説明

撮像レンズユニット機器

【課題】リアルタイムで映像に特殊効果を施すことができ、レンズユニットの交換により着脱する必要がない撮像機器を提供すること。
【解決手段】撮像レンズユニット機器1は、被写体Wを撮影する撮影カメラ50に着脱自在に装着され所定のレンズ9を設けたユニットフレーム2の入射口から前記撮影カメラの撮像素子51までの光路中に配置される波面制御機構5を有する撮像レンズユニット機器であって、前記波面制御機構は、前記光路中に配置され波面制御面となる薄膜ミラー6と、この薄膜ミラーの裏面に当接して当該薄膜ミラーを凹面、凸面あるいは凹凸面に変形させる複数の押動凸部7と、この押動凸部のそれぞれを出没駆動させる駆動手段8とを備え、前記被写体の光の方向を前記薄膜ミラーで反射して前記被写体の光を前記光路に沿って送り出すことで前記被写体の光を制御する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影カメラのレンズユニットを装着した状態で、被写体の撮影をしたときに普通の映像撮影と特殊映像効果撮影を行なうことができる撮像レンズユニット機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、映像の一部をデフォーカスさせる場合や揺らぎ等の映像効果を持たせる場合、例えば、一度撮影した映像をコンピュータなどに取り込んで画像処理を行うことで映像効果を得ることができる。しかし、生放送等において撮影した映像をすぐに表示する場合など、リアルタイムでの画像処理が必要とされる場面では、撮影者と画像処理を行うものが異なることから、所望の映像効果を得ることが困難である。また、撮影機器と画面処理をする信号処理装置を一体化することにより、撮影者が映像に合った画像処理をすることが可能となり、所望の映像効果を得ることができる。しかし、ファインダーに表示される映像は信号処理を経ているため遅延が生じ、ファインダーで見る映像が実際の映像から遅れてしまう。このような撮影している映像とファインダーに表示される映像に時間的な遅れが生じると、リアルタイムで所望の映像を撮ることが困難である。
【0003】
そこで、従来、光学レンズ本体に取り付けられるカメラ用光学フィルター装置が提案されている(特許文献1、参照)。このカメラ用光学フィルター装置は、カメラ本体に取付けられる光学レンズ本体前面のアタッチメント部に一体的に取付けられ、光軸中心部に通孔を有するドーナッツ形状の強誘電性液晶素子で構成される光学フィルター本体と、カメラ本体からの制御信号に基づき、強誘電性液晶素子にバイアスを印加する端子とを有している。
【0004】
そのため、カメラ用光学フィルター装置は、バイアスを強誘電性液晶素子に印加すると、光学フィルター本体が、液晶の電気光学効果を応用して電気光学シャッタ機能や電気光学色フィルター機能あるいはメモリ機能等を発揮することができる。
したがって、光学フィルター装置は、標準搭載しておけば、撮影を中断することなく、自在に各種の特殊映像効果を演出可能となるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−273514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の前記したカメラ用光学フィルター装置では、以下に示すような問題点が存在した。
従来のカメラ用光学フィルター装置では、撮影カメラのレンズユニットの直前に配置して使用するときに、液晶の透過率が100%にならないため、液晶のある部分とない部分とで映像領域が不連続になってしまった。また、レンズユニットの直前に配置して使用することから、レンズユニットを取り替えてしまうと、カメラ用光学フィルター装置を取付け直す必要があった。
【0007】
本発明は、前記した問題点に鑑み創案されたものであり、リアルタイムで映像に特殊効果を施すことができ、レンズユニットの交換により着脱する必要がない撮像機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するため、本発明に係る撮像レンズユニット機器は、被写体を撮影する撮影カメラに着脱自在に装着され所定のレンズを設けたユニットフレームの入射口から前記撮影カメラの撮像素子までの光路中に配置され、撮影する前記被写体の映像に映像効果を与える波面制御機構を有する撮像レンズユニット機器であって、前記波面制御機構は、前記光路中に配置され波面制御面となる薄膜ミラーと、この薄膜ミラーの裏面に当接して当該薄膜ミラーを凹面、凸面あるいは凹凸面に変形させる複数の押動凸部と、この押動凸部のそれぞれを出没駆動させる駆動手段とを備え、前記被写体の光の方向を前記薄膜ミラーで反射して前記被写体の光を前記光路に沿って送り出すことで前記被写体の光を制御する構成とした。
【0009】
かかる構成により、撮像レンズユニット機器は、撮影カメラに着脱自在に装着できる状態で使用することができる。そして、撮像レンズユニット機器は、駆動手段を作動させて押動凸部を突出させることで基準位置にある薄膜ミラーの状態を平面から部分的に凸面にすることで、被写体の光の方向を部分的に変えることができ、撮影カメラの撮像素子において被写体の光が焦点の合っている部分と合っていない部分とが発生して映像効果を与えることができる。
【0010】
さらに、撮像レンズユニット機器において、光路中に設置したレンズ及び平面反射鏡を介して前記波面制御機構の薄膜ミラーに被写体の光を送る構成とすることや、また、光路中に設置したハーフミラーを介して前記波面制御機構の薄膜ミラーに光を送り、前記波面制御機構の薄膜ミラーからの光を、前記ハーフミラーを介して前記撮像素子に送る構成としてもよい。
かかる構成において、撮像レンズユニット機器は、レンズ及び平面反射鏡を介して波面制御機構の薄膜ミラーに被写体の光を送る場合に撮像素子までの光路中における光の損失が最小限となる。また、撮像レンズユニット機構は、ハーフミラーを光路中に設置することで、波面制御機構をユニットフレームの垂直面に設置できるようになる。
【0011】
また、撮像レンズユニット機器は、被写体を撮影する撮影カメラに着脱自在に装着され所定のレンズを設けたユニットフレームの入射口から前記撮影カメラの撮像素子までの光路中に配置され、撮影する前記被写体の映像に映像効果を与える波面制御機構を有する撮像レンズユニット機器であって、前記波面制御機構は、前記光路中に配置される液晶パネルと、この液晶パネルに電圧を与える駆動手段とを備え、前記液晶パネル中の画素がマトリクス状に配置されており、前記マトリクスの間隔が撮像素子の間隔の2倍以上に設定され、前記液晶パネルは、前記被写体の光が当該液晶パネルを透過するときの位相又は透過率の状態を変えて、前記被写体の光を前記光路に沿って送り出し、前記被写体の光を制御する構成とした。
【0012】
かかる構成により、撮像レンズユニット機器は、被写体の光が透過するときに、その透過の状態を変えることで、撮影カメラの撮像素子において被写体の焦点が合っている部分と合っていない部分とが発生して映像効果を与えることができる。また、液晶パネルのマトリクスの間隔を撮像素子の間隔の2倍以上としているので、マトリクス構造による干渉縞の発生を防ぐことができる。
【0013】
そして、撮像レンズユニット機器において、前記波面制御機構は、前記撮影カメラ側または前記ユニットフレーム側に設けた操作手段により動作するように接続されている構成とした。
かかる構成により、撮像レンズユニット機器は、撮影カメラ側に操作手段を設けたときには、カメラマンの手元で操作手段により操作されて一般的な映像と、映像効果を与えた映像とを使い分けて撮影することができる。また、撮像レンズユニット機器は、ユニットフレーム側に操作手段を設けたときには、既存の撮影カメラに装着して使用することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る撮像レンズユニット機器は、以下に示すような優れた効果を奏するものである。
撮像レンズユニット機器は、被写体の光が撮像素子に入射するまでの光路中に波面制御面を任意に変えて、その波面制御面の任意の領域を反射又は透過する光の方向を変えることで、デフォーカスや揺らぎなどの映像効果を光学的に得ることができる。これにより、撮影者が所望の映像効果をリアルタイムで得ることができる。また、撮像レンズユニット機器は、構成が簡易であるため、従来の撮像機器の光学系の中に容易に組み込むことができる。
【0015】
撮像レンズユニット機器は、薄膜ミラーを使用することで映像効果を得ることができるので、被写体の光の損失が少ない状態で使用することができる。なお、撮像レンズユニット機器は、ハーフミラーを使用することで波面制御機構をユニットフレームの垂直面に設置できるため、構造的に光路の確保がし易くなる。
【0016】
撮像レンズユニット機器は、液晶パネルを使用することで透過型の光学系により映像効果を得ることができる。
撮像レンズユニット機器は、撮影カメラに波面制御機構の操作手段を設けた場合、カメラマンの手元で操作し易く扱いが容易となる。また、撮像レンズユニット機器は、ユニットフレームに波面制御機構の操作手段を設けた場合、既存の撮影カメラに装着してそのまま使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る撮像レンズユニット機器を撮影カメラに装着した状態で一部を断面にして側面から模式的に示す一部断面図である。
【図2】本発明に係る撮像レンズユニット機器の波面制御機構を示し、(a)は波面制御機構の状態を模式的に示す正面図、(b)は波面制御機構の状態を模式的に示す側面図である。
【図3】(a)、(b)は、本発明に係る撮像レンズユニット機器の波面制御機構における光路について模式的に示す原理図である。
【図4】(a)〜(f)は、本発明に係る撮像レンズユニット機器の波面制御機構の動作状態と撮影映像との関係を概略的に示す模式図、横方向及び縦方向からの断面図である。
【図5】(a)〜(i)は、本発明に係る撮像レンズユニット機器の波面制御機構の動作状態と撮影映像との関係を概略的に示す模式図、横方向及び縦方向からの断面図である。
【図6】本発明に係る撮像レンズユニット機器の他の構成を示し、撮像レンズユニット機器を撮影カメラに装着した状態で一部を断面にして側面から模式的に示す一部断面図である。
【図7】本発明に係る撮像レンズユニット機器の他の構成を示し、撮像レンズユニット機器を撮影カメラに装着した状態で一部を断面にして側面から模式的に示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る撮像機器について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、撮像レンズユニット機器1は、撮影カメラ50の一般的なレンズの光学系からなるレンズユニットと同等に着脱自在に当該撮影カメラ50に取り付けられるユニットフレーム2の基端側に取付機構(例えばカメラとレンズのアダプタ、あるいは、マウントアダプタ等)2aを備えている。この撮像レンズユニット機器1は、被写体の映像を普通に撮影することと共に、映像の一部をデフォーカス、揺らぎ等の特殊映像効果を与えて撮影することができるものである。なお、ここで使用される撮影カメラ50は、一般的なテレビ撮影等に使用されるものであり、特に限定されるものではない。
撮像レンズユニット機器1は、被写体Wの光の入射位置から撮像素子51までの光路を形成するユニットフレーム2内に平面反射鏡3と、ハーフミラー4と、波面制御機構5と、レンズ9とを備えている。
【0019】
ユニットフレーム2は、一端側に被写体Wの光の入射口を開口し、他端側に撮影カメラ50に着脱自在に接続される取付機構2aを備えている。このユニットフレーム2は、撮影カメラ50に取付機構2aを介して装着できるものであれば、その形状、材質等は特に限定されるものではない。
【0020】
取付機構2aは、例えば、撮影カメラとレンズユニットのアダプタ、あるいは、マウントアダプタ等の構成と同じ構成であり、特に限定されるものではない。なお、入射口は、ガラス、プラスチックあるいはレンズ等の透過部材が設置されていても構わず、被写体Wの光を撮影カメラ50の撮像素子51に向かって受け入れることができる構成であれば限定されるものではない。
【0021】
平面反射鏡3は、ユニットフレーム2の入射口から入射する被写体Wの光を光路に沿ってハーフミラー4に向けて反射するものである。この平面反射鏡3は、光を光路に沿って反射するものであれば、その材質、形状について限定されるものではない。ここでは、平面反射鏡3は、入射光を90度に方向を換えて反射するように設定されている。
ハーフミラー(ビームスプリッタ)4は、平面反射鏡3から反射してくる光を波面制御機構5側に反射し、波面制御機構5側から反射してくる光を透過してレンズ9側に送るものである。このハーフミラー4は、送られてきた光を90度方向を変えて反射し、その反射した方向から来る光を透過できるものであれば、その構成等について限定されるものではない。
【0022】
波面制御機構5は、ハーフミラー4から送られてくる光を、その波面の状態を変えずに反射することと、また、その波面の状態を変えて反射することができるものである。この波面制御機構5は、光を反射する薄膜ミラー6と、この薄膜ミラー6の裏面側に配置した複数の押動凸部7と、この押動凸部7を出没駆動させる駆動手段8とを備えている。
薄膜ミラー6は、平面状態で配置され送られてきた光を反射すると共に、押動凸部7により凹凸形状に変形させられても破損しない部材で形成されている。
【0023】
押動凸部7は、薄膜ミラー6の裏面から当該薄膜ミラー6を押動させ、その平面状態の薄膜ミラーの所定位置を凹状、凸状、あるいは、凹凸状に変形させるものである。この押動凸部7は、薄膜ミラー6の裏面に接続するように設けられている。押動凸部7は、ここでは、一例として、図2に示すように、19個の押動凸部7を備えるように構成されている。この押動凸部7の設置間隔は、互いに等間隔で、かつ、最外周に配置されるものを配列したときのアウトラインが六角形になるように配置している。なお、押動凸部7の数、形状及び間隔、アウトライン形状(円形等)等について任意に設定することができ、特に限定されるものではない。
【0024】
駆動手段8は、押動凸部7のそれぞれを個別に基準位置から突出させ、あるいは、その突出させた位置から基準位置にもどるように出没駆動させるものである。この駆動手段8は、撮影カメラ50側に電源コードで接続され、撮影カメラ50側に形成された操作ボタン52により駆動するように構成されている。なお、押動凸部7の駆動手段8の一例としては、ピエゾアクチュエータ(圧電素子)であり、電圧を印加することでベース部分の形状を変化させ押動凸部7の出没動作を行なう。また、駆動手段8は、その他の構成として、電界や静電磁界で押動凸部7を駆動させる構成であっても構わない。
【0025】
レンズ9は、光路中に配置されハーフミラー4を透過してきた光を撮像素子51に向けて集光させるものである。レンズ9は、ここでは、光路中に代表して一つしか示していないが、一般的に撮影カメラ50のレンズユニットとして必要な数、光路中の設置箇所数あるいは種類(凸レンズ、凹レンズ等)が設置されているものである。
なお、レンズ9は、ズームやフォーカス等を行なうために光路に沿って前後に移動することができるように、レンズ移動手段10により位置の調整を行なうことができるように設置されている。また、ユニットフレーム2の光路に沿った位置には、図示していないがアイリス等のレンズユニットで必要な構成を備えている。
【0026】
以上のように構成された撮像レンズユニット機器1は、つぎのような作用を奏する。
撮像レンズユニット機器1により撮影カメラ50で、被写体Wを普通の映像で撮影したい場合は、波面制御機構5を作動させることなく撮影カメラ50により撮影を行なう。そうすると、図1及び図3(a)に示すように、被写体Wの光は、ユニットフレーム2の入射口から入射して平面反射鏡3でハーフミラー4側に送られ、さらにハーフミラー4から波面制御機構5に送られる。
【0027】
そして、撮像レンズユニット機器1では、波面制御機構5を動作させない状態では、薄膜ミラー6が平面状態であるので、薄膜ミラー6から反射された光は、ハーフミラー4及びレンズ9を介して撮像素子51に到達したときに、撮像素子51の位置で結像する状態となる。したがって、図4(a)に示すように、撮像レンズユニット機器1では、被写体Wの撮影される全ての領域において焦点があった映像Waを撮影カメラ50で撮影することが可能となる。ここでは、被写体Wとして白黒のチェック模様を一例として説明することとする。図4(a)に示すように、撮像レンズユニット機器1の波面制御機構5を作動させない場合には、白黒の状態がはっきり見える映像Waとなる。
【0028】
一方、撮像レンズユニット機器1により撮影カメラ50で、被写体Wに映像効果を与えて撮影したい場合は、波面制御機構5を作動させて撮影カメラ50により撮影を行なう。そうすると、図1及び図3(b)に示すように、被写体Wの光は、ユニットフレーム2の入射口から入射して平面反射鏡3でハーフミラー4側に送られ、さらにハーフミラー4から波面制御機構5に送られる。
【0029】
そして、撮像レンズユニット機器1では、波面制御機構5を撮影カメラ50側の操作ボタン52を操作することで、駆動手段8を介して押動凸部7を動作させているので、例えば、図2(b)に示すように、アウトライン側の押動凸部7を基準位置から突出させ、アウトラインよりも内側に配置された押動凸部7を基準位置のままとなるような状態にさせている。そのため、図3(b)、図4(e)、(f)に示すように、波面制御機構5では、薄膜ミラー6の周縁側を平面状態から湾曲させるように変形させることになる。
【0030】
そうすると、図3(b)に示すように、平面反射鏡3及びハーフミラー4を介して送られて来る被写体Wの光は、薄膜ミラー6が変形した状態で反射されるため、薄膜ミラー6の周縁の光は、反射されてハーフミラー4及びレンズ9を介して撮像素子51に到達したときに撮像素子51の手前で結像する状態となる。一方、平面反射鏡3及びハーフミラー4を介して送られて来る被写体Wの光の内、中央側の光は、反射されてハーフミラー4及びレンズ9を介して撮像素子51に到達したときに撮像素子51の位置で結像する状態となる。
【0031】
したがって、図4(d)に示すように、撮影カメラ50(図1参照)では、被写体Wの中央の焦点が合った状態で、かつ、被写体Wの周縁の焦点が合っていない状態で撮影されることになり、撮影効果を与えた映像Waを取得することができる。このように、撮像レンズユニット機器1では、被写体Wの光を波面制御面である薄膜ミラー6の予め設定された所定の領域を変化させ、撮像素子51において被写体Wの焦点を合わせる位置と焦点を合わせない位置を作り出すように反射して、光を光路に沿って送り出すように制御することで、撮影カメラ50で取得する映像Waに映像効果を与えている。
【0032】
なお、図4(b)、(c)、(e)、(f)は、それぞれ横方向からの断面及び縦方向からの断面を示しているが、ここでは、同心円状に押動凸部7を作動しているので、同じ構図で示されている。また、図4(e)、(f)に示すように、薄膜ミラー6の全周縁部分は平面状態から湾曲されているので、その湾曲状態に沿って平面状態から徐々に反射される光の焦点がずれていく状態を示すように、図4(d)の映像Waを記載している。したがって、図4(d)では、周縁に向かうにしたがって焦点が徐々に合っていない度合いが大きくなる状態を示している。
【0033】
なお、撮影カメラ50の操作ボタン52の操作により撮像レンズユニット機器1の波面制御機構5を動作させ、押動凸部7を異なる動作を行わせることで、例えば、図5(a)、(d)、(g)に示すように、映像効果も複数選択することができるように構成されている。また、図5(b)、(c)、図5(e)、(f)、図5(h)、(i)は、それぞれ横方向からの断面及び縦方向からの断面を示しているが、ここでは、同心円状に押動凸部7を作動しているので、同じ構図で示されている。
【0034】
すなわち、図5(b)、(c)に示すように、波面制御機構5は、その中央の押動凸部7を基準位置から突出させるように駆動手段8により作動させ、他の押動凸部7を基準位置のままにする。そうすることで、図5(a)に示すように、撮影カメラ50では、中央映像領域の焦点が合ってないぼんやりした状態で、その周辺の焦点が合っているシャープな映像となる映像効果を与えた状態の映像Waを取得することができる。
【0035】
さらに、図5(e)、(f)に示すように、波面制御機構5は、中央及び最外周となるアウトライン側の押動凸部7を基準位置から突出させ、他の押動凸部7は作動させることなく基準位置とする。そうすることで、図5(d)に示すように、撮影カメラ50では、中央及び周縁の焦点が合っていない状態で、その中央及び周縁の間の位置の焦点が合っている映像効果を与えた状態の映像Waを取得することができる。
【0036】
また、図5(h)、(i)に示すように、波面制御機構5は、中央及び最外周となるアウトライン側の押動凸部7を基準位置とし、他の押動凸部7を基準位置から突出させるように駆動手段8を作動させる。そうすることで、図5(g)に示すように、撮影カメラ50では、中央及び周縁の焦点が合っている状態で、その中央及び周縁の間の位置の焦点が合っていない映像効果を与えた状態の映像Waを取得することができる。
【0037】
映像効果の度合いは、波面制御機構5の押動凸部7の動作量を制御することにより、制御することができる。また、押動凸部7の動作量を駆動手段8で連続的に変化させることにより、デフォーカスがない映像から画像の一部がデフォーカスされる映像へとシームレスに変化させることができる。
例えば、図5(e)と図5(h)で示すように、押動凸部7の状態を変化させシームレスに作動させることを繰り返すことにより、映像Waは図5(d)と(g)が交互になるため、動画で揺らぎの効果をえることができる。
【0038】
以上のように、撮像レンズユニット機器1を装着した撮影カメラ50では、映像効果を与えない普通の映像Wa(図4(a)参照)や、映像効果を与えた状態の映像Wa(図4(d)、図5(a)、(d)、(g)参照)を撮影カメラ50側に設けた操作ボタン52を操作することで簡単に切り換えて操作することができる。なお、撮像レンズユニット機器1は、ハーフミラー4を使用した光学系として説明したが、そのハーフミラー4を使用しない、例えば、図6、図7に示す構成としても構わない。
【0039】
以下に、図6、図7に示す撮像レンズユニット機器1A、1Bについて順に説明する。なお、すでに説明した構成は、同じ符号を付して説明を省略する。
図6に示すように、撮像レンズユニット機器1Aは、ユニットフレーム2A中において入射口から撮影カメラの撮像素子51までの光路に沿って、レンズ9と、平面反射鏡3と、波面制御機構5とをその順に設置している。レンズ9は、ここでは、ユニットフレーム2Aの入射口側に光路に沿って前後にレンズ移動手段10により移動できるように構成されている。このレンズ9は、光路中に一つを示しているが、実際には一般のレンズユニットと同じように複合した各種類のレンズ群により構成され、その位置、数、光路に沿った設置箇所数が限定されるものではない。レンズ9からの光は平面反射鏡3を介して波面制御機構5に送られる。
【0040】
波面制御機構5は、すでに説明した構成と同じものであり、その設置した薄膜ミラー6から撮像素子51に平行な光を反射できる角度(45度)に設置されている。
【0041】
このように構成された撮像レンズユニット機器1Aは、被写体Wからの光を、入射口から光路となるレンズ9、平面反射鏡3及び波面制御機構5の薄膜ミラー6により撮像素子51に導き一般的および映像効果を与えた映像Wa(図4、図5参照)を取得することができる。この撮像レンズユニット機器1Aでは、ハーフミラー4を使用していないことから、被写体Wの光の光路中において、光が損失する割合を最小限で撮像素子51まで送ることができる。
【0042】
つぎに、図7を参照して、撮像レンズユニット機器1Bについて説明する。
図7に示すように、撮像レンズユニット機器1Bは、ユニットフレーム2Bの内部において、入射口から光路中に波面制御機構15、レンズ9を介して撮像素子51に被写体Wの光を送っている。
【0043】
波面制御機構15は、透過型の液晶パネルであり、ここでは位相変調方式の透過型液晶パネルを用いており、画素ごとに光の位相ができるようにマトリクス状に区切られて液晶が制御できるように構成されている。そして、マトリクスの間隔は、撮像素子の2倍以上に設定されている。マトリクスの間隔が撮像素子の2倍以上に形成されていることから、ナイキスト周波数の関係による干渉縞の発生を防ぐことができように構成されている。液晶パネルを制御する駆動手段は、液晶パネルの各画素ごとに設けられている電極に電圧を与える手段である。
【0044】
したがって、波面制御機構15を作動させない状態では、液晶パネルに送られてきた被写体Wの光が位相変調されずに透過するため、送られてきた光の波面がそのままレンズ9を介して撮像素子51に焦点を結ぶように入射して、一般的な映像を撮影カメラ50で撮影することができる。また、波面制御機構15を作動させた状態では、以下に示すようになる。すなわち、波面制御機構15により液晶パネルの中央には電圧を印加せずに、その印加していない中央から上下左右に離れるにつれて高い電圧を印加する様子を一例として説明する。波面制御機構15の液晶パネルの電圧を印加した画素と電圧を印加しない画素を透過する光では異なる位相となる。そのため、被写体Wの光が液晶パネルを透過したときに、印加電圧に応じて位相差が生じるため、液晶パネルを透過した光をレンズ9で集光しても撮像素子51で結像しない状態となる。したがって、図4(b)に示すような、中央の焦点が合っており、その周囲の焦点が合っていない映像効果を与えた映像Waを取得することが可能となる。
【0045】
波面制御機構15は、液晶の向きを制御することで、透過させる光の状態(位相、透過率等)を任意に変更することができ、かつ、その位置を任意に設定できる。したがって、波面制御機構15では、前記した図4,5で示す映像Waの状態となるように、撮影カメラの操作ボタン52の操作で予め設定しておくこともできる。また、波面制御機構15を設置したユニットフレーム2Bは、その形状がレンズユニットのみの構成のものと形状が同じであるため、前記した薄膜ミラー6よりもコンパクトに構成することができ、また、製造時のコストを抑えることができる。
【0046】
なお、波面制御機構15による映像効果を付与した映像のパターンは、前記した以外のものを予め設定しておき、操作ボタン52の操作で実現できるようにしてもよい。また、波面制御機構15は、図示しない外部接続されるキーボードあるいはマウスなどの入力手段により光の位相を変調する位置が任意のパターンとなるように、予め設定しておき、操作ボタン52でその設定したパターンの映像効果を得るように波面制御機構15を作動させることとしても構わない。
【0047】
以上説明したように、撮像レンズユニット機器1,1A,1Bは、撮影カメラ50に装着して使用できるので、ユニットフレーム外に取り付ける構成のものと異なり、レンズ光学系と一体に形成されているために、使い勝手がよい。また、構成がそれほど複雑でないため、レンズ光学系の光路中に組み込んでも製造時の手間が少なくて済む。また、撮像レンズユニット機器1,1A,1Bは、ユニットフレームの大きさを撮影カメラに装着できるような大きさに抑制して形成できる。
【0048】
また、レンズ光学系の光路中に配置される波面制御機構5,15は、反射型あるいは透過型のいずれの構成においても使用することが可能となり、使用したい映像効果のパターンに対応して使い分けることができる。
さらに、波面制御機構5では、薄膜ミラー6を基準位置から押動凸部7が突出することで凹面、凸面、あるいは凹凸面にして制御する例を説明したが、薄膜ミラー6を基準位置から押動凸部7を没する方向に駆動させることで、その薄膜ミラー6を凹面、凸面あるいは凹凸面を形成するようにして映像効果を与える構成としても構わない。
【0049】
そして、図では、操作手段としての操作ボタン52は、撮影カメラ50側に設けた構成として説明したが、例えば、図示しないフォーカスリングやズームリングのように作業者が操作できるユニットフレーム2,2A,2Bの所定位置に操作ボタン52あるいは操作リングとして設ける構成としても構わない。操作手段をユニットフレーム2,2A,2Bに設けることにより既存の撮影カメラ50にそのまま撮像レンズユニット機器1,1A、1Bを装着して使用することが可能となり都合がよい。
【符号の説明】
【0050】
1,1A,1B 撮像レンズユニット機器
2,2A,2B ユニットフレーム
2a 取付機構
3 平面反射鏡
4 ハーフミラー
5 波面制御機構
6 薄膜ミラー
7 押動凸部
8 駆動手段
9 レンズ
10 レンズ移動手段
15 波面制御機構
50 撮影カメラ
51 撮像素子
52 操作ボタン(操作手段)
W 被写体
Wa 映像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮影する撮影カメラに着脱自在に装着され所定のレンズを設けたユニットフレームの入射口から前記撮影カメラの撮像素子までの光路中に配置され、撮影する前記被写体の映像に映像効果を与える波面制御機構を有する撮像レンズユニット機器であって、
前記波面制御機構は、前記光路中に配置され波面制御面となる薄膜ミラーと、この薄膜ミラーの裏面に当接して当該薄膜ミラーを凹面、凸面あるいは凹凸面に変形させる複数の押動凸部と、この押動凸部のそれぞれを出没駆動させる駆動手段とを備え、
前記被写体の光の方向を前記薄膜ミラーで反射して前記被写体の光を前記光路に沿って送り出すことで前記被写体の光を制御することを特徴とする撮像レンズユニット機器。
【請求項2】
前記光路中に設置したレンズ及び平面反射鏡を介して前記波面制御機構の薄膜ミラーに被写体の光を送ることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズユニット機器。
【請求項3】
前記光路中に設置したハーフミラーを介して前記波面制御機構の薄膜ミラーに光を送り、前記波面制御機構の薄膜ミラーからの光を、前記ハーフミラーを介して前記撮像素子に送ることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズユニット機器。
【請求項4】
被写体を撮影する撮影カメラに着脱自在に装着され所定のレンズを設けたユニットフレームの入射口から前記撮影カメラの撮像素子までの光路中に配置され、撮影する前記被写体の映像に映像効果を与える波面制御機構を有する撮像レンズユニット機器であって、
前記波面制御機構は、前記光路中に配置される液晶パネルと、この液晶パネルに電圧を与える駆動手段とを備え、
前記液晶パネル中の画素がマトリクス状に配置されており、前記マトリクスの間隔が撮像素子の間隔の2倍以上に設定され、
前記液晶パネルは、前記被写体の光が当該液晶パネルを透過するときの位相又は透過率の状態を変えて、前記被写体の光を前記光路に沿って送り出し、前記被写体の光を制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズユニット機器。
【請求項5】
前記波面制御機構は、前記撮影カメラ側または前記ユニットフレーム側に設けた操作手段により動作するように接続されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の撮像レンズユニット機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−221183(P2011−221183A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88865(P2010−88865)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】