説明

支持装置及び支持方法

【課題】板状部材の外縁側を把持する搬送装置を利用でき、支持される板状部材にストレスが生じることを防止できるようにすること。
【解決手段】支持装置10は、半導体ウエハWを支持する支持面11を有するテーブル12と、支持面11に接する半導体ウエハWを移動規制可能な移動規制手段14と、半導体ウエハWに気体を吹き付けて半導体ウエハWを支持面11からの着脱を補助可能な着脱補助手段15とを備えて構成されている。搬送装置Bで搬送される半導体ウエハWに対し、気体を吹き付けて半導体ウエハWを支持面11から離脱した状態とし、この状態で搬送装置Bを退避させた後、支持面11に半導体ウエハWが接した状態で吸着支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状部材の支持装置及び支持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と称する場合がある)等の板状部材を支持する支持装置が広く利用されるに至っており、かかる支持装置としては、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1の支持装置50は、図5及び図6に示されるように、ウエハWの裏面外縁部が載置される凸部51を有する円筒容器状の支持台52を備えている。凸部51上面には、真空ポンプ53に接続される溝54が形成され、真空ポンプ53を作動して溝54内を減圧することで、ウエハWが凸部51上で吸着支持される。
【0003】
ところで、ウエハを搬送する装置として、例えば、特許文献2に開示されたものが知られている。特許文献2の搬送装置60は、図5及び図6に示されるように、移動可能なハンド61と、このハンド61に設けられた鉤状部を有する爪部材62とを備えている。爪部材62は、鉤状部がウエハWの下方に入り込み、当該ウエハWを左右方向から挟み込んで把持可能に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−125000号公報
【特許文献2】特開平11−220003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の支持装置50の支持台52は、ウエハWに形成された回路面を傷付けないように、凸部51ができるだけウエハWの外縁寄りに接するようになっているため、特許文献2の搬送装置60で把持したウエハWを支持装置50に載置しようとすると、爪部材62と凸部51とが干渉して当該ウエハWを支持台52の正確な位置に配置できない、という不都合が発生する。また、支持装置50で支持されたウエハWを特許文献2の搬送装置60で把持して搬送しようとすると、爪部材62がウエハWの下方に入り込むことができず、搬送ができない、という不都合が発生する。かかる不都合を解消すべく、図5及び図6に示されるように、凸部51に切欠56を設け、支持台52と爪部材62との干渉を防止することも考えられるが、この場合、切欠56の形成領域においてウエハW外縁が部分的に支持されなくなり、切欠56の上方領域のウエハWに歪み等が生じ、ウエハWにストレスを与えてしまい、些細な荷重が加わるだけで当該ウエハWが破損してしまうという不都合を招来する。
【0006】
[発明の目的]
本発明の目的は、板状部材との間に搬送装置を挿入することができ、ストレスを与えることなく確実に板状部材を支持することができる支持装置及び支持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、板状部材に接して当該板状部材を支持可能な支持面と、この支持面に接する板状部材の移動を規制可能な移動規制手段と、前記板状部材に気体を吹き付けて前記支持面に対する板状部材の着脱を補助可能な着脱補助手段とを備える、という構成を採っている。
【0008】
本発明において、前記板状部材を前記支持面の所定位置に導くガイド手段を備える、という構成を採ってもよい。
【0009】
また、前記ガイド手段は複数設けられ、これらガイド手段を離間接近可能に支持する離間手段を備える、という構成も好ましくは採用される。
【0010】
更に、前記板状部材の受け入れ又は排出を補助可能な入出補助手段を備える、という構成を採ることができる。
【0011】
また、本発明の支持方法は、板状部材に気体を吹き付けて当該板状部材を支持面から離脱した状態とした後、板状部材に接した状態で当該板状部材の移動を規制して支持する、という方法を採っている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、板状部材に気体を吹き付けて支持面に対する板状部材の着脱を補助できるので、板状部材と支持面との間に隙間を形成し、当該隙間に搬送手段を入り込ませ、支持面上に板状部材を載置したり、支持面上から板状部材を把持して搬送することが可能となる。これにより、支持面に前述した切欠を設けなくてもよくなり、切欠に起因して板状部材にストレスが加わることを防止することが可能となる。
【0013】
また、ガイド手段を有するので、板状部材を支持面の所定位置で支持することができる上、板状部材が支持面から離脱した状態で、当該支持面上から板状部材が脱落すること回避することができる。
【0014】
更に、離間手段を備えたことで、板状部材の受け入れや排出を行い易くなり、例えば、板状部材の受け入れ時に、当該板状部材が搬送されてくる位置が少々ずれていたとしても、確実に板状部材を受け入れることができる。
【0015】
また、入出補助手段を有するので、板状部材の支持面への受け入れや、支持面からの排出をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る支持装置の概略平面図。
【図2】前記支持装置の要部部分断面図。
【図3】(A)〜(D)は、板状部材の支持要領の説明図。
【図4】(A)は、板状部材に接着シートを貼付する要領の説明図、(B)は、板状部材を支持する中途段階の説明図。
【図5】従来例に係る支持装置の平面図。
【図6】従来例に係る支持装置の正面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書において、特に明示しない限り、「上」、「下」、「右」、「左」は、図2を基準として用いる。
【0018】
図1及び図2において、支持装置10は、板状部材としてのウエハW下面に接する支持面11を有するテーブル12と、支持面11上のウエハWの移動を規制可能な移動規制手段14と、支持面11に対するウエハWの着脱を補助可能な着脱補助手段15と、平面視でテーブル12の周方向約120°間隔毎に3体設けられたガイド手段17とを備えて構成されている。
【0019】
前記テーブル12は、平面視でウエハWと略同一形状の円形に形成されるとともに、上方を開放する円筒容器状に設けられている。支持面11は、テーブル12の上端面に円形の閉ループ状に形成され、ウエハWの外縁に隣接する所定幅領域だけに接して支持可能となっている。
【0020】
前記支持面11には、テーブル12の周方向所定間隔毎に孔20が形成され、これらの孔20にテーブル12内を延びる通路21と配管22とを介して切替弁としての電磁弁23が接続されている。電磁弁23は、減圧手段としての減圧ポンプ25及び加圧手段としての加圧ポンプ26に接続されている。従って、電磁弁23を切り替えて孔20に減圧ポンプ25を連通させることで、支持面11に接するウエハWを吸着支持可能に設けられ、電磁弁23を切り替えて孔20に加圧ポンプ26を連通させることで、支持面11上のウエハWに気体を吹き付けて隙間Cを形成可能に設けられる。ここにおいて、孔20、通路21、配管22、電磁弁23及び減圧ポンプ25を含んで前記移動規制手段14が構成され、孔20、通路21、配管22、電磁弁23及び加圧ポンプ26を含んで前記着脱補助手段15が構成される。
【0021】
前記各ガイド手段17は、上下方向に延びる円筒状に形成され、テーブル12の外周面にそれぞれ隣接している。各ガイド手段17は、支持面11上に載置されたウエハWの外縁3箇所に接するようになり、当該ウエハWの左右方向への移動規制と、上下方向の移動の案内が可能になっている。
【0022】
前記ガイド手段17は、ウエハWを受け入れたときに当該ウエハWを支持面の所定位置に導くことができる。ガイド手段17の下端側は、駆動機器であって離間手段としての回動モータ32の出力軸32Aに連結されている。この回動モータ32は、ガイド手段17の軸線が上下方向に向けられる位置と、上端側がウエハWから離れる外方に傾く位置との間で回動可能に設けられ、ウエハWの受け入れや排出を行い易くすることができる。なお、回動モータ32は、駆動機器としての直動モータ34のスライダ35に連結されており、当該直動モータ34を作動することで、回動モータ32及びガイド手段17が上下方向に移動する。
【0023】
前記各ガイド手段17の内部には、入出補助手段37がそれぞれ設けられている。入出補助手段37は、ガイド手段17の外面から出力軸39Aを支持面11の上方に出没可能な駆動機器としてのエアシリンダ39と、このエアシリンダ39を上下動させる駆動機器としての直動モータ40とを備えている。
【0024】
ここで、テーブル12へのウエハWの搬送は、図1及び図2中二点鎖線で示される搬送装置Bを用いて行われる。搬送装置Bは、二股状に形成されたハンドB1と、このハンドB1の下面側に設けられ、左右方向に移動可能に設けられた爪部材B2とを備えている。ハンドB1は、図示しない多関節型のロボットアーム等により支持される。爪部材B2は、ウエハWの下方に入り込み、当該ウエハWを左右方向から挟み込んで把持可能に設けられている。
【0025】
次に、本実施形態におけるウエハWの支持方法について説明する。
【0026】
ウエハWを搬送する前に、図3(A)に示されるように、回動モータ32を作動して各ガイド手段17を相互に離間させておく。また、直動モータ40を作動して各エアシリンダ39を上方に移動させ、当該エアシリンダ39の出力軸39Aを各ガイド手段17から突出させた状態としておく。
【0027】
この状態で、ハンドB1をテーブル12の上方に移動させ、爪部材B2で把持したウエハWを出力軸39A上に載置する。このとき、ガイド手段17が相互に離間しているので、搬送されて来るウエハWの位置が少々ずれていたとしても、当該ウエハWがガイド手段17に接触することなく、確実に受け入れることができる。次いで、爪部材B2によるウエハWの把持を解除した後、ハンドB1をテーブル12上から退避させる。
【0028】
次に、図3(B)に示されるように、回動モータ32を作動してガイド手段17を上下方向に向け、ウエハWの外縁にガイド手段17を接触させて、その面方向の移動を規制する。この状態から、直動モータ40を作動してウエハWを下降させることで、ウエハWの受け入れを補助するとともに、電磁弁23を作動して孔20と加圧ポンプ26とを連通させる。次いで、エアシリンダ39の出力軸39Aをガイド手段17内に収納すると、図3(C)に示されるように、ウエハWは、気体の吹き付けによって上方に付勢され、ウエハWと支持面11との間に隙間Cが生じた状態が保たれる。
【0029】
その後、図示しない電空レギュレータ等の緩衝手段を作動し、孔20から吹き付ける気体の量を次第に少なくすることにより、ウエハWを支持面11にゆっくりと近付け、当該支持面11にウエハWが載置される。このとき、ウエハWの外縁にガイド手段17が接触するので、ウエハWが面方向に位置ずれすることなく、当該ウエハWを支持面11の所定位置に正確に載置させることができる。この状態から、電磁弁23を作動して孔20と減圧ポンプとを連通させ、図3(D)に示されるように、孔20から気体を吸引することで、支持面11上でウエハWの移動が規制される。なお、ガイド手段17とウエハWとの間隔に余裕がないときは、ウエハWを支持面11に載置した後であって、支持面11上でウエハWを吸着支持する前にガイド手段17を上下方向に向けるようにすれば、ウエハWの下降がスムーズに行える。
【0030】
ここで、ウエハWへの所定の処理として、例えば図4(A)に示されるように、支持面11上に支持されたウエハW上面に接着シートSを貼付する場合、直動モータ34を作動し、ガイド手段17の上端を支持面11より下方に位置させることで、ウエハW上面上に接着シートSをフラットに配置でき、また、ガイド手段17が邪魔になることなく、接着シートS上面にプレスローラPRを転動させて貼付を行えるようになる。
【0031】
ウエハWへの所定の処理が完了した後、テーブル12上のウエハWを離脱する場合、電磁弁23を作動して吸着を解除し、加圧ポンプ26と図示しない電空レギュレータとを介して孔20から気体を徐々にウエハWに吹き付け、ウエハWと支持面11との間に隙間Cを形成することで、ウエハWの支持面11からの離脱を行う。次いで、隙間Cにエアシリンダ39の出力軸39Aを位置させ、直動モータ40を作動してウエハWを上昇させることで、ウエハWの排出を補助する。これにより、隙間Cが拡大され、搬送手段を入り込ませ易くすることができる。その後、回動モータ32を作動してガイド手段17を相互に離間した後、搬送装置Bに受け渡す。なお、ガイド手段17とウエハWとの間隔に余裕がないときは、支持面11でのウエハWの吸着支持を解除した後であって、孔20を加圧ポンプに連通する前にガイド手段17を相互に離間するようにすれば、ウエハWの上昇がスムーズに行える。なお、各ガイド手段17を上下方向に向けてから搬送装置Bに受け渡たすことで、ウエハWの正確な受け渡しができる。
【0032】
ここで、図4(B)に示されるように、気体をウエハWに吹き付けて支持面11から離脱させるときに、ウエハW上面側に出力軸39Aを位置させてもよく、これにより、離脱されたウエハWの上下位置を調整することが可能となる。
【0033】
従って、このような実施形態によれば、気体の吹き付けによりウエハWを支持面11から離脱して隙間Cを形成できるので、当該隙間Cに搬送装置Bの爪部材B2を入り込ませ、支持面11上のウエハWを支持して搬送させることが可能となる。これにより、支持面11に切欠等を設ける必要がなくなるので、切欠に起因してウエハWにストレスが加わることを防止することができる。
【0034】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0035】
例えば、ガイド手段17の設置数を増減したり省略したりしてもよいし、設置位置を変更してもよい。更に、ガイド手段17全てに離間手段を設ける必要もない。
また、前記実施形態では、ウエハWの外縁に隣接する所定幅領域だけに接してウエハWを支持可能な支持面11を例示したが、支持面は、ウエハWの全面または一部領域を支持可能なものであればよく、ウエハWに気体を吹き付けて当該ウエハWを支持面から着脱可能であれば足りる。
更に、隙間CにウエハWを吸着保持可能な搬送手段を入り込ませ、ウエハWの下方から当該ウエハWを支持する構成としてもよい。
また、移動規制手段14は、静電気や磁力によって板状部材の移動を規制するものであってよい。
更に、着脱補助手段は、板状部材を支持手段12から浮上できるものであれば何ら限定されることはなく、気体としては大気の他に、窒素やネオン等のガス又は混合気を噴出するもの以外に、水や液化化合物等の液体を噴出するものや、静電気や磁石等を採用してもよい。
また、離間手段は、ガイド手段17の軸線が上下方向に向けられた状態のまま、当該ガイド手段17を離間接近可能に構成してもよい。
【0036】
更に、入出補助手段37を省略し、着脱補助手段15による気体の吹付けで形成された隙間Cに搬送手段を入り込ませる構成としてもよい。
【0037】
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【0038】
更に、本発明において、板状部材は、ガラス板、鋼板、または、樹脂板等、その他の被着体も対象とすることができ、半導体ウエハは、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 支持装置
11 支持面
14 移動規制手段
15 着脱補助手段
17 ガイド手段
32 回動モータ(離間手段)
37 入出補助手段
C 隙間
W 半導体ウエハ(板状部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材に接して当該板状部材を支持可能な支持面と、この支持面に接する板状部材の移動を規制可能な移動規制手段と、前記板状部材に気体を吹き付けて前記支持面に対する板状部材の着脱を補助可能な着脱補助手段とを備えていることを特徴とする支持装置。
【請求項2】
前記板状部材を前記支持面の所定位置に導くガイド手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の支持装置。
【請求項3】
前記ガイド手段は複数設けられ、これらガイド手段を離間接近可能に支持する離間手段を備えていることを特徴とする請求項2記載の支持装置。
【請求項4】
前記板状部材の受け入れ又は排出を補助可能な入出補助手段を備えていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の支持装置。
【請求項5】
板状部材に気体を吹き付けて当該板状部材を支持面から離脱した状態とした後、板状部材に接した状態で当該板状部材の移動を規制して支持することを特徴とする支持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−156416(P2012−156416A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15986(P2011−15986)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】