説明

操作感触付与型入力装置

【課題】摩擦式の操作感触付与型入力装置には、回転操作部を基準位置に停止させることができないことによる不都合を生じるという問題がある。
【解決手段】摩擦式の操作感触付与型入力装置は、回転操作部の回転角度に対応する座標から所定のフォースカーブに基づいて摩擦力の大きさを演算する。フォースカーブは基準位置で谷になり、基準位置の左右で登り坂となる。例えば、回転角度の座標が基準位置の右側の登り区間にあり(ステップS300:Yes)、かつ、回転角度が前回の角度から所定角度より減少(θ<(θold−Δθ))した場合(ステップS302:Yes)、回転角度の座標を最も近い左側の基準位置に変更する(ステップS304)。これにより、摩擦力の大きさをフォースカーブの谷底の値(極小)に変更することができるので、無駄を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の電子機器や車載電装品等の入力デバイスとして利用することができ、その際、操作者に力学的な操作感触を付与することができる操作感触付与型入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、摩擦力によって操作感触を付与するタイプの入力装置として、回転操作部の回転角度が変化していく間に摩擦力の増加と減少を繰り返すフォースカーブを設定しておき、回転操作の途中でフォースカーブの山(ピーク点)を通過する度にクリック感触を付与する先行技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような摩擦式の操作感触付与型入力装置を利用するに際して、摩擦力が最小となる位置(フォースカーブの谷底)を回転操作部の基準位置として規定し、クリック感触を発生させた後は基準位置で回転操作部を停止させる手法が望まれている。すなわち、この手法を活用すれば、メカニカルな機構を持つことなく回転操作部の停止位置に節度を持たせることができるし、例えば回転操作部の回転角度と画面上でのポインタ表示とを連動させた場合に、各基準位置に対応して画面に表示されたマーカや目盛り等にポインタの位置をぴったり合わせることができると考えられる。
【特許文献1】特開2003−295959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、摩擦式の操作感触付与型入力装置は、あくまで回転操作部が回転操作されたときに摩擦力を発生させるものであって、回転操作部そのものを自立的に動かす機能はない。そのため、回転操作部が基準位置を通り越えた後に操作者が手を離したとしても、そこから基準位置まで復帰させるということはできない。
【0005】
もちろん、回転操作部が基準位置に復帰しなくても操作者に特段の不便は生じないものの、上記のように回転操作部の回転角度と画面上でのポインタ表示とを連動させている場合、ポインタがマーカや目盛り等からずれた位置に表示されたままとなり、見栄えを損ねるといった不都合を生じる。また、摩擦抵抗の付与に電磁ブレーキを用いている場合、操作者が手を離した後も電磁ブレーキに通電されたままの状態が続くため、無駄な電力を消費してしまうという不都合を生じる。
【0006】
そこで本発明は、回転操作部を基準位置に停止させることができないことによる不都合を解消させる技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
【0008】
解決手段1:本発明の操作感触付与型入力装置は、操作者から操作力を受けて回転する回転操作部と、回転操作部の回転角度を検出する検出手段と、回転操作部とともに回転する回転部材と、回転部材に摩擦抵抗を付与することで操作者からの操作力に対して抵抗力を発生させる摩擦抵抗付与手段と、検出手段による検出結果に基づき摩擦抵抗付与手段による摩擦抵抗の付与動作を制御する制御手段とを備える構成を基本とする。
【0009】
上記の回転操作部は操作者により任意に回転操作されるものであり、それとともに回転部材も回転するが、摩擦抵抗手段により回転部材に摩擦抵抗が付与されると、その抵抗力が操作者に対する操作感触となって現れる。このとき、摩擦抵抗をどのように付与するかは、検出手段により検出された回転角度に基づき制御手段により制御されている。
【0010】
その上で制御手段は、所定の座標軸上でみて回転操作部の回転角度に対応する座標が予め規定された基準位置の右側又は左側のいずれか一方の側にある状態で、基準位置から一方の側へ座標を移動させる操作力を回転操作部が受けていると判断した場合、検出手段により検出される回転角度の変化に応じて摩擦抵抗を増大させるべく摩擦抵抗付与手段による付与動作の制御を実行する。そして制御手段は、この制御の実行中に回転操作部が一方の側へ座標を移動させる操作力を受けなくなったと判断した場合、付与動作の制御に関して回転操作部の回転角度に対応する座標を基準位置に相当する座標に置き換えるものとしている。
【0011】
制御手段が上記の制御を実行することにより、例えば座標軸上で基準位置の右側に現在の回転角度に対応する座標があり、この座標を右側へ移動させようとする操作がなされた場合、回転角度の変化に応じて摩擦力が大きくなる。この場合、操作者に対して次第に抵抗が増大していく操作感触を与えることができる。この状態で操作者が操作をやめると、制御手段は付与動作の制御に関して回転角度に対応する座標を基準位置の座標に置き換える。これにより、回転操作部そのものを自立的に動かすことができなくても、操作者が手を離したり、操作を中断したりした場合は制御上で基準位置に座標が復帰したものと判断し、摩擦抵抗の付与動作を停止させることができる。
【0012】
解決手段2:また本発明の操作感触付与型入力装置は、回転操作部と回転部材との間に介在して設けられ、回転部材に摩擦抵抗が付与された状態で回転操作部が操作されると、その操作力により弾性変形を生じて回転操作部の回転を許容する弾性部材をさらに備えてもよい。なお弾性変形の方向は、回転操作部が受ける操作力の方向に略一致する。
【0013】
この場合、上記の制御手段は、弾性部材による弾性変形からの復帰に伴い、座標軸上でみて回転操作部の回転角度に対応する座標が一方の側から他方の側へ予め設定された所定量だけ移動した場合、回転操作部が一方の側へ座標を移動させる操作力を受けなくなったと判断することができる。
【0014】
このように、回転操作部と回転部材との間に弾性部材を介在させることで、通常は回転操作部が受けた操作力を回転部材に伝達しつつ、回転部材に付与される摩擦抵抗を回転操作部に伝達することができる。また、回転部材に摩擦抵抗が付与された状態で回転操作部が操作力を受けると、弾性部材が弾性変形を生じた状態で操作力を回転部材に伝達することができる。
【0015】
この状態で操作者が回転操作部から手を離したり、操作力を除去したりすると、弾性部材が変形状態から復帰することで回転操作部がそれまでの操作と逆方向に回転する。このときの回転角度の変化が座標上でみて所定量(又はそれ以上)であれば、制御手段は回転操作部が操作力を受けなくなったと判断して座標を基準位置に対応する座標に置き換えるので、上記のようにそれ以上の摩擦抵抗の付与を停止させることができる。
【0016】
解決手段3:また制御手段は、座標軸上の複数箇所に規定された個々の基準位置で摩擦抵抗が極小となり、かつ、隣り合う2つの基準位置の中間の座標で摩擦抵抗が極大となるフォースカーブに基づき摩擦抵抗付与手段により付与するべき摩擦抵抗の大きさを決定するものであってもよい。この場合、制御手段は以下の制御を実行することが望ましい。
【0017】
すなわち制御手段は、回転操作部が操作力を受けたことで回転操作部の回転角度に対応する座標が1つの基準位置の右側又は左側のいずれか一方の側から基準位置を通過して他方の側へ移動し、その基準位置から他方の側へ座標を移動させる操作力を回転操作部が受けていると判断した場合、検出手段により検出される回転角度の変化に応じて摩擦抵抗を増大させるべく摩擦抵抗付与手段による付与動作の制御を実行してもよい。そして制御手段は、この制御の実行中に他方の側へ座標を移動させる操作力を受けなくなったと判断した場合、付与動作の制御に関して回転操作部の回転角度に対応する座標を上記の基準位置(先に通過したもの)に相当する座標に置き換えるものとする。
【0018】
上記の態様であれば、回転操作部が連続して一方向に回転操作される過程で、その座標が複数の基準位置を通過していく場合、隣り合う2つの基準位置の中間地点で摩擦抵抗が極大となり、この中間地点を過ぎると次の基準位置に向かって摩擦抵抗が減少していくため、この間の摩擦抵抗の変化によってクリック感触を発生させることができる。
【0019】
このとき、クリック感触の発生を契機として操作者が回転操作部の操作を止めようとした場合であっても、次の基準位置では摩擦抵抗が極小となるため、それまでの惰性で回転操作部がある程度余計に回転し、次の基準位置を飛び越えた位置まで座標が移動してしまうことがある。このような場合、回転操作部を自立的に基準位置まで復帰させることはできなくとも、制御上は座標を基準位置に引き戻すことが望ましい。
【0020】
そこで本発明では、座標軸上の基準位置を挟んだ一方の側から他方の側にまで座標が移動し、基準位置を飛び越えたところで操作力がなくなったと制御手段が判断すると、制御上で座標を基準位置に置き換えることとしている。これにより、操作力がなくなった後も摩擦抵抗が付与されたままの状態になるのを防止することができる。
【0021】
解決手段4:なお、上記のように回転操作部と回転部材との間に弾性部材を介在して設けておけば、弾性部材による弾性変形からの復帰に伴い、座標軸上でみて回転操作部の回転角度に対応する座標が他方の側から一方の側へ予め設定された所定量だけ移動した場合、制御手段は他方の側へ座標を移動させる操作力を受けなくなったと判断することができる。
【0022】
解決手段5:本発明の操作感触付与型入力装置において、摩擦抵抗付与手段は、電力の供給を受けて電磁力を発生し、この電磁力を用いて回転部材に摩擦抵抗を付与する電磁ブレーキを有していしてもよい。この場合、制御手段は電磁ブレーキへの電力の供給に伴う電流又は電圧の大きさを調整して摩擦抵抗付与手段が付与するべき摩擦抵抗の大きさを制御することができる。その上で制御手段は、座標軸上でみて回転操作部の回転角度に対応する座標が基準位置にある場合、電磁ブレーキへの電力の供給を停止することが望ましい。
【0023】
この構成であれば、当初より回転操作部の回転角度に対応する座標が基準位置にある場合だけでなく、制御上で回転角度に対応する座標を基準位置に置き換えた場合についても、制御手段は電磁ブレーキへの給電を停止するので、無駄な電力の消費が抑えられる。
【0024】
解決手段6:また制御手段は、検出手段により検出された回転角度に対応する座標を外部出力信号として出力することにより、所定の表示画面上にて回転操作部の回転角度に対応した位置を表示可能とする信号出力部をさらに有してもよい。そして制御手段は、摩擦抵抗の付与動作の制御に関して回転操作部の回転角度に対応する座標を基準位置に相当する座標に置き換えた場合、この置き換え後の座標を外部出力信号として信号出力部から出力する。
【0025】
例えば、上記のように回転操作部の回転角度と画面上でのポインタ表示とを連動させる場合、表示装置に対して制御手段から座標を外部出力信号として出力することにより、これを受け取った表示装置側で座標を画面上での表示に反映させることができる。このため通常、回転操作部を操作すると、そのときの座標の変化に連動して画面上でポインタの位置も変化することになるが、上記のように基準位置の一方の側に座標がある状態で操作者が操作をやめた場合、制御上では基準位置に座標が置き換えられる。したがって、この置き換え後の座標を外部出力信号として出力すれば、表示装置の画面上でもポインタの位置をマーカや目盛り等の位置に合わせて表示させることができるので、それだけ見栄えの向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の操作感触付与型入力装置は、回転操作部を自立的に移動させる機能を持たなくても、それによって生じる不都合を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の操作感触付与型入力装置は、例えば、各種の電子機器(コンピュータ機器、オーディオ機器、ビデオ機器)をはじめ、カーナビゲーション装置等の車載電装品用の入力デバイス(ユーザインタフェース)として利用することができる。
【0028】
図1は、一実施形態の操作感触付与型入力装置10の全体的な構成を示す概略図である。図1中、操作感触付与型入力装置10の機械的な構成は、その大部分が縦断面により示されている。また図1中、操作感触付与型入力装置10の電気的な構成はブロック要素として示されている。
【0029】
〔回転操作部〕
操作感触付与型入力装置10は回転操作部12を備えており、この回転操作部12は、例えば回転式のつまみ形状(ダイヤル形状)をなしている。操作者は回転操作部12をつまんだ状態で回転操作することができ、このとき回転操作部12は図中に一点鎖線で示される中心軸線CLの回りに回転する。
【0030】
回転操作部12は、例えば回転軸14の一端に連結されている。この回転軸14は上記の中心軸線CLに沿って回転操作部12から一方向(図1中の下方向)に延びており、回転軸14は回転操作部12とともに中心軸線CLの回りに回転する。
【0031】
〔弾性部材〕
回転軸14には、その軸方向の途中に弾性部材15が介挿して設けられている。このため回転軸14は、弾性部材15を挟んで軸方向に第1パーツ14aと第2パーツ14bとに分割された構造を有している。なお、弾性部材15と第1パーツ14a、第2パーツ14bとは、それぞれの接合部で強固に接合されている。また弾性部材15には、例えば材料としてゴムを使用することができる。
【0032】
〔回転状態の検出〕
回転軸14(第1パーツ14a)の外周には、被検出体であるコード板16が取り付けられている。このコード板16は回転軸14を中心とした薄板の円盤形状をなしており、その周方向には一定ピッチで図示しないスリットが形成されている。またコード板16の外周部には、回転方向の原点位置を基点として周方向に図示しないインデックス(遮光部)が形成されている。
【0033】
回転軸14の近傍位置には、検出部として例えば2つのフォトインタラプタ18,19が設置されており、これらフォトインタラプタ18,19は、それぞれ検出光が互いに異なる位置でコード板16のスリットを透過する関係に調整されている。回転操作部12が回転操作されると、これに伴って回転軸14とともにコード板16が回転し、2つのフォトインタラプタ18,19から互いに位相差を持った回転角信号(エンコーダパルス)が出力される。
【0034】
〔回転部材〕
また回転軸14には、例えば第2パーツ14bの軸方向でみた中央付近に回転部材20が取り付けられている。回転部材20は、例えば円盤形状の本体部20aを有しており、この本体部20aは回転軸14(第2パーツ14b)を中心としてラジアル方向に拡がっている。本体部20aの中央位置には貫通孔20bが形成されており、この貫通孔20bは本体部20aを厚み方向に貫通して形成されている。そして回転部材20は、貫通孔20bの内部に回転軸14(第2パーツ14b)を挿通させた状態で回転軸14に固定されている。このため回転部材20は、回転操作部12が操作されると回転軸14とともに中心軸線CLの回りに回転する。
【0035】
〔摩擦抵抗を付与する要素〕
また回転軸14には、その長手方向でみて回転部材20に隣接する位置に摩擦板22が取り付けられている。この摩擦板22もまた、例えば円盤形状の本体部22aを有するとともに、その中央位置には挿通孔22bが形成されている。摩擦板22の挿通孔22bもまた本体部22aを厚み方向に貫通しているが、その内径は回転軸14の外径よりもわずかに大きい。このため摩擦板22は回転軸14(第2パーツ14b)に対して固定されておらず、回転軸14や回転部材20に対しては中心軸線CLの回りに相対回転が可能な状態で支持されている。
【0036】
また摩擦板22は、挿通孔22b内に回転軸14(第2パーツ14b)を挿通させた状態で、その軸方向へ僅かに変位可能である。なお回転軸14の外周面と挿通孔22bの内周面との間には、例えば回転軸14に沿ってスライド自在な軸受(図示していない)が設けられていてもよい。また摩擦板22は、その全体が磁性材料(例えば鉄)で構成されている。
【0037】
〔電磁ブレーキ〕
操作感触付与型入力装置10は、例えば電磁ブレーキ24を備えている。この電磁ブレーキ24は、例えば中空の円柱形状をなすケース型コア24aを有しており、このケース型コア24aの内部にフープ状の巻線24bを配置した構造である。ケース型コア24aの中央には例えば樹脂製の軸受24cが設けられており、回転軸14の他端部(図1でみて下端部)はこの軸受24cを介してケース型コア24aに回転自在に支持されている。電磁ブレーキ24は、巻線24bに通電された状態でケース型コア24aに電磁力を発生させ、上記の摩擦板22をスラスト方向に吸着することができる。
【0038】
なお、回転軸14の他端(第2パーツ14b)はケース型コア24aを貫通して回転部材20や摩擦板22と反対方向(図1でみて下方向)へ突出しており、この突出位置で回転軸14(第2パーツ14b)にはフランジ形状のストッパ26が取り付けられている。このストッパ26は、ケース型コア24aから回転軸14がその一端方向(図1で上方向)へ抜け出すのを防止している。
【0039】
また操作感触付与型入力装置10は、電気的な構成として制御部28を備えており、制御部28にはフォトインタラプタ18,19や電磁ブレーキ24が接続されている。なお、制御部28を中心とした制御系の構成についてはさらに後述する。
【0040】
〔摩擦抵抗の付与動作〕
操作感触付与型入力装置10は、上記の電磁ブレーキ24に通電することで摩擦板22を引き付け、摩擦板22を介して回転部材20に摩擦抵抗を付与することができる。このため本実施形態では、摩擦板22と回転部材20との間で相互に回転が伝達される構造を採用している。
【0041】
すなわち摩擦板22には、その表面(図1では上面)から突出する2つの連結突起22cが設けられている。これら連結突起22cは、いずれも摩擦板22(本体部22a)の表面から回転部材20に向けて延びている。一方、回転部材20には、2つの連結突起22cにそれぞれ対応する位置に連結孔20cが形成されている。これら連結孔20cは本体部20aをその厚み方向に貫通して延びており、それぞれ内部に連結突起22cが挿通されている。また各連結突起22cは連結孔20c内に挿通された状態で、回転部材20(本体部20a)の表面(図1では上面)からある程度突出するだけの全長を有している。
【0042】
図2は、回転部材20と摩擦板22との連結関係を示す平面図(図1中のII−II断面を含む)である。図2に示されているように、2本の連結突起22cは回転部材20の各連結孔20c内に挿通された状態にあり、この状態で回転部材20と摩擦板22との相対回転は規制されている。このため、電磁ブレーキ24によって摩擦板22を引き付けると、摩擦板22を介して回転部材20に回転方向への摩擦抵抗が付与された状態となる。ただし、上記のように連結突起22cは連結孔20c内で軸方向への移動は規制されていないため、回転軸14全体に軸方向への力が及ぶことはない。
【0043】
〔弾性部材の機能〕
上記の弾性部材15は、回転部材20に摩擦抵抗が付与された状態で回転操作部12が操作されると、その回転方向にねじり変形(弾性変形)を生じる。ただし弾性部材15には、付与される摩擦抵抗が最大の状態で回転操作部12が操作されたとしても、そのときのトルクに対して充分な剛性を有する材料を用いるため、そこで弾性部材15が降伏したり、破断したりすることはない。したがって弾性部材15は、通常の弾性範囲内で変形しつつ、回転操作部12が受ける操作力を第1パーツ14aから第2パーツ14b及び回転部材20に伝達することができる。これにより、操作者がある程度の操作力を回転操作部12に加えると、電磁ブレーキ24に対して摩擦板22をスリップさせながら回転操作部12を引き続き回転させることができる。
【0044】
一方で弾性部材15は、上記のように弾性変形を生じた状態で操作者が回転操作部12から手を離したり、操作力を緩めたりすると、それまでの変形状態から復帰することができる。この復帰に伴い、弾性部材15は第1パーツ14aとともに回転操作部12及びコード板16をそれまでと逆方向へ僅かに回転させる。したがって、摩擦抵抗が付与された状態で回転操作部12が操作力を受けなくなると、回転操作部12の回転角度はそれまでの回転方向と逆方向へ僅かに変化する。
【0045】
〔制御系の構成〕
図3は、操作感触付与型入力装置10の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。制御部28は、例えばプロセッサ(CPU)を用いた演算部28aを有する他、RAM、ROM等のメモリデバイスを用いた記憶部28b、そして入力部28c及び出力部28dを有したマイクロコンピュータとして構成されている。
【0046】
上記のフォトインタラプタ18,19から出力される回転角信号は、それぞれ入力部28cでA/D変換されて演算部28aに入力される。演算部28aは、この入力信号に基づいて回転軸14(回転操作部12)の回転角度及び回転方向を演算する。また演算部28aは、回転角度及び回転方向の演算結果に基づいて制御信号を出力し、電磁ブレーキ24の作動(電力の供給)を制御する。このときの制御信号は、出力部28dを通じて電磁ブレーキ24に供給される駆動電流又は駆動電圧に変換される。
【0047】
〔表示装置〕
本実施形態の操作感触付与型入力装置10は、例えば外部システムとしての表示装置30に接続して利用することができる。この場合、操作感触付与型入力装置10は、その制御部28から表示装置30に対して、表示制御に関する外部出力信号を出力することができる。
【0048】
例えば、表示装置30が有する表示画面(図示していない)上に回転操作部12の回転と連動させてポインタ等を表示させる場合、制御部28はポインタの表示位置を指示するための座標を外部出力信号として出力する。表示装置30は、制御部28から受け取った座標に基づいて表示画面上にポインタを表示する。これにより表示装置30は、回転操作部12の回転角度の変化に連動してリアルタイムに表示画面上でポインタを移動させることができる。
【0049】
〔表示動作例〕
図4は、回転操作部12の回転角度(座標)の変化に連動させた表示動作の例を示す図である。
【0050】
図4中(A):この表示動作例では、表示画面32を横切るように棒状のガイドバーBが表示されており、このガイドバーBに沿って等間隔をおいて複数のスケールSC1,S2,S3,S4,S5が表示されている。各スケールSC1〜S5は、例えばラジオ放送で選局可能な個々のチャンネルを表しており、このため各スケールSC1〜S5の上方位置には「CH1」〜「CH5」等の文字情報が表示されている。
【0051】
また、ガイドバーBの下方位置には指マークを模したポインタPが表示されており、このポインタPの表示位置が回転操作部12の回転角度に連動して変化するものとする。なお、この表示動作例では、現時点でポインタPにより有効に指示されているスケールSC2(選局中のチャンネル)が他のスケールSC1,S3,S4,S5よりも強調された状態(例えば拡大及び発光状態)で表示されている。
【0052】
図4中(B):上記の状態から、例えば操作者が回転操作部12を時計回りの方向に回転操作すると、これに連動して表示画面32上でポインタPを右側へ移動させ、次のスケールSC3にポインタPを合わせることができる。またこの操作により、図示しないラジオ受信装置においても実際に選局中のチャンネルが切り替わる(CH2→CH3)。
【0053】
〔操作感触付与例〕
このような表示動作例では、操作感触付与型入力装置10をラジオ受信機の選局操作にも利用しており、その点で回転操作部12は、チャンネル切り換え用のつまみとしての操作感触を発生させることが望ましい。このため操作感触付与型入力装置10は、例えば表示画面32上で横方向にポインタPが移動していく際、各スケールSC1〜S5の間で摩擦抵抗を付与することにより、以下のように操作者による選局操作に対して明快なクリック感触を発生させている。
【0054】
例えば、図4中(A)に示される状態から操作者が回転操作部12を時計回り方向に回転させると、それに伴ってポインタPの表示位置が図4中(B)に示されるように右側へ移動する。このとき操作感触付与型入力装置10は、電磁ブレーキ24により付与する摩擦抵抗を次第に増加させていき、ポインタPがスケールSC2,S3の中間にさしかかった所で最大の摩擦抵抗を付与する。このときの摩擦抵抗に逆らって操作者がなおも回転操作部12を回転させると、そこから摩擦抵抗が減少して操作感触が軽くなる。このときの操作感触の変化(摩擦抵抗の段差)がクリック感触として現れることになる。
【0055】
上記のようなクリック感触を伴って表示画面32上でポインタPを移動させれば、操作者に「チャンネルを1つ切り換えた」という明快な操作感触を付与することができる。合わせて表示画面32上でスケールSC2から次のスケールSC3に強調表示を切り換えれば、そこに視覚的な変化が重なることで極めて自然かつ快適な操作感触を操作者に付与することができる。
【0056】
ただし、上記のようにポインタの表示位置を回転操作部12の回転角度と連動させている場合、操作者が勢い余って回転操作部12を大きく回してしまうことがある(オーバーラン)。この場合、図4中(B)に二点鎖線で示すように、ポインタPが各スケールSC1〜S5に対応した位置でぴったり停止しなくなる。このような現象は、操作感触付与型入力装置10が自立的に回転操作部12を回転させる機能を持たないために起こり得る。
【0057】
加えて、表示画面32上でポインタPがスケールSC3を通り越し、次のスケールSC4に向かう途中で停止している場合、それだけ回転操作部12の回転角度(座標)が実際に変化しているということであるから、操作感触付与型入力装置10はそのときの回転角度に応じて電磁ブレーキ24を作動させる必要がある。このような電磁ブレーキ24の作動は、引き続き操作者が回転操作部12を右側へ回転させようとする場合には依然として有効であるが、操作者が手を離してしまった後は無駄になる。
【0058】
そこで本実施形態では、制御部28が以下の制御処理を実行することにより、無駄な電磁ブレーキ24の作動をなくすとともに、ポインタPの表示位置のずれを解消している。以下、制御部28が実行する制御処理の例について説明する。
【0059】
〔制御処理〕
図5は、制御部28(主に演算部28a)が実行する制御処理の手順例を示すフローチャートである。なお制御処理の手順は、例えば記憶部28bに制御プログラムとして記憶されている。以下、各手順に沿って説明する。
【0060】
ステップS10:先ず演算部28aは、初期設定処理を実行する。この処理では、例えばフォトインタラプタ18,19から入力された現時点での検出信号を記憶し、この状態を回転操作部12の初期位置に設定する。また演算部28aは、記憶部28bに記憶されている座標軸のデータを読み込み、この座標軸上で回転操作部12の初期位置を初期座標に設定する。
【0061】
ステップS20:次に演算部28aは、角度検出処理を実行する。この処理は、現在の回転操作部12の回転角度を検出するためのものである。例えば、演算部28aは各フォトインタラプタ18,19からの検出信号に基づき、先の初期設定処理で設定した初期位置から回転操作部12がいずれの方向へどれだけの角度だけ回転したかを検出する。そして演算部28aは、検出した回転方向及び回転角度に基づき、上記の座標軸上でみた回転操作部12の回転角度に対応する現在の座標を演算する。
【0062】
ステップS30:次に演算部28aは、摩擦力演算処理を実行する。この処理は、先の角度検出処理で演算した現在の座標に基づき、電磁ブレーキ24により発生させる摩擦力の大きさを演算するためのものである。
【0063】
ステップS40:続いて演算部28aは、電磁ブレーキ駆動処理を実行する。この処理は、先の摩擦力演算処理での演算結果に基づいて電磁ブレーキ24を作動させることにより、回転部材20に摩擦抵抗を付与するものである。これにより、実際に操作者が行う回転操作部12の操作に対して摩擦力(操作力に対する抵抗力)を発生させることができる。
【0064】
ステップS50:そして演算部28aは、信号出力処理を実行する。この処理は、外部の表示装置30に対して外部出力信号を出力するためのものである。具体的には、演算部28aは、現在の回転操作部12の回転角度に対応する座標を外部出力信号として表示装置30に出力する。表示装置30は、この外部出力信号に基づいて表示画面32上におけるポインタPの表示位置を制御する。
【0065】
電源投入後、演算部28aが上記の各処理(ステップS20〜ステップS50)を定常的に実行することにより、現在の回転操作部12の回転角度に対応する座標がリアルタイムで演算されるとともに、そのときの座標に基づいて電磁ブレーキ24を駆動することにより、回転角度の変化に応じて回転部材20に付与される摩擦抵抗も変化する。
【0066】
〔フォースカーブの例〕
図6は、上記の摩擦力演算処理(ステップS30)において摩擦力の演算に用いることができるフォースカーブの例と、上記の表示動作例とを対比して示した図である。
【0067】
図6中(A):上記のフォースカーブは、例えば回転操作部12の回転角度(θ)を横座標軸に表し、回転角度に応じて付与する摩擦力(f(θ))を縦座標軸に表したものである。このフォースカーブは、回転角度の変化に対して摩擦力が増加と減少を繰り返し、特に極大点と極小点とで摩擦力の傾きが大きく変化する特性(山形状と谷形状とが繰り返すプロファイル)を有している。
【0068】
このとき横座標軸上には、一定の間隔をおいて複数箇所に基準位置C1,C2,C3,・・・が規定されており、これら基準位置C1,C2,C3,・・・は、表示画面32上でスケールSC1,S2,S3,・・・の表示位置に対応している。このフォースカーブは、各基準位置C1,C2,C3,・・・で摩擦力が極小(fmin)となり、これら基準位置C1,C2,C3,・・・の中間地点で摩擦力が極大(fmax)となる特性を示している。
【0069】
〔基準位置での摩擦力〕
上記のフォースカーブを用いて摩擦力(f(θ))を演算することにより、横座標軸上で座標がいずれかの基準位置C1,C2,C3,・・・にある状態、つまり、表示画面32上でポインタPがいずれかのスケールSC1,S2,S3,・・・を指示する位置にある状態では、摩擦力を極小(fmin)とする制御が行われる。なお本実施形態では、摩擦力が極小(fmin)の場合に電磁ブレーキ24を非作動(給電を停止)とすることにより、回転操作部12を自由に回転可能としている(メカニカルな摩擦のみ)。
【0070】
〔基準位置以外での摩擦力〕
一方、フォースカーブの横座標軸上で座標が基準位置C1,C2,C3,・・・の右側又は左側にある状態、つまり、表示画面32上でポインタPがスケールSC1,S2,S3,・・・からずれた位置にある状態では、そのときの回転角度(θ)に応じた大きさで摩擦力(f(θ))を付与する制御が行われる。
【0071】
例えば、回転操作部12の回転角度に対応する座標が横座標軸上でみて基準位置C1から右側へ移動する場合を想定する。この場合の表示動作は、図6中(A)に矢印で示すように、ポインタPをスケールSC1の位置から右隣のスケールSC2に向けて移動させるものとなる。
【0072】
〔登り区間〕
座標が基準位置C1の右側にあって、そのまま右側へ座標が移動する場合、基準位置C1から中間地点Mまでの区間はフォースカーブの登り区間となる。したがって、この区間内で座標が右側へ移動する場合、回転角度の変化に応じて摩擦力(f(θ))が極大値(fmax)に向けて増大していくことになる。
【0073】
〔中間地点通過後〕
この後、座標が中間地点Mを通過すると、次の基準位置C2までの区間はフォースカーブの下り区間となる。したがって、この区間内で座標が右側へ移動する場合、摩擦力(f(θ))は極小値(fmin)に向かって急に減少していくことになる。またこの間、摩擦力が増大から減少に転じるため、このときの段差が上記のように回転操作部12のクリック感触を発生させる。
【0074】
〔次の基準位置到達時〕
図6中(B):座標が次の基準位置C2に到達すると、そこがフォースカーブの谷底になる。したがって、座標が基準位置C2に達した時点で摩擦力(f(θ))は極小値(fmin)になるため、回転操作部12に電磁ブレーキ24による摩擦力は付与されなくなる。また表示画面32上では、ポインタPが次のスケールSC2を有効に指示する位置まで移動し、それに合わせてスケールSC2が強調表示された状態となる。
【0075】
〔基準位置通過時〕
さらに、座標が基準位置C2を通過して右側へ移動すると、この基準位置C2の右側で次の中間地点Mまでの区間はフォースカーブの登り区間となる。したがって、操作者が勢い余って回転操作部12を余計に回転させた結果、座標が基準位置C2を飛び越えてしまうと、基本的にそのときの座標(Px)に対応する摩擦力(f(Px))が発生することになる。また表示画面32上では、座標(Px)に合わせてスケールSC2から僅かに右側へずれた位置にポインタPが表示されることになる(図6中(B)の二点鎖線)。
【0076】
〔操作終了時〕
ただし本実施形態では、基準位置C1の右側にまで座標が移動しても、そこで操作者が回転操作部12の操作を止めた場合、制御上で座標を基準位置C2に相当する座標に置き換える処理を行っている。これにより、付与される摩擦力が極小(fmin)となり、また表示画面32上ではポインタPの表示位置がスケールSC2にぴったり合った状態(図6中(B)の実線)となる。以下、この処理の内容について具体的に説明する。
【0077】
〔摩擦力演算処理〕
図7は、上記の制御処理において実行される摩擦力演算処理の手順例を具体的に示したフローチャートである。本実施形態では、この処理の中で上述した座標の置き換えを行うことができる。
【0078】
〔右側への移動時〕
先ず、横座標軸上でみて右側へ座標が移動している場合について説明する。
ステップS300:演算部28aは、回転角度(θ)の座標が横座標軸上でみていずれかの基準位置の右側の登り区間にあるか否かを判断する。なおこの判断は、単にその時点での回転角度だけでなく、それまでの回転操作部12の回転方向をも考慮に入れて行う必要がある。
【0079】
例えば図6中(A)でみると、横座標軸上で座標を右方向へ移動させる操作力を回転操作部12が受けており、かつ、基準位置C1から中間地点Mまでの間に座標がある場合、演算部28aは「回転角度(θ)の座標が基準位置C1の右側の登り区間にある」と判断することができる(Yes)。この場合、演算部28aは次にステップS302を実行する。
【0080】
ステップS302:次に演算部28aは、回転角度(θ)が前回の回転角度(θold)から所定角度(Δθ)分よりも減少したか否かを判断する(横軸の右側を増加(+)とした場合)。具体的には、演算部28aは以下の条件式(1)を満たすか否かを判断する。
【0081】
θ<(θold−Δθ)・・・(1)
なお所定角度(Δθ)は、弾性部材15による弾性変形からの復帰に伴う回転角度に基づいて設定することができる。また前回の回転角度(θold)は、前回の処理実行時に検出した値である。そして、上記の条件式(1)を満たすと判断した場合(Yes)、演算部28aは次にステップS304を実行する。
【0082】
ステップS304:この場合、演算部28aは、回転角度(θ)を横座標軸上でみて最も近い(左側の)基準位置に変更する。これにより、制御上で回転角度(θ)に対応する座標が基準位置に相当する座標に置き換えられる。例えば図6中(B)でみると、基準位置C2を通り越してその右側にあった座標(Px)が基準位置C2の座標に置き換えられることになる。
【0083】
ステップS306:そして演算部28aは、置き換え後の座標に基づいて付与するべき摩擦力の大きさを演算する。具体的には、図6に示されるフォースカーブに基づいて演算を行うことにより、摩擦力は極小値(fmin)に決定される。
【0084】
〔電磁ブレーキの制御〕
この場合、演算部28aが制御処理に復帰して電磁ブレーキ駆動処理(図5中のステップS40)を実行しても、電磁ブレーキ24への通電は行われない(駆動電流及び駆動電圧が0)。
【0085】
〔表示動作〕
また、演算部28aが信号出力処理(図5中のステップS50)を実行すると、置き換え後の座標が外部出力信号として出力されるので、表示画面32上ではポインタPがスケールSC2を正しく指示する位置に表示されることになる。
【0086】
なお、特にステップS302の判断において回転角度(θ)が減少していなければ(No)、演算部28aはステップS304を実行することなく、そのままステップS306を実行する。この場合、演算部28aはその時点での回転角度(θ)の座標に基づいて摩擦力(f(θ))を演算する。
【0087】
〔左側への移動時〕
次に、横座標軸上でみて左側へ座標が移動している場合について説明する。
ステップS300:左側へ座標が移動している場合、演算部28aは「回転角度(θ)が基準位置C1の右側の登り区間にある」と判断しない(No)ので、次にステップS308を実行する。
【0088】
ステップS308:この場合、演算部28aは回転角度(θ)が横座標軸上でみていずれかの基準位置の左側の登り区間にあるか否かを判断する。例えば図6中(B)でみると、横座標軸上で座標を左方向(図示の矢印と反対方向)へ移動させる操作力を回転操作部12が受けており、かつ、基準位置C2から中間地点Mまでの間に座標がある場合、演算部28aは「回転角度(θ)が基準位置C2の左側の登り区間にある」と判断することができる(Yes)。この場合、演算部28aは次にステップS310を実行する。
【0089】
ステップS310:次に演算部28aは、回転角度(θ)が前回の回転角度(θold)から所定角度(Δθ)分よりも増加したか否かを判断する(横座標軸の左側を減少(−)とした場合)。具体的には、演算部28aは以下の条件式(2)を満たすか否かを判断する。
【0090】
θ>(θold+Δθ)・・・(2)
上記の条件式(2)を満たすと判断した場合(Yes)、演算部28aは次にステップS312を実行する。
【0091】
ステップS312:この場合、演算部28aは、回転角度(θ)を横座標軸上でみて最も近い(右側の)基準位置に変更する。これにより、制御上で回転角度(θ)に対応する座標が基準位置に相当する座標に置き換えられる。
【0092】
ステップS306:そして演算部28aは、置き換え後の座標に基づいて付与するべき摩擦力の大きさを演算する。ここでも同様に、図6に示されるフォースカーブに基づいて演算を行うことにより、摩擦力は極小値(fmin)に決定される。
【0093】
そして、この場合も同様に、演算部28aが制御処理に復帰して電磁ブレーキ駆動処理(図5中のステップS40)を実行しても、電磁ブレーキ24への通電は行われない(駆動電流及び駆動電圧が0)。また、演算部28aが信号出力処理(図5中のステップS50)を実行すると、置き換え後の座標が外部出力信号として出力されるので、表示画面32上ではポインタPがスケールSC2を正しく指示する位置に表示されることになる。
【0094】
なお、ステップS310の判断において回転角度(θ)が増加していなければ(No)、演算部28aはステップS312を実行することなく、そのままステップS306を実行する。この場合、演算部28aはその時点での回転角度(θ)の座標に基づいて摩擦力(f(θ))を演算する。
【0095】
〔座標の移動例〕
なお本実施形態では、例えば以下の2つの座標移動時に上記の制御を適用することができる。
【0096】
(1)回転角度(θ)の座標が当初から基準位置C1,C2,C3,・・・にあって、そこから右側又は左側へ座標を移動させる操作が行われた後、登り区間で操作が中止された場合。
【0097】
(2)回転角度(θ)の座標が基準位置C1,C2,C3,・・・の左側(又は右側)にあって、そこからフォースカーブの下り区間を経て基準位置C1,C2,C3,・・・を通過し、さらにその右側(又は左側)へ座標を移動させる操作が行われた後、登り区間で操作が中止された場合。
【0098】
上記(1),(2)のいずれの場合についても、操作が中止されたことで条件式(1),(2)のいずれかが満たされる。したがって、演算部28aは回転角度(θ)の座標を最も近い基準位置の座標に置き換えることができる。
【0099】
〔座標が下り区間にある場合〕
また、回転方向から座標がフォースカーブの下り区間にあると判断される場合、上記の条件式(1),(2)はともに満たされない(ステップS300:NoかつステップS308:No)。この場合、やはり演算部28aはその時点での回転角度(θ)の座標に基づいて摩擦力(f(θ))を演算する。
【0100】
以上のように本実施形態では、それまで横座標軸上で基準位置の右側(又は左側)にある登り区間で右側(又は左側)へ座標を移動させる操作がされている状態で、操作者がそれ以上の回転操作部12の操作を中止した場合、制御上で座標を基準位置の座標に置き換えることにより、操作者が操作を止めた後に無駄な電力が消費されるのを確実に防止することができる。また、表示装置30に対しても置き換え後の座標を外部出力することにより、表示画面32上でポインタPがスケールSC1,SC2,SC3,・・・からずれた位置で停止したままになるのを確実に防止し、その見栄えの向上に寄与することができる。
【0101】
〔フォースカーブの別例〕
図8は、摩擦力演算処理において適用可能なフォースカーブの別例と表示動作例とを対比して示した図である。
【0102】
〔右側への移動時〕
図8中(A):このフォースカーブは、例えば横座標軸上で右方向へ座標を移動させる場合、各基準位置C1,C2,C3,・・・で一気に摩擦力が極大となり、その状態が右側の中間地点Mまで継続する特性を有している。一方、座標が中間地点Mに達すると、そこで一気に摩擦力が極小に低下し、その状態が次の基準位置C1,C2,C3,・・・まで継続する。
【0103】
〔操作感触の例〕
このようなフォースカーブの例を適用した場合、表示画面32上でポインタPをスケールSC1から右側へ移動させようとすると、いきなり最大の摩擦抵抗が生じるため、そこから操作者が受ける操作感触は極端に重いものとなる。そして、中間地点Mに達したところで一気に摩擦抵抗がなくなるため、そこで操作の負荷が急に軽くなり、そのまま次の基準位置C2まで摩擦抵抗が発生しない。したがって操作者には、中間地点Mを過ぎると一気に次のスケールSC2までポインタPを移動させていけるようなクリック感触を実感させることができる。
【0104】
そして、例えば操作者が基準位置C2で回転操作部12を停止させようとした場合、オーバーランにより実際には基準位置C2より右側の座標Px1で停止してしまうことがあるが、この場合でも演算部28aは前述したものと同様の処理を行い、停止時の座標Px1から基準位置SC2に座標を置き換える。これにより、操作者が操作を止めた後に無駄な電力が消費されるのを防止し、また、表示画面32上でポインタPがスケールSC2からずれた位置で停止したままになるのを防止することができる。
【0105】
〔左側への移動時〕
図8中(B):また、このフォースカーブでは、座標の移動方向によって異なる特性が適用されている。すなわち、横座標軸上で左方向へ座標を移動させる場合、各基準位置C1,C2,C3,・・・で一気に摩擦力が極大となる点は上記と同様であるが、その状態が左側の中間地点Mまで継続する特性を有したものとなる。また、座標が中間地点Mに達すると、そこで一気に摩擦力が極小に低下し、その状態が次(左側)の基準位置C1,C2,C3,・・・まで継続するものとなる。なお、左側への移動時に操作者に与える操作感触については、上述した右側への移動時と対象に考えればよい。
【0106】
そして、例えば操作者が基準位置C1で回転操作部12を停止させようとした場合、オーバーランにより実際には基準位置C1より左側の座標Px2で停止してしまうことがあるが、やはり演算部28aは前述したものと同様の処理を行い、停止時の座標Px2から基準位置SC1に座標を置き換える。これにより、同じく操作者が操作を止めた後に無駄な電力が消費されるのを防止し、また、表示画面32上でポインタPがスケールSC1からずれた位置で停止したままになるのを防止することができる。
【0107】
本発明は上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。一実施形態では、回転操作部12をつまみ形状としているが、回転操作部12はドラム形状であってもよいし、スティック形状や球形状であってもよい。
【0108】
また、回転操作部12は操作者からみて時計回り方向や反時計回り方向へ回転させるだけでなく、例えば前後方向に回転させるものでもよいし、斜め方向に回転させるものであってもよい。さらに、一実施形態では表示動作として横方向にポインタPを移動させる例を挙げているが、ポインタPは縦方向に移動させてもよいし、斜め方向に移動させてもよい。
【0109】
一実施形態では弾性部材15にゴム材料を用いているが、例えばコイルばねや板ばね等を用いて弾性部材15を構成してもよいし、樹脂材料の弾性を利用して弾性部材15を構成してもよい。
【0110】
電磁ブレーキ24のフォースカーブは図示とともに挙げた例(山形状や矩形状のもの)に限らず、その他のパターン(例えば台形状のもの)を採用してもよい。
【0111】
また、回転状態の検出はコード板16とフォトインタラプタ18,19との組み合わせだけでなく、例えば反射板とフォトスイッチとの組み合わせで実現してもよい。
【0112】
その他、図示とともに示した各種部材の形状や配置はいずれも好ましい例であり、本発明の実施に際してこれらを適宜変更可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】一実施形態の操作感触付与型入力装置の全体的な構成を示す概略図である。
【図2】回転部材と摩擦板との連結関係を示す平面図(図1中のII−II断面を含む)である。
【図3】操作感触付与型入力装置の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】回転操作部の回転角度(座標)の変化に連動させた表示動作の例を示す図である。
【図5】制御部(演算部)が実行する制御処理の手順例を示すフローチャートである。
【図6】摩擦力の演算に用いるフォースカーブの例と表示動作例とを対比して示した図である。
【図7】制御処理において実行される摩擦力演算処理の手順例を具体的に示したフローチャートである。
【図8】摩擦力演算処理において適用可能なフォースカーブの別例と表示動作例とを対比して示した図である。
【符号の説明】
【0114】
10 操作感触付与型入力装置
12 回転操作部
14 回転軸
16 コード板
18,19 フォトインタラプタ
20 回転部材
22 摩擦板
24 電磁ブレーキ
28 制御部
28a 演算部
28d 出力部
30 表示装置
32 表示画面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者から操作力を受けて回転する回転操作部と、
前記回転操作部の回転角度を検出する検出手段と、
前記回転操作部とともに回転する回転部材と、
前記回転部材に摩擦抵抗を付与することで操作者からの操作力に対して抵抗力を発生させる摩擦抵抗付与手段と、
前記検出手段の検出結果に基づき前記摩擦抵抗付与手段による摩擦抵抗の付与動作を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
所定の座標軸上でみて前記回転操作部の回転角度に対応する座標が予め規定された基準位置の右側又は左側のいずれか一方の側にある状態で、前記基準位置から一方の側に向かう方向へ座標を移動させる操作力を前記回転操作部が受けていると判断した場合、前記検出手段により検出される回転角度の変化に応じて前記摩擦抵抗を増大させるべく前記摩擦抵抗付与手段による付与動作の制御を実行し、この実行中に前記基準位置から前記一方の側に向かう方向へ座標を移動させる操作力を受けなくなったと判断した場合、前記付与動作の制御に関して前記回転操作部の回転角度に対応する座標を前記基準位置に相当する座標に置き換えることを特徴とする操作感触付与型入力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の操作感触付与型入力装置において、
前記回転操作部と前記回転部材との間に介在して設けられ、前記回転部材に摩擦抵抗が付与された状態で前記回転操作部が操作されると、その操作力により弾性変形を生じて前記回転操作部の回転を許容する弾性部材をさらに備え、
前記制御手段は、
前記弾性部材による弾性変形からの復帰に伴い、前記座標軸上でみて前記回転操作部の回転角度に対応する座標が一方の側から他方の側に向かう方向へ予め設定された所定量だけ移動した場合、前記基準位置から前記一方の側に向かう方向へ座標を移動させる操作力を受けなくなったと判断することを特徴とする操作感触付与型入力装置。
【請求項3】
請求項1に記載の操作感触付与型入力装置において、
前記制御手段は、
前記座標軸上の複数箇所に規定された個々の前記基準位置で摩擦抵抗が極小となり、かつ、隣り合う2つの前記基準位置の中間の座標で摩擦抵抗が極大となるフォースカーブに基づき前記摩擦抵抗付与手段により付与するべき摩擦抵抗の大きさを決定するものであり、
前記回転操作部が操作力を受けたことで前記回転操作部の回転角度に対応する座標が1つの前記基準位置の右側又は左側のいずれか一方の側から前記基準位置を通過して他方の側へ移動し、前記基準位置から他方の側に向かう方向へ座標を移動させる操作力を前記回転操作部が受けていると判断した場合、前記検出手段により検出される回転角度の変化に応じて前記摩擦抵抗を増大させるべく前記摩擦抵抗付与手段による付与動作の制御を実行し、この実行中に前記基準位置から前記他方の側に向かう方向へ座標を移動させる操作力を受けなくなったと判断した場合、前記付与動作の制御に関して前記回転操作部の回転角度に対応する座標を前記基準位置に相当する座標に置き換えることを特徴とする操作感触付与型入力装置。
【請求項4】
請求項3に記載の操作感触付与型入力装置において、
前記回転操作部と前記回転部材との間に介在して設けられ、前記回転部材に摩擦抵抗が付与された状態で前記回転操作部が操作されると、その操作力により弾性変形を生じて前記回転操作部の回転を許容する弾性部材をさらに備え、
前記制御手段は、
前記弾性部材による弾性変形からの復帰に伴い、前記座標軸上でみて前記回転操作部の回転角度に対応する座標が他方の側から一方の側に向かう方向へ予め設定された所定量だけ移動した場合、前記基準位置から前記他方の側に向かう方向へ座標を移動させる操作力を受けなくなったと判断することを特徴とする操作感触付与型入力装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の操作感触付与型入力装置において、
前記摩擦抵抗付与手段は、
電力の供給を受けて電磁力を発生し、この電磁力を用いて前記回転部材に摩擦抵抗を付与する電磁ブレーキを有しており、
前記制御手段は、
前記電磁ブレーキへの電力の供給に伴う電流又は電圧の大きさを調整して前記摩擦抵抗付与手段が付与するべき摩擦抵抗の大きさを制御可能であって、
前記座標軸上でみて前記回転操作部の回転角度に対応する座標が前記基準位置にある場合、前記電磁ブレーキへの電力の供給を停止することを特徴とする操作感触付与型入力装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の操作感触付与型入力装置において、
前記制御手段は、
前記検出手段により検出された回転角度に対応する座標を外部出力信号として出力することにより、所定の表示画面上にて前記回転操作部の回転角度に対応した位置を表示可能とする信号出力部をさらに有しており、
前記付与動作の制御に関して前記回転操作部の回転角度に対応する座標を前記基準位置に相当する座標に置き換えた場合、この置き換え後の座標を前記外部出力信号として前記信号出力部から出力することを特徴とする操作感触付与型入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−128763(P2010−128763A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302406(P2008−302406)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】