説明

攪拌式管状反応器およびその使用方法

独立して回転しても良い同一線上の複数の攪拌シャフトがある攪拌式管状反応器。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ポリマーを生産するための複数のよく知られた方法がある。それらの例には、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、およびバルク重合が挙げられる。これらのそれぞれが、連続またはバッチ重合法のいずれかで行われる。連続重合法、特に連続バルク重合法は、一般にその対応するバッチ重合法を凌ぐ資源およびエネルギーの節減を可能にする。
【0002】
プラグ流れ反応器は、その中で連続バルクまたは連続溶液重合を行うための容器の一種である。プラグ流れ反応器では反応物は、反応器の入力端から出力端(当業界で時に「採収端」とも呼ばれる)へ流れる。プラグ流れ反応器では反応物の滞留時間分布は一般に最小限にされ、しばしば「プラグ流れ」または「ピストン流」と呼ばれるものをひき起す。理想的なプラグ流れ反応器では反応物の流れに垂直に取ったいずれの断面試料も反応器中で均一な滞留時間を有する。もちろん現実の世界では反応器中でこの理想からの若干の変動が許容され、それらもやはり「プラグ流れ」反応器とみなされる。
【0003】
プラグ流れ反応器の一種が「攪拌式管状反応器」(また当業界で「攪拌式管形反応器」としても知られる)である。大部分の攪拌式管状反応器は、反応室内に軸攪拌機が配置されている。
【0004】
攪拌式管状反応器中で行われる連続重合は複数の欠点を有する可能性がある。例えば停滞した流体ポケット(すなわち静止したままのそれら反応性流体部分)の形成が、反応容器のある領域で起こる傾向がある。これらの停滞した流体ポケットは、均一でない滞留時間および滞留時間分布の広がりにつながる恐れがある。さらに高粘度のポリマーが反応室内の表面に付着する傾向があり、反応器のよごれにつながる恐れがある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において本発明は、反応室と、この反応室と流体連通した供給口と、この反応室と流体連通した採収口と、第一および第二端部を有する第一シャフトであって、この第一シャフトの第一端部が室内に延出し、かつこの第一シャフトがそれから延びる少なくとも1個の混合部材を有する、第一シャフトと、第一および第二端部を有する第二シャフトであって、この第二シャフトの第一端部が反応室内に延出し、その第二シャフトが第一シャフトとほぼ同一線上にあり、かつその第二シャフトがそれから延びる少なくとも1個の混合部材を有する、第二シャフトと、この第一シャフトと回転係合する第一駆動機構と、この第二シャフトと回転係合する第二駆動機構とを備えた攪拌式管状反応器に関する。
【0006】
別の態様において本発明は、重合可能なモノマー、開始剤、および溶媒を含む反応混合物を本発明による攪拌式管状反応器の供給口に導入する段階と、このモノマーを重合する段階と、この反応混合物が本質的にプラグ流れの様式でシリンダ状の室を通って軸方向に移動するにつれて、その反応混合物を半径方向に混合して、重合された材料を得る段階とを含む連続重合方法に関する。
【0007】
さらなる態様において本発明は、反応室と、プラグ流れを与えるための手段と、その反応室の軸方向の少なくとも2つの別個のセグメント中で差動攪拌を与えるための手段とを備える反応器を提供する。
【0008】
本発明の幾つかの実施形態は、連続重合工程で狭い多分散性を有するポリマー材料を調製するのに、連続重合工程中の反応器のよごれを減らすのに、またはその両方に役立つ。
【0009】
本発明の上記概要は、本発明のそれぞれ開示した実施形態またはあらゆる具現化について記述することを意図するものではない。下記の図および詳細な説明は、例示的実施形態についてより詳細に例証する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明による攪拌式管状反応器は、異なる速度で、異なる方向へ、またはその両方で攪拌することができる2つ以上のセグメントを有する。本発明による攪拌式管状反応器の実施形態の一例を図1に示す。
【0011】
次に図1を参照すると、より詳細には図3に示すように攪拌式管状反応器100は、ほぼ円筒形の反応室140を形成するように接合された一連のシリンダ110を有する。第一および第二シャフト111、113が、攪拌式管状反応器100の反応室140中に配置される。第一および第二シャフト111、113はそれぞれ反応室140中に延出し、互いに近接して終端をなす(例えば、図3に示すシャフト304および305を参照)。図1に示すように第一シャフト111は第一攪拌部分120の全長に及び、かつ第二シャフト113は第二攪拌部分130の全長に及ぶ。第一および第二シャフト111、113はそれぞれ反応室140から外側へ延出し、それぞれ第一および第二駆動機構101、109と回転係合する。
【0012】
第一および第二シャフト111、113のそれぞれが、それから放射状に延びるそれぞれ複数個の櫂112、116を有する。第一および第二シャフト111、113は、シャフト111、113を回転させることができるそれぞれの駆動機構101、109と回転係合する。2つの別個の駆動機構101、109および2本のシャフト111、113を有することによって、図1に示す本発明の実施形態は、第一攪拌領域120における攪拌が第二攪拌領域130における攪拌と異なることを可能にする。これにより、例えば第一攪拌領域120中の反応混合物の粘度が、第二攪拌領域130中の反応混合物の粘度よりもずっと低い場合、有利なことがある。
【0013】
別の実施形態ではこの第一および第二シャフトはまた、その第一および第二シャフトがそれぞれ第一および第二駆動機構と回転係合している限り、反応室内に完全に収容されてもよい。
【0014】
反応室は、1リットルの何分の一から数百リットル以上までの範囲にわたる容積を有することができる。図1のようなシリンダから作られる場合、それらシリンダは、例えばガラス、強化ガラス、ステンレス鋼、あるいは、例えばその材料が特定の反応混合物と非反応性であるかどうか、その材料を不活性化する可能性のある開始剤(例えば大気中のO2およびH2O)を反応室から排除することができるかどうか、熱を伝達することができるかどうか、または加圧もしくは減圧に耐えることができるかどうかなどの要因を勘案してその適否に応じて例えば選択されるガラス内張り鋼または他の材料を含むことができる。特に好適な材料には、316Lステンレス鋼および低膨張率型ガラス(例えば、ニューヨーク州コーニングのコーニング・グラス・ワークス(Corning Glass Works,Corning,New York)から入手できるパイレックス(登録商標)(PYREX(登録商標))ガラス)が挙げられる。
【0015】
これらシリンダ110はフランジ108によって連結することができる。さらにフランジ108と一緒にまたはその代わりに、様々な種類のガスケット(図1に示されない)を用いてこれらシリンダ110を連結することもできる。攪拌式管状反応器100は入口102および採収口114を有する。
【0016】
図1に例示する実施形態では入口102および採収口114は便利にはフランジ108上に位置するが、その入口および採収口が反応室と流体連通している限り他の実施形態も考えられる。
【0017】
攪拌式管状反応器100は、水平にまたは傾斜して向きを定めることができる。具体的には攪拌式管状反応器100は、攪拌式管状反応器中のいかなる気体も確実に逃がすことができるようにその入力端からその出力端へ概して上向きに(すなわち重力に逆らって)傾斜させることができる。
【0018】
図2に示す別の実施形態では反応器200は、異なる長さの複数個のシリンダ210を備える。異なる長さの複数個のシリンダの使用は、様々な長さのブロックを含むブロックコポリマーの調製を可能にすることができる。最初の反応混合物を入口202を介して加える。追加のモノマーまたは他の反応性の種を、分析用受け口207もまた備えたフランジ208におけるフランジの各入口206を介して加えることができる。反応混合物のプラグ流れが一定の速度で反応室を通って流れる場合、その反応時間はそれらシリンダ210の長さを変えることによって変わる。反応生成物は採収口214を通って得ることができる。
【0019】
反応室240の設計は、本発明から逸脱することなく変えることができる。このような設計の違いには、例えばそれらシリンダの長さ、反応室の形状、および反応室の容積が含まれる。所与の重合系に対するこのような変数の最適化は、本発明によって検討される。
【0020】
図2はまた、第一攪拌部分220の全長に及ぶ第一シャフト211と、第二攪拌部分230の全長に及ぶ第二シャフト213とを示す。第一シャフト211は第一駆動機構201と回転係合し、また第二シャフト213は第二駆動機構209と回転係合する。第一シャフト211はそれから延びる複数個の櫂112を有し、また第二シャフト213はそれから延びる複数個の櫂116を有する。
【0021】
図4に示す別の例示的実施形態では攪拌式管状反応器400は反応室403を有する。反応室403は、単一シリンダ反応室である。反応室は入口401および採収口410を有する。第一シャフト404は反応室403中に延在する。第一シャフト404は、それから延びる少なくとも1個の第一シャフトの櫂406を有する。第二シャフト405は反応室403中に延在する。第二シャフト405は、それから延びる少なくとも1個の第二シャフトの櫂411を有する。第一駆動機構409が第一シャフト404と回転係合し、また第二駆動機構408が第二シャフト405と回転係合する。第一および第二シャフト404、405は、異なる相対速度で、かつ/または異なる方向に回転することができる。
【0022】
図4はまた、ジャケット型(シェル・イン・チューブ型)攪拌式管状反応器400を示す。反応室403は温度ジャケット412によって取り囲まれる。例えば水またはエチレングリコールなどの熱媒液が、入口414および出口416を介して温度ジャケット412の至るところを循環することができる。これにより反応温度の制御が可能になる。
【0023】
本明細書中で用いられる「反応室」とは、その形成方法とは関係なく連続通路を意味する。例えば反応室は、ステンレス鋼から穴あけすることもでき、吹込みガラスにより形成することもでき、また成形ポリマーにより形づくることもできる。反応室は曲がっていてもよく、すなわち内腔の長さ方向の断面の内壁部分は非直線であってもよい。例示の実施形態では反応室は曲がっておらず、すなわち反応室の長さ方向の断面の内壁部分は直線である(すなわち反応室は実質的に管状である)。
【0024】
これらシャフトは独立に、例えば不活性金属、例えばステンレス鋼を含めた様々な材料を含むことができる。当業技術者は、その対応する反応混合物に適合するように材料を合わせることができる。例えばこの攪拌式管状反応器中でアルキルリチウムなどの腐食性開始剤を使用する場合、シャフトは耐腐食性ステンレス鋼、例えば316Lステンレス鋼を含むことができる。本発明の文脈では攪拌式管状反応器の少なくとも一部(およびその対応するハウジング)は、化学線(例えば、可視および/または紫外電磁放射線)に対して不透明または透明の任意の材料を含むことができることもまた理解される。したがって反応混合物を、ある種の電磁放射線、具体的には例えば紫外線、可視光、またはこれら2種類の組合せなどの化学線に曝す(またはそれから保護する)ことができる。語句「化学線に対して透明」とは、その反応室と無関係ないかなる線源からのものでも化学線の少なくとも一部がその反応混合物に達することができることを意味する。
【0025】
図3を参照すると結合器307は反応室303内部に位置し、第一シャフト304と係合する第一端部307aおよび第二シャフト305と係合する第二端部307bを有する。結合器307は、反応室303内で第一および第二シャフト304、305に構造的安定性を与える。シャフト304、305は、結合器307と無関係に回転してもよく、または結合器307と共に回転してもよく、その場合結合器307の第一および第二端部307a、307bは独立に回転することができる。結合器307は、その材料が曝される物理的(例えば温度およびトルク)および化学的(例えば反応物、溶媒、および開始剤)環境を勘案して任意の適切な材料を含むことができる。好適な材料には、例えばポリマー材料(例えばフルオロポリマー)および金属(例えばステンレス鋼)が挙げられる。
【0026】
これらシャフトは、その攪拌式管状反応器の側面とほぼ平行に延在する。その攪拌式管状反応器が曲がっていてもよいことは本発明において検討されるが、その反応器もまた実質的には円筒形である。
【0027】
本明細書中で例示する特定の実施形態は2本のシャフトを有するが、本発明は3本以上のシャフトを有することが可能であることが容易に理解できるはずである。このような追加のシャフトは、例えばその第一および第二シャフトと平行またはほぼ平行であってもよく、その第一および第二シャフトと無関係に回転できてもよく、またその第一および第二シャフトと同一線上またはほぼ同一線上に配置されてもよい。
【0028】
差動攪拌を達成するために反応器は第一および第二駆動機構とそれぞれ回転係合する第一および第二シャフトを備えることができる。この第一および第二駆動機構は、例えばモータおよびギアボックスを含むことができる。駆動機構の厳密な性質は、その駆動機構がシャフトに回転運動を与えることができる限り、本発明にとって重要ではない。その第一および第二駆動機構がモータである場合、可変速モータが特に好都合なことがある。
【0029】
攪拌式管状反応器を通るプラグ流れを本質的に維持することを助けるために混合部材は、その混合部材上、シャフト上、および/または反応室内側への反応混合物の付着を最少限にするように設計することができる。これら混合部材はまた、任意の他の望ましい流動または反応条件の特徴を実現するように設計することもできる。これらの設計上の選択はそれら固有の関連技術、例えば米国特許第3,630,688号明細書(タキグチ(Takiguchi)他)または同第5,145,255号明細書(シマダ(Shimada)他)でよく知られている。
【0030】
一実施形態においてこれらシャフトは、円筒形反応室内に延在する。これらシャフトは一般に反応室の中心またはその近傍(すなわち反応物の流れに垂直に取った任意の断面円の中心)に位置し、かつ反応室の内壁にほぼ平行である。
【0031】
使用時にこれら混合部材は、反応混合物を攪拌しかつ熱伝達を助ける。さらにこれら混合部材は、それらが管を通る反応混合物を押しやるのを助けるように設計することができる。
【0032】
これら混合部材用の任意選択の設計には、例えば長方形、鍬形、楕円形、または凧形の様々な形状の櫂が挙げられ、また例えば孔部または特殊形状の縁部が挙げられる。他の混合部材の設計にはスクリュー式のものが含まれる。これら混合部材は、例えば所与の流動特性、必要な耐薬または耐熱性、加えられるせん断、およびシャフト材料との適合性を勘案した任意の適切な材料を含むことができる。有用な材料の例には、ステンレス鋼、フッ素系ポリマー、特にフッ化ゴムなどが挙げられる。
【0033】
本発明の攪拌式管状反応器は、入口および採収口を備える。
【0034】
使用時に、反応混合物は反応室と流体連通している入口(例えば、図1の入口102)を通じて反応室内に導入することができる。形成される任意の生成物、ならびに未反応の種、溶媒、または反応室中の任意の他の成分を、採収口(例えば、図1の採収口114)を通じて反応器から得ることができる。
【0035】
任意選択でフランジの一部または全部がさらに反応室と流体連通したフランジの入口(例えば、図1の106など)を備えることができる。フランジの入口は、例えば開始剤、モノマー、溶媒、またはこれらの配合物などの成分をその反応混合物に加える機会を与えることができる。
【0036】
このフランジはまた、分析用受け口(例えば図1の107など)を有することができる。この任意選択の分析用受け口は、後の分析用の反応混合物のアリコートの取出し、反応室の様々な箇所における反応混合物の他の種類の監視(その場での監視を含めて)、またはその両方を可能にすることができる。例えば熱電対により測定される反応温度のような特性を監視することができる。一実施形態ではこのフランジの入口は、米国特許第6,887,433号明細書(マークス(Marx)他)に記載のような実質的に半径方向の混合を可能にするように設計することができる。
【0037】
攪拌の特定の速度および方向を、温度、溶媒、モノマー、ポリマー構造、固形分、および粘度を含めた所与の一組の反応条件に対して最適化することができる。さらに攪拌速度を、最適な加工結果をもたらすように最適化することができる。これらの加工結果には、例えば反応器のよごれを最少にすること、多分散性指数を下げること、またはこれら2つの組合せが含まれる。
【0038】
本明細書中で用いる攪拌速度は、シャフトの1分当たりの回転数すなわち「rpm」で測定される。攪拌の方向は、共通の基準点から見た場合、それらシャフトを一定した線に関して右回りに攪拌させるか、それとも左回りで攪拌させるかを指す相対的な用語である。例えば、一方のシャフトが100rpmで右回りに攪拌し、もう一方のシャフトが100rpmで左回りに攪拌する場合、たとえそれらが同じ絶対値の速度で攪拌するとしてもそれらは異なる方向に攪拌する。これら2本のシャフト間の攪拌速度の差は200rpmということになる。同様に、一方のシャフトが右回りに100rpmで攪拌し、もう一方のシャフトが右回りに225rpmで攪拌する場合、たとえそれらが同じ攪拌方向を有するとしてもそれらは異なる速度で攪拌する。これら2本のシャフト間の攪拌速度の差は125rpmということになる。
【0039】
幾つかの実施形態において、本発明は本発明による装置を用いてポリマー材料を調製する方法に関する。具体的には本発明は、重合可能なモノマー、開始剤系、および任意選択で溶媒を含む反応混合物を重合することを含む方法に関する。このモノマーおよび開始剤系は、リビング重合を起こしてもよい。
【0040】
用語「リビング重合」とは、連鎖停止または連鎖移動なしに或る仕組みを介して進行する連鎖重合を指す。理想的なリビング重合ではそのポリマー分子は、そのポリマー分子が反応室をあちこち移動するとき、リビング末端(すなわち反応部位)を維持する。リビング重合は、例えばカチオン、アニオン、およびフリーラジカル重合を含めた当業界で周知の任意の仕組みによって行うことができる。一般にはこの開始剤系は、モノマーの存在下で反応性の種(例えば、アニオン重合可能なモノマーの存在下でアニオン)を生じることができる。この溶媒系は、モノマー、開始剤系、および生成したポリマーの可動性を助長し、また部分的ヒートシンクとして働く。
【0041】
アニオン重合可能なモノマーの例には、例えばビニル芳香族類(スチレン系を含めた)、ジエン類、ビニルピリジン類、メタクリル酸アルキル類、エポキシド類(例えば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド)、オキシラン類、環状スルフィド類(例えばチイラン)、ラクトン類、ラクチド類、環状炭酸エステル類、ラクタム類、シクロシロキサン類(例えばヘキサメチルトリシロキサン)、アクリロニトリル、およびn−メタロセノファン類、およびアニオン重合可能な極性モノマー類が挙げられる。好適なビニル芳香族モノマーには、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−エチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、2,6−ジクロロスチレン、ビニルナフタレン、およびビニルアントラセンが挙げられる。重合性ジエンには、例えばイソプレン、イソプレン誘導体、ブタジエン、および1,3−ペンタジエンが挙げられる。アニオン重合可能な極性モノマーには、例えばビニルピリジンと、2−ビニルピリジンおよび4−ビニルピリジンを含めたビニルピリジン誘導体と、アクリル酸t−ブチルと、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸アリル、およびメタクリル酸グルシジルなどのメタクリル系モノマーとが挙げられる。
【0042】
本発明により生成することができるビニルピリジン材料は、よく知られている合成方法によって一般に合成される。例えば、ラクストン(Luxton)等の論文、Polymer 1978,19,1320およびクライン・J・W(Klein,J.W.)、ランプス・J・−P(Lamps,J,−P.)、グナノス・Y(Gnanous,Y.)、およびレンプ・P(Rempp,P.)の論文、Polymer 1991,32,2278を参照されたい。
【0043】
有用なアニオン重合可能なモノマーには、例えば複数の反応部位を有するものが挙げられる。例えば幾つかのモノマーは、少なくとも2個のアニオン重合可能な部位を有することができる。この種類のモノマーは分岐ポリマーを生成することができる。この種類のモノマーの加えられる量は本発明にとって重要ではない。幾つかの用途ではこのようなモノマーを所与の反応混合物の10モルパーセント未満含むことができる。何故ならば、より多くの量は分岐のほかに高度の架橋をひき起す傾向があるからである。
【0044】
アニオン重合可能なモノマーは、アニオン重合可能でない少なくとも1種類の官能基を含むことができる。このような官能基には、例えば縮合、遊離基結合、光分解結合、およびヒドロシリル化によって良く反応するものが挙げられる。
【0045】
重合温度は、例えば米国特許第6,448,353号明細書(ネルソン(Nelson)他)に記載の温度制御システムにより制御することができる。温度制御は、例えば温度に敏感なモノマーを使用する場合に有利なことがある。
【0046】
一般には開始剤系は、特定のモノマーまたはモノマー混合物に関して特に有用なものから選択されるべきである。例えば複数種類の開始剤系が、本明細書中で考察される例示のアニオン重合可能なモノマー系と相性がよい。これらの幾つかは、シェ(Hsieh)等の著、「アニオン重合:原理および実用例(Anionic Polymerization:Principles and Practical Applications)」第5および23章(ニューヨークのマーセル・デッカー(Marcel Dekker,New York)、1996)に要約されている。例えばビニルピリジンの場合、特に好適な開始剤には、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、ナフチルリチウム、フェニルリチウム、およびp−トリルリチウムが挙げられる。
【0047】
メタクリル酸エステル類のアニオン重合は、連鎖移動、開裂、および停止反応などの副反応を伴うことが多い。反応温度を下げることによって、または成長しているポリマー鎖末端を1,1’−ジフェニルエチレンで選択的に合成変性することによってこれらの現象を抑制して、より効率的なメタクリル酸の開始を生じさせることができる。
【0048】
リビング重合では開始剤対モノマーの比が、一般にその得られるポリマーの平均分子量を決定する。例えばブロックコポリマーを作る場合、後続のモノマー類を追加の開始剤なしに加えることができる。
【0049】
ブロックコポリマーは、少なくとも2種類の組成的に別個のセグメントを有するポリマーである。ブロックコポリマーの網羅的でないリストには、二元ブロックコポリマー、三元ブロックコポリマー、ランダムブロックコポリマー、および星型分岐コポリマーが含まれる。例えばABは、組成が異なるAブロックおよびBブロックからなる二元ブロックコポリマーである。ABAは、それらAブロックが組成的に同一だが、Bブロックとは異なる三元ブロックコポリマーである。ABCは、各ブロックの組成が異なるA,B、およびCからなる三元ブロックコポリマーである。
【0050】
溶媒を使用する場合、それは一般に重合中、その特定のモノマーと親和性があるように選択される。溶媒系には1種または複数種の溶媒を用いることができる。溶媒の量は本発明にとって重要ではない。ある例示的な状況では反応成分(下流で加えられる追加のモノマーを含めた)および得られた生成物を可溶化するように十分な溶媒が加えられる。
【0051】
その溶媒中のモノマーの濃度は、例えば反応系に応じて変えることができる。したがって幾つかの系では、その反応混合物の全重量を基準として最低10重量パーセントのモノマー濃度を有することができる。他の系はモノマーを反応混合物の全重量を基準として80重量パーセント未満の量、60重量パーセント未満の量、または更には50重量パーセント未満の量でさえ含有することができる。極性モノマーを使用する場合、適切な溶媒には、例えばベンゼン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、およびキシレンが挙げられる。ジアルキルエーテル類(例えばジエチルエーテル、ジブチルエーテル)、テトラヒドロフラン、またはテトラメチレンジアミンなどの助溶剤もまた、極性および非極性モノマー系の両方に対して用いることができる。
【0052】
ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、星型分岐コポリマー、または多分岐のホモ、ランダム、およびブロックコポリマー、ならびに末端官能基化ポリマーを本発明に従って製造することができる。
【0053】
末端官能基化した材料は、上記のような「リビング」重合を失活することができる反応性ハロゲンまたは不飽和基などの反応性基を含有する試薬を加えることによって合成することができる。例えばアニオン重合は、アミノ、ヒドロキシル、チオール、カルボキシル、またはアセチレンの官能基などの比較的酸性の陽子供与基を含有するモノマーの合成に容易には適用できない。これらの基は、アニオン重合の条件に対して安定であり、かつ後重合処理により容易に除去できる適切な保護基の使用によって保護されている場合、いったん官能性失活剤中に取り込まれたならば、含めることができる。好適な失活剤には、例えば酸素、水、水素、水蒸気、アルコール、ケトン、エステル、およびヒンダードフェノールが挙げられる。好適な官能性失活剤には、例えばクロロシラン類(ClSi(CH32N(CH32、ClSi(CH32OR、ClSi(CH32H)、1,3−ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、および1−(3−ブロモプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシシクロペンタンを挙げることができる。
【0054】
複数反応部位を有する失活剤を用いて2個のリビングポリマー鎖を結合することによって平均分子量を増大させることができる。アニオン重合に特に有用で適切な多官能性またはマルチサイト失活剤には、例えばフタル酸ジメチル、三塩化リン、メチルトリクロロシラン、四塩化ケイ素、ヘキサクロロジシラン、1,2,3−トリ(クロロメチル)ベンゼン、ジクロロジメチルシラン、ジブロモ−p−キシレン、ジクロロ−p−キシレン、ビス(クロロメチル)エーテル、ヨウ化メチレン、1,4−ジブロモ−2−ブテン、1,4−ジヨード−2−ブテン、および1,2−ジブロモエタンが挙げられる。
【0055】
これらの基本的な反応混合物成分に加えて、そのポリマー生成物の特性を改変することができる他の化合物をその反応に導入することができる。例えば1種または複数種の予形成ポリマー、不活性粘着付与剤、顔料、および充填剤を反応混合物に加えることができる。ポリマーの接着性(例えば、剥離およびせん断)または弾性率特性を、それぞれ粘着付与剤およびクレイ/シリカの添加によって改変することができる。
【0056】
任意選択でその反応混合物の1種または複数種の成分を攪拌式管状反応器に導入するに先立って精製することもできる。このような精製および送達は、米国特許第6,448,353号明細書(ネルソン他)に記載の方法に従って達成することができる。
【0057】
有利にはこれら攪拌式管状反応器は一般に、反応室の流れのない領域中または下流の櫂表面でしばしば起こる付着の傾向がない(または少なくとも従来の攪拌式管状反応器の設計と比べて付着速度が遅い)。このような望ましくない付着は、熱伝達の低下および/またはプラッギングおよび/または反応器のよごれをひき起す恐れがある。
【0058】
攪拌式管状反応器中の粘度は反応進路に沿って、例えば反応器の初期段階における1ミリパスカル・秒(1cp)から終端までには10,000,000ミリパスカル・秒(10,000,000cp)までの桁数の大きさだけ増す可能性がある。反応混合物の粘度が増すにつれて攪拌は益々困難になり、上記の反応器のよごれに付随する問題が発生する。櫂およびシャフトの攪拌速度の増加は、反応器のよごれを低減しかつ熱伝達を改善することができる。しかしながら攪拌速度の増加は、より低粘度領域では重大な悪影響を有する恐れがある。高攪拌速度下では、より低粘度領域がかなりの逆混合および不十分なプラグ流れの特徴のある(すなわち、かなりの量の軸方向混合が起こることがある)連続攪拌槽型反応器の特徴を見せる可能性がある。この逆混合が起こり、またプラグ流れの特徴が損なわれる場合、製品ポリマーの多分散性がしばしば増大する。多分散性とは、重量平均分子量を数平均分子量で割ったものを意味する。多分散性は、多分散性指数によって記録される。理想的なプラグ流れの場合、その多分散性指数は1.0である。しかし本明細書で分かるように、攪拌式管状反応器を含めた今なおプラグ流れ混合器として知られている混合器ではその理想的多分散性指数からの若干の逸脱が許容される。したがって本発明はまた、当業界には多分散性をできるだけ小さくする(すなわち、これらプラグ流れ混合器中で生成される製品ポリマーの1に近い多分散性指数の値を達成する)反応器および方法に対する必要性の存在を認める。
【0059】
多分散性を下げることは、均一な鎖長、すなわち三次元のナノスケールの形態に自己集合するようなブロックコポリマーでは、特に重要な特徴を生み出すことによってそのポリマー生成物を改良することができる。それらの相対的なブロックサイズは、どのような形態が創り出されるかを決定し、したがって均一な形態を得るためにすべてのブロックが同じ長さであることが不可欠であることがある。狭い多分散性はまた、そのブロックコポリマー系の秩序/無秩序転移の制御にとってきわめて重要である場合がある。
【0060】
本発明は本明細書中では特定の実施形態によって記述されるが、様々な修正、再配列、および置換を本発明の精神から逸脱することなくなすことができることは当業者にとって容易に明らかなはずである。したがって本発明の範囲は、本明細書に添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0061】
試験方法
分子量および多分散性
試料の平均分子量および多分散性は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)分析によって求めた。試料約25mgをテトラヒドロフラン(THF)10ミリリットル(mL)中に溶解して混合物を形成した。この混合物を0.2ミクロンのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製シリンジフィルターを用いて濾過した。次いでこの濾過した溶液約150マイクロリットル(μL)を、GPCシステムの一部であるクロマトグラフカラム(例えばマサチューセッツ州アマーストのポリマー・ラボラトリーズ(Polymer Laboratories,Amherst,MA)から入手できるピーエルゲル−ミックスド・B・カラム(PLGEL−MIXED B COLUMN))中に注入した。このGPCシステムはまた、自動試料採取器(例えばマサチューセッツ州ミルフォードのウォターズ・コーポレーション(Waters Corporation,Milford,MA)から入手できるウォターズ・717・オートサンプラ(WATERS 717 AUTOSAMPLER))も有する。このシステムを、流量約0.95mL/分で移動するTHF溶離液を用いて室温で操作した。屈折率検出器(例えばニューヨーク州グランドアイランドのジェー・エム・サイエンス・インコーポレーテッド(JM Science Inc.,Grand Island,NY)から入手できるエルマ・ERC−7525A・リフラクティブ・インデックス・ディテクタ(ERMA ERC−7525A REFRACTIVE INDEX DETECTOR))を用いて濃度変化を検出した。数平均分子量(Mn)および多分散性指数(PDI)の計算は、分子量6×106から600×106の範囲の狭い多分散性のポリスチレン対照を用いた較正方式に基づく。実際の計算は、処理ソフトウェア(例えばマサチューセッツ州アマーストのポリマー・ラボラトリーズから入手できるピーエル・キャリバ(PL CALIBER)ソフトウェア)により行った。
【0062】
ブロック濃度
ブロックコポリマー中の異なるブロックの濃度は、核磁気共鳴(NMR)分光分析により求めた。試料を重水素化クロロホルム中に濃度約10重量パーセントまで溶解し、500MHz1H−NMRスペクトロメーター(例えばカリフォルニア州パロアルトのヴァリアン・インコーポレーテッド(Varian Inc.,Palo Alto,CA)から入手できるユニティ・500MHz・1H−NMR・スペクトロメーター(UNITY 500MHz 1H−NMR SPECTROMETER))中に入れた。ブロック濃度は、固有ブロック成分スペクトルの相対的面積から計算した。
【0063】
別段の指定がない限り、実施例および残りの明細書中のすべての部数、割合、比などは重量単位であり、これら実施例中で使用するすべての試薬は、例えばミズーリ州セントルイスのシグマ・オールドリッチ・カンパニー(Sigma−Aldrich Company,Saint Louis,Missouri)などの一般の化学薬品供給業者から調達されるかまたは利用可能であり、あるいは通常の方法により合成された。
【実施例】
【0064】
【表1】

【0065】
モノマーの調製および取扱い
反応物モノマー(イソプレン、メタクリル酸t−ブチル、1,1’−ジフェニルエチレン、および4−ビニルピリジン)をO2濃度が100万分の1部(ppm)未満になるまで窒素でスパージした。脱酸素したモノマーを、塩基性アルミナ(Al23、活性化、酸性、ブロックマンI(Brockmann I)、約150メッシュ、ウィスコンシン州ミルウォーキーのシグマ−オールドリッチ・ファイン・ケミカルズ(Sigma−Aldrich Fine Chemicals,Milwaukee,WI))のカラム(l=91.4cm、d=2.5cm)を通してポンプで汲み上げた。さらにメタクリル酸t−ブチル溶液および1,1’−ジフェニルエチレン溶液をモレキュラーシーブビーズ(イリノイ州デスプレーンズのUOP・LLC(UOP LLC,Des Plaines,IL)からゼオライト3A(ZEOLITE 3A)として入手できる)を通してポンプで汲み上げた。次いでこれらの精製モノマーを下記攪拌式管状反応器(STR)に供給した。反応溶媒をモレキュラーシーブビーズを通してポンプで汲み上げ、STRに直接供給した。このTHFもまた窒素で30分間スパージすることによって脱酸素し、3Aモレキュラーシーブビーズおよびアルミナカラムの両方を通してポンプで汲み上げることにより精製した。次いでこのTHF流をSTRにイソプレンと同じゾーンに供給した。sec‐ブチルリチウム開始剤(シクロヘキサンに溶かした1.4Mのsec‐ブチルリチウム)を予精製シクロヘキサンの添加によって希釈し、更なる精製なしにSTRの第一ゾーンに加えた。
【0066】
反応器の明細
10LガラスSTR
この攪拌式管状反応器(STR)は10リットルの能力を有し、5個のジャケット被覆(シェル・イン・チューブ型)ガラス部分(パイレックス(登録商標)・シリンダ)からなる。各管部分は、外径7.62cm、内径6.99cm、および長さ57.2cmを有する。ジャケットは、外径11.63cm、内径10.99cm、および長さ52.1cmを有する。これら管部分を、それぞれの厚さ3.18cmのステンレス鋼製カップリング・フランジで互いに連結した。カップリング・フランジは、その管部分の内部に延びる個別の感温熱電対を備える。これら熱電対は各部分において反応混合物の温度を監視し、ジャケット被覆部分を通り抜けて流れる熱媒液の温度を変えることによって設定値に対して上方または下方に調整(必要に応じて)することを可能にする。またこれらカップリング・フランジはそれぞれ異なる入口を含有し、それを通して材料を反応混合物に加えることができる。このSTRは、ステンレス鋼製フランジにより両端を塞がれる。
【0067】
カップリング・フランジのそれぞれから延出する3本のシャフト調心ピンによってシリンダ軸の中心に沿って懸架されている直径1.27cmのステンレス鋼製シャフトが、連結されたシリンダの中心を通って延在する。このシャフトは、第一の4ゾーンに対する部分と第五のゾーンに対するもう一方の部分との2つの部分に分割されている。シャフトの第二部分は、シャフトの第一部分のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製プラグと密着する。これは、同一反応器中でシャフトのその2つの部分が、異なる2速度および異なる2方向で攪拌することを可能にする。それぞれの櫂間約4.5cmの38個の脱着式ステンレス鋼製櫂をシャフトに取り付けた。第一の4つのゾーンの長方形櫂は、厚さ0.24cm、幅4.5cm、および長さ5.1cmである。第五のゾーンの長方形の櫂は、厚さ0.24cm、幅5.1cm、および長さ5.7cmである。櫂の構成は、ゾーン1では7個、ゾーン2では8個、ゾーン3では8個、ゾーン4では8個、およびゾーン5では7個である。ゾーン1〜4を駆動するために用いられるシャフトは、2.2kW可変速モータに取り付けた。ゾーン5用のシャフトは0.25HPバルドー可変速モータに取り付けた。
【0068】
0.94LガラスSTR
このSTRは、0.94Lの反応ゾーンの容量を有し、5個のジャケット被覆(シェル・イン・チューブ型)ガラス部分(パイレックス(登録商標)・シリンダ)からなる。管は、内径3.01cmおよび外径3.81cmを有する。殻は直径6.4cmを有する。ゾーン1〜5に対応する5個すべての部分が長さ25.4cmである。これら部分は、ステンレス鋼製カップリング・フランジで互いに連結された。カップリング・フランジは、円筒状部分の内部に延びる個別の感温熱電対を備える。これら熱電対は各部分において反応混合物の温度を監視し、ジャケット被覆部分を通り抜けて流れる熱媒液の温度を変えることによって設定値に対して上方または下方に調整(必要に応じて)することを可能にする。またこれらカップリング・フランジはそれぞれ異なる単一の入口を含有し、それを通してモノマーまたは溶媒を反応混合物に加えることができる。第四および第五ゾーンの間に位置するカップリング・フランジは、モノマーがそのフランジに入り、そのフランジ内部の周辺の空間を満たし、次いで反応器の中心を取り囲んで等間隔にあけられた12個の箇所を通って、またはその他のカップリング・フランジの場合にはただ1箇所を通って反応器に入ることになるような方式に設計された。
【0069】
長さ154.9cmおよび直径0.95cmを有するステンレス鋼製シャフトが、それら連結されたシリンダの中心を通って延在する。このシャフトは、シャフト調心ピンによってシリンダ軸に沿って懸架されている。このシャフトは、第一の4ゾーンに対する部分と第五のゾーンに対するもう一方の部分との2つの部分に分割されている。シャフトの第二部分は、シャフトの第一部分のPTFE製プラグと密着する。これは、同一反応器中でシャフトのその2つの部分が、異なる2速度および異なる2方向で攪拌することを可能にする。それぞれの櫂間約2.1cmの30個の脱着式ステンレス鋼製櫂をシャフトに取り付けた。これら長方形の櫂は、厚さ1.6mm、幅1.91cm、および長さ2.54cmである。各部分が6個の櫂を含有する。シャフトのそれぞれの端部は、可変速0.25hpバルドー産業用歯車モータに取り付けられた。いずれの端部による攪拌速度も1rpmから314rpmに調節することができる。
【0070】
熱伝達は、それらジャケットに再循環装置を取り付けることによって達成した。すべてのゾーンは水で加熱または冷却され、同一再循環装置から連続して加熱/冷却されるゾーン2および3以外はすべて独立に加熱または冷却された。ゾーン1は並流方式で加熱/冷却し、一方その他の4つのゾーンは向流方式で加熱/冷却した。
【0071】
反応器中の温度は、熱電対温度記録計(例えば、コネチカット州スタムフォードのオメガ・エンジニアリング・インコーポレーテッド(Omega Engineering,Inc.Stamford,CT)から入手できるオクトテンプ・8−チャンネル・レコーダ(OCTTEMP 8−CHANNEL RECORDER))およびパーソナル・コンピュータとインターフェースする付属のソフトウェアの使用により監視し記録した。重合の間のゾーンのバッチ温度を整えるためにステンレス鋼製カップリング片のそれぞれの中に熱電対(タイプJ)を配置した。
【0072】
実施例1
開始剤スラリーは、シクロヘキサンに溶かした1.4Mのsec−ブチルリチウム100gを、酸素を含まないシクロヘキサン3000gと混合することによって調製し、室温で約30分間攪拌した。精製イソプレンモノマー(8.2g/分)、精製シクロヘキサン溶剤(6.6g/分)、精製THF溶剤(0.5g/分)、および開始剤溶液(7.0g/分)を、往復動ピストンポンプを介して0.94LのSTRの第一ゾーンに供給した。開始剤溶液がTHFの存在下でモノマーと接触すると、ゾーン1において透明から黄色への色の変化が観察され、その結果として発熱線が生じた。ゾーン1のジャケット温度を55℃に調整することによって反応温度を約60℃に保った。STRの5つのゾーンのそれぞれの反応混合物の温度は、個々にZ1=60℃、Z2=60℃、Z3=45℃、Z4=40℃、およびZ5=30℃に保った。
【0073】
材料は第一の3つのゾーンを通って流れ、攪拌用櫂によって反応経路に沿って推進される。このポリイソプレンの重合は、ゾーン3の終りまでに基本的に100%完了するまで続けられ、それによって「リビング」ポリイソプレンポリマー溶液を形成した。ゾーン4の頭の部分で、精製1,1’−ジフェニルエチレン(DPE)溶液(シクロヘキサンに溶かした2.5重量%)(3.2g/分)を、往復動ピストンポンプを介してこの「リビング」ポリイソプレン反応性混合物に供給した。その結果、DPEと「リビング」ポリイソプレンポリマーの反応が起こったことを示す黄色から赤色への色の変化が生じた。ゾーン5の頭の部分で、精製メタクリル酸t−ブチル(tBMA)(3.3g/分)を、往復動ピストンポンプを介してこの「リビング」ポリマー溶液に供給した。その結果、「リビング」ポリtBMAポリマーを示す深紅から白色への色の変化が生じた。各攪拌シャフトの攪拌速度を100rpmまたは225rpmのいずれかで変え、各攪拌シャフトの攪拌方向を変え、またtBMAの投入方法を変えた。得られたポリ(イソプレン−ブロック−メタクリル酸t−ブチル)ブロックコポリマーを脱酸素メタノールで失活し、試料を採収口から回収し、分析した。さらにポリイソプレンホモポリマー試料をPDI用の基線としてDPEまたはtBMAの添加前に分析用受け口で採取した。この反応に対する全滞留時間は約29分であった。
【0074】
各試料を数平均分子量(Mn)および多分散性指数(PDI)について試験した。結果および攪拌条件を表2(下記)に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
表2中で、CW=右回り攪拌、またCCW=左回り攪拌。
【0077】
実施例2
開始剤スラリーは、シクロヘキサンに溶かした1.4Mのsec−ブチルリチウム1000gを、酸素を含まないシクロヘキサン5400gと混合することによって調製し、室温で約30分間攪拌した。精製イソプレンモノマー(165.0g/分)、精製トルエン溶剤(290.0g/分)、精製THF(2.0g/分)、および開始剤スラリー(30.3g/分)を、往復動ピストンポンプを介して10LのSTRの第一ゾーンの頭の部分に供給した。開始剤溶液がTHFの存在下でモノマーと接触すると、ゾーン1において透明から黄色への色の変化が観察された。
【0078】
材料は第一の4つのゾーンを通って流れ、攪拌用櫂によって反応経路に沿って推進される。重合はゾーン4の終りまでに基本的に100%完了するまで続けられ、それによって「リビング」ポリイソプレン(PI)溶液を形成した。ゾーン5の頭の部分で、反応器中に精製4−ビニルピリジンモノマー(6.0g/分)を供給した。その結果、黄色から赤色への色の変化が生じた。ジャケット温度は、Z1=92℃、Z2=92℃、Z3=55℃、Z4=27℃、およびZ5=33℃に保った。ゾーン1から4の攪拌速度は200rpmに設定した。4−ビニルピリジンが加えられる箇所であるゾーン5の攪拌速度は、反対方向へ約400rpmであった。4−ビニルピリジン添加のための温度および反応条件は、そのブロックポリマーがゲル化し、不溶性になりやすいようなものである。これが起こるとポリマーの沈殿物が反応器および櫂に付着する傾向があり、著しいよごれをひき起して遂には工程の機能停止につながる。この実施例ではポリマーが溶液から沈殿したが、ゾーン5での高速攪拌はその沈殿物が反応器をよごすのを妨げ、ゲルが反応器から流出することを可能にする。
【0079】
得られたポリ(イソプレン−ブロック−4−ビニルピリジン)(PI−PVP)ブロックコポリマーを脱酸素メタノールで失活し、数平均分子量(Mn)、多分散性指数(PDI)、およびポリイソプレン(PI)対ポリ(4−ビニルピリジン)(PVP)の相対濃度を分析した。この反応に対する全滞留時間は約16分であり、反応は35%固形物で行われた。得られた分析結果を表3(下記)に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
本発明の全般的な原理の上記開示および前述の詳細な説明から当業者は本発明が受けやすい様々な修正、再配列、および置換について容易に理解するはずである。したがって本発明の範囲は、別添の特許請求の範囲およびその等価物によってのみ限定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の例示的実施形態の側面図である。
【図2】本発明の第二の例示的実施形態の側面図である。
【図3】図1のシャフト連結部分の拡大断面図である。
【図4】本発明の第三の例示的実施形態の側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応室と、
前記室と流体連通した供給口と、
前記室と流体連通した採収口と、
第一および第二端部を有する第一シャフトであって、前記シャフトの前記第一端部が前記室内に延出し、かつ前記第一シャフトがそれから延びる少なくとも1個の混合部材を有する、第一シャフトと、
第一および第二端部を有する第二シャフトであって、前記第二シャフトの前記第一端部が前記室内に延出し、前記第二シャフトが前記第一シャフトとほぼ同一線上にあり、かつ前記第二シャフトがそれから延びる少なくとも1個の混合部材を有する、第二シャフトと、
前記第一シャフトと回転係合する第一駆動機構と、
前記第二シャフトと回転係合する第二駆動機構と、
を備えた攪拌式管状反応器。
【請求項2】
前記第一および第二シャフトが異なる速度で回転する、請求項1に記載の攪拌式管状反応器。
【請求項3】
前記第一および第二シャフトが異なる方向に回転する、請求項1に記載の攪拌式管状反応器。
【請求項4】
前記第一および第二シャフトが異なる速度で、かつ異なる方向に回転する、請求項1に記載の攪拌式管状反応器。
【請求項5】
前記反応室が円筒形であり、かつ前記第一および第二シャフトが前記反応室のほぼ中心に軸方向に配置される、請求項1に記載の攪拌式管状反応器。
【請求項6】
前記反応室内に位置し、かつ前記第一シャフトの前記第一端部と係合する第一端および前記第二シャフトの前記第一端部と係合する第二端を有する結合器をさらに備える、請求項1に記載の攪拌式管状反応器。
【請求項7】
前記第一および第二シャフトが異なる速度で回転する、請求項6に記載の攪拌式管状反応器。
【請求項8】
前記結合器の前記第一端が前記第一シャフトと共に回転し、かつ前記結合器の前記第二端が前記第二シャフトと共に回転する、請求項6に記載の攪拌式管状反応器。
【請求項9】
前記混合部材の少なくとも1個が櫂である、請求項1に記載の攪拌式管状反応器。
【請求項10】
前記混合部材の少なくとも1個がステンレス鋼で作製される、請求項1に記載の攪拌式管状反応器。
【請求項11】
前記駆動機構の少なくとも1つがモータを備える、請求項1に記載の攪拌式管状反応器。
【請求項12】
前記反応室が第一および第二管状部分を備え、前記第一および第二管状部分を機械的に係合させるフランジをさらに備える、請求項1に記載の攪拌式管状反応器。
【請求項13】
前記フランジが熱電対を含む、請求項12に記載の攪拌式管状反応器。
【請求項14】
前記反応室が少なくとも1箇所の被温度制御領域を有する、請求項1に記載の攪拌式管状反応器。
【請求項15】
前記反応室が化学線に透明な材料を含む、請求項1に記載の攪拌式管状反応器。
【請求項16】
重合可能なモノマーおよび開始剤を含む反応混合物を、請求項1に記載の攪拌式管状反応器の供給口に導入する工程と、
前記モノマーを重合する工程と、
前記反応混合物が前記反応室を通って本質的にプラグ流れの様式で軸方向に移動するにつれて、前記反応混合物を半径方向に混合して、重合された材料を得る工程と、
を含む方法。
【請求項17】
前記モノマーがアニオン重合される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記混合物が、前記重合可能なモノマーと反応性を有するポリマーをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第一および第二シャフトが異なる方向に回転する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記第一および第二シャフトが異なる速度で回転する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
反応室と、
プラグ流れを与えるための手段と、
前記反応室の軸方向の少なくとも2つの別個のセグメント中で差動攪拌を与えるための手段と、
を備える反応器。
【請求項22】
前記攪拌のための手段が、一対の同一線上に連結されたシャフトである、請求項21に記載の反応器。
【請求項23】
各シャフトが混合部材を含む、請求項22に記載の反応器。
【請求項24】
前記混合部材が櫂である、請求項23に記載の反応器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−511720(P2008−511720A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529860(P2007−529860)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/025920
【国際公開番号】WO2006/028584
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】