説明

操作入力検知装置及び開閉部材制御装置

【課題】より高い精度で操作入力を検知することのできる操作入力検知装置を提供すること。
【解決手段】操作入力検知装置20は、操作入力領域に隣接する導電性領域から離間した位置に設けられた第1電極31と、当該第1電極31と導電性領域との間に間隔をあけて設けられた第2電極32とを備える。また、操作入力検知装置20は、これら第1電極31及び第2電極32が近傍の導体との間に形成するコンデンサの静電容量を測定する静電容量測定回路22と、その測定結果を処理する演算装置23とを備える。そして、演算装置23は、第2電極32を第1電極31と同電位にした状態で第1電極31を用いて測定された第1の測定結果に示される接触状態と、第1電極31を第2電極32と同電位にした状態で第2電極32を用いて測定された第2の測定結果に示される接触状態とに基づいて、操作入力検知を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式の操作入力検知装置及びこれを備えた開閉部材制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、静電容量センサ電極が近傍の導体との間に形成するコンデンサの静電容量を測定することにより使用者の操作入力を検知可能な操作入力検知装置が知られている。例えば、特許文献1には、車両外側のドアハンドルに設けられた静電容量センサ電極を用いて、そのドアハンドルに対する使用者の操作入力を検知する構成が開示されている。そして、その検知された操作入力に基づき所謂電子キーシステムによるドアの開錠及び施錠を行うことにより、使用者の利便性を高める構成となっている。
【0003】
また、この特許文献1には、ドアパネルに近い部分に設けられた第1の静電容量センサ電極と、この第1の静電容量センサ電極よりもドアパネルから遠い部分に設けられた第2の静電容量センサ電極とを備える構成が開示されている。そして、これら各静電容量センサ電極を用いることにより得られる二つの測定結果に基づいて上記検知判定を行うとともに、その第1の静電容量センサ電極を用いた測定結果に乗算する重み付け係数を第2の静電容量センサ電極よりも小さく設定することにより、誤検知の発生を抑制することが可能となっている。
【0004】
即ち、車両においては、そのドアハンドルに付着した雨等の水滴が静電容量センサ電極とドアパネルとを導通することがある。そして、これによりドアパネルを介した地絡経路が形成されることによって、操作入力を誤検知する可能性がある。
【0005】
この点、上記構成によれば、その水滴による地絡経路が形成されやすいドアパネルに近い部分における静電容量測定の感度を当該ドアパネルから遠い部分における感度よりも低くすることができる。その結果、使用者による操作入力の検知精度を落とすことなく、誤検知の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−133777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、更なる利便性の向上を図るべく、このような接触方式による操作入力を、例えば、所謂スライドドアの開閉動作等、単なる開錠及び施錠を超える制御にまで適用しようとした場合、その検知装置には、より高い検知精度が求められることになる。
【0008】
即ち、上記従来技術では、その静電容量センサ電極の端部に接触する水滴が当該静電容量センサ電極とドアパネルとを導通することにより生ずる誤検知は抑制できるものの、その静電容量センサ電極がおかれた状況、例えば車両表面に存在する水滴の量やその付着状態等を詳細に識別することはできない。このため、例えば、車両表面を流れるような比較的大きな水滴が静電容量センサ電極全体を覆ってしまうような状況では誤検知が発生する可能性がある等、その車両表面上の水滴が動作後の車両状態に悪影響を及ぼす可能性のある制御には採用し難いという実情があり、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、より高い精度で操作入力を検知することのできる操作入力検知装置及び開閉部材制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両表面に設定された操作入力領域に設けられる静電容量センサ電極と、前記静電容量センサ電極が近傍の導体との間に形成するコンデンサの静電容量を測定する静電容量測定手段と、測定される前記静電容量に基づいて操作入力を検知する操作入力検知手段と、を備えた操作入力検知装置において、前記操作入力領域に隣接する導電性領域から離間した位置に設けられた第1の静電容量センサ電極と、前記第1の静電容量センサ電極と前記導電性領域との間に間隔をあけて設けられた第2の静電容量センサ電極とを備え、前記操作入力検知手段は、前記第2の静電容量センサ電極の影響を排除した状態で前記第1の静電容量センサ電極を用いて測定された第1の測定結果に示される接触状態と、前記第1の静電容量センサ電極の影響を排除した状態で前記第2の静電容量センサ電極を用いて測定された第2の測定結果に示される接触状態との組合せに基づいて、前記操作入力を検知すること、を要旨とする。
【0011】
即ち、測定に用いない電極の影響を排除して、第1及び第2の静電容量センサ電極を用いた静電容量測定をそれぞれ独立に行うことにより、その各測定結果について高い信頼性を確保することができる。そして、それぞれの測定結果に示される接触状態、つまり地絡経路を形成する導体接触の有無(ON/OFF)の組合せに基づく判定を行うことで、その静電容量センサ電極がおかれた状況を詳細に識別することができる。その結果、より高精度な操作入力の検知が可能になる。
【0012】
例えば、第1の静電容量センサ電極を「操作入力を行うために使用者が触れる部分(接触スイッチ)」に設定することで、その「第1の静電容量センサ電極のみに対する導体接触の発生」を使用者の操作入力と推定することができる。そして、これにより、第1の静電容量センサ電極を用いる第1の測定結果が「ON」且つ第2の静電容量センサ電極を用いる第2の測定結果が「OFF」である場合には「操作入力あり」と判定することができる。
【0013】
また、車両表面に存在する雨等の水滴の影響を考慮した場合、第2の測定結果が「ON」且つ第1の測定結果が「OFF」である場合には、比較的小さな水滴が第2の静電容量センサ電極と導電性領域とを導通していると推定することができる。更に、第1及び第2の測定結果が共に「ON」である場合には、比較的大きな水滴が第1の静電容量センサ電極及び第2の静電容量センサ電極、並びに非導電性領域を導通していると推定することができる。そして、このように、静電容量センサ電極がおかれた状況を細分化して推定することが可能になることで、その用途にあわせた適切な操作入力検知を行うことができる。その結果、より幅広い用途に用いることができるようになる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記第2の静電容量センサ電極を前記第1の静電容量センサ電極と同電位にして前記の静電容量センサ電極を用いた前記静電容量の測定を実行する第1の静電容量測定手段と、前記第1の静電容量センサ電極を前記第2の静電容量センサ電極と同電位にして前記の静電容量センサ電極を用いた前記静電容量の測定を実行する第2の静電容量測定手段とを備えること、を要旨とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記第2の静電容量センサ電極を開放して前記第1の静電容量センサ電極を用いた前記静電容量の測定を実行する第1の静電容量測定手段と、前記第1の静電容量センサ電極を開放して前記第2の静電容量センサ電極を用いた前記静電容量の測定を実行する第2の静電容量測定手段とを備えること、を要旨とする。
【0016】
上記各構成によれば、測定に用いない電極の影響を排除して、第1及び第2の静電容量センサ電極を用いた静電容量測定をそれぞれ独立に行うことができる。
請求項4に記載の発明は、前記操作入力検知手段は、前記第1の測定結果及び第2の測定結果に示される各接触状態と、前記第2の静電容量センサ電極を接地した状態で前記第1の静電容量センサ電極を用いて測定された第3の測定結果に示される接触状態との組合せに基づいて、前記操作入力を検知すること、を要旨とする。
【0017】
上記構成によれば、第1及び第2の測定結果では識別できない状況の推定が可能になる。その結果、その静電容量センサ電極がおかれた状況をより詳細に識別して、より高精度に操作入力を検知することができる。
【0018】
即ち、静電容量センサ電極に水滴が接触した状態であっても、その水滴が地絡経路を形成しない限り、第1及び第2の測定結果は共に「OFF」となる。しかしながら、第2の静電容量センサ電極が接地されている場合には、その第1及び第2の静電容量センサ電極に跨る水滴が存在することによって、その水滴を介した地絡経路が形成される。従って、第3の測定結果のみが「ON」である場合には、第1及び第2の静電容量センサ電極に接触し且つ導電性領域には接触しない程度の比較的小さな水滴が存在すると推定することができる。そして、第1〜第3の測定結果が全て「OFF」である場合には、より高い精度で「操作入力なし」と判定することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、前記第1の静電容量センサ電極又は前記第2の静電容量センサ電極の一方を静電容量測定回路に接続するとともに、他方を同電位生成回路に接続し、又は開放し、若しくは接地することが可能な切替手段を備えること、を要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、簡素な構成にて、第2の静電容量センサ電極を第1の静電容量センサ電極と同電位にした状態で第1の静電容量センサ電極を用いた第1の静電容量測定、及び第1の静電容量センサ電極を第2の静電容量センサ電極と同電位にした状態で第2の静電容量センサ電極を用いた第2の静電容量測定を行うことができる。また、第2の静電容量センサ電極を開放した状態で第1の静電容量センサ電極を用いた第1の静電容量測定、及び第1の静電容量センサ電極を開放した状態で第2の静電容量センサ電極を用いた第2の静電容量測定を行うことができる。そして、第2の静電容量センサ電極を接地した状態で第1の静電容量センサ電極を用いた第3の静電容量測定を行うことができる。その結果、装置の小型化を図ることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、前記第2の静電容量センサ電極は、前記第1の静電容量センサ電極を囲む環状に形成されること、を要旨とする。
上記構成によれば、第1の静電容量センサ電極と導電性領域とを導通する水滴は、必ず第2の静電容量センサ電極をも導通することになる。その結果、第1〜第3の各測定結果について、より高い信頼性を確保することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、前記操作入力検知装置による検知結果に基づいて、車体に設けられた開閉部材の動作を制御可能な制御手段とを備えた開閉部材制御装置であること、を要旨とする。
【0023】
例えば、車両表面を流れるような比較的大きな水滴が存在している状況下で開閉部材が開作動した場合、その開口部から入り込む水滴によって車室内が濡れてしまう可能性がある。しかしながら、上記構成によれば、その操作入力検知装置により高精度に検知された操作入力に基づいて、適切に開閉部材を動作させることができる。その結果、高い信頼性を確保して使用者の利便性を高めることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、より高い精度で操作入力を検知することが可能な操作入力検知装置及び開閉部材制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明にかかるスライドドア開閉装置及び操作入力検知装置の概略構成図。
【図2】操作入力検知装置の概略構成を示すブロック図。
【図3】操作入力部近傍の平面図。
【図4】操作入力部近傍の断面図。
【図5】操作入力検知判定の処理手順を示すフローチャート。
【図6】各静電容量センサ電極がおかれた状況、各測定結果に示される接触状態、及び検知判定の関係を示す説明図。
【図7】(a)(b)各静電容量センサ電極がおかれた状況の一例を示す説明図(状況2)。
【図8】(a)(b)各静電容量センサ電極がおかれた状況の一例を示す説明図(状況3)。
【図9】(a)(b)各静電容量センサ電極がおかれた状況の一例を示す説明図(状況4)。
【図10】(a)(b)各静電容量センサ電極がおかれた状況の一例を示す説明図(状況5)。
【図11】(a)(b)各静電容量センサ電極がおかれた状況の一例を示す説明図(状況6)。
【図12】検知判定の処理手順を示すフローチャート。
【図13】本発明が適用される開閉部材制御装置の別例を示す説明図。
【図14】(a)(b)別例の各静電容量センサ電極を示す平面図。
【図15】別例の操作入力検知判定の処理手順を示すフローチャート。
【図16】別例の操作入力検知判定の処理手順を示すフローチャート。
【図17】別例の操作入力検知判定の処理手順を示すフローチャート。
【図18】別例の操作入力検知判定の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両1のドア2は、車体3の側面3aに設けられたドア開口部4を開閉可能なドアパネル5と、このドアパネル5を開閉動作させる際に把持部となるドアハンドル6とを備えている。
【0027】
本実施形態では、ドアパネル5の表面には、凹部5aが形成されている。また、ドアハンドル6は、その両端がドアパネル5に固定されることにより上記凹部5aを跨いで車両前後方向に延びる湾曲略棒状の外形を有している。そして、このドアハンドル6の端部近傍の上面6aには、使用者の操作入力を検知するための操作入力部7が設けられている。
【0028】
詳述すると、本実施形態のドア2は、車両前後方向への移動により開閉動作する所謂スライドドアとして構成されている。また、車両1には、このドア2の開閉動作を制御するスライドドア開閉装置10が設けられている。更に、車両1には、所謂電子キーシステム(図示略)が搭載されている。そして、本実施形態の車両1は、その使用者がドアハンドル6に設けられた操作入力部7に触れることで、その開施錠を含むドア2の開閉動作を行うことが可能となっている。
【0029】
具体的には、スライドドア開閉装置10は、モータ(図示略)を駆動源としてドア2の開施錠を実行し及び開閉駆動することが可能なアクチュエータ部11と、このアクチュエータ部11の作動を制御するドアECU12とを備えている。また、ドアECU12には、上記操作入力部7に対する操作入力を検知する操作入力検知部13が設けられている。即ち、本実施形態では、この操作入力検知部13と上記操作入力部7とにより、操作入力検知装置20が形成されている。そして、ドアECU12は、この操作入力検知装置20により操作入力の発生が検知された場合には、その操作入力に応じてドア2を動作させるべく、アクチュエータ部11の作動を制御する。
【0030】
本実施形態のスライドドア開閉装置10は、その操作入力検知に基づいて、ドア2が施錠されている場合には開錠し、開錠している場合には施錠する。そして、開錠時には、その開錠にあわせてドア2を開作動させる構成になっている。
【0031】
次に、本実施形態における操作入力検知装置の構成について説明する。
本実施形態では、車体3及びドアパネル5は、金属により形成されている。また、ドアハンドル6は、ドアパネル5と比較して十分に高い電気抵抗値を有する樹脂素材(略絶縁体)により形成されている。そして、図2に示すように、操作入力検知装置20は、その操作入力領域として設定されたドアハンドル6(の上面6a)に設けられることにより上記操作入力部7を構成する静電容量センサ電極21を備えている。
【0032】
即ち、本実施形態の操作入力検知装置20は、静電容量式の接触検知装置として構成されており、その操作入力検知部13には、静電容量センサ電極21が近傍の導体との間に形成するコンデンサの静電容量を測定する静電容量測定回路22が設けられている。また、操作入力検知部13は、この静電容量測定回路22が測定信号Sdとして出力する測定結果を演算装置(マイコン)23により処理する。そして、その静電容量センサ電極21に使用者の指等が触れているか否かを判定することにより、操作入力部7に対する操作入力を検知する構成となっている。
【0033】
詳述すると、図3及び図4に示すように、操作入力検知装置20は、ドアハンドル6の上面6aにおいて、当該ドアハンドル6に隣接する導電性領域としてのドアパネル5から離間した位置に設けられた第1の静電容量センサ電極としての第1電極31を備えている。また、操作入力検知装置20は、この第1電極31とドアパネル5との間に間隔X1,X2をあけて設けられた第2の静電容量センサ電極としての第2電極32を備えている。具体的には、第1電極31は、略矩形状に形成され、第2電極32は、第1電極31を囲む環状に形成されている。また、第1電極31と第2電極32との間隔X2は、ドアパネル5と第2電極32の間隔X1よりも狭く設定されている。そして、本実施形態の操作入力検知装置20では、この第1電極31に対応する部分が、その「操作入力を行うために使用者が触れる部分(接触スイッチ)」に設定されている。
【0034】
一方、図2に示すように、操作入力検知部13には、その静電容量測定回路22を第1電極31又は第2電極32の何れかに接続する切替回路33が設けられている。また、操作入力検知部13には、その静電容量測定回路22に接続された一方側の静電容量センサ電極21と等しい電位(同電位Veq)を生成する同電位生成回路34を備えている。そして、切替手段としての切替回路33は、この同電位生成回路34を他方側の静電容量センサ電極21に接続し、又は当該他方側の静電容量センサ電極21を接地(GND接続)することが可能となっている。
【0035】
さらに詳述すると、同電位生成回路34は、静電容量測定回路22が出力する測定信号Sdに基づいて同電位Veqを生成する。また、切替回路33は、演算装置23が出力する制御信号Scによって、その作動が制御されている。そして、操作入力検知手段としての演算装置23は、制御信号Scの出力を通じて第1電極31及び第2電極32の接続を切り替えつつ、入力される測定信号Sdに基づいて、これら第1電極31及び第2電極32を用いた静電容量測定の結果を取得する。
【0036】
具体的には、図5のフローチャートに示すように、演算装置23は、先ず、第1電極31を静電容量測定回路22に接続するとともに、第2電極32を同電位生成回路34に接続することにより、第2電極32を第1電極31と同電位にする(ステップ101)。そして、この状態で第1電極31を用いて静電容量測定回路22が測定した第1の測定結果を取得する(第1測定値C1、ステップ102)。
【0037】
次に、演算装置23は、第2電極32を静電容量測定回路22に接続するとともに、第1電極31を同電位生成回路34に接続することにより、第1電極31を第2電極32と同電位にする(ステップ103)。そして、この状態で第2電極32を用いて静電容量測定回路22が測定した第2の測定結果を取得する(第2測定値C2、ステップ104)。
【0038】
続いて、演算装置23は、第2電極32を接地する(GND接続、ステップ105)。そして、この状態で第1電極31を静電容量測定回路22に接続することにより、第1電極31を用いて静電容量測定回路22が測定した第3の測定結果を取得する(第3測定値C3、ステップ106)。そして、本実施形態の演算装置23は、これら3つの測定結果に基づいて、その検知判定を実行する(ステップ107)。
【0039】
即ち、静電容量測定回路22により測定される静電容量の値は、その接続された静電容量センサ電極21に導体が接触し、この導体が地絡経路を形成することにより増大する。本実施形態の演算装置23は、これを利用して、上記第1〜第3の測定結果である第1測定値C1、第2測定値C2及び第3測定値C3を、それぞれ対応する閾値(Th1,Th2,Th3)に比較する。そして、これらの各測定値が、その測定に用いられた静電容量センサ電極21に導体が接触していることを示す値であるか否かを判定する。
【0040】
そして、図6に示すように、本実施形態の演算装置23は、これら第1〜第3の測定結果に示される各接触状態、つまり地絡経路を形成する導体接触の有無(ON/OFF)の組合せに基づいて、その操作入力部7に対する操作入力が発生したか否かを判定する構成になっている。
【0041】
さらに詳述すると、図3及び図4に示すように、第1電極31及び第2電極32に何も接触していない場合、これら第1電極31及び第2電極32に直接的な地絡経路は形成されない。従って、この場合、上記第1〜第3の測定結果は、全て「OFF」となる(図6参照、「状況1」)。
【0042】
一方、図7(a)(b)に示すように、使用者の指Fが正しく第1電極31のみに接触している場合、その指Fが地絡経路を形成することにより、第1電極31を用いた第1及び第3の測定結果は「ON」となる。そして、何も接触してない第2電極32を用いた第2の測定結果のみが「OFF」となる(図6参照、「状況2」)。
【0043】
また、図8(a)(b)に示すように、ドアハンドル6に付着した雨等の水滴Wが、第2電極32及び導電性領域としてのドアパネル5に接触している場合、この比較的小さな水滴Wが第2電極32とドアパネル5とを導通することにより、ドアパネル5を介した地絡経路が形成される。従って、この場合、第2電極32を用いた第2の測定結果は「ON」となる。そして、何も接触してない第1電極31を用いた第1及び第3の測定結果は「OFF」となる(図6参照、「状況3」)。
【0044】
尚、図9(a)(b)に示すように、これらの「状況2」及び「状況3」が同時に発生した状況においては、第1電極31に接触する指Fが同第1電極31の地絡経路を形成し、第2電極32に接触する水滴Wがドアパネル5を介した同第2電極32の地絡経路を形成する。従って、この場合、上記第1〜第3の測定結果は、全て「ON」となる(図6参照、「状況4」)。
【0045】
また、図10(a)(b)に示すように、第1電極31及び第2電極32に跨るようにドアハンドル6に付着した比較的小さな水滴Wが、これら第1電極31と第2電極32とを導通している場合、両者を同電位にして測定した第1及び第2の測定結果は共に「OFF」となる。しかしながら、測定に用いない第2電極32を接地した状態で第1電極31を用いて行われる第3の静電容量測定では、その水滴Wが第2電極32を介した地絡経路を形成する。従って、この場合、第3の測定結果のみが「ON」となる(図6参照、「状況5」)。
【0046】
更に、図11(a)(b)に示すように、ドアハンドル6上の比較的大きな水滴Wが、第1電極31及び第2電極32、並びにドアパネル5に接触している場合、この水滴Wが第1電極31及び第2電極32とドアパネル5とを導通することにより、第1電極31及び第2電極32の何れにもドアパネル5を介した地絡経路が形成される。尚、第2電極32を接地した状態で第1電極31を用いて行われる第3の静電容量測定では、第2電極32を介した地絡経路も形成される。従って、この場合、上記「状況4」の場合と同様、第1〜第3の測定結果は、全て「ON」となる(図6参照、「状況6」)。
【0047】
このように、第1〜第3の測定結果に示される各接触状態の組合せによって、ドアハンドル6に付着した水滴Wを含め、その静電容量センサ電極21がおかれた様々な状況を推定することが可能になる。
【0048】
図6に示すように、本実施形態の操作入力検知装置20は、第1電極31を用いた第1の測定結果が「ON」、且つ第2電極32を用いた第2の測定結果が「OFF」である場合にのみ、その操作入力部7に対する操作入力が発生したものと判定する(「状況2」=検知、第3の測定結果も「ON」)。そして、これ以外の場合には、操作入力部7に対する操作入力を検知しない、即ち非検知とすることにより、その車両表面に水滴Wが存在する状況下でドア2が開作動する事態を回避する構成になっている。
【0049】
次に、演算装置23が実行する検知判定(図5参照、ステップ107)の処理手順について説明する。
図12のフローチャートに示すように、演算装置23は、先ず、第2測定値C2とその対応する閾値Th2とを比較する(ステップ201)。更に、このステップ201において第2測定値C2が閾値Th2に満たない場合(C2<Th2、ステップ201:NO)には、続いて第1測定値C1とその対応する閾値Th1とを比較する(ステップ202)。そして、このステップ202において第1測定値C1が閾値Th1以上である場合(C1≧Th1、ステップ202:YES)、即ち第2の測定結果が「OFF」且つ第1の測定結果が「ON」である場合には、使用者による第1電極31への指接触があったものと判定して、その操作入力部7に対する操作入力の発生を検知する(ステップ203)。
【0050】
一方、上記ステップ202において、第1測定値C1が閾値Th1に満たなかった場合(C1<Th1、ステップ202:NO)には、続いて第3測定値C3とその対応する閾値Th3とを比較する(ステップ204)。そして、このステップ204において第3測定値C3が閾値Th3に満たなかった場合(C3<Th3、ステップ204:NO)、即ち第1〜第3の測定結果が全て「OFF」である場合には、使用者による第1電極31への指接触はないものと判定して、その操作入力の発生を検知しない(ステップ205)。
【0051】
また、上記ステップ201において第2測定値C2が閾値Th2以上である場合(C2≧Th2、ステップ201:YES)、又は上記ステップ204において第3測定値C3が閾値Th3以上である場合(C3≧Th3、ステップ204:YES)にも操作入力の発生を検知しない(ステップ206)。そして、これら第2の測定結果が「ON」である場合、又は第1及び第2の測定結果が共に「OFF」且つ第3の測定結果が「ON」である場合には、その車両表面に水滴Wが存在する状況下にあると推定する。
【0052】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)操作入力検知装置20は、ドアハンドル6の上面6aにおいて、隣接する導電性領域としてのドアパネル5から離間した位置に設けられた第1の静電容量センサ電極としての第1電極31と、当該第1電極31とドアパネル5との間に間隔X1,X2をあけて設けられた第2の静電容量センサ電極としての第2電極32とを備える。また、操作入力検知装置20は、これら第1電極31及び第2電極32が近傍の導体との間に形成するコンデンサの静電容量を測定する静電容量測定回路22と、その測定結果を処理する演算装置23とを備える。そして、演算装置23は、第2電極32を第1電極31と同電位にした状態で第1電極31を用いて測定された第1の測定結果(第1測定値C1)に示される接触状態と、第1電極31を第2電極32と同電位にした状態で第2電極32を用いて測定された第2の測定結果(第2測定値C2)に示される接触状態とに基づいて、操作入力検知を実行する。
【0053】
即ち、測定に用いない電極を測定に用いる電極と同電位にすることで、その測定に用いない電極の影響を排除することができる。従って、上記構成によれば、その独立に測定された各測定結果について高い信頼性を確保することができる。そして、それぞれの測定結果に示される接触状態(ON/OFF)の組合せに基づく判定を行うことで、その静電容量センサ電極21がおかれた状況を詳細に識別することができる。その結果、より高精度な操作入力の検知が可能になる。
【0054】
具体的には、第1電極31を「操作入力を行うために使用者が触れる部分(接触スイッチ)」に設定することで、その「第1電極31のみに対する導体接触の発生」を使用者の操作入力と推定することができる。そして、これにより、第1電極31を用いる第1の測定結果が「ON」且つ第2電極32を用いる第2の測定結果が「OFF」である場合には「操作入力あり」と判定することができる。
【0055】
また、車両表面に存在する雨等の水滴Wの影響を考慮した場合、第2の測定結果が「ON」且つ第1の測定結果が「OFF」である場合には、比較的小さな水滴Wが第2電極32とドアパネル5とを導通していると推定することができる。更に、第1及び第2の測定結果が共に「ON」である場合には、比較的大きな水滴Wが第1電極31及び第2電極32、並びにドアパネル5を導通していると推定することができる。そして、このように、静電容量センサ電極21がおかれた状況を細分化して推定することが可能になることで、その用途にあわせた適切な操作入力検知を行うことができる。その結果、より幅広い用途に用いることができるようになる。
【0056】
(2)スライドドア開閉装置10は、その操作入力検知に基づいてドア2を開錠し、及びその開錠にあわせてドア2を開作動させる。そして、操作入力検知装置20(の演算装置23)は、第1及び第2の測定結果が共に「ON」である場合には、その操作入力の発生を検知しない(非検知)。
【0057】
上記構成によれば、車両表面を流れるような比較的大きな水滴Wが存在している状況下でドア2が開作動することを防ぐことができる。そして、これにより、そのドア開口部4から入り込む水滴Wによって車室内が濡れてしまうような事態を回避することができる。
【0058】
(3)演算装置23は、第2電極32を接地した状態で第1電極31を用いて測定された第3の測定結果(第3測定値C3)を取得する。そして、上記第1及び第2の測定結果に示される接触状態と、この第3の測定結果に示される接触状態との組合せに基づいて、その操作入力検知を実行する。
【0059】
上記構成によれば、その静電容量センサ電極21がおかれた状況をより詳細に識別することが可能になる。その結果、より高精度に操作入力を検知することができる。
(4)操作入力検知装置20(の演算装置23)は、第1及び第2の測定結果が共に「OFF」且つ第3の測定結果が「ON」である場合には、第1電極31及び第2電極32に比較的小さな水滴Wが接触していると推定する。
【0060】
上記構成によれば、第1及び第2の測定結果では識別できない状況の推定を可能として、より高精度な操作入力検知を行うことができる。
即ち、静電容量センサ電極21(第1電極31及び第2電極32)に水滴Wが接触した状態であっても、その水滴Wが地絡経路を形成しない限り、第1及び第2の測定結果は共に「OFF」となる。しかしながら、第2電極32が接地されている場合、その第2電極32及び第1電極31に跨る水滴Wが存在することで、その水滴Wを介した地絡経路が形成される。
【0061】
従って、第3の測定結果のみが「ON」である場合には、第1電極31及び第2電極32に接触し且つドアパネル5には接触しない程度の比較的小さな水滴Wが存在すると推定することができる。そして、第1〜第3の測定結果が全て「OFF」である場合には、より高い精度で「操作入力なし」と判定することができる。
【0062】
(5)操作入力検知装置20(の操作入力検知部13)は、静電容量測定回路22と、この静電容量測定回路22を第1電極31又は第2電極32の何れかに接続する切替回路33とを備える。また、操作入力検知装置20は、その静電容量測定回路22に接続された一方側の静電容量センサ電極21と等しい電位(同電位Veq)を生成する同電位生成回路34を備える。そして、切替回路33は、この同電位生成回路34を他方側の静電容量センサ電極21に接続し、又は当該他方側の静電容量センサ電極21を接地(GND接続)することが可能となっている。
【0063】
上記構成によれば、簡素な構成にて、第2電極32を第1電極31と同電位にした状態で第1電極31を用いた第1の静電容量測定、及び第1電極31を第2電極32と同電位にした状態で第2電極32を用いた第2の静電容量測定を行うことができる。そして、第2電極32を接地した状態で第1電極31を用いた第3の静電容量測定を行うことができる。その結果、操作入力検知装置20の小型化を図ることができる。
【0064】
(6)第2電極32は、第1電極31を囲む環状に形成される。このような構成とすれば、第1電極31とドアパネル5とを導通する水滴Wは、必ず第2電極32をも導通することになる。その結果、第1〜第3の各測定結果について、より高い信頼性を確保することができる。
【0065】
(7)上記第1電極31と第2電極32との間隔X2は、ドアパネル5と第2電極32の間隔X1よりも狭く設定される。このような構成とすることで、ドアパネル5と第2電極32とを導通する水滴Wが存在する場合(図8(a)(b)参照)と、第1電極31と第2電極32を導通する水滴Wが存在する場合(図10(a)(b)参照)とによって、その静電容量センサ電極21に接触する水滴Wの大きさを識別することができる。その結果、より幅広い用途において、その操作入力検知に用いることができるようになる。
【0066】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、本発明を、車体3の側面3aに設けられたドア2の開閉動作を制御するスライドドア開閉装置10及びその操作入力検知装置20に具体化した。しかし、これに限らず、図13に示すように、車体3の後部3bに設けられた後部ドア40の開閉動作を制御するバックドア開閉装置や車体3の天井部3cに設けられたサンルーフ41の開閉動作を制御するルーフ開閉装置等、その他の開閉部材制御装置に適用してもよい。そして、このような開閉部材制御装置に限らず、車両表面に設定された操作入力領域に設けられる静電容量センサ電極を備えた操作入力検知装置であれば、その用途はどのようなものであってもよい。
【0067】
・また、ドアの形態としては、その支持部(ヒンジ)を支点として回動する通常のドアや、跳ね上げ式のドア等、必ずしもスライドドアに限るものではない。更に、上記実施形態のスライドドア開閉装置10は、アクチュエータ部11及びその作動を制御するドアECU12により制御手段が構成されることとしたが、このような電動アクチュエータにより駆動するものに限らず、重力やバネ等を利用して開作動させる制御手段を備える構成であってもよい。
【0068】
・更に、上記実施形態では、ドアハンドル6(の上面6a)を操作入力領域に設定として、ここに静電容量センサ電極21を設けることとした。しかし、これに限らず、操作入力領域は、車両表面の任意の箇所に設定してもよい。
【0069】
・上記実施形態では、第2電極32は、第1電極31を囲む環状に形成されることとした。しかし、これに限らず、例えば、第2電極32の形状については、図14(a)に示すように、導電性領域としてのドアパネル5とは反対側(同図中、右側)に開口する略コ字状としてもよい。そして、第1電極31とドアパネル5との間に間隔をあけて配置される構成であれば、図14(b)に示すように、直線状の外形を有するものであってもよい。尚、上記実施形態では、第1電極31と第2電極32との間隔X2は、ドアパネル5と第2電極32の間隔X1よりも狭く設定されることとしたが(図3参照)、この点についても任意に変更してもよい。
【0070】
・上記実施形態では、第2電極32を第1電極31と同電位にした状態で第1電極31を用いた第1の静電容量測定を行うとともに、第1電極31を第2電極32と同電位にした状態で第2電極32を用いた第2の静電容量測定を行う。つまり、測定に用いない電極を測定に用いる電極と同電位にすることで、その測定に用いない電極の影響を排除することとした。しかし、これに限らず、その測定に用いない電極を開放する(非接続にする)構成としてもよい。
【0071】
例えば、図15のフローチャートに示すように、先ず、第2電極32を開放する(ステップ301)。そして、この状態で第1電極31を静電容量測定回路22に接続することにより、第1電極31を用いた静電容量測定を実行する(第1測定値C1、ステップ302)。次に、第1電極31を開放する(ステップ303)。そして、この状態で第2電極32を静電容量測定回路22に接続することにより、第2電極32を用いた静電容量測定を実行する(第1測定値C2、ステップ304)。
【0072】
そして、これらの各静電容量測定により得られる結果を、それぞれ第1及び第2の測定結果としてもよい。
即ち、上記実施形態では、静電容量測定回路22及び同電位生成回路34により第1及び第2の静電容量測定手段が形成される。しかしながら、上記構成によれば、同電位生成回路34を廃して構成の簡略化を図ることができる。そして、このような構成としても、上記実施形態と同様に、その測定に用いない電極の影響を排除することができる。
【0073】
尚、ステップ305以降の各処理は、図5のフローチャートに示されるステップ105以降の各処理と同一(第2電極32を接地して第1電極31を用いた静電容量測定を行う第3の静電容量測定手段を含む)であるため、その説明は省略する。そして、この例を含め、第1〜第3の各静電容量測定の実行順は、適宜変更してもよい。
【0074】
・また、上記実施形態では、特に言及しなかったが、複数回の検知判定を行うことによりその判定結果を確定する構成にするとよい。
例えば、図16に示すように、静電容量の測定(ステップ401:図5参照)、及び検知判定(ステップ402:図12参照)を実行した後、その判定結果が「操作入力の発生」を示すものであるか否か(検知/非検知)を判定する(ステップ403)。
【0075】
次に、このステップ403において判定結果が「検知」であった場合(ステップ403:YES)には、その「検知と判定した回数」を第1カウンタを用いて計測する(第1カウンタインクリメント、n=n+1、ステップ404)。そして、その第1カウンタのカウント値nを所定の閾値n0と比較し(ステップ405)、当該カウント値nが閾値n0以上である場合(ステップ405:YES)には、その検知結果を「検知」で確定する(ステップ406)。
【0076】
一方、上記ステップ403において判定結果が「非検知」であった場合(ステップ403:NO)、又は上記ステップ405において第1カウンタのカウント値nが閾値n0に満たなかった場合(ステップ405:NO)には、第2カウンタを用いて「判定回数」を計測する(第2カウンタインクリメント、N=N+1、ステップ407)。そして、その第2カウンタのカウント値Nを所定の閾値N0と比較し(ステップ408)、当該カウント値Nが閾値N0以上である場合(ステップ408:YES)には、その検知結果を「非検知」で確定する(ステップ409)。
【0077】
尚、上記ステップ406又はステップ409において検知結果を確定した場合には、その第1カウンタ及び第2カウンタをクリアする(n=0,N=0、ステップ410)。そして、上記ステップ408において第2カウンタのカウント値Nが閾値N0に満たなかった場合(ステップ408:NO)には、上記ステップ409及びステップ410の処理は実行しない。
【0078】
このようにして上記ステップ401〜ステップ410に示される確定処理を所定タイミングで周期的に実行することにより、複数回の検知判定に基づいて、その判定結果を確定することができる。その結果、より高精度に操作入力を検知することができるようになる。
【0079】
・また、このように複数回の検知判定に基づいて判定結果を確定する場合、各測定結果に基づいて車両表面に水滴が付着していると推定可能なときには、その操作入力が発生したと判定する際の判定条件を変更する構成としてもよい。
【0080】
例えば、上記実施形態のように「車両表面に存在する水滴が車室内に入り込む事態を防ぐ」という点を重視するならば、図17のフローチャートに示すように、ステップ206において車両表面に水滴Wが存在する状況下にあると推定した後(図12参照、ステップ205までは省略)、次回以降の判定条件を厳格化するとよい(ステップ207)。これにより、車両表面に水滴Wが存在する状況下にあるには、その検知結果が「非検知」になりやすくなる。
【0081】
尚、「厳格化」に対応する判定条件変更手段としては、第1測定値C1に対応する閾値Th1の値を高くし(Th1´>Th1)、第2測定値C2に対応する閾値Th2の値を低くする(Th2´<Th2)等とするとよい。そして、その変更の方法については、連続的に変化させても段階的に変化させてもよい。
【0082】
また、これとは反対に、「多少の水滴が存在する状況下においても素早く使用者の操作入力を検知する」という点を重視する用途では、「車両表面に存在する水滴は比較的小さい」と推定可能な場合には、次回以降の判定条件を緩和するとよい。これにより、その検知結果が「検知」になりやすくなる。
【0083】
具体的には、図18のフローチャートに示すように、ステップ501において第2測定値C2が閾値Th2以上である場合(C2≧Th2、ステップ501:YES)にも、第1測定値C1とその対応する閾値Th1とを比較する(ステップ506)。そして、このステップ506において第1測定値C1が閾値Th1以上である場合(C1≧Th1、ステップ506:YES)、つまり第1及び第2の測定結果が共に「ON」である場合には、車両表面に比較的大きな水滴Wが存在していると推定する(図6参照「状況6」=非検知、ステップ507)。尚、ステップ501〜ステップ505までの各処理は、図12のフローチャート中のステップ201〜ステップ205までの各処理と同一であるため、その説明は省略する。
【0084】
一方、ステップ506において第1測定値C1が閾値Th1に満たない場合(C1<Th1、ステップ506:NO)、つまり第2の測定結果が「ON」且つ第1の測定結果が「OFF」である場合には、車両表面に比較的小さな水滴Wが存在していると推定する(図6参照「状況3」=非検知、ステップ508)。また、ステップ504において第3測定値C3が閾値Th3以上である場合(C3≧Th3、ステップ504:YES)、つまり第1及び第2の測定結果が共に「OFF」且つ第3の測定結果が「ON」である場合にも車両表面に比較的小さな水滴Wが存在していると推定する(図6参照「状況5」=非検知、ステップ508)。そして、これら車両表面に存在する水滴Wが比較的小さいと推定可能な場合には、次回以降の判定条件を緩和する(ステップ509)。
【0085】
尚、「緩和」に対応する判定条件変更手段としては、例えば、第2測定値C2に対応する閾値Th2の値を高くする等とするとよい(Th2´>Th2)。この場合も、その変更方法については、連続的に変化させても段階的に変化させてもよい。
【0086】
・また、上記実施形態では、上記第1電極31と第2電極32との間隔X2は、ドアパネル5と第2電極32の間隔X1よりも狭く設定されている。これを利用して、上記ステップ504において第1及び第2の測定結果が共に「OFF」且つ第3の測定結果が「ON」であると判定した場合(C3≧Th3、ステップ504:YES)、即ち第1電極31及び第2電極32に跨って付着する程度に比較的小さな水滴Wが存在している場合にのみ、上記判定条件の緩和を行う構成としてもよい。このような構成とすることで、その車両表面に存在する水滴Wの影響がより小さいと考えられる場合に限定して、その検知結果が「検知」になりやすくすることができる。
【0087】
・上記実施形態では、第2電極32を接地した状態で第1電極31を用いた第3の静電容量測定を行うことした。しかし、これに限らず、第2電極32を第1電極31と同電位にした状態で第1電極31を用いた第1の静電容量測定、及び第1電極31を第2電極32と同電位にした状態で第2電極32を用いた第2の静電容量測定のみを行う構成であってもよく、このような構成としても一定の効果を得ることができる。但し、静電容量センサ電極21がおかれた状況をより詳細に識別するという点では、上記実施形態と同様に第3の測定結果を併用する構成の方が望ましい。
【0088】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を効果とともに記載する。
(イ)前記第2の静電容量センサ電極を接地して前記第1の静電容量センサ電極を用いた前記静電容量の測定を実行する第3の静電容量測定手段を備えること、を特徴とする。
【0089】
(ロ)前記操作入力検知手段は、各測定結果をそれぞれ対応する閾値と比較することにより前記操作入力の検知判定を行うものであって、前記第1の判定結果が該第1の測定結果に対応する閾値以上であり、且つ前記第2の判定結果が該第2の測定結果に対応する閾値に満たない場合に、前記操作入力が発生したと判定すること、を特徴とする。これにより、精度よく、使用者による操作入力を検知することができる。
【0090】
(ハ)前記操作入力検知手段は、複数回の検知判定を行うことによりその判定結果を確定すること、を特徴とする。これにより、その操作入力検知の信頼性を高めることができる。
【0091】
(二)前記操作入力検知手段は、各測定結果に基づいて前記車両表面に水滴が付着していると推定可能な場合に、前記操作入力が発生したと判定する際の判定条件を変更する判定条件変更手段を備えること、を特徴とする。
【0092】
(ホ)前記操作入力検知手段は、前記第2の測定結果が該第2の測定結果に対応する閾値以上である場合に、前記操作入力が発生したと判定する際の判定条件を変更する判定条件変更手段を備えること、を特徴とする。
【0093】
(ヘ)前記操作入力検知手段は、前記第1の判定結果及び第2の判定結果がそれぞれ対応する閾値に満たず、且つ前記第3の測定結果が該第3の測定結果に対応する閾値以上である場合に、前記操作入力が発生したと判定する際の判定条件を変更する判定条件変更手段を備えること、を特徴とする。
【0094】
上記各構成により判定条件を厳格化することで、効果的に、その車両表面に存在する水滴が車室内に入り込む事態を防ぐことができる。また、これとは反対に、上記(ヘ)により「車両表面に存在する水滴は比較的小さい」と推定可能な場合に、その判定条件を緩和することで、「多少の水滴が存在する状況下においても素早く使用者の操作入力を検知する」という点を重視する用途にも対応することが可能になる。その結果、より幅広い用途において、その操作入力検知に用いることができるようになる。
【符号の説明】
【0095】
1…車両、2…ドア、3…車体、3a…側面、3b…後部、3c…天井部、4…ドア開口部、5…ドアハンドル、6…ドアパネル、7…操作入力部、10…スライドドア開閉装置、11…アクチュエータ部、12…ドアECU12、13…操作入力検知部、20…操作入力検知装置、21…静電容量センサ電極、22…静電容量測定回路、23…演算装置、31…第1電極、32…第2電極、33…切替回路、34…同電位生成回路、40…後部ドア、41…サンルーフ、X1,X2…間隔、F…指、W…水滴、C1…第1測定値、C2…第2測定値、C3…第3測定値、Th1〜Th3…閾値、Veq…同電位、Sc…制御信号、Sd…測定信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両表面に設定された操作入力領域に設けられる静電容量センサ電極と、前記静電容量センサ電極が近傍の導体との間に形成するコンデンサの静電容量を測定する静電容量測定手段と、測定される前記静電容量に基づいて操作入力を検知する操作入力検知手段と、を備えた操作入力検知装置において、
前記操作入力領域に隣接する導電性領域から離間した位置に設けられた第1の静電容量センサ電極と、
前記第1の静電容量センサ電極と前記導電性領域との間に間隔をあけて設けられた第2の静電容量センサ電極とを備え、
前記操作入力検知手段は、
前記第2の静電容量センサ電極の影響を排除した状態で前記第1の静電容量センサ電極を用いて測定された第1の測定結果に示される接触状態と、
前記第1の静電容量センサ電極の影響を排除した状態で前記第2の静電容量センサ電極を用いて測定された第2の測定結果に示される接触状態との組合せに基づいて、
前記操作入力を検知すること、を特徴とする操作入力検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の操作入力検知装置において、
前記第2の静電容量センサ電極を前記第1の静電容量センサ電極と同電位にして前記第1の静電容量センサ電極を用いた前記静電容量の測定を実行する第1の静電容量測定手段と、
前記第1の静電容量センサ電極を前記第2の静電容量センサ電極と同電位にして前記第2の静電容量センサ電極を用いた前記静電容量の測定を実行する第2の静電容量測定手段とを備えること、を特徴とする操作入力検知装置。
【請求項3】
請求項1に記載の操作入力検知装置において、
前記第2の静電容量センサ電極を開放して前記第1の静電容量センサ電極を用いた前記静電容量の測定を実行する第1の静電容量測定手段と、
前記第1の静電容量センサ電極を開放して前記第2の静電容量センサ電極を用いた前記静電容量の測定を実行する第2の静電容量測定手段とを備えること、
を特徴とする操作入力検知装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の操作入力検知装置において、
前記操作入力検知手段は、
前記第1の測定結果及び第2の測定結果に示される各接触状態と、
前記第2の静電容量センサ電極を接地した状態で前記第1の静電容量センサ電極を用いて測定された第3の測定結果に示される接触状態との組合せに基づいて、
前記操作入力を検知すること、を特徴とする操作入力検知装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の操作入力検知装置において、
前記第1の静電容量センサ電極又は前記第2の静電容量センサ電極の一方を静電容量測定回路に接続するとともに、他方を同電位生成回路に接続し、又は開放し、若しくは接地することが可能な切替手段を備えること、を特徴とする操作入力検知装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の操作入力検知装置において、
前記第2の静電容量センサ電極は、前記第1の静電容量センサ電極を囲む環状に形成されること、を特徴とする操作入力検知装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の操作入力検知装置と、
前記操作入力検知装置による検知結果に基づいて、車体に設けられた開閉部材の動作を制御可能な制御手段とを備えること、を特徴とする開閉部材制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−113626(P2013−113626A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257933(P2011−257933)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】