説明

操作装置

【課題】 操作部の操作速度が0のときを含むいずれの操作速度であっても、操作部の操作に対する抵抗力を有効に発生することができて、オペレータが意図しない操作部の揺れや振動を防止することができる操作装置を提供すること。
【解決手段】
ケーシング1に揺動自在に設けられた操作部17と、この操作部17を揺動操作することによって動作する油圧式パイロット弁53A、53Bと、操作部17を揺動操作するときにその揺動操作に対して抵抗力を発生させるダンパ部54、54とを備える操作装置50において、各ダンパ部54は、操作部17に伴って揺動する複数の揺動側摩擦板57が、揺動が阻止された複数の固定側摩擦板58に対して、揺動方向に対して直交する方向に押圧ばね60によって押圧されて摩擦トルクを発生する構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オペレータが意図しない操作部の揺れや振動を防止するためのダンパ部を備える操作装置に関し、特に、建設機械などに用いられ、レバーやペダルなどの操作部の傾動操作によって各種アクチュエータを遠隔制御するための操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧パワーショベルやクレーン等の建設機械では、オペレータが搭乗してパイロット方式の油圧操作弁(パイロット弁)によって各種のアクチュエータを遠隔制御して各種の作業を行う。この建設機械が備えている各種のアクチュエータや作業用機器は大型で重量も大きく、オペレータが急激な操作を行うと大きな動作が行なわれ、例えば車体に大きな揺れや振動を生じさせて正常な作業を行うことができないことがある。また、建設機械の走行時及び作業時等に起こる車体の揺れや振動も、オペレータの手若しくは足を介して、又は操作部自体の慣性力によって、操作部に揺れや振動を生じさせる。
【0003】
このようにして、操作部に対して、オペレータが意図しない揺れや振動が付与されると、この揺れや振動によって油圧操作弁が操作されて、その油圧操作弁がアクチュエータに対して、オペレータが意図しない動作をさせてしまうこととなり、その結果、建設機械の揺れや振動が増長されてしまうことがある。そして、この建設機械の増長された揺れや振動によって、操作部の揺れや振動が増長されるという悪循環が起こることがある。
【0004】
従って、例えばオペレータが油圧操作弁の操作部を中立位置から傾動操作するとき、及びその傾動位置から中立位置へ復帰するときのいずれの操作を行う場合であっても、建設機械の揺れや振動に基づいて起こる操作部の揺れや振動を可及的に少なくする必要があり、そのために、従来からダンパ部を備える操作装置が提案されている。
【0005】
図12は、従来の操作装置の一例を示す断面図である(例えば、特許文献1参照。)。この操作装置100によると、オペレータがペダルやレバーなどの操作部を操作して、傾動部材101を傾動方向A1に傾動させると、プッシュロッド102は下方に押圧されて下降移動し、そして、プッシュロッド102が下降移動すると、押圧ばね106を介してスプール107が下方に押圧されて下降移動する。そして、このとき、軸直角方向の油路107aがタンクポート108tよりも下側のポンプポート108pに連通すると、タンクポート108tがスプール107によって閉鎖され、ポンプポート108pと出力ポート108oとが互いに連通する。これによって、建設機械のアクチュエータを所定方向に作動させることができる。
【0006】
そして、このときダンパ室104内の作動油は、ダンパ部105の絞り105aを通って下室104bから上室104aに移動するので、操作部(傾動部材101)の操作に対してダンピング効果(抵抗力)を得ることができる。よって、オペレータが操作部を操作したときに、オペレータが意図しない揺れや振動が、オペレータが搭乗している建設機械に生じたとしても、その揺れや振動によってオペレータが操作部を誤操作することをこの抵抗力によって抑制することができ、建設機械の揺れや振動が増長されることを軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−294281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図12に示す従来の操作装置100では、操作部(傾動部材101)の操作に対してダンパ部105がダンピング効果(抵抗力)を発揮するのは、オペレータが操作部を操作して、その操作部の操作速度(揺動速度)が所定の速度以上になったときであり、操作部の操作速度が0又はそれに近い速度であったり、所定の速度未満であるときは、ダンピング効果が有効に発揮されないという問題がある。
【0009】
そして、このように操作部の操作速度が所定の速度未満であるために、操作部の操作に対してダンピング効果が有効に発揮されないときは、前記したように、例えば建設機械の揺れや振動が原因して、オペレータが操作部に対して揺れや振動を与えてしまうことがあり、その結果、建設機械の揺れや振動を増長させることがある。
【0010】
なお、操作部の操作速度が所定の速度未満であるときに、ダンピング効果が有効に発揮されないのは、操作部の操作速度が所定の速度未満であるときには、ダンパ室104内の作動油が、ダンパ部105の絞り105aを通るときの流速が小さく、この絞り105aの前後で生じる圧力差が極めて小さいからである。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、操作部の操作速度が0(零)のときを含むいずれの操作速度であっても、操作部の操作に対する抵抗力を有効に発生することができて、オペレータが意図しない操作部の揺れや振動を防止することができる操作装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明に係る操作装置は、固定部に揺動自在に設けられた操作部と、前記操作部を揺動操作するときにその揺動操作に対して抵抗力を発生させるダンパ部とを備える操作装置において、前記操作部は、前方向及び後ろ方向のいずれにも揺動可能に固定部に軸支されており、前記ダンパ部は、前記操作部に伴って揺動する1又は複数の揺動側摩擦板が、揺動が阻止された1又は複数の固定側摩擦板に対して、前記揺動方向に対して直交する方向に押圧ばねによって押圧されていることを特徴とするものである。
【0013】
第1の発明に係る操作装置によると、オペレータが操作部を揺動操作し始めるとき、及び揺動操作しているときに、ダンパ部がその揺動操作に対する抵抗力を発生することができる。
【0014】
そして、このダンパ部は、操作部に伴って揺動する揺動側摩擦板が、揺動が阻止された固定側摩擦板に対して、押圧ばねによって押圧されて摩擦トルクを発生するものであるので、操作部の操作速度(揺動速度)が0(零)のときを含むいずれの操作速度であっても、操作部の操作に対して抵抗力を有効に発生することができて、建設機械等の機体の揺れや振動に起因する操作部の揺れや振動及びオペレータが意図しない操作部への操作を防止することができる。
【0015】
そして、ダンパ部の摩擦トルクを大きくするときは、揺動側摩擦板と固定側摩擦板とを重ね合わせたものを所望の数だけ配置することによって実現することができる。そして、このように摩擦トルクを大きくしても、ダンパ部の嵩は、操作部の揺動方向に対して直交する方向に大きくなるだけで、操作部の揺動の半径方向に大きくならないようにすることができ、コンパクトなダンパ部を備える操作装置を提供することができる。
【0016】
また、揺動側摩擦板と固定側摩擦板は取替え可能な部品であるため、摩耗による摩擦トルクの低下が生じた場合にも直ぐに対処可能である。
【0017】
第2の発明に係る操作装置は、固定部に揺動自在に設けられた操作部と、この操作部を揺動操作するときにその揺動操作に対して抵抗力を発生させるダンパ部とを備える操作装置において、前記ダンパ部は、揺動が阻止された3つ以上の固定側摩擦板が、前記操作部に伴って回動する揺動軸の外面に対して、少なくとも3方向から前記揺動軸の軸心に向かって押圧ばねによって押圧されていることを特徴とするものである。
【0018】
第2の発明に係る操作装置によると、オペレータが操作部を揺動操作し始めるとき、及び揺動操作しているときに、ダンパ部が抵抗力を発生することができる。
【0019】
そして、このダンパ部は、揺動が阻止された固定側摩擦板が、操作部に伴って回動する揺動軸の外面に対して、揺動軸の軸心に向かって押圧ばねによって押圧されて摩擦トルクを発生するものであるので、操作部の操作速度(揺動速度)が0(零)のときを含むいずれの操作速度であっても、操作部の操作に対して抵抗力を有効に発生することができて、建設機械等の機体の揺れや振動に起因する操作部の揺れや振動及びオペレータが意図しない操作部への操作を防止することができる。
【0020】
そして、このダンパ部によると、揺動が阻止された3つ以上の固定側摩擦板を、回動する揺動軸の外面に対して、少なくとも3方向から揺動軸の軸心に向かって押圧ばねによって押圧して摩擦抵抗を発生しているので、このダンパ部を長期間使用してこれら3つ以上のそれぞれの固定側摩擦板の摩擦面、及び揺動軸の外面が磨耗することがあっても、摩擦面全体の摩擦面積が減少せず、このダンパ部が発生する摩擦トルクが低下することを防止することができ、長期間ほぼ一定の摩擦トルクを発生することができる。
【0021】
つまり、例えば一対(3つ未満)の半円形状の固定側摩擦板を、揺動軸の外面に対して押圧する構成を考えると、この一対の固定側摩擦板の摩擦面が磨耗した場合は、各固定側摩擦板のそれぞれの両端部の摩擦面と、揺動軸の外面との接触圧が低下して、摩擦トルクが低下することがある。
【0022】
第3の発明に係る操作装置は、固定部に揺動自在に設けられた操作部と、この操作部を揺動操作するときにその揺動操作に対して抵抗力を発生させるダンパ部とを備える操作装置において、前記ダンパ部は、前記操作部に伴って揺動する揺動面と固定面との間に、ゴム様弾性体製の弾性摩擦部材が圧縮された状態で装着された構成であることを特徴とするものである。
【0023】
第3の発明に係る操作装置によると、オペレータが操作部を揺動操作し始めるとき、及び揺動操作しているときに、ダンパ部が抵抗力を発生することができる。
【0024】
そして、このダンパ部は、操作部に伴って揺動する揺動面と、固定面との間に、ゴム様弾性体製の弾性摩擦部材が圧縮された状態で装着された構成であるので、操作部の操作速度(揺動速度)が0(零)のときを含むいずれの操作速度であっても、操作部の操作に対して抵抗力を有効に発生することができて、建設機械等の機体の揺れや振動に起因する操作部の揺れや振動及びオペレータが意図しない操作部への操作を防止することができる。しかも、操作部の操作方向(揺動軸の周方向)に対して、操作部のガタツキ(遊び)がなく、操作部の操作速度が0のときの操作方向の抵抗力を有効に発生することができる。
【0025】
第4の発明に係る操作装置は、固定部に揺動自在に設けられた操作部と、この操作部を揺動操作するときにその揺動操作に対して抵抗力を発生させるダンパ部とを備える操作装置において、前記ダンパ部は、ダンパ室の容積を増減する方向に移動自在な移動部材が設けられ、この移動部材に前記操作部からの力が掛かることによって、前記ダンパ室内に生じる作動圧力が、前記ダンパ室に連通して設けられているリリーフ弁を開放し、前記作動圧力がダンパトルクを発生させることを特徴とするものである。
【0026】
第4の発明に係る操作装置によると、オペレータが操作部を揺動操作し始めるとき、及び揺動操作しているときに、ダンパ部が抵抗力を発生することができる。
【0027】
そして、このダンパ部によると、操作部の揺動に伴って移動部材が移動しようとしたり、移動することによって、ダンパ室の容積が減少しようとしたり減少する。そして、その容積が減少しようとしたり減少することによって生じるダンパ室内の作動圧力が、ダンパトルクを発生させることができる。そして、この作動圧力がリリーフ弁のセット圧力に達すると、ダンパ室に連通して設けられているリリーフ弁の弁体が開放され、このリリーフ弁を開放するために必要とされる力がダンパトルクとして発生する。
【0028】
従って、操作部の操作速度(揺動速度)が0(零)のときを含むいずれの操作速度であっても、操作部の操作に対して抵抗力を有効に発生することができて、オペレータが意図しない操作部の揺れや振動を防止することができる。
【0029】
そして、ダンパ部のトルクを大きくするときは、リリーフ弁のセット圧力を調整することで容易に実現することができる。
【0030】
第4の発明に係る操作装置において、前記リリーフ弁は、所望のオーバーライド特性となるように設定することによって、所望のダンパトルクを発生するように構成することができる。
【0031】
このように、ダンパ部が備えるリリーフ弁に対して、所望のオーバーライド特性となるように設定することによって、所望のダンパトルクを発生させることができる。このリリーフ弁に対して、所望のオーバーライド特性となるように設定する方法として、例えば、このリリーフ弁の弁体の形状変更、弁体を弁座に押圧するための押圧ばねのばね定数変更がある。
【0032】
第4又は第5の発明に係る操作装置において、前記リリーフ弁が開放されたときに、圧液が通る当該リリーフ弁の通路に絞りを設けたものとすることができる。
【0033】
このようにすると、操作部の操作速度の大きさに対応する大きさのダンパトルクを発生させることができる。これによって、操作部に対して急激な操作力が負荷されても、その操作速度を緩やかにすることができる。
【0034】
第1乃至6のいずれかの発明に係る操作装置において、前記操作部の揺動範囲の途中に定められた所定の中立位置に前記操作部が復帰するように前記操作部を付勢する付勢手段を備え、前記操作部の操作速度が0のときの前記ダンパ部によるダンパトルクが、前記操作部が前記中立位置にあるときの前記付勢手段による中立復帰トルクの30%以上であって、前記中立復帰トルク未満であるものとすることができる。
【0035】
このようにすると、操作部が中立位置を基準にして、オペレータが意図しない例えば前後方向に揺れたり振動することを有効に防止することができる。そして、操作部の操作速度が0のときのダンパ部によるダンパトルクが、操作部が中立位置にあるときの付勢手段による中立復帰トルクの30%以上としていることによって、操作部がいずれの操作位置に移動している状態でも、操作部の揺れや振動を有効に防止することができる。そして、操作部の操作速度が0のときのダンパ部によるダンパトルクが、前記中立復帰トルク未満としているので、操作部がいずれの操作位置に移動している状態でも、オペレータが操作部から手を離すと、操作部が自動的に中立位置に戻るようにすることができる。
【0036】
第1乃至7のいずれかの発明に係る操作装置において、前記操作部を揺動操作することによって動作する油圧式パイロット弁を備え、前記パイロット弁は、ポンプポート、タンクポート及び出力ポートを有するケーシンングと、このケーシング内に設けられ前記出力ポートを、前記ポンプポートとタンクポートとの間に切換えるスプールと、このスプールに対して摺動移動させるプッシャーとを備え、このプッシャーを前記操作部によって押圧することにより前記スプールを摺動させて前記ポンプポートからの液圧を前記出力ポートに供給する構成とすることができる。
【0037】
この操作装置によると、オペレータが操作部を揺動操作することによって、プッシャーを押圧することができ、この押圧されたプッシャーは、スプールを摺動させて、ポンプポートからの液圧を出力ポートに供給することができる。そして、この出力ポートに供給された液圧は、出力ポートに接続される例えばアクチュエータや作業用機器を動作させることができる。また、オペレータが操作部を揺動操作し始めるとき、及び揺動操作しているときに、ダンパ部が抵抗力を発生することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る操作装置によると、操作部の操作速度(揺動速度)が0(零)のときを含むいずれの操作速度であっても、操作部の操作に対して抵抗力を有効に発生することができる構成であるので、操作部の操作速度が0のときを含むいずれの操作速度であるときでも、例えば建設機械の揺れや振動が原因して、オペレータが操作部に対して揺れや振動を与えてしまうことを有効に防止することができ、その結果、建設機械の揺れや振動を増長させないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の第1実施形態に係る操作装置を示す図であり、(a)は油圧回路を含む縦断側面図、(b)は縦断正面図である。
【図2】同第1実施形態に係る操作装置が備えるダンパ部を示す拡大断面図である。
【図3】同第1実施形態に係る操作装置の操作部の操作速度とダンパトルクとの関係を示す特性図である。
【図4】同発明の第2実施形態に係る操作装置を示す図であり、(a)は縦断側面図、(b)は縦断正面図である。
【図5】同第2実施形態に係る操作装置が備えるダンパ部を示す拡大断面図である。
【図6】同発明の第3実施形態に係る操作装置を示す図であり、(a)は縦断側面図、(b)は縦断正面図である。
【図7】同第3実施形態に係る操作装置が備えるダンパ部を示す拡大断面図である。
【図8】同発明の第4実施形態に係る操作装置を示す図であり、(a)は縦断側面図、(b)は縦断正面図である。
【図9】同第4実施形態に係る操作装置が備えるダンパ部を示す拡大断面図である。
【図10】同発明の第5実施形態に係る操作装置を示す図であり、(a)は縦断側面図、(b)は縦断正面図である。
【図11】同発明の第6実施形態に係る操作装置を示す縦断正面図である。
【図12】従来の操作装置を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る操作装置の第1実施形態を、図1〜図3を参照して説明する。この図1(a)、(b)に示す操作装置50は、例えば油圧パワーショベル等の建設機械の左右の各クローラを別々に前進方向及び後退方向に駆動することができるものであり、左クローラを操作するための左操作装置51と、右クローラを操作するための右操作装置52とを備えている。
【0041】
オペレータが、図1(a)に示す左操作装置51の左操作部17をA1の方向(後方向)に揺動させると、油圧式第1パイロット弁53Aを動作させて、左クローラを後退方向に駆動させることができる。そして、この左操作部17をA2の方向(前方向)に揺動させると、油圧式第2パイロット弁53Bを動作させて、左クローラを前進方向に駆動させることができる。
【0042】
同様に、オペレータが、図1(b)に示す右操作部17(右操作装置52)を前後方向に揺動させると、油圧式第3又は第4パイロット弁53A、53Bを動作させて、右クローラを後退方向又は前進方向に駆動させることができる。
【0043】
ただし、左操作装置51及び右操作装置52は、互いに同等のものであるので、同等部分を同一の図面符号で示すと共に、左操作装置51を説明し、右操作装置52の説明を省略する。
【0044】
左操作装置51は、図1(a)、(b)に示すように、左操作部17、第1パイロット弁53A、第2パイロット弁53B、及び左ダンパ部54を備えている。この左ダンパ部54は、左操作部17を揺動させたときに抵抗力を発生するものである。
【0045】
また、図1(a)に示すように、この左操作装置51は、ケーシング1に設けられ、このケーシング1は、下部ケーシング1A、及び上部ケーシング1Bで形成されている。
【0046】
ケーシング1には、油圧ポンプ2からの圧油が流入するポンプポート3と、タンク4と常時連通するタンクポート5とが形成されている。更に、ケーシング1には、出力ポート7A、7Bが形成されている。また、ケーシング1には、ポンプポート3、タンクポート5、及び出力ポート7A、7Bと連通する流路8A、8Bが形成され、これら各流路8A、8Bには、スプール9A、9Bがそれぞれ摺動可能に装着されている。このスプール9Aは、第1パイロット弁53Aを構成するものであり、スプール9Bは、第2パイロット弁53Bを構成するものである。
【0047】
これら各スプール9A、9Bには、軸心方向に油路10A、10Bが形成されていると共に、この軸心と直交する方向に油孔11A、11Bが形成されている。そして、これら油路10A、10B、及び油孔11A、11Bは、それぞれ対応するものどうしが互いに連通している。
【0048】
そして、図1(a)、(b)に示すように、出力ポート7A、7Bは、油路10A、10B、油孔11A、11B、及び流路8A、8Bを介してタンクポート5又はポンプポート3と選択的に連通されるように構成されている。
【0049】
また、ケーシング1には、挿入孔13A、13Bが形成され、これら各挿入孔13A、13Bにプッシャー12A、12Bが摺動自在に挿入されている。これらプッシャー12A、12Bは、各スプール9A、9Bを摺動移動させるためのものであり、各上端部は、ケーシング1外に突出し、下端部は、ケーシング1に形成されているタンクポート5に常時連通するばね室14A、14B内に相対するように配置されている。
【0050】
そして、ばね室14A、14B内には、バランス用ばね15A、15Bが配置され、これら各バランス用ばね15A、15Bは、各プッシャー12A、12Bと、各スプール9A、9Bとの間に配置されている。ただし、各プッシャー12A、12Bの下端部と、各バランス用ばね15A、15Bの上端部との間には、ばね押え部55A、55Bが配置されている。更に、このばね押え部55A、55Bと、ばね室14A、14Bの各底面との間には、それぞれ復帰用ばね16A、16Bが配置されている。
【0051】
また、図1(a)に示すように、シリンダ1の上部には、略逆T字形状の操作部17が設けられている。この操作部17は、ケーシング1の上部に設けられているブラケット18(固定部)に、揺動軸56を介して揺動自在に設けられ、下部に設けられている左右一対の押圧部17A、17Bと、レバー部17Cとを有している。
【0052】
ただし、操作部17は、レバー部17Cを有するものとしたが、レバー部17Cに代えて、ペダル部(図示せず)を有するもの、もしくはレバー部とペダル部両方を有するものとしてもよい。
【0053】
これら一対の各押圧部17A、17Bは、各プッシャー12A、12Bを押圧するものである。そして、レバー部17Cは、これら押圧部17A、17Bの中間位置から上方に突出して形成され、オペレータによって操作されるものである。
【0054】
また、図1(a)に示すように、この左操作装置51には、方向切換弁19が接続されている。この方向切換弁19の2つの各パイロット室は、配管20A、20Bを介して出力ポート7A、7Bに接続されている。そして、この方向切換弁19には、油圧モータ21等のアクチュエータ、及びこの油圧モータ21を駆動するためのメインポンプ22が接続されている。
【0055】
次に、図1〜図3を参照して、本発明の特徴とする左ダンパ部54を説明する。ただし、図1(b)に示すように、操作装置50が備える左操作装置51及び右操作装置52には、それぞれ左ダンパ部54及び右ダンパ部54が設けられているが、これらは互いに同等のものであるので、それぞれの同等部分を同一の図面符号で示すと共に、左ダンパ部54の説明をし、右ダンパ部54の説明を省略する。
【0056】
この図1(b)に示す左ダンパ部54は、オペレータが操作部17を、図1(a)に示すA1、A2方向に揺動操作するときに、その揺動操作に対して抵抗力を発生させることができるものである。この抵抗力は、互いに押圧されて接触する複数の揺動側摩擦板57と、複数の固定側摩擦板58との間で働く摩擦トルクによって発生する。図2は、左ダンパ部54を模式的に描いた拡大断面図である。
【0057】
左ダンパ部54は、図1(b)及び図2に示すように、複数の揺動側摩擦板57と、複数の固定側摩擦板58とを備えている。これら複数の揺動側摩擦板57及び固定側摩擦板58は、それぞれが交互に重ね合わされた状態でダンパケース59内に配置され、揺動軸56に対してその軸方向に移動自在にその揺動軸56に装着されている。
【0058】
これら複数の各揺動側摩擦板57は、円板であり、中央に貫通孔が形成され、この貫通孔に揺動軸56が挿通している。そして、これら複数の各揺動側摩擦板57は、揺動軸56に対して不回動に揺動軸56に装着され、揺動軸56に伴って揺動するように形成されている。つまり、例えば揺動軸56がスプライン軸として形成され、このスプライン軸の溝に各揺動側摩擦板57の貫通孔の内周縁部に形成された凸部が嵌合する構成となっている。
【0059】
また、複数の各固定側摩擦板58は、例えば長円形板であり、中央に貫通孔が形成され、この貫通孔に揺動軸56が挿通している。そして、これら複数の各固定側摩擦板58は、ダンパケース59に対して不回動であって、揺動軸56に対して非接触である。つまり、例えばダンパケース59が長円筒形状に形成され、長円形板として形成された複数の各固定側摩擦板58が、揺動軸56を中心にして揺動しないように係止される構成となっている。
【0060】
そして、このダンパケース59は、ケーシング1に固定して設けられ、ダンパケース59内に例えば複数の押圧ばね60が配置されている。この複数の押圧ばね60は、これら複数の揺動側摩擦板57及び固定側摩擦板58を揺動軸56の軸方向に押圧して、これら各摩擦板どうしを圧接させるものであり、これによって、操作部17の操作に対して摩擦トルクが発生するように構成されている。
【0061】
次に、上記のように構成された左操作装置51の作動及びその作用について説明する。ただし、右操作装置52は、左操作装置51と同様に作動し作用するので、その説明を省略する。
【0062】
まず、操作部17が、図1(a)に示すように、揺動されていない中立位置にあるときは、バランス用ばね15A、15B、及び復帰用ばね16A、16Bのばね力によって、プッシャー12A、12Bは、その上端部がケーシング1から上方に突出し、押圧部17A、17Bに当接している。この状態でのプッシャー12A、12Bは、中立位置にある。そして、スプール9A、9Bも中立位置にあり、出力ポート7A、7Bは、油路10A、10B、及び油孔11A、11Bを順次介してタンクポート5と連通した状態となっている。これによって、方向切換弁19の各パイロット室は、等圧となっており、この方向切換弁19は、中立位置に保持されている。
【0063】
次に、オペレータが、操作部17を図1(a)に示すA1方向に揺動させると、押圧部17Aがプッシャー12Aを押圧して、プッシャー12Aを下降移動させることができる。プッシャー12Aが下降移動すると、バランス用ばね15Aは、圧縮されながらスプール9Aを下方に摺動移動させることができる。すると、油孔11Aは、タンクポート5との連通が遮断され、ポンプポート3と連通され、その結果、油圧ポンプ2の圧油は、ポンプポート3、油孔11A、及び油路10Aを順次通って出力ポート7Aから方向切換弁19の一方のパイロット室に供給される。これによって、方向切換弁19が切り換わり、メインポンプ22から油圧モータ21への圧油の供給が行なわれる。
【0064】
このように、油圧ポンプ2からの圧油が、油孔11A及び油路10Aを介して出力ポート7Aに供給されると、出力ポート7A内が高圧になり、この高圧がスプール9Aに作用し、スプール9Aが上方に押し上げられる。これにより、油孔11Aは、ポンプポート3と遮断され、タンクポート5と連通することになり、油路10A内は低圧となる。よって、スプール9Aは、バランス用ばね15Aのばね力により、再び下方に摺動移動し、ポンプポート3Aと油孔11Aとが連通する。
【0065】
このように、バランス用ばね15Aは、ばね力と出力ポート7A内の圧力とをバランスさせつつ、スプール9Aを上下移動させ、出力ポート7A内の圧力を適宜設定する。つまり、スプール9Aが細かい上下移動を繰り返しながら、ポンプポート3内の圧油を減圧して方向切換弁19の一方のパイロット室に供給し、この圧力と、タンクポート5と連通している他方のパイロット室の圧力との差圧に応じた量だけ方向切換弁19のスプールを切換位置に移動させることができる。
【0066】
なお、上記のように、図1(a)に示す操作部17をA1方向に揺動させることによって、第1パイロット弁53Aのスプール9Aを下降移動させて、所望の圧力の圧油が出力ポート7Aに供給されるようにすることができるが、このとき、出力ポート7Bには、タンクポート5の圧力が掛かる状態となっている。
【0067】
このようにして、油圧モータ21を所定方向に駆動して、左クローラを、後退方向に操作部17の揺動角度に応じた出力で駆動させることができる。
【0068】
また、操作部17をA1方向に操作して、左クローラを後退方向に操作部17の揺動角度に応じた出力で駆動できるのと同様に、操作部17をA2方向に操作して、左クローラを前進方向に操作部17の揺動角度に応じた出力で駆動できるので、その説明を省略する。
【0069】
次に、図1(b)及び図2に示す左ダンパ部54の作用を説明する。ただし、右ダンパ部54は、左ダンパ部54と同様に作用するので、その説明を省略する。この左ダンパ部54によると、オペレータが操作部17を揺動操作し始めるとき、及び揺動操作しているときに、左ダンパ部54がその揺動操作に対する抵抗力を発生することができる。そして、この左ダンパ部54は、操作部17に伴って揺動する揺動側摩擦板57が、揺動が阻止された固定側摩擦板58に対して、押圧ばね60によって押圧されて摩擦トルクを発生するものであるので、操作部17の操作速度(揺動速度)が0(零)のときを含むいずれの操作速度であっても、操作部17の操作に対して抵抗力を有効に発生することができて、オペレータが意図しない操作部17の揺れや振動を防止することができる。
【0070】
つまり、オペレータによる操作部17の操作速度が0のときを含むいずれの操作速度であるときでも、この操作装置50が設けられている例えば建設機械の揺れや振動が原因して、オペレータが操作部17に対して揺れや振動を与えてしまうことを有効に防止することができ、その結果、建設機械の揺れや振動を増長させないようにすることができる。
【0071】
また、図1(a)に示すように、この操作装置50には、揺動自在な操作部17のその揺動範囲の途中に定められた所定の中立位置に、操作部17が復帰するように操作部17を付勢する復帰用ばね16A、16B(付勢手段)が設けられている。そして、操作部17の操作速度が0(零)のときの左ダンパ部54によるダンパトルクが、操作部17がその中立位置にあるときの復帰用ばね16A、16Bによる中立復帰トルクの30%以上であってその中立復帰トルク未満、好ましくは50〜80%となるように設定されている。
【0072】
このように構成されているので、操作部17が、図1(a)に示す中立位置を基準にして、オペレータが意図しない例えば前後方向に揺れたり振動することを有効に防止することができる。そして、操作部17の操作速度が0のときの左ダンパ部54によるダンパトルクが、操作部17が中立位置にあるときの復帰用ばね16A、16Bによる中立復帰トルクの30%以上としていることによって、操作部17がいずれの操作位置に移動している状態でも、操作部17の揺れや振動を有効に防止することができる。そして、操作部17の操作速度が0のときの左ダンパ部54によるダンパトルクが、中立復帰トルク未満としているので、操作部17がいずれの操作位置に移動している状態でも、オペレータが操作部17から手を離すと、操作部17が自動的に中立位置に戻るようにすることができる。
【0073】
更に、この図1(b)及び図2に示す左ダンパ部54によると、左ダンパ部54の摩擦トルクを大きくするときは、揺動側摩擦板57と固定側摩擦板58とを重ね合わせたものを所望の数だけ配置することによって実現することができる。そして、このように摩擦トルクを大きくしても、左ダンパ部54の嵩は、操作部17の揺動方向に対して直交する方向(揺動軸56の方向)に大きくなるだけで、操作部17の揺動の半径方向(揺動軸56の半径方向)に大きくならないようにすることができ、コンパクトな左ダンパ部54を備える左操作装置51を提供することができる。
【0074】
次に、図3に示す操作速度と、ダンパトルクとの関係について説明する。この図3に示すように、第1実施形態のダンパ部54によると、操作部17の操作速度(揺動速度)が0(零)のときを含むいずれの操作速度であっても、操作部17の操作に対するダンパトルク(抵抗力)は、略一定である。よって、操作部17の操作速度(揺動速度)が0(零)のときでも、操作部17に揺れや振動が発生しないようにすることができる。
【0075】
これに対して、図12に示す絞り式ダンパ部105、及び図示しない粘性利用式ダンパ部によると、操作部の操作速度(揺動速度)が0(零)のときには、操作部の操作に対するダンパトルク(抵抗力)が0(零)であるので、このとき、操作部に揺れや振動が発生する可能性がある。
【0076】
次に、本発明に係る操作装置の第2実施形態を、図4及び図5を参照して説明する。この図4及び図5に示す第2実施形態に係る操作装置61と、図1及び図2に示す第1実施形態に係る操作装置50とが相違するところは、オペレータが操作部17を、A1、A2方向に揺動操作するときに、その揺動操作に対して抵抗力を発生させることができるダンパ部62とダンパ部54とが相違するところである。これ以外は、第1実施形態と同等であり、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの詳細な説明を省略する。
【0077】
この図4(b)に示す左右の各ダンパ部62、62は、互いに同等のものであり、各ダンパ部62は、図5及び図4(a)に示すように、揺動が阻止された4つの各固定側摩擦板63が、操作部17に伴って回動する揺動軸56の外面に対して、4方向から揺動軸56の軸心に向かって4つの各押圧ばね64によって押圧されて摩擦トルクを発生することができるものである。
【0078】
これら4つの各固定側摩擦板63は、図4(a)に示すように、揺動軸56の外面に当接するように、揺動軸56の周方向に約90°おきに配置され、それぞれの固定側摩擦板63は、4つの各押圧ばね64によって揺動軸56の軸心に向かう方向に押圧されている。
【0079】
そして、これら4組のそれぞれの固定側摩擦板63及び押圧ばね64は、ダンパケース65に形成されている4つの各凹部に収容され、揺動軸56が回動するときに、これら4組の各固定側摩擦板63及び押圧ばね64が、揺動軸56に伴って揺動しないように各凹部の内面で阻止されている。そして、このダンパケース65は、ケーシング1に固定して設けられている。
【0080】
ただし、この実施形態では、図4(a)に示すように、4組の固定側摩擦板63及び押圧ばね64を設けたが、これに代えて、例えば3組又は5組以上の固定側摩擦板63及び押圧ばね64を設けてもよい。
【0081】
この図4及び図5に示す操作装置61によると、オペレータが操作部17を揺動操作し始めるとき、及び揺動操作しているときに、第1実施形態と同様に、ダンパ部62が抵抗力を発生することができる。
【0082】
そして、このダンパ部62は、揺動が阻止された固定側摩擦板63が、操作部17に伴って回動する揺動軸56の外面に対して、揺動軸56の軸心に向かって押圧ばね64によって押圧されて摩擦トルクを発生するものであるので、操作部17の操作速度(揺動速度)が0(零)のときを含むいずれの操作速度であっても、操作部17の操作に対して抵抗力を有効に発生することができて、オペレータが意図しない操作部17の揺れや振動を防止することができる。
【0083】
そして、このダンパ部62によると、揺動が阻止された4つの固定側摩擦板63を、回動する揺動軸56の外面に対して、4方向から揺動軸56の軸心に向かって押圧ばね64によって押圧して摩擦抵抗を発生しているので、このダンパ部62を長期間使用してこれら4つのそれぞれの固定側摩擦板63の摩擦面、及び揺動軸56の外面が磨耗することがあっても、摩擦面全体の摩擦面積が減少せず、このダンパ部62が発生する摩擦トルクが低下することを防止することができ、長期間ほぼ一定の摩擦トルクを発生することができる。
【0084】
つまり、例えば一対(2つ以下)の半円形状の固定側摩擦板を、揺動軸56の外面に対して押圧する構成を考えると、この一対の固定側摩擦板の摩擦面が磨耗した場合は、各固定側摩擦板のそれぞれの両端部の摩擦面と、揺動軸56の外面との接触圧が低下して、摩擦トルクが低下することがある。
【0085】
次に、本発明に係る操作装置の第3実施形態を、図6及び図7を参照して説明する。この図6及び図7に示す第3実施形態に係る操作装置67と、図1及び図2に示す第1実施形態に係る操作装置50とが相違するところは、オペレータが操作部17を、A1、A2方向に揺動操作するときに、その揺動操作に対して抵抗力を発生させることができるダンパ部68とダンパ部54とが相違するところである。これ以外は、第1実施形態と同等であり、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの詳細な説明を省略する。
【0086】
この図6(a)に示す左右の各ダンパ部68、68は、互いに同等のものであり、各ダンパ部68、68は、図7及び図6(a)に示すように、ダンパ室70、70の容積を増減する直線方向に移動自在な移動部材69、69が設けられ、この移動部材69、69が操作部17の揺動に伴って直線方向に移動することによって、ダンパ室70、70の容積を減少させ、その容積の減少によって生じる作動圧力によって、ダンパ室70、70に連通して設けられているリリーフ弁71、71が開放し、その作動圧力がダンパトルクを発生させることができるものである。
【0087】
このダンパ室70、70は、図6(a)に示すように、ケーシング1に設けられ、このダンパ室70、70には、移動部材69、69が上下方向に摺動自在に挿入されている。そして、この移動部材69、69の上端部は、ケーシング1から上方に突出し、これらの各上端部は、操作部17に設けられている各押圧部73、73と当接している。
【0088】
そして、ダンパ室70、70には、復帰用ばね74、74が配置され、この復帰用ばね74、74は、移動部材69、69を押し上げる方向に付勢している。
【0089】
また、図7に示すように、移動部材69、69には、リリーフ弁71、71が設けられている。このリリーフ弁71、71は、弁座75、75に形成された弁孔76、76を閉じるように弁体77、77が配置され、この弁体77、77は、リリーフばね78、78(押圧ばね)によって弁座75、75に向かう方向に付勢されている。そして、このリリーフばね78、78は、背圧室79、79に配置され、この背圧室79、79は、移動部材69、69に形成されている開口80を介してタンクポート5に連通している(図6(a)参照)。
【0090】
なお、図7に示すリリーフ弁71、71の弁体77、77には、油路81、81が形成されている。この油路81、81は、開弁状態で、ダンパ室70、70と背圧室79、79とを連通させるためのものである。
【0091】
更に、ダンパ室70、70の底には、開口82、82が形成され、ダンパ室70、70は、この開口82、82を介してタンクポート5に連通している(図6(a)参照)。そして、この開口82、82には、逆止弁83、83が設けられている。逆止弁83、83は、タンクポート5側の油を開口82、82に通してダンパ室70、70内に流入させることができるが、ダンパ室70、70内の油が開口82、82を通って流出することを止めるためのものである。
【0092】
この図6及び図7に示す操作装置67によると、オペレータが操作部17を揺動操作し始めるとき、及び揺動操作しているときに、第1実施形態と同様に、ダンパ部68が抵抗力を発生することができる。
【0093】
そして、このダンパ部68によると、操作部17の揺動に伴って移動部材69が下降移動しようとしたり、下降移動することによって、ダンパ室70の容積が減少しようとしたり減少する。そして、その容積が減少しようとしたり減少することによって生じるダンパ室70内の作動圧力が、ダンパトルクを発生させることができる。そして、この作動圧力がリリーフ弁71のセット圧力に達すると、ダンパ室70に連通して設けられているリリーフ弁71の弁体77が開放され、このリリーフ弁71を通る油の流量に対応するダンパトルクが発生する。
【0094】
従って、操作部17の操作速度(揺動速度)が0(零)のときを含むいずれの操作速度であっても、操作部17の操作に対して抵抗力を有効に発生することができて、オペレータが意図しない操作部17の揺れや振動を防止することができる。
【0095】
そして、図7に示すダンパ部68によると、このダンパ部68が備えるリリーフ弁71に対して、所望のオーバーライド特性となるように設定することによって、所望のダンパトルクを発生させることができる。そして、このリリーフ弁71に対して、所望のオーバーライド特性となるように設定する方法として、例えば、このリリーフ弁71の弁体77の形状変更、弁体77を弁座75に押圧するためのリリーフばね78のばね定数変更がある。
【0096】
また、図7に示すリリーフ弁71は、その背圧室79に連通する開口80を絞りとして形成してあるので、操作部17の操作速度の大きさに対応する大きさのダンパトルクを発生させることができる。このようにすると、操作部17に対して急激な操作力が負荷されても、その操作速度を緩やかにすることができる。
【0097】
次に、本発明に係る操作装置の第4実施形態を、図8及び図9を参照して説明する。この図8及び図9に示す第4実施形態に係る操作装置85と、図6及び図7に示す第3実施形態に係る操作装置67とが相違するところは、ダンパ部86とダンパ部68とが相違するところである。
【0098】
そして、図8及び図9に示す第4実施形態のダンパ部86と、図6及び図7に示す第3実施形態のダンパ部68とが相違するところは、図6及び図7に示す第3実施形態のダンパ部68は、操作部17が揺動することによって移動部材69が直線方向に移動する構成であり、これに対して、図8及び図9に示す第4実施形態のダンパ部86は、操作部17が揺動することによって移動部材87が円弧方向に揺動移動する構成としたところである。
【0099】
この図8(b)に示す左右の各ダンパ部86は、互いに同等のものであり、各ダンパ部86は、図9等に示すように、左右の各ダンパ室88の容積を増減する円弧方向に移動自在な移動部材87が設けられ、この移動部材87が操作部17の揺動に伴って円弧方向に移動するときに、左側(又は右側)のダンパ室88の容積が減少し、その容積の減少によって生じる作動圧力が、ダンパ室88に連通して設けられているリリーフ弁89を開放し、その作動圧力がダンパトルクを発生させることができるものである。
【0100】
ダンパ部86は、図9に示すように、揺動軸56を中心とする略円筒形の内側空間90Aを有するダンパケース90を備えている。このダンパケース90は、ケーシング1に固定して取り付けられ、このダンパケース90に固定部材91が固定して取り付けられている。そして、この固定部材91は、ダンパケース90の内側空間90Aを左右の2つのダンパ室88、88と、背圧室92とに分割するものである。
【0101】
また、揺動軸56には、図9に示すように、移動部材87が固定して設けられ、この移動部材87は、揺動軸56に伴って揺動するようになっている。そして、この移動部材87は、ダンパ室88を2つに区分するように配置され、移動部材87の先端部は、ダンパケース90の内側空間90Aを形成する内周面と摺動自在に当接している。
【0102】
更に、図9に示すように、固定部材91の左右の各側部には、それぞれリリーフ弁89及び逆止弁97が設けられている。
【0103】
リリーフ弁89は、固定部材91に形成された連通孔93を有し、この連通孔93は、ダンパ室88と背圧室92とを連通している。そして、この連通孔93には、弁座94が形成され、この弁座94に形成された弁孔95を閉じるように弁体99が配置されている。そして、この弁体99は、リリーフばね96(押圧ばね)によって弁座94に向かう方向に付勢されている。そして、リリーフばね96は、連通孔93内に配置され、そのばね力によって、ダンパ室88内の圧油が連通孔93を通って背圧室92内に流入することを止めている。
【0104】
また、図9に示すように、連通孔93の背圧室92側の開口部には、リリーフばね96の抜け止め用凸部93aが例えば環状凸部として形成されている。
【0105】
逆止弁97は、固定部材91に形成された連通孔98を有し、この連通孔98は、ダンパ室88と背圧室92とを連通している。この逆止弁97は、背圧室92内の油を連通孔98に通してダンパ室88内に流出させることができるが、ダンパ室88内の油が連通孔98を通って背圧室92内に流出することを止めるためのものである。
【0106】
そして、図9に示すように、この連通孔98のダンパ室88側の開口部内周面には、例えば球形の弁体97aの抜け止め用凸部98aが形成されている。ただし、この抜け止め用凸部98aの内周形状は、弁体97aによって連通孔98が閉じられない形状、例えば略楕円形や略四角形等の非円形に形成されている。
【0107】
この図8及び図9に示す操作装置85によると、オペレータが操作部17を揺動操作し始めるとき、及び揺動操作しているときに、第1実施形態と同様に、ダンパ部86が抵抗力を発生することができる。
【0108】
そして、このダンパ部86によると、操作部17の揺動に伴って移動部材87が揺動移動しようとしたり、揺動移動することによって、一方のダンパ室88の容積が減少しようとしたり減少する。そして、その容積が減少しようとしたり減少することによって生じるダンパ室88内の作動圧力が、ダンパトルクを発生させることができる。そして、この作動圧力がリリーフ弁89のセット圧力に達すると、ダンパ室88に連通して設けられているリリーフ弁89の弁体99が、リリーフばね96のばね力に抗して開放され、このリリーフ弁89を通る油の流量に対応するダンパトルクが発生する。
【0109】
従って、操作部17の操作速度(揺動速度)が0(零)のときを含むいずれの操作速度であっても、操作部17の操作に対して抵抗力を有効に発生することができて、オペレータが意図しない操作部17の揺れや振動を防止することができる。
【0110】
そして、この図9に示す第4実施形態のダンパ部86は、図7に示す第3実施形態のダンパ部68と同様に、このダンパ部86が備えるリリーフ弁89に対して、所望のオーバーライド特性となるように設定することによって、所望のダンパトルクを発生させることができる。
【0111】
また、この図9に示すリリーフ弁89は、図7に示すリリーフ弁71と同様に、その背圧室92に連通する連通孔93の開口を絞りとして形成することによって、操作部17の操作速度の大きさに対応する大きさのダンパトルクを発生させることができる。
【0112】
次に、本発明に係る操作装置の第5実施形態を、図10を参照して説明する。この図10に示す第5実施形態に係る操作装置116と、図1及び図2に示す第1実施形態に係る操作装置50とが相違するところは、オペレータが操作部17を、A1、A2方向に揺動操作するときに、その揺動操作に対して抵抗力を発生させることができるダンパ部117とダンパ部54とが相違するところである。これ以外は、第1実施形態と同等であり、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの詳細な説明を省略する。
【0113】
この図10(b)に示す左右の各対のダンパ部(117、117)、(117、117)は、それぞれ同等のものである。各ダンパ部117は、操作部17を構成するカム部118の左右の各外側面(揺動面)と、このカム部118を左右両側から挟み込むブラケット18の左右の各内側面(固定面)との間に、ゴム様弾性体製の1又は複数の弾性摩擦部材113が、揺動軸56の軸方向に圧縮された状態で装着された構成である。
【0114】
これらの各弾性摩擦部材113は、同図に示すように、例えば円環状のOリングである。そして、各弾性摩擦部材113は、カム部118の各外側面に形成されている環状溝内に装着されている。
【0115】
ただし、図10(b)に示すように、カム部118には、連結ピン119が装着されて結合し、この連結ピン119は、揺動軸56に形成された貫通孔に装着されてこの揺動軸56と結合している。このようにして、操作レバー17cが、揺動軸56と結合している。
【0116】
そして、弾性摩擦部材113は、Oリングとしたが、これに代えて、ゴム様弾性体製の円環状の板状部材としてもよい。そして、この弾性摩擦部材113を、カム部118の外側面であって、揺動軸56の半径方向に沿って多重円となるように複数設けた構成としてもよい。
【0117】
この図10に示す操作装置116によると、オペレータが操作部17を揺動操作し始めるとき、及び揺動操作しているときに、第1実施形態と同様に、ダンパ部117が抵抗力を発生することができる。
【0118】
そして、このダンパ部117は、操作部17として揺動するカム部118の外側面と、ブラケット18の内側面との間に、ゴム様弾性体製の弾性摩擦部材113が圧縮された状態で装着された構成であるので、操作部17の操作速度(揺動速度)が0(零)のときを含むいずれの操作速度であっても、操作部17の操作に対して抵抗力を有効に発生することができて、建設機械等の機体の揺れや振動に起因する操作部17の揺れや振動及びオペレータが意図しない操作部17への操作を防止することができる。しかも、操作部17の操作方向(揺動軸56の周方向)に対して、操作部17のガタツキ(遊び)がなく、操作部17の操作速度が0のときの操作方向の抵抗力を有効に発生することができる。
【0119】
次に、本発明に係る操作装置の第6実施形態を、図11を参照して説明する。この図11に示す第6実施形態に係る操作装置111と、図1及び図2に示す第1実施形態に係る操作装置50とが相違するところは、オペレータが操作部17を、A1、A2方向に揺動操作するときに、その揺動操作に対して抵抗力を発生させることができるダンパ部112とダンパ部54とが相違するところである。これ以外は、第1実施形態と同等であり、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの詳細な説明を省略する。
【0120】
この図11に示す左右の各ダンパ部112、112は、互いに同等のものであり、各ダンパ部112は、操作部17に伴って回動する揺動軸56の円筒形状の外周面(揺動面)と、ダンパケース114の円筒形状の内周面(固定面)との間に、ゴム様弾性体製の複数(例えば3つ)の弾性摩擦部材113が、この揺動軸56の半径方向に圧縮された状態で装着された構成である。
【0121】
これらの各弾性摩擦部材113は、同図に示すように、例えば円環状のOリングであり、揺動軸56の軸方向に沿って、互いに所定の間隔を隔てて配置されている。そして、各弾性摩擦部材113は、ダンパケース114の内周面に形成されている複数の各環状溝内に装着されている。
【0122】
ただし、弾性摩擦部材113は、Oリングとしたが、これに代えて、ゴム様弾性体製の円筒状部材としてもよい。
【0123】
ダンパケース114は、同図に示すように、所定の厚みを有する略円筒形状に形成され、その端部がブラケット18に固定して取り付けられている。
【0124】
この図11に示す操作装置111によると、オペレータが操作部17を揺動操作し始めるとき、及び揺動操作しているときに、第1実施形態と同様に、ダンパ部112が抵抗力を発生することができる。
【0125】
そして、このダンパ部112は、操作部17に伴って揺動する揺動軸56の外周面と、ダンパケース114の内周面との間に、ゴム様弾性体製の複数の弾性摩擦部材113が圧縮された状態で装着された構成であるので、操作部17の操作速度(揺動速度)が0(零)のときを含むいずれの操作速度であっても、操作部17の操作に対して抵抗力を有効に発生することができて、建設機械等の機体の揺れや振動に起因する操作部17の揺れや振動及びオペレータが意図しない操作部17への操作を防止することができる。しかも、操作部17の操作方向(揺動軸56の周方向)に対して、操作部17のガタツキ(遊び)がなく、操作部17の操作速度が0のときの操作方向の抵抗力を有効に発生することができる。
【0126】
また、第1実施形態乃至第6実施形態では、本発明に係る操作装置を油圧操作弁(パイロット弁)に適用しているが、パイロット弁等の油圧信号を出力する油圧操作手段だけではなく、電気信号を出力する電気操作手段にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上のように、本発明に係る操作装置は、操作部の操作速度が0(零)のときを含むいずれの操作速度であっても、操作部の操作に対する抵抗力を有効に発生することができて、オペレータが意図しない操作部の揺れや振動を防止することができる優れた効果を有し、このような操作装置に適用するのに適している。
【符号の説明】
【0128】
1 ケーシング
1A 下部ケーシング
1B 上部ケーシング
2 油圧ポンプ
3 ポンプポート
4 タンク
5 タンクポート
7A、7B 出力ポート
8A、8B 流路
9A、9B スプール
10A、10B 油路
11A、11B 油孔
12A、12B プッシャー
13A、13B 挿入孔
14A、14B ばね室
15A、15B バランス用ばね
16A、16B 復帰用ばね
17 操作部
17A、17B 押圧部
17C レバー部
18 ブラケット
19 方向切換弁
20A、20B 配管
21 油圧モータ
22 メインポンプ
50、61、67、85 操作装置
51 左操作装置
52 右操作装置
53A 第1パイロット弁、第3パイロット弁
53B 第2パイロット弁、第4パイロット弁
54、62、68、86 ダンパ部
55A、55B ばね押え部
56 揺動軸
57 揺動側摩擦板
58、63 固定側摩擦板
59、65、90 ダンパケース
90A 内側空間
60、64 押圧ばね
69、87 移動部材
70、88 ダンパ室
71、89 リリーフ弁
73 押圧部
74 復帰用ばね
75 弁座
76 弁孔
77、99 弁体
78、96 リリーフばね
79、92 背圧室
80、82 開口
81 油路
83、97 逆止弁
91 固定部材
93、98 連通孔
93a リリーフばねの抜け止め用凸部
94 弁座
95 弁孔
97a 弁体
98a 弁体の抜け止め用凸部
111 操作装置
112 ダンパ部
113 弾性摩擦部材
114 ダンパケース
116 操作装置
117 ダンパ部
118 カム部
119 連結ピン
A1、A2 傾動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部に揺動自在に設けられた操作部と、前記操作部を揺動操作するときにその揺動操作に対して抵抗力を発生させるダンパ部とを備える操作装置において、
前記操作部は、前方向および後方向のいずれにも揺動可能に固定部に軸支されており、前記ダンパ部は、前記操作部に伴って揺動する1又は複数の揺動側摩擦板が、揺動が阻止された1又は複数の固定側摩擦板に対して、前記揺動方向に対して直交する方向に押圧ばねによって押圧されていることを特徴とする操作装置。
【請求項2】
固定部に揺動自在に設けられた操作部と、この操作部を揺動操作するときにその揺動操作に対して抵抗力を発生させるダンパ部とを備える操作装置において、
前記ダンパ部は、揺動が阻止された3つ以上の固定側摩擦板が、前記操作部に伴って回動する揺動軸の外面に対して、少なくとも3方向から前記揺動軸の軸心に向かって押圧ばねによって押圧されていることを特徴とする操作装置。
【請求項3】
固定部に揺動自在に設けられた操作部と、この操作部を揺動操作するときにその揺動操作に対して抵抗力を発生させるダンパ部とを備える操作装置において、
前記ダンパ部は、前記操作部に伴って揺動する揺動面と、固定面との間に、ゴム様弾性体製の弾性摩擦部材が圧縮された状態で装着された構成であることを特徴とする操作装置。
【請求項4】
固定部に揺動自在に設けられた操作部と、この操作部を揺動操作するときにその揺動操作に対して抵抗力を発生させるダンパ部とを備える操作装置において、
前記ダンパ部は、ダンパ室の容積を増減する方向に移動自在な移動部材が設けられ、この移動部材に前記操作部からの力が掛かることによって、前記ダンパ室内に生じる作動圧力が、前記ダンパ室に連通して設けられているリリーフ弁を開放し、前記作動圧力がダンパトルクを発生させることを特徴とする操作装置。
【請求項5】
前記リリーフ弁は、所望のオーバーライド特性となるように設定することによって、所望のダンパトルクを発生するように構成されていることを特徴とする請求項4記載の操作装置。
【請求項6】
前記リリーフ弁が開放したときに、圧液が通る当該リリーフ弁の通路に絞りを設けたことを特徴とする請求項4又は5記載の操作装置。
【請求項7】
前記操作部の揺動範囲の途中に定められた所定の中立位置に前記操作部が復帰するように前記操作部を付勢する付勢手段を備え、
前記操作部の操作速度が0のときの前記ダンパ部によるダンパトルクが、前記操作部が前記中立位置にあるときの前記付勢手段による中立復帰トルクの30%以上であって、前記中立復帰トルク未満であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の操作装置。
【請求項8】
前記操作部を揺動操作することによって動作する油圧式パイロット弁を備え、
前記パイロット弁は、
ポンプポート、タンクポート及び出力ポートを有するケーシンングと、
このケーシング内に設けられ前記出力ポートを、前記ポンプポートとタンクポートとの間に切換えるスプールと、
このスプールに対して摺動移動させるプッシャーとを備え、
このプッシャーを前記操作部によって押圧することにより前記スプールを摺動させて前記ポンプポートからの液圧を前記出力ポートに供給する構成であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−180655(P2011−180655A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41780(P2010−41780)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】