説明

摂取された飲食物の影響を受けないイトラコナゾール経口用組成物及びその製造方法

【課題】 優れたイトラコナゾールの生体利用率を有し、摂取された飲食物の影響を殆ど受けない、イトラコナゾールの経口用組成物の提供。
【解決手段】 イトラコナゾール、酸性化剤、両親媒性添加剤、界面活性剤及びオイルを含む、粘性ガラス状の経口投与用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたイトラコナゾールの生体利用率を有し、飲食物の摂取による影響を受けない、イトラコナゾールの経口用組成物、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリアゾール化合物であるイトラコナゾールは、優れた抗真菌活性を有すると知られている。しかし、イトラコナゾールは、水に対する溶解度が1μg/ml未満と非常に低く、pKa値が3.7であるので、胃液でイオン化されずに存在するため、経口投与時生体利用率が非常に低い。また、経口投与されたイトラコナゾールの生体利用率は、個人によって偏差が大きく、摂取した飲食物のような他の因子の影響を大いに受けると知られている。
【0003】
PCT国際公開第WO85/02767号および米国特許第4,764,604号は、イトラコナゾールを含むシクロデキストリン化合物を用いてイトラコナゾールの溶解度を増加させる方法を開示している。しかし、この方法は、イトラコナゾールの溶解度をわずかしか増加させず、複雑な製造工程を要する問題を有する。
【0004】
PCT国際公開第WO94/05263号は、薬剤学的に不活性な又は中性のスクロース、デキストリン、澱粉などからなるコアをイトラコナゾールと親水性高分子の混合物でコーティングし、さらにその上をポリエチレングリコールのような高分子でコーティングしたビーズ製剤を開示している。このようにコーティングされたビーズ製剤は、スポラノックス(登録商標)カプセルという製品名でヤンセン・ファーマスーティカ(Janssen Pharmaceutica(Beerse,Belgium))によって市販されている。しかし、600〜700μmの平均サイズを有するこのビーズは製造工程中に凝集する傾向があるため、製造工程が非常に複雑である。また、この製剤のイトラコナゾールの生体利用率は、製剤を飲食摂取の前に服用するか、飲食摂取の後で服用するのかによって大きく変わる。
【0005】
PCT国際公開第WO97/44014号は、イトラコナゾールと水溶性高分子の混合物を245〜265℃の温度で溶融−押出(melt-extrusion)して製造される、水溶性高分子中のイトラコナゾールの固体分散体(solid dispersion)を開示している。この固体分散体は、摂取された飲食物による影響を受けない製剤であって、優れたイトラコナゾールの生体利用率を示すと説明されており、スポラノックス(登録商標)錠剤という製品名でヤンセン・ファーマスーティカによって市販されている。しかし、この固体分散体の製造工程は様々な工程変数の調節が難しいという問題があり、前記分散体によって達成可能なイトラコナゾールの生体利用率は依然として低い。
【0006】
また、イトラコナゾールを含むヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン化合物、塩酸、プロピレングリコール、浄水、水酸化ナトリウム、ソジウムサッカリン及びソルビトールを混合して製造したpH2のスポラノックス液(ヤンセン・ファーマスーティカ)は食前に服用する場合にも高いイトラコナゾールの生体利用率を現わすが、製剤中イトラコナゾールの濃度が10mg/mlと低いため、多量服用しなければならならず、腸液と接すると活性成分が早く沈殿するので食道の真菌性感染に対してのみ效果的であるという問題を有する。
【0007】
最近、PCT国際公開第WO98/55148号は水難溶性薬物、シクロデキストリン、水溶性酸及び水溶性有機重合体を含む高粘度の組成物を開示している。しかし、この組成物は高粘度のためカプセル製造工程中においては粘度を低減するために多量の分散剤を用いなければならない。また、この組成物はpH6.8以上の中性又はアルカリ条件下で1%未満の非常に低い溶出率を現わす。
【0008】
これと関して、本発明者らは水難溶性抗真菌剤、リン酸、共界面活性剤、界面活性剤及びオイルを含むマイクロエマルションの予備濃縮液を考慮して韓国特許出願第2000−83717号に開示したことがあり、また、前記予備濃縮液を改質させたもう一つのマイクロエマルション組成物を韓国特許出願第2001−36930号に公開した。しかし、これらの組成物はpH6.8以上の中性又はアルカリ条件下で依然として不満足なイトラコナゾール溶出率を現わし、これらのイトラコナゾールの生体利用率は飲食物の摂取によって多少変化する。
【特許文献1】PCT国際公開第WO85/02767号
【特許文献2】米国特許第4,764,604号
【特許文献3】PCT国際公開第WO94/05263号
【特許文献4】PCT国際公開第WO97/44014号
【特許文献5】PCT国際公開第WO98/55148号
【特許文献6】韓国特許出願第2000−83717号
【特許文献7】韓国特許出願第2001−36930号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の主な目的は、優れたイトラコナゾールの生体利用率を有し、摂取された飲食物の影響を殆ど受けない、イトラコナゾールの経口用組成物を提供することである。本発明の他の目的は、前記経口用組成物を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記のような目的を達成するため、本発明では、イトラコナゾール、酸性化剤、両親媒性添加剤、界面活性剤及びオイルを含む、粘性ガラス状の経口投与用組成物を提供する。
【0011】
前記他の目的を達成するため、本発明では、(a)イトラコナゾールを酸性化剤、両親媒性添加剤及び揮発性溶媒の混合物に均質に溶解させる段階、(b)この溶液に界面活性剤及びオイルを溶解させる段階、及び(c)この混合液で揮発性溶媒を除去する段階を含む、前記組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のイトラコナゾール経口投与用組成物は優れたイトラコナゾールの生体利用率を有し、飲食物摂取による影響を受けない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
活性成分としてイトラコナゾールを含む本発明の組成物は下記成分を用いて製造できる:
(1)酸性化剤
本発明でイトラコナゾールを溶解させるために用いられ得る酸性化剤の代表的な例としては、リン酸、酢酸、塩酸、硝酸、硫酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸及びこれらの水溶液が挙げられ、このうち85%リン酸又はその希釈液が好ましい。
【0014】
(2)両親媒性添加剤
本発明に用いられる両親媒性添加剤はイトラコナゾールの溶解を補助し、カプセルに充填するのに適当な程度に組成物の粘度を調整することを補助する。本発明に用いるのに適宜な両親媒性添加剤としてはトランスキュトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル、Gattefosse)、ジメチルイソソルビド(1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5−ジメチル−D−グルシトール)、グリコフロール(テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル)、プロピレングリコール(1,2−ジヒドロキシプロパン)、プロピレンカーボネート(4−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソラン)、ソルトール(マクロゴール15ヒドロキシステアレート、BASF)及びこれらの混合物が挙げられ、このうちトランスキュトールが好ましい。
【0015】
(3)揮発性溶媒
製造工程中用いられているが最終産物には存在しない揮発性溶媒は酸性化剤によるイトラコナゾールの溶解を補助する。本発明では、かかる揮発性溶媒として100℃未満の温度で容易に揮発させ得る、アルコール、例えばエタノール、プロパノール及びイソプロパノールのような非毒性有機溶媒が好ましく用いられる。
【0016】
(4)界面活性剤
本発明で用いられる界面活性剤はオイルと親水性成分の均一なエマルションの形成を補助し、このエマルションに貯蔵安定性を付与する。かかる界面活性剤の代表的な例は次の通りである:
(i)ポリオキシエチレングリコール化された天然又は水素化された植物性オイルであって、例えばポリオキシエチレングリコール化された天然又は水素化されたヒマシ油(製品名:クレモフォール(登録商標)(Cremophor(登録商標), BASF), HCO(登録商標) (Nikkol))、
(ii)脂肪酸がモノ−又はトリ−ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸又はオレイン酸であって、ポリオキシエチレン−ソルビタン−脂肪酸エステル類(製品名:ツイーン(登録商標)(Tween(登録商標), ICI))、及び
(iii)ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類であって、例えばポリオキシエチレンステアリン酸エステル(製品名:ミリズ(Myrj, ICI))。
【0017】
(5)オイル
本発明で用いられるオイル成分は界面活性剤と容易に混和され、水性媒質中で安定なマイクロエマルションを形成しなければならない。かかるオイルはトコフェロールとこの誘導体(例:酢酸トコフェリル、コハク酸トコフェリル及びポリエチレングリコール−1000−コハク酸トコフェリル(TPGS))のような薬剤学的に許容可能なオイルであってもよい。
【0018】
本発明の組成物は、(a)イトラコナゾールを酸性化剤、両親媒性添加剤及び揮発性溶媒の混合物に溶解させた後、(b)この溶液に界面活性剤及びオイルを溶解させた後、(c)得られた混合液から揮発性溶媒を除去して製造する。
【0019】
前記段階(c)で、揮発性溶媒は通常的な方法で除去できるが、例えば常圧又は減圧下で好ましくは40〜100℃、より好ましくは40〜80℃の温度に加熱することによって除去できる。
【0020】
前記製造工程で、イトラコナゾール、酸性化剤、両親媒性添加剤、揮発性溶媒、界面活性剤及びオイルは1:0.5〜15:0.5〜20:0.5〜20:0.5〜15:0.5〜15、好ましくは1:1〜10:1〜15:1〜15:1〜10:1〜10の重量比に相応する量で用いる。
【0021】
揮発性溶媒が除去された本発明の最終組成物は、イトラコナゾール、酸性化剤、両親媒性添加剤、界面活性剤及びオイルを1:0.5〜15:0.5〜20:0.5〜15:0.5〜15、好ましくは1:1〜10:1〜15:1〜10:1〜10の重量比で含む。
【0022】
また、本発明の組成物は抗酸化剤のような経口投与用の薬剤学的に許容可能な添加剤を含み得る。
【0023】
本発明の医薬組成物は通常的な方法によって粉末、顆粒、錠剤、コーティング製剤及び液状製剤のような多様な医薬製剤に剤型化され得る。例えば、医薬組成物に活沢剤及びその他の薬剤学的添加剤を添加し、この混合物を粉末又は顆粒状に加工した後、この粉末又は顆粒を硬質ゼラチンカプセルに充填させて硬質カプセルを製造でき、また医薬組成物に適宜な添加剤を添加した後、混合物を打錠して錠剤を、医薬組成物を水に溶解させて液状製剤を、医薬組成物の溶液をノン−パレイル(登録商標)(Non-pareil(登録商標)(Edward Mendell Co., UK))のような砂糖ビーズにコーティングしてコーティング製剤を各々製造できる。
【0024】
製造された本発明のイトラコナゾール組成物は、透明で流動性のないガラス状であって、25℃で10,000cps以上の高い粘度を有する。これは本発明の方法に用いられた両親媒性添加剤と揮発性溶媒の混合作用によって達成できる。かかる高粘度ガラス状組成物は、既存のマイクロエマルション組成物に比べて嵩張らない。
【0025】
本発明の組成物は、経口投与の際に体液中において非常に安定で、利用率の高いマイクロエマルション粒子を形成する自体微細乳化能(self-microemulsifying capability)を有する。従って、本発明の組成物はpH6.8以上の中性又はアルカリ条件下でも安定でかつ高いイトラコナゾール溶出率を維持できるので、このイトラコナゾールの生体利用率は摂取された飲食物の影響を殆ど受けず、食前と食後の生体利用率が同一である。即ち、食前と食後のイトラコナゾール血中濃度の曲線下の面積(AUC)の比(AUC食前/AUC食後)が1に近接し、好ましくは0.8以上である。
【0026】
〔実施例〕
下記実施例は本発明をさらに詳細に説明するためのものであり、本発明の範囲を制限しない。
【0027】
また、下記固体混合物中の固体、液体中の液体、および液体中の固体に対して下記に与えられた百分率は、別に言及しない限り各々重量/重量、体積/体積および重量/体積に基づいたものである。
【実施例1】
【0028】
:硬質カプセルの製造−1)
下記成分を用いて硬質カプセルを製造した:
成分 含量(mg/カプセル)
イトラコナゾール 50
85%リン酸水溶液 208
エタノール 300
トランスキュトール 83
ポリオキシエチレン−50−水素化されたヒマシ油(HCO(登録商標)50) 70
クレモフォール(登録商標)EL 220
dl−α−トコフェロール 60
:最終組成物に含まれない)
イトラコナゾールを85%リン酸、トランスキュトール及びエタノールの混合物に均一に溶解させた後、これに他の成分を加えて溶解させた。次いで、この混合物を55℃で4時間加熱濃縮してエタノールを揮発させ、流動性のない高粘性の透明な組成物を得た。この組成物を大韓薬典の一般製剤総則に記載された通常的な方法によって硬質カプセルに充填した。
【実施例2】
【0029】
:軟質カプセルの製造
下記成分を用いて軟質カプセルを製造した:
成分 含量(mg/カプセル)
イトラコナゾール 50
85%リン酸水溶液 200
エタノール 300
トランスキュトール 150
ポリオキシエチレン−50−水素化されたヒマシ油(HCO(登録商標)50) 80
クレモフォール(登録商標)EL 200
dl−α−トコフェロール 60
:最終組成物に含まれない)
前記成分を用いて実施例1と同様な方法で行って流動性のない高粘性の透明な組成物を得た。この組成物を大韓薬典の一般製剤総則に記載された通常的な方法によって軟質カプセルに充填した。
【実施例3】
【0030】
:硬質カプセルの製造−2)
下記成分を用いて前記実施例1と同様な方法で硬質カプセルを製造した:
成分 含量(mg/カプセル)
イトラコナゾール 50
85%リン酸水溶液 200
エタノール 300
トランスキュトール 83
ポリオキシエチレン−50−水素化ヒマシ油(HCO(登録商標)50) 200
クレモフォール(登録商標)EL 80
dl−α−トコフェロール 60
:最終組成物に含まれない)
【実施例4】
【0031】
:硬質カプセルの製造−3)
下記成分を用いて前記実施例1と同様な方法で硬質カプセルを製造した:
成分 含量(mg/カプセル)
イトラコナゾール 50
85%リン酸水溶液 200
エタノール 300
トランスキュトール 83
ポリオキシエチレン−50−水素化ヒマシ油(HCO(登録商標)50) 200
ツイーン(登録商標)20 80
dl−α−トコフェロール 60
:最終組成物に含まれない)
【実施例5】
【0032】
:硬質カプセルの製造−4)
下記成分を用いて前記実施例1と同様な方法で硬質カプセルを製造した:
成分 含量(mg/カプセル)
イトラコナゾール 50
85%リン酸水溶液 200
エタノール 300
トランスキュトール 83
ポリオキシエチレン−50−水素化ヒマシ油(HCO(登録商標)50) 150
クレモフォール(登録商標)EL 150
dl−α−トコフェロール 60
:最終組成物に含まれない)
【実施例6】
【0033】
:硬質カプセルの製造−5)
下記成分を用いて前記実施例1と同様な方法で硬質カプセルを製造した:
成分 含量(mg/カプセル)
イトラコナゾール 50
85%リン酸水溶液 200
エタノール 300
トランスキュトール 83
ツイーン(登録商標)20 200
クレモフォール(登録商標)EL 80
dl−α−トコフェロール 60
:最終組成物に含まれない)
【実施例7】
【0034】
:硬質カプセルの製造−6)
下記成分を用いて前記実施例1と同様な方法で硬質カプセルを製造した:
成分 含量(mg/カプセル)
イトラコナゾール 50
85%リン酸水溶液 200
エタノール 300
トランスキュトール 83
ツイーン(登録商標)20 150
クレモフォール(登録商標)EL 150
dl−α−トコフェロール 60
:最終組成物に含まれない)
【実施例8】
【0035】
:硬質カプセルの製造−7)
下記成分を用いて前記実施例1と同様な方法で硬質カプセルを製造した:
成分 含量(mg/カプセル)
イトラコナゾール 50
85%リン酸水溶液 200
エタノール 300
トランスキュトール 83
ポリオキシエチレン−50−水素化ヒマシ油(HCO(登録商標)50) 200
クレモフォール(登録商標)EL 80
dl−α−トコフェロール 120
:最終組成物に含まれない)
【実施例9】
【0036】
:硬質カプセルの製造−8)
下記成分を用いて前記実施例1と同様な方法で硬質カプセルを製造した:
成分 含量(mg/カプセル)
イトラコナゾール 50
塩酸 150
エタノール 300
トランスキュトール 83
ポリオキシエチレン−50−水素化ヒマシ油(HCO(登録商標)50) 70
クレモフォール(登録商標)EL 220
dl−α−トコフェロール 60
:最終組成物に含まれない)
【実施例10】
【0037】
:硬質カプセルの製造−9)
下記成分を用いて前記実施例1と同様な方法で硬質カプセルを製造した:
成分 含量(mg/カプセル)
イトラコナゾール 50
85%リン酸水溶液 208
エタノール 300
ジメチルイソソルビド 83
ポリオキシエチレン−50−水素化ヒマシ油(HCO(登録商標)50) 70
クレモフォール(登録商標)EL 220
dl−α−トコフェロール 60
:最終組成物に含まれない)
【実施例11】
【0038】
:硬質カプセルの製造−10)
下記成分を用いて前記実施例1と同様な方法で硬質カプセルを製造した:
成分 含量(mg/カプセル)
イトラコナゾール 50
85%リン酸水溶液 208
エタノール 300
グリコフロール 83
ポリオキシエチレン−50−水素化ヒマシ油(HCO(登録商標)50) 70
クレモフォール(登録商標)EL 220
dl−α−トコフェロール 60
:最終組成物に含まれない)
【実施例12】
【0039】
:硬質カプセルの製造−11)
下記成分を用いて前記実施例1と同様な方法で硬質カプセルを製造した:
成分 含量(mg/カプセル)
イトラコナゾール 50
塩酸 150
エタノール 300
ジメチルイソソルビド 83
ポリオキシエチレン−50−水素化ヒマシ油(HCO(登録商標)50) 70
クレモフォール(登録商標)EL 220
dl−α−トコフェロール 60
:最終組成物に含まれない)
【比較例】
【0040】
:硬質カプセルの製造
両親媒性添加剤としてのトランスキュトールを使用しないことを除いては、前記実施例1と同様な方法で硬質カプセルを製造した。
【0041】
成分 含量(mg/カプセル)
イトラコナゾール 50
85%リン酸水溶液 208
エタノール 300
ポリオキシエチレン−50−水素化ヒマシ油(HCO(登録商標)50) 70
クレモフォール(登録商標)EL 220
dl−α−トコフェロール 60
:最終組成物に含まれない)
【試験例1】
【0042】
:溶出試験
実施例1の本発明の製剤、比較例の製剤、スポラノックス(登録商標)カプセル、スポラノックス(登録商標)錠およびスポラノックス(登録商標)液(ヤンセンコリア)に対して、大韓薬典の一般試験法に記載の溶出試験法II(パッドル法)に従ってイトラコナゾールの溶出量を下記のような条件下で測定した:
溶出試験装置:Erweka DT 80(Erweka, Germany)
溶出液:pH1.2の人工胃液900ml
pH6.8のリン酸塩緩衡液900ml
溶出液の温度:37±0.5℃
回転速度:100±4rpm
分析法:液体クロマトグラフィー法
カラム−コスモシル(Cosmosil)C18
(150mm×4.6mm;Nacalai tesque, Japan)
移動相−アセトニトリル/pH7.0のリン酸塩緩衡液=60:40
流速−1.2ml/分
検出器−UV255nm
注入量−10μl
溶解したイトラコナゾールの量を45分間に、溶出されたイトラコナゾールの累積量として示し、その結果を表1及び2に示す。
【表1】

【表2】

【0043】
前記表1及び2から分かるように、実施例1の製剤はpH1.2又はpH6.8で比較例及び市販される製剤より高いイトラコナゾール溶出率を現わす。特に、pH6.8で、実施例1の製剤のイトラコナゾール溶出率は市販の製剤よりも顕著に高く現われた。
【試験例2】
【0044】
:生体吸収試験
本発明の製剤に含まれたイトラコナゾールの生体利用率を評価するために、下記のように生体吸収試験を行った。
【0045】
体重が各々約300gの14〜15週齢のスプラグダウリー雄ラット20匹を、水は自由に摂取させながら48時間以上絶食させた後、10匹ずつ2群に分けた。食後条件の実験の際、通常の固体飼料及び水を2群のラットに持続的に供給した。
【0046】
各々2群のラットに実施例1の本発明の製剤および比較例の製剤をラット体重1kg当りイトラコナゾール20mgの投与量で経口投与した。投与前および投与してから1、2、3、4、5、7および24時間経過後に、各々のラットの心臓から直接採血して血漿試料を分離した。
【0047】
内部標準溶液(硝酸エコナゾール500μg/mlを含むメタノール溶液)50μlおよび1M炭酸緩衝液(pH10)200μlを血漿試料500μlに加えた。これに抽出溶媒(n−ヘプタン:イソアミルアルコール=9:1)7mlを加え、生成混合物を80rpmで5分間振盪して抽出物を得た。この抽出物を3,000rpmで10分間遠心分離した後、溶媒を50℃窒素雰囲気下で蒸発させた。生成した残留物に0.05%トリエチルアミンが含まれた65%アセトニトリル水溶液200μlを加え、この混合物を下記の条件下でHPLCで分析した。観察した結果を下記表3及び図1に示す:
カラム:イナートシル ODS2(250×4.6mm, 5μm;GL Science, Japan)
移動相:0.05%トリエチルアミンが含まれた65%アセトニトリル水溶液
検出器:UV258nm
流速:1.2ml/分
注入量:100μl
【表3】

【0048】
前記表3及び図1の結果は、本発明の製剤によるイトラコナゾールの生体利用率が比較例の場合に比べて摂取された飲食物によって殆ど影響を受けないことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本発明の前記および他の目的および特徴は、下記の図面を伴う本発明の詳細な説明によって明白になる。
【図1】本発明の実施例1及び比較例で製造された製剤各々の食前及び食後のイトラコナゾールの生体利用率を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イトラコナゾール、酸性化剤、両親媒性添加剤、界面活性剤及びオイルを含む、粘性ガラス状の経口投与用組成物。
【請求項2】
飲食摂取の前と後のイトラコナゾールの生体利用率の比が、0.8以上である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
25℃で測定された粘度が、10,000cps以上である請求項1記載の組成物。
【請求項4】
経口投与時体液中でマイクロエマルション粒子を形成する自体微細乳化能(self-microemulsifying capability)を有する請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記イトラコナゾール、酸性化剤、両親媒性添加剤、界面活性剤及びオイルの重量比が、1:0.5〜15:0.5〜20:0.5〜15:0.5〜15の範囲である請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記酸性化剤が、リン酸、塩酸及びこれらの水溶液からなる群から選ばれる請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記両親媒性添加剤が、トランスキュトール、ジメチルイソソルビド、グリコフロール、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、ソルトール及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤が、ポリオキシエチレングリコール化された天然又は水素化された植物性オイル、ポリオキシエチレン−ソルビタン−脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記オイルが、トコフェロール、この誘導体及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1記載の組成物。
【請求項10】
(a)イトラコナゾールを酸性化剤、両親媒性添加剤及び揮発性溶媒の混合物に均質に溶解させる段階、(b)この溶液に界面活性剤及びオイルを溶解させる段階、及び(c)この混合液から揮発性溶媒を除去する段階を含む、請求項1記載の組成物の製造方法。
【請求項11】
前記揮発性溶媒が、炭素数2又は3個のアルコールである請求項10記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−505103(P2007−505103A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526025(P2006−526025)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002264
【国際公開番号】WO2005/023262
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(599139534)ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー. (56)
【Fターム(参考)】