説明

摩擦材の製造方法

【課題】メンテナンス工数を低減し、成形不良を低減して摩擦材の熱成形を効率的に行なうことができる摩擦材の製造方法を提供する。
【解決手段】ブレーキに用いる摩擦材の原料を予備成形型に投入して所定形状の予備成形品を成形する予備成形工程と、前記予備成形物の摩擦面および側面に粉体離型剤を付着させる工程と、前記粉体離型剤が付着した予備成形物とプレッシャプレートとを熱成形(圧着加熱)する工程と、を含むことを特徴とする構成とすることで、必要以外の箇所に付着させない(塗布しない)ことによる材料ロスの低減、型清浄化の維持(型洗浄頻度の低減)ができ、また、粉体であるため型の温度低下がなく、成形不良の低減、生産性向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキに用いる摩擦材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキに用いる摩擦材は、その原料を予備成形型に投入して所定形状に成形する予備成形工程と、この予備成形工程で成形された予備成形品を熱成形型に金属製プレッシャプレートとともに挿入して所定温度及び所定圧力を所定時間だけ加える熱成形工程とを行うことにより製造するのが一般的である。
【0003】
このうち、熱成形工程においては、予備成形品を加熱及び加圧するので、そのままでは、熱成形型を開くときに内部の熱成形品と熱成形型とが付着して離型が困難になる。そのため、従来は、熱成形型の内面に例えばゴムや石鹸など液状の離型剤を塗布していた。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の発明は、予備成形金型の内面に固体潤滑剤(黒鉛、二硫化アンチモン、三硫化アンチモン等)の皮膜を介在させ、金型内面の摩擦を防止するものである。また、特許文献2に記載の発明は、予備成形金型に剥離剤を塗布するものである。
【特許文献1】特開平11−022767号公報
【特許文献2】特開平07−040369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、水溶性の離型剤を熱型に直接塗布する方法が行なわれているが(特許文献1,2)、熱成形型の汚れに伴うメンテナンス工数が発生するという問題や、塗布経路の詰まりによる離型不良、生産性低下、型温度低下による成形不良発生という問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、メンテナンス工数を低減し、成形不良を低減して摩擦材の熱成形を効率的に行なうことができる摩擦材の製造方法を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決するため、下記の手段を採用した。
すなわち、本発明の摩擦材の製造方法は、ブレーキに用いる摩擦材の原料を予備成形型に投入して所定形状の予備成形品を成形する予備成形工程と、
前記予備成形物の摩擦面および側面に粉体離型剤を付着させる工程と、
前記粉体離型剤が付着した予備成形物とプレッシャプレートとを圧着加熱して熱成形する工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、予備成形物の摩擦面および側面に直接粉体離型剤を付着させる(塗布する)方法であり、必要以外の箇所に付着させない(塗布しない)ことによる材料ロスの低減、型清浄化の維持(型洗浄頻度の低減)ができ、また、粉体であるため型の温度低下がなく、成形不良の低減、生産性向上を図ることができる。
【0009】
今後、成形時間の短時間化を進める際に、水溶性離型剤による従来の方法では、型温度低下は型温度復帰を考えた場合、大きな課題であった。しかし、粉体離型剤を用いる本発明の方法ではこれを解消することができる。
【0010】
水溶性離型剤使用による最も大きな問題は、塗布経路の離型剤詰まりによる生産ラインの非稼働であった。しかし、粉体離型剤を用いる本発明の方法では大幅な稼働率向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明である摩擦材の製造方法を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。なお、以下の実施の形態は車両のブレーキに使用するブレーキパッドの製法に応用したものであってプレッシャプレート(被塗布物、裏板)の表面に摩擦材予備成形物を重ねて熱成形し、ブレーキパッドを製造するものである。
【0012】
図1は、本発明に係る摩擦材の製造方法の工程を説明する図である。
この摩擦材の製造方法は、図1に示すように、ブレーキに用いる摩擦材の原料を予備成形型に投入して所定形状の予備成形品を成形する予備成形工程11と、予備成形物の摩擦面および側面に粉体離型剤を付着させる工程12と、粉体離型剤が付着した予備成形物とプレッシャプレートとを熱成形(圧着加熱)する熱成形工程13と、を含んでいる。
【0013】
そして、摩擦材予備成形物には、鉄、銅、アルミニウム等の金属粉、アラミド短繊維、アラミドパルプ、セルロース等の有機繊維、チタン酸カリウム繊維、ガラス繊維等の無機繊維、スチール繊維等の金属繊維、黒鉛、二硫化モリブデン等の潤滑剤、ジルコニア、マグネシア等の研削材、カシューダスト、ゴムダスト等の有機摩擦調整材、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の充填材、及びフェノールレジン、ゴム変性フェノールレジン等の熱硬化性レジン等が配合されたものが用いられる。
【0014】
粉体離型剤を付着させる工程12では、図2に示すように、導電性を有する塗布ベルト1に載置された予備成形物2に対し、塗布ガン3を用いて粉体離型剤4を予備成形物2の摩擦面及び側面にを均一に塗布する。
【0015】
なお、予備成形物2への粉体離型剤塗布方法は粉体静電(トリボ帯電方式)を利用し行なった。
すなわち、導電性を有する塗布ベルト1上に予備成形物2を置き、搬送途中、塗布ブース内で塗布ベルト1を通電させ、粉体離型剤(例えば、ステアリン酸塩系)4をトリボ帯電タイプの静電塗布装置(塗布ガン)3にて予備成形物2の摩擦面、側面に塗布する。
【0016】
塗布ベルト1上の予備成形物2は、通電によりプラス(+)電荷されている。一方、粉体離型剤4は静電塗布装置(塗布ガン)3によりマイナス(−)電荷されているので、予備成形物2に付着する。しかし、塗布ベルト1と接する面は粉体離型剤4が付着しないので、結果として、予備成形物2の摩擦面、側面のみ塗布される。なお、Eはアースを示す。
【0017】
なお、粉体離型剤4は、ポリエチレン、シリコーン樹脂、テフロン(登録商標)、ステアリン酸塩等が用いられる。
【0018】
粉体離型剤4を付着させる(塗布する)際、粉体離型剤4の塗布量は、塗布条件の変更により制御することが可能となる。
【0019】
そして、予備成形物2の摩擦面、側面に塗布した後、熱成形工程13において、粉体離型剤が付着した予備成形物とプレッシャプレートとを熱成形(圧着加熱)し、通常の工程である加熱、研磨等を経て摩擦材(ブレーキパッド)を製造する。
【0020】
[別の実施の形態]
本発明は、トリボ帯電タイプの静電塗布装置に限定されるものではなく、コロナ荷電方式の静電塗布装置も使用可能である。更に、静電塗布以外で行われる予備成形物への粉体離型剤塗布も本発明に含まれる。
【0021】
また、本発明は、離型剤塗布の他の方法として、予備成形物を熱成形工程への搬送パッケージに入れた後、予備成形物の摩擦面およびパッケージに粉体離型剤を静電塗布し、粉体離型剤を布された予備成形物を熱型へ投入することで摩擦材を製造することもできる。なお、パッケージに付着した粉体離型剤は、ブラッシングにて除去し、リサイクルを行なう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】摩擦材の製造工程の流れ図である。
【図2】トリボ帯電タイプの静電塗布装置にて粉体離型剤を予備成形物に塗布する説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 塗布ベルト
2 予備成形物
3 塗布ガン
4 粉体離型剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキに用いる摩擦材の原料を予備成形型に投入して所定形状の予備成形品を成形する予備成形工程と、
前記予備成形物の摩擦面および側面に粉体離型剤を付着させる工程と、
前記粉体離型剤が付着した予備成形物とプレッシャプレートとを圧着加熱して熱成形する工程と、
を含むことを特徴とする摩擦材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−127222(P2007−127222A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321368(P2005−321368)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】