説明

撥液レジスト組成物

【課題】保存安定性がよく、成膜時に異物の発生が無く、撥液性に優れた撥液レジスト組成物の提供。
【解決手段】(a1)炭素数4〜8のフルオロアルキル基(炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい)を有するα位置換アクリレート100重量部、(a2)エポキシ基含有モノマー5〜80重量部および(a3)(RO)で示されるアルキレンオキサイド基を含有するモノマー10〜40重量部を繰り返し単位とするフッ素系ポリマー(A1)を含有し、フッ素系ポリマー(A1)のフッ素濃度が15〜40重量%および重量平均分子量が3,000〜20,000である撥液レジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥液領域および親液領域からなるパターン表面をフォトリソグラフィー法により製造するための撥液レジスト組成物(LYOPHOBIC RESIST COMPOSITION)に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ用の画素や配線、バイオチップなどのデバイスを、インクジェットに代表される印刷技術で製造するためには、予め基板をフォトリソグラフィー法によりマイクロメートルスケールで撥液-親液領域にパターニングしなければならない。撥液-親液パターンの形成のためには相反する性質と考えられる撥液性と現像性(アルカリ水溶液への溶解性)を兼ね備えたレジスト(以下、「撥液レジスト」と命名する。)組成物が必要であり、これに配合するフッ素系ポリマー(以下、「撥液剤」と命名)として例えば、以下の二つの技術が開示されている。
【0003】
特許公開公報第2008−287251号には、(i)炭素数4〜6のフルオロアルキル基(以下、Rf基と省略する。)を含有するα位置換型アクリレート、(ii)不飽和有機酸、(iii)エポキシ基含有モノマーおよび(iv)アルキレンオキサイド基を含有するモノマーから成る共重合体のフッ素系ポリマーが開示されており、また、特許第4370843号公報には、パーフルオロポリエーテル基と酸性基を必須成分とするフッ素系ポリマーより得られる撥液剤レジスト組成物が開示されている。
【0004】
1.酸性基導入について
いずれの撥液剤も撥液基(フッ素含有基)と酸性基を必須成分としており、それぞれ撥液レジストに撥液性とアルカリ現像性の機能を付与することが目的で導入される一方、特許公開公報第2008−287251号に開示されている撥液剤は互いに反応する組み合わせであるカルボン酸とエポキシ基が同一分子内に共存しており、この撥液剤を配合した撥液レジストの保存条件によっては、保存安定性が低下することもあり得るという問題があった。
【0005】
2.パーフルオロポリエーテル基炭素数の最適化
特許第4370843号公報の0019段落には、フッ素系ポリマー中のパーフルオロポリエーテル基の最適鎖長に関する記述があり、実施例では炭素数6〜17のパーフルオロポリエーテル基含有(メタ)アクリレートが例示されている。しかし、この範囲は鎖長が長い方に広すぎて炭素数17ではレジストへの相溶性が悪くなり製膜時に異物が発生するという問題があった。
【0006】
3.パーフルオロポリエーテル基含有(メタ)アクリレート共重合体の組成
特許第4370843号の実施例では、(i)炭素数6〜17のパーフルオロポリエーテル基含有(メタ)アクリレート、(ii)(メタ)アクリル酸、(iii)不活性メタクリレートおよび(iv)2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体が開示されているが、このポリマー組成の撥液剤では十分な撥液性が発現しないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許公開公報第2008−287251号
【特許文献2】特許第4370843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は次の三つの課題を達成することである。
1.保存安定性のよい撥液剤を含有する撥液レジスト組成物を提供すること。
2.撥液性と現像性が両立できる最適なパーフルオロポリエーテル基鎖長を有する撥液剤を含有する撥液レジスト組成物を提供すること。
3.撥液性と現像性が両立できるパーフルオロポリエーテル基含有(メタ)アクリレー共重合体の撥液剤を含有する撥液レジスト組成物を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、驚くべきことに、本発明の一つ目の課題は、特定のフッ素系モノマーに、(i)エポキシ基含有モノマーおよび(ii)アルキレンオキサイド基を含有するモノマーを共重合して撥液剤を調製することによって達成されることを見出した。即ち、酸性基をポリマー中に導入することなくアルカリ現像性を発現させることができることから、撥液剤を含有する撥液レジスト組成物の保存安定性が達成されることを見出した。二つ目の課題は、パーフルオロポリエーテル基鎖長の炭素数を6〜8にすることによって達成されることを見出した。三つ目の課題は、パーフルオロポリエーテル基含有(メタ)アクリレートに、(i)エポキシ基含有モノマー、(ii)アルキレンオキサイド基を含有するモノマーおよび(iii)不飽和有機酸を含む共重合体を含有する撥液剤を含有する撥液レジスト組成物によって達成されることを見出した。
【0010】
即ち、本発明が提供する撥液レジスト組成物は、
(a1)炭素数4〜8のフルオロアルキル基(炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい)を有するα位置換アクリレート 100重量部
[α位の置換基は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のフルオロアルキル基、置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のフェニル基、または炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状アルキル基である。]
(a2)エポキシ基含有モノマー 5〜80重量部
(a3)(RO)
[Rは−(CH)−または−(CH)−、Rは水素またはメチル基、nは1〜10である。]で示されるアルキレンオキサイド基を含有するモノマー 10〜40重量部
を繰り返し単位とするフッ素系ポリマー(A1)を含有し、フッ素系ポリマー(A1)のフッ素濃度が15〜40重量%および重量平均分子量が3,000〜20,000であることを特徴とする撥液レジスト組成物である。ここにおいて、該フッ素系ポリマー(A1)の構成成分(a1)がエーテル性酸素原子を有するフルオロアルキル基の場合は、(A1)の構成成分として不飽和有機酸に由来する酸性成分を有していてもよいが、それ以外の場合には、(A1)の構成成分として不飽和有機酸に由来する酸性成分は有しない。
【0011】
本発明が提供する撥液レジスト組成物は、好ましくは、
(a1−2)パーフルオロポリエーテル基を有する式(1)
CmF2m+1-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(X)=CH2 (m=1〜3) 式1
[式中、α位の置換基Xは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のフルオロアルキル基、置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のフェニル基、または炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状アルキル基である。]で表わされるα位置換アクリレート 100重量部
(a2)エポキシ基含有モノマー 5〜60重量部
(a3)(RO)
[Rは−(CH)−または−(CH)−、Rは水素またはメチル基、nは1〜10である。]で示されるアルキレンオキサイド基を含有するモノマー 10〜40重量部
(a4)不飽和有機酸 5〜45重量部
を繰り返し単位とするフッ素系ポリマー(A2)を含有し、フッ素系ポリマー(A2)のフッ素濃度が15〜40重量%、酸価が10〜200mgKOH/gおよび重量平均分子量が3,000〜20,000であることを特徴とする撥液レジスト組成物である。
【0012】
本発明が提供する撥液レジスト組成物は、前記のフッ素系ポリマー(A1)またはフッ素系ポリマー(A2)に加えて、好ましくは、光架橋触媒(B)、溶媒(C)、要すれば架橋剤(D)、および、要すればアルカリ可溶性ポリマー(E)を含有してなることを特徴とする撥液レジスト組成物である。
【0013】
本発明はまた、前記フッ素系ポリマー(A1)またはフッ素系ポリマー(A2)を、好ましくは、10〜30重量%の濃度でグリコール系溶剤に溶解した形態を有する撥液剤を提供する。
【0014】
本発明はまた、前記撥液レジスト組成物中に、好ましくは、固形分に対して10〜70重量%の黒色顔料を分散させたものを用いて、フォトリソグラフィー法により、親液性透明基板上にパターン状に撥液化されたブラックマトリクスを形成することを特徴とするディスプレイ用カラーフィルタの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の撥液レジスト組成物は、フォトリソグラフィー法により、基板上に親液領域および撥液領域からなるパターン表面を形成し、(1)撥液領域に充分な撥液性を付与し、(2)アルカリ可溶性が良く、(3)現像時に撥液剤が親液領域に溶出されにくく、(4)撥液剤がレジスト溶媒に対して高い溶解性を示し、さらに、(5)基板への塗布性が良い。加えて、(6)高い撥液性と、感光性組成物を形成する他素材との高い相溶性が両立されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
●フッ素系ポリマー製造に用いるモノマー
本発明の撥液レジスト組成物で使用するフッ素系ポリマー(A1)において、成分(a1)は炭素数4〜8のフルオロアルキル基(炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい)を有するα位置換アクリレートである。α位の置換基は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のフルオロアルキル基、置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のフェニル基、または炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状アルキル基である。
フッ素系ポリマー(A1)は、さらにエポキシ基含有モノマー(a2)とアルキレンオキサイド基を含有するモノマー(a3)を含有する。
【0017】
フッ素系ポリマー(A1)の成分(a1)、(a2)、(a3)の組成比は、それぞれ、
・α位置換アクリレート(a1)100重量部
・エポキシ基含有モノマー(a2)5〜80重量部、好ましくは40〜80重量部、より好ましくは60〜80重量部であってよく、
・アルキレンオキサイド基を含有するモノマー(a3)10〜40重量部、好ましくは20〜40重量部、より好ましくは30〜40重量部
であってよい。
α位置換アクリレート(a1)は、フッ素系ポリマー(A1)に対して15〜70重量%、より好ましくは25〜65重量%、例えば40〜60重量%であることが好ましい。
【0018】
フッ素系ポリマー(A1)において、フッ素濃度が、15〜40重量%、好ましくは20〜35重量%、より好ましくは25〜35重量%であってよく、重量平均分子量が3,000〜20,000、好ましくは5,000〜15,000であってよい。
フッ素系ポリマー(A1)については、フッ素濃度の下限を15重量%まで減らすことができる。α位置換アクリレート(a1)を減らして(a2)エポキシ基含有モノマーを増量することにより、フッ素系ポリマーの(i)撥液レジスト組成物中での相溶性、(ii)他の原料との架橋および(iii)アルカリ可溶性を改善できる。
【0019】
フッ素系ポリマー(A1)を構成するα位置換アクリレート(a1)が15〜70重量%であり、かつ、フッ素系ポリマー(A)のフッ素濃度が15〜40重量%であると、撥液性が高く、かつ撥液レジスト組成物を構成するその他の成分との相溶性が良好である。フッ素系ポリマー(A1)の重量平均分子量が3,000〜20,000であると、撥液レジスト膜中でのフッ素系ポリマー(A)の表面偏析性が優れ、少ない量で十分な撥液性を付与することができる。
【0020】
フッ素系ポリマー(A1)に水酸基含有モノマー(a3)を使用する場合はさらにイソシアネート基含有(メタ)アクリレートをポリマー中の水酸基と反応させてもよい。
フッ素系ポリマー(A1)はランダム、交互、ブロック、グラフト共重合体のいずれでもよい。
【0021】
α位置換アクリレート(a1)は、
式:
【化1】

[式中、Xは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状もしくは分岐状のフルオロアルキル基、置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のフェニル基、または炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状アルキル基であり、
Yは、直接結合、酸素原子を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族基、酸素原子を有していてもよい炭素数6〜10の芳香族基、環状脂肪族基もしくは芳香脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)、−CH2CH(OY1)CH2−基(但し、Y1は水素原子またはアセチル基である。)、または、-(CH2)nSO2-基(nは1〜10)である。
Rfは炭素数4〜8の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基(炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい)である。]
であることが好ましい。
【0022】
Rfが炭素原子間にエーテル性酸素原子を含まないパーフルオロアルキル基の場合、特に炭素数4〜6のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
α位置換アクリレート(a1)の例は、次のとおりである。
【0023】
【化2】

【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

Rf-SO2(CH2)3-OCO-CH=CH2
【0029】
CH2=C(-H)-C(=O)-O-C6H4-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2N(-CH3)SO2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2N(-C2H5)SO2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-CH2CH(-OH)CH2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-CH2CH(-OCOCH3)CH2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2-S-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2-S-(CH2)2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-(CH2)2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-NH-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-C6H4-Rf
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-(CH2)2N(-CH3)SO2-Rf
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-(CH2)2N(-C2H5)SO2-Rf
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-CH2CH(-OH)CH2-Rf
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-CH2CH(-OCOCH3)CH2-Rf
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-(CH2)2-S-Rf
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-(CH2)2-S-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-Rf
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CH3)-C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(H)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
[式中、Rfは炭素数4〜8の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基(炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい)である。]
【0030】
フッ素系ポリマー(A1)調製のために共重合されるエポキシ基含有モノマー(a2)の例は、グリシジル(メタ)アクリレートである。
【0031】
フッ素系ポリマー(A1)調製のために共重合されるアルキレンオキサイド基を含有するモノマー(a3)のアルキレンオキサイド基の例は、
−(RO)
[Rは−(CH)−または−(CH)−、Rは水素またはメチル基、nは1〜10である。]である。アルキレンオキサイド基を含有するモノマー(a3)としては、
CH=CRCOO(RO)
[Rは−(CH)−または−(CH)−、RおよびRは水素またはメチル基、nは1〜10である。]
を使用してもよい。(a3)は、具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、日本油脂製ブレンマーAPシリーズ(ポリプロピレングリコールモノアクリレート)であるAP-400:n≒6、AP-550:n≒9、AP-800:n≒13、ブレンマーPEシリーズ(ポリエチレングリコールモノメタクリレート)であるPE-90:n≒2、PE-200:n≒4.5、PE-350:n≒8、ブレンマーPPシリーズ (ポリプロピレングリコールモノメタクリレート)であるPP-1OOO:n≒4〜6、PP-500:n≒9、PP-800:n≒13、 ブレンマーPMEシリーズ(メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート)であるPME-1OO:n≒2、PME-200:n≒4、PME-400:n≒9、PME-1OOO:n≒23、PME-4000:n≒90 などが例示される。
【0032】
本発明のフッ素系ポリマー(A1)は、(a2)としてグリシジル(メタ)アクリレート、(a3)としてヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを同時に用いることが特に好ましい。この際、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの水酸基の一部に不飽和基含有化合物を反応させて、フッ素系ポリマー(A1)に不飽和基を導入してもよい。例えば末端の水酸基にイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを反応させてもよい。グリシジル(メタ)アクリレートは撥液レジスト組成物中での相溶性、他の原料との架橋性、アルカリ可溶性を改善する効果がある。ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートはアルカリ可溶性、塗布性を改善する効果がある。ここで塗布性とは基板上に平滑な塗膜を形成させる機能である。フッ素系ポリマー中にエポキシ基と水酸基を同時に含有することにより、アルカリ可溶性が極めて良好となる。
【0033】
本発明の撥液レジスト組成物で使用するフッ素系ポリマー(A2)において、成分(a1−2)は式(1)のパーフルオロポリエーテル基を有するα位置換アクリレートである。
CmF2m+1-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(X)=CH2 (m=1〜3) 式1
[α位の置換基Xは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のフルオロアルキル基、置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のフェニル基、または炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状アルキル基である。]
フッ素系ポリマー(A2)は、さらにエポキシ基含有モノマー(a2)とアルキレンオキサイド基を含有するモノマー(a3)と不飽和有機酸(a4)を含有する。
【0034】
フッ素系ポリマー(A2)の成分(a1−2)、(a2)、(a3)および(a4)の組成比は、それぞれ、
(a1−2)パーフルオロポリエーテル基含有α位置換アクリレート 100重量部
(a2)エポキシ基含有モノマー 5〜60重量部
(a3)アルキレンオキサイド基を含有するモノマー 10〜40重量部
(a4)不飽和有機酸 5〜45重量部
であり、
・エポキシ基含有モノマー(a2)5〜60重量部、好ましくは20〜60重量部、より好ましくは40〜60重量部であってよく
・アルキレンオキサイド基を含有するモノマー(a3)10〜40重量部、好ましくは20〜40重量部、より好ましくは30〜40重量部であってよく
・不飽和有機酸(a4)5〜45重量部、好ましくは10〜40重量部、より好ましくは20〜40重量部であってよい。
パーフルオロポリエーテル基含有α位置換アクリレート(a1−2)は、フッ素系ポリマー(A2)に対して15〜70重量%、好ましくは25〜65重量%、より好ましくは40〜60重量%であってよい。
【0035】
フッ素系ポリマー(A2)において、フッ素濃度が、15〜40重量%、好ましくは20〜35重量%、より好ましくは25〜35重量%であってよく、酸価が10〜200mgKOH/g、好ましくは50〜150mgKOH/g、より好ましくは80〜120mgKOH/gであってよく、重量平均分子量が3,000〜20,000、好ましくは5,000〜15,000であってよい。
フッ素系ポリマー(A2)については、フッ素濃度の下限を15重量%まで減らすことができる。パーフルオロポリエーテル基含有α位置換アクリレート(a1−2)を減らして(a2)エポキシ基含有モノマーを増量することにより、フッ素系ポリマーの(i)撥液レジスト組成物中での相溶性、(ii)他の原料との架橋性、(iii)アルカリ可溶性を改善できる。
【0036】
フッ素系ポリマー(A1)を構成するパーフルオロポリエーテル基含有α位置換アクリレート(a1−2)が15〜70重量%であり、かつ、フッ素系ポリマー(A2)のフッ素濃度が15〜40重量%であると、撥液性が高く、かつ撥液レジスト組成物を構成するその他の成分との相溶性が良好である。フッ素系ポリマー(A2)の重量平均分子量が3,000〜20,000であると、撥液レジスト膜中でのフッ素系ポリマー(A2)の表面偏析性が優れ、少ない量で十分な撥液性を付与することができる。
【0037】
フッ素系ポリマー(A2)に水酸基含有モノマー(a3)を使用する場合はさらにイソシアネート基含有(メタ)アクリレートをポリマー中の水酸基と反応させてもよい。
フッ素系ポリマー(A2)はランダム、交互、ブロック、グラフト共重合体のいずれでもよい。
【0038】
本発明の撥液レジスト組成物で使用するフッ素系ポリマー(A2)において、成分(a1−2)は式(1)のパーフルオロポリエーテル基を有するα位置換アクリレートである。
CmF2m+1-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(X)=CH2 (m=1〜3) 式1
[α位の置換基Xは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のフルオロアルキル基、置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のフェニル基、または炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状アルキル基である]
ここでパーフルオロポリエーテル基の炭素数は6〜8である。炭素数5以下では撥液性が低く、炭素数9以上ではレジストへの相溶性が悪くなり製膜時に異物が発生する。成分(a1−2)の具体例を以下に挙げる。
【0039】
C3F7-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(CH3)=CH2
C3F7-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(H)=CH2
C3F7-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(Cl)=CH2
C3F7-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(F)=CH2

C2F5-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(CH3)=CH2
C2F5-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(H)=CH2
C2F5-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(Cl)=CH2
C2F5-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(F)=CH2

CF3-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(CH3)=CH2
CF3-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(H)=CH2
CF3-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(Cl)=CH2
CF3-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(F)=CH2
【0040】
CmF2m+1-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(CH3)=CH2 (m=1または3)の合成
CmF2m+1-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(CH3)=CH2 (m=1または3)は以下のようにして合成することが出来る。CmF2m+1-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)COF(n=1PF)をアルコールに変換した後にメタクリル酸とのエステル化を行う方法で合成する。
CmF2m+1-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)COFのアルコール化には、溶媒はTHFやグライム系溶剤が使用できる。反応は室温下に行う。還元剤は水素化ホウ素ナトリウム、水素化されたホウ素化合物および水素化アルミニウム等が使用できる。クエンチには、塩酸等の酸を使用する。
アルコール体はメタクリル酸クロライドとの反応によりエステル化する。エステル化の溶媒はメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)やジイソプロピルエーテルなどのエーテル系、ケトン系およびエステル系等が使用できる。反応の副生物としてHClが発生するのでトラップ剤としてトリエチルアミン等の塩基を溶媒に添加する。
エステル化は、酸触媒としてメタンスルフォン酸またはトルエンスルホン酸等を使用し、アルコール体とメタクリル酸を混合、加熱し、脱水することによっても可能である。
【0041】
フッ素系ポリマー(A2)に使用される成分(a2)エポキシ基含有モノマーと成分(a3)アルキレンオキサイド基を含有するモノマーはフッ素系ポリマー(A1)と同じものが使用される。
【0042】
不飽和有機酸(a4)は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合、および少なくとも1つの酸基[例えば、カルボキシル基(COOH基)]を有するモノマーであり、フッ素系ポリマー(A2)の酸価が10〜200mgKOH/gとなるように共重合する。酸価は、JIS0070.2.1で定義されるものであり、試料1g中に含有されている遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数をいう。不飽和有機酸の特に好ましい例は、不飽和カルボン酸、例えば、遊離の不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物である。不飽和有機酸(a2)の例は、(メタ)アクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸およびケイ皮酸等である。不飽和有機酸(a2)は、電磁波照射領域における架橋剤との架橋性、および、電磁波非照射領域におけるアルカリ現像液との溶解性をフッ素系ポリマー(A2)に付与する。
【0043】
フッ素系ポリマー(A)((A1)または(A2))(例えば、3,4,5または6元の共重合体)は、光架橋触媒(B)、溶媒(C)、架橋剤(D)、アルカリ可溶性ポリマー(E)から成る組成物とすることが好ましい。さらに、光架橋触媒(B)は光ラジカル重合開始剤で、架橋剤(D)は多官能(メタ)アクリレートであることが格段に好ましい。
【0044】
●フッ素系ポリマーの製造
フッ素系ポリマーは、以下のようにして製造することができる。モノマーおよび必要な成分を溶媒に溶解させ、窒素置換後、重合触媒を加えて20〜120℃、好ましくは50〜90℃の範囲で、1〜20時間、好ましくは3〜8時間、撹拌する方法が採用される。
【0045】
溶媒は有機溶媒、水溶性有機溶媒および水などが使用できる(詳細は後述する。)。溶媒は重合組成物中に50〜90重量%の範囲で用いられる。
【0046】
フッ素系ポリマーの分子量を調整するためにメルカプタン類やハロゲン化アルキル類などの連鎖移動剤を添加しても良い。メルカプタン類としては、n−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2−メルカプトエタノール、メルカプト酸イソオクチル、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸メトキシブチル、シリコーンメルカプタン(信越化学製 KF−2001)等が、ハロゲン化アルキル類としては、クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。(a4−2)のような水酸基含有モノマー単体とメルカプタン単体が直接接触すると、溶媒不溶物が生成する場合があるので、これらを併用して重合する場合は予めいずれか一方を溶媒で希釈することが望ましい。
【0047】
フッ素系ポリマーの重量平均分子量は、3,000〜20,000、好ましくは5,000〜15,000あってよい。フッ素系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求めたものである(標準ポリスチレン換算)。
【0048】
●撥液レジスト組成物における成分
撥液レジスト組成物における成分は、次の組合せであってよい。
フッ素系ポリマー(A)、光架橋触媒(B)および溶媒(C);
フッ素系ポリマー(A)、光架橋触媒(B)、溶媒(C)および架橋剤(D);
フッ素系ポリマー(A)、光架橋触媒(B)、溶媒(C)、架橋剤(D)およびアルカリ可溶性ポリマー(E)。
【0049】
●パターン基板の作製方法
本発明においては、フッ素系ポリマー(A)を用いて、例えば、次の方法により、パターン化された複数の撥液領域と親液領域から成る基板(以下、単に「パターン基板」と省略する場合がある。)を作製する。
【0050】
方法(1): フッ素系ポリマー(A)と光架橋触媒(B)を溶媒(C)に溶解する。このフッ素系ポリマー溶液を基板上に塗布して感光性の撥液膜を形成し、フォトマスクを介して電磁波を照射すると、照射領域のみが硬化する。アルカリ水溶液(非照射領域のみを溶解する)で現像することにより、パターン基板が得られる。
方法(2): フッ素系ポリマー(A)、光架橋触媒(B)および架橋剤(D)を溶媒(C)に溶解する。このフッ素系ポリマー溶液を基板上に塗布して感光性の撥液膜を形成し、フォトマスクを介して電磁波を照射すると、照射領域のみが硬化する。アルカリ水溶液で現像することにより、パターン基板が得られる。
方法(3): フッ素系ポリマー(A)、光架橋触媒(B)、架橋剤(D)およびアルカリ可溶性ポリマー(E)を溶媒(C)に溶解する。このフッ素系ポリマー溶液を基板上に塗布して感光性の撥液膜を形成し、フォトマスクを介して電磁波を照射すると、照射領域のみが硬化する。アルカリ水溶液で現像することにより、パターン基板が得られる。
【0051】
方法(1)〜(3)のいずれにおいても電磁波を照射する前(プリベーク)や現像後(ポストベーク)に50〜250℃程度の熱処理を行っても良い。光架橋触媒(B)に光酸発生剤を用いるときは同じ温度範囲で電磁波照射後にPEB(Post Exposure Bake)処理を行っても良い。方法(1)〜(3)はいずれもネガ型レジストであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、ポジ型レジストにフッ素系ポリマー(A)を配合しても良い。
【0052】
●光架橋触媒(B)
光架橋触媒(B)としてはラジカル光重合開始剤(B1)と光酸発生剤(B2)が例示される。ラジカル光重合開始剤(B1)は、光によりラジカルを発生する化合物であり、例えば、ベンジル(またはジベンゾイル)、ジアセチル等のα−ジケトン類、ベンゾイン等のアシロイン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン類、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2,2’−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン類、アントラキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等のアミノ安息香酸類、フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン等のハロゲン化合物、アシルホスフィンオキシド類およびジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。フッ素系ポリマー中にエポキシ基含有モノマー(a4−1)が含有される場合は、ラジカル光重合開始剤(B1)として特開2003-76012号公報に記載されるキノンジアジド基含有化合物を用いても良い。
【0053】
ラジカル光重合開始剤(B1)の市販品としては、
IRGACURE 651:2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、
IRGACURE 184:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、
IRGACURE 2959:1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、
IRGACURE 127:2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、
IRGACURE 907:2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、
IRGACURE 369:2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、
IRGACURE 379:2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、
IRGACURE 819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、
IRGACURE 784:ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、
IRGACURE OXE 01:1.2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、
IRGACURE OXE 02:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、
IRGACURE261、IRGACURE369、IRGACURE500、
DAROCUR 1173:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、
DAROCUR TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、
DAROCUR1116、DAROCUR2959、DAROCUR1664、DAROCUR4043、
IRGACURE 754 オキシフェニル酢酸:2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物、
IRGACURE 500:IRGACURE 184:ベンゾフェノン=1:1の混合物、
IRGACURE 1300:IRGACURE 369:IRGACURE 651= 3:7の混合物、
IRGACURE 1800 :CGI403:IRGACURE 184=1:3の混合物、
IRGACURE 1870:CGI403:IRGACURE 184=7:3の混合物および
DAROCUR 4265:DAROCUR TPO:DAROCUR 1173= 1:1の混合物
などが例示される。ここでIRGACUREはチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、DAROCURはメルクジャパン製である。
【0054】
また、増感剤として、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどを、重合促進剤として、DAROCUR EDB(エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート)、DAROCUR EHA(2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート)などを併用しても良い。
【0055】
光酸発生剤[Photochemical acid generator(PAG)](B2)は光をあてることによって反応し酸を発生する材料である。PAGは、光を吸収する発色団と分解後に酸となる酸前駆体より構成されており、このような構造のPAGに特定波長の光を照射することで、PAGが励起され酸前駆体部分から酸を発生する。PAGは、例えば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、CF3SO3、p−CH3PhSO3、p−NO2PhSO3(ただし、Phはフェニル基を表す。)等の塩、有機ハロゲン化合物、オルトキノン−ジアジドスルホニルクロリド、またはスルホン酸エステル等を挙げることができる。
【0056】
前記有機ハロゲン化合物は、ハロゲン化水素酸(例えば、塩化水素)を形成する化合物である。
前記の他の光の照射により酸を発生する化合物は、例えば、2−ハロメチル−5−ビニル−1,3,4−オキサジアゾール化合物、2−トリハロメチル−5−アリール−1,3,4−オキサジアゾール化合物、2−トリハロメチル−5−ヒドロキシフェニル−1,3,4−オキサジアゾール化合物である。
【0057】
PAG(B2)の市販品として、和光純薬製のWPAG−145[Bis(cyclohexylsulfonyl)diazomethane]、WPAG−170[Bis(t−butylsulfonyl)diazomethane]、WPAG−199[Bis(p−toluenesulfonyl)diazomethane]、WPAG−281[Triphenylsulfonium trifluoromethanesulfonate]、WPAG−336[Diphenyl−4−methylphenylsulfonium trifluoromethanesulfonate]、WPAG−367[Diphenyl−2,4,6−trimethylphenylsulfonium p−toluenesulfonate]、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製のIRGACURE PAG103[(5-propylsulfonyloxyimino-5H-thiophen-2-ylidene)- (2-methylphenyl)acetonitrile]、IRGACURE PAG108[(5-octylsulfonyloxyimino-5H-thiophen-2-ylidene)- (2-methylphenyl)acetonitrile)]、IRGACURE PAG121[(5-p-toluenesulfonyloxyimino-5H-thiophen-2-ylidene)- (2-methylphenyl)acetonitrile]、IRGACURE PAG203、CGI725、三和ケミカル製のTFE-トリアジン[2-[2-(Furan-2-yl)ethenyl]-4,6-bis(trichloromethyl)-s-triazine]、TME-トリアジン[2-[2-(5-Methylfuran-2-yl)ethenyl]-4,6-bis(trichloromethyl)-s-triazine]MP-トリアジン[2-(Methoxyphenyl)-4,6-bis(trichloromethyl)-s-triazine]およびジメトキシトリアジン[2-[2-(3,4-Dimethoxyphenyl)ethenyl]-4,6-bis(trichloromethyl)-s-triazine]などを使用することができる。
【0058】
光架橋触媒(B)の量は、フッ素系ポリマー、または、フッ素系ポリマーと架橋剤の合計100重量部に対して、0.1〜20重量部、特に1〜10重量部であることが好ましい。
【0059】
●溶媒(C)
本発明の撥液レジスト組成物には必要に応じて溶媒、例えば、水溶性有機溶媒、有機溶媒(特に、油溶性有機溶媒)または水)を加えても良い。同じ種類の溶媒がフッ素系ポリマーを製造するためにも用いられる。溶媒は、フッ素系ポリマー(A)に不活性でこれを溶解するものである。溶媒の例は、水溶性有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコール、3−メトキシブチルアセテート(MBA)、1,3−ブチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノールアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート、乳酸エチル、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノールなどが、有機溶媒としては、クロロホルム、HFC141b、HCHC225、ハイドロフルオロエーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、メシチレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタンなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で使用しても2種以上を混合してもよい。溶媒は、フッ素系ポリマーおよびレジスト構成原料の溶解性、安全性の観点から、特にPGMEAとMBAが好ましい。
溶媒は撥液レジスト組成物中に、30〜95重量%、例えば50〜90重量%の範囲で用いられることが好ましい。
【0060】
●架橋剤(D)
架橋剤は単官能、または、好ましくは二個以上の官能基を有する化合物であり、ラジカル重合反応により硬化するタイプが好ましく、カチオン重合反応により硬化するタイプであっても良い。前者は不飽和二重結合基であるアクリロイル基やビニル基が官能基であり、後者はエポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基が官能基となり、
(a) ウレタン(メタ)アクリレート
(b) エポキシ(メタ)アクリレート
(c) ポリエステル(メタ)アクリレート
(d) ポリエーテル(メタ)アクリレート
(e) シリコーン(メタ)アクリレート
(f) (メタ)アクリレートモノマー
(g) エポキシ系モノマー
(h) ビニルエーテル系モノマー
(i) オキセタン系モノマー
に分類される。(a)〜(f)がラジカル重合反応で硬化するタイプであり、(g)〜(i)はカチオン重合反応により硬化するタイプである。
【0061】
(a)〜(e)は樹脂に(メタ)アクリロイル基を付加したものであり、オリゴマー、ベースレジン、プレポリマーなどと表現されることが多い。
【0062】
(a) ウレタン(メタ)アクリレートは分子中にウレタン結合と(メタ)アクリロイル基を有するものであり、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートに代表されるポリ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕イソシアヌレートなどが例示される。イソシアヌレートは三官能のイソシアネート化合物であり、このうち一つのイソシアネートが、アルキル基(炭素数1〜20)またはフルオロアルキル基(炭素数1〜6)またはパーフルオロポリエーテル基(分子量1,000〜50,000)と水酸基を一分子中に含有する化合物と、ウレタン結合を形成していても良い。
【0063】
(b) エポキシ(メタ)アクリレートはエポキシ基に(メタ)アクリロイル基を付加したものであり、出発原料としてビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、脂環化合物を用いたものが一般的である。
【0064】
(c) ポリエステル(メタ)アクリレートは多価アルコールと多塩基酸からなるエステル樹脂に(メタ)アクリレートを付加したものである。多価アルコールは、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどであり、多塩基酸は、フタル酸、アジピン酸、マレイン酸、トリメリット酸、イタコン酸、コハク酸、テレフタル酸、アルケニルコハク酸などである。
【0065】
(d) ポリエーテル(メタ)アクリレートはジオールのポリエーテル樹脂に(メタ)アクリレートを付加したものであり、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが例示される。
【0066】
(e) シリコーン(メタ)アクリレートは、分子量1,000〜10,000のジメチルポリシロキサンの片末端、または、両末端を(メタ)アクリロイル基で変性したものであり、例えば、以下のものが例示される。
【0067】
【化8】

【0068】
(f) (メタ)アクリレートモノマーは、単官能あるいは多官能のアルキル(メタ)アクリレートや、500mPa s(25℃)以下の低粘度ポリエーテル(メタ)アクリレートであり、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、3−メチルブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチル−n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)(メタ)アクリルレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどが例示される。
【0069】
(g) エポキシ系モノマーは、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのフェノール類のグリシジルエーテル;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール類のグリシジルエーテル;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸などのカルボン酸のグリシジルエステル等のエポキシモノマーやこれらのオリゴマーもしくは脂環型エポキシドを挙げることができる。中でも、ビスフェノールAグリシジルエーテルモノマーもしくはオリゴマーを好ましく使用できる。具体的には、油化シェル社製造のエピコート828(分子量380)、エピコート834(分子量470)、エピコート1001(分子量900)、エピコート1002(分子量1,060)、エピコート1055(分子量1,350)、エピコート1007(分子量2,900)などが例示される。
【0070】
(h) ビニルエーテル系モノマーは、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、シス−1,1,3−トリメチル−5−ビニルオキシシクロヘキサン、トランス−1,1,3−トリメチル−5−ビニルオキシシクロヘキサン、1−イソプロピル−4−メチル−2−ビニルオキシシクロヘキサン、2−ビニルオキシ−7−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−6−オン、2−メチル−2−ビニルオキシアダマンタン、2−エチル−2−ビニルオキシアダマンタン、1,3−ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、1−ビニルオキシアダマンタノール、3−ビニルオキシ−1−アダマンタノール、1,3,5−トリス(ビニルオキシ)アダマンタン、3,5−ビス(ビニルオキシ)−1−アダマンタノール、5−ビニルオキシ−1,3−アダマンタンジオール、1,3,5,7−テトラキス(ビニルオキシ)アダマンタン、3,5,7−トリス(ビニルオキシ)−1−アダマンタノール、5,7−ビス(ビニルオキシ)−1,3−アダマンタンジオール、7−ビニルオキシ−1,3,5−アダマンタントリオール、1,3−ジメチル−5−ビニルオキシアダマンタン、1,3−ジメチル−5,7−ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、3,5−ジメチル−7−ビニルオキシ−1−アダマンタノール、1−カルボキシ−3−ビニルオキシアダマンタン、1−アミノ−3−ビニルオキシアダマンタン、1−ニトロ−3−ビニルオキシアダマンタン、1−スルホ−3−ビニルオキシアダマンタン、1−t−ブチルオキシカルボニル−3−ビニルオキシアダマンタン、4−オキソ−1−ビニルオキシアダマンタン、1−ビニルオキシ−3−(1−メチル−1−ビニルオキシエチル)アダマンタン、1−(ビニルオキシメチル)アダマンタン、1−(1−メチル−1−ビニルオキシエチル)アダマンタン、1−(1−エチル−1−ビニルオキシエチル)アダマンタン、1,3−ビス(1−メチル−1−ビニルオキシエチル)アダマンタン、1−(1−(ノルボルナン−2−イル)−1−ビニルオキシエチル)アダマンタン、2,5−ビス(ビニルオキシ)ノルボルナン、2,3−ビス(ビニルオキシ)ノルボルナン、5−メトキシカルボニル−2−ビニルオキシノルボルナン、2−(1−(ノルボルナン−2−イル)−1−ビニルオキシエチル)ノルボルナン、2−(ビニルオキシメチル)ノルボルナン、2−(1−メチル−1−ビニルオキシエチル)ノルボルナン、2−(1−メチル−1−ビニルオキシペンチル)ノルボルナン、3−ヒドロキシ−4−ビニルオキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、3,4−ビス(ビニルオキシ)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、3−ヒドロキシ−8−ビニルオキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、3,8−ビス(ビニルオキシ)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、3−メトキシカルボニル−8−ビニルオキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、3−メトキシカルボニル−9−−ビニルオキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、3−(ビニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、3−ヒドロキシメチル−8−ビニルオキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、3−ヒドロキシメチル−9−ビニルオキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、8−ヒドロキシ−3−(ビニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、9−ヒドロキシ−3−(ビニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、8−ビニルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,5−ジオン、4−ビニルオキシ−11−オキサペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン−10,12−ジオン、α−ビニルオキシ−γ,γ−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α,γ,γ−トリメチル−α−ビニルオキシ−γ−ブチロラクトン、γ,γ−ジメチル−β−メトキシカルボニル−α−ビニルオキシ−γ−ブチロラクトン、8−ビニルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン、9−ビニルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン、8,9−ビス(ビニルオキシ)−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン、4−ビニルオキシ−2,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3,6−ジオン、5−ビニルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、5−メチル−5−ビニルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、9−メチル−5−ビニルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、6−ビニルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン、6,8−ビス(ビニルオキシ)−3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン、6−ヒドロキシ−8−ビニルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン、8−ヒドロキシ−6−ビニルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン、及びこれらに対応するイソプロペニルエーテル類などが例示される。
【0071】
(i) オキセタン系モノマーは、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]エチル}ベンゼン(東亞合成製アロンオキセタンOXT-121)、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(東亞合成製アロンオキセタンOXT-101)などが例示される。
【0072】
本発明では、光架橋触媒(B)として光酸発生剤(B2)を用いる場合は、架橋剤に酸架橋剤を用いても良い。酸架橋剤は、一分子中に酸性基と架橋する複数(例えば2〜10)の反応基(例えば、カルボン酸、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、N-メチロール基、アルキルエーテル化したN-メチロール基、エポキシ基など)を有する化合物または、酢酸の多価金属塩であり、アミノ樹脂、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、酢酸アルミニウムなどが例示される。
【0073】
アミノ樹脂としては、メラミン系化合物、グアナミン系化合物、尿素系化合物等のアミノ基の一部もしくはすべてをヒドロキシメチル化した化合物、または該ヒドロキシメチル化した化合物の水酸基の一部もしくはすべてをメタノール、エタノール、n−ブチルアルコール、2−メチル−1−プロパノール等でエーテル化した化合物、例えば、ヘキサメトキシメチルメチロールメラミンであり、日本サイテックインダストリーズ製のアルキル型、メチロール型、イミノ型の各種アミノ樹脂などが挙げられる。
【0074】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル類、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテルなどの脂環式エポキシ樹脂、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート、ジグリシジルフタレート等のグリシジルエステル類、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール等のグリシジルアミン類、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
オキサゾリン化合物としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン等の重合性単量体の共重合体を挙げることができる。
【0075】
本発明では、酸架橋剤を熱架橋剤として用いても良い。熱架橋剤とはポストベーク時に膜の架橋性を向上させる目的で配合される架橋剤である。熱架橋剤の架橋密度を向上させるためにクロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸およびケイ皮酸のような酸無水物を併用しても良い。
本発明の架橋剤に1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトブチレート)のような多官能チオールを併用すると、硬化速度が向上する。多官能チオールの量は、たとえば、架橋剤100重量部に対して0.1〜20重量部、例えば1〜10重量部であってよい。
本発明の架橋剤は炭化水素基の一部または全部の水素がフッ素に置換されていてもよい。非フッ素系の架橋剤はフッ素系ポリマーよりも表面に偏析しにくいので、フッ素系ポリマーの下に存在し最表面のフッ素系ポリマーと十分に架橋できないことがある。このことが現像後の撥液性に悪影響を及ぼすことがある。架橋剤もフッ素系にすることで、表面にフッ素系ポリマーと架橋剤が共存し、最表面で架橋でき、現像時の溶解を防止できる効果がある。
【0076】
架橋剤の量は、フッ素系ポリマー(A)100重量部に対して、1〜100重量部、特に1〜20重量部であることが好ましい。
【0077】
●アルカリ可溶性ポリマー(E)
本発明の撥液レジスト組成物には必要に応じてアルカリ可溶性ポリマー(E)を併用しても良い。アルカリ可溶性ポリマー(E)は、カルボキシル酸、水酸基、スルホン酸などのアルカリで中和すると水溶性の塩を生成する官能基を有するポリマーを意味する。アルカリ可溶性ポリマー(E)は非フッ素系ポリマーであることが好ましい。非フッ素系ポリマーは、例えば、水素添加により一部環状アルコール構造に変換したフェノール樹脂、ポリビニルフェノールのOH基の一部をアルキル基で保護した樹脂、スチレンと共重合したポリビニルフェノール樹脂、(メタ)アクリレートモノマー類と共重合したポリビニルフェノール樹脂、更にカルボキシ基を有する樹脂、水酸基またはカルボン酸基含有の(メタ)アクリレート共重合体などである。特許第2820553号、特許第3148429号、特開2004-35685号公報に記載のフルオレン骨格を有するものは特に好ましい。
アルカリ可溶性ポリマー(E)の量は、フッ素系ポリマー(A)1重量部に対して、0.1〜2000重量部、例えば20〜1000重量部、特に100〜500重量部であってよい。
【0078】
●炭素数8〜12のフルオロアルキル基を有するモノマー、および、ポリマー
本発明の撥液レジスト組成物には必要に応じて炭素数8〜12のフルオロアルキル基(例えば、パーフルオロアルキル基)を有するモノマー(例えば、パーフルオロオクチルエチルアクリレートなどのフルオロアルキル(メタ)アクリレート)、および、このモノマーを繰り返し単位とするポリマーを配合しても良い。フルオロアルキル基を有するモノマーは、Rfの炭素数が8〜12であり、Xが水素原子またはメチル基(Xはα置換されていてもよい。)である前記一般式(I)で示されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
炭素数8〜12のフルオロアルキル基を有するモノマー、および、ポリマーの量は、フッ素系ポリマー(A)100重量部に対して、20重量部以下、例えば1〜10重量部、特に1〜5重量部であってよい。
【0079】
●顔料
本発明の撥液レジスト組成物には必要に応じて各種顔料を添加しても良い。例えば、黒色顔料としてはカーボンブラック、グラファイト、チタンブラック、酸化鉄、硫化ビスマス、ペリレンブラックなどである。また、黒色以外の顔料として、例えば、アゾレーキ系、不溶性アゾ系、フタロシアニン系、キナクドリン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、ベリノン系、アントラキノン系、ペリレン系等のもの及びこれらの混合物、ミロリブルー、酸化鉄、コバルト系、マンガン系、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、ピリジアン、エメラルドグリーン、コバルトグリーン及びこれらの混合物が挙げられる。これらの顔料については、塗膜の透明性を維持しつつ塗膜を着色するために、可視光の波長の下限である0.4μm以下の粒子径に分散されることが好ましく、実用上より好ましくは0.2〜0.3μmの平均粒子径を有するものである。
顔料の量は、撥液レジストの固形分 100重量部に対して、100重量部以下、例えば10〜70重量部、特に30〜60重量部であってよい。
【0080】
●酸捕捉剤
本発明の撥液レジスト組成物には必要に応じて酸捕捉剤を添加することにより、膜中で酸発生剤から発生した酸の拡散を制御しても良い。酸捕捉剤としては、塩基性化合物が好ましく、アミン(特に、有機アミン)、塩基性のアンモニウム塩、塩基性のスルホニウム塩などが用いられる。昇華やレジスト性能を劣化させないものであればよい。これらの酸捕捉剤の中でも、有機アミンが画像性能が優れる点で好ましい。酸捕捉剤の具体例としては、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、4−ジメチルアミノピリジン、1−ナフチルアミン、ピペリジン、ヘキサメチレンテトラミン、イミダゾール類、ヒドロキシピリジン類、ピリジン類、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ピリジニウムp−トルエンスルホナート、2,4,6−トリメチルピリジニウムp−トルエンスルホナート、テトラメチルアンモニウムp−トルエンスルホナート、及びテトラブチルアンモニウムラクテート、トリエチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。これらの中でも、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、4−ジメチルアミノピリジン、1−ナフチルアミン、ピペリジン、ヘキサメチレンテトラミン、イミダゾール類、ヒドロキシピリジン類、ピリジン類、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の有機アミンが好ましい。
酸捕捉剤の量は、光酸発生剤(B2)100重量部に対して、20重量部以下、例えば0.1〜10重量部、特に0.5〜5重量部であってよい。
【0081】
●その他の添加剤
本発明の撥液レジスト組成物には必要に応じてその他の各種添加剤が用いられる。例えば、膜の平滑性を向上させるためのフッ素系、シリコーン系、炭化水素系界面活性剤や、膜の密着性を向上させるためのシランカップリング剤やチタネートカップリング剤、その他、暗反応抑制のための熱重合禁止剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤などが挙げられる。
その他の添加剤の量は、撥液レジスト固形分100重量部に対して、30重量部以下、例えば 0.01〜20重量部、特に0.1〜10重量部であってよい。
【0082】
●基材
本発明の基板に用いる基材は、シリコンウエハ、合成樹脂、ガラス、金属、セラミックなどである。
【0083】
合成樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよく、例えば、ポリエチレン、ポロプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エボキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば2層以上の積層体として)用いることができる。合成樹脂製の基板を用いれば、軽量、透明、安価、曲げられるなどの特徴を基板に付与できる。
【0084】
ガラスとしては、例えば、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。
金属としては、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、白金等が挙げられる。
セラミックとしては、酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ケイ素、ジルコニア、チタン酸バリウム)、窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素)、硫化物(例えば、硫化カドミウム)、炭化物(例えば、炭化ケイ素)等が挙げられ、これらの混合物を使用してよい。
【0085】
いずれの基板を用いる場合でも、プラズマ処理やUVオゾン処理などの前処理を行ってもよい。これらの前処理により、基板表面に親液性の官能基(例えば、OH基、COOH基、NH基)を導入できる。
パターン表面の形状は、最終的に製造する素子の目的に応じて適当なものを選択すれば良く、円、四角形、三角形、直線、曲線などが例示される。互いのパターンは接していても離れていても良い。例えば、ライン&スペースの場合、ライン幅およびライン間隔は、0.5〜100μm、例えば、1〜20μmであってよい。ライン幅は等間隔であってもよいし、幅が変化してもよい。ラインの形状は直線でも曲線でもよい。
【0086】
これら基材の表面に、撥液レジスト組成物を液相で均一に適用する。処理方法は、膜厚を制御できるものであれば公知の塗布法を採用することができる。例えば、ロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、フローコート法、バーコート法、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法などが採用でき、基材の種類、形状、生産性、膜厚の制御性などを考慮して選択できる。例えば、撥液レジスト組成物をスピンコート法で基板に塗布した後、70〜150℃で1秒間〜10分間(例えば110℃で1分間)加熱して撥液レジスト組成物の膜から溶媒を乾燥することによって行える。この簡便なプロセスで膜の表面にフッ素系ポリマー(A)層が形成される。撥液レジスト組成物膜の厚さは、一般に50nm〜100μm、例えば100nm〜10μm、特に500nm〜5μmであってよい。
【0087】
次にフォトリソグラフィー法を用いて、親液領域の対水接触角が50°以下となるようにパターニングを行う。表面自由エネルギーが異なる複数の領域[(1)対水接触角80°以上の領域、特に対水接触角100°以上の領域と、(2)対水接触角50°以下の領域、特に対水接触角30°以下の領域]から構成されるパターン基板を調製する。領域(1)と領域(2)は隣接する。
撥液レジスト組成物の膜をフォトリソグラフィー法でパターニングするためには、電磁波を照射する。
【0088】
●電磁波
本発明で膜に照射する電磁波は、波長10〜400nmの光であり、紫外線(UV, 200〜400nm)、真空紫外光(VUV, 150〜200nm)、極端紫外線(EUV, 10〜120nm)などが例示される。VUVを用いる場合、光源は波長172nmのVUVを発光できる市販のキセノンエキシマランプが使用できる。またUVを用いる場合、光源は水銀キセノンランプ、水銀ランプ、キセノンランプ、キセノンエキシマランプが使用できる。さらに、248nmのKrFエキシマレーザー、193nmのArFエキシマレーザー、157nmのF2エキシマレーザーを使用しても良い。露光量は1〜10,000mJ/cm2、特に1〜1000mJ/cm2であってよい。
また、光以外に、波長0.1〜10nmのX線、波長0.001〜0.01nmの電子線、波長10〜300nmのレーザー光線の電磁波を用いてもよい。
【0089】
光やX線でフォトリソグラフィーを行う場合は、フォトマスクを介して膜に光を照射しても良いし、米国テキサス・インスツルメンツ社が開発したDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)のようなMicro Electro Mechanics(MEMS)を使用して、マスクレスでパターン状に光を照射しても良い。DMDは10μmスケールの可動式の鏡(マイクロミラー)48万〜131万個を格子状に配列したデバイスであり、このミラーにランプ光を反射させて膜にパターン状に光を照射する。
【0090】
一方、電子線、レーザー光線では、市販の描画装置を用いてフォトマスクなしで直接、均一に表面処理された基板にパターンを描画する。電子線の露光量はラスター描画では10〜10,000μC/cm2、特に100〜1,000μC/cm2、ショット描画では100〜100,000fC/dot、特に1,000〜10,000fC/dotであってよい。
【0091】
●現像
本発明では、上記の電磁波を照射後に、溶媒に対する溶解性のコントラストを利用して、溶解可溶な領域を除去する工程、いわゆる「現像」を行う。現像に使用される溶媒(現像液)は、フッ素系ポリマーの製造に用いた溶媒やアルカリ水溶液を用いる。アルカリ水溶液は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、およびアンモニア水などの無機アルカリ水溶液や、エチルアミン、n−プロピルアミンなどの第一級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミンなどの第二級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、N−メチルピロリドンなどの第三級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリンなどの第四級アンモニウム塩;ピロール、ピペリジン等の環状アミン類のアルカリ類からなる有機アルカリ水溶液を用いる。これらは単独で用いても良いし二種類以上を混合してもよい。また、界面活性剤を添加してもよい。
現像方法は、浸漬法、液盛り法、シャワー法、パドル法、超音波法などで10秒〜10分の範囲で行ってよい。
【0092】
本発明では、撥液−親液パターンの濡れのコントラストを強調するために、パターン形成後に、プラズマ処理やUVオゾン処理などの処理を行ってもよい。また、これらの処理の後に熱処理を行ってもよい。本発明の撥液レジスト組成物を用いて形成した撥液-親液パターンの撥液領域の接触角は、対水接触角80°以上、特に100°以上、対n-ヘキサデカン接触角50°以上、特に55°以上、対プロピレングリコールモノメチルエーテル接触角30°以上、特に40°以上である。一方、親液領域の接触角は対水接触角50°以下、特に30°以下、対n-ヘキサデカン接触角20°以下、特に10°以下、対プロピレングリコールモノメチルエーテル接触角10°以下、特に5°以下である。
【0093】
●撥液-親液パターンを形成した基板に対する機能性化合物溶液の塗布
本発明では、パターンを形成した基板に機能性化合物の溶液または分散液を塗布する。機能性化合物溶液を塗布する方法は、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、印刷法、転写法、インクジェット法[P.Calvert, Chem.Mater., 13, 3299(2001)]、バーコード法、キャピラリー法などが挙げられる。
【0094】
機能性化合物の層は、パターン表面の上に、機能性化合物を溶媒に溶解した溶液を塗布し、溶媒を除去することによって形成することができる。表面自由エネルギーが異なる複数の領域に機能性化合物溶液を塗布すると、機能性化合物溶液は、対水接触角80°以上、特に100°以上の領域を避けて、対水接触角50°以下、特に30°以下の領域のみに付着する。こうして、機能性化合物の層が基板にパターン化された親液領域上に形成される。
【0095】
機能性化合物の例は、半導体化合物、導電性化合物、ディスプレイ用画素を形成するための色素または顔料、フォトクロミック化合物、サーモクロミック化合物、レンズ材料、生命科学薬剤などである。
半導体化合物としては、有機系が好ましく、例えば、ペンタセン誘導体、ポリチオフェン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリp-フェニレンビニレン、層状ヘロブスカイト化合物などが挙げられる。
導電性化合物としては、室温で102 S/cm 以上の導電性を有するものである。例えば、有機系ではポリアセチレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール、ポリp-フェニレンビニレン、ポリアニリンなどが挙げられる。これらの化合物をドーピングすることにより導電性を向上しても良い。金属系では金、銀、銅などのナノ粒子を液体に分散したものが挙げられる。
顔料は前述の撥液レジスト組成物中に配合するものと同様である。
【0096】
フォトクロミック化合物としては、有機系が好ましく、例えば、アゾベンゼン誘導体、スピロピラン誘導体、フルギド誘導体、ジアリールエテン誘導体などが挙げられる。
サーモクロミック化合物とは、温度変化に伴って物質の色が可逆的に変化する化合物の総称であり、例えば、サリチリデンアニリン類、ポリチオフェン誘導体、テトラハロゲノ錯体、エチレンジアミン誘導体錯体、ジニトロジアンミン銅錯体、1,4−ジアザシクロオクタン(daco)錯体、ヘキサメチレンテトラミン(hmta)錯体、サルチルアルデヒド(salen)類錯体などが挙げられる。
機能性化合物の層の厚さは、0.1nm〜100μm、好ましくは0.5nm〜10μm、例えば、1nm〜1μmであってよい。
【0097】
機能性化合物を溶解する溶媒の例は、有機溶媒(特に油溶性有機溶媒)、水溶性有機溶媒、および水である。機能性化合物が水に難溶性の場合、有機溶媒(特に、油溶性有機溶媒)または水溶性有機溶媒に溶解させる必要がある。
本発明において、機能性化合物を溶解する溶媒は、表面張力40mN/m以下、例えば30mN/m以下である有機溶媒であることが好ましい。表面張力が40mN/m以下であることによって、溶液がパターン形状にそって容易に濡れ拡がることができる。
【0098】
有機溶媒としては、アルコール、エステル、ケトン、エーテル、炭化水素(例えば、脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素)等が挙げられ、有機溶媒はフッ素化されていてもされていなくてもどちらでも良い。有機溶媒の具体例は、パーフルオロデカリン、ハイドロフルオロエーテル、HCFC225、クロロホルム、1,1,2,2-テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、酢酸ブチル、ヘキサン、イソペンタン、トルエン、キシレン、アニソール、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、メシチレン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。また、水溶性有機溶媒の具体例は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート、乳酸エチル、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノールなどが挙げられる。
水を用いる場合は、界面活性剤や上記の水溶性有機溶媒などを添加して、表面張力を低下させてもよい。
【0099】
機能性化合物の溶液における機能性化合物の濃度は、0.1〜30重量%、例えば、1〜20重量%であってよい。
溶媒の除去は、蒸発などによって行える。溶媒の除去は、基材を、加熱(例えば、60〜200℃)することによって、行える。溶媒除去は、減圧(例えば、0.01〜100Pa)下で行ってもよい。
【0100】
本発明の基板は、電子、光学、医療、化学分析などの幅広い用途のデバイスに用いることが可能である。例えば、電子デバイスとしては、トランジスタ、メモリ、発光ダイオード(EL)、レーザー、太陽電池などの集積回路に利用できる。これらのデバイスからフレキシブルディスプレイ、無線タグ、ウエアラブルなコンピュータなどが製造される。また、光学デバイスとしては、液晶ディスプレイのカラーフィルタや有機ELなどのディスプレイ用画素、光メモリ、光変調素子、光シャッター、第二次高調波(SHG)素子、偏光素子、フォトニッククリスタル、レンズアレイなどに、医療デバイスとしては、DNAアレイ、タンパク質アレイなどのバイオチップなどに利用できる。化学分析デバイスとしては、微小化学プラント、微小化学分析システムなどのマイクロ化学チップに利用できる。
【0101】
●ディスプレイ用カラーフィルタのブラックマトリクスの撥液化
本発明の撥液レジスト組成物は、ディスプレイ用カラーフィルタをインクジェット法で製造する際に必要となるブラックマトリクスの撥液化に極めて有用である。インクジェット法はカラーフィルタを低コストで製造するための技術として期待されているが、インクジェット技術単独ではブラックマトリクス内(画素部)に赤、緑、青のインクを正確に印刷するだけの着弾精度が不足している。そのため、ブラックマトリクスの上部を撥液化して、誤って外れたインク液滴を画素内に引き戻す必要がある。また、画素の膜厚を稼ぐために赤、緑、青のインクがブラックマトリクスの高さを超える量まで注入される場合には、ブラックマトリクスの上部の撥液化が必須である。前者の撥液性はインク溶液の転落角が、後者の撥液性は静的接触角が指標となる。
フッ素系ポリマーを含有する従来の撥液レジスト組成物には、撥液性と、感光性組成物を形成する他素材との相溶性を両立できるものではなかったが、これに対し、本発明の撥液レジスト組成物は極めて高い撥液性と相溶性を両立している。
【0102】
以下に、本発明の撥液レジスト組成物を用いてブラックマトリクスを撥液化するための方法について説明する。
・方法1
本発明の撥液レジスト組成物中に黒色の顔料を分散させたものを用いて、フォトリソグラフィー法により、親液性透明基板上に撥液化されたブラックマトリクスを形成する方法である。このときの撥液レジスト組成物の例としては、例えば、
フッ素系ポリマー(A) 0.1-20重量%
アルカリ可溶性ポリマー 0-20重量%
架橋剤 1-10重量%
光架橋触媒(B) 0.5-5重量%
黒色顔料 5-20重量%
溶媒(C) 残部(合計100重量%とする)
が挙げられる。
【0103】
・方法2
親液性透明基板上に均一に形成された感光性樹脂ブラック層の上に、本発明の撥液レジスト組成物を均一に塗布した後、フォトリソグラフィー法により、親液性透明基板上に撥液化されたブラックマトリクスを形成する方法である。このときの撥液レジスト組成物の例としては、例えば、
フッ素系ポリマー(A) 0.1-20重量%
アルカリ可溶性ポリマー 0-20重量%
架橋剤 1-10重量%
光架橋触媒(B) 0.5-5重量%
溶媒(C) 残部(合計100重量%とする)
が挙げられる。
【0104】
・方法3
方法1,2は液状の撥液レジスト組成物をカラーフィルタ用の基板に直接塗布してブラックマトリクスを形成する方法である。一方、文献「"LCD用カラーフィルター作製システム「トランサー」の開発", Fuji film Research & Development, No.44, p-25(1999)」に記載されているように、予めポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に感光性ドライフィルムを作製しておき、それをカラーフィルタ用の基板に転写する方法でブラックマトリクスを形成する場合にも、本発明のフッ素系ポリマーが適用できる。この場合、感光性樹脂層あるいは酸素遮断層にフッ素系ポリマーを添加する。感光性樹脂層では方法1と同様の処方を用い、酸素遮断層では20〜30重量%のポリビニルアルコール溶液中にフッ素系ポリマーを0.1〜5重量%配合したものを用い、それらを塗布、乾燥する。
【0105】
これらのいずれかで撥液化されたブラックマトリクスを有する透明基板上に、カラーフィルタ用の赤、緑、青の顔料分散液をインクジェット法により塗布し、溶媒を除去することでカラーフィルタが極めて低コストで製造できる。
【実施例】
【0106】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0107】
レジスト組成物の相溶性の評価
レジスト組成物から溶剤のみを除去した組成物の外観を五段階で評価した。相溶性が良好なものから順に
◎>○>△>×>××
と評価した。
【0108】
現像性の評価
マスクアライナーで露光後に現像したパターンを光学顕微鏡で観察することにより、現像性を五段階で評価した。ここで言う「現像性」とは、現像後に残ったUV露光領域のパターンの形状、UV未露光領域の膜の除去性の総合評価であり、現像性が良好なものから順に◎>○>△>×>××
と評価した。
【0109】
カラーパターンの分裂性の評価
形成した親液ー撥液パターン上にカラーインクをインクジェット法で製膜した後のカラーパターンの形状を光学顕微鏡で観察することにより、カラーパターンの分裂性を五段階で評価した。分裂性が良好なものから順に
◎>○>△>×>××
と評価した。
【0110】
静的接触角と転落角は全自動接触角計DropMaster700(協和界面科学製)を用いて次の方法で測定した。
静的接触角と転落角の測定
静的接触角は、水平に置いた基板にマイクロシリンジから水、n-ヘキサデカン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)またはブチルカルビトール(BCA)を2μL滴下し、滴下1秒後の静止画をビデオマイクロスコープで撮影することにより求めた。
また、転落角は以下の方法で求めた。水平に置いた基板にマイクロシリンジから、水の場合は20μL、n-ヘキサデカンの場合は5μL滴下し、基板を毎秒2°の速度で傾斜させ、液滴が転落し始めるまでを、ビデオマイクロスコープで動画として記録した。その動画を再生し、液滴が転落し始める角度を転落角とした。
【0111】
製造例1(Rf(C4)α-Clアクリレート/GMA/HEMA=55/35/10(重量比)共重合体)
還流冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた四つ口フラスコ中にフルオロアクリレート(略称:FA)としてCH=C(Cl)COO−CHCH(略称:Rf(C4)α-Clアクリレート)27.5g、グリシジルメタクリレート(略称:GMA)17.5g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(略称:HEMA)5g、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン(略称:LSH)4.8gおよび溶媒としてプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(略称:PGMEA)103gを入れ、70℃に加熱後、30分間窒素気流下で撹拌した。これに重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリル(略称:AIBN)0.4gを添加し、18時間重合した。反応液中に残存するRf(C4)α-Clアクリレートモノマーをガスクロマトグラフィーで分析することにより、転化率が95%以上であることを確認した。固形分濃度を測定した結果33重量%であった。得られた反応液をヘキサンで沈殿、真空乾燥して、フッ素系ポリマーを単離した。得られたフッ素系ポリマーの分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量は6,500であった。
【0112】
製造例2(製造例1の共重合体のHEMA0.25当量にAOIを反応させた共重合体)
還流冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた四つ口フラスコ中に、製造例1で製造したままのRf(C4)α-Clアクリレート/GMA/HEMA=55/35/10(重量比)共重合体溶液25g、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(略称:AOI)0.227gおよび全組成物に対して50ppm(重量)のヒドロキノンモノメチルエーテル(重合禁止剤)を入れ、窒素気流下で45℃、1時間反応することによりフッ素系ポリマー中に不飽和基を導入した。反応液中の残存AOIをガスクロマトグラフィーで分析することにより、転化率が95%以上であることを確認した。得られた反応液をヘキサンで沈殿、真空乾燥して、フッ素系ポリマーを単離した。得られたフッ素系ポリマーの分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量は6,400であった。
【0113】
製造例3(PFPE(C8)メタクリレート/GMA/HEMA=55/35/10(重量比)共重合体)
製造例1のRf(C4)α-Clアクリレート27.5gをC3F7-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(CH3)=CH2(略称PFPE(C8)メタクリレート)27.5gに置き換え、LSH4.8gを4.3gに置き換える以外は製造例1と同様の方法でフッ素系ポリマーを調製した。得られたフッ素系ポリマーの分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量は5,900であった。
【0114】
製造例4(製造例3の共重合体のHEMA0.25当量にAOIを反応させた共重合体)
製造例2のRf(C4)α-Clアクリレート/GMA/HEMA=55/35/10(重量比)共重合体をPFPE(C8)メタクリレート/GMA/HEMA=55/35/10(重量比)共重合体に置き換える以外は製造例2と同様の方法で不飽和基を導入した。得られたフッ素系ポリマーの分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量は5,900であった。
【0115】
製造例5(PFPE(C8)メタクリレート/MAA/GMA/HEMA=45/15/25/15(重量比)共重合体)
還流冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた四つ口フラスコ中にPFPE(C8)メタクリレート22.5g、メタクリル酸(略称:MAA)7.5g、GMA12.5g、HEMA7.5g、LSH7.5gおよび溶媒のPGMEA131gを入れ、70℃に加熱後、30分間窒素気流下で撹拌した。これにAIBN0.6gを添加し、18時間重合した。反応液中に残存するα-Clモノマーをガスクロマトグラフィーで分析することにより、転化率が95%以上であることを確認した。固形分濃度を測定した結果33重量%であった。得られた反応液をヘキサンで沈殿、真空乾燥して、フッ素系ポリマーを単離した。得られたフッ素系ポリマーの分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量は5,300であった。
【0116】
製造例6(製造例5の共重合体のHEMA0.25当量にAOIを反応させた共重合体)
製造例2のRf(C4)α-Clアクリレート/GMA/HEMA=55/35/10(重量比)共重合体をPFPE(C8)メタクリレート/MAA/GMA/HEMA=45/15/25/1(重量比)共重合体に置き換え、AOI 0.227gを0.336gに置き換える以外は製造例2と同様な方法でAOI付加反応を行い、フッ素系ポリマーを調整した。得られたフッ素系ポリマーの分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量は5,000であった。
【0117】
製造例7(PFPE(C6)メタクリレート/MAA/GMA/HEMA=45/15/25/15(重量比)共重合体)
製造例5のC3F7-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(CH3)=CH2(略称:PFPE(C8)メタクリレート)27.5gをCF3-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(CH3)=CH2(略称:PFPE(C6)メタクリレート)27.5gに置き換え、LSH7.5gを7.7gに置き換える以外は、製造例5と同様な方法でフッ素系ポリマーを調製した。得られたフッ素系ポリマーの分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量は6,000であった。
【0118】
比較製造例1(Rf(C4)α-Clアクリレート/iBMA/HEMA=55/35/10(重量比)共重合体)
還流冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた四つ口フラスコ中にRf(C4)α-Clアクリレート27.5g、イソボルニルメタクリレート(略称:iBMA)17.5g、HEMA5g、LSH3.9g、溶媒のプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(略称:PGMEA)101gを入れ、70℃に加熱後、30分間窒素気流下で撹拌した。これにAIBN0.4gを添加し、18時間重合した。反応液中に残存するα-Clモノマーをガスクロマトグラフィーで分析することにより、転化率が95%以上であることを確認した。固形分濃度を測定した結果33重量%であった。得られた反応液をヘキサンで沈殿、真空乾燥して、フッ素系ポリマーを単離した。得られたフッ素系ポリマーの分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量は5,500であった。
【0119】
比較製造例2(PFPE(C8)メタクリレート/MAA/iBMA=60/15/25(重量比)共重合体)
還流冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた四つ口フラスコ中にPFPE(C8)メタクリレート30g、MAA7.5g、iBMA12.5g、LSH4.0g、溶媒のプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(略称:PGMEA)101gを入れ、70℃に加熱後、30分間窒素気流下で撹拌した。これにAIBN0.4gを添加し、18時間重合した。反応液中に残存するα-Clモノマーをガスクロマトグラフィーで分析することにより、転化率が95%以上であることを確認した。固形分濃度を測定した結果、33重量%であった。得られた反応液をヘキサンで沈殿、真空乾燥して、フッ素系ポリマーを単離した。得られたフッ素系ポリマーの分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量は5,500であった。
【0120】
比較製造例3(Rf(C4)α-Clアクリレート/MAA/GMA/HEMA=45/15/25/15(重量比)共重合体)
製造例5のC3F7-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(CH3)=CH2(略称:PFPE(C8)メタクリレート)27.5gをRf(C4)α-Clアクリレート27.5gに、LSH7.5gを6.0gに置き換える以外は製造例5と同様な方法でフッ素系ポリマーを調製した。得られたフッ素系ポリマーの分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量は7,000であった。
【0121】
比較製造例4(Rf(C4)α-Clアクリレート/GMA/HEMA=55/35/10(重量比)共重合体)
還流冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた四つ口フラスコ中に、製造例1で製造したままのRf(C4)α-Clアクリレート/MAA/GMA/HEMA=45/15/25/15(重量比)共重合体溶液25g、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(略称:AOI)0.35g、全組成物に対して50ppm(重量)のヒドロキノンモノメチルエーテル(重合禁止剤)を入れ、窒素気流下で45℃ 1時間反応することによりフッ素系ポリマー中に不飽和基を導入した。反応液中の残存AOIをガスクロマトグラフィーで分析することにより、転化率が95%以上であることを確認した。得られた反応液をヘキサンで沈殿、真空乾燥して、フッ素系ポリマーを単離した。得られたフッ素系ポリマーの分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量は7,500であった。
【0122】
製造例8(アルカリ可溶性ポリマー:MAA/(HEMA+AOI)/iBMA=30/30/40(重量比)共重合体)
製造例1と同様の方法で、MAA6.4g、HEMA6.4g、iBMA19.2g、2−メルカプトエタノール1.6g、PGMEA78gを重合して、MAA/HEMA/iBMA=30/30/40(重量比)共重合体を得た。重量平均分子量は6,400であった。製造例2と同様に、上記で製造したままのフッ素系ポリマーに共重合されているHEMAの水酸基に対して0.9当量のAOIを反応させてポリマー中に不飽和基を導入した。得られたポリマーの分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量は6,000であった。
【0123】
以上の製造例1〜7および比較製造例1〜4のフッ素系ポリマーの製造条件を表1にまとめて示す。また、得られたフッ素系ポリマーのフッ素濃度(重量%)、酸価および重量平均分子量を表2に示す。
【0124】
【表1】

FA:フルオロアクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシメタクリレート
MAA:メタクリル酸
iBMA:イソボルニルメタクリレート
AOI:2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート
LSH:ラウリルメルカプタン
【0125】
実施例1および比較例1
表1に示す様に、製造例1で得たフッ素系ポリマーを用いる実施例1、または比較製造例1で得たフッ素系ポリマーを用いる比較例1において、フッ素系ポリマー各1重量%、製造例8のアルカリ可溶性ポリマー 15重量%、ラジカル重合架橋剤ペンタエリスリトールテトラアクリレート 8重量%、IRGACURE−907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.8重量%、溶媒のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(略称:PGMEA)75.2重量%の溶液を調製した。この溶液を、濃硫酸/過酸化水素水(=3/7容量比)混合溶液に一時間浸漬することにより親水化したガラス基板にスピンコートして、基板上に膜厚(溶媒を除いた膜厚)2μmの膜を作製した。プレベークとして90℃ 3分間加熱後、この膜にライン/スペース=10μm/10μmのフォトマスクを介して、UV露光装置マスクアライナーES20d[(株)三永電機製作所・(株)ナノテック製]から紫外線を積算光量200mJ/cmの条件で照射した。次に、アルカリ現像液P3 disperse M(ヘンケルジャパン製)の0.5重量%水溶液に1分間浸漬することにより現像した後、水洗、乾燥し、ポストベークとして200℃で10分加熱して、撥液領域と親液領域から成るパターン基板を作製した。
【0126】
上記の電磁波硬化組成物をスピンコートした膜に、フォトマスクを介さずに全面に紫外線を積算光量200mJ/cmの条件で照射して、均一撥液膜を調製した。得られた均一撥液領域の接触角を測定した結果(表2)、実施例1および比較例1は酸性基を含んでいないにも拘わらず、良好な現像性と撥液性を示した。また、実施例1および比較例1のPGMEAに対する接触角はそれぞれ46±0.6°(平均値±標準偏差)、39±1.0°であり、実施例1は良好な撥液性を発現するのに対し、比較例1は撥液性が低下した。これは比較製造例1(比較例1)のフッ素系ポリマーがグリシジルメタクリレート(略称GMA)を含まないためにレジストとの架橋が十分でなかったためであると推定される。
【0127】
実施例5および比較例3
表2に示す様に、実施例1のフッ素系ポリマーを、製造例5のものに置き換えた実施例5、および製造比較例3のものに置き換えた比較例3において、各電磁波硬化組成物をスピンコートした膜に、フォトマスクを介さず全面に紫外線を積算光量200mJ/cmの条件で照射して均一撥液膜を調製した。得られた均一撥液領域の接触角を測定した結果、実施例5および比較例3のPGMEAに対する接触角はそれぞれ51.5±0.9(平均値±標準偏差)、42.8±0.4°であった(表2)。実施例5は50°を超える高い対PGMEA静的接触角を示した。この結果より、Rf(C4)アクリレートをPFPE(C8)メタクリレートに置き換えると共重合体の撥液性が劇的に向上し、高いレベルの撥液性と現像性の両立が可能であることが判る。
【0128】
実施例2〜4、6〜7、および比較例2
実施例1のフッ素系ポリマーを表2に示す製造例のものに置き換える以外は、実施例1に準じて均一撥液膜を調整して、均一撥液領域の接触角を測定した。実施例2〜4、6〜7、および比較例2について得られた結果を表2に示す。
【0129】
【表2】

【0130】
実施例12および比較例7
表3に示す様に、製造例5で得たフッ素系ポリマーを用いる実施例12、または比較製造例3で得たフッ素系ポリマーを用いる比較例7のそれぞれにおいて、各フッ素系ポリマー20重量%、および溶媒プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(略称:PGMEA)80重量%の溶液を調製した。この溶液を、濃硫酸/過酸化水素水(=3/7容量比)混合溶液に一時間浸漬することにより親水化したガラス基板にスピンコートして、基板上に膜厚(溶媒を除いた膜厚)2μmの膜を作製した。 この膜を110℃ 3分間加熱(ベーク)して均一撥液膜を調整した。調製した均一撥液領域の接触角を測定した結果、実施例8および比較例5の対BCA静的接触角は、それぞれ64.3±0.2(平均値±標準偏差)および56.8±0.5であった。レジストに混合しないフッ素系ポリマー単独膜の対BCA接触角においてもPFPE(C8)メタクリレート共重合体に優位性が認められた。
【0131】
実施例8〜11、13〜14、および比較例5、6、8
実施例12のフッ素系ポリマーを表3に示す製造例のものに置き換える以外は、実施例12に準じて実施例8〜11、13〜14、および比較例5、6、8を行った。得られた結果を表3に示す。
【0132】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の撥液レジスト組成物は、フォトリソグラフィー法により基板上に親液領域および撥液領域からなるパターン表面を形成し、例えば、電子デバイスとしては、トランジスタ、メモリ、発光ダイオード(EL)、レーザー、太陽電池などの集積回路に利用でき、光学デバイスとしては、液晶ディスプレイのカラーフィルタや有機ELなどのディスプレイ用画素、光メモリ、光変調素子、光シャッター、第二次高調波(SHG)素子、偏光素子、フォトニッククリスタル、レンズアレイなどに利用でき、医療デバイスとしては、DNAアレイ、タンパク質アレイなどのバイオチップなどに利用できる。特に、ディスプレイ用カラーフィルタのブラックマトリクスの撥液化に有利に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥液レジスト組成物であって、
(a1)炭素数4〜8のフルオロアルキル基(炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい)を有するα位置換アクリレート 100重量部
[α位の置換基は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のフルオロアルキル基、置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のフェニル基、または炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状アルキル基である。]
(a2)エポキシ基含有モノマー 5〜80重量部
(a3)(RO)
[Rは−(CH)−または−(CH)−、Rは水素またはメチル基、nは1〜10である。]で示されるアルキレンオキサイド基を含有するモノマー 10〜40重量部
を繰り返し単位とするフッ素系ポリマー(A1)を含有し、フッ素系ポリマー(A1)のフッ素濃度が15〜40重量%および重量平均分子量が3,000〜20,000である撥液レジスト組成物。
【請求項2】
フッ素系ポリマー(A1)の(a3)のアルキレンオキサイド基末端の水酸基にイソシアネート基含有不飽和化合物が反応させてあることを特徴とする請求項1に記載の撥液レジスト組成物。
【請求項3】
フルオロアルキル基が炭素数4〜6のパーフルオロアルキル基である請求項1および2のいずれか1つに記載の撥液レジスト組成物。
【請求項4】
撥液レジスト組成物であって、
(a1−2)パーフルオロポリエーテル基を有する式(1)
CmF2m+1-[OCF(CF3)CF2]-OCF(CF3)CH2OCOC(X)=CH2 (m=1〜3) 式1
[式中、α位の置換基Xは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のフルオロアルキル基、置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のフェニル基、または炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状アルキル基である。]で表わされるα位置換アクリレート 100重量部
(a2)エポキシ基含有モノマー 5〜60重量部
(a3)(RO)
[Rは−(CH)−または−(CH)−、Rは水素またはメチル基、nは1〜10である。]で示されるアルキレンオキサイド基を含有するモノマー 10〜40重量部
(a4)不飽和有機酸 5〜45重量部
を繰り返し単位とするフッ素系ポリマー(A2)を含有し、フッ素系ポリマー(A2)のフッ素濃度が15〜40重量%、酸価が10〜200mgKOH/gおよび重量平均分子量が3,000〜20,000である撥液レジスト組成物。
【請求項5】
フッ素系ポリマー(A2)の(a3)のアルキレンオキサイド基末端の水酸基にイソシアネート基含有不飽和化合物が反応させてあることを特徴とする請求項4に記載の撥液レジスト組成物。
【請求項6】
フッ素系ポリマー(A1)またはフッ素系ポリマー(A2)、光架橋触媒(B)、溶媒(C)、要すれば架橋剤(D)、および、要すればアルカリ可溶性ポリマー(E)を含有してなる請求項1〜5のいずれか1つに記載の撥液レジスト組成物。
【請求項7】
光架橋触媒(B)が光ラジカル重合開始剤、および、架橋剤(D)が多官能(メタ)アクリレートである請求項6に記載の撥液レジスト組成物。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のフッ素系ポリマー(A1)または請求項4もしくは5に記載のフッ素系ポリマー(A2)を10〜30重量%の濃度でグリコール系溶剤に溶解した形態を有する撥液剤。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の撥液レジスト組成物中に固形分に対して10〜70重量%の黒色顔料を分散させたものを用いて、フォトリソグラフィー法により、親液性透明基板上にパターン状に撥液化されたブラックマトリクスを形成することを特徴とするディスプレイ用カラーフィルタの製造方法。
【請求項10】
親液性透明基板上に均一に形成された感光性樹脂ブラック層の上に、さらに請求項1〜7のいずれか1つに記載の撥液レジスト組成物を均一に塗布した後、フォトリソグラフィー法により、パターン状に撥液化されたブラックマトリクスを形成することを特徴とするディスプレイ用カラーフィルタの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の撥液レジスト組成物を樹脂フィルム上に塗布、乾燥して製造した感光性ドライフィルムを用いて、フォトリソグラフィー法により、親液性透明基板上にパターン状に撥液化されたブラックマトリクスを形成することを特徴とするディスプレイ用カラーフィルタの製造方法。
【請求項12】
パターン状に撥液化されたブラックマトリクスを有する親液性透明基板上に、赤、緑、青の顔料を分散した分散液を塗布し、溶媒を除去することを特徴とする請求項9〜11のいずれか1つに記載のディスプレイ用カラーフィルタの製造方法。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか1つに記載の製造方法で製造されたディスプレイ用カラーフィルタ。

【公開番号】特開2011−184517(P2011−184517A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49202(P2010−49202)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】