説明

支持サポート構造及び緩衝装置

【課題】速い変位を規制する一方で遅い変位を許容することができると共に、管理の負担を軽減することができる支持サポート構造及び緩衝装置を提供することにある。
【解決手段】固定された容器10と、容器10に少なくとも一部が収容された被支持体20と、被支持体20を容器10の内壁面10aに対して間隙を形成した状態で支持する支持体30と、容器10に貯留され、容器10に収容された被支持体20のうち少なくとも一部を浸漬させるダイラタント流体40とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持サポート構造及び緩衝装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、各種機器の設置においては、地震等の外力が作用した場合に機器が変位することを防止するために、機器の変位を拘束する場合が多い。
例えば、比較的大重量となる重機器の設置においては、重機器が変位して周囲の構造物に衝突すると、衝撃力が大きくなって機器自体や構造物が破損する恐れが高いため、外力による変位を拘束する必要性が高い。
【0003】
ところで、機器を剛に固定して変位を拘束すると、機器固有の変位(例えば、熱伸び)を許容することができず、機器の固定部や固定部材に負荷が生じてしまう。
【0004】
従来の技術においては、機器の側方にサポート体を当接させると共に、機器固有の変位を計測しながら、その都度サポート体の位置を調整していた。
また、従来の他の技術においては、機器と静止構造体との間にスナバを設けて、外力による速い変位を規制する一方で、機器固有の遅い変位を許容するように、機器を設置していた(例えば、下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−12148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術は、機器固有の変位を計測しながら、その都度サポート体の位置を調整する必要があり、計測及び調整に時間と労力が掛かるという問題があった。さらに、機器が厳しい使用環境(例えば、高温環境)に設置されている場合には、計測及び調整が困難であるという問題があった。
【0007】
また、従来の他の技術は、スナバのメンテナンスに多大な時間及び労力を掛けなければならないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、速い変位を規制する一方で遅い変位を許容することができると共に、管理の負担を軽減することができる支持サポート構造及び緩衝装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る支持サポート構造は、固定された容器と、該容器に少なくとも一部が収容された被支持体と、前記被支持体を前記容器の内壁面に対して間隙を形成した状態で支持する支持体と、前記容器に貯留され、前記容器に収容された前記被支持体のうち少なくとも一部を浸漬させるダイラタント流体とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、容器に貯留され、容器に収容された被支持体のうち少なくとも一部を浸漬させるダイラタント流体を備えるので、被支持体の速い変位を規制する一方で遅い変位を許容することができる。すなわち、容器とダイラタント流体とに浸漬された被支持体との間に、ひずみ速度の増加に対して粘度が急激に増加するダイラタント流体が介在することとなるので、ダイラタント流体がダイラタント流体が速度の速い荷重(変位)に対しては、大きな粘度によって剛なサポートとして機能し、速度の遅い荷重(変位)に対しては、小さな粘度によって柔なサポートとして機能することとなる。
【0010】
また、ダイラタント流体が被支持体の一部を浸漬させている構成であるので、計測及び調整が必要なく、また、比較的に簡素な構成であるので、メンテナンスに伴う労力と時間とが殆ど生じない。これにより、管理の負担を軽減することができる
よって、速い変位を規制する一方で遅い変位を許容することができると共に、管理の負担を軽減することができる。
【0011】
また、前記被支持体は、本体機器部を備え、前記ダイラタント流体は、前記本体機器部の下方を浸漬させていることを特徴とする。
この構成によれば、ダイラタント流体が、本体機器部の下方を浸漬させているので、より簡素な構成とすることができる。
【0012】
また、前記被支持体は、本体機器部、及び、該本体機器部の側方から外方に向けて延出する延出部分と該延出部分から下方に延びる垂下部分とを有する受力部を備え、前記容器は、前記本体機器部の周囲に設けられ、前記ダイラタント流体は、前記受力部における垂下部分のうち少なくとも一部を浸漬させていることを特徴とする。
この構成によれば、容器が本体機器部の周囲に設けられ、被サポート体が本体機器部及び受力部とを備え、ダイラタント流体が、受力部における垂下部分のうち少なくとも一部を浸漬させているので、スペースファクタや設計自由度を向上させることができる。
【0013】
また、本発明に係る緩衝装置は、少なくとも一方向に伸縮可能な伸縮容器と、前記伸縮容器の内部に封入されたダイラタント流体とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、少なくとも一方向に伸縮可能な伸縮容器の内部に封入されたダイラタント流体を備えるので、速い変位を規制する一方で遅い変位を許容することができる。すなわち、伸縮容器の内部に、ひずみ速度の増加に対して粘度が急激に増加するダイラタント流体が封入されているので、ダイラタント流体が速度の速い荷重(変位)に対しては、大きな粘度によって剛なサポートとして機能し、速度の遅い荷重(変位)に対しては、小さな粘度によって柔なサポートとして機能することとなる。
【0014】
また、ダイラタント流体が伸縮容器の内部に封入されている構成であるので、ダイラタント流体の揮発や変質を抑止することができる。これにより、メンテナンスに伴う労力と時間とを低減させることができ、管理の負担を軽減することができる
よって、速い変位を規制する一方で遅い変位を許容することができると共に、管理の負担を軽減することができる。
また、省スペースとするのが容易であり、局所のサポートを好適に行うことができ、持ち運びや設置の自由度を向上させることができる。
【0015】
また、前記ダイラタント流体は、不活性ガスと共に前記伸縮容器の内部に封入されていることを特徴とする。
この構成によれば、ダイラタント流体が、不活性ガスと共に伸縮容器の内部に封入されているので、気体の圧縮性によって伸縮容器の容積変化に対応することができる。従って、非圧縮性のダイラタント流体を簡素な構成で用いることが可能となる。
【0016】
また、前記伸縮容器の内部に連通するリザーブ空間に前記ダイラタント流体が貯留されたリザーブ容器を備え、前記ダイラタント流体は、前記伸縮容器に密充填されていることを特徴とする。
この構成によれば、リザーブ容器を備え、ダイラタント流体が伸縮容器に密充填されているので、受力面積が増加して耐力を向上させることができる。また、受力面積が安定しているので、耐力を安定させることができる。また、リザーブ容器を備えるので、設置方向に関わらず、全方位で安定した緩衝特性を生じさせることができる。
【0017】
また、本発明に係る支持サポート構造は、固定された静止体と、前記静止体に対して間隙を形成した状態で支持される被支持体と、前記被支持体を支持する支持体と、上記のいずれかに記載の緩衝装置とを備え、前記緩衝装置は、前記間隙において前記一方向における一端が前記静止体に固定され、他端が前記被支持体に固定されていることを特徴とする。
この構成によれば、上記の緩衝装置を備えるので、速い変位を規制する一方で遅い変位を許容することができると共に、管理の負担を軽減することができる。
【0018】
また、本発明に係る緩衝装置は、流体収容室を有する筐体と、前記流体収容室に封入されたダイタラント流体と、前記ダイラタント流体に浸漬され、外周に流体抵抗部を備える第一の車と、外部から一方向に受ける外力によって回転力が付与され、この回転力を前記第一の車に伝達する第二の車とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、筐体の流体収容室に貯留されたダイラタント流体を備えるので、速い変位を規制する一方で遅い変位を許容することができる。すなわち、流体収容室の内部に、ひずみ速度の増加に対して粘度が急激に増加するダイラタント流体が封入されているので、ダイラタント流体が速度の速い荷重(変位)に対しては、大きな粘度によって剛なサポートとして機能し、熱伸びのような速度の遅い荷重(変位)に対しては、小さな粘度によって柔なサポートとして機能することとなる。
また、ダイラタント流体が液体収容室に封入されているので、ダイラタント流体の揮発や変質を抑止することができる。これにより、メンテナンスに伴う労力と時間とを低減させることができ、管理の負担を軽減することができる
よって、速い変位を規制する一方で遅い変位を許容することができると共に、管理の負担を軽減することができる。
また、ダイラタント流体の体積と第二の車の大きさによって、耐力の大きさを容易に調整することができる。
【0019】
また、前記第一の車と前記第二の車とのうち少なくとも一方は、歯車であることを特徴とする。
この構成によれば、第一の車と第二の車とのうち少なくとも一方が歯車であるので、構成を簡素なものとすることができる。
【0020】
また、前記第二の車は、歯車であり、ラックによって回転力が付与されることを特徴とする。
この構成によれば、第二が歯車であり、ラックによって回転力が付与されるので、構成を簡素なものとすることができる。
【0021】
また、本発明に係る支持サポート構造は、固定された静止体と、前記静止体に対して間隙を形成した状態で支持される被支持体と、前記被支持体を支持する支持体と、上記のうちいずれかに記載の緩衝装置とを備え、前記緩衝装置は、前記間隙において前記静止体に固定され、前記静止体から一方向に受ける力によって前記第二の車に回転力が付与されることを特徴とする。
この構成によれば、上記の緩衝装置を備えるので、速い変位を規制する一方で遅い変位を許容することができると共に、管理の負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、速い変位を規制する一方で遅い変位を許容することができると共に、管理の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一実施形態に係る支持サポート構造1Aの概略構成断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るダイラタント流体40の特性図であって、ひずみ速度と粘度との関係を示した図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係る支持サポート構造1Bの概略構成断面図である。
【図4】本発明の第三実施形態に係る支持サポート構造1Cの概略構成断面図である。
【図5】本発明の第三実施形態に係る緩衝装置240の要部拡大断面図であって、図4の要部Iの拡大図である。
【図6】本発明の第三実施形態に係る緩衝装置240の変形例を示す図であって、緩衝装置250の概略構成断面図である。
【図7】本発明の第四実施形態に係る支持サポート構造1Dの要部拡大図であって、緩衝装置260の概略構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態に係る支持サポート構造1Aの概略構成断面図である。
図1に示すように、支持サポート構造1Aは、比較的に高温(例えば、300℃)の環境下において用いられており、容器10と、被支持体20と、支持体30と、ダイラタント流体40とで構成されている。
【0025】
容器10は、コンクリート製のものであり、床部Cに固定されている。この容器10は、内部空間が、被支持体20の収容スペースとされていると共に、この内部空間の下部がダイラタント流体40のプール11とされている。
【0026】
被支持体20は、本体機器部21と、フィン22とを備えている。
本体機器部21は、比較的に大きな重量のものであって、カプセル状に形成されたものである。この本体機器部21は、その軸を鉛直方向に向けた状態で容器10に収容されている。なお、この本体機器部21のケーシングは、比較的に薄型に形成されている。
【0027】
フィン22は、この本体機器部21の下部の外表面から径方向に突出している。このフィン22は、本体機器部21の外周に複数個突設されており、等間隔環状配置されている。
【0028】
支持体30は、被支持体20を容器10の内壁面10aに対して間隙を形成した状態で支持する。具体的には、この支持体30は、リンク機構で構成されており、被支持体20の底部20aと容器10の内部空間における底部10bとに連結され、被支持体20をピン支持している。
【0029】
ダイラタント流体40は、図1に示すように、プール11に貯留され、本体機器部21の下部を浸漬させている。
【0030】
図2は、ダイラタント流体40の特性図であって、ひずみ速度と粘度との関係を示した図である。
図2に示すように、ダイラタント流体40は、ひずみ速度の増加に対して粘度が急激に増加する流体である。すなわち、このダイラタント流体40は、小さいひずみ速度(変位)には液体のようにふるまうのに対して、大きいひずみ速度(変位)には固体のようにふるまう性質を有している。
【0031】
このダイラタント流体40は、比較的に耐熱性が高く、比較的に凝縮性が低いものが用いられている。例えば、支持サポート構造1Aの使用環境温度(例えば、300℃)よりも高い沸点(例えば、325℃)のものが用いられている。
【0032】
このダイラタント流体40は、容器10の内部空間において、本体機器部21の下部と、フィン22の全てとを浸漬させる液位となっている。
【0033】
次に、上記の構成からなる支持サポート構造1Aの動作について説明する。
まず、本体機器部21が稼働されることにより、この本体機器部21が熱源となって支持サポート構造1Aの環境温度が上昇し始める。これに伴って、本体機器部21が徐々に熱膨張する。
【0034】
本体機器部21の熱膨張によって、ダイラタント流体40が径方向外方側に向けて押圧される(図1における荷重L1)。この際、ダイラタント流体40は、ひずみ速度が比較的に小さなものとなるため、図2に示すように、粘度が比較的に小さなものとなる。
【0035】
すなわち、本体機器部21は、粘度が比較的に小さい状態のダイラタント流体40を押圧しつつ、徐々に熱伸びする。このようにして、ダイラタント流体40から反力を殆ど受けることなく、被支持体20が径方向外方に向けて変位していく。
なお、この際、支持体30は、被支持体20をピン支持しているために、被支持体20の変位を許容しつつ、この被支持体20を支持する。
【0036】
一方、例えば、地震等が発生して被支持体20に比較的に大きい外力が急激に作用した場合には、この外力によって被支持体20が急激に変位しようとする。これによって、ダイラタント流体40が被支持体20から径方向外方側に向けて急激に押圧される(図1における荷重L2)。
この際、ダイラタント流体40のひずみ速度は、比較的に大きなものとなるため、図2に示すように、粘度も比較的に大きくなる。
【0037】
すなわち、ダイラタント流体40は、粘度が比較的に大きい状態のダイラタント流体40を押圧することとなるため、ダイラタント流体40から大きな反力を受け、被支持体20が径方向外方側に変位しない。
【0038】
以上説明したように、支持サポート構造1Aによれば、容器10に貯留され、容器10に収容された被支持体20のうち少なくとも一部を浸漬させるダイラタント流体40を備えるので、被支持体20の速い変位を規制する一方で遅い変位を許容することができる。すなわち、容器10とダイラタント流体40とに浸漬された被支持体20との間に、ひずみ速度の増加に対して粘度が急激に増加するダイラタント流体40が介在することとなるので、ダイラタント流体40が速度の速い荷重(変位)に対しては、大きな粘度によって剛なサポートとして機能することとなり、速度の遅い荷重(変位)に対しては、小さな粘度によって柔なサポートとして機能することとなる。従って、被支持体20の速い変位を規制する一方で遅い変位を許容することができる。
【0039】
また、ダイラタント流体40が被支持体20の下部を浸漬させている構成であるので、ダイラタント流体40が常に容器10の内壁面10aと被支持体20との間を満たすことになり、計測や調整を不要とすることができる。
また、比較的に簡素な構成であるので、メンテナンスに伴う労力と時間とが殆ど生じない。これにより、管理の負担を軽減することができる
よって、速い変位を規制する一方で遅い変位を許容することができると共に、管理の負担を軽減することができる。
【0040】
さらに、ダイラタント流体40が常に容器10の内壁面10aと被支持体20との間を満たすので、被支持体20が熱伸びしたとしても、容器10の内壁面10aと被支持体20との間に空隙が形成されることがない。これにより、空隙が形成された場合に、被支持体20が容器10の内壁面10aに衝突することを考慮して、被支持体20のケーシングを厚くする必要がなく、薄肉化・軽量化を図ることができる。
【0041】
また、ダイラタント流体40が、被支持体20の本体機器部21の下部を浸漬させているので、より簡素な構成とすることができる。
また、被支持体20がフィン22を備えるので、被支持体20とダイラタント流体40との接触面積を大きくすることができ、単位面積当たりに作用する荷重を分散することができる。これにより、被支持体20の挙動を安定させることができる。
【0042】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態に係る支持サポート構造1Bについて説明する。
図3は、支持サポート構造1Bの概略構成断面図である。なお、図3において、図1、図2と同様の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0043】
図3に示すように、支持サポート構造1Bは、容器110と、被支持体120と、支持体30と、ダイラタント流体40とで構成されている。
【0044】
容器110は、上面視で円環状に形成されたものであり、ダイラタント流体40が貯留されたプール111が円環溝状に形成されている。この容器110は、床部Cに固定されていると共に、被支持体120の本体機器部21を囲繞しており、中心孔110aに本体機器部21の一部を収容している。
【0045】
被支持体120は、本体機器部21と、受力部122とを備えている。
受力部122は、スカート状に形成されており、本体機器部21の側方から外方に向けて延出する延出部分122aと、この延出部分122aから下方に延びる垂下部分122bとを有している。
延出部分122aは、本体機器部21の外周全周から全方位に向けて鍔状に延出しており、上面視した場合に、外端がプール111と重なる位置まで延出している。
垂下部分122bは、延出部分122aの外端から下方に延びており、下端がダイラタント流体40の液面下に位置している。
【0046】
支持体30は、被支持体120の底部120aと床部Cとに連結され、被支持体120をピン支持している。
【0047】
この支持サポート構造1Bによれば、上述した第一実施形態と同様の効果を得ることができる他、本体機器部21の一部が容器110の中心孔110aに収容されるので、スペースファクタや設計自由度を向上させることができる。
また、本体機器部21の一部をダイラタント流体40に浸漬させる場合に比べて、ダイラタント流体40との接触面積を確保し易くなり、ダイラタント流体40の必要量を低減させることが容易となる。
また、ダイラタント流体40に、本体機器部21が浸漬されないので、本体機器部21へのアクセス性を向上させることができる。
【0048】
なお、本実施形態では、受力部122をスカート状に形成したが、受力部122の全部又は一部を放射状に形成してもよい。
また、ダイラタント流体40に浸漬される垂下部分122bには、フィンを設けてもよい。
【0049】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態に係る支持サポート構造1Cについて説明する。
図4は、支持サポート構造1Cの概略構成断面図である。なお、図4において、図1〜図3と同様の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図4に示すように、支持サポート構造1Cは、静止構造物210と、静止構造物210に対して間隙を形成した状態で支持される被支持体220と、被支持体220を支持する支持体30と、緩衝装置240とを備えている。
【0051】
静止構造物210は、床部Cに固定された底部210aと、底部210aに立設されて被支持体220を囲繞する壁部(静止体)210bを備えている。
【0052】
被支持体220は、上述した第一実施形態の本体機器部21とほぼ同一構成のものであり、静止構造物210に収容されている。この被支持体220は、静止構造物210に対して間隙を形成した状態で支持される。
【0053】
支持体30は、被支持体220の底部220aと静止構造物210の底部210aとに連結され、被支持体220をピン支持している。
【0054】
図5は、緩衝装置240の要部拡大断面図であって、図4の要部Iの拡大図である。
図5に示すように、緩衝装置240は、内部に不活性ガスGとダイラタント流体40とが封入されたベローズ(伸縮容器)241等からなる。
ダイラタント流体40´は、非圧縮性のものであるが、他の性質は、上述した第一,第二実施形態のものと同様のものである。
【0055】
緩衝装置240は、間隙に複数個設けられ、等間隔環状配置されている。
このような緩衝装置240は、間隙において伸縮方向を被支持体220の径方向に向け、一端が静止構造物210に固定され、他端が被支持体220に固定されている。
【0056】
次に、上記の構成からなる支持サポート構造1Cの動作について説明する。
まず、図4に示すように、被支持体220が稼働されることにより、この被支持体220が熱源となって支持サポート構造1Cの環境温度が上昇し始める。これに伴って、被支持体220が徐々に熱膨張する。
【0057】
被支持体220の熱膨張によって、緩衝装置240及びダイラタント流体40´が径方向外方側に向けて押圧される(図4における荷重L3)。この際、ダイラタント流体40´は、ひずみ速度が比較的に小さなものとなるため、粘度が比較的に小さなものとなる(図2参照)。
【0058】
すなわち、被支持体220は、粘度が比較的に小さい状態のダイラタント流体40´が封入された緩衝装置240を押圧しつつ、徐々に熱伸びする。このようにして、ダイラタント流体40´から反力を殆ど受けることなく、被支持体220が径方向外方に向けて変位していく。
なお、この際、ダイラタント流体40´が非圧縮性のものであっても、不活性ガスGが封入されているため、ベローズ241内部の容積変化に対応することができる。また、支持体30は、被支持体220をピン支持しているために、被支持体220の変位を許容しつつ、この被支持体220を支持する。
【0059】
一方、例えば、地震等が発生して被支持体220に比較的に大きい外力が急激に作用した場合には、この外力によって被支持体220が急激に変位しようとする。これによって、緩衝装置240及びダイラタント流体40´が被支持体220から径方向外方側に向けて急激に押圧される(図4における荷重L4)。
この際、ダイラタント流体40´のひずみ速度は、比較的に大きなものとなるため、粘度も比較的に大きくなる(図2参照)。
【0060】
すなわち、ダイラタント流体40´は、粘度が比較的に大きい状態のダイラタント流体40´を押圧することとなるため、ダイラタント流体40´から大きな反力を受けると共に、被支持体220が径方向外方側に変位しない。
【0061】
この構成によれば、少なくとも一方向に伸縮可能なベローズ241の内部に封入されたダイラタント流体40´を備えるので、速い変位を規制する一方で遅い変位を許容することができる。すなわち、ベローズ241の内部に、ひずみ速度の増加に対して粘度が急激に増加するダイラタント流体40´が封入されているので、ダイラタント流体40´が速度の速い荷重(変位)に対しては、大きな粘度によって剛なサポートとして機能し、速度の遅い荷重(変位)に対しては、小さな粘度によって柔なサポートとして機能することとなる。
また、ダイラタント流体40´がベローズ241の内部に封入されている構成であるので、ダイラタント流体40´の揮発や変質を抑止することができる。これにより、メンテナンスに伴う労力と時間とを低減させることができ、管理の負担を軽減することができる。
よって、速い変位を規制する一方で遅い変位を許容することができると共に、管理の負担を軽減することができる。
また、構成が省スペースであり、局所のサポートを好適に行うことができ、持ち運びや設置の自由度を向上させることができる。
【0062】
図6は、緩衝装置240の変形例である緩衝装置250を示す概略構成断面図である。
図6に示すように、この緩衝装置250は、内部にダイラタント流体40´が封入・充足されたベローズ241と、このベローズ241の内部に連通したリザーブ容器242とを備えている。
リザーブ容器242は、リザーブ空間242aにダイラタント流体40´が貯留されたものである。
【0063】
この構成によれば、リザーブ容器242を備え、ダイラタント流体40´がベローズ241に密充填されているので、受力面積が増加して耐力を向上させることができる。また、受力面積が安定しているので、耐力を安定させることができる。また、リザーブ容器242を備えるので、設置方向に関わらず、全方位で安定した緩衝特性を生じさせることができる。
【0064】
(第四実施形態)
次に、本発明の第四実施形態に係る支持サポート構造1Dについて説明する。
図7は、支持サポート構造1Dの要部拡大図であって、緩衝装置250の概略構成断面図である。なお、図7において、図1〜図6と同様の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
支持サポート構造1Dは、支持サポート構造1Cとほぼ同様の構成となっているが、緩衝装置240の変わりに緩衝装置260を用いている点で大きく相違する。
【0065】
緩衝装置260は、筐体261と、ダイラタント流体40と、第一歯車263と、第二歯車264とを備えている。
筐体261は、下部に閉鎖空間として形成された流体収容室R1と、この流体収容室R1の上方に形成されて側方が外部に連通した第二歯車収容室R2とを有している。
【0066】
ダイラタント流体40は、流体収容室R1に密封入されている。
【0067】
第一歯車263は、流体収容室R1において、ダイラタント流体40に浸漬されている。なお、この第一歯車263の歯は、流体抵抗部として機能する。
【0068】
第二歯車264は、第二歯車収容室R2の側方から外部に露出して、被支持体220に固定されたラック265と咬み合っている。この第二歯車264は、第一歯車263と同軸に設けられており、この軸上に回転可能に設けられたシャフト266によって第一歯車263と連結されている。
【0069】
次に、上記の構成からなる支持サポート構造1Dの動作について説明する。
まず、被支持体220が稼働されることにより、この被支持体220が熱源となって支持サポート構造1Dの環境温度が上昇し始める。これに伴って、被支持体220が徐々に熱膨張する。
【0070】
被支持体220の熱膨張によって、被支持体220に固定されたラック265に径方向外方に向かう力が作用し、このラック265と噛み合う第二歯車264に回転力が付与される。この回転力は、シャフト266を介して第一歯車263に伝達される。
【0071】
この第一歯車263は、伝達された回転力によりダイラタント流体40を周方向に押圧する(図3における荷重L3)。この際、ダイラタント流体40は、ひずみ速度が比較的に小さなものとなるため、粘度が比較的に小さなものとなる(図2参照)。
【0072】
すなわち、被支持体220は、ラック265−第二歯車264-シャフト266第一歯車263を介して、粘度が比較的に小さい状態のダイラタント流体40を押圧しつつ、徐々に熱伸びする。このようにして、このようにして、ダイラタント流体40から反力を殆ど受けることなく、被支持体220が径方向外方に向けて変位していく。
なお、この際、支持体30は、被支持体220をピン支持しているために、被支持体220の変位を許容しつつ、この被支持体220を支持する。
【0073】
一方、例えば、地震等が発生して被支持体220に比較的に大きい外力が急激に作用した場合には、この外力によって被支持体220が急激に変位しようとする。これによって、ダイラタント流体40が被支持体220から周方向に向けて急激に押圧される(図3における荷重L4)。
この際、ダイラタント流体40のひずみ速度は、比較的に大きなものとなるため、粘度も比較的に大きくなる(図2参照)。
【0074】
すなわち、ダイラタント流体40は、粘度が比較的に大きい状態のダイラタント流体40を押圧することとなるため、ダイラタント流体40から反力を受けると共に、被支持体220が径方向外方側に変位しない。
【0075】
以上説明したように、支持サポート構造1Dによれば、筐体261の流体収容室R1に貯留されたダイラタント流体40を備えるので、速い変位を規制する一方で遅い変位を許容することができる。すなわち、流体収容室R1に、ひずみ速度の増加に対して粘度が急激に増加するダイラタント流体40が封入されているので、ダイラタント流体40が速度の速い荷重(変位)に対しては、大きな粘度によって剛なサポートとして機能し、熱伸びのような速度の遅い荷重(変位)に対しては、小さな粘度によって柔なサポートとして機能することとなる。
【0076】
また、ダイラタント流体40を充填した液体収容室の容積変化がなく、閉鎖空間となった流体収容室R1にダイラタント流体40が封入されており、ダイラタント流体40の揮発や変質を抑止することができる。これにより、メンテナンスに伴う労力と時間とを低減させることができ、管理の負担を軽減することができる
よって、速い変位を規制する一方で遅い変位を許容することができると共に、管理の負担を軽減することができる。
【0077】
また、ダイラタント流体40の体積と第二歯車264の大きさによって、耐力の大きさを容易に調整することができる。
また、流体収容室R1が、容積変化がなく完全に密封された閉鎖空間となっているので、ダイラタント流体40の変質や揮発等の体積変化を抑止することができる。
【0078】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上述した実施形態において、ダイラタント流体40として、せん断硬化流体を用いてもよい。
【0079】
また、上述した実施形態においては、使用環境が高温の場合について本発明を適用し、沸点が高く、揮発性が低いダイラタント流体40を用いる構成としたが、使用環境の相違によって、ダイラタント流体40の種類や組成、状態、量を変化させて、サポート特性を変えてもよい。
例えば、(A1)のような使用環境では、(B1)のようなサポート特性を持つダイラタント流体40が好適である。
また、(A2)のような使用環境では、(B2)のようなサポート特性を持つダイラタント流体40が好適である。
【符号の説明】
【0080】
10,110…容器
10a…内壁面
20,120,220…被支持体
21…本体機器部
22…フィン
30…支持体
40…ダイラタント流体
122…受力部
122a…延出部分
122b…垂下部分
210b…壁部(静止部)
240,250,260…緩衝装置
241…ベローズ(伸縮容器)
242…リザーブ容器
242a…リザーブ空間
261…筐体
263…第一歯車(第一の車)
264…第二歯車(第二の車)
265…ラック
1A〜1D…支持サポート構造
G…不活性ガス
R1…流体収容室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定された容器と、
該容器に少なくとも一部が収容された被支持体と、
前記被支持体を前記容器の内壁面に対して間隙を形成した状態で支持する支持体と、
前記容器に貯留され、前記容器に収容された前記被支持体のうち少なくとも一部を浸漬させるダイラタント流体とを備えることを特徴とする支持サポート構造。
【請求項2】
前記被支持体は、本体機器部を備え、
前記ダイラタント流体は、前記本体機器部の下方を浸漬させていることを特徴とする請求項1に記載の支持サポート構造。
【請求項3】
前記被支持体は、本体機器部、及び、該本体機器部の側方から外方に向けて延出する延出部分と該延出部分から下方に延びる垂下部分とを有する受力部を備え、
前記容器は、前記本体機器部の周囲に設けられ、
前記ダイラタント流体は、前記受力部における垂下部分のうち少なくとも一部を浸漬させていることを特徴とする請求項1に記載の支持サポート構造。
【請求項4】
少なくとも一方向に伸縮可能な伸縮容器と、
前記伸縮容器の内部に封入されたダイラタント流体とを備えることを特徴とする緩衝装置。
【請求項5】
前記ダイラタント流体は、不活性ガスと共に前記伸縮容器の内部に封入されていることを特徴とする請求項4に記載の緩衝装置。
【請求項6】
前記伸縮容器の内部に連通するリザーブ空間に前記ダイラタント流体が貯留されたリザーブ容器を備え、
前記ダイラタント流体は、前記伸縮容器に密充填されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の緩衝装置。
【請求項7】
固定された静止体と、
前記静止体に対して間隙を形成した状態で支持される被支持体と、
前記被支持体を支持する支持体と、
請求項4から6のうちいずれか一項に記載の緩衝装置とを備え、
前記緩衝装置は、前記間隙において前記一方向における一端が前記静止体に固定され、他端が前記被支持体に固定されていることを特徴とする支持サポート構造。
【請求項8】
流体収容室を有する筐体と、
前記流体収容室に封入されたダイタラント流体と、
前記ダイラタント流体に浸漬され、外周に流体抵抗部を備える第一の車と、
外部から一方向に受ける外力によって回転力が付与され、この回転力を前記第一の車に伝達する第二の車とを備えることを特徴とする緩衝装置。
【請求項9】
前記第一の車と前記第二の車とのうち少なくとも一方は、歯車であることを特徴とする請求項8に記載の緩衝装置。
【請求項10】
前記第二の車は、歯車であり、ラックによって回転力が付与されることを特徴とする請求項8又は9に記載の緩衝装置。
【請求項11】
固定された静止体と、
前記静止体に対して間隙を形成した状態で支持される被支持体と、
前記被支持体を支持する支持体と、
請求項8から10のうちいずれか一項に記載の緩衝装置とを備え、
前記緩衝装置は、前記間隙において前記静止体に固定され、前記静止体から一方向に受ける力によって前記第二の車に回転力が付与されることを特徴とする支持サポート構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−74973(P2011−74973A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225385(P2009−225385)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】