説明

撮像装置の絞り制御機構

【課題】被写体観察時に設定絞り値によるプレビューが可能な撮像装置において、撮影時の露光動作までのタイムラグが小さく、絞りと連動する機構の設計自由度が高い絞り制御機構を提供する。
【解決手段】絞り開放位置と最小絞り位置に移動可能な絞り駆動部材;回転カム部材に設けられ、回転カム部材の原点位置で絞り駆動部材を絞り開放位置に保持させ、原点位置からの回転により最小絞り位置方向への絞り駆動部材の移動を許す開放保持カム;回転カム部材の原点位置では絞り駆動部材に対する係止を解除し、開放保持カムによる絞り駆動部材の移動規制が解除されたとき、設定絞り値で絞り駆動部材を係止する絞り固定手段;及び、回転カム部材に設けられ、回転カム部材の第1の方向の回転では、絞り駆動部材に対する絞り固定手段の係止解除を行い、回転カム部材の第2の方向の回転では該係止解除を行わない選択係止解除手段;を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置の絞り制御機構に関する。特に、設定された絞り値での被写体観察を行うプレビューが可能な撮像装置における絞り制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の発明は、カムギヤの回転によって絞りの動作制御を行うタイプのカメラにおいてプレビュー機能を組み込むと、通常の撮影シーケンスにおける露光までのタイムラグが大きくなるという問題を解消するべくなされたものである。特許文献1のカメラは、通常の撮影シーケンスでは、撮影待機状態に対応する原点位置からカムギヤを所定の方向(以下、正方向)に一回転させて、開放絞りから設定絞り値への絞り込み動作、シャッタを開いての露光動作、絞り込み状態の解除及び開放絞りへの復帰を行わせる。光路上のファインダ観察用位置と光路外に退避した露光用位置の間で可動に支持されたクイックリターンミラー(以下、ミラー)は、絞り制御用のカムギヤと同期して回転する別のカムギヤにより動作制御され、撮影待機状態ではファインダ観察位置に保持され、露光時に露光用位置に退避される。一方、設定絞り値での被写体観察を行うプレビュー時には、ミラーがファインダ観察位置に保持される範囲内で、原点位置からカムギヤを通常の撮影シーケンスとは逆方向に回転させ、設定絞り値への絞り込み動作のみを行う。
【0003】
具体的には、特許文献1における絞り制御用のカムギヤは、絞り開放保持用のカム(開放保持カム)と、プレビュー後に用いる絞り固定解除用のカム(プレビュー解除カム)を備えている。絞り自体は最小絞り方向に付勢されており、カムギヤが原点位置にあるときには、この付勢力に抗して開放保持カムによって絞りが開放状態に保持されている。カムギヤが原点位置から正逆いずれの方向にも回転されると、開放保持カムによる保持が解消されて、絞りが付勢力によって絞り込み方向に動作される。この絞り込み方向の動作を設定絞り値で停止させる係止機構が備えられており、プレビュー解除カムは、この係止機構による係止を解除させる機能を有する。以上の構成において、プレビュー時には、プレビュー解除カムが係止機構を操作する回転位置を過ぎるまでカムギヤを逆方向に回転させてから、開放保持カムによる絞りの保持を解除し、係止機構を作動させて絞りを設定絞り値に固定する。このときミラーはファインダ観察位置に保持されており、ファインダを介して設定絞り値での被写体観察を行うことができる。プレビュー状態を解除するときには、カムギヤを正方向に原点位置まで回転させる。すると、開放保持カムが絞り開放保持状態に戻ると共に、プレビュー解除カムが係止機構による係止を解除し、絞りが開放される。
【0004】
特許文献2のカメラでは、同軸で回転するミラー駆動制御用のカムと絞り制御用のカムを備え、ミラー制御用カムにおいては、光路外位置へのミラー上昇と光路上位置へのミラー下降に使用するカムの領域を共用し、絞り制御用のカムにおいては、プレビューの絞り込みとプレビューの絞り込みリセットとに使用するカムの領域を共用する構成としている。具体的には、カムの原点位置から正方向の回転でミラーアップ、絞りの開放位置から制御絞り値までの絞り込み、シャッタチャージ保持状態の解除を行い、その終了位置からの逆方向への回転でミラーダウン、絞りの絞り込み位置から開放位置へのリセット、シャッタチャージを行う。また、カムの原点位置から逆方向の回転で絞りの開放位置から制御絞り値までの絞り込みのみを行い、その終了位置から正方向の回転で絞りの絞り込み位置から開放位置へのリセットのみを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3153482号
【特許文献2】特開2001-305647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のカメラでは、プレビュー状態にするためのカムギヤの原点位置からの逆方向回転に際して、プレビュー解除カムが絞りの係止機構を操作する回転領域を過ぎるまで開放保持カムによって絞り開放を維持させておく必要がある。つまり、プレビュー状態を得るための準備段階として、係止機構に対するプレビュー解除カムの通過を待つ状態が存在する。このようなプレビュー時にのみ用いる待機用のカムギヤ回転角が大きいほど、プレビュー以外の用途(例えば、ミラーやシャッタの駆動制御)で使用するカムギヤ回転角が相対的に小さくなり、駆動機構の設計自由度が制約されてしまう。
【0007】
特許文献2のカメラは、特許文献1のようなプレビュー準備段階でのカムギヤの回転領域を排除して設計上の制約を少なくすることを図ったものであるが、ミラー上昇時のカム曲線とミラー下降時のカム曲線を対称で使用するため、それぞれの動作に関するカム曲線の最適化が困難になるという問題がある。
【0008】
本発明は、通常の撮影時における露光動作までのタイムラグを小さくでき、かつ絞りと連動する機構の設計の自由度向上にも寄与する、プレビュー機能を備えた撮像装置の絞り制御機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、撮影光路上に設けられ撮影開口の大きさを可変にさせる絞りを備え、被写体観察時に絞りを設定絞り値に固定するプレビュー状態を選択可能な撮像装置に適用される絞り制御機構であって、絞りに最大開口を形成させる絞り開放位置と、該絞りに最小開口を形成させる最小絞り位置に移動可能で、最小絞り位置に向けて付勢された絞り駆動部材;正逆に回転可能な回転カム部材に設けられ、該回転カム部材が原点位置にあるとき絞り駆動部材を絞り開放位置に保持させ、該回転カム部材が原点位置から回転することにより絞り駆動部材の最小絞り位置方向への移動を許す開放保持カム;回転カム部材の原点位置では絞り駆動部材に対する係止を解除し、該回転カム部材が原点位置から回転して開放保持カムによる絞り駆動部材の移動規制が解除されたとき、設定された絞り値に対応する位置で絞り駆動部材を係止する絞り固定手段;及び、回転カム部材に設けられ、該回転カム部材の第1の方向の回転では、絞り駆動部材に対する絞り固定手段の係止解除を行い、該回転カム部材の第1の方向と反対の第2の方向の回転では、該係止解除を行わない選択係止解除手段;を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明は、撮像光学系からの被写体光を光学ファインダ側に反射するファインダ観察位置と、該被写体光を反射せずに撮像面側に通す露光用位置とに動作可能なミラーを備え、プレビュー状態においてミラーをファインダ観察位置に保持しながら絞りを設定絞り値に固定するタイプの撮像装置に好適である。具体的には、回転カム部材が原点位置から第1の方向に一回転する間にファインダ観察位置から露光用位置へのミラーの往復動作を行わせ、かつ回転カム部材が原点位置から第2の方向に回転するとき、少なくとも絞り固定手段が絞り駆動部材を係止するまでミラーをファインダ観察位置に保持させるミラー制御機構を備え、撮影動作時には、回転カム部材を原点位置から第1の方向に一回転させ、プレビュー時には、ミラー制御機構によりミラーがファインダ観察位置に保持されかつ絞り固定手段による絞り駆動部材の係止が行われる位置まで、回転カム部材を原点位置から第2の方向に回転させ、該プレビュー状態の解除時には、回転カム部材を第1の方向に回転させて選択係止解除手段によって絞り固定手段による絞り駆動部材の係止解除を行うように構成するとよい。
【0011】
絞り固定手段として、絞り駆動部材の最小絞り位置方向への移動を規制する係止位置と、該移動規制を解除する係止解除位置に回動可能な係止レバーを備え、選択係止解除手段として、回転カム部材上に回動可能に支持された可動カムを備えることができる。係止レバーが係止位置にあるとき、該係止レバーに設けた被押圧部が回転カム部材の回転軸を中心とする可動カムの移動軌跡上に位置し、回転カム部材の第1の方向の回転では、可動カムは回転カム部材に対する相対回動を行わずに被押圧部を押圧して係止レバーを係止解除位置へ回動させる。一方、回転カム部材の第2の方向の回転では、可動カムは被押圧部への当接に応じて該被押圧部の位置を変化させずに回転カム部材に対して相対回動される。さらに、係止レバーが係止解除位置にあるときにも回転カム部材の第2の方向の回転に応じて可動カムを被押圧部に当接させ、該被押圧部の位置を変化させずに回転カム部材に対して可動カムを相対回動させてもよい。
【0012】
回転カム部材に対する可動カムの支持構造として、回転カム部材上に設けられ可動カムの回動を規制するストッパと、該ストッパへの当接方向に可動カムを付勢する可動カム付勢部材とを設けるとよい。回転カム部材の第1の方向への回転によって可動カムが係止レバーの被押圧部を押圧するとき、該可動カムはストッパに当接して回転カム部材に対する回動が規制され、回転カム部材の第2の方向への回転によって可動カムが係止レバーの被押圧部に当接するとき、該可動カムはストッパから離れる方向に回動される。
【0013】
絞り固定手段として、さらに、絞り駆動部材に形成したラックと、該ラックに噛合する中間ギヤと、該中間ギヤに噛合し外周に複数のラッチ爪が形成されたラッチギヤとを備え、係止レバーには、その係止位置でラッチギヤのラッチ爪に係合し、係止解除位置で該係合を解除する係止部を設けるとよい。
【0014】
回転カム部材には、原点位置から第1の方向に回転するとき、可動カムよりも先に係止レバーに当接して係止位置から係止解除位置へ回動させる固定カムを備えてもよい。
【0015】
開放保持カムと絞り駆動部材の間には、該開放保持カムにより回動位置が制御される中間レバーを備えてもよい。詳しくは、回転カム部材には、その回転軸を中心とした半径方向位置が一定の定径カム部と、該定径カム部よりも小径の逃げカム部を形成する。中間レバーは、定径カム部に対して当接部が当接するとき、絞り駆動部材を絞り開放位置に保持させ、該当接部が逃げカム部に対向して位置するとき、該当接部を回転カム部材の回転軸へ接近させる方向へ回動して絞り駆動部材に対する保持を解除する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の撮像装置の絞り制御機構によれば、回転カム部材の原点位置からの第1の方向の回転を通常の撮影動作に用い、第2の方向の回転をプレビュー制御に用いることで、撮影時における露光動作までのタイムラグの減少を図ることができる。その上で、回転カム部材の第1の方向の回転で絞りの固定解除を行わせ、第2の方向の回転では絞りの固定解除を行わせない選択係止解除手段を備えたことで、プレビュー時の絞り込み動作を従前より早いタイミングで行わせることが可能となる。その結果、回転カム部材におけるプレビュー制御用の回転領域を少なくし、絞りと連動する機構の設計の自由度向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用した一眼レフカメラの光学系の概略を示す図である。
【図2】同一眼レフカメラの制御系の要部を示すブロック図である。
【図3】同一眼レフカメラのミラーボックス側部に設けられる駆動制御装置の一部を示す図である。
【図4】同駆動制御装置を構成する絞り制御機構が絞りの開放状態にある状態を示す図である。
【図5】絞り制御機構が所定の設定絞り値に絞り込まれた状態を示す図である。
【図6】図4の絞り開放状態での第2カムギヤ、絞りチャージレバー、ラッチギヤ及びラッチレバーの関係を示す図である。
【図7】絞り開放状態における絞りチャージレバー、絞りチャージカム、ラッチ解除可動カム、ラッチレバーの被押圧ピンの関係を示す図である。
【図8】図7に示す絞り開放状態から第2カムギヤが逆方向(第2の方向)に回転したときの絞りチャージレバー、絞りチャージカム、ラッチ解除可動カム、ラッチレバーの被押圧ピンの関係を示す図である。
【図9】図8からさらに第2カムギヤが逆方向(第2の方向)に回転したときの絞りチャージレバー、絞りチャージカム、ラッチ解除可動カム、ラッチレバーの被押圧ピンの関係を示す図である。
【図10】図9からさらに第2カムギヤが逆方向(第2の方向)に回転したときの絞りチャージレバー、絞りチャージカム、ラッチ解除可動カム、ラッチレバーの被押圧ピンの関係を示す図である。
【図11】図10からさらに第2カムギヤが逆方向(第2の方向)に回転したときの絞りチャージレバー、絞りチャージカム、ラッチ解除可動カム、ラッチレバーの被押圧ピンの関係を示す図である。
【図12】第2カムギヤが正方向(第1の方向)に回転するときのラッチ解除可動カムとラッチレバー上の被押圧ピンの関係を示す図である。
【図13】ラッチレバーが係止解除位置にある状態で第2カムギヤを逆方向(第2の方向)に回転させたときのラッチ解除可動カムとラッチレバーの被押圧ピンの関係を示す図である。
【図14】ラッチレバーが係止位置にある状態で第2カムギヤを逆方向(第2の方向)に回転させたときのラッチ解除可動カムとラッチレバーの被押圧ピンの関係を示す図である。
【図15】(A)は本発明を適用した絞り制御機構における絞りチャージカム、(B)は本発明を適用しない比較例としての絞りチャージカムの形状を示した図である。
【図16】実施形態の一眼レフカメラにおけるメインスイッチオンからの初期処理を示すフローチャート図である。
【図17】通常撮影動作における露光完了までの処理を示すフローチャート図である。
【図18】通常撮影動作における露光後の処理を示すフローチャート図である。
【図19】プレビュー動作の処理を示すフローチャート図である。
【図20】プレビュー中にレリーズスイッチをオンした場合の処理を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示す一眼レフカメラ(以下、カメラ)10は、本発明を適用した撮像装置の一実施形態である。カメラ10は、カメラボディ11の前面にレンズ鏡筒12を着脱させるレンズマウントを有し、その内方にミラーボックス13が設けられている。
【0019】
レンズ鏡筒12の撮影レンズ(撮像光学系)12a内に、機械的に開口径を変化させる可変開口絞り(以下、絞り)12bが設けられている。レンズ鏡筒12は、カメラボディ11のレンズマウントに接続されるマウント面上に露出する絞り駆動レバー12c(図1に概念的に示す)を備えており、この絞り駆動レバー12cを動作させることで絞り12bの開口径を変化させることができる。
【0020】
ミラーボックス13内には、ミラーシートヒンジ14xを軸として揺動可能なクイックリターンミラー(以下、ミラー)14が支持されている。ミラー14の後方にはフォーカルプレーンシャッタ(以下、シャッタ)15が設けられ、シャッタ15の後方にはイメージセンサ16が設けられている。ミラー14は、図1の実線や図3に示すように、レンズ鏡筒12内の撮影レンズ12aからイメージセンサ16に至る撮影光路上に進出するファインダ観察位置と、図1の二点鎖線に示すように、撮影光路から上方に退避した露光用位置の間で揺動される。ミラー14がファインダ観察位置にあるときには、該ミラー14からの反射光が、ペンタプリズムや接眼レンズなどにより構成されるファインダ光学系17に入射され、ファインダ窓17aを通して被写体を観察することができる。ミラー14はサブミラー14aを有し、ファインダ観察位置では、サブミラー14aによって被写体光の一部がミラーボックス13の下方の測距ユニット71に導かれ、被写体距離を検出することができる。また、ミラー14のファインダ観察位置では、ファインダ光学系17を構成するペンタプリズムの後方に設けた測光ユニット72による測光も行うことができる。一方、ミラー14が露光用位置にあるときには、撮影レンズ12aからの光はミラー14で反射されずにシャッタ15側に進み、シャッタ15を開くことでイメージセンサ16の受光面上に光を入射させることができる。カメラボディ11の後面に設けたLCDモニタ18には、イメージセンサ16により得られる被写体の電子画像や、電子画像以外の各種の情報を表示することができる。
【0021】
シャッタ15は、イメージセンサ16に対する入射光軸と直交する面内で走行可能な先幕15a(図2)と後幕15b(図2)を有している。露光時には先幕15aと後幕15bが所定の時間差をもって走行し、シャッタチャージ動作により先幕15aと後幕15bが走行前の位置に戻される。先幕15a及び後幕15bと連係する部材として、図示しないシャッタセットレバーが設けられている。シャッタセットレバーは、先幕15a及び後幕15bの走行を機械的に規制するシャッタ保持位置と、先幕15a及び後幕15bの走行を許すシャッタ開放位置とに動作可能であり、シャッタ開放位置からシャッタ保持位置へのシャッタセットレバーの移動により、先幕15aと後幕15bのシャッタチャージが行われる。チャージされた状態の先幕15aと後幕15bはそれぞれ、先幕保持マグネット52(図2)と後幕保持マグネット53(図2)によって走行を規制することができる。先幕保持マグネット52と後幕保持マグネット53はそれぞれ、通電されると励磁されて吸着力が作用して先幕15aや後幕15bを保持し、通電解除されると非励磁状態になって先幕15aや後幕15bを走行させる。
【0022】
ミラーボックス13の側部には、絞り12b、ミラー14及びシャッタ15を駆動制御する駆動制御装置20が設けられている。駆動制御装置20の構成要素は図3ないし図5に示されており、このうち図4及び図5に示す各要素と図3に示す第2カムギヤ(回転カム部材)25とが、絞り12bの駆動制御に関わる絞り制御機構を構成する。
【0023】
まず絞り制御機構以外の部分を説明する。図3に示すように、駆動制御装置20は第1カムギヤ(ミラー制御機構)21とミラー駆動レバー(ミラー制御機構)22を備える。第1カムギヤ21は、モータ19(図2)によってギヤ軸21xを中心として回転駆動される。モータ19は、第1カムギヤ21の回転方向を正逆に切り替えることが可能であり、以下の説明では、第1カムギヤ21の図3の反時計方向の回転を正方向の回転とし、当該正方向へ第1カムギヤ21を回転させるモータ19の駆動を正転駆動と呼ぶ。同様に、第1カムギヤ21の図3の時計方向の回転を逆方向の回転とし、当該逆方向へ第1カムギヤ21を回転させるモータ19の駆動を逆転駆動と呼ぶ。
【0024】
ミラー駆動レバー22は、ギヤ軸21xと平行なレバー軸22xを中心として回動可能に支持され、ミラー14の側部に突設したミラーシートボス14bを保持するミラー保持部22aを先端部付近に有し、該ミラー保持部22aとレバー軸22xの中間にカム当接部22bを有する。ミラー駆動レバー22は、第1カムギヤ21に形成したミラー制御カム(不図示)に対してカム当接部22bを当接させる方向(図3の反時計方向)へ付勢ばね22cによって回動付勢されている。第1カムギヤ21が回転すると、カム当接部22bが当接するミラー制御カムの形状に従ってミラー駆動レバー22が回動され、ミラー保持部22aとミラーシートボス14bを介してミラー14の位置を変化させる。具体的には、第1カムギヤ21が図3に示す原点位置にあるとき、ミラー駆動レバー22はミラー14をファインダ観察位置に保持させるミラーダウン位置に保持され、第1カムギヤ21が該原点位置から一回転する間に、ミラー駆動レバー22はミラー14を露光用位置に保持させるミラーアップ位置へ回動されて再びミラーダウン位置に復帰する。つまり、第1カムギヤ21の一回転によって、ミラー14の一往復の昇降動作が行われる。
【0025】
第1カムギヤ21はさらに、前述したシャッタセットレバーの動作を制御するシャッタ制御カム(不図示)を有する。シャッタ制御カムは、図3に示す第1カムギヤ21の原点位置でシャッタセットレバーをシャッタ保持位置(先幕15aと後幕15bの走行を規制する位置)に保持させ、第1カムギヤ21が原点位置から一回転する間に、シャッタセットレバーをシャッタ保持位置からシャッタ開放位置に揺動させ、さらにシャッタ保持位置に戻す。このシャッタセットレバーのシャッタ保持位置への復帰動作によってシャッタチャージが行われる。
【0026】
続いて絞り制御機構の詳細を説明する。図3に示すように、第1カムギヤ21の近傍には、そのギヤ軸21xと平行なギヤ軸25xで回転可能に第2カムギヤ25が支持されている。第2カムギヤ25は、その外周に形成したギヤが第1カムギヤ21の外周上のギヤと噛み合っており、モータ19の駆動力によって第1カムギヤ21を介して回転される。すなわち、第1カムギヤ21とは逆に、第2カムギヤ25は、図3における時計方向回転がモータ19の正転駆動に対応した正方向回転(第1の方向の回転)で、反時計方向回転がモータ19の逆転駆動に対応した逆方向回転(第2の方向の回転)である。第1カムギヤ21と第2カムギヤ25の減速比は1:1であり、互いに同期して回転される。
【0027】
第2カムギヤ25にはラッチ解除固定カム(固定カム)26と、絞りチャージカム(開放保持カム)27と、ラッチ解除可動カム(選択係止解除手段、可動カム)28が設けられている。絞りチャージカム27は絞りチャージレバー(中間レバー)30の動作を制御し、ラッチ解除固定カム26とラッチ解除可動カム28は、図4ないし図6に示すラッチレバー(係止レバー)45の動作を制御するものである。ラッチ解除固定カム26とラッチ解除可動カム28は、第2カムギヤ25のうち図3における紙面手前側の面に設けられ、絞りチャージカム27は、第2カムギヤ25の裏面側に設けられている。
【0028】
絞りチャージレバー30は、ギヤ軸21x、25xと平行なレバー軸30xを中心として回動可能に支持され、絞りチャージカム27に当接可能なカムフォロア(開放保持カムへの当接部)30aと、前方へ突出する制御アーム30bを有する。絞りチャージレバー30は、レバー復元ばね33によって図3及び図4の反時計方向、つまりカムフォロア30aを絞りチャージカム27に当接させる方向へ付勢されている。制御アーム30bは、絞りチャージレバー30の本体部分に支持固定されたトーションばねの端部からなり、該本体部分と一体的に回動される。図4に示すように、制御アーム30bの先端部は、絞り連係部材(絞り駆動部材)31の被押圧部31aに係合可能である。絞り連係部材31は、図4及び図5の上下方向へスライド可能に支持されており、制御アーム30bとの係合によって上方への移動が規制される。絞り連係部材31は、レンズ鏡筒12をカメラボディ11に取り付けた状態でレンズ鏡筒12側の絞り駆動レバー12cと連動するように係合し、絞り連係部材31が図4に示す下方移動端にあるとき絞り12bが開放されて最大開口となり、絞り連係部材31が上方移動端に移動すると絞り12bが最小絞り(最小開口)になる。以下では、絞り連係部材31の下方移動端を絞り開放位置、上方移動端を最小絞り位置と呼ぶ。絞り連係部材31は、絞り込み付勢ばね34によって最小絞り位置、すなわち絞り込み方向に向けて付勢されている。
【0029】
絞りチャージカム27は、第2カムギヤ25上に固定的に設けられており、図15(A)に示すように、ギヤ軸25xを中心とする最大外径位置に、その回転方向位置が変化してもギヤ軸25xからの半径方向距離が変わらない一定径のカム面形状をなす大径の定径カム部27aが形成され、定径カム部27aよりもギヤ軸25xに近い位置に小径の逃げカム部27bが形成され、この定径カム部27aと逃げカム部27bの間を、回転方向位置の変化に応じてギヤ軸25xからの半径方向距離が変化するカム面形状の非定径カム部27cと、該非定径カム部27cの反対側に位置する直線カム部27dで接続した構成になっている。
【0030】
第2カムギヤ25が図3、図6及び図7に示す原点位置にあるとき、絞りチャージカム27の定径カム部27aがカムフォロア30aに当接して、絞りチャージレバー30は制御アーム30bを略水平に向けた強制開放位置(図4)に保持される。この強制開放位置では、制御アーム30bが被押圧部31aを押し下げて絞り連係部材31を絞り開放位置に保持させる。原点位置から第2カムギヤ25が所定量回転されて定径カム部27aがカムフォロア30aとの当接位置から退避すると、絞りチャージレバー30は、レバー復元ばね33の付勢力によってカムフォロア30aをギヤ軸25xに接近させる方向に回動され、図5に示すように、制御アーム30bを斜め上方に向ける絞り込み許容位置に保持される。この絞りチャージレバー30の絞り込み許容位置は、カムフォロア30aを逃げカム部27bに当接させることで位置決めしてもよいし、あるいは絞りチャージレバー30の別の部位を逃げカム部27b以外の箇所に当て付けて位置決めしてもよい。いずれにしろ、絞り込み許容位置への絞りチャージレバー30の回動によって制御アーム30bが被押圧部31aから離れると、絞り連係部材31が絞り込み付勢ばね34の付勢力によって上方(最小絞り位置方向)へ移動される。この絞り連係部材31の上方への移動量によって絞り12bの絞り値が決定される。
【0031】
絞り連係部材31の上方への移動量は、図4及び図5に示す絞り固定機構(絞り固定手段)40により制御される。絞り固定機構40は、ギヤ軸21x、25xと平行なギヤ軸41xを中心として回転可能なダブルギヤ(中間ギヤ)41を備え、このダブルギヤ41の小径ギヤ41aが絞り連係部材31に形成したラック31bに噛合する。ダブルギヤ41の近傍にはギヤ軸41xと略平行なギヤ軸42xを中心として回転可能なラッチギヤ42が設けられ、ダブルギヤ41の大径ギヤ41bはラッチギヤ42の小径ギヤ42aに噛合する。ラッチギヤ42は、その外縁部に複数のラッチ爪42bを有し、ラッチ爪42bと小径ギヤ42aの間の径方向位置には、周方向に略等間隔で複数のスリット42cが形成されている。このスリット42cの形成領域を挟んでフォトインタラプタ43の投光部と受光部が配されている。絞り連係部材31が図4の絞り開放位置から上方に移動すると、ラック31bと噛み合うダブルギヤ41を介してラッチギヤ42が回転され、その回転量に応じたスリット42cの通過パルス数がフォトインタラプタ43によって検出される。このパルス数を管理することによって絞り値を決定することができる。
【0032】
絞り固定機構40は、設定された絞り値でラッチギヤ42の回転を規制して絞り連係部材31の上方への移動を止める手段として、ラッチレバー45を有している。ラッチレバー45は、ギヤ軸41x、42xと略平行なレバー軸45xを中心として回動可能に支持されており、ラッチギヤ42のラッチ爪42bに係脱可能なラッチブレード(係止部)45aを有している。ラッチレバー45は、ラッチブレード45aをラッチ爪42bに係合させる図5の位置(以下、係止位置と呼ぶ)と、ラッチ爪42bに対するラッチブレード45aの係合を解除する図4及び図6の位置(以下、係止解除位置と呼ぶ)に回動可能であり、ラッチレバー45が係止位置にあるときラッチギヤ42の回転が規制される。より詳しくは、ラッチブレード45aとラッチ爪42bの係合状態では、絞り連係部材31の最小絞り位置方向への移動に対応するラッチギヤ42の回転(図4ないし図6の時計方向の回転)が規制される。
【0033】
ラッチレバー45は、図示しない結合ばね(トーションばね)を介して連結レバー46と共に回動するように結合されており、レバー付勢ばね47によって係止位置に向けて回動付勢されている。ラッチレバー45と連結レバー46の結合体は、絞セットマグネット48によって位置制御される。絞セットマグネット48は電磁石を内蔵し、この電磁石の通電制御に応じてプランジャー49を図4及び図5の左右方向へ進退させる。プランジャー49は、その進退方向と直交する方向に長軸を向けた長孔49aを有し、この長孔49aに対して連結レバー46に設けた連動ピン46aが嵌入されている。プランジャー49が進退すると、長孔49aと連動ピン46aを介して連結レバー46がレバー軸45xを中心として回動され、これと共にラッチレバー45も回動される。絞セットマグネット48の電磁石に通電しない状態では、プランジャー49が図4のように収納され、レバー付勢ばね47の付勢力に抗してラッチブレード45aとラッチ爪42bの係合を解除させる係止解除位置にラッチレバー45を保持する。絞セットマグネット48の電磁石に通電すると、図5のようにプランジャー49が進出状態となり、レバー付勢ばね47の付勢力によってラッチレバー45が係止位置に回動してラッチブレード45aがラッチ爪42bに係合し、これによりラッチギヤ42の回転を係止する。つまり、フォトインタラプタ43で設定絞り値に対応するパルス数が計数されたとき、絞セットマグネット48に通電することによって設定絞り値で絞り連係部材31を停止させることができる。以下の説明では、通電によるプランジャー49の進出状態を絞セットマグネット48のオン、通電解除によるプランジャー49の収納状態を絞セットマグネット48のオフと呼ぶ。
【0034】
ラッチレバー45は、レバー軸45xとラッチブレード45aの間に被押圧ピン(被押圧部)45bを有する。ラッチレバー45は、ラッチギヤ42に対する係止位置にあるとき、第2カムギヤ25のギヤ軸25xを中心としたラッチ解除固定カム26とラッチ解除可動カム28の移動軌跡上に被押圧ピン45bを位置させる。そして、被押圧ピン45bがラッチ解除固定カム26やラッチ解除可動カム28の押圧を受けることにより、ラッチレバー45が係止解除位置へ回動される。図中のN1は、ラッチレバー45が係止位置にある状態ときの被押圧ピン45bの位置を示し、N2は、ラッチレバー45が係止解除位置にあるときの被押圧ピン45bの位置を示している。
【0035】
ラッチ解除固定カム26は、第2カムギヤ25に対して固定的に設けられており、被押圧ピン45bを押圧することが可能な押圧腕部26aと、被押圧ピン45bには当接しない小径部26bを有する。
【0036】
図3及び図6に示すように、第2カムギヤ25にはギヤ軸25xを囲む半円状の親板50が固定され、この親板50上に、ギヤ軸25xと略平行かつ偏心したカム回動軸28xが設けられている。ラッチ解除可動カム28はカム回動軸28xを中心として回動可能に支持されている。ラッチ解除可動カム28は、その外面にラッチ押圧面部28aと回動ガイド面部28bを有し、さらにカム回動軸28xを中心とする外径方向へストッパアーム28cを突出させている。ストッパアーム28cは、親板50に設けたストッパ50aに係合することによって、図3、図6ないし図13の反時計方向への回動が規制され、ラッチ解除可動カム28は、このストッパ50aへストッパアーム28cを当接させる方向へ可動カム付勢ばね51によって回動付勢されている。
【0037】
第2カムギヤ25が原点位置(図3)にあるとき、ラッチ解除可動カム28は被押圧ピン45bに対して回動ガイド面部28bを若干離間させた状態で対向させている(図6、図7、図12及び図13に示すP0位置)。この原点位置から第2カムギヤ25が正方向(時計方向)に回転されると、ラッチ解除可動カム28は被押圧ピン45bから徐々に遠ざかり、やがて正方向への一回転が完了する手前で、ラッチ押圧面部28aを被押圧ピン45bに当接させる。ラッチレバー45が係止位置にあるときには、図12のF1位置でラッチ解除可動カム28のラッチ押圧面部28aが被押圧ピン45b(N1位置)に当接する。この状態から第2カムギヤ25の正方向回転を継続すると、ギヤ軸25xを中心としてラッチ解除可動カム28の位置が図12にF2、F3の順で示すように変化する。このときラッチ解除可動カム28には、被押圧ピン45bを押し込む反力として、カム回動軸28xを中心として図12の反時計方向へ回動させようとする力が作用する。しかし、当該方向へのラッチ解除可動カム28の回動はストッパアーム28cとストッパ50aの係合によって制限されている。よってラッチ解除可動カム28は、第2カムギヤ25に対してカム回動軸28xを中心とする相対回動(自転)を行うことなく、ギヤ軸25xを中心として第2カムギヤ25と一体に回動される。その結果、ラッチ解除可動カム28の位置が図12のF2、F3と変化するに伴い、ラッチ押圧面部28aによって押圧される被押圧ピン45bの位置が同図のN2、N3の順で変化し、ラッチレバー45が係止解除位置方向へ回動される。図12に示す被押圧ピン45bのN3位置は、ラッチ解除可動カム28がF3位置を通過する際に一時的に達するオーバーチャージ位置である。係止位置(被押圧ピン45bのN1位置)と係止解除位置(同N2位置)の間はラッチレバー45と連結レバー46が一体に回動し、係止解除位置(同N2位置)とオーバーチャージ位置(同N3位置)の間は、停止した連結レバー46に対してラッチレバー45が相対回動する。第2カムギヤ25のさらなる正方向回転によりラッチ解除可動カム28が図12のF3位置を通過してF4位置に達すると、ラッチレバー45のオーバーチャージ状態が解除されて被押圧ピン45bはN2位置に戻り、絞セットマグネット48によってラッチレバー45が係止解除位置に保持される。
【0038】
したがって、ラッチレバー45が係止位置(被押圧ピン45bのN1位置)にある状態で第2カムギヤ25を正方向に回転させると、ラッチ解除可動カム28によってラッチレバー45が係止位置から係止解除位置に押圧回動される。また、ラッチレバー45が係止解除位置(被押圧ピン45bのN2位置)に保持された状態で第2カムギヤ25を正方向に回転させた場合は、ラッチ解除可動カム28は図12のF1位置では被押圧ピン45bに当接せず、F2位置からF3位置への移行時のオーバーチャージ動作(N2位置とN3位置の間の被押圧ピン45bの往復移動)のみをラッチレバー45に行わせる。
【0039】
なお、図12から分かるように、第2カムギヤ25が正方向に回転するときにラッチ解除可動カム28のラッチ押圧面部28aから被押圧ピン45bに加わる力の方向が、ラッチレバー45が係止位置から係止解除位置に回動するときの被押圧ピン45bの移動軌跡K(実際はレバー軸45xを中心とする円弧状の軌跡であるが、近似した直線で示している)と近い向きになるように、ラッチ押圧面部28aの形状及び向きが設定されている。よって、力のロスがなく確実にラッチレバー45を係止解除位置に回動させることができる。
【0040】
一方、第2カムギヤ25が原点位置(図3、図6、図7)から逆方向(反時計方向)に回転されると、ラッチ解除可動カム28が、当該原点位置に対応したP0位置から被押圧ピン45bに接近して、回動ガイド面部28bを被押圧ピン45bに当接させる。図8ないし図11及び図13は、ラッチレバー45が係止解除位置にある状態で第2カムギヤ25を逆方向回転させた場合を示し、図14は、ラッチレバー45が係止位置にある状態で第2カムギヤ25を逆方向回転させた場合を示している。
【0041】
まず、ラッチレバー45が係止解除位置にある状態で第2カムギヤ25を逆方向回転させた場合を説明する。第2カムギヤ25の逆方向回転に伴い、図8及び図13のR1位置でラッチ解除可動カム28の回動ガイド面部28bが被押圧ピン45b(N2位置)に当接する。この状態から第2カムギヤ25の逆方向回転を続けると、回動ガイド面部28bと被押圧ピン45bの当接関係によって、ラッチ解除可動カム28に対して、カム回動軸28xを中心として図13の時計方向へ回動させようとする力が作用する。ここで、第2カムギヤ25の正方向回転時とは異なり、当該方向へのラッチ解除可動カム28の回動は規制されていないため、ラッチ解除可動カム28が、被押圧ピン45bを押圧移動させることなく、図9及び図13のR2位置、図10及び図13のR3位置、図11及び図13のR4位置の順で、可動カム付勢ばね51の付勢力に抗してストッパ50aからストッパアーム28cを離間させる方向にカム回動軸28xを中心として回動(自転)される。より詳しくは、ラッチ解除可動カム28のR1位置からR3位置まではいずれも、回動ガイド面部28bと被押圧ピン45bの当接箇所が、第2カムギヤ25の逆方向回転力に応じて図8ないし図10に矢印Vで示す方向の分力を生じさせる位置に設定されているため、被押圧ピン45bの外周面上を回動ガイド面部28bが摺接する態様でラッチ解除可動カム28が時計方向に回動(自転)される。このとき、被押圧ピン45bに対しては矢印Vと反対方向への反力が作用するが、この反力の作用方向は被押圧ピン45bの移動軌跡Kとの交差角が大きいため、被押圧ピン45bは移動されずにN2位置に留まり、ラッチレバー45が係止解除位置に保持される。
【0042】
第2カムギヤ25の逆方向回転に応じて図11及び図13のR4位置までラッチ解除可動カム28が達すると、被押圧ピン45bに対するラッチ解除可動カム28の当接箇所が、ラッチ解除可動カム28の回動中心(カム回動軸28xの軸線)と被押圧ピン45bの中心を結ぶ仮想線CL上に位置して、ラッチ解除可動カム28に対する矢印V方向の押圧力が解除される。この状態でのラッチ解除可動カム28側の当接箇所はラッチ押圧面部28aと回動ガイド面部28bの境界の丸みを帯びた突出部分であり、ラッチ解除可動カム28は被押圧ピン45bに制限されずに可動カム付勢ばね51の付勢方向(図11や図13の反時計方向)への回動が可能となる。そして、第2カムギヤ25の逆方向回転が継続されると、ラッチ解除可動カム28は被押圧ピン45bとの当接領域を通過して、可動カム付勢ばね51の付勢力によって、ストッパアーム28cをストッパ50aに当接させる位置(図11及び図13のR5位置)に復帰する。
【0043】
以上のように、ラッチ解除可動カム28は、R1位置からR4位置に至るまで、回動ガイド面部28bが被押圧ピン45bの外面の案内を受けながら、被押圧ピン45bを押圧移動させずにカム回動軸28xを中心とする逃げ回動(自転)を行う。この逃げ回動の方向は、可動カム付勢ばね51の付勢方向と反対(図13中の時計方向)である。一方、回動ガイド面部28bと被押圧ピン45bの当接が解除されるR4位置を過ぎると、可動カム付勢ばね51の付勢力によってラッチ解除可動カム28の回動方向が反転して、第2カムギヤ25に対する初期状態のR5位置に戻る。以上のラッチ解除可動カム28のR1位置からR5位置までの回動動作中は、ラッチ解除可動カム28に妨げられることなくラッチレバー45を係止解除位置から係止位置に回動させることができる。
【0044】
ラッチレバー45が係止位置にある状態で第2カムギヤ25を逆方向回転させた場合を図14に示す。この場合の動作は、被押圧ピン45bとラッチ解除可動カム28の間の当接箇所の若干の相違を除き、前述のラッチレバー45が係止解除位置にある場合と共通である。すなわち、ラッチ解除可動カム28は、図14のR11位置で回動ガイド面部28bを被押圧ピン45b(N1位置)に当接させ、続く第2カムギヤ25の逆方向回転に伴い、被押圧ピン45bとの当接関係により矢印V方向への押圧力を受けて、可動カム付勢ばね51の付勢力に抗してラッチ解除可動カム28をストッパ50aから離間させる方向(図14の時計方向)へカム回動軸28xを中心として回動(自転)される(R12位置、R13位置)。このラッチ解除可動カム28の逃げ回動によって、被押圧ピン45bはラッチレバー45の係止解除位置方向(N2位置)へ押圧移動されることなく、ラッチレバー45の係止位置(N1位置)に保持され続ける。さらに第2カムギヤ25の逆方向回転が継続されると、ラッチ解除可動カム28は被押圧ピン45bとの当接領域を通過して、可動カム付勢ばね51の付勢力によって図14中の反時計方向へ回動して、ストッパアーム28cをストッパ50aに当接させる位置(図14のR14位置)に復帰する。
【0045】
以上のように、第2カムギヤ25を逆方向に回転したときは、ラッチレバー45が係止位置と係止解除位置のいずれにある状態でも、第2カムギヤ25に対してラッチ解除可動カム28が相対回動(自転)することによって、ラッチレバー45を係止解除方向(移動軌跡Kの方向)に押圧移動させることなく被押圧ピン45bとの接触領域を通過することができる。
【0046】
図2にカメラ10の制御系の一部を概念的に示す。制御回路60は、レンズ鏡筒12に設けたレンズCPUとの通信によりカメラ10の動作を統括的に制御する。制御回路60には画像処理回路が含まれており、イメージセンサ16による光電変換で得られた被写体の画像信号を処理して電子画像を生成し、LCDモニタ18への画像表示や、メモリカード61への画像データの記録を行う。
【0047】
制御回路60は、メインスイッチ62、レリーズスイッチ63、プレビュースイッチ64、測光スイッチ65等の各種スイッチの入力を受ける。カメラボディ11には、半押しと全押し操作が可能なレリーズ釦が備えられ、このレリーズ釦の半押しで測光スイッチ65がオンになり、全押しでレリーズスイッチ63がオンになる。メインスイッチ62とプレビュースイッチ64はそれぞれ、カメラボディ11に設けた操作釦により独立してオンオフ操作することができる。第1カムギヤ21と第2カムギヤ25の回転位置(回転角)情報は、回転位置検知スイッチ66によって制御回路60に入力される。回転位置検知スイッチ66は、カムギヤ側に設けたブラシと、ミラーボックス13側に設けたコード板の摺接による導通状態の変化によって回転位置を検出するもので、その一部として第1カムギヤ21に設けたブラシ66aが図3に表れている。
【0048】
カメラ10はまた、シャッタスピード設定部材67と絞り値設定部材68を備える。シャッタスピード設定部材67と絞り値設定部材68の具体的態様は問わないが、例えばシャッタスピード設定部材67はカメラボディ11上に回動操作可能に設けたダイヤル、絞り値設定部材68はレンズ鏡筒12の外面に回動操作可能に設けたリングなどによって構成可能である。シャッタスピード設定部材67と絞り値設定部材68はそれぞれ、シャッタスピードと絞り値の設定を制御回路60のプログラムにより自動的に行わせるオート位置と、これらを手動で設定するマニュアル設定位置とに操作可能である。シャッタスピード設定部材67と絞り値設定部材68の両方をオート位置に設定すると、プログラムAE(自動露出)モードとなり、レリーズスイッチ63の操作のみで自動的に露出制御が行われる。シャッタスピード設定部材67をオート位置にして、絞り値設定部材68でオート以外の所望の絞り値を選択した場合には、シャッタスピードのみを制御回路60が自動的に決定する絞り優先AEモードになる。逆に絞り値設定部材68をオート位置にして、シャッタスピード設定部材67でオート以外の所望のシャッタスピードを選択すると、絞り値のみを制御回路60が自動的に決定するシャッタ優先AEモードとなる。これらのAEモードでは、絞り開放状態で測光ユニット72を用いて得られる測光値に基づいて制御回路60が露出制御を行う。シャッタスピード設定部材67と絞り値設定部材68の両方をオート位置以外の所望位置に合わせた場合には、その設定したシャッタスピードと絞り値で撮影が実行されるマニュアル露出モードとなる。
【0049】
カメラ10はさらにAF(自動焦点調節)装置69を備えている。AF装置69は、測距ユニット71を用いて被写体に対するデフォーカス量を検出して、デフォーカス量をなくすようにレンズ鏡筒12内のフォーカスレンズ群を移動させるものである。フォーカスモード切換スイッチによって、AF装置69を用いて自動的にピント合わせを行うAF(オートフォーカス)モードと、手動でピント合わせを行うMF(マニュアルフォーカス)モードとを選択することができる。AFモードが選択されているときには、測光スイッチ65がオンされると、測距手段で検出したデフォーカス量に基づいてAFモータが駆動され、焦点調節レンズ群を移動させる。
【0050】
以上の構成のカメラ10の動作と制御を説明する。以下の説明において、特に言及が無い場合は、制御回路60が制御の主体であるものとする。また、以下の説明ではプログラムAEモード及びAFモードが選択されているものとする。
【0051】
カメラ10のメインスイッチ62をオンすると、図16の処理に入る。この電源投入直後では、駆動制御装置20は図3、図4及び図6に示す初期状態(撮影待機状態)にある。すなわち、ミラー14は下降したファインダ観察位置にあり、シャッタ15はシャッタセットレバーにより機械的に走行が規制されたチャージ状態にあり、絞り12bは絞り連係部材31によって開放状態に保持されている。ラッチレバー45は係止解除位置に保持されている。この初期状態でプレビュースイッチ64のオンが入力されると(S1のYES)、後述する図19のプレビュー動作の処理に入る。プレビュースイッチ64をオンせずに(S1のNO)測光スイッチ65がオンされると(S2のYES)、測光ユニット72を用いた測光が行われ、測光結果に基づく演算がなされて絞り値及びシャッタスピードが自動設定される(S3)。また、測光スイッチ65のオンを受けて、測距ユニット71を用いた測距が行われ、AF装置69によるAF動作が実行される(S3)。続いてレリーズスイッチ63の状態をチェックし(S4)、レリーズスイッチ63のオンが所定時間以上入力されない場合(S4のNO)は、操作待機状態に戻る。
【0052】
レリーズスイッチ63のオンが入力されると(S4のYES)、図17に進んで露光制御が行われる。まず先幕保持マグネット52と後幕保持マグネット53が通電(オン)され、シャッタ15を構成する先幕15aと後幕15bが電磁的に保持される(S5)。但し、この段階では第1カムギヤ21が原点位置にあるため、シャッタセットレバーによる機械的なシャッタ保持も行われている。続いてモータ19が正転駆動され(S6)、第1カムギヤ21と第2カムギヤ25がそれぞれ正方向(図3において第1カムギヤ21は反時計方向、第2カムギヤ25は時計方向)に回転される。
【0053】
第2カムギヤ25の正方向の回転によって、絞りチャージレバー30が強制開放位置から絞り込み許容位置への回動を行い、絞り12bの絞り込みが開始される(S7のA)。具体的には、第2カムギヤ25の原点位置ではカムフォロア30aに対して絞りチャージカム27の定径カム部27aが当接して絞りチャージレバー30を強制開放位置に保持させているが、第2カムギヤ25の回転によってカムフォロア30aとの対向位置から定径カム部27aが退避する。すると、カムフォロア30aをギヤ軸25xに接近させる方向(すなわち絞り込み許容位置)への絞りチャージレバー30の回動が許容されるため、レバー復元ばね33の付勢力によって絞りチャージレバー30が図3の反時計方向への回動を行う。その結果、制御アーム30bによって絞り開放位置に押さえられていた絞り連係部材31が絞り込み付勢ばね34の付勢力によって最小絞り位置に向けて上昇し、絞り12bの絞り込み動作が開始される。このときラッチ解除可動カム28は、図6及び図7で示す位置からスタートして、被押圧ピン45bに対して離れていく方向へ変位するため、ラッチレバー45の位置制御には関与しない。ラッチレバー45と連結レバー46は、オフ(非通電)状態にある絞セットマグネット48によって、ラッチブレード45aをラッチ爪42bに係合させない係止解除位置に保持されている。
【0054】
また、原点位置からの第1カムギヤ21の正方向の回転によって、該第1カムギヤ21上のミラー制御カム(不図示)がカム当接部22bを押し上げてミラー駆動レバー22をミラーダウン位置(図3)からミラーアップ位置へ回動させ、ミラー14がファインダ観察位置(図3)から露光用位置への上昇回動を行う(S7のB)。さらに、第1カムギヤ21の正方向の回転によって、シャッタ制御カム(不図示)によってシャッタセットレバーがシャッタ保持位置からシャッタ開放位置へ回動され、シャッタ15に対する機械的保持が解除される(S7のC)。
【0055】
絞り込み動作で絞り連係部材31が上方へ移動されると、その移動力がラック31bとダブルギヤ41を介して伝えられてラッチギヤ42が回転する。すると、ラッチギヤ42に形成したスリット42cがフォトインタラプタ43の投光部と受光部の間を通過する毎にパルスが発生する。このパルス数をカウントし、先にS3で設定された絞り値に対応するパルス数に達したら(S8のYES)、絞セットマグネット48に通電(オン)する。これによりラッチレバー45と連結レバー46がレバー付勢ばね47の付勢力によって図4の反時計方向に回動し、図5に示すようにラッチブレード45aがラッチ爪42bに噛合してラッチギヤ42の回転を規制する。すると、ダブルギヤ41の回転が規制され、該ダブルギヤ41の小径ギヤ41aとラック31bの噛合関係により絞り連係部材31の上昇動作が規制されて、絞り12bが設定絞り値で固定される(S9)。なお、設定された絞り値が開放絞りである場合には、絞り連係部材31の上昇移動による実質的な絞り込み動作が行われる前に、ラッチレバー45が係止位置に回動される。一方、絞りチャージレバー30は、絞り連係部材31の停止位置に関わらず、図5に示す絞り込み許容位置まで回動される。
【0056】
S7におけるミラー14の露光用位置への回動(ミラーアップ)とシャッタ15の機械的保持解除、及びS7からS9にかけての絞り設定動作は、カムギヤ21、25が所定の回転位置に達するまでに完了する。この所定の回転位置を露光可能位置とし、露光可能位置にカムギヤ21、25が達したか否かを、回転位置検知スイッチ66を用いて検出する。露光可能位置への到達信号が入力されると(S10のYES)、モータ19の正転駆動を停止し(S11)、シャッタ15を開いて露光を行う。この露光動作では、まず先幕保持マグネット52を通電解除(オフ)して機械的係止解除済みの先幕15aを走行させ(S12)、設定されたシャッタスピードに基づくシャッタ開閉時間の経過をチェックし(S13)、所定時間を経過したところで後幕保持マグネット53を通電解除(オフ)して後幕15bを走行させる(S14)。一連の露光動作が完了すると(S15のYES)、図18に示す露光後の復帰処理に進む。
【0057】
露光後の復帰処理では、モータ19を再び正転駆動させる(S16)。モータ19の正転駆動により第2カムギヤ25が露光可能位置から正方向に回転すると、ラッチ解除固定カム26の押圧腕部26aが被押圧ピン45bに当接し、これを押圧してラッチレバー45をラッチギヤ42との係止位置から係止解除位置(図5の時計方向)へ回動させる。これによりラッチブレード45aとラッチ爪42bの係合が解除されて、絞り固定が解除される(S17のA)。露光後は絞セットマグネット48の通電が解除(オフ)され、ラッチ解除固定カム26による絞り固定解除後のラッチレバー45は、絞セットマグネット48によって係止解除位置に保持される。このとき、絞りチャージレバー30は制御アーム30bを上方に退避させた絞り込み許容位置にあるので、絞り固定機構40による固定が解除された絞り連係部材31は、絞り込み付勢ばね34の付勢力によって、絞り12bを最小開口にさせる最小絞り位置まで一旦上昇する。
【0058】
また、モータ19の正転駆動により第1カムギヤ21が露光可能位置から正方向に回転にすると、ミラー制御カム(不図示)がカム当接部22bとの当接を解除し、付勢ばね22cの付勢力によってミラー駆動レバー22がミラーアップ位置からミラーダウン位置(図3)へ向けて回動され、ミラー14が露光用位置からファインダ観察位置(図3)へ下降回動される(S17のB)。さらに、第1カムギヤ21に設けたシャッタ制御カム(不図示)がシャッタセットレバーをシャッタ開放位置からシャッタ保持位置へ向けて回動させ、シャッタ15の機械的係止とシャッタチャージ動作が行われる(S17のC)。
【0059】
やがて、ミラー14がファインダ観察位置に達し、シャッタチャージも完了するが、この段階で各カムギヤ21、25は原点位置(図3、図6)まで達しておらず、モータ19の正転駆動は継続される。そして、ミラーダウン完了及びシャッタチャージ完了からカムギヤ21、25の原点位置到達までの所定のタイミングで、第2カムギヤ25に設けた絞りチャージカム27の非定径カム部27cがカムフォロア30aに当接し、第2カムギヤ25の正方向回転に応じて、レバー復元ばね33の付勢力に抗して絞りチャージレバー30を絞り込み許容位置から強制開放位置へ向けて回動させる。そして、第2カムギヤ25が図6の原点位置付近に達し、カムフォロア30aへの当接部分が絞りチャージカム27の定径カム部27aに変化すると、カムフォロア30aが強制開放位置に保持される。この絞りチャージレバー30の回動によって制御アーム30bが被押圧部31aを押し下げ、絞り込み付勢ばね34の付勢力に抗して絞り連係部材31が最小絞り位置から絞り開放位置へ移動され、絞り12bが開放される(S18)。このように、露光後の各部の復帰動作においては、ファインダ観察位置へのミラー14の下降とシャッタチャージが完了してから(S17のB、C)、絞り12bの開放動作(S18)が行われるようにタイムラグが設定されている。このタイムラグを用いて、次に説明するプレビュー動作が行われる。
【0060】
回転位置検知スイッチ66によって第1カムギヤ21と第2カムギヤ25の原点位置復帰が検出されると(S19のYES)、モータ19の正転駆動を停止させて(S20)、レリーズシーケンスが終了する。なお、第2カムギヤ25が正方向の回転で原点位置に復帰する直前に、被押圧ピン45bの近傍領域をラッチ解除可動カム28が通過するが、このときラッチレバー45は露光後のラッチ解除固定カム26の操作によって係止解除位置に保持されており、被押圧ピン45bは図12のN2位置にある。そして、図12で示すラッチ解除可動カム28の通過(F1〜F4)に伴い、被押圧ピン45b(ラッチレバー45)が、N2位置から一旦オーバーチャージ位置(N3)に押圧され、再びN2の位置に戻る。ラッチレバー45がこのオーバーチャージ動作を行うときには、絞セットマグネット48によって回動規制された連結レバー46に対してラッチレバー45が相対回動する。
【0061】
次に、プレビューを行う場合を説明する。図16のS1においてプレビュースイッチ64がオンされると(S1のYES)、図19の処理に入る。このとき駆動制御装置20は図3及び図4に示す初期状態(撮影待機状態)にあり、ミラー14がファインダ観察位置に保持され、シャッタ15は機械的に走行が規制されたチャージ状態にあり、絞り12bは絞り連係部材31によって開放状態に保持されている。また、ラッチレバー45は係止解除位置に保持されている。まず、プレビュースイッチ64がオンされるとこれに連動して測光スイッチ65がオンになり、測光、演算が行われて絞り値が設定され、またAF動作が行われる(S21)。
【0062】
続いてモータ19が逆転駆動され(S22)、第1カムギヤ21と第2カムギヤ25がそれぞれ逆方向(図3において第1カムギヤ21は時計方向、第2カムギヤ25は反時計方向)に回転される。前述したように、モータ19の正転駆動で実行される撮影動作時には、露光後にミラー14の下降が完了してから絞り12bの開放動作が行われる。そのため、モータ19を逆転駆動した場合には、ミラー14がファインダ観察位置からの上昇回動を行う前に絞り12bの絞り込み動作が行われる(S23〜S26)。より詳しくは、この絞り込み動作は、第2カムギヤ25が原点位置から逆方向回転を行い、絞りチャージカム27の定径カム部27aによる絞りチャージレバー30の強制開放位置への保持が解除され(図8ないし図11)、絞り連係部材31が絞り込み付勢ばね34の付勢力により上昇することで開始される(S23)。絞り連係部材31が上昇するとラッチギヤ42が回転し、フォトインタラプタ43によって生成されるスリット42cの通過パルスを計数し、S21で設定された絞り値に対応するパルス数に達したら(S24のYES)、絞セットマグネット48に通電(オン)してラッチレバー45を係止位置へ回動させて、ラッチギヤ42の回転を規制して絞り12bを固定する(S25)。これにより絞り固定機構40は図5の状態になる。この一連の絞り設定動作が完了し、かつミラー14の上昇動作が生じない状態は、回転位置検知スイッチ66によってカムギヤ21、25の特定回転位置(プレビュー位置)として検出することができ、当該プレビュー位置に達したことが検知されると(S26のYES)、モータ19の逆転駆動を停止する(S27)。
【0063】
S27のモータ停止で、ファインダ光学系17を通して設定された絞り値での被写界深度を確認することができるプレビュー状態になる。このとき、S21においてAF動作が行われているため、合焦状態の構図で深度確認することができる。なお、絞りチャージレバー30は、絞り連係部材31が示す絞り値にかかわらず、レバー復元ばね33の付勢力によって図5に示す絞り込み許容位置まで回動されている。
【0064】
第2カムギヤ25がプレビュー制御用の逆方向回転(S22からS27まで)を行うときには、図7ないし図11、図13及び図14を参照して既述したように、ラッチ解除可動カム28は、それ自体がカム回動軸28xを中心に回動することで、ラッチレバー45の被押圧ピン45bに対して絞り係止解除方向への移動を行わせないように構成されている。絞りチャージカム27の定径カム部27aによる絞りチャージレバー30の保持(絞り開放)状態は、第2カムギヤ25が図7に示す原点位置から図8に示す位置まで逆方向回転するまで維持され、図8の位置を超えると、絞りチャージレバー30のカムフォロア30aの当接対象が定径カム部27aから非定径カム部27cに変わり、第2カムギヤ25の逆方向回転に応じて、レバー復元ばね33の付勢力によって絞りチャージレバー30が強制開放位置から絞り込み許容位置に向けて回動される(図9ないし図11)。これに応じて絞り連係部材31の上昇による絞り込みが行われるが、この間に設定絞り値保持のためにラッチレバー45が係止位置へ回動されても、被押圧ピン45bに当接したラッチ解除可動カム28はカム回動軸28xを中心に自転し、ラッチレバー45を絞り係止解除方向に押圧することがない(図14)。したがって、ラッチ解除可動カム28が被押圧ピン45bとの接触領域を通過するのを待たずに、絞り12bの絞り込み動作(定径カム部27aによる絞りチャージレバー30の保持状態の解除)と、それに続く設定絞り値での固定(ラッチブレード45aとラッチ爪42bの係合)を生じさせることができる。なお、設定絞り値への固定動作のタイミングによっては、ラッチ解除可動カム28が被押圧ピン45bとの接触領域を通過するときに、ラッチレバー45が係止解除位置に位置する態様も有り得る。前述の通り、この場合も、ラッチ解除可動カム28が係止位置方向への被押圧ピン45bの移動を許容しつつ(被押圧ピン45bを係止解除方向へ押圧せずに)被押圧ピン45bとの接触領域を通過するため(図13参照)、ラッチ解除可動カム28の通過タイミングに制約されずに絞り固定機構40の動作を設定することができる。
【0065】
仮に、ラッチ解除可動カム28が以上のような構成を備えず、第2カムギヤ25の正方向回転と逆方向回転のいずれでも同等に被押圧ピン45bを係止解除方向に押圧すると仮定すると、ラッチ解除可動カム28が被押圧ピン45bとの接触領域を通過するまで絞りチャージレバー30を強制開放位置に維持させるべく、図15(B)に比較例として示すように、定径カム部27a′を周方向に長く形成した形状の絞りチャージカム27′を用いる必要がある。これに対して、本実施形態のラッチ解除可動カム28を用いた構成によると、図15(A)に示すように、絞りチャージカム27における定径カム部27aの周方向長さを短くすることができる。定径カム部27aはその周方向位置のいずれにおいても、絞りチャージレバー30を強制開放位置に保持させるという共通の機能を備えているため、定径カム部27aの周方向長の短縮は、プレビュー制御用に用いる第2カムギヤ25の回転角を小さくできることを意味する。前述のように、第2カムギヤ25と同期して回転される第1カムギヤ21は、ミラー14やシャッタ15の動作を制御するミラー制御カムやシャッタ制御カムを有しており、プレビュー制御用の回転角を小さく抑えられると、ミラー14やシャッタ15の動作制御に用いる回転角を相対的に大きく確保できるため、そのカム曲線の設計自由度が高くなる。
【0066】
プレビュー状態では、レリーズスイッチ63をオンにして撮影をするか否かを選択できる(S28)。撮影に入る場合は後述する図20の処理に入る。レリーズスイッチ63をオンせずにプレビュースイッチ64がオフされると(S29のYES)、モータ19が正転駆動される(S30)。これにより、絞り12bのリセット動作が行われる(S31)。具体的には、正方向に回転する第2カムギヤ25が原点位置に戻る前に、第2カムギヤ25に設けたラッチ解除可動カム28が被押圧ピン45bを押圧してラッチレバー45を係止解除位置に回動させ、ラッチブレード45aとラッチ爪42bの係合を解除させて絞り12bの固定を解除する。この絞り固定解除に際しては、先に図12を参照して説明したように、第2カムギヤ25に対するカム回動軸28xを中心としたラッチ解除可動カム28の相対回動が行われず、ラッチ解除可動カム28は、第2カムギヤ25と一体にギヤ軸25xを中心として回転しながらラッチレバー45に対する係止解除動作を行わせる。つまり、プレビュー動作に関し、設定絞り値への絞り込み動作(第2カムギヤ25の逆方向回転)では、ラッチ解除可動カム28が第2カムギヤ25に対して相対回動してラッチレバー45に対する係止解除操作を行わないのに対して、プレビュー終了後の絞り固定解除動作(第2カムギヤ25の正方向回転)では、ラッチ解除可動カム28が第2カムギヤ25と一体化されてラッチレバー45に対する係止解除操作を行う。また、正方向に回転される第2カムギヤ25に設けた絞りチャージカム27の非定径カム部27cがカムフォロア30aを押し下げ、絞りチャージレバー30の下降回動が開始される。第2カムギヤ25が原点位置に戻る若干手前で、絞りチャージカム27の定径カム部27aがカムフォロア30aに当接して、絞りチャージレバー30を強制開放位置に保持させる。これにより制御アーム30bが被押圧部31aを押圧し、絞り連係部材31が絞り開放位置に保持される。
【0067】
回転位置検知スイッチ66によりカムギヤ21、25の原点位置復帰を検出したら(S32のYES)、モータ19の正転駆動を停止して(S33)、プレビュー処理が完了する。
【0068】
プレビュー中にレリーズスイッチ63のオンを選択すると(S28のYES)、プレビューからの撮影動作を示す図20の処理に入る。モータ19の正転駆動(S34)と、それに伴う第2カムギヤ25の正方向回転による絞り12bの固定解除及び開放動作(S35)は、図19におけるプレビュー終了後のS30、S31と同様の動作である。回転位置検知スイッチ66によりカムギヤ21、25の原点位置復帰を検出したら(S36のYES)、絞り開放状態で改めて測光、演算とAF動作を行い(S37)、図17の処理に進んで通常撮影動作が行われる。
【0069】
以上のように、本実施形態のカメラ10では、モータ19の正転駆動による第1カムギヤ21、第2カムギヤ25の正方向(第1の方向)の1回転によって撮影動作を行い、モータ19の逆転駆動による第1カムギヤ21、第2カムギヤ25の逆方向(第2の方向)の途中位置までの回転でプレビュー用の絞り設定を行う。これにより、プレビュー機能を備えつつ、通常の撮影時における露光動作までのタイムラグを小さくすることができる。そして、ラッチ解除可動カム28は、第2カムギヤ25の逆方向回転による絞り設定時にはラッチレバー45を操作せず、プレビュー後の第2カムギヤ25の正方向回転時にのみラッチレバー45とラッチギヤ42の係止解除を行わせるため、プレビュー制御用のカムギヤ回転角を相対的に小さくして、駆動制御装置20における設計の自由度を高めることができる。
【0070】
なお、本発明は以上の図示実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態では、第1カムギヤ21がミラー14とシャッタ15の動作制御を行うものとしたが、第1カムギヤ21にミラー14の制御のみを行わせ、シャッタ15は別の手段によって制御することもできる。
【符号の説明】
【0071】
10 一眼レフカメラ
12b 可変開口絞り
14 クイックリターンミラー
15 シャッタ
19 モータ
20 駆動制御装置
21 第1カムギヤ(ミラー制御機構)
22 ミラー駆動レバー(ミラー制御機構)
25 第2カムギヤ(回転カム部材)
26 ラッチ解除固定カム(固定カム)
27 絞りチャージカム(開放保持カム)
27a 定径カム部
28 ラッチ解除可動カム(選択係止解除手段、可動カム)
28a ラッチ押圧面部
28b 回動ガイド面部
28c ストッパアーム
30 絞りチャージレバー(中間レバー)
30a カムフォロア(開放保持カムへの当接部)
31 絞り連係部材(絞り駆動部材)
31b ラック
40 絞り固定機構(絞り固定手段)
41 ダブルギヤ(中間ギヤ)
42 ラッチギヤ
42b ラッチ爪
42c スリット
43 フォトインタラプタ
45 ラッチレバー(係止レバー)
45a ラッチブレード(係止部)
45b 被押圧ピン(被押圧部)
46 連結レバー
48 絞セットマグネット
50 親板
50a ストッパ
51 可動カム付勢ばね(可動カム付勢部材)
60 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光路上に設けられ撮影開口の大きさを可変にさせる絞りを備え、被写体観察時に上記絞りを設定絞り値に固定するプレビュー状態を選択可能な撮像装置において、
上記絞りに最大開口を形成させる絞り開放位置と、該絞りに最小開口を形成させる最小絞り位置に移動可能で、最小絞り位置に向けて付勢された絞り駆動部材;
正逆に回転可能な回転カム部材に設けられ、該回転カム部材が原点位置にあるとき上記絞り駆動部材を絞り開放位置に保持させ、該回転カム部材が原点位置から回転することにより上記絞り駆動部材の最小絞り位置方向への移動を許す開放保持カム;
上記回転カム部材の原点位置では上記絞り駆動部材に対する係止を解除し、該回転カム部材が原点位置から回転して上記開放保持カムによる絞り駆動部材の移動規制が解除されたとき、設定された絞り値に対応する位置で絞り駆動部材を係止する絞り固定手段;及び
上記回転カム部材に設けられ、該回転カム部材の第1の方向の回転では、上記絞り駆動部材に対する上記絞り固定手段の係止解除を行い、該回転カム部材の上記第1の方向と反対の第2の方向の回転では、該係止解除を行わない選択係止解除手段;
を備えたことを特徴とする撮像装置の絞り制御機構。
【請求項2】
請求項1記載の撮像装置の絞り制御機構において、撮像光学系からの被写体光を光学ファインダ側に反射するファインダ観察位置と、該被写体光を反射せずに撮像面側に通す露光用位置とに動作可能なミラーを備え、上記プレビュー状態では、上記ミラーをファインダ観察位置に保持しながら上記絞りを設定絞り値に固定する撮像装置の絞り制御機構。
【請求項3】
請求項2記載の撮像装置の絞り制御機構において、上記回転カム部材が上記原点位置から上記第1の方向に一回転する間にファインダ観察位置から露光用位置へのミラーの往復動作を行わせ、かつ上記回転カム部材が上記原点位置から上記第2の方向に回転するとき、少なくとも上記絞り固定手段が上記絞り駆動部材を係止するまでミラーをファインダ観察位置に保持させるミラー制御機構を備え、
撮影動作時には、上記回転カム部材を上記原点位置から上記第1の方向に一回転させ、
上記プレビュー時には、上記ミラー制御機構によりミラーがファインダ観察位置に保持されかつ上記絞り固定手段による絞り駆動部材の係止が行われる位置まで、上記回転カム部材を上記原点位置から第2の方向に回転させ、
該プレビュー状態の解除時には、上記回転カム部材を第1の方向に回転させて上記選択係止解除手段による絞り駆動部材の係止解除を行う撮像装置の絞り制御機構。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の撮像装置の絞り制御機構において、上記絞り固定手段は、上記絞り駆動部材の最小絞り位置方向への移動を規制する係止位置と、該移動規制を解除する係止解除位置に回動可能な係止レバーを備え、
上記選択係止解除手段は、上記回転カム部材上に回動可能に支持された可動カムを備え、
上記係止レバーが係止位置にあるとき、該係止レバーに設けた被押圧部が上記回転カム部材の回転軸を中心とする上記可動カムの移動軌跡上に位置し、上記回転カム部材の上記第1の方向の回転では、上記可動カムは回転カム部材に対する相対回動を行わずに上記被押圧部を押圧して上記係止レバーを上記係止解除位置へ回動させ、上記回転カム部材の上記第2の方向の回転では、上記可動カムは上記被押圧部への当接に応じて該被押圧部の位置を変化させずに上記回転カム部材に対して相対回動される撮像装置の絞り制御機構。
【請求項5】
請求項4記載の撮像装置の絞り制御機構において、上記係止レバーが係止解除位置にあるときにも、上記回転カム部材の上記第2の方向の回転に応じて、上記可動カムが上記被押圧部に当接して該被押圧部の位置を変化させずに上記回転カム部材に対して相対回動される撮像装置の絞り制御機構。
【請求項6】
請求項4または5記載の撮像装置の絞り制御機構において、上記回転カム部材上に設けられ上記可動カムの回動を規制するストッパと、該ストッパへの当接方向に可動カムを付勢する可動カム付勢部材とを有し、
上記回転カム部材の上記第1の方向への回転によって上記可動カムが上記係止レバーの被押圧部を押圧するとき、該可動カムは上記ストッパに当接して上記回転カム部材に対する回動が規制され、
上記回転カム部材の上記第2の方向への回転によって上記可動カムが上記係止レバーの被押圧部に当接するとき、該可動カムは上記ストッパから離れる方向に回動される撮像装置の絞り制御機構。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか1項記載の撮像装置の絞り制御機構において、上記絞り固定手段は、さらに、
上記絞り駆動部材に形成したラック;
該ラックに噛合する中間ギヤ;及び
該中間ギヤに噛合し、外周に複数のラッチ爪が形成されたラッチギヤ;
を備え、
上記係止レバーは、上記係止位置で上記ラッチギヤのラッチ爪に係合し、上記係止解除位置で該係合を解除する係止部を有している撮像装置の絞り制御機構。
【請求項8】
請求項4ないし7のいずれか1項記載の撮像装置の絞り制御機構において、上記回転カム部材は、原点位置から上記第1の方向に回転するとき、上記可動カムよりも先に上記係止レバーに当接して上記係止位置から係止解除位置へ回動させる固定カムを備えている撮像装置の絞り制御機構。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項記載の撮像装置の絞り制御機構において、上記開放保持カムは、上記回転カム部材の回転軸を中心とした半径方向位置が一定の定径カム部と、該定径カム部よりも小径の逃げカム部を有し、
上記開放保持カムへの当接部を有する中間レバーを備え、
上記中間レバーは、上記当接部が上記定径カム部へ当接するとき上記絞り駆動部材を絞り開放位置に保持させ、上記当接部が上記逃げカム部に対向して位置するとき該当接部を上記回転カム部材の回転軸へ接近させる方向へ回動して上記絞り駆動部材に対する保持を解除する撮像装置の絞り制御機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2012−150325(P2012−150325A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9564(P2011−9564)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(311015207)ペンタックスリコーイメージング株式会社 (81)
【Fターム(参考)】