれば、2の画像表示装置の表示画面における縦方向の2つの辺のうち、引出方向とは反対側の辺から所定の幅を有する表示画面領域には、画像が表示されなくなる。このため、第2の画像表示装置の最大引き出し位置を、上記画像が表示されることがない表示画面領域が第1の画像表示装置の背後に隠れる位置とすることができる。すなわち、枠部分のみが第1の画像表示装置の背後に隠れる位置を最大引き出し位置とする場合よりも、第1の画像表示装置の背後に隠れる部分を大きくすることができるため、第2の画像表示装置を支持する強度を増加させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の携帯電話によれば、複数画面を用いて1つの画像を表示させる場合においても、より一体的な表示を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態にかかる携帯電話機について、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する携帯電話機は、図示せぬ基地局を介して無線により電話通信およびインターネットを介したデータ通信を行うものとする。
【0017】
図1は、本実施の形態に係る携帯電話1の外観を示す正面図および側面図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図である。携帯電話1は本体部2と表示部(第1の画像表示装置)3とからなる折りたたみ式の構造になっており、図1(a)の正面図は、表示部3を開いた状態を示している。図1において、表示部3の図中上部には、前述した基地局とやりとりされる無線信号を送受信するアンテナ4が設けられている。また、表示部3の正面上方には、前述した基地局を介して電話通信を行う際に通信相手の音声を聞くためのスピーカ5が設けられている。スピーカ5の下側には、液晶画像表示装置(以下、メインLCDという)6が設けられており、携帯電話1から電話をかけるときに入力される電話番号、携帯電話1へ電話をかけてきた相手の電話番号、インターネットを介してダウンロードした画像データ、および、送受信した電子メールの内容などを表示する。
【0018】
本体部2には、電話番号および文字などを入力されるためのテンキー7が設けられている。テンキー7は、いわゆるプッシュホン式の電話機に備えられているキーと同様のキーで構成されており、「0」〜「9」の数字に対応する10個のキー(以下、数字キーという)と、「*」および「#」の記号に対応する2つのキーの、計12個のキーで構成されている。また、数字キーのそれぞれには、平仮名およびアルファベットが適宜対応付けられており、携帯電話1が有するアクセサリ機能を実行中に文字などを入力する際にも用いられる。テンキー7の上方には、発信キー8と終了キー9が設けられている。発信キー8は、携帯電話1にかかってきた電話を受けるとき、および、テンキー7により電話番号を入力して携帯電話1から電話をかけるときに使用する。終了キー9は、携帯電話1による通話を終了させるとき、および、携帯電話1が有する各種機能を終了させるときなどに使用する。また、終了キー9は、携帯電話1の電源スイッチも兼ねている。
【0019】
発信キー8と終了キー9との間には、上下左右の4方向を指示可能な円板形状の多方向キー10が設けられており、携帯電話1が有する各種機能において、メインLCD6に表示された複数の選択肢を選択する際に使用する。ここで、携帯電話1は、たとえば、スケジュール機能、アドレス帳機能、電卓機能、メモ帳機能を備えているものとする。多方向キー10の表面には「↑」、「↓」、「→」、「←」のマークが付されており、「↑」マークの位置を押すと上方を指示することとなり、同様に、「↓」、「→」、「←」のマーク位置を押すと、それぞれ、下方、右方、左方を指示することになる。多方向キー10の中心位置には、多方向キー10とは独立して作動する決定キー11が設けられており、たとえば、メインLCD6に表示された複数の選択肢のうち、多方向キー10によって選択した内容を確定するときに使用される。発信キー8の上方には第1コマンドキー12が、終了キー9の上方には第2コマンドキー13が、それぞれ設けられている。これらコマンドキー12,13は、携帯電話1が有する各種機能を実行したときに、当該実行された機能において用いられるコマンドが適宜割り当てられる。以下では、テンキー7、発信キー8、終了キー9、多方向キー10、決定キー11、第1コマンドキー12、および、第2コマンドキー13をまとめて操作部と呼ぶこととする。テンキー7の下方には、携帯電話1において電話通信を行っているとき相手側へ送信する音声を入力するマイク14が設けられている。
【0020】
また、図1(b),(c)に示すように、表示部3内には、メインLCD6の背面側において、サブLCD15L,15R(第2の画像表示装置)が収納されており、サブLCD15L,15Rは、それぞれ図1(b),(c)の紙面手前方向(図1(a)においてはメインLCD6の画面、横方向)へ、手動によりスライドさせて引き出すことができるようになっている。
【0021】
ここで図2を参照してサブLCD15L,15Rを引き出した状態について説明する。図2は、サブLCD15L,15Rを最大限引き出した状態における携帯電話機1の正面図である。この図において、図1と同じ部位については同一の符号を付し、その詳しい説明を省略する。この図に示すように、サブLCD15L,15Rを引き出すと、それぞれ枠部FLに囲まれた画面16L,16Rが現れ、後述するように、メインLCD6とともに各種画像を表示する。また、サブLCD15L,15Rは、最大限引き出した状態でも破線で示す部分、すなわち、サブLCD15L,15Rの横方向において、表示部3側の辺から引き出し方向(サブLCD15Lにおいては、図2中、左方向、サブLCD15Rについては、図2中、右方向)に向かって所定幅wだけ、表示部3の内部に収納されている。したがって、サブLCD15L,15Rの画面16L,16Rの一部(同図中、ハッチングで示す部分)は、表示部3の背後に隠れており、メインLCD6の画面と、サブLCD15L,15Rの画面との間隔は、メインLCD6の枠部分の幅Dのみとなっている。
【0022】
また、表示部3内には、サブLCD15L,15Rが最大限引き出されているか否かを検出する検出手段が設けられている。以下、図3を参照して、この検出手段について説明する。図3は、上述した検出手段の構造を説明するための図であり、表示部3の下側の一部を図示したものである。また、図3は、上記検出手段を図示するため、メインLCD6の一部を破断した状態を示している。なお、以下では、サブLCD15Rに対応する検出手段の構造について説明するが、サブLCD15Lに対応する検出手段についても、同様の構造となっている。
【0023】
図3(a)において、サブLCD15Rの左側底部には、バネ(図示略)により下方に向かって突出する方向に付勢された金属球MBが取り付けられている。また、表示部3の内部において、サブLCD15Rの収納部底面3a(図3(b)参照)の同図中右側には、上述した金属球MBと嵌合する凹部17Rが形成されており、この凹部17Rの斜面sには、図3(c)に示すように、金属製の薄板からなる2つの端子18Rおよび19Rが設けられている。そして、図3(b)に示すように、サブLCD15Rが引き出され、その最大位置、すなわち、金属球MBが凹部17Rの位置まで来ると、バネの付勢力によって金属球MBが突出し、凹部17Rと嵌合する。このとき、端子18Rおよび19Rは金属球MBによって電気的に導通し、この導通によってサブLCD15Rが最大限引き出されたことを検出することが可能となる。
【0024】
次に、図4を参照して携帯電話1の内部構成について説明する。この図において、図1に示した各部と同じ部分については、同一の符号を付し、その説明を省略する。図2において、制御部20は、操作部7〜13、スピーカ5、および、マイク14を用いて行われる電話通信の制御を行うとともに、携帯電話1が有する各種機能を実現するためのプログラムを実行する。また、これらの処理に伴う視覚的情報(たとえば、画像および文字など)を、画像制御部23を介してメインLCD6およびサブLCD15L,15Rへ表示させる。送受信部21は、アンテナ4が前述した基地局から受信した無線信号を復調して制御部20へ出力するとともに、制御部20から出力された各種信号を変調し、無線信号としてアンテナ4から前述した基地局へ送信する。
【0025】
EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)22は、携帯電話1が有するスケジュール機能において登録された予定に関する情報や、アドレス帳機能において登録された個人情報などを記憶する。また、この他にも、インターネットを介して取得した画像データ、および、電子メールでやり取りされた文字データなども記憶する。画像制御部23は、制御部20から出力された画像データに基づいて、メインLCD6およびサブLCD15L,15Rに画像を表示させる。音声制御部24は、制御部20から出力された音声データをアナログ音声信号に変換し、スピーカ5へ出力する。また、音声制御部24は、マイク14から入力された音声をデジタルデータ化し、制御部20へ出力する。
【0026】
さらに、制御部20には、図3に示したサブLCD15Rの最大引き出し位置を検出する接点18R,19Rが接続されている。また、同様に、サブLCD15Lの最大引き出し位置を検出する接点18L,19Lも接続されている。制御部20は、これら接点が、図3に示した金属球MBにより電気的に導通したとき、それぞれ対応するサブLCDが最大引き出し位置まで引き出されたことを認識する。そして、サブLCD15Lまたは15Rが最大引き出し位置まで引き出されたと認識した場合、引き出されたサブLCDを示す信号(以下、能動LCD信号という)を後述する画像制御部23へ出力する。この能動LCD信号は、いずれのサブLCDも引き出されていない状態、サブLCD15Lのみが引き出された状態、サブLCD15Rのみが引き出された状態、双方のサブLCDが引き出された状態、の4つの状態を表す信号である。
【0027】
さらに、制御部20は、サブLCD15L,15Rが双方とも引き出されている状態における表示態様(以下、表示モードという)を指定する信号(以下、表示モード信号という)を画像制御部23へ出力する。上述した表示モード信号には、メインLCD6およびサブLCD15L,15Rに1つの画像を一体的に表示させる拡大表示モードと、それぞれ独立した画像をメインLCD6およびサブLCD15L,15Rへ個々に表示させる複数画面表示モードとがある。上述した2つの表示モードの切り替えは、サブLCD15L,15Rが引き出されているときにおいて、初期状態では拡張表示モードになっており、第1コマンドキー12を1回押すごとに、複数画像表示モードと拡張表示モードとに交互に切り替えられる。
【0028】
次に、図5を参照して、上述した画像制御部23の詳細な構成について説明する。ビデオRAM(画像記憶手段)25,26,27は、それぞれメインLCD6、サブLCD15L、サブLCD15Rの画面を構成する各画素に対応した記憶領域を有し、各LCDに表示する画像データを記憶する。ここで、上述した各LCDの画面と、各ビデオRAMの記憶領域との対応について、図6を参照して説明する。図6(a)は、図2に示した携帯電話1の正面図のうち、表示部3の部分のみを図示したものである。また、図6(b)は、ビデオRAM25,26,27の記憶領域を模式的に示したものであり、VMSLはビデオRAM26、VMMはビデオRAM25、VMSRはビデオRAM27の記憶領域を示している。
【0029】
図6(a)において、メインLCD6およびサブLCD15L,15Rは、いずれも縦方向にm個、横方向にn個の画素を有している。そして、ビデオRAM25,26,27は、それぞれ対応するLCDの画面を構成する各画素に対応する記憶領域を有している。ただし、携帯電話1では、サブLCD15L,15Rを最大限引き出したときに、図6(a)においてハッチングで示す部分は表示部3内に収納されている。よって、サブLCD15L,15Rの各画面において、2つの縦方向の辺のうち、引出方向Aとは反対側の辺PSから所定の幅xを有する画面領域(すなわち、図6(a)のハッチング部分)は、使用者には見えない領域となっている。このため、サブLCD15Lに対応するビデオRAM26、および、サブLCD15Rに対応するビデオRAM27の各記憶領域のうち、上述した使用者には見えない画面領域における画素に対応する記憶領域(図6(b)のハッチングで示す部分)には、画像データが書き込まれることはなく、読み出されることもない。
【0030】
また、前述したように、メインLCD6の画面と、サブLCD15L,15Rの画面との間隔は、表示部3の枠部分の幅Dのみとなっており、この幅Dは、メインLCD6およびサブLCD15L,15Rの画素ピッチを考慮すると、画素数dに相当するものとする。よって、メインLCD6およびサブLCD15L,15Rを1つのLCDとみなした表示を行う場合、表示制御部31は、縦方向の画素数がm、横方向の画素数がN=n+2(n−x)+2dの画面に対して画像を表示する表示制御を行う。
【0031】
図5に戻り、画像縮小部28,29,30は、それぞれビデオRAM25,26,27に対応して設けられており、後述する表示制御部31から供給された画像データを、対応するビデオRAMの記憶領域(ただし、ビデオRAM26の記憶領域VMSLおよびビデオRAM27の記憶領域VMSRについては、図6(b)に示すハッチング部分を除く)に収まるように縮小してから、対応するビデオRAMに書き込む。なお、画像の縮小は、たとえば、従来から周知のニアレストネイバー法、バイリニア法、バイキュービック法による縮小や、アフィン変換を行うことにより実現可能である。よって、表示制御部31から供給された描画データによって表される画像の大きさが、対応するLCDの画面サイズを超えていた場合は、当該LCDの画面サイズに縮小されて表示される。表示制御部31は、制御部20から出力された画像データを、制御部20から出力された能動サブLCD信号の内容に応じて画像縮小部28,29,30へ出力し、もしくは、ビデオRAM25,26,27へ書き込む。また、表示制御部31は、ビデオRAM25,26,27に書き込まれた画像データをそれぞれ対応するLCDへ出力させる。
【0032】
次に図7を参照して、表示制御部31による画像表示制御の内容について説明する。図7は表示制御部31により実行される画像表示制御の流れをフローチャートである。表示制御部31は、制御部20から画像データ、能動LCD信号、および、表示モード信号のいずれかが出力されると、その時点における能動LCD信号の内容を認識し、サブLCD15L,15Rが双方とも最大限引き出されているか否かを判断する(ステップS1)。もし、サブLCD15L,15Rが双方とも最大限引き出されていなかった場合、判断結果がNOとなり、画像縮小部28へ、すなわちメインLCD6に対応する画像縮小部28へ、画像データを出力する(ステップS1)。
【0033】
これにより、画像縮小部28は、表示制御部31から供給された画像データを縮小し、ビデオRAM25への書き込みアドレスを順次出力して縮小した画像データをビデオRAMに書き込む。そして、ビデオRAM25への画像データの書き込みが完了すると、表示制御部31は、ビデオRAM25に対して読み出しアドレスを順次出力し、ビデオRAM25に書き込まれた画像データをメインLCD6へ出力させる。
【0034】
一方、ステップS1において、サブLCD15L,15Rが双方とも最大限引き出されていた場合、判断結果がYESとなり、現在の表示モードが拡大表示モードなのか、複数画像表示モードなのかを表示モード信号に基づいて判断する(ステップS3)。そして、拡大表示モードでない、換言すると、複数画像表示モードであった場合は、判断結果がNOとなり、画像縮小部28,29,30に対して、それぞれ画像データを出力する(ステップS4)。これにより、画像縮小部28,29,30は、それぞれ表示制御部31から供給された画像データを対応するLCDの画面サイズに合わせて縮小し、順次対応するビデオRAMに対して書き込みアドレスを出力して縮小した画像データを書き込む。そして、各ビデオRAMへの画像データの書き込みが完了すると、画像縮小部28,29,30は、それぞれ対応するビデオRAMに対して順次読み出しアドレスを出力し、対応するビデオRAMに書き込まれた画像データをそれぞれ対応するLCDへ出力させる。
【0035】
また、前述したステップS3において、現在の表示モードが拡大表示モードであった場合は、判断結果がYESとなり、表示制御部31は、メインLCD6およびサブLCD15L,15Rを1つのLCDとみなして、各LCDに対して順次アドレスデータを発生し、制御部20から供給された画像データをビデオRAM25,26,27のそれぞれに書き込む。そして、当該画像データの書き込みが完了すると、ビデオRAM25,26,27に対して順次読み出しアドレスを出力し、各ビデオRAMに書き込まれた画像データをそれぞれ対応するLCDへ出力させる。
【0036】
次に、上述した画像表示制御により、図8〜図10を参照してメインLCD6、または、メインLCD6およびサブLCD15L,15Rに表示される画像の表示態様について説明する。ここで、図8は、図7に示す画像表示制御において、サブLCD15L,15Rが表示部3に収納されているとき(図7,ステップS1,NO)に、ステップS2の処理によりメインLCD6に表示される画像の一例を示す図である。この場合において、たとえば、制御部20から表示制御部31に対して図8(a)に示す縦m画素数、横N画素数に相当する画像データが出力されたとすると、表示制御部31は、当該画像データを画像縮小部28へ出力する。画像縮小部28では、入力された画像データの横方向の大きさを、メインLCD6の画面における横方向のサイズに合わせて縮小し、ビデオRAM25へ書き込み、メインLCD6へ表示させる。これにより、図8(b)に示すように、メインLCD6には、図8(a)の画像データの横方向が縮んだ画像が表示される。ここで、図8(b)に示す表示画面において、右下に示されているマークMは、メインLCD6に表示されている画像が圧縮されていることを示すためのものであり、このマークMの画像データは、画像縮小部28により、ビデオRAM25に書き込まれるものである。
【0037】
また、図9は、図7に示す画像表示制御において、サブLCD15L,15Rが引き出されており(図7,ステップS1,YES)、かつ、拡大表示モードが指定されている(図7,ステップS3,YES)ときに、ステップS5の処理によりメインLCD6およびサブLCD15L,15Rに表示される画像の一例を示す図である。この場合において、たとえば、制御部20から表示制御部31に対して図8(a)と同様の縦m画素数、横N画素数に相当する画像データ(図9(a)参照)が出力されたとすると、表示制御部31は、図9(b)に示すように、当該画像データのうち、画像領域アの画像データをビデオRAM26の記憶領域VMSLのうち、図9(b)に示すハッチング部分以外の記憶領域に書き込み、画像領域イの画像データをビデオRAM25の記憶領域VMMに書き込み、画像領域ウの画像データをビデオRAM27の記憶領域VMSRのうち、図9(b)に示すハッチング部分以外の記憶領域にそれぞれ書き込む。そして、各々の画像データの書込みが完了すると、表示制御部31は、各ビデオRAMに対して順次読出しアドレスを出力する。これにより、図9(c)に示すように、図9(a)の画像データがメインLCD6およびサブLCD15L,15Rにおいて一体的に表示される。
【0038】
さらに、図10は、図7に示す画像表示制御において、サブLCD15L,15Rが引き出されており(図7,ステップS1,YES)、かつ、複数画面表示モードが指定されている(図7,ステップS3,NO)ときに、ステップS4の処理によりメインLCD6およびサブLCD15L,15Rに表示される画像の一例を示す図である。この場合において、たとえば、制御部20から表示制御部31に対して図10(a)に示すように、縦m×3画素数、横N画素数に相当する画像データが出力されたとすると、表示制御部31は、当該画像データを縦方向においてm画素数分ずつ分割して画像領域カ,キ,クに分け、画像領域カに対応する画像データを画像縮小部29へ、画像領域キに対応する画像データを画像縮小部28へ、画像領域クに対応する画像データを画像縮小部30へ、それぞれ出力する。各画像縮小部28,29,30では、入力された画像データの横方向の大きさを、それぞれ対応するLCDの画面における横方向のサイズに合わせて縮小する。そして、それぞれ対応するビデオRAMへ書き込み、各LCDへ表示させる。これにより、図10(b)に示すように、サブLCD15Lの画面16Lには、図10(a)に示す画像データのうち、画像領域カに対応する画像が、横方向において縮小された状態で表示される。また、メインLCD6の画面には、図10(a)に示す画像データのうち、画像領域キに対応する画像が、横方向において縮小された状態で表示される。さらに、サブLCD15Rの画面16Rには、図10(a)に示す画像データのうち、画像領域クに対応する画像が、横方向において縮小された状態で表示される。また、図10(b)に示すように、メインLCD6およびサブLCD15L,15Rの各画面右下側には、各画面に表示されている画像が圧縮されていることを示すマークMが表示される。このマークMの画像データは、画像縮小部28,29,30により、それぞれビデオRAM25,26,27に書き込まれるものである。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態による携帯電話機によれば、サブLCD15L,15Rを最大限引き出したときでも、各サブLCDの一部が表示部3内に収納されている状態になっているので、サブLCD15L,15Rを支持する強度が増すことになる。また、メインLCD6の画面と、サブLCD15L,15Rの各画面16L,16Rとの間隔が、メインLCD6の枠部分の幅Dのみとなるため、各画面の間隔を狭めることができる。このため、メインLCD6およびサブLCD15L,15Rにより1つの画像を表示させた場合でも、より一体感のある画像表示が可能となる。また、たとえば、図8(b)に示すように、メインLCD6のみに画像表示しているときに、サブLCD15L,15Rが引き出されると、制御部20はその旨を示す能動LCD信号を出力する。これにより、表示制御部31は図7に示す画像表示制御をあらためて実行し、たとえば、表示モード信号が拡大表示モードを示していた場合は、図8(b)に示す画像表示を、図9(c)に示す画像表示に切り替える。このため、サブLCD15L,15Rを引き出したときに、画像表示を切り替えるための操作が不要となり、使用者の手間が軽減される。
【0040】
なお、図2に示した、サブLCD15L,15Rを最大限引き出した状態のときに、表示部3内に収納された状態のままとなる所定幅wは、サブLCD15L,15Rの支持強度を保つことができれば、たとえば、図11に示すように、少なくとも、サブLCD15L,15Rの表示部3側における枠FL部分(非表示領域)が表示部3内に収納されていればよい。また、本実施の形態では、メインLCD6の画面サイズと、サブLCD15L,15Rの画面サイズを同一にしていたが、両者の画面サイズは必ずしも同一である必要はない。たとえば、メインLCD6の画面とサブLCD15L,15Rの画面における縦方向の長さは同じでも、横方向の長さはメインLCD6よりもサブLCD15L,15Rの方を短くするなどして、サブLCD15L,15Rの画面をメインLCD6の画面よりも小さくしてもよい。また、たとえば図8を参照して説明したように、LCDの画面サイズを超える大きさの画像データを表示する場合、当該LCDの画面サイズに合わせて画像データを縮小させていたが、代わりに、画像データのサイズを縮小せずに、スクロール可能に表示させるようにしてもよい。また、本実施の形態では、サブLCD15L,15Rを双方とも引き出したときに、拡大表示モードまたは複数画面表示モードによる表示を可能としたが、サブLCD15Lまたは15Rのいずれか一方が引き出されたときに、メインLCD6とともに、2つのLCDにより、拡大表示モードまたは複数画面表示モードによる表示を行うようにしてもよい。さらに、携帯電話1にデジタルカメラ機能を持たせ、当該デジタルカメラ機能により撮影された画像を、上述した各表示形態で表示させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態における携帯電話機の外観を示す正面図および側面図である。
【図2】同携帯電話機の内部に収納されたサブLCDを引き出した状態を示す正面である。
【図3】同サブLCDが引き出された状態を検出する検出手段の構成を説明するための説明図である。
【図4】本発明の実施の形態における携帯電話機の内部構成を示すブロック図である。
【図5】同携帯電話機の内部ハードウェア構成の一部である画像制御部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図6】同携帯電話機が備えている各LCDに対応するビデオRAMの有効記憶領域について説明するための説明図である。
【図7】同携帯電話機における画像表示制御の処理内容を示すフローチャートである。
【図8】同携帯電話機における画像表示態様の一例を説明するための説明図である。
【図9】同携帯電話機における画像表示態様の一例を説明するための説明図である。
【図10】同携帯電話機における画像表示態様の一例を説明するための説明図である。
【図11】同携帯電話機におけるサブLCDの最大引き出し量についての別の形態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 携帯電話
3 表示部
6 液晶画像表示装置
15L,15R サブLCD
18L,18R,19L,19R 端子
20 制御部
23 画像制御部
25,26,27 ビデオRAM
31 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部と通信を行う携帯電話機であって、
画像を表示する表示画面および該表示画面を囲繞する枠部を有する第1の画像表示装置と、
画像を表示する表示画面および該表示画面を囲繞する枠部を有し、前記第1の画像表示装置の背面側に隠れる位置に設けられ、前記第1の画像表示装置の表示画面横方向へスライドさせることにより引き出し可能な第2の画像表示装置と、
前記第2の画像表示装置が引き出されたときに、前記第1および第2の画像表示装置の表示画面に対して1つの画像を一体的に表示する画像表示制御部と
を有してなり、
前記第2の画像表示装置の表示画面は、引き出されたときに前記第1の画像表示装置の表示画面と並行した位置となり、前記第2の画像表示装置を最大限引き出したときでも、少なくとも前記第2の画像表示装置の枠部が、第1の画像表示装置の背面側に隠れたままの状態となる
ことを特徴とする携帯電話機。
【請求項2】
前記第2の画像表示装置が引き出されている状態を検出する検出手段を有し、
前記表示制御部は、
前記検出手段により前記第2の画像表示装置が引き出されている状態が検出されない時には、前記第1の画像表示装置のみによって画像を表示し、
前記検出手段により前記第2の画像表示装置が引き出された状態を検出した時には、前記第1の画像表示装置に表示している画像を、前記第1および第2の画像表示装置の画面に一体的に表示する
ことを特徴とした請求項1に記載の携帯電話機。
【請求項3】
前記画像表示制御部は、
前記第1の画像表示装置の表示画面を構成する各画素に対応した記憶領域を有し、該記憶領域に前記第1の画像表示装置の表示画面に表示する画像データを記憶する第1の画像記憶手段と、
前記第2の画像表示装置の表示画面を構成する各画素に対応した記憶領域を有し、該記憶領域に前記第2の画像表示装置の表示画面に表示する画像データを記憶する第2の画像記憶手段と
を具備してなり、
前記第2の画像表示装置の表示画面における縦方向の2つの辺のうち、引出方向とは反対側の辺から所定の幅を有する表示画面領域に該当する画素に対応した前記第2の画像記憶手段における記憶領域以外の記憶領域に、前記第2の画像表示装置の画面に表示する画像データを記憶させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の携帯電話機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−124025(P2007−124025A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310013(P2005−310013)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(598098526)アルゼ株式会社 (7,628)
【Fターム(参考)】