説明

操舵トルク検出装置、操舵トルク検出方法及び電動パワーステアリング装置

【課題】トルクセンサを用いずに操舵トルクを検出することができる操舵トルク検出装置及び操舵トルク検出方法、並びにトルクセンサを複数設けることなく2重系を構築することができる電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】モータ回転角センサ13の検出信号S1の周期と操舵角センサ18の検出信号S2との周期をそれぞれカウントし、それぞれの絶対角度を算出する。そして、これらの絶対角度の相対角度から操舵トルクT0を算出する。算出した操舵トルクT0とトルク検出値Tiとを比較することで、トルクセンサ3の異常を検出し、トルクセンサ3の正常時にはトルク検出値Tiを用いて操舵補助制御を行い、トルクセンサ3の異常発生時には、トルク検出値Tiに代えて操舵トルクT0を用いて操舵補助制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出装置及び操舵トルク検出方法、並びに操舵系に操舵補助力を付与する電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、操舵トルク検出用の2つのトルクレゾルバと、モータ回転角センサとしてのモータレゾルバとを備える電動パワーステアリング装置において、トルクレゾルバとモータレゾルバとの検出信号に基づいて、ステアリングホイールの絶対位置を検出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、操舵トルク検出用の2つのトルクレゾルバ(第1回転角センサ、第2回転角センサ)と、モータ回転角センサとしてのモータレゾルバ(第3回転角センサ)とを備える電動パワーステアリング装置において、これら3つのレゾルバで検出した回転角に基づいて第1回転角センサが正常であると判断した場合には、第1回転角センサによる回転角をステアリングホイールによる操舵角とし、第1回転角センサが異常であると判断した場合には、第1回転角センサによる回転角に代えて、第2回転角センサによる回転角をステアリングホイールによる操舵角するものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3789791号公報
【特許文献2】特許第3891288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動モータによって操舵力をアシストする電動パワーステアリング装置では、トルクセンサ等で検出した操舵トルクに基づいてアシスト力を決定し、電動モータを駆動制御するのが一般的であるが、トルクセンサの異常は操舵に大きな影響を与えるため、2重系を構築することが望ましい。しかしながら、上記各特許文献に記載の技術にあっては、上記2重系が構築されていない。当該2重系を構築するためには、トルクセンサを2つ(操舵トルク検出用のレゾルバを2組)設ける必要があり、コストが嵩む。
そこで、本発明は、トルクセンサを用いずに操舵トルクを検出することができる操舵トルク検出装置及び操舵トルク検出方法、並びにトルクセンサを複数設けることなく2重系を構築することができる電動パワーステアリング装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る操舵トルク検出装置は、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサと、減速機を介してステアリングシャフトに駆動連結された電動モータと、前記電動モータの回転角を検出するモータ回転角センサと、前記操舵角センサの検出信号と前記モータ回転角センサの検出信号とに基づいて、操舵トルクを算出する操舵トルク算出手段と、を備えることを特徴としている。
このように、操舵角センサとモータ回転角センサとを用いて操舵トルクを算出することができるので、トルクセンサを用いずに操舵トルクを検出することができる。
【0006】
また、上記において、前記操舵トルク算出手段は、前記操舵角センサの検出信号に基づいて、ステアリングシャフトの回転角を絶対角度で算出する第1の絶対角度算出手段と、前記モータ回転角センサの検出信号と前記減速機の減速比とに基づいて、ステアリングシャフトの回転角を絶対角度で算出する第2の絶対角度算出手段と、を備え、前記第1の絶対角度算出手段で算出した絶対角度と前記第2の絶対角度算出手段で算出した絶対角度との差分に基づいて、操舵トルクを算出することを特徴としている。
このように、操舵角センサとモータ回転角センサとからそれぞれ算出したステアリングシャフトの絶対回転角度の相対角から操舵トルクを算出するので、比較的簡易な構成で操舵トルクを算出することができる。
【0007】
また、本発明に係る操舵トルク検出方法は、操舵角センサでステアリングホイールの操舵角を検出し、モータ回転角センサで減速機を介してステアリングシャフトに駆動連結された電動モータの回転角を検出し、前記操舵角センサの検出信号と前記モータ回転角センサの検出信号とに基づいて、操舵トルクを算出することを特徴としている。
このように、操舵角センサとモータ回転角センサとを用いて操舵トルクを算出することができるので、トルクセンサを用いずに操舵トルクを検出することができる。
【0008】
さらに、本発明に係る電動パワーステアリング装置は、操舵系に運転者の操舵負担を軽減する操舵補助力を付与する電動パワーステアリング装置であって、前記請求項1又は2に記載の操舵トルク検出装置と、ステアリング機構に入力される操舵トルクを検出するトルクセンサと、前記操舵トルク検出装置で検出した操舵トルク及び前記トルクセンサで検出した操舵トルクの何れか一方に基づいて、前記操舵補助力を付与すべく前記電動モータを駆動制御するモータ制御手段と、を備えることを特徴としている。
このように、操舵角センサとモータ回転角センサとを用いて算出した操舵トルク及びトルクセンサで検出した操舵トルクの何れか一方に基づいて操舵補助制御を行うので、例えば信頼性の高い方の操舵トルク値を用いて操舵補助制御を行うことができるなど、安定した制御を行うことができる。
【0009】
また、上記において、前記操舵トルク検出装置で検出した操舵トルクと前記トルクセンサで検出した操舵トルクとを比較して、前記トルクセンサの異常を検出する異常検出手段を備え、前記モータ制御手段は、前記異常検出手段で前記トルクセンサの異常を非検出であるとき、前記トルクセンサで検出した操舵トルクに基づいて前記電動モータを駆動制御し、前記異常検出手段で前記トルクセンサの異常を検出したとき、前記操舵トルク検出装置で検出した操舵トルクに基づいて前記電動モータを駆動制御することを特徴としている。
【0010】
このように、操舵角センサとモータ回転角センサとを用いて算出した操舵トルクとトルクセンサで検出した操舵トルクとを比較することで、トルクセンサで検出した操舵トルクが異常値を示していることを検知することができる。すなわち、操舵補助制御用のトルクセンサとは別に異常検出用のトルクセンサを設けることなく、操舵補助制御用のトルクセンサの異常を検知することができる。そして、トルクセンサに異常が発生した場合であっても、操舵補助制御を継続し電動モータによる操舵補助力の付与を可能とすることができる。このように、トルクセンサを複数設けることなく2重系を構築することができ、運転者に安定した操舵感を与えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の操舵トルク検出装置及び操舵トルク検出方法では、操舵角センサの検出信号とモータ回転角センサの検出信号とに基づいて操舵トルクを算出することができるので、トルクセンサを用いずに操舵トルクを検出することができる。
したがって、上記操舵トルク検出装置を備える電動パワーステアリング装置では、操舵トルク検出装置で算出した操舵トルクを用いて、操舵補助制御用のトルクセンサの異常を検知することができると共に、トルクセンサの異常を検知した場合には、操舵トルク検出装置で算出した操舵トルクを用いて操舵補助制御を継続することができ、トルクセンサを複数設けることなく2重系を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明における操舵トルク検出装置を備える電動パワーステアリング装置を示す全体構成図である。
【図2】コントローラの構成を示すブロック図である。
【図3】センサ出力波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(構成)
図1は、本発明における操舵トルク検出装置を備える電動パワーステアリング装置を示す全体構成図である。
図中、符号1は、ステアリングホイールであり、このステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が入力軸2aと出力軸2bとを有するステアリングシャフト2に伝達される。このステアリングシャフト2は、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端はトルクセンサ3を介して出力軸2bの一端に連結されている。これら入力軸2a及び出力軸2b間には図示しないトーションバーが介装されている。また、入力軸2aには、ステアリングホイール1の舵角を検出する操舵角センサ18が配設されている。
【0014】
そして、出力軸2bに伝達された操舵力は、ユニバーサルジョイント4を介してロアシャフト5に伝達され、さらに、ユニバーサルジョイント6を介してピニオンシャフト7に伝達される。このピニオンシャフト7に伝達された操舵力はステアリングギヤ8を介してタイロッド9に伝達され、図示しない転舵輪を転舵させる。ここで、ステアリングギヤ8は、ピニオンシャフト7に連結されたピニオン8aとこのピニオン8aに噛合するラック8bとを有するラックアンドピニオン形式に構成され、ピニオン8aに伝達された回転運動をラック8bで直進運動に変換している。
【0015】
ステアリングシャフト2の出力軸2bには、操舵補助力を出力軸2bに伝達する操舵補助機構10が連結されている。この操舵補助機構10は、出力軸2bに連結された減速ギヤ11と、この減速ギヤ11に連結されて操舵系に対して操舵補助力を発生する電動モータ12とを備えている。すなわち、電動モータ12は、減速ギヤ11を介してステアリングシャフト2の出力軸2bに駆動連結されている。
【0016】
トルクセンサ3は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介装した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を例えばポテンショメータで検出するように構成されている。このトルクセンサ3から出力されるトルク検出値Tiは、コントローラ15に入力される。
【0017】
コントローラ15には、トルク検出値Tiの他に、電動モータ12に付設されたモータ回転角センサ13の検出信号S1が入力される。ここで、モータ回転角センサ13としては、例えばレゾルバや磁気センサ、光学センサ等、角度を検知可能なものを用いることができる。また、コントローラ15には、操舵角センサ18の検出信号S2と車速センサ16の検出信号Vも入力される。ここで、車速センサ16は、図示しない各車輪の回転速度、所謂車輪速度Vwj(j=FL,FR,RL,RR)を検出し、例えば、各車輪速度Vwjのうち、非駆動輪の左右輪速度の平均値から車速Vを算出し出力する。
【0018】
そして、コントローラ15は、モータ回転角センサ13の検出信号S1に基づいてステアリングシャフト2の回転角を絶対角度で算出すると共に、舵角センサ18の検出信号S2に基づいてステアリングシャフト2の回転角を絶対角度で算出する。そして、検出信号S1に基づいて算出した絶対角度(モータ角度センサ絶対角度)θと、検出信号S2に基づいて算出した絶対角度(舵角センサ絶対角度)δとの差分に基づいて、操舵トルクT0を算出する。このとき、算出した操舵トルクT0とトルク検出値Tiとを比較することで、トルク検出値Tiが異常値を示しているか否かを判定し、トルクセンサ3の異常を検知する。
【0019】
コントローラ15は、トルクセンサ3に異常が発生していない正常時には、トルク検出値Ti及び車速Vに応じた操舵補助力を操舵系に付与する操舵補助制御を行う。具体的には、上記操舵補助力を電動モータ12で発生するための操舵補助トルク指令値を公知の手順で算出し、算出した操舵補助トルク指令値とモータ電流検出値とにより、電動モータ12に供給する駆動電流をフィードバック制御する。一方、トルクセンサ3に異常が発生している異常発生時には、トルク検出値Tiに代えて、モータ回転角センサ13の検出信号S1と舵角センサ18の検出信号S2とに基づいて算出した操舵トルクT0を用いて、操舵補助制御を行う。
【0020】
図2は、コントローラ15の具体的構成を示すブロック図である。
コントローラ15は、モータ角度センサ絶対角度算出部21、舵角センサ絶対角度算出部22、操舵トルク算出部23、トルクセンサ異常検出部24、切換部25、電流指令値算出部26及びモータ駆動部27を備える。
モータ角度センサ絶対角度算出部21は、モータ回転角センサ13の検出信号S1に基づいて、モータ角度センサ絶対角度θを算出する。モータ回転角センサ13からは、ステアリングシャフト1回転当たり所定周期のSin信号およびCos信号の2相信号が出力される。モータ角度センサ絶対角度算出部21は、Sin信号およびCos信号から電気角を算出し、周期をカウントすることによって、モータ角度センサ絶対角度θを検出することができる。
【0021】
ステアリングシャフト1回転におけるモータ回転角センサ13の出力周期n1は、次式によって表される。
1=n0×Z2/Z1 ………(1)
ここで、n0はモータ1回転におけるモータ回転角センサ13の出力周期、Z1は電動モータ12に連結される減速ギヤ11の歯数、Z2はステアリングシャフト2上に固定される減速ギヤ11の歯数である。
例えば、n0=3、Z1=2、Z2=37とすると、n1=55.5となる。すなわち、この場合、図3の細線に示すように、ステアリングシャフト1回転(360°)で55.5周期のモータ角度センサ出力(検出信号S1)が得られることになる。
【0022】
ここで、図3は、モータ回転角センサ13及び操舵角センサ18のセンサ出力波形の一例を示す図である。図3において、縦軸は各センサ出力である検出信号S1,S2の電圧のレベル、横軸はステアリングシャフト2の回転角を示している。検出信号S1,S2は、横軸と直角をなすように形成された直角三角形が複数連なったノコギリ刃状の波形として現われる。
【0023】
舵角センサ絶対角度算出部22は、舵角センサ18の検出信号S2に基づいて、舵角センサ絶対角度δを算出する。舵角センサ18からは、ステアリングシャフト1回転当たり所定周期n2のSin信号およびCos信号の2相信号が出力される。舵角センサ絶対角度算出部22は、Sin信号およびCos信号から電気角を算出し、周期をカウントすることによって、舵角センサ絶対角度δを検出することができる。
例えば、n2=3とすると、図3の太線に示すように、ステアリングシャフト1回転(360°)で3周期の舵角センサ出力(検出信号S2)が得られることになる。
【0024】
操舵トルク算出部23は、モータ角度センサ絶対角度算出部21で算出した絶対角度θと、舵角センサ絶対角度算出部22で算出した絶対角度δとの差分(相対角度)を算出し、これを所要レベルまで増幅するなどして操舵トルクT0とする。算出した操舵トルクT0は、トルクセンサ異常検出部24に出力すると共に、切換部25の一方の入力端子に出力する。
【0025】
トルクセンサ異常検出部24は、操舵トルク算出部23で算出した操舵トルクT0とトルクセンサ3で検出したトルク検出値Tiとを比較することにより、トルクセンサ3の異常を検知する。ここでは、例えば操舵トルクT0とトルク検出値Tiとの差分が零を含む許容範囲内であるか否かを判定し、許容範囲内である場合にはトルク検出値Tiが正常値を示しているとして、トルクセンサ3は正常であると判断する。一方、上記差分が許容範囲外である場合にはトルク検出値Tiが異常値を示しているとして、トルクセンサ3に異常が発生していると判断する。そして、トルクセンサ3が正常であると判断した場合には、切換部25に対して異常検出フラグFlg=0を出力し、トルクセンサ3に異常が発生していると判断した場合には、切換部25に対して異常検出フラグFlg=1を出力する。
【0026】
切換部25は、2つの入力端子と1つの出力端子とを有する。2つの入力端子のうち一方の端子には、上述したように操舵トルクT0が入力され、他方の端子には、トルクセンサ3で検出したトルク検出値Tiが入力される。そして、トルクセンサ異常検出部24からFlg=0が入力されているときは、切換スイッチを実線に示す状態として、トルク検出値Tiを操舵トルクTとして出力端子から出力する。一方、トルクセンサ異常検出部24からFlg=1が入力されているときは、切換スイッチを破線に示す状態として、操舵トルクT0を操舵トルクTとして出力端子から出力する。出力端子から出力される操舵トルクTは、電流指令値算出部26に入力される。
【0027】
電流指令値算出部26は、切換部25から出力された操舵トルクTと、車速センサ16で検出した車速Vとに基づいて、公知の手順により操舵補助トルク指令値を算出すると共に、その操舵補助トルク指令値とモータ電流検出値とに基づいて、電動モータ12に供給する駆動電流をフィードバック制御するための電流指令値Irを算出する。
モータ駆動部27は、電流指令値算出部26から出力される電流指令値Irに基づいて、電動モータ12を通電制御する。
【0028】
なお、図2において、モータ角度センサ絶対角度算出部21、舵角センサ絶対角度算出部22及び操舵トルク算出部23で操舵トルク検出装置を構成している。そして、モータ角度センサ絶対角度算出部21が第2の絶対角度算出手段に対応し、舵角センサ絶対角度算出部22が第1の絶対角度算出手段に対応している。また、トルクセンサ異常検出部24が異常検出手段に対応し、切換部25、電流指令値算出部26及びモータ駆動部27がモータ制御手段に対応している。
【0029】
(動作)
次に、本実施形態の動作について説明する。
トルクセンサ3に異常が発生していない正常時には、トルクセンサ3で検出されたトルク検出値Tiと、モータ回転角センサ13の検出信号S1と舵角センサ18の検出信号S2とに基づいて算出された操舵トルクT0とが同等の値となる。そのため、コントローラ15は、トルクセンサ異常検出部24にてトルクセンサ3が正常であると判断し、異常検出フラグFlg=0を切換部25に対して出力する。そのため、切換部25は、トルクセンサ3で検出したトルク検出値Tiを操舵トルクTとして電流指令値算出部26に出力する。
【0030】
これにより、自車両がカーブ路を旋回走行中である場合、コントローラ15は、操舵トルクT(=トルク検出値Ti)及び車速Vに基づいて操舵補助トルク指令値を算出し、次いで、操舵補助トルク指令値とモータ電流検出値とに基づいて電流指令値Irを算出する。そして、算出された電流指令値Irによって電動モータ12が駆動制御され、電動モータ12の発生トルクが減速ギヤ11を介してステアリングシャフト2の回転トルクに変換されて、運転者の操舵力がアシストされる。
【0031】
このとき、操舵トルクT0は、モータ角度センサ絶対角度θと舵角センサ絶対角度δとの相対角度から算出される。すなわち、トルクセンサを用いずに、比較的簡易な手法で操舵トルクT0を算出することができる。そして、算出した操舵トルクT0とトルク検出値Tiとを比較することで、操舵補助制御用のトルクセンサ3の異常を検知することができる。したがって、異常検出用にトルクセンサを新たに設置することなく、操舵補助制御用のトルクセンサ3の異常を検知することができる。
【0032】
この状態でトルクセンサ3に異常が発生すると、トルク検出値Tiが異常値を示すことになるため、操舵トルクT0とトルク検出値Tiとの差分が許容範囲外となる。そのため、コントローラ15は、トルクセンサ異常検出部24にてトルクセンサ3に異常が発生していると判断し、異常検出フラグFlg=1を切換部25に対して出力する。すると、切換部25は、操舵トルク算出部23で算出した操舵トルクT0を操舵トルクTとして電流指令値算出部26に出力する。これにより、コントローラ15は、操舵トルクT(=操舵トルクT0)及び車速Vに基づいて操舵補助制御を行う。
このように、トルクセンサ3に異常が発生している場合には、トルク検出値Tiに代えて操舵トルクT0を用いることで、操舵補助制御を継続させることができる。したがって、トルクセンサを複数設けることなく、安価な構成で2重系を構築することができる。
【0033】
(効果)
上記実施形態では、操舵角センサの検出信号とモータ回転角センサの検出信号とに基づいて操舵トルクを算出することができるので、トルクセンサを用いずに操舵トルクを検出することができる。このように、一般的な車両制御において利用される操舵角センサと、操舵補助制御における各種補償処理等で利用されるモータ回転角センサとを用いて操舵トルクを検出することができるので、操舵トルク検出用に特別なセンサを設置する必要がない。
【0034】
また、操舵角センサの検出信号とモータ回転角センサの検出信号とに基づいて、それぞれステアリングシャフトの回転角を絶対角度で算出し、これらの相対角度から操舵トルクを算出するので、適切な操舵トルク値を得ることができる。また、絶対角度の算出に際し、センサ出力の周期をカウントする方法を採用するので、比較的簡易に絶対角度の算出及び操舵トルクの算出を行うことができる。
【0035】
さらに、操舵角センサの検出信号とモータ回転角センサの検出信号とに基づいて算出した操舵トルクと、トルクセンサで検出したトルク検出値とを比較することで、トルク検出値が異常値となっていることを検知することができる。すなわち、異常検出用のトルクセンサで検出したトルク検出値との比較で操舵補助制御用のトルクセンサで検出したトルク検出値の異常を検知する構成ではないため、操舵補助制御用のトルクセンサとは別に異常検出用のトルクセンサを新たに設置する必要がない。したがって、その分のコストを削減することができる。
【0036】
また、トルクセンサに異常が発生していない正常時には、トルクセンサで検出したトルク検出値を用いて操舵補助制御を行い、トルクセンサに異常が発生している異常発生時には、トルク検出値に代えて、操舵角センサの検出信号とモータ回転角センサの検出信号とに基づいて算出した操舵トルクを用いて操舵補助制御を行うことができる。したがって、トルクセンサに異常が発生した場合であっても、操舵補助制御を継続し電動モータによる操舵補助力の付与を可能とすることができる。このように、トルクセンサを複数設けることなく2重系を構築することができ、運転者に安定した操舵感を与えることができる。
【0037】
(変形例)
なお、上記実施形態においては、ステアリング角度の絶対角度算出に際し、各センサの出力信号の周期をカウントする方法を採用する場合について説明したが、例えば、4輪の車輪速からそれぞれのセンサの周期を推定する方法を採用することもできる。
【符号の説明】
【0038】
1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、3…トルクセンサ、10…操舵補助機構、11…減速ギヤ、12…電動モータ、13…モータ回転角センサ、15…コントローラ、16…車速センサ、18…操舵角センサ、21…モータ角度センサ絶対角度算出部、22…舵角センサ絶対角度算出部、23…操舵トルク算出部、24…トルクセンサ異常検出部、25…切換部、26…電流指令値算出部、27…モータ駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサと、
減速機を介してステアリングシャフトに駆動連結された電動モータと、
前記電動モータの回転角を検出するモータ回転角センサと、
前記操舵角センサの検出信号と前記モータ回転角センサの検出信号とに基づいて、操舵トルクを算出する操舵トルク算出手段と、を備えることを特徴とする操舵トルク検出装置。
【請求項2】
前記操舵トルク算出手段は、
前記操舵角センサの検出信号に基づいて、ステアリングシャフトの回転角を絶対角度で算出する第1の絶対角度算出手段と、
前記モータ回転角センサの検出信号と前記減速機の減速比とに基づいて、ステアリングシャフトの回転角を絶対角度で算出する第2の絶対角度算出手段と、を備え、
前記第1の絶対角度算出手段で算出した絶対角度と前記第2の絶対角度算出手段で算出した絶対角度との差分に基づいて、操舵トルクを算出することを特徴とする請求項1に記載の操舵トルク検出装置。
【請求項3】
操舵角センサでステアリングホイールの操舵角を検出し、
モータ回転角センサで減速機を介してステアリングシャフトに駆動連結された電動モータの回転角を検出し、
前記操舵角センサの検出信号と前記モータ回転角センサの検出信号とに基づいて、操舵トルクを算出することを特徴とする操舵トルク検出方法。
【請求項4】
操舵系に運転者の操舵負担を軽減する操舵補助力を付与する電動パワーステアリング装置であって、
前記請求項1又は2に記載の操舵トルク検出装置と、
ステアリング機構に入力される操舵トルクを検出するトルクセンサと、
前記操舵トルク検出装置で検出した操舵トルク及び前記トルクセンサで検出した操舵トルクの何れか一方に基づいて、前記操舵補助力を付与すべく前記電動モータを駆動制御するモータ制御手段と、を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記操舵トルク検出装置で検出した操舵トルクと前記トルクセンサで検出した操舵トルクとを比較して、前記トルクセンサの異常を検出する異常検出手段を備え、
前記モータ制御手段は、前記異常検出手段で前記トルクセンサの異常を非検出であるとき、前記トルクセンサで検出した操舵トルクに基づいて前記電動モータを駆動制御し、前記異常検出手段で前記トルクセンサの異常を検出したとき、前記操舵トルク検出装置で検出した操舵トルクに基づいて前記電動モータを駆動制御することを特徴とする請求項4に記載の電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−228922(P2012−228922A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97636(P2011−97636)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】