撹拌装置
【課題】反応容器内を複数段の反応室に区画することが出来るにも拘わらず、装置のコストの上昇を抑制することができ、メンテナンスの容易な撹拌装置を提供する。
【解決手段】反応容器11は、垂直円筒状胴壁21を有している。胴壁21の軸線上を垂直状回転軸26がのびている。回転軸26の長さ方向に所定間隔をおいた複数か所に、水平状第1円板31および第2円板32が交互に固定されている。両円板31、32のそれぞれの上面および下面の少なくともいずれか一方に、その周方向に間隔をおいて複数の撹拌羽33が固定されている。胴壁21内周面および第1円板31外周面間を反応物の流通を阻止する間隙となすように第1円板31外周面が形成されている。第1円板31外周面より半径方向内側に反応物流路34が形成されている。胴壁21内周面および第2円板32外周面間を反応物の流通を許容する間隙eとなすように第2円板32外周面が形成されている。
【解決手段】反応容器11は、垂直円筒状胴壁21を有している。胴壁21の軸線上を垂直状回転軸26がのびている。回転軸26の長さ方向に所定間隔をおいた複数か所に、水平状第1円板31および第2円板32が交互に固定されている。両円板31、32のそれぞれの上面および下面の少なくともいずれか一方に、その周方向に間隔をおいて複数の撹拌羽33が固定されている。胴壁21内周面および第1円板31外周面間を反応物の流通を阻止する間隙となすように第1円板31外周面が形成されている。第1円板31外周面より半径方向内側に反応物流路34が形成されている。胴壁21内周面および第2円板32外周面間を反応物の流通を許容する間隙eとなすように第2円板32外周面が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、バイオディーゼル燃料の製造工程における廃食用油のエステル分解反応において、反応物を撹拌する撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記エステル分解反応においては、廃食用油1単位とメタノール3単位から、カルボキシル基を有する炭化水素3単位とグリセリン1単位を生成する反応であり、可逆的な反応である。
【0003】
この種の撹拌装置としては、反応容器が、垂直円筒状胴壁を有しており、胴壁の軸線上を垂直状回転軸がのびており、回転軸に撹拌羽が固定されているものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、他の撹拌装置としては、反応容器内が、容器胴壁内面に固定された仕切壁によつて、複数段の反応室に仕切られ、各段の反応室内に撹拌羽が配置されているものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
特許文献1に記載の撹拌装置では、反応物が反応容器に投入された時点で、反応容器内の反応物の濃度が常に均一化されるため、反応物の濃度を高い状態に保つことが困難である。
【0006】
また、未反応の反応物が反応容器が排出されてしまうことがある。
【0007】
特許文献2に記載の撹拌装置では、反応物が各段の反応室を順次通過させられることにより、徐々に反応物の濃度が低下させられせることにより、特許文献1に記載の装置の欠点は、解消されるが、仕切壁が容器胴壁内面に固定されているため、装置がコスト高となり、メンテナンスが困難である。
【特許文献1】実公昭61−40339号公報
【特許文献2】特開平4−225826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、反応容器内を複数段の反応室に区画することが出来るにも拘わらず、装置のコストの上昇を抑制することができ、メンテナンスの容易な撹拌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による撹拌装置は、反応容器が、垂直円筒状胴壁を有しており、胴壁の軸線上を垂直状回転軸がのびており、回転軸の長さ方向に所定間隔をおいた複数か所に、水平状第1円板および第2円板が交互に固定されており、両円板のそれぞれの上面および下面の少なくともいずれか一方に、その周方向に間隔をおいて複数の撹拌羽が固定されており、胴壁内周面および第1円板外周面間を反応物の流通を阻止する間隙となすように第1円板外周面が形成されており、第1円板外周面より半径方向内側に反応物流路が形成されており、胴壁内周面および第2円板外周面間を反応物の流通を許容する間隙となすように第2円板外周面が形成されているものである。
【0010】
この発明による撹拌装置では、反応容器内を複数段に仕切るための円板が回転軸と一体化されているから、装置の解体およびメンテナンスが容易となり、コストの増加分を抑えることができる。
【0011】
さらに、第2円板外周面に流れ抵抗強化用環状溝が設けられていると、溝によって、胴壁内周面および第2円板外周面間の間隙を通過する反応物の流れに渦を発生させて、流れの抵抗を大きくすることができる。
【0012】
溝の幅は、第2円板の厚みの3分の1以上であることが好ましく、それ以下であると、渦が発生し難くなる。
【0013】
また、第2円板外周縁部上面および下面の少なくともいずれか一方に複数の流れ抵抗強化用突起が間隔を置いて設けられていると、上記溝と同様に、突起によって、流れに渦を発生させることができる。
【0014】
突起は、第2円板の周方向から見て、三角形であることが好ましく、このような形状であれば、流れを遮ることができる。突起の高さは、第2円板の厚みの2分の1程度であることが好ましい。
【0015】
また、第2円板外周面に流れ抵抗強化用面粗さ部が設けられていることが好ましい。
【0016】
面粗さ部は、第2円板外周面に細かい傷を無数に付けるように加工することによって形成される。
【0017】
また、反応物流路の開口面積と、胴壁内周面および第2円板外周面間の間隙の面積とが、反応物入口の面積と等しくなされていることが好ましい。
【0018】
双方の面積が等しくないと、対応するか所での反応物の流速が相違してしまい、反応物が過剰に混合してしまい、好ましくない。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、反応容器内を複数段に反応室に区画することが出来るにも拘わらず、装置のコストの上昇を抑制することができ、メンテナンスの容易な撹拌装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の実施の形態を図面を参照しながらつぎに説明する。
【0021】
図1を参照すると、撹拌装置は、反応容器11を備えている。反応容器11は、垂直円筒状胴壁21と、胴壁21の上下端開口に施されているドーム状頂壁22および底壁23よりなる。胴壁21の下端には反応物入口パイプ24が設けられている。胴壁21の上端には反応物出口パイプ25が設けられている。
【0022】
胴壁21の軸線上を垂直状回転軸26がのびている。回転軸26の長さ方向に間隔をおいた4か所には水平状第1円板31および第2円板32が交互に2つずつ固定されている。第1円板31および第2円板32のそれぞれ上面には、複数の垂直帯板状撹拌羽33(図1では3個である)が等間隔で放射状に固定されている。
【0023】
胴壁21に対し頂壁22は着脱自在である。胴壁21から頂壁22を取外せば、回転軸26とともに第1円板31および第2円板32を胴壁21から抜き出すことが可能である。
【0024】
図2に、第1円板31が示されている。胴壁21内面の内径をD0とし、第1円板31の外径をD1としたときに、D0≒D1である。そのため、胴壁21内面および第1円板31外面の間には、第1円板31の回転はできる間隙はあるが、反応物の流通を阻止しうる間隙となっている。第1円板31の中央部には複数の円弧状反応物流路34(図2では3個である)が形成されている。
【0025】
図3に、第2円板32が示されている。第2円板32の外形をD2としたときに、D0>D2である。そのため、胴壁21内面および第2円板32外面間の間隙eを反応物は通過できるようになっている。
【0026】
反応物入口パイプ24の横断面積と、複数の反応物流路34(図2では3個である)の合算した横断面積と、胴壁21内面および第2円板32外面間の間隙eの横断面積とは、等しく形成されている。また、これらの横断面積は、胴壁21の横断面積の5%未満であることが好ましい。
【0027】
バイオディーゼル生成過程において、本発明が対象としている化学反応式は、以下の通りである。
【0028】
廃植物油+3メタノール⇔3メチルエステル+グリセリン
反応容器11内に円板によって4つの反応室を形成した場合、図4に、各物質の濃度変化が模式的に示されている。また、比較例として、図5に、冒頭で説明した特許文献1の装置による反応の様子を示す。
【0029】
つぎに、上記撹拌装置の変形例について、様々に説明する。以下の説明において、図1に示す部分と対応する部分には、同一の符号を付して示す。
【0030】
図6では、側方より見て、第1円板31および第2円板32の上面の外周近くに2つの撹拌羽33が、その下面の中央近くに2つの撹拌羽33がそれぞれ設けられている。第1円板31下面の撹拌羽33と、第2円板32上面の撹拌羽33とは、側方より見て、オーバーラップさせられている。
【0031】
図7では、第1円板31および第2円板32の上面および下面に撹拌羽33が4つずつ設けられている。第1円板31下面の撹拌羽33と、第2円板32上面の撹拌羽33とは、側方より見て、1つ置きに交互にオーバーラップさせられている。撹拌羽の個数および配置パターンは、図6、図7に示す構成に限定せず、適宜変更してもよい。
【0032】
図8に示す撹拌羽33は、第1円板31に垂直ではなく、第1円板31の回転方向に向かって倒れるように、所定角度θ1だけ傾斜させられている。このような構成を採用すると、反応室内での上下方向の撹拌が促進される。第1円板31の回転数が大きい場合は、撹拌羽33の傾斜角度θ1を大きくし、回転数が小さい場合は傾斜角度θ1を小さくするように、第1円板31の回転数に応じて傾斜を与える。上記構成は、第2円板32についても採用される。
【0033】
図9に示す撹拌羽33は、第1円板31の半径方向にのびるのではなく、半径方向に対して、所定角度θ2だけ傾斜させられていると、第1円板31の中心部と外周部での撹拌が促進される。この構成についても、第2円板32に適用される。
【0034】
粘性が大きい反応液の場合は傾斜をもたせた大きめの撹拌羽33を利用し、粘性が小さい場合は傾斜のない小さめの撹拌羽33を利用する。
【0035】
反応液の粘性が大きい場合には、反応室内の流れが層状(層流)となり撹拌され難い可能性があるので、大きな撹拌羽33に傾斜をもたせる方が良い。逆に、粘性の小さい反応液の場合には、傾斜の小さい撹拌羽33でも撹拌できる。
【0036】
図8および図9に示す構成は、ともに、第1および第2円板31、32の下面にも採用することができる。図8および図9に示す撹拌羽は3個であるが、これに限定せず、複数個設けて良い。
【0037】
さらに、図10〜図12に示す構造を、第2円板32の外周縁部に採用することが好ましい。
【0038】
図10では、第2円板32の外周面に環状溝41が形成されている。溝41を設けると、流れに渦を発生させることで流れの抵抗を大きくすることができる。溝41の幅bは、第2円板32の厚さtに対して3分の1程度で、深さdは幅bと同程度とする。溝41の幅bおよび深dさが小さすぎると、流れの抵抗となるような渦が発生しない。
【0039】
図11では、第2円板32の外周縁下面に複数のと突起42が一定間隔で設けられている。突起42を設けると、流れの抵抗を大きくすることができる。突起42の形状は、流れを遮る三角形が望ましい。突起41の高さhは、第2円板32の厚さtの半分程度が望ましい。
【0040】
図12では、第2円板32の外周面に面粗さ部43が形成されている。面粗さ部43の形成は、第2円板32の外周面に細かい傷を無数につけるように加工することによる。
【0041】
上記において、連続式の反応容器では、反応に必要な滞留時間が得られるように、反応容器と時間当たりの流入量によって決定される。
【0042】
反応室の容積をX(m3)、反応室の数をn、反応容器への流入量をY(m3/s)とすると、反応容器内の平均滞留時間は、nX/Y(s)となる。
【0043】
反応容器内の平均滞留時間は、nX/Y(s)をどれくらいにするかについては、投入する化学物質を反応させて生成物の濃度が高い溶液を得るために、化学反応によって反応する物質の特性によって決めている。
【0044】
このようにすることで、
(1)反応がより進行した状態の溶液(生成物の濃度が高い溶液)を得られる、
(2)同濃度の生成物を同量得るために必要な反応容器の容積が小さくて済む、
(3)同濃度の生成物を得るための反応時間を短縮できる(時間当たりの処理能力が増加する)、ということになる。
【0045】
反応容器をいくつの反応室に区分するかについては、投入する化学物質を反応させて生成物の濃度が高い溶液を得るために、化学反応によって反応する物質の特性によって反応室の数を決めている。
【0046】
化学反応によって反応する物質の特性によって反応室の数を決めた後、以下のように同流入量で反応室の数を変更すると好ましくない。
【0047】
区画室を増やした場合、1つの反応室での滞留時間が短くなり、反応物質同士の遭遇回数が少なくなり、反応物の溶液を高い状態にもっていかなくなる。また、装置自体の製造コスト増にもつながる。
【0048】
また、区画を減らした場合、1つの反応室での滞留時間が長くなり、反応済みの溶液と1つ前の溶液と混合されてしまい、反応物の溶液を高い状態のまま保つことが出来なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明による撹拌装置の一部破砕斜視図である。
【図2】同撹拌装置の第1円板の平面図である。
【図3】同撹拌装置の第1円板の平面図である。
【図4】同撹拌装置の反応過程を示すグラフである。
【図5】同撹拌装置との比較例を示す従来装置の反応過程を示すグラフである。
【図6】同撹拌装置の変形例を示す一部断面図である。
【図7】同撹拌装置の他の変形例を示す一部断面図である。
【図8】同撹拌装置のさらなる他の変形例を示す一部断面図である。
【図9】同撹拌装置のさらなる他の変形例を示す一部断面図である。
【図10】同撹拌装置の第2円板の変形例を示す一部断面図である。
【図11】同撹拌装置の第2円板の他の変形例を示す一部断面図である。
【図12】同撹拌装置の第2円板のさらなる他の変形例を示す一部断面図である。
【符号の説明】
【0050】
11 反応容器
21 胴壁
26 回転軸
31 第1円板
32 第2円板
34 反応物流路
e 間隙
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、バイオディーゼル燃料の製造工程における廃食用油のエステル分解反応において、反応物を撹拌する撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記エステル分解反応においては、廃食用油1単位とメタノール3単位から、カルボキシル基を有する炭化水素3単位とグリセリン1単位を生成する反応であり、可逆的な反応である。
【0003】
この種の撹拌装置としては、反応容器が、垂直円筒状胴壁を有しており、胴壁の軸線上を垂直状回転軸がのびており、回転軸に撹拌羽が固定されているものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、他の撹拌装置としては、反応容器内が、容器胴壁内面に固定された仕切壁によつて、複数段の反応室に仕切られ、各段の反応室内に撹拌羽が配置されているものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
特許文献1に記載の撹拌装置では、反応物が反応容器に投入された時点で、反応容器内の反応物の濃度が常に均一化されるため、反応物の濃度を高い状態に保つことが困難である。
【0006】
また、未反応の反応物が反応容器が排出されてしまうことがある。
【0007】
特許文献2に記載の撹拌装置では、反応物が各段の反応室を順次通過させられることにより、徐々に反応物の濃度が低下させられせることにより、特許文献1に記載の装置の欠点は、解消されるが、仕切壁が容器胴壁内面に固定されているため、装置がコスト高となり、メンテナンスが困難である。
【特許文献1】実公昭61−40339号公報
【特許文献2】特開平4−225826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、反応容器内を複数段の反応室に区画することが出来るにも拘わらず、装置のコストの上昇を抑制することができ、メンテナンスの容易な撹拌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による撹拌装置は、反応容器が、垂直円筒状胴壁を有しており、胴壁の軸線上を垂直状回転軸がのびており、回転軸の長さ方向に所定間隔をおいた複数か所に、水平状第1円板および第2円板が交互に固定されており、両円板のそれぞれの上面および下面の少なくともいずれか一方に、その周方向に間隔をおいて複数の撹拌羽が固定されており、胴壁内周面および第1円板外周面間を反応物の流通を阻止する間隙となすように第1円板外周面が形成されており、第1円板外周面より半径方向内側に反応物流路が形成されており、胴壁内周面および第2円板外周面間を反応物の流通を許容する間隙となすように第2円板外周面が形成されているものである。
【0010】
この発明による撹拌装置では、反応容器内を複数段に仕切るための円板が回転軸と一体化されているから、装置の解体およびメンテナンスが容易となり、コストの増加分を抑えることができる。
【0011】
さらに、第2円板外周面に流れ抵抗強化用環状溝が設けられていると、溝によって、胴壁内周面および第2円板外周面間の間隙を通過する反応物の流れに渦を発生させて、流れの抵抗を大きくすることができる。
【0012】
溝の幅は、第2円板の厚みの3分の1以上であることが好ましく、それ以下であると、渦が発生し難くなる。
【0013】
また、第2円板外周縁部上面および下面の少なくともいずれか一方に複数の流れ抵抗強化用突起が間隔を置いて設けられていると、上記溝と同様に、突起によって、流れに渦を発生させることができる。
【0014】
突起は、第2円板の周方向から見て、三角形であることが好ましく、このような形状であれば、流れを遮ることができる。突起の高さは、第2円板の厚みの2分の1程度であることが好ましい。
【0015】
また、第2円板外周面に流れ抵抗強化用面粗さ部が設けられていることが好ましい。
【0016】
面粗さ部は、第2円板外周面に細かい傷を無数に付けるように加工することによって形成される。
【0017】
また、反応物流路の開口面積と、胴壁内周面および第2円板外周面間の間隙の面積とが、反応物入口の面積と等しくなされていることが好ましい。
【0018】
双方の面積が等しくないと、対応するか所での反応物の流速が相違してしまい、反応物が過剰に混合してしまい、好ましくない。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、反応容器内を複数段に反応室に区画することが出来るにも拘わらず、装置のコストの上昇を抑制することができ、メンテナンスの容易な撹拌装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の実施の形態を図面を参照しながらつぎに説明する。
【0021】
図1を参照すると、撹拌装置は、反応容器11を備えている。反応容器11は、垂直円筒状胴壁21と、胴壁21の上下端開口に施されているドーム状頂壁22および底壁23よりなる。胴壁21の下端には反応物入口パイプ24が設けられている。胴壁21の上端には反応物出口パイプ25が設けられている。
【0022】
胴壁21の軸線上を垂直状回転軸26がのびている。回転軸26の長さ方向に間隔をおいた4か所には水平状第1円板31および第2円板32が交互に2つずつ固定されている。第1円板31および第2円板32のそれぞれ上面には、複数の垂直帯板状撹拌羽33(図1では3個である)が等間隔で放射状に固定されている。
【0023】
胴壁21に対し頂壁22は着脱自在である。胴壁21から頂壁22を取外せば、回転軸26とともに第1円板31および第2円板32を胴壁21から抜き出すことが可能である。
【0024】
図2に、第1円板31が示されている。胴壁21内面の内径をD0とし、第1円板31の外径をD1としたときに、D0≒D1である。そのため、胴壁21内面および第1円板31外面の間には、第1円板31の回転はできる間隙はあるが、反応物の流通を阻止しうる間隙となっている。第1円板31の中央部には複数の円弧状反応物流路34(図2では3個である)が形成されている。
【0025】
図3に、第2円板32が示されている。第2円板32の外形をD2としたときに、D0>D2である。そのため、胴壁21内面および第2円板32外面間の間隙eを反応物は通過できるようになっている。
【0026】
反応物入口パイプ24の横断面積と、複数の反応物流路34(図2では3個である)の合算した横断面積と、胴壁21内面および第2円板32外面間の間隙eの横断面積とは、等しく形成されている。また、これらの横断面積は、胴壁21の横断面積の5%未満であることが好ましい。
【0027】
バイオディーゼル生成過程において、本発明が対象としている化学反応式は、以下の通りである。
【0028】
廃植物油+3メタノール⇔3メチルエステル+グリセリン
反応容器11内に円板によって4つの反応室を形成した場合、図4に、各物質の濃度変化が模式的に示されている。また、比較例として、図5に、冒頭で説明した特許文献1の装置による反応の様子を示す。
【0029】
つぎに、上記撹拌装置の変形例について、様々に説明する。以下の説明において、図1に示す部分と対応する部分には、同一の符号を付して示す。
【0030】
図6では、側方より見て、第1円板31および第2円板32の上面の外周近くに2つの撹拌羽33が、その下面の中央近くに2つの撹拌羽33がそれぞれ設けられている。第1円板31下面の撹拌羽33と、第2円板32上面の撹拌羽33とは、側方より見て、オーバーラップさせられている。
【0031】
図7では、第1円板31および第2円板32の上面および下面に撹拌羽33が4つずつ設けられている。第1円板31下面の撹拌羽33と、第2円板32上面の撹拌羽33とは、側方より見て、1つ置きに交互にオーバーラップさせられている。撹拌羽の個数および配置パターンは、図6、図7に示す構成に限定せず、適宜変更してもよい。
【0032】
図8に示す撹拌羽33は、第1円板31に垂直ではなく、第1円板31の回転方向に向かって倒れるように、所定角度θ1だけ傾斜させられている。このような構成を採用すると、反応室内での上下方向の撹拌が促進される。第1円板31の回転数が大きい場合は、撹拌羽33の傾斜角度θ1を大きくし、回転数が小さい場合は傾斜角度θ1を小さくするように、第1円板31の回転数に応じて傾斜を与える。上記構成は、第2円板32についても採用される。
【0033】
図9に示す撹拌羽33は、第1円板31の半径方向にのびるのではなく、半径方向に対して、所定角度θ2だけ傾斜させられていると、第1円板31の中心部と外周部での撹拌が促進される。この構成についても、第2円板32に適用される。
【0034】
粘性が大きい反応液の場合は傾斜をもたせた大きめの撹拌羽33を利用し、粘性が小さい場合は傾斜のない小さめの撹拌羽33を利用する。
【0035】
反応液の粘性が大きい場合には、反応室内の流れが層状(層流)となり撹拌され難い可能性があるので、大きな撹拌羽33に傾斜をもたせる方が良い。逆に、粘性の小さい反応液の場合には、傾斜の小さい撹拌羽33でも撹拌できる。
【0036】
図8および図9に示す構成は、ともに、第1および第2円板31、32の下面にも採用することができる。図8および図9に示す撹拌羽は3個であるが、これに限定せず、複数個設けて良い。
【0037】
さらに、図10〜図12に示す構造を、第2円板32の外周縁部に採用することが好ましい。
【0038】
図10では、第2円板32の外周面に環状溝41が形成されている。溝41を設けると、流れに渦を発生させることで流れの抵抗を大きくすることができる。溝41の幅bは、第2円板32の厚さtに対して3分の1程度で、深さdは幅bと同程度とする。溝41の幅bおよび深dさが小さすぎると、流れの抵抗となるような渦が発生しない。
【0039】
図11では、第2円板32の外周縁下面に複数のと突起42が一定間隔で設けられている。突起42を設けると、流れの抵抗を大きくすることができる。突起42の形状は、流れを遮る三角形が望ましい。突起41の高さhは、第2円板32の厚さtの半分程度が望ましい。
【0040】
図12では、第2円板32の外周面に面粗さ部43が形成されている。面粗さ部43の形成は、第2円板32の外周面に細かい傷を無数につけるように加工することによる。
【0041】
上記において、連続式の反応容器では、反応に必要な滞留時間が得られるように、反応容器と時間当たりの流入量によって決定される。
【0042】
反応室の容積をX(m3)、反応室の数をn、反応容器への流入量をY(m3/s)とすると、反応容器内の平均滞留時間は、nX/Y(s)となる。
【0043】
反応容器内の平均滞留時間は、nX/Y(s)をどれくらいにするかについては、投入する化学物質を反応させて生成物の濃度が高い溶液を得るために、化学反応によって反応する物質の特性によって決めている。
【0044】
このようにすることで、
(1)反応がより進行した状態の溶液(生成物の濃度が高い溶液)を得られる、
(2)同濃度の生成物を同量得るために必要な反応容器の容積が小さくて済む、
(3)同濃度の生成物を得るための反応時間を短縮できる(時間当たりの処理能力が増加する)、ということになる。
【0045】
反応容器をいくつの反応室に区分するかについては、投入する化学物質を反応させて生成物の濃度が高い溶液を得るために、化学反応によって反応する物質の特性によって反応室の数を決めている。
【0046】
化学反応によって反応する物質の特性によって反応室の数を決めた後、以下のように同流入量で反応室の数を変更すると好ましくない。
【0047】
区画室を増やした場合、1つの反応室での滞留時間が短くなり、反応物質同士の遭遇回数が少なくなり、反応物の溶液を高い状態にもっていかなくなる。また、装置自体の製造コスト増にもつながる。
【0048】
また、区画を減らした場合、1つの反応室での滞留時間が長くなり、反応済みの溶液と1つ前の溶液と混合されてしまい、反応物の溶液を高い状態のまま保つことが出来なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明による撹拌装置の一部破砕斜視図である。
【図2】同撹拌装置の第1円板の平面図である。
【図3】同撹拌装置の第1円板の平面図である。
【図4】同撹拌装置の反応過程を示すグラフである。
【図5】同撹拌装置との比較例を示す従来装置の反応過程を示すグラフである。
【図6】同撹拌装置の変形例を示す一部断面図である。
【図7】同撹拌装置の他の変形例を示す一部断面図である。
【図8】同撹拌装置のさらなる他の変形例を示す一部断面図である。
【図9】同撹拌装置のさらなる他の変形例を示す一部断面図である。
【図10】同撹拌装置の第2円板の変形例を示す一部断面図である。
【図11】同撹拌装置の第2円板の他の変形例を示す一部断面図である。
【図12】同撹拌装置の第2円板のさらなる他の変形例を示す一部断面図である。
【符号の説明】
【0050】
11 反応容器
21 胴壁
26 回転軸
31 第1円板
32 第2円板
34 反応物流路
e 間隙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器が、垂直円筒状胴壁を有しており、胴壁の軸線上を垂直状回転軸がのびており、回転軸の長さ方向に所定間隔をおいた複数か所に、水平状第1円板および第2円板が交互に固定されており、両円板のそれぞれの上面および下面の少なくともいずれか一方に、その周方向に間隔をおいて複数の撹拌羽が固定されており、胴壁内周面および第1円板外周面間を反応物の流通を阻止する間隙となすように第1円板外周面が形成されており、第1円板外周面より半径方向内側に反応物流路が形成されており、胴壁内周面および第2円板外周面間を反応物の流通を許容する間隙となすように第2円板外周面が形成されている撹拌装置。
【請求項2】
第2円板外周面に流れ抵抗強化用環状溝が設けられている請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
第2円板外周縁部上面および下面の少なくともいずれか一方に複数の流れ抵抗強化用突起が間隔を置いて設けられている請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項4】
第2円板外周面に流れ抵抗強化用面粗さ部が設けられている請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項5】
反応物流路の開口面積と、胴壁内周面および第2円板外周面間の間隙の面積とが、反応物入口の面積と等しくなされている請求項1〜4のいずれか1つに記載の撹拌装置。
【請求項1】
反応容器が、垂直円筒状胴壁を有しており、胴壁の軸線上を垂直状回転軸がのびており、回転軸の長さ方向に所定間隔をおいた複数か所に、水平状第1円板および第2円板が交互に固定されており、両円板のそれぞれの上面および下面の少なくともいずれか一方に、その周方向に間隔をおいて複数の撹拌羽が固定されており、胴壁内周面および第1円板外周面間を反応物の流通を阻止する間隙となすように第1円板外周面が形成されており、第1円板外周面より半径方向内側に反応物流路が形成されており、胴壁内周面および第2円板外周面間を反応物の流通を許容する間隙となすように第2円板外周面が形成されている撹拌装置。
【請求項2】
第2円板外周面に流れ抵抗強化用環状溝が設けられている請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
第2円板外周縁部上面および下面の少なくともいずれか一方に複数の流れ抵抗強化用突起が間隔を置いて設けられている請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項4】
第2円板外周面に流れ抵抗強化用面粗さ部が設けられている請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項5】
反応物流路の開口面積と、胴壁内周面および第2円板外周面間の間隙の面積とが、反応物入口の面積と等しくなされている請求項1〜4のいずれか1つに記載の撹拌装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−106804(P2009−106804A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279118(P2007−279118)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】
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