説明

撮像装置モジュール

【課題】 撮像素子,電子部品と外部接続端子との電気的な干渉を小さくすることによって高精度な画像が得られ、また外部接続端子を通して効率良く放熱でき、また位置精度よく車両等に取り付けることができる撮像装置モジュールを得ること。
【解決手段】 撮像装置モジュールMは、第1の主面2aに撮像素子6が搭載されているとともに第2の主面2bに撮像素子6から出力された電気信号を外部に出力する接続端子7aが設けられた撮像素子基板2と、撮像素子6に光を集光するレンズ1a〜1cを保持するとともに撮像素子基板2の第1の主面2aに固定される筒状のレンズ保持部材3と、レンズ保持部材3の側面から撮像素子基板2の第2の主面2bにかけて包囲するモールド樹脂10とを具備している。撮像素子6,電子部品と外部接続端子5との電気的な干渉が小さく高精度な画像が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体イメージセンサ等の撮像素子を用いた撮像装置モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、小型の撮像装置モジュールとして、被写体からの光を電気信号に変換する撮像素子としてCCDイメージセンサ等の半導体イメージセンサを用い、撮像素子が搭載された撮像基板と、光を集光するレンズを支持するレンズ支持用筒部が設けられたホルダと、一部がホルダに挿入されて支持されるとともに突出部が撮像基板を貫通して撮像素子をレンズに対向させて撮像基板を支持する複数の支持ピンとを具備した撮像装置モジュールが開示されている。
【0003】
また、特許文献1に開示された撮像装置モジュールは、ホルダには支持ピンおよび撮像基板の外側に位置する外郭部が設けられており、別途用意した凹部を有するケースの開口周縁部を外郭部に当接することにより構成された空間内に撮像基板が収納されて保護されている。このケースには、撮像装置モジュールと外部の電気装置との間で電気信号を入出力する外部ケーブルが接続される配線部材を有している。配線部材は、撮像基板を収納する空間の内部から外部へ通じており、撮像基板に搭載されたコネクタと配線ケーブルとにより電気的に接続されている。
【0004】
配線ケーブルとしては、例えば銅線を樹脂チューブで被覆した被覆線の束からなり、どの方向に対しても変形(湾曲)可能なフレキシブルなものが用いられる。ホルダへのケースの取り付けは、例えば、予めコネクタから配線部材までの距離よりも長めとした配線ケーブルを準備しておいて、配線ケーブルの一方端をコネクタに接続するとともに他方端を配線部材に接続し、配線ケーブルを湾曲させながらホルダにケースを近づけていき、ケースの開口周縁部をホルダの外郭部に当接させ、両者を固定する組立工程により行なわれる。
【特許文献1】特開2007−28430号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した組立工程において、従来の撮像装置モジュールは、撮像基板を収納するケース等の空間内で決められた位置に配線ケーブルが定まりにくいという問題点があった。
【0006】
撮像基板は撮像素子および撮像素子を動作させるための電気回路を構成するための電子部品が搭載されたものであり、電子部品には種々の電気信号が流れる。このような状態で、配線ケーブルの位置が、撮像基板を収納するケース等の空間内で決められた位置に定まらないので、配線ケーブルの位置によっては、撮像基板と配線ケーブルとの間の電気的な干渉が大きくなり、配線ケーブルを通過する電気信号が不安定になるという問題点があった。
【0007】
また、電気回路で発生した熱を、配線ケーブルを介して外部に放熱しようとしても、配線ケーブルの余長が長いため、効率よく放熱ができないばかりか、熱が配線ケーブルに滞留することにより、撮像装置モジュールの内部温度が安定せず、安定した撮像特性が得られないという問題点もあった。
【0008】
また、従来の撮像装置モジュールにおいては、小型化のために、撮像素子と信号処理回路とが同一の撮像基板に実装されていた。しかしながら、信号処理回路においては、信号を生成し処理するために、多くの電力が必要であり、そのため、撮像素子自体が発熱し、その熱が撮像素子に影響を及ぼし、熱雑音となり撮像特性に悪影響を与えるという問題点もあった。そればかりか、信号処理回路から発生するノイズも撮像素子に悪影響を与え、撮像素子の特性を劣化させるという問題点もあった。
【0009】
さらに、従来の撮像装置モジュールにおいては、それを車両などに取り付ける際に、車両に取り付けるための別体のブラケットに取り付け、さらにブラケットを車両に取り付ける必要があった。車載用カメラにおいては、その使用に際して、車両への取り付けについては位置精度よく取り付ける必要がある。しかしながら、撮像装置モジュールをブラケットに取り付け、さらにブラケットを車両に取り付けることによって、取り付けの位置ずれが大きくなる。その結果、適正な撮像エリアを撮像できなくなって死角が発生し、駐車の操作がし難くなる、あるいは、車両の近くの人、他の車両および障害物との間隔を認識し難くなる、といった問題点があった。
【0010】
本発明は以上のような従来の技術における問題点を解決すべく完成されたものであり、その目的は、電子部品と外部接続端子との電気的な干渉を小さくして外部接続端子を通過する電気信号を安定化させることによって高精度な画像が得られ、外部接続端子を通して効率良く放熱でき、また、位置精度よく車両等に取り付けることができる撮像装置モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の撮像装置モジュールは、第1の主面に撮像素子が搭載されているとともに第2の主面に前記撮像素子から出力された電気信号を外部に出力する接続端子が設けられた撮像素子基板と、前記撮像素子に光を集光するレンズを保持するとともに前記撮像素子基板の前記第1の主面に固定される筒状のレンズ保持部材と、該レンズ保持部材の側面から前記撮像素子基板の前記第2の主面にかけて包囲するモールド樹脂とを具備していることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の撮像装置モジュールは、好ましくは、前記撮像素子基板の前記第2の主面と対向して配置され、前記第2の主面に対向する一方の主面に、前記接続端子と接続される中継接続端子が設けられているとともに前記電気信号に基づいて前記撮像素子を制御する信号処理回路が形成された信号処理回路基板が、さらに前記モールド樹脂中に存在することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の撮像装置モジュールは、好ましくは、前記信号処理回路基板は、他方の主面に、該他方の主面に直交する方向に沿って延びるとともに一端部が前記モールド樹脂から外部に露出した外部接続端子が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の撮像装置モジュールは、好ましくは、前記モールド樹脂は、表面に外部装置に取り付けるための取付部が形成された張出部を有することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の撮像装置モジュールは、好ましくは、前記レンズ保持部材は、アルミニウムまたは鉄を主成分とする金属材料から成るとともに表面の一部にニッケル,金または錫から成るメッキ層が形成されており、前記撮像素子基板の前記第1の主面にハンダを介して固定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の撮像装置モジュールによれば、第1の主面に撮像素子が搭載されているとともに第2の主面に撮像素子から出力された電気信号を外部に出力する接続端子が設けられた撮像素子基板と、撮像素子に光を集光するレンズを保持するとともに撮像素子基板の第1の主面に固定される筒状のレンズ保持部材と、レンズ保持部材の側面から撮像素子基板の第2の主面にかけて包囲するモールド樹脂とを具備していることから、従来撮像素子基板を収容していたケース等が不要となり、その結果、ケース等の空間内に設けられていた配線ケーブルが不要となるので、撮像素子および電子部品等と配線ケーブルとの間の電気的な干渉がなくなり、撮像素子から出力された電気信号が安定する。
【0017】
また、撮像素子および電子部品等で発生した熱を、配線ケーブルを介することなく速やかに外部に放熱できるので、効率よく放熱でき、また、撮像装置モジュールの内部温度が安定して安定した撮像特性が得られる。
【0018】
また、撮像素子基板を収容するためのケースが不要となり、撮像装置モジュールが小型軽量化される。
【0019】
さらに、撮像装置モジュールを、使用方法,使用目的に合わせて自由な形状に形成することができる。
【0020】
また、本発明の撮像装置モジュールによれば、撮像素子基板の第2の主面と対向して配置され、第2の主面に対向する一方の主面に、接続端子と接続される中継接続端子が設けられているとともに電気信号に基づいて撮像素子を制御する信号処理回路が形成された信号処理回路基板が、さらにモールド樹脂中に存在するときには、信号処理回路基板が撮像素子基板と別体となってモールド樹脂中に設けられる。その結果、信号処理回路基板で発生した熱が撮像素子に影響を及ぼすことを大幅に低減することができ、撮像素子の熱による特性の劣化を有効に抑制することができる。
【0021】
また、信号処理回路基板のみをシールド用導体で囲むことが容易にでき、ノイズ特性に優れた撮像装置モジュールを得ることができる。
【0022】
また、本発明の撮像装置モジュールによれば、信号処理回路基板は、他方の主面に、その他方の主面に直交する方向に沿って延びるとともに一端部がモールド樹脂から外部に露出した外部接続端子が設けられているときには、信号処理回路基板へ入出力される電気信号を外部接続端子によって、信号処理回路基板の他方の主面に直交する方向に沿って引き出すため、外部接続端子に信号処理回路で発生したノイズが重畳することを抑制することができる。従って、ノイズ特性(S/N比)に優れた撮像装置モジュールが得られる。
【0023】
また、本発明の撮像装置モジュールによれば、モールド樹脂は、表面に外部装置に取り付けるための取付部が形成された張出部(ブラケット部)を有するときには、撮像装置モジュールを別体のブラケットに取り付けてさらにブラケットを車両等に取り付けることが不要となり、取り付けによる位置ずれを小さくすることができる。その結果、適正な撮像エリアを撮像できるようになり、撮像エリアの精度が高い撮像装置モジュールとなる。
【0024】
また、本発明の撮像装置モジュールによれば、レンズ保持部材は、アルミニウムまたは鉄を主成分とする金属材料から成るとともに表面の一部にニッケル,金または錫から成るメッキ層が形成されており、撮像素子基板の第1の主面にハンダを介して固定されているときには、信号処理回路基板で発生した熱をモールド樹脂に伝達させ、その熱を金属材料から成るレンズ保持部材に樹脂を介して伝達させることが容易となり、レンズ保持部材の露出部から外部に放熱することができる。従って、放熱特性に優れた撮像装置モジュールを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明の撮像装置モジュールの実施の形態について添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては、撮像装置モジュールの被写体側と反対側を背面(裏面)側という。
【0026】
図1は、本発明の撮像装置モジュールの実施の形態の一例を示すものであり、図1(a)は撮像装置モジュールの平面図、図2(b)は撮像装置モジュールの背面図(下面図)である。また、図2は図1の撮像装置モジュールのA−A’線における断面図、図3は図1の撮像装置モジュールにおけるレンズユニットの縦断面図、図4および図5は図1の撮像装置モジュールの組立て方法を説明するための分解斜視図および縦断面図である。
【0027】
本例の撮像装置モジュールMは、第1の主面2aに撮像素子6が搭載されているとともに第2の主面2bに撮像素子6から出力された電気信号を外部に出力する接続端子7aが設けられた撮像素子基板2と、撮像素子6に光を集光するレンズを保持するとともに撮像素子基板2の第1の主面2aに固定される筒状のレンズ保持部材3と、レンズ保持部材3の側面から撮像素子基板2の第2の主面2bにかけて包囲するモールド樹脂10とを具備している。
【0028】
上記の構成により、従来のモジュールでは撮像素子基板2を収容していたケース等が不要となり、その結果、ケース等の空間内に設けられていた配線ケーブルが不要となるので、撮像素子6および電子部品等と配線ケーブルとの間の電気的な干渉がなくなり、撮像素子6から出力された電気信号が安定する。
【0029】
また、撮像素子6および電子部品等で発生した熱を、配線ケーブルを介することなく速やかに外部に放熱できるので、効率よく放熱でき、その結果、撮像装置モジュールMの内部温度が安定して安定した撮像特性が得られる。
【0030】
また、撮像素子基板2を収容するためのケースが不要となり、撮像装置モジュールMが小型軽量化される。
【0031】
さらに、撮像装置モジュールMを、使用方法,使用目的に合わせて自由な形状に形成することができる。
【0032】
なお、撮像装置モジュールMの全体構造を示す図2において、1はレンズユニット、4は信号処理回路基板、5は外部接続端子、7bは中継接続端子、8は信号処理用のIC,LSI等の電子部品、9は電源用IC、10はモールド樹脂、11bは外部接続端子5の大径部である。
【0033】
撮像装置モジュールMは、例えば車載用として用いられるカメラモジュールである場合、道路上の白線を撮像する機能、あるいは運転手の死角を撮像する機能を有し、自動車の走行の制御を行なうエレクトロニック・コントロール・ユニット(ECU)により動作が制御される。なお、カメラモジュールから出力された映像の電気信号は、ECUを介して、例えば運転席の前方に設置されたディスプレイ等に表示される。
【0034】
撮像素子基板2は、第1の主面2aに被写体からの光を電気信号に変換する撮像素子6が搭載された基板であり、例えば、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させて形成した基板、あるいはエポキシ樹脂にガラスフィラーを添加して形成したプリント配線基板等から成る。
【0035】
撮像素子基板2に搭載されている撮像素子6は、CCDイメージセンサ,CMOSイメージセンサ等の半導体イメージセンサ素子が、セラミックス,樹脂等から成るパッケージに収納されたものである。パッケージは、例えばアルミナを主成分としたセラミック配線基板,ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させて形成したプリント配線基板(サブ基板)あるいはエポキシ樹脂にガラスフィラーを添加して形成したプリント配線基板(サブ基板)に、半導体イメージセンサ素子を実装するものである。そして、半導体イメージセンサ素子とサブ基板の配線導体とがボンディングワイヤで電気的に接続され、ガラス製蓋体(ガラスリッド)で半導体イメージセンサ素子の上部が覆われ、半導体イメージセンサ素子の周囲が樹脂封止され、サブ基板の下部の電極に半田ボール電極が形成されている。
【0036】
なお、撮像素子基板2に用いるガラスクロス,ガラスフィラーの量は、両者の間で発生する熱応力を低減するために、撮像素子6のパッケージの熱膨張係数と撮像素子基板2の熱膨張係数とが同じになるように設定されることが好ましい。
【0037】
また、撮像素子基板2の表面および内部には、撮像素子6のパッケージの電気接続端子および信号処理回路基板4と接続される接続端子7aとの電気的接続および機械的接続をするための配線導体および接地用配線導体等(不図示)が形成されている。配線導体および接地用配線導体等は、銅,金等の導電性の金属からなり、めっき法、あるいは予め配線パターンを形成した金属箔を接着する方法、あるいは全面に金属箔を被着した基板からエッチングにより不要な部分を除去して形成する方法等を用いることにより、撮像素子基板2を構成するプリント配線基板の表面や内部に形成される。
【0038】
また、撮像素子基板2は、例えば表裏面の全面に銅箔を被着した銅貼基板を準備し、この銅貼基板を所望の大きさに切断し、銅箔を希塩酸等の酸性溶液によって所望の配線パターンとなるようにエッチングすることにより、製作される。なお、必要に応じてレーザ光の照射あるいはドリルによる加工を用いて貫通孔を形成し、この貫通孔に金属ペーストを充填することによって貫通導体を形成し、撮像素子基板2の表裏面の配線パターン間を電気的に接続することもできる。
【0039】
撮像素子基板2の背面側の第2の主面2b、すなわち撮像素子基板2の撮像素子6が配置される側と反対側の主面には、撮像素子6からの電気信号を信号処理回路基板4へ出力するための接続端子7aが配線導体に接続されて配設されている。
【0040】
信号処理回路基板4は、撮像素子基板2側の主面(一方の主面)4aに、撮像素子基板2と電気信号の入出力を行なう中継接続端子7bが設置されている。信号処理回路基板4の一方の主面4aまたは他方の主面4bに、電気信号を処理するための信号処理用電子部品である、いわゆるデジタルシグナルプロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)8が搭載されている。また、撮像素子6およびDSP8を駆動させるための電源用IC9ならびに各種電子部品も搭載されている。
【0041】
信号処理回路基板4の他方の主面4bには、外部のECU(不図示)と電気信号の送受を行なうための外部接続端子5が配置されている。外部接続端子5は、アルミニウム,銅,鉄等の金属またはそれらの1種以上を含む合金から成る。外部接続端子5の表面には金,ニッケル等から成る金属メッキ層が形成されており、金属メッキ層が存在することによって、外部接続端子5を信号処理回路基板4の配線導体または電極パッドとハンダを介して接合する際に、容易に強固に接合することができる。
【0042】
レンズ保持部材3は、下端部に撮像素子基板2の第1の主面2aに接着される大径部3aを有し、大径部3aの内側に撮像素子6のパッケージを収納する。また、筒状のレンズ保持部材3は、内側の空洞部3bにレンズユニット1を収容し固定する。なお、本例において、レンズ保持部材3は、レンズユニット1を保持するレンズユニット保持部材でもある。
【0043】
レンズユニット1は、撮像素子6に被写体からの光を集光する機能を有し、例えば図3に示すように、被写体からの光を広角度で集光するために被写体側に凸形状の第1のレンズ1aと、第1のレンズ1aを通過した光を平行光に近づけるための第2のレンズ1bと、第3のレンズ1cとからなるレンズ群として構成される。レンズユニット1が上述の3枚のレンズ1a〜1cからなる場合は、例えば、被写体側から撮像素子6に向かって、第1のレンズ1a、第2のレンズ1bおよび第3のレンズ1cの光軸が重なるように、鏡筒1dの内側に配設されている。
【0044】
なお、本例の撮像装置モジュールMにおけるレンズユニット1は、押え治具としての環状の固定具(リテーナ)1eによって、第1〜第3のレンズ1a〜1cが鏡筒1dの内側に固定されている。第3のレンズ1cは、下面の外周部が鏡筒1dの内壁に設けられた段差に係止され、上面の外周部が環状のスペーサ1gによって押し付けられて、固定される。第2のレンズ1bは、下面の外周部が環状のスペーサ1gによって係止され、上面の外周部が第1のレンズ1aによって押し付けられて、固定される。第1のレンズ1aは、下面の外周部が第2のレンズ1bの上面の外周部に当接し、上面の外周部が固定具1eによって押し付けられて、固定される。
【0045】
さらに、鏡筒1dと第1のレンズ1aとの間には、防水のために、ニトリルゴム,シリコーンゴムなどから成る防水パッキン、シールリングまたはOリングとしての環状封止部材1fを配置するとよい。これにより、撮像装置モジュールM内への水分の浸入を防ぐことができる。
【0046】
また、図4に示すように、レンズ保持部材3の大径部3aの端面3cにはNi,Auなどから成る金属メッキ層が形成されており、この大径部3aの端面3cは、撮像素子基板2の撮像素子6のパッケージの実装位置の周囲に形成された接合パッド2cと、ハンダを介して強固に接合されている。
【0047】
レンズユニット1のレンズ保持部材3への固定は、図5に示すように、レンズ保持部材3の上端面の内周部と、レンズユニット1の鏡筒1dの側周面におけるレンズ保持部材3の上端面の内周部に接する部位とを、レーザ光により照射し、瞬間的に溶融固定するいわゆるレーザ溶接を行なうことによって、容易に接合することができる。
【0048】
固定具1eおよびレンズ保持部材3は、例えば以下の方法により作製される。
レンズ保持部材3は、その形状に合わせて設けられているキャビティを有する射出成形用の金型を準備して、この金型のキャビティ内にレンズ保持部材3を形成するための原料を流し込んで、固化させて成形することにより、所定の形状に形成する。この成形には、従来周知の射出成形法を用いることができる。また、固定具1eも同様にして成形することにより作製することができる。
【0049】
固定具1eおよびレンズ保持部材3の材料としては、例えばアルミニウム、あるいはアルミニウムと鉄との合金等を用いることにより、軽量化が図られている。なお、固定具1eおよびレンズ保持部材3の熱膨張および熱収縮を合わせて両者の間での熱応力の発生を抑えるために、両者を同じ材料で作製することが好ましい。
【0050】
また、撮像装置モジュールMの内部構造体はエポキシ樹脂等から成るモールド樹脂10によって包囲されており、モールド樹脂10はトランスファーモールド法によって形成される。モールド樹脂10は、固定具1cおよび外部接続端子5の長手方向の中間から先端までの部分がトランスファーモールド金型から突出するようにして、金型内に撮像装置モジュールMの内部構造体を配置して成形される。なお、外部接続端子5の先端部は、外部コネクタ(不図示)との接続に見合ったコネクタ形状になるように、予め金型によって成形されてあるとなおよい。
【0051】
また、撮像素子基板2の表面および信号処理回路基板4の表面に、防湿層(不図示)を形成することによって、モールド樹脂10を浸透してきた水分が撮像素子6、信号処理回路基板4の配線導体および各種電子部品に至ることを防ぐことができる。その結果、水分によるエレクトロマイグレーションを防ぐことができ、長年にわたり安定した撮像特性を維持することができる。
【0052】
また、本例の撮像装置モジュールMは、好ましくは、信号処理回路基板4は、他方の主面4bに、その他方の主面4bに直交する方向に沿って延びるとともに一端部がモールド樹脂10から外部に露出した外部接続端子5が設けられている。この場合には、信号処理回路基板4へ入出力される電気信号を外部接続端子5によって、信号処理回路基板4の他方の主面4bに直交する方向に沿って引き出すため、外部接続端子5に信号処理回路で発生したノイズが重畳することを抑制することができる。従って、ノイズ特性(S/N比)に優れた撮像装置モジュールMが得られる。
【0053】
図2に示すように、外部接続端子5が2本以上設けられている場合は、それらは平行であることがよい。これは、部分的に非平行な部位があると、その部分にノイズが重畳し易いためであり、平行であることによってノイズの重畳をより抑制することができる。
【0054】
また、外部接続端子5が2本設けられている場合は、それらにより伝送される高周波信号の位相が互いに逆位相になっていることがよい。これにより、2本の外部接続端子5においてそれぞれ伝送される高周波信号のノイズがキャンセルされるため、ノイズをより低減できる。
【0055】
また、本例の撮像装置モジュールMは、好ましくは、図1に示すように、モールド樹脂10は、表面に外部装置に取り付けるための取付部が形成された張出部(ブラケット部)12を有する。この場合には、撮像装置モジュールMを別体のブラケットに取り付けてさらにブラケットを車両等に取り付けることが不要となり、取り付けによる位置ずれを小さくすることができる。その結果、適正な撮像エリアを撮像できるようになり、撮像エリアの精度が高い撮像装置モジュールMとなる。
【0056】
なお、図1において、ブラケット部12には、車両等に取り付けるための取り付け孔(貫通孔)12a,12bが形成されている。取り付け孔12a,12bは、モールド樹脂10を成形してブラケット部12を形成する際に、モールド樹脂10と一体に成形してブラケット部12内に設けることができる。
【0057】
また、本例の撮像装置モジュールMは、好ましくは、レンズ保持部材3は、アルミニウムまたは鉄を主成分とする金属材料から成るとともに表面の一部にニッケル,金または錫から成るメッキ層が形成されており、撮像素子基板2の第1の主面2aにハンダを介して固定されている。この場合には、信号処理回路基板4で発生した熱をモールド樹脂10に伝達させ、この熱を金属材料から成るレンズ保持部材3に樹脂を介して伝達させることが容易となり、レンズ保持部材3の露出部から外部に放熱することができる。従って、放熱特性に優れた撮像装置モジュールMを得ることができる。
【実施例】
【0058】
以下のような本実施例の撮像装置モジュールMを作製した。
まず、縦20mm×横20mm×厚み0.8mmのガラスエポキシプリント基板から成る撮像素子基板2を20枚集合させた集合基板を作製し、集合基板の各撮像素子基板2の第2の主面2bに形成された電極パッドにSn−Ag−Cuハンダを印刷塗布した。
【0059】
次に、上記と同じガラスエポキシプリント基板からなる信号処理回路基板4の中継接続端子7bに接続される接続端子7aを、電子部品実装装置(マウンタ)によって撮像素子基板2の所定の電極パッドに配置し、リフロー炉によってSn−Ag−Cuハンダを溶融させ固着した。
【0060】
次に、撮像素子基板2の第1の主面2aに形成された電極パッドと接合されるレンズ保持部材3の接合パッド2cに、Sn−Ag−Cuハンダを印刷塗布し、ダイキャストされたアルミニウムからなるレンズ保持部材3を、撮像素子6としてのCMOSイメージセンサが実装封止されたパッケージを内側に収容するように、マウンタによって配置した。このとき、CMOSイメージセンサの中心に、レンズ保持部材3の内側の空洞部3bの中心が合致するように配置し、リフロー炉を通してSn−Ag−Cuハンダを溶融させ固着した。
【0061】
また、信号処理回路基板4について、マウントプロセスおよびリフロープロセスにより、一方の主面4aに、信号処理用の電子部品(DSP)8の周辺回路を構成する、チップ抵抗,チップコンデンサおよびチップコイルなどの回路部品13を実装し、さらに接続端子7aとの電気的接続を行なう中継接続端子7bを設けた。信号処理回路基板4の他方の主面4bに、同様にマウントプロセスおよびリフロープロセスにより、信号処理用の電子部品(DSP8)と、DSP8およびCMOSイメージセンサを駆動するための電源用IC9と、その周辺回路を構成する各種回路部品とを実装した。信号処理回路基板4についても、それらを20枚集合させた集合基板を作製した。
【0062】
上記の2種の集合基板をそれぞれルータカッターにより個片化し、撮像素子基板2および信号処理回路基板4を作製した。
【0063】
次に、レンズ3枚を有する、水平画角が135度で垂直画角が105度のレンズユニット1を、撮像素子基板2の第1の主面2aに設置されたレンズ保持部材3の空洞部3bに挿入し、光学調整装置内に設置された画像調整ユニットに撮像素子基板2を電気接続して配置した。この状態で、レンズユニット1の被写体側に設置された光学調整用チャートを撮像しながらレンズユニット1と撮像素子基板2との間隔を調整することによってピント調整して所望の位置にとどめ、図5に示すように、レンズ保持部材3の上端面の内周部と鏡筒1dの側周面との接触部をレーザ溶接し、瞬時に固着させた。
【0064】
また、信号処理回路基板4の他方の主面4bの電極パッドに、SUS(ステンレススチール)304から成る本体部の表面に、Niメッキ層およびAuメッキ層を順次形成した外部接続端子5をSn−Ag−Cuハンダで接合した。
【0065】
次に、レンズユニット1が装着された撮像素子基板2と信号処理回路基板4とを、接続端子7aと中継接続端子7bとを電気的および機械的に接続し、モールド樹脂10の成型機の金型のキャビティ内に設置した。金型は、上金型と下金型とから成り、それぞれモールド樹脂10の外形形状を成すキャビティを有するものを用いた。また、モールド樹脂10は、車両に取り付けるためのブラケット部12を有するものとした。
【0066】
また、金型には樹脂を注入するための注入孔が形成されており、上金型と下金型とを嵌め合わせる際にキャビティからの樹脂の流出を防ぐために、レンズユニット1の鏡筒1dの上端部に突部11aを設けるとともに、外部接続端子5の途中の部位に突部11bを設けた。突部11a,11bは、上金型と下金型とを嵌め合わせる際にその圧力によって潰れるような形状および寸法とした。
【0067】
モールド樹脂10の樹脂は、エポキシ樹脂を主原料とし、ガラスフィラーを30質量%添加した、高耐久性かつ低吸水性のものを用いた。モールド樹脂10の成型は、上記の上金型と下金型とを用いたトランスファーモールド法によって行なった。
【0068】
作製した本実施例の撮像装置モジュールMは、レンズ部の平面視における大きさが縦24mm×横24mm(四角形状)であり、車両への取付部であるブラケット部12を含めると、平面視で縦30mm×横60mmの大きさであり、高さが24mmであった。
【0069】
一方、比較例の撮像装置モジュールとして、撮像素子と信号処理回路用の電子部品とを実装した回路基板を用い、その一方の主面にレンズ保持部材およびレンズユニットを設けた構造体をケースに収容したものを作製した。このケースには、撮像素子と外部の電気装置との間で電気信号を入出力する外部ケーブルが接続される配線ケーブルを有している。配線ケーブルは、回路基板を収納する空間の内部から外部へ通じており、回路基板に搭載されたコネクタに電気的に接続されている。配線ケーブルとしては、銅線を樹脂チューブで被覆した被覆線の束からなり、どの方向に対しても変形(湾曲)可能なフレキシブルなものを用いた。
【0070】
本実施例の撮像装置モジュールMは、外部接続端子5におけるノイズ特性である電磁波ノイズレベルが126デシベルであった。これに対して、比較例の撮像装置モジュールは、電磁波ノイズレベルが120デシベルであった。従って、本実施例の撮像装置モジュールMは、比較例の撮像装置モジュールと比べて、画像のちらつきおよび乱れの少ない高精度な画像を得ることができた。
【0071】
また、本実施例の撮像装置モジュールMは、そのブラケット部12によって自動車に直接取り付けることができた。一方、比較例の撮像装置モジュールは、別体のブラケットに取り付け、さらにそのブラケットを自動車に取り付けた。これらの撮像装置モジュールの取り付けの位置精度の評価を行なったところ、本実施例の撮像装置モジュールMの取り付けの位置ずれは所定の位置に対して角度で±1度程度であり、問題のない精度であり、適正な撮像エリアを得ることができた。これに対して、比較例の撮像装置モジュールの取り付けの位置ずれは所定の位置に対して角度で±3度程度であり、適正な撮像エリアからのずれが大きく、適正な撮像エリアを得ることが困難であった。
【0072】
なお、本発明は、上記の実施の形態の例および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えても何等差し支えない。例えば、電磁遮蔽板(シールド板)によって信号処理回路基板4の全体を包囲すると、信号処理回路基板4で発生する電磁輻射によるノイズを遮断することができ、好適である。また、電源用IC9のパッケージの表面に伝熱フィンを設けるとともに、その一部をモールド樹脂10から突出させることによって、放熱特性を向上させることができ、好適である。また、本実施例では、レンズユニット1が3枚のレンズを有する場合を例にして説明したが、目的の撮像エリアに見合ったレンズの枚数と光学設計としてもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】(a)および(b)は、それぞれ本発明の撮像装置モジュールの実施の形態の一例を示す平面図および下面図である。
【図2】図1に示す撮像装置モジュールのA−A’線における縦断面図である。
【図3】図1に示す撮像装置モジュールに用いられるレンズユニットの縦断面図である。
【図4】図1に示す撮像装置モジュールにおける撮像素子基板とレンズ保持部材を接合する工程を示す分解斜視図である。
【図5】図1に示す撮像装置モジュールにおけるレンズ保持部材とレンズユニットとを接合する工程を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1:レンズユニット
1a、1b、1c:レンズ
2:撮像素子基板
2a:第1の主面
2b:第2の主面
3:レンズ保持部材
4:信号処理回路基板
5:外部接続端子
6:撮像素子
7a:接続端子
7b:中継接続端子
8:信号処理用の電子部品
9:電源用IC
10:モールド樹脂
12:張出部(ブラケット部)
M:撮像装置モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面に撮像素子が搭載されているとともに第2の主面に前記撮像素子から出力された電気信号を外部に出力する接続端子が設けられた撮像素子基板と、前記撮像素子に光を集光するレンズを保持するとともに前記撮像素子基板の前記第1の主面に固定される筒状のレンズ保持部材と、該レンズ保持部材の側面から前記撮像素子基板の前記第2の主面にかけて包囲するモールド樹脂とを具備していることを特徴とする撮像装置モジュール。
【請求項2】
前記撮像素子基板の前記第2の主面と対向して配置され、前記第2の主面に対向する一方の主面に、前記接続端子と接続される中継接続端子が設けられているとともに前記電気信号に基づいて前記撮像素子を制御する信号処理回路が形成された信号処理回路基板が、さらに前記モールド樹脂中に存在することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置モジュール。
【請求項3】
前記信号処理回路基板は、他方の主面に、該他方の主面に直交する方向に沿って延びるとともに一端部が前記モールド樹脂から外部に露出した外部接続端子が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置モジュール。
【請求項4】
前記モールド樹脂は、表面に外部装置に取り付けるための取付部が形成された張出部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の撮像装置モジュール。
【請求項5】
前記レンズ保持部材は、アルミニウムまたは鉄を主成分とする金属材料から成るとともに表面の一部にニッケル,金または錫から成るメッキ層が形成されており、前記撮像素子基板の前記第1の主面にハンダを介して固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の撮像装置モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−50771(P2010−50771A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213552(P2008−213552)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】