説明

摩擦特性の強化されたパワートランスミッション液

【課題】パワートランスミッション液組成物、流体を含有したパワートランスミッション、流体を含有したパワートランスミッションの操作方法、またパワートランスミッション液の摩擦耐久性を改良する方法。
【解決手段】このパワートランスミッション液には、(a)基油および(b)添加剤組成物が含まれ、この組成物中には(i)少なくとも一つの無灰分散剤;(ii)パワートランスミッション液組成物中に約100ppm以上の金属をもたらす金属性清浄剤;(iii)摩擦低減量のイミダゾリン;(iv)スクシンイミド摩擦低減剤;および(v)(iii)以外の非ヒドロキシ第3アミン摩擦低減剤が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、耐久性が向上および/または延長され、また摩擦特性が強化されたパワートランスミッション液に関連する。本開示は、オートマチックトランスミッション液(ATF)および/またはマニュアルトランスミッション液のような、動力伝達液としてふさわしい流体から成る。本開示の動力伝達液には、摩擦低減剤、ホウ素化分散剤、および金属性清浄剤が含まれる。
【背景技術】
【0002】
自動車のパワートランスミッション液には、温度および圧力の厳しい条件下で特定の摩擦特性を提供することが求められる。これらの条件の結果起こる相対的滑り速度、温度、あるいは圧力の関数としての流体の摩擦特性の変化は、車両の運転者に即座に感じ取られるような性能低下の原因となり得る。このような影響には、ギアシフトに長くかかりすぎるあるいはギアシフトが早すぎること、車両のシャダー(shudder)または振動、ノイズ、および/またはシフト困難(「ギアチェンジショック」)などが含まれる。従って、高温・高圧の条件下での摩擦の変化が最小であるようなトランスミッション液が必要となる。このような流体は、流体の交換の間隔を最大化しながら、機材および性能の問題を最小化するものである。トルクコンバーターおよびシフトクラッチの円滑な操作(engagement)を可能にすることにより、これらの流体は、シャダー、振動、および/またはノイズを最小化し、また場合によっては流体のより長い耐用年数にわたって燃費を向上させる。昨今のトランスミッションは改善された燃費に対応するように開発されているため、特にこのようなトランスミッション用に配合された流体が引き続き必要となる。
【発明の開示】
【0003】
改良されたトランスミッション液の必要性を考慮に入れ、本開示の例示的実施例では、パワートランスミッション液組成物、この流体を用いたパワートランスミッションの操作方法、およびパワートランスミッション液の摩擦耐久性を向上させる方法を提供する。本開示に基づいて配合されたパワートランスミッション液は、摩擦耐久性の向上、トルクコンバーターおよびシフトクラッチの円滑な操作のための性能の向上、またシャダー、振動および/またはノイズの最小化、および/または燃費の向上をもたらす。
【0004】
一つの例示的な実施例では、パワートランスミッション液には(a)基油および(b)添加剤組成物が含まれ、この組成物中には(i)少なくとも一つの無灰分散剤;(ii)パワートランスミッション液組成物中に約100ppm超の金属をもたらす金属性清浄剤;(iii)摩擦低減量のイミダゾリン;(iv)スクシンイミド摩擦低減剤;および(v)(iii)以外の非ヒドロキシ第3級アミン摩擦低減剤が含まれる。
【0005】
別の例示的な実施例では、基油に添加剤組成物を加えることによって摩擦耐久性を向上する方法が提供される。この添加剤組成物には、(a)少なくとも一つの無灰分散剤;(b)基油および添加剤組成物を含有した組成物に約100ppm超の金属をもたらす金属性清浄剤;(c)摩擦低減量のヒドロキシアルキルイミダゾリン;(d)スクシンイミド摩擦低減剤;および(e)(c)以外の非ヒドロキシ第3級アミン摩擦低減剤が含まれる。
【0006】
本明細書に記載の実施例のパワートランスミッション液は、摩擦耐久性、すなわち流体が熱応力および酸化的ストレスを受けた際にほとんど変化しないような摩擦特性を向上させるために調整される。本明細書で使用されている「摩擦耐久性」とは、使用中の流体の
摩擦特性に悪影響を与えるような物理的また化学的な変化に耐える流体の能力を意味する。開示されたパワートランスミッション液は、滑り(slipping)トルクコンバーター、ロックアップトルクコンバーター、スターティングクラッチ、および/または一つ以上のシフトクラッチなどを備えたトランスミッションなどの、潤滑油に日常的に高い応力がかかるトランスミッション中での使用に適している。このようなトランスミッションには四速、五速、六速、七速、または八速のトランスミッション、あるいは無段変速トランスミッション(チェーン、ベルト、およびディスクタイプ)などがある。この流体はまた、自動マニュアルおよびデュアルクラッチトランスミッションを含むマニュアルトランスミッション中でも使用される。
【0007】
上述の一般的な記述および以下の詳細な記述はともに例示および説明のみを目的としたものであり、請求されるように、開示された実施例のさらなる説明を提供することが意図されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書中で使用される「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」という用語は、当技術分野に精通した技術者に周知の通常の意味で使用されている。具体的には、これらは分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、また主に炭化水素の特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には以下のものが含まれる:
(1)炭化水素置換基、すなわち脂肪族(例えばアルキルまたはアルケニル)置換基、脂環式(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、また芳香族、脂肪族、および脂環基によって置換された芳香族置換基、また環が分子の別の部分によって完成されている(例えば二つの置換基が一緒になって脂環式ラジカルを形成している)ような環状置換基;
(2)置換された炭化水素置換基、すなわち、本発明の状況下で、主に炭化水素である置換基を変化させないような、非炭化水素基(例えばハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)を含んだ置換基;
(3)ヘテロ置換基、すなわち、主に炭化水素の特性を有しながら、本発明の状況下で、そうでなければ炭素原子から成る環または鎖の中に炭素以外の原子を含んでいるような置換基。ヘテロ原子には硫黄、酸素、および窒素があり、またピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基が含まれる。ヒドロカルビル基中、炭素原子10個につき通常二つ以下、別の例では一つ以下の非炭化水素置換基が存在する。一般的にはヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は存在しない。
【0009】
パワートランスミッション液はますます過酷な条件下で機能するため、それらのトランスミッションの潤滑のために使用されるオイルは、高温・高圧に耐えるように配合されなくてはならない。機材の問題を最小化し、トランスミッションオイルの交換の間隔を最大にするため、これらのストレスに直面した際のオイルの重要な特性の変化ができる限り少なくなるように、オイル添加剤パッケージを配合しなくてはならない。特に添加剤パッケージに大きく左右されるオイルの摩擦特性は、実質的に一定でなくてはならない。実質的に一定な摩擦特性により、トルクコンバーターおよびシフトクラッチの円滑な操作が確実となり、シャダー、振動およびノイズは最小化され、また燃費が改善される。本明細書に開示された成分により、適切な粘度の基油に混合された際、その基油の摩擦耐久性、そしてより新しくより燃費のよいトランスミッションに必要とされるその他の特性が大きく改良されることが知られている。
【0010】
ある例示的実施例では、パワートランスミッション液に基油および添加剤組成物が含まれている。当添加剤組成物には、少なくとも一つのスクシンイミド分散剤、トランスミッション液に約100ppm超の金属をもたらす金属性清浄剤、摩擦低減量のイミダゾリン
、スクシンイミド摩擦低減剤、およびイミダゾリン以外の非ヒドロキシ第3級アミン摩擦低減剤が含まれる。
【0011】
イミダゾリン
当添加剤組成物の重要な成分に、次の一般式で表されるイミダゾリンがある:
【0012】
【化1】

【0013】
式中Rは炭素数が10から25の直鎖あるいは分岐炭化水素鎖であり、RはCからCのヒドロキシアルキル基である。
【0014】
適切な脂肪酸ヒドロカルビルイミダゾリンの例として、ヘプタデセニルヒドロキシアルキルイミダゾリン、オクタデカノイルヒドロキシアルキルイミダゾリン、リノレイルヒドロキシアルキルイミダゾリン、リノレニルヒドロキシアルキルイミダゾリン、ドコサノイルヒドロキシアルキルイミダゾリン、オレイルヒドロキシアルキルイミダゾリン、エイコサノイルヒドロキシアルキルイミダゾリン、テトラコサノイルヒドロキシアルキルイミダゾリン、ヘプタコサノイルヒドロキシアルキルイミダゾリン、およびヘキサコサノイルヒドロキシアルキルイミダゾリンが挙げられるが、これらに限定はされない。このとき上記の各々について、ヒドロキシアルキルのアルキル基はCからCのアルキル基である。商業的に入手しやすいこととその効果から、2−オレイル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンは特に有用な脂肪酸ヒドロカルビルイミダゾリンである。脂肪酸ヒドロカルビルイミダゾリンは、約0.005重量%から約0.05重量%の量で完成品のパワートランスミッション液中に含まれる。
【0015】
無灰分散剤
本明細書に記載の流体と添加剤組成物には、少なくとも一つの油溶性無灰分散剤が含有される。例えばこのような組成物には、分散剤中の窒素の量に対する無灰分散剤中のリンの量が、窒素1.0に対してリン約0.1から約1.0、分散剤中の窒素の量に対する無灰分散剤中のホウ素の量が、窒素1.0に対してホウ素約0.05から約0.5となるような量で存在する、少なくとも一つの油溶性のリン含有およびホウ素含有無灰分散剤が含有されている。
【0016】
前述のリン含有および/またはホウ素含有無灰分散剤は、スクシンイミド分散剤、コハク酸エステル分散剤、コハク酸エステル−アミド分散剤、マンニッヒ塩基分散剤、ヒドロカルビルポリアミン分散剤、またはポリマー性ポリアミン分散剤などのような、分子中に塩基性窒素および/または少なくとも一つのヒドロキシル基を有する無灰分散剤をリン酸化(phosphorylating)および/またはホウ素化(boronating)することによって形成される。時に、取り扱いの適性を向上させるため、分散剤にオイルあるいは溶媒が加えられることがある。ここで記載されている分散剤の量はすべて、オイルあるいは溶媒を含んでいない状態のものである。
【0017】
リン酸化あるいはホウ素化されるスクシンイミド無灰分散剤としては、スクシン基に炭素数が少なくとも30のヒドロカルビル置換基が含まれている、たとえば米国特許第3,172,892号、3,202,678号、3,216,936号、3,219,666
号、3,254,025号、3,272,746号、および4,234,435号に記載の、ポリアミンスクシンイミドが挙げられるが、これに限定はされない。アルケニルスクシンイミドは、アルケニルコハク酸無水物、酸、酸−エステル、酸ハロゲン化物、あるいは低級アルキルエステルを、少なくとも一つの第一級アミノ基を含有するポリアミンとともに加熱するような、従来の方法によって形成される。アルケニル無水コハク酸は、オレフィンと無水マレイン酸の混合物を約180℃から220℃まで加熱することによって容易に生成される。このオレフィンは、望ましくは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのような低級モノオレフィンのポリマー、あるいはコポリマーである。GPC数平均分子量が約10,000まで、一般的には約500から約2,500の間のポリイソブテンは、さらに好適なアルケニル基源である。
【0018】
本明細書で使用される「スクシンイミド」という用語は、一つ以上のポリアミン反応物と炭化水素置換のコハク酸あるいはその無水物(またはコハク酸アシル化剤のようなもの)との反応から得られる完全な反応生成物を含むことを意味し、また、生成物が、第1級アミノ基と無水物部分との反応から得られるような種類のイミド結合に加え、アミド、アミジン、および/または塩結合を有するような化合物を含むことを意図している。
【0019】
炭素数が2から20、ヒドロキシル基の数が2から6の多価アルコールのアルケニルコハク酸エステルおよびジエステルが、リン含有および/またはホウ素含有無灰分散剤の形成に使用される。その代表的な例は、米国特許第3,331,776号、3,381,022号、および3,522,179号に記載されている。これらのエステルのアルケニルスクシン部分は、上述のスクシンイミドのアルケニルスクシン部分に相当する。
【0020】
リン酸化および/またはホウ素化された無灰分散剤の形成に適したアルケニルコハク酸エステル−アミドは、例えば米国特許第3,184,474号、3,576,743号、3,632,511号、3,804,763号、3,836,471号、3,862,981号、3,936,480号、3,948,800号、3,950,341号、3,957,854号、3,957,855号、3,991,098号、4,071,548号、および4,173,540号に記載されている。
【0021】
スクシンイミド摩擦低減剤
上述のリン酸化および/またはホウ素化された無灰分散剤に加え、本開示の実施例には、アルケニルコハク酸またはその無水物とアンモニアから調製されたスクシンイミド摩擦低減剤が含まれる。アルケニルコハク酸のアルケニル基は、短鎖アルケニル基であり、例えばこのアルケニル基に含まれる炭素数は約12から約36である。さらに、このスクシンイミドはC12から約C36の脂肪族ヒドロカルビルスクシンイミドである。さらなる例では、このスクシンイミドはC16から約C28の脂肪族ヒドロカルビルスクシンイミドから成る。またさらなる例では、このスクシンイミドはC18から約C24の脂肪族ヒドロカルビルスクシンイミドから成る。このスクシンイミドは、参照することにより本明細書に組み込まれている、欧州特許第0 020 037号に記載されているように、無水コハク酸とアンモニアから調製される。
【0022】
スクシンイミドは、次の化学式で表される一つ以上の化合物から成る:
【0023】
【化2】

【0024】
式中、Zは次の化学式で表され:
【0025】
【化3】

【0026】
式中RまたはRの、両方ではなくいずれか一つが水素であり、またRおよび/またはRは個別に炭素数約1から約34の直鎖あるいは分岐鎖の炭化水素で、RとRの炭素数の合計は約11から約35となる。また、加えて、あるいは代案として、親(parent)無水コハク酸は、マレイン酸、その無水物、またはエステルと、炭素数が約12から約36の内部オレフィンとを反応させることによって形成されることもある。当該の内部オレフィンとは、内部オレフィンの混合物を得るため、線状α−オレフィンまたはそれらの混合物のオレフィン二重結合を異性化することによって形成されたものである。当反応には等モル量のアンモニアが関与し、水を除去し高温で行われる。
【0027】
例示的なスクシンイミド摩擦低減剤としては、3−オクテニルスクシンイミド、3−オクテニル−4−メチルスクシンイミド、3−オクテニル−4,4−ジメチルスクシンイミド、3−オクテニル−4−エチルスクシンイミド、3−オクテニル−4−エチル−4−メチルスクシンイミド、3−オクテニル−4−ブチルスクシンイミド、3−オクテニル−4−ビニルスクシンイミド、3−オクテニル−4−アリルスクシンイミド、3−オクテニル−4−ブテニルスクシンイミド、3−sec−オクテニルスクシンイミド、3−sec−オクテニル−4−イソプロピルスクシンイミド、3−オクチルスクシンイミド、3−オクチル−4−メチルスクシンイミド、3−sec−オクチル−スクシンイミド、3−sec−オクチル−4−メチルスクシンイミド、3−sec−オクチル−4−エチルスクシンイミド、3−sec−オクチル−4−プロピルスクシンイミド、3−sec−オクチル−4,4−ジメチルスクシンイミド、および3−sec−オクチル−4,4−ジエチルスクシンイミドが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0028】
パワートランスミッション液には、摩擦低減量の前述のスクシンイミドが含まれる。例えば、パワートランスミッション液には、約0.1重量%から約2.0重量%のスクシンイミドが含まれる。さらにパワートランスミッション液には約0.2重量%から約0.8重量%のスクシンイミドが含まれる。
【0029】
その他の摩擦低減剤
パワートランスミッション液のその他の成分に、上述のイミダゾリン成分以外の非ヒドロキシアミン摩擦低減剤がある。摩擦低減剤は、低滑り速度での表面間(たとえばトルクコンバータークラッチまたはシフトクラッチ部材)の摩擦を低減するために、オートマチックトランスミッション液中で使用される。結果として右上がり斜線(positive
slope)の摩擦−vs.−速度(μ−v)曲線が得られ、クラッチの円滑な操作が得られ、シャダー、ノイズ、およびシフト困難が最小化される。
【0030】
特に好適なアミン摩擦低減剤は、次の化学式で表される非ヒドロキシ脂肪第3級アミン摩擦低減剤である:
【0031】
【化4】

【0032】
式中、RおよびRの各々は、炭素数が1から5の低級アルキル基であり、またRは炭素数が6から20の脂肪族炭化水素基である。一般的な非ヒドロキシ脂肪第3級アミンとしては、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジメチルテトラデシルアミン、ジメチルペンタデシルアミン、ジメチルヘキサデシルアミン、ジメチルオクタデシルアミン、ジエチルヘキシルアミン、ジエチルオクチルアミン、ジエチルデシルアミン、ジエチルドデシルアミン、ジエチルテトラデシルアミン、ジエチルペンタデシルアミン、ジエチルヘキサデシルアミン、ジエチルオクタデシルアミン、ジプロピルヘキシルアミン、ジプロピルオクチルアミン、ジプロピルデシルアミン、ジプロピルドデシルアミン、ジプロピルテトラデシルアミン、ジプロピルペンタデシルアミン、ジプロピルヘキサデシルアミン、およびジプロピルオクタデシルアミンを含むが、これらに限定されないジアルキルアルキルアミンが挙げられる。
【0033】
パワートランスミッション液中のアミン摩擦低減剤の量は、パワートランスミッション液の総重量を基にして、約0.01重量%から約1.0重量%の間である。パワートランスミッション液中のアミン摩擦低減剤の好適な量は、パワートランスミッション液の総重量を基にして、約0.01重量%から約0.05重量%の間である。
【0034】
清浄剤成分
金属含有あるいは灰形成清浄剤は、堆積物を低減あるいは除去する清浄剤、および酸中和剤あるいは防錆剤の両方として機能し、そのため磨耗および腐食を低減する。清浄剤は通常、極性のヘッドと疎水性の長いテールから成り、このとき極性のヘッドは酸性有機化合物の金属塩から成る。この塩には実質的に化学量論的な量の金属が含有されており、通常正塩あるいは中性塩と呼ばれ、また一般的に全塩基数あるいはTBN(ASTM D2896によって測定された)が0から約150である。酸化物あるいは水酸化物のような超過量の金属化合物を二酸化炭素のような酸性ガスと反応させることによって、大量の金属塩基が含まれ得る。結果として得られる過塩基性の清浄剤は、無機金属塩基(例えば水和炭酸塩)の中心を取り巻く、中和された清浄剤のミセルを含む。このような過塩基性の清浄剤のTBNは150以上、また一般的には約250から約450である。
【0035】
使用される清浄剤には、特に、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、およびマグネシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属のような金属の、油溶性・中性および過塩基性のスルホン酸塩、フェネート(phenates)、硫化フェネート、およびサリチル酸塩が含まれる。最も一般的に使用される金属はカルシウムとマグネシウムで、両方が存在することもある。カルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムとの混合物もまた有用である。特に便利な金属性清浄剤は、TBNが20から450の中性および過塩基性のスルホン酸カルシウムあるいはスルホン酸マグネシウム、中性お
よび過塩基性のカルシウムフェネートあるいはマグネシウムフェネート、TBNが50から450の硫化フェネート、およびTBNが130から350の中性あるいは過塩基性のサリチル酸カルシウムあるいはサリチル酸マグネシウムである。このような塩の混合物もまた使用することができる。少なくとも一つの過塩基性の清浄剤が存在することが望ましい。
【0036】
開示された実施例に基づいたパワートランスミッション液中の清浄剤の量は、完成品の潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%から約1.0重量%である。パワートランスミッション液中の清浄剤の好適な量により、約100ppm超のカルシウムあるいはマグネシウムがパワートランスミッション液にもたらされる。
【0037】
基油
基油は、任意の好適な基油から成る。例えば基油は、天然潤滑油、天然潤滑油の混合物、合成潤滑油、合成潤滑油の混合物、および/または天然潤滑油と合成潤滑油の混合物から成る。天然潤滑油または天然潤滑油の混合物は、鉱油、植物油、ガス・ツー・リキッドオイルストック、および/またはそれらの混合物から成る。合成潤滑油または合成潤滑油の混合物は、アルファオレフィンのオリゴマー、エステル、フィッシャー・トロプシュプロセスのようなガス・ツー・リキッドプロセスから得られたオイル、および/またはそれらの混合物の一つから成る。この基油の動的粘性は、100℃で約2cStから約10cStである。
【0038】
その他の任意的成分
パワートランスミッション液にはまた、酸化防止剤、耐磨耗剤/極圧添加剤、腐食防止剤、消泡剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、および希釈油などのような、オートマチックトランスミッション液調合物中で使用される従来の添加剤が含まれることもある。
【0039】
酸化防止剤
パワートランスミッション液には酸化防止剤化合物が含まれている。酸化防止剤には、中でも、フェノール系酸化防止剤、芳香族アミン酸化防止剤、硫化フェノール系酸化防止剤、および有機亜リン酸塩などが含まれる。フェノール系酸化防止剤の例としては、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、第3級ブチル化フェノールの液体混合物、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−t−ブチルフェノール)、混合メチレン−架橋ポリアルキルフェノール、および4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N,N’−ジ−sec−ブチル−フェニレンジアミン、4−イソプロピルアミノジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、および環上アルキル化ジフェニルアミンが挙げられる。立体的に込み合った第3級ブチル化フェノール、ビスフェノール、および桂皮酸誘導体、またそれらの組み合わせは、特に好適な酸化防止剤である。また特に好適な酸化防止剤に、アルキル化ジフェニルアミンがある。本明細書に記載のトランスミッション液中の酸化防止剤の量は、パワートランスミッション液の総重量に基づき、約0.01重量%から約3.0重量%である。
【0040】
耐磨耗剤/極圧添加剤
本明細書に記載のトランスミッション液には、一つ以上の耐磨耗剤/極圧添加剤が含まれる。このような化合物には、チアゾール、トリアゾールおよびチアジアゾール、また硫化脂肪酸およびオレフィンが含まれる。例としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、オクチルトリアゾール、デシルトリアゾール、ドデシルトリアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−ヒドロカルビルチオ−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−ヒドロカルビルジチオ−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(ヒドロカルビル
チオ)−1,3,4−チアジアゾール、および2,5−ビス(ヒドロカルビルジチオ)−1,3,4−チアジアゾールが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0041】
硫化脂肪酸およびオレフィンには、ジヒドロカルビルポリスルフィド;硫化オレフィン;天然および合成起源の硫化脂肪酸エステル;トリチオン;硫化チエニル誘導体;硫化テルペン;C−Cモノオレフィンの硫化オリゴマー;および米国特許第Re27,331号に開示されたもののような、硫化ディールス・アルダー付加化合物が含まれるが、これらに限定はされない。具体的な例としては、硫化ポリイソブテン、硫化イソブチレン、硫化ジイソブチレン、硫化トリイソブチレン、ジシクロヘキシルポリスルフィド、ジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジノニルポリスルフィド、また、中でも、ジ−t−ブチルトリスルフィド、ジ−t−ブチルテトラスルフィド、およびジ−t−ブチルペンタスルフィドなどの混合物のような、ジ−t−ブチルポリスルフィドの混合物が挙げられる。硫化イソブチレンとジ−t−ブチルトリスルフィドの組み合わせ、硫化イソブチレンとジノニルトリスルフィドの組み合わせ、また硫化トールオイルとジベンジルポリスルフィドの組み合わせのような、硫黄を含有したこのような種類の耐磨耗剤および/または極圧添加剤の組み合わせもまた使用される。
【0042】
トランスミッション液中の耐磨耗剤/極圧添加剤の総合量は、トランスミッション液組成物の総重量を基にして、約0.01重量%から約10重量%である。
【0043】
粘度指数向上剤
上記のパワートランスミッション液中で使用されるオプションの粘度指数向上剤は、スチレン−マレイン酸エステル、ポリアルキルメタクリレート、およびオレフィンコポリマー粘度指数向上剤を含むがこれらに限定されることのない、市販の製品の中から選択される。前述の製品の混合物もまた、分散剤および分散剤−酸化防止剤・粘度指数向上剤と同様に使用される。
【0044】
使用されるポリアルキル(メタ)アクリレートは、C−C30の(メタ)アクリレートのポリマー化によって調製される。これらのポリマーの調製には、分散性の改良などのポリアルキル(メタ)アクリレートに追加的な性能をもたらす、窒素含有官能基を有するアクリルモノマー、ヒドロキシ基および/またはアルコキシ基の使用がさらに含まれることがある。ポリアルキル(メタ)アクリレートの数平均分子量は10,000から250,000、例えば20,000から200,000である。本明細書に記載のトランスミッション液中の粘度指数向上剤の量は、パワートランスミッション液の総重量に基づき、約0重量%から約10重量%である。
【0045】
消泡剤
発泡防止剤は、本明細書に記載の組成物中で使用するのに適した、もう一つの成分である。発泡防止剤は、シリコーン、シロキサン、ポリアクリレート、界面活性剤、およびそれらの混合物の中から選択される。本明細書に記載のトランスミッション液中の消泡剤の総合量は、パワートランスミッション液の総重量に基づき、約2ppm Si重量%から約20ppm Si重量%、またはパワートランスミッション液の総重量に基づき、シリコンを含有しない発泡防止剤50ppmから1000ppmである。
【0046】
防錆剤または腐食防止剤
パワートランスミッション液中に含まれるのに適した別の種類の添加剤に、防錆剤または腐食防止剤がある。各種の既知の防錆剤または防錆添加剤がトランスミッション液中で使用されることが知られており、また開示された実施例に基づいた流体中での使用にも適している。3−デシルオキシプロピルアミン、およびポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロックコポリマーのようなアルキルポリオキシアルキレンエーテル、オキシア
ルキルアミンは特に有用である。
【0047】
その他の好適な防錆剤または腐食防止剤には、酸性リン酸塩(acid phosphates);エトキシル化フェノール、およびエトキシル化アルコール;イミダゾリン;アミノコハク酸またはその誘導体、その他が含まれる。これらの種類の物質は商品として市販されている。このような防錆剤または腐食防止剤の混合物を使用することができる。流体組成物中の防錆剤または腐食防止剤の総合量は、パワートランスミッション液の総重量に基づき、約0重量%から約1.0重量%である。
【0048】
流動点降下剤
流体の低温特性を改良するため、一つ以上の流動点降下剤がパワートランスミッション液中に含まれる。有用な流動点降下剤の例は、ポリメタクリレート;ポリアクリレート;ポリアクリルアミド;ハロパラフィンワックスと芳香族化合物との縮合生成物;ビニルカルボキシレートポリマー;およびジアルキルフマレート、脂肪酸のビニルエステル、およびアルキルビニルエーテルのターポリマーなどである。本開示の目的およびその調製技術に有用な流動点降下剤は、関連する開示について参照することによって本明細書に組み込まれている、米国特許第2,387,501号、2,015,748号、2,655,479号、1,815,022号、2,191,498号、2,666,746号、2,721,877号、2,721,878号、および3,250,715号に記載されている。
【0049】
本明細書に記載の流体組成物中で使用される流動点降下剤の量は、流体組成物の総重量に基づき、約0.0重量%から約0.5重量%である。
【0050】
一つの実施例では、流動点降下剤は一般構造式:Ar(R)−−(Ar1(R1))-Ar2で表される。式中Ar、Ar1、およびAr2は炭素数が約12の芳香族基、(R)または(R1)は、どちらか少なくとも一つがCHであるという条件の下で、それぞれに炭素数が1から100のアルキレン基であり、またnが0のときは(R)がCHであるという条件でnは0から約1000である。また少なくとも一つの芳香族部分には少なくとも一つの置換基があり、この置換基は炭素数役8から約30のオレフィンから派生した置換基と、炭素数が通常約8から約50であり、炭素数24につき塩素原子数が約2.5である塩素化炭化水素から派生した置換基から成るグループから選択される。
【0051】
本明細書で開示されたパワートランスミッション液は、ステップオートマティックトランスミッションまたはマニュアルトランスミッションのような、いかなるパワートランスミッションでの使用にも適した流体から成る。さらにこのパワートランスミッション液は、滑りトルクコンバーター、ロックアップトルクコンバーター、スターティングクラッチ、および/または一つ以上のシフトクラッチを備えたトランスミッションでの使用にも適している。このようなトランスミッションには、四速、五速、六速、七速、および八速のトランスミッション、および無段変速トランスミッション(チェーン、ベルト、またはディスクタイプ)が含まれる。このパワートランスミッション液はまた、自動マニュアルおよびデュアルクラッチトランスミッションを含むマニュアルトランスミッションでも使用される。
【0052】
開示された実施例に基づいた例示的なパワートランスミッション液(流体I)および従来のパワートランスミッション液(流体IV)の主要成分を以下の表に示す:
【0053】
【表1】

【0054】
流体Iの添加剤濃縮物を含有するパワートランスミッション液により、シャダー防止作用が好適、すなわち低速動的摩擦と中速(midpoint)動的摩擦の比率(S1/D)が1以下となり、また流体の耐用年数を通してS1/Dが維持されるような好適なシャダー防止耐久性、適切で比較的高い摩擦の静的係数、流体の耐用年数を通して摩擦係数が維持されるような好適な摩擦耐久性、低レベルの好適なノイズ・振動・ハーシュネス(NVH)、および流体の耐用年数を通した比較的低レベルのNVHの維持などがもたらされる。前述のなかでも、本明細書に記載された添加剤は、パワートランスミッション液の摩擦耐久性の維持に特に適している。
【0055】
パワートランスミッション液の摩擦耐久性を決定するため、いくつかの試験法が使用される。表1に示された添加物濃縮物、および従来のATF II、IIIおよびIVを含んでいる流体において行なわれたテストの結果を、図1から10に例証する。
【0056】
トランスミッション中の流体の長時間にわたる使用をシミュレートする一つの方法として、実験室における流体の人工的な「老化」がある。このような老化の前後の流体の摩擦特性(例えば、相対速度あるいはμ−vデータ(profile)などの関数としての摩擦の変化)を比較して、流体の摩擦耐久性が決定される。老化時の摩擦係数(μ)の変化が少ないほど、流体の安定性が高い。従って、耐久性のある流体は、広範囲にわたる相対速度において、変化が微小である(すなわちμの差が0に近い)。下記の説明において、「老化」とは流体が170℃で100時間加熱されたことを意味する。
【0057】
図1および図2は、本発明の添加剤組成物を含んだ流体(流体I)と従来の流体(流体IIおよびIII)における、老化時の相対速度の関数としてのμの差を表す。使用された摩擦材料はボルグ・ワーナー(Borg−Warner)SD−1777(図1)およびダイナックス(Dynax)D530−31(図2)である。これらの図に示されたμ−vデータは、参照することにより本明細書に組み込まれているSAE940821に記載のSAE No.2機により得られた。摩擦係数は、速度範囲1RPMから300RPM、付加圧力890kPa、温度120℃、および滑り時間2.9秒で測定された。この摩擦特性作用は、トルクコンバータークラッチ内の流体の性能に関連している。流体Iはこれらの材料について示された速度範囲におけるμ−vデータの差が最も少なく、明らかに従来の流体よりも優れている。
【0058】
別の摩擦耐久性試験では、SAE J286工程に説明されたガイドライン/仕様を満たすSAE #2機の試験ヘッドにクラッチパックが取り付けられた。このクラッチパックは、四枚の鋼板と、鋼板の間に配置された二枚の摩擦板から成る。試験ヘッドに試験流体を加え、クラッチパックをフォード(Ford)社のMERCON V仕様に基づいてクラッチを30,000回入れたり切ったりした(engaged and disengaged)。試験中、一定の間隔でさまざまな摩擦パラメータを測定した。好適な流体は、MERCON V仕様においてフォード(Ford)社に指定された範囲内の摩擦特性を有し、図3から図10の曲線の傾きによって示されるように、一連の試験中、それらの特性を維持する。改良された摩擦耐久性は、図中の摩擦トレースの編端部分に反映されている。
【0059】
図3および図4は、本開示による添加剤組成物を含有した流体(流体I)および従来のATF(流体II、流体III、および流体IV)についての、摩擦の低速動的係数を例証する。図3によると、流体Iは試験流体の摩擦の低速動的係数が最も安定していた。
【0060】
図5および図6は、本開示による添加剤組成物を含有した流体(流体I)および従来の流体(流体II、流体III、および流体IV)についての、摩擦の中速動的係数を例証している。図5によると、流体Iは試験流体の摩擦の中速動的係数もまた最も安定していた。
【0061】
図7および図8は、本開示による添加剤組成物を含有した流体(流体I)および従来のATF(流体II、流体III、および流体IV)についての、静的分離摩擦係数を例証している。他の特性と同様、流体I(図7)は試験流体の摩擦の静係数が最も安定していた。
【0062】
流体I、II、III、および流体IVのS1/D比を、図9および図10に示す。ここでも流体Iは従来の流体に比べて優れた耐久性を示し、一連の試験を通してS1/D比がより安定している。
【0063】
このように本明細書に記載の添加剤は、新しいパワートランスミッション液に優れた摩擦特性をもたらすだけでなく、前述の例によって実証されたように、パワートランスミッション液が長期間にわたって好適な性能の耐久性を維持することを可能にする。
【0064】
当開示の他の実施例は、本明細書を検討することおよび本明細書に開示された発明を実施することにより、当技術分野に精通した技術者には明白なものである。本明細書および添付の請求項の英文において使用されている「a」および・または「an」などの単語は、一つのものあるいは一つ以上のものを指すことがある。本明細書および請求項で使用されている、成分の量や、分子量、パーセンテージ、比率、反応条件などの特性を表す数値はすべて、特記されていない限り、「約」という言葉で修飾されていると理解されるべきである。従って、それに反する指定がない限り、本明細書および請求項で示されている数値パラメータは、開示された実施例によって得ようとされている希望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、また本請求項の範囲に対応する原理の適応を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも使用された有効数字の数と通常の四捨五入の使用を考慮に入れて解釈されるべきものである。開示された実施例の広い範囲を説明する数値の範囲およびパラメータは近似値ではあるが、特定な例において示される数値はできる限り正確に記録されている。しかしながら、いかなる数値も、それぞれの試験測定に見られる標準偏差の結果必然的に生じる若干のエラーを本質的に含んでいる。本明細および実施例は例示としてのみ解釈され、本発明の真の範囲および精神は、以下の請求項に示されている。
【0065】
本発明の主な特徴及び態様を挙げれば以下のとおりである。
1. (a)基油および(b)添加剤組成物から成り、この組成物中には(i)少なくとも一つの無灰分散剤;(ii)パワートランスミッション液組成物中に約100ppm以上の金属をもたらす金属性清浄剤;(iii)摩擦低減量のイミダゾリン;(iv)スクシンイミド摩擦低減剤;および(v)(iii)以外の非ヒドロキシ第3アミン摩擦低減剤が含まれている、パワートランスミッション液組成物。
2. 基油が天然潤滑油、天然潤滑油の混合物、合成潤滑油、合成潤滑油の混合物、または天然潤滑油と合成潤滑油の混合物から成る、上記1に記載の流体。
3. 合成潤滑油あるいは合成潤滑油の混合物がアルファオレフィンのオリゴマー、エステル、フィッシャー・トロプシュプロセスのようなガス・ツー・リキッドプロセスから得られたオイル、またはそれらの混合物から成る、上記2に記載の流体。
4. 無灰分散剤がホウ素化/リン酸化された分散剤から成る、上記1に記載の流体。
5. 分散剤が約0.1重量%から約0.7重量%のホウ素から成る、上記1に記載の流体。
6. 無灰分散剤が、分子量約700amuから約3000amuのポリイソブチレンから得られたヒドロカルビル置換のスクシンイミドを含む、上記1に記載の流体。
7. 添加剤組成物が約20重量%から約65.0重量%の分散剤を含む、上記1に記載の流体。
8. さらにヒドロカルビル置換のスクシンイミドを含み、このヒドロカルビル基の分子量が約500amuから約1200amuである、上記1に記載の流体。
9. 金属性清浄剤が、過塩基性カルシウムスルホン酸塩清浄剤、過塩基性カルシウムフェネート清浄剤、およびそれらの混合物から成るグループの中から選択された清浄剤から成る、上記1に記載の流体。
10. 添加剤組成物が約1.0重量%から約10.0重量%のスクシンイミド摩擦低減剤から成る、上記9に記載の流体。
11. 添加剤組成物中のイミダゾリンの量が約0.05重量%から約1.0重量%である、上記1に記載の流体。
12. さらに硫化脂肪酸から成る、上記1に記載の流体。
13. さらに酸化防止剤、腐食防止剤、金属不活性剤、消泡剤、粘度指数向上剤、防錆剤、および流動点降下剤の少なくともひとつから成る、上記1に記載の流体。
14. イミダゾリンがC18−C22の不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルイミダゾリンから成る、上記1に記載の流体。
15. 上記1に記載の流体であり、滑りトルクコンバーター、ロックアップトルクコンバーター、スターティングクラッチおよび一つ以上のシフトクラッチの一つ以上を使用したトランスミッションでの使用に適した流体。
16. (a)少なくとも一つの無灰分散剤;(b)基油および添加剤組成物を含有した完全に配合されたトランスミッション液に約100ppm超の金属をもたらす金属性清浄剤;(c)摩擦低減量のヒドロキシアルキルイミダゾリン;(d)スクシンイミド摩擦低減剤;および(e)(c)以外の非ヒドロキシ第3級アミン摩擦低減剤を含む添加剤組成物を基油に加える、トランスミッションにおける摩擦耐久性を向上させる方法。
17. 無灰分散剤がホウ素化/リン酸化された分散剤を含む、上記16に記載の方法。
18. 無灰分散剤が、分子量約1300amuから約3000amuのポリイソブチレンから得られたヒドロカルビル置換のスクシンイミドを含む、上記16に記載の方法。
19. 添加剤組成物が約20重量%から約65重量%の分散剤を含む、上記16に記載の方法。
20. 金属性清浄剤が、過塩基性カルシウムスルホン酸塩清浄剤、過塩基性カルシウムフェネート清浄剤、およびそれらの混合物から成るグループの中から選択された清浄剤から成る、上記16に記載の方法。
21. 添加剤組成物が約1.0重量%から約10.0重量%のスクシンイミド摩擦低減剤から成る、上記16に記載の方法。
22. 添加剤組成物中のイミダゾリンの量が約0.05重量%から約1.0重量%であ
る、上記16に記載の方法。
23. イミダゾリンがC18−C22の不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルイミダゾリンを含む、上記16に記載の方法。
24. さらに硫化脂肪酸を含む、上記16に記載の方法。
25. 次の成分から成る添加剤組成物を包含する潤滑粘性のオイルを含む潤滑組成物をトランスミッションに加えることを含む、トランスミッションの潤滑方法:
(a)少なくとも一つの無灰分散剤;
(b)潤滑組成物に約100ppm超の金属をもたらす金属性清浄剤;
(c)摩擦低減量のC18−C22の不飽和脂肪酸イミダゾリン;
(d)スクシンイミド摩擦低減剤;および
(e)(c)以外の非ヒドロキシ第3級アミン摩擦低減剤。
26. 無灰分散剤がホウ素化/リン酸化された分散剤を含む、上記25に記載の方法。
27. 無灰分散剤が、分子量約1300amuから約3000amuのポリイソブチレンから得られたヒドロカルビル置換のスクシンイミドと、分子量約300amuから約1000amuのポリイソブチレンから得られたヒドロカルビル置換のスクシンイミドを含む、上記25に記載の方法。
28. 添加剤組成物が約20重量%から約65重量%の分散剤を含む、上記27に記載の方法。
29. 金属性清浄剤が、過塩基性カルシウムスルホン酸塩清浄剤、過塩基性カルシウムフェネート清浄剤、およびそれらの混合物から成るグループの中から選択された清浄剤を含む、上記25に記載の方法。
30. 添加剤組成物が約1.0重量%から約10.0重量%のスクシンイミド摩擦低減剤を含む、上記25に記載の方法。
31. 添加剤組成物中のイミダゾリンの量が約0.05重量%から約1.0重量%である、上記25に記載の方法。
32. イミダゾリンがヒドロキシアルキルイミダゾリンを含む、上記25に記載の方法。
33. さらに、酸化防止剤、腐食防止剤、金属不活性剤、消泡剤、粘度指数向上剤、防錆剤、極圧添加剤、および流動点降下剤の少なくとも一つを含む、上記25に記載の方法。
34. パワートランスミッション液用の添加剤濃縮物であり、少なくとも一つの無灰分散剤;パワートランスミッション液組成物中に約100ppm超の金属をもたらす金属性清浄剤;摩擦低減量のイミダゾリン;スクシンイミド摩擦低減剤;およびイミダゾリン以外の非ヒドロキシ第3級アミン摩擦低減剤を含む添加剤濃縮物。
35. 無灰分散剤がホウ素化/リン酸化された分散剤を含む、上記34に記載の添加剤濃縮物。
36. 分散剤が約0.1重量%から約2.0重量%のホウ素を含む、上記34に記載の添加剤濃縮物。
37. 無灰分散剤が、分子量約1300amuから約3000amuのポリイソブチレンから得られたヒドロカルビル置換のスクシンイミドを含む、上記34に記載の添加剤濃縮物。
38. 添加剤組成物が約20重量%から約65重量%の分散剤を含む、上記34に記載の添加剤濃縮物。
39. ヒドロカルビル基の分子量が約500amuから約1200amuであるヒドロカルビル置換のスクシンイミドをさらに含んだ、上記34に記載の添加剤濃縮物。
40. 金属性清浄剤が、過塩基性カルシウムスルホン酸塩清浄剤、過塩基性カルシウムフェネート清浄剤、およびそれらの混合物から成るグループの中から選択された清浄剤を含む、上記34に記載の添加剤濃縮物。
41. 添加剤組成物が約1.0重量%から約10.0重量%のスクシンイミド摩擦低減剤を含む、上記34に記載の添加剤濃縮物。
42. 添加剤組成物中のイミダゾリンの量が約0.05重量%から約1.0重量%である、上記34に記載の添加剤濃縮物。
43. さらに硫化脂肪酸を含む、上記34に記載の添加剤濃縮物。
44. さらに、酸化防止剤、腐食防止剤、金属不活性剤、消泡剤、粘度指数向上剤、防錆剤、極圧添加剤、および流動点降下剤の少なくとも一つを含む、上記34に記載の添加剤濃縮物。
45. イミダゾリンがC18−C22の不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルイミダゾリンを含む、上記34に記載の添加剤濃縮物。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本開示による添加剤組成物を含有した流体および従来の流体について、異なった摩擦材料を実験室で老化させた前後のμ−v摩擦データの違いを表す。
【図2】本開示による添加剤組成物を含有した流体および従来の流体について、異なった摩擦材料を実験室で老化させた前後のμ−v摩擦データの違いを表す。
【図3】本開示による添加剤組成物を含有した流体および従来の流体についてのフォードクラッチ摩擦耐久性試験における、摩擦の低速動的係数を表す。
【図4】本開示による添加剤組成物を含有した流体および従来の流体についてのフォードクラッチ摩擦耐久性試験における、摩擦の低速動的係数を表す。
【図5】本開示による添加剤組成物を含有した流体および従来の流体についてのフォードクラッチ摩擦耐久性試験における、摩擦の中速(mid−point)動的係数を表す。
【図6】本開示による添加剤組成物を含有した流体および従来の流体についてのフォードクラッチ摩擦耐久性試験における、摩擦の中速動的係数を表す。
【図7】本開示による添加剤組成物を含有した流体および従来の流体についてのフォードクラッチ摩擦耐久性試験における、摩擦の静的分離(static breakaway)係数を表す。
【図8】本開示による添加剤組成物を含有した流体および従来の流体についてのフォードクラッチ摩擦耐久性試験における、摩擦の静的分離係数を表す。
【図9】本開示による添加剤組成物を含有した流体および従来の流体についてのフォードクラッチ摩擦耐久性試験における、低速動的摩擦と中速動的摩擦(S1/D)の比率を表す。
【図10】本開示による添加剤組成物を含有した流体および従来の流体についてのフォードクラッチ摩擦耐久性試験における、低速動的摩擦と中速動的摩擦(S1/D)の比率を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基油および(b)添加剤組成物から成り、この組成物中には(i)少なくとも一つの無灰分散剤;(ii)パワートランスミッション液組成物中に約100ppm超の金属をもたらす金属性清浄剤;(iii)摩擦低減量のイミダゾリン;(iv)スクシンイミド摩擦低減剤;および(v)(iii)以外の非ヒドロキシ第3級アミン摩擦低減剤が含まれている、パワートランスミッション液組成物。
【請求項2】
無灰分散剤が、分子量約700amuから約3000amuのポリイソブチレンから得られたヒドロカルビル置換のスクシンイミドを含む、請求項1に記載の流体。
【請求項3】
添加剤組成物が約20重量%から約65.0重量%の分散剤を含む、請求項1に記載の流体。
【請求項4】
さらにヒドロカルビル置換のスクシンイミドを含み、このヒドロカルビル基の分子量が約500amuから約1200amuである、請求項1に記載の流体。
【請求項5】
(a)少なくとも一つの無灰分散剤;(b)基油および添加剤組成物を含有した完全に配合されたトランスミッション液に約100ppm超の金属をもたらす金属性清浄剤;(c)摩擦低減量のヒドロキシアルキルイミダゾリン;(d)スクシンイミド摩擦低減剤;および(e)(c)以外の非ヒドロキシ第3級アミン摩擦低減剤を含む添加剤組成物を基油に加える、トランスミッションにおける摩擦耐久性を向上させる方法
【請求項6】
(a)少なくとも一つの無灰分散剤;
(b)潤滑組成物に約100ppm超の金属をもたらす金属性清浄剤;
(c)摩擦低減量のC18−C22の不飽和脂肪酸イミダゾリン;
(d)スクシンイミド摩擦低減剤;および
(e)(c)以外の非ヒドロキシ第3級アミン摩擦低減剤;
を含む添加剤組成物を包含する潤滑粘性のオイルを含む潤滑組成物をトランスミッションに加えることを含むトランスミッションの潤滑方法。
【請求項7】
パワートランスミッション液用の添加剤濃縮物であり、少なくとも一つの無灰分散剤;パワートランスミッション液組成物中に約100ppm超の金属をもたらす金属性清浄剤;摩擦低減量のイミダゾリン;スクシンイミド摩擦低減剤;およびイミダゾリン以外の非ヒドロキシ第3級アミン摩擦低減剤を含む添加剤濃縮物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−332377(P2007−332377A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158964(P2007−158964)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】