改良されたシール
【課題】引き出しタイプの環境にあっても、摺動磁石シールが上手く機能する貯蔵室の提供。
【解決手段】蓋によって閉じることができる、アクセス用の開口を形成してなる容器であって、蓋は、開口のまわりにて容器を密封できると共に、容器と蓋とを開口に対し横方向に相対的に動かすと蓋が開かれ、容器は、開口のまわりに第1のループ状シールを備え、蓋は、蓋が開口を閉じるとき、第1のループ状シールに対して整列され、協働して密封状態を維持するような、第2のループ状シールを備える。容器と蓋との前記相対的な動きによって、ループ状シールは互いに係合及び係脱し、ループ状シールの少なくとも片方は、他方のループ状シールを引き付けるための磁気手段を具備し、ループ状シールが互いに整列されたときに密封状態を維持する。
【解決手段】蓋によって閉じることができる、アクセス用の開口を形成してなる容器であって、蓋は、開口のまわりにて容器を密封できると共に、容器と蓋とを開口に対し横方向に相対的に動かすと蓋が開かれ、容器は、開口のまわりに第1のループ状シールを備え、蓋は、蓋が開口を閉じるとき、第1のループ状シールに対して整列され、協働して密封状態を維持するような、第2のループ状シールを備える。容器と蓋との前記相対的な動きによって、ループ状シールは互いに係合及び係脱し、ループ状シールの少なくとも片方は、他方のループ状シールを引き付けるための磁気手段を具備し、ループ状シールが互いに整列されたときに密封状態を維持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貯蔵に関し、好ましい実施態様にあっては、食料品及びその他の生鮮食品を貯蔵するための冷蔵庫及び冷凍庫などの機器を含む冷蔵技術に関する。本発明の他の応用例は、化学薬品及び医療検体又は生物試料の貯蔵を含む。また、本発明は、例えば生鮮食品の輸送や貯蔵などの、搬送を伴う用途においても使用される。より一般的には、本発明の用途は、引き出しの使用に関わる一切の貯蔵形態において見い出されるが、特に、引き出しを閉鎖時に密封する必要がある場合に採用される。
【背景技術】
【0002】
本発明が特に利益を発揮するのは、本出願人が同時係属中のWO 01/020237号、WO 02/073104号、WO 02/073105号、及びWO 02/073107号に開示した、複数貯蔵室型の冷蔵機器と関連して用いる場合であるから、これらの出願の内容をここで参照して引用するが、本願ではそれらの明細書に記載されたある種の特徴を発展させ追加をしつつ、別の特徴についてはこれを省略している。以上の明細書に記載されるように、本発明は、冷却環境におけるあらゆる品物の貯蔵に適用することができる。
【0003】
したがって、用語「機器」は、家庭内に固定的に設置される装置を超えて、産業上の用途、科学的用途及び搬送に関わる用途まで拡張される幅広い意味で解釈されるものとする。しかしながら、本明細書では、食料品を貯蔵する家庭用又は商業用の冷蔵機器について具体的に説明する。
本出願人がWO 01/020237号、WO 02/073104号、WO 02/073105号、及びWO 02/073107号において開示した貯蔵機器は、互いにシールされた引き出しであって、交差汚染や、エネルギー浪費、及び結霜を防ぐものである。任意的事項として、異なる貯蔵室毎に異なる温度を設定し、異なる食料品その他の収容物に適合させたり、摂氏ゼロ度を若干上回る温度における半冷凍冷蔵や、摂氏ゼロ度よりもはるかに低温における冷凍貯蔵に適合させたりすることができる。実際に、特定の貯蔵室を冷蔵室から冷凍室に切り換えたり戻したりすることが容易に可能になって、機器全体における冷蔵スペースと冷凍スペースとの比率を変更できる。このように、冷蔵のニーズに応じて機器設定を変えることができる。
【0004】
WO 01/020237号の導入部を簡潔に要約すると、食料品及びその他の生鮮食品を分離して冷蔵状態で貯蔵することの利点は、ずいぶん前から知られており、それらは、すなわち、冷蔵によってそうした品物の劣化を遅らせるとともに、分離によって交差汚染の予防を手助けすることである。従って、効果的でない場合もあるとはいえ通常は、冷蔵庫や冷凍庫などの最新の冷蔵機器は、複数の貯蔵室に仕切られており、ユーザは、それぞれの貯蔵室に異なる種類の食品を貯蔵できる。このような機器のすべてには、最高のエネルギー効率を達成するという別の目的もある。
【0005】
本発明及び、本出願人による上記先願WO 01/020237号、WO 02/073104号、WO 02/073105号、及びWO 02/073107号は、典型的な冷蔵機器の背景に対抗して発明されたものであって、このような冷蔵機器の大部分は、垂直に密封されるヒンジ付きドアを正面にそれぞれ有する1又は複数の直立型キャビネットから構成されている。実質的には、このキャビネット内部の全体によって貯蔵容量が定められ、キャビネット内部は、貯蔵食品を収容する棚又は引き出しによって区切られるのが最も一般的である。ドアを開ければ、キャビネット内のすべての棚又は引き出しにアクセスできる。
【0006】
冷却ユニットはキャビネット内に循環ループを作り出し、この循環ループにおいて、冷却ユニットで冷却された空気はキャビネットの底に向かって下降し、この空気が下降移動中に熱を吸収するため、空気は暖まって冷却ユニットまで上昇し、そこで再び冷却される。また、ファンをキャビネット内に設けるか、キャビネットと連通させることにより、空気を強制循環させることも可能である。棚又は引き出しは代表的に針金で作られているため、このような空気の循環に対してほとんど抵抗を与えない。
WO 01/020237号、WO 02/073104号、WO 02/073105号は、直立型の冷蔵庫と冷凍庫、すなわち、直立型ドアの主な問題点に触れており、こうした直立型ドアは、開放時にキャビネットから冷気を自由に流出させ、上部から流入する暖かい周囲空気と入れ替えてしまう。このように周辺空気がキャビネットに流入するとキャビネット内の温度が上昇するため、冷却ユニットを稼動させてこの温度上昇を修正することに多くのエネルギーが消費される。流入する周辺空気は空中浮遊物質による汚染の可能性をもたらすと共に、この空気中の水分はキャビネット内で凝縮と着氷を発生させる。特に商業用の冷蔵機器に起こり得るように、キャビネットを開く頻度が増えれば増えるほど、これらの問題は悪化する。
【0007】
直立型ドアの構成において、垂直密封部の境界部分では、ドアが閉鎖されている時でさえ、冷気の損失と暖気の侵入が起こり得る。最も冷たい空気は、暖かい空気よりも密度が高いためキャビネットの底に集まって、封止界面に圧力を加えることになり、そのため、密封材がドアとキャビネットの間を完全に密封しない限り、その空気が漏れることになる。
WO 01/020237号、WO 02/073104号、WO 02/073105号に開示した機器はまた、周知の横置き型冷凍庫に固有の諸問題にも触れており、そうした横置き型冷凍庫においては代表的に、上部が開放されたキャビネットが、水平にヒンジ付けされ上方向に開く蓋で閉じられる。このような横置き型冷凍庫は、蓋を開けることができるように冷凍庫の真上の空間を残しておかなければならず、その空間を利用できないので、不便であり空間を無駄にしている。上方向に開く蓋の代わりにスライド式の蓋を用いたとしても、蓋の上には品物を便宜的に置くことができない。さらに、大型の横置き型冷凍庫では、冷凍室の底にある品物を手にするために、身をかがめて、重たくて手が痛くなるほど冷えた品物をたくさん移動させる必要があり、内容物へのアクセスが極めて困難であることも良く知られている。
【0008】
最後に、WO 01/020237号、WO 02/073104号、WO 02/073105号に開示した機器においては、交差汚染を防ぐべく、異なる種類の食料品や他の生鮮食品を分離する上での問題点に触れている。代表的な冷蔵機器において、食品の分離は、それらの冷蔵機器が依存する対流原理及び/又は強制空気循環の原理によって害される。貯蔵室間の空気の対流循環を促進するよう設計された実質的に開放型のバスケットや棚は、水分、酵素及び有害な細菌の循環も合わせて促進する。さらに、開放型のバスケットや棚では、未加熱の肉から出る肉汁などの、こぼれたり漏れたりする恐れのある液体を受け止められないだろう。
直立型冷蔵庫や横置き型冷凍庫に例示される従来の冷蔵機器は、関心のある従来技術の開示に限られない。例えば、1つの冷蔵庫を複数の貯蔵室に区切り、それぞれに専用のドア又は蓋を設けることは長年知られている。このアイデアは、いずれもキャビネット型の冷蔵庫に関する特許である、Earleの英国特許GB602,590号、GB581,121号、及びGB579,071号に開示されている。
【0009】
これらのEarleの文献において、キャビネット前部には引き出しを収容するための複数の矩形開口部が設けられる。各引き出しの前面パネルはそれぞれの開口部より大きくされており、引き出しが閉鎖位置にあるときに重なる部分の周囲には垂直密封材が形成される。引き出し及びその内容物は、すでに説明された種類の冷蔵庫と同様に、対流によって冷気をキャビネット内で循環させる冷却ユニットによって冷却される。この空気の循環をすべての引き出しの間で促進するために、引き出しの上部は開放され、底部には穴が設けられる。また、各引き出しの後部が冷却ユニットから下降する冷気流に曝されるように、引き出しは階段状に配置され、冷蔵庫上段の引き出しは、下段の引き出しよりもキャビネット内の奥行きが短い。
引き出しは一度に一つしか開ける必要がないけれども、開いた引き出しの底部に設けられた穴から冷気は自由に流出して、この冷気は湿った暖かい周辺空気と入れ替わり、エネルギー効率の損失と交差汚染の可能性の上昇を招く。実際に、一つの引き出しが開かれると、その引き出しの高さより上ではキャビネット内の冷気が流れ出し、周辺空気がキャビネット内に引き込まれる。さらに、引き出しは開放と同時に周辺空気を冷蔵庫のキャビネット内部に引き込むピストンとして作用するため、周辺空気の冷蔵庫内部への流入を助長する。暖気は一旦キャビネットの中に入ると、本来そこにあったはずの冷気と同等に自由に循環する。
閉鎖時であっても、キャビネット底部に向かう冷気の蓄積により、最下部の引き出しの垂直封止材にはより大きな圧力がかかり、密封材に欠陥があれば漏れの可能性が高くなる。
上述したタイプの冷蔵庫の別の例は、Earleによる英国特許GB602,329号に開示されている。これに開示される冷蔵庫は上記諸問題の多くをかかえているが、冷却されたキャビネット内部に設けられる個々の引き出しが断熱された側部と基部からなる点でさらに興味深い。先に概説した変形形態とは対照的に、この側部と基部は、空気が通過できないよう中実で穴が形成されていない。引き出しが閉じられたとき、キャビネット内の水平部材が引き出しと一緒に貯蔵室を画定し、このようにして水平部材が引き出しの蓋となる。この貯蔵室には、水平部材の真下に専用の冷却コイルが設けられる。
【0010】
水平部材は下方に突出する後端部を有し、斜めの端縁が引き出しの後壁とぴったり嵌合するらしいが、この点を除けば、引き出しと水平部材の間に形成される密封材についての詳細はほとんど開示されていない。引き出しと水平部材の間の接合部についても、引き出しが閉鎖位置にあるとき水平部材に対して「相当ぴったりと」当て嵌まるようになされているという一般的な陳述以外には何も言われていない。引き出しと水平部材が互いに当接しているだけであるということは、推論としてしか言えない。この構造は、引き出し内外への空気の通過を妨げるが、不浸透性の封止部は形成しないだろう。さらに、蒸気を封じるものではないので、引き出しが閉じているときでさえ、着氷や交差汚染が発生する可能性が高い。
開示された引き出し構成によって作られる貯蔵室には、冷蔵庫の残りの部分に本質的に共通する温度とは別の温度を設定することが可能である。特に、その引き出しは冷凍室として機能できると予想される。ここで、冷凍庫の引き出しが閉じられ、冷却された内部にあるとき、キャビネット内の引き出しの外面が冷蔵庫の温度まで冷却されることを、出願人はこの配置の欠点として理解している。したがって、引き出しが開かれると、冷却された外面は水分を含む周辺空気に曝され、この水分が冷却された表面で凝縮して、望まれない水分の蓄積につながる。凝縮は水蒸気から引き出しへの潜熱の移動を伴なうので、引き出しがキャビネット内の閉鎖位置に戻されたときに、引き出しを再冷却する負担が増す。
さらに、引き出しが閉じられたとき、凝縮した水分は冷蔵庫内部に運ばれる。上述したように、水の存在は細菌の活動を促進する。また、水が冷蔵庫内部に運び込まれることには、その水が凍結するかもしれないというもう一つの欠点がある。つまり、周囲を囲まれた貯蔵室の引き出しが断熱された上部と接する場合、氷が形成されると、引き出しを永久に閉鎖位置に固定する密着部となるため、特に問題となりうる。Earleはこの欠点を認識していたらしく、GB602,329号には、密封部に形成される氷、又は引き出しのレールや他の支持面に形成される氷を破砕するためのカム機構が述べられている。また、氷の蓄積は、接合する密封面の正しい接合を妨げて、密封材の密封能力に影響を及ぼす可能性もある。また、引き出し機構の可動部への氷の蓄積が引き出しの移動を妨げるので望ましくないことは勿論である。
【0011】
WO 01/020237号に対する背景技術として引用された別の興味深い先行技術文献として、Ewenによる米国特許第1,337,696号がある。Ewenは、周囲を包囲するキャビネットに収容される冷蔵状態の引き出し同士を分離することに触れており、使用する冷蔵ユニットは「各引き出しの真上に密接に配置され、引き出しが事実上冷蔵ユニットに当たって閉鎖されると言ってもよい」ものである。しかしながら、引き出しを開けるならば、引き出しと冷蔵ユニットの間に隙間を残しておく必要がある。Earleと同様に、この隙間によって、キャビネット内の湿り空気が引き出しの中へ移動し、水蒸気が凝縮して凍結するので、着氷が促進されることになる。この隙間が小さければ小さいほど、蓄積する氷は一層短時間のうちに引き出しの動きを妨げることになる。また、仮に隙間を大きくするならば、より多くの空気が漏れるため、冷蔵庫のエネルギー効率が低くなり、さらに交差汚染を受け易くなる。
【0012】
さらにEwenにおいては、冷気が漏れることにより、キャビネット内の温度が引き出しの周囲で下がり、その結果、開放時に引き出しに凝縮が起こる可能性が高くなる。また、このようにして漏れる冷気は、キャビネット内で引き出しの後ろを自由に下降することができ、引き出しの外側を実質的に周辺温度より低い温度に曝すことができることに留意されたい。Ewenにおける細部の具体的な設計は、この効果を悪化させている。例えば、Ewenのユニットの底壁は、引き出しの表面温度を大きく下げる効率的な断熱材である。また、引き出し間の内部間仕切りは、引き出しに周囲の熱を伝達させず、引き出し間の熱伝達のみを可能にしており、このようにして引き出し同士の温度の均等化を長期にわたって促進する。各引き出しの外面の大部分は、長時間あるいはわずか一晩放置するだけで、周囲の露点を大きく下回る温度まで下がるだろう。したがって、引き出しが開かれるや否や、その表面には凝縮又は着氷が発生し、また同様に、引き出しを取り外して機器の外に放置した場合、引き出しは凝縮により「汗」をかき始める。
【0013】
Earleと同様に、Ewenの密封キャビネット内での引き出しの開閉は、ピストンのように作用し、隣接する部分に正圧と負圧の両方を交互に与える。これによって、キャビネット前部で引き出し開口部を通じて空気の移動が促進され、引き出しの中やキャビネット自体の中の冷却された空気が追い出される可能性がある。サイズが過大なキャビネットであればピストン効果が小さくなるが、空間の無駄にもなるだろう。逆に、空間効率が良く密接に嵌合するキャビネットは、冷却処理された空気の移動を減らして、この冷気と入れ替わる暖気を冷却する負担を軽くするかもしれないが、引き出しの開閉に対する抵抗が大きくなるだろう。
冷気の漏れを別にしても、先行技術の構成において、引き出しとそれに関連する蓋の間に必然的に残される隙間は、酵素、胞子及び他の空中を浮遊する汚染物質を通過させるのに十分な大きさである。また、Ewenは、互いに連結された共通の排水管を開示しているが、これも、特に上記ピストン作用の下に、引き出し同士の間で汚染物質の自由な移動を許すだろう。
Ewenは引き出し毎に温度を異ならせることに触れているが、複数の冷却蓋は直列に連結されており、各引き出しを独立して温度管理するための手段は設けられていない。温度を異ならせることは、一部の引き出しに他の引き出しよりも多くの冷却要素を設けることによって設計に組み込まれている。また、これ以前の先行技術の貯蔵室と同様に、Ewenの各引き出しは機能的に固定されており、すなわち、冷凍庫又は冷蔵庫のどちらかになる。
【0014】
以上の説明から分かるように、直立型の冷蔵庫や冷凍庫に例示される垂直な密封材を備えた機器においても、横置き型冷凍庫に例示される水平な密封材を備えた機器においても、効率的な冷蔵貯蔵のためには、効果的な密封を行うことが不可欠である。
従来の冷蔵技術においては、密封のために磁石のシールを用いており、ドアや、蓋、又はその他の冷蔵貯蔵室の閉止部材が閉じられるときには、代表的に、アクセス開口の周囲に設けられる密封材に関連付けられた帯状磁石が、弾性的な密封部分を吸引することによって密封接触させている。シールは、開口のまわりに対応する形状にて閉止位置に延設された、互いに協働するループ状シールとして考えることができ、蓋を閉じると、ループが合わさって整列される。一般的には、片方のループ状シールは弾性的で可撓性のシールであり、他方のループ状シールは硬質の密封面であって、ドアや、蓋、又はその他の閉止部材を閉じたとき、当該密封面に対して弾性的で可撓性のシールが着座する。しかしながら、ループ状シールの両方を弾性的で可撓性のシールとし、又はしないことも可能である。また、ループ状シールの双方に関連する磁石手段を設けたり、ループ状シールの片方だけに磁石手段を設けたり、他方には、ループまわりに延びる帯状鋼片など、磁石で吸引される材料を含めたりすることも可能である。
周知の如く、既存の磁石シールは、互いに押し当てたり引き剥したりするようにデザインされているので、この特性は、引き出しの上部周囲を密封するのには適していない。引き出しの場合には、引き出しを開閉して動かすと、ループ状シールの少なくとも一部分において、相対的な摺動運動が生じることは明らかである。この理由は、蓋と引き出しの上縁とが、たとえ相対的に並進移動させられるとしても、当初の平面内になお位置していることにあり、この点で、従来のヒンジ式の蓋やドアにおいて、平面から離れるように回動が生じるのとは異なるためである。代表的な弾性磁石シールをそうした状態で用いるならば、変形し摩耗することはやむを得ず、また、引き出しの動きに過大な摩擦抵抗を与えることになる。
【0015】
本出願人は当初、WO 01/020237号、WO 02/073104号、WO 02/073105号、及び、WO 02/073107号、並びにEarleやEwenが開示した一般的タイプの引き出し式の機器においては、弾性磁石シールは不適切であると考えていた。実際に、本出願人の目的は、磁石であれ何であれ、シール部品間に生じる相対的な摺動運動を回避し最低限にすることであった。そのため、WO 01/020237号及びWO 02/073104号において提案した変形例によるシール構造においては、引き出しに(代表的には垂直である)副次的な動きをさせて、引き出しを固定された蓋から離間させ、もってループ状シールを離した後、引き出しに(代表的には水平である)主たる動きをさせて、引き出しを完全に開き、収容物にアクセスすることとした。引き出しを閉じるときには、主たる動きに続いて副次的な動きが生じて、ループ状シールを互いに押し付け合うように戻す。この2成分による動きは、ループ状シールの部品間に生じる相対的な摺動運動を回避し最低限にするものである。
【0016】
【特許文献1】WO 01/020237号
【特許文献2】WO 02/073104号
【特許文献3】WO 02/073105号
【特許文献4】WO 02/073107号
【特許文献5】GB602,590号
【特許文献6】GB581,121号
【特許文献7】GB579,071号
【特許文献8】GB602,329号
【特許文献9】米国特許第1,337,696号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
引き出しに2成分の動きをさせるというアイデアは、極めて効果的であることが判明したけれども、本出願人は、代替例の模索を続けていた。かかる努力は、本出願人による上記先願WO 01/020237号、WO 02/073104号、WO 02/073105号、及びWO 02/073107号において開示した機器に注目して注がれたが、これらの機器では、引き出しのほとんどの外部が、もって引き出し/蓋の境界の外側が周辺温度の空気に曝されていた。その結果、本出願人は、引き出しタイプの環境にあっても、とりわけ本出願人による上記先願に開示した環境にあっても、摺動磁石シールが上手く機能させられることを見い出した。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明の広義における貯蔵室は、蓋によって閉じることができる、アクセス用の開口を形成してなる容器であって、蓋は、開口のまわりにて容器を密封できると共に、容器と蓋とを開口に対し横方向に相対的に動かすと蓋が開かれ、容器は、開口のまわりに第1のループ状シールを備え、蓋は、蓋が開口を閉じるとき、第1のループ状シールに対して整列され、協働して密封状態を維持するような、第2のループ状シールを備え、容器と蓋との前記相対的な動きによって、ループ状シールは互いに係合及び係脱し、ループ状シールの少なくとも片方は、他方のループ状シールを引き付けるための磁気手段を具備し、ループ状シールが互いに整列されたときに密封状態を維持することを特徴としている。
相対的な動きについて、開口に対する横方向であるとしたのは、開口の片側から他方へ、開口を横切って蓋を並進させて閉じるような、横方向の相対的な動きを包含することを意図している。
【0019】
開示される実施形態においては、容器と蓋とを相対的に動かすと、ループ状シール同士が摺動接触する。このためにループ状シールは実質的に平面状になっていることが好ましく、但し、ループ状シールにおける副次的部分は、面取りによるクリアランスなどで、ループの残余の平面から逸脱していても良い。ループ状シールは、実質的に平行平面内にて移動するもので、実際にはループ状シールは、実質的に同一平面上にある。
好ましい実施形態においては、ループ状シールは、移動方向に対して横向きの部分と、移動方向に対して整列された部分とを備えている。ループ状シールは略矩形状になっていて、前方部分と、後方部分と、2つの側部分とが連続的に隅部で結合されているなど、これらの各部分は実質的に直線状になっている。
ループ状シールは好ましくは連続的になっていて、両方のループ状シールが磁気手段を具備しているか、あるいは、ループ状シールの片方は磁気手段を具備し、ループ状シールの他方は磁気手段によって引き付けられる素材を具備している。
少なくともひとつのループ状シールは、弾性的で可撓性のシールを備えていることが好ましい。この場合、シールは、ウェブで隔てられた略平行な隆起部を形成してなる細長い部材であって、使用時には、隆起部は、ウェブと、これと協働する密封面との間にクリアランスを維持する。より望ましくは、ウェブに沿って磁石又は磁気吸引片が延在し、使用時には、隆起部を、これに協働する密封面に対して密封接触させるように押し付けると良い。
弾性的で可撓性のシールは、他方のループ状シールを磁気吸引するための手段を具備し、シールは、前記手段を他方のループ状シールから離間させるように付勢する。使用時には、シールに働く磁気吸引が強くなり前記付勢力に打ち勝ってシールを働かせて、例えば、ループ状シールが整列すると、磁気吸引が強くなり付勢力に打ち勝ってシールが働く。
ループ状シールにおける磁気手段に関連して、反磁束手段を具備しても良い。
少なくともひとつのループ状シールに関連して、さらにトレースヒータを備えるようにして、凝縮や着氷を抑制しても良い。少なくともひとつのループ状シールは、弾性的で可撓性のシールを備えている場合には、トレースヒータは当該シールに熱を直接加える。例えばトレースヒータはシールの内部に設けることができる。加熱効果を局所化させて、トレースヒータが、シールにおける筐体外方側を加熱するのが有利である。
保守及び修理を容易にするため、少なくともひとつのループ状シールは、弾性的で可撓性のシールを備える場合には、シールは、容器又は蓋に固定された、着脱可能な比較的硬質であるフレームに取り付けられるのが良い。
少なくともひとつのループ状シールの筐体内方側には断熱障壁を備えると有利である。断熱障壁は、容器が冷凍貯蔵に使用されるとき、実質的にすべての関連するループ状シールが、摂氏ゼロ度以上に維持されるように構成される。これにより、ループ状シールへの着氷を解決できる。
【0020】
ループ状シールが矩形状である場合には、容器又は蓋は実質的に矩形状であることが好ましいが、丸められた膨出角部を有していて、容器又は蓋に対して筐体外方にループ状シールを配置させると好ましい。これにより、ループ状シールを周辺空気流に最大に露出させて、凝縮と着氷とのリスクを低減する。
また、本発明に包含される弾性的で可撓性の細長いシールにおいては、ウェブで隔てられた略平行な隆起部を形成しており、ウェブに沿って磁石又は磁気吸引片が延在し、使用時には、隆起部を、これに協働する密封面に対して密封接触させるように押し付けると共に、隆起部は、ウェブと、これと協働する密封面との間にクリアランスを維持する。この構成によれば、摺動運動時の摩擦を最小化できると共に、良好な密封状態を維持できる。
本発明の観点は、好ましくは冷蔵貯蔵機器などの機器に関しているが、調理機器や洗濯機や乾燥機などにも適用できる。機器は、少なくともひとつの容器と、容器内にアクセスすべく容器を引き出して開くことができると共に、容器を戻して容器を閉じられるような、貯蔵室を形成してなる構造体とを具備し、貯蔵室は、容器が貯蔵室から横方向に引き出される第1の開口と第2の開口と備えてなる。別言すれば、本発明が提供する機器は、少なくともひとつの容器と、構造体とを具備し、構造体が形成する貯蔵室から容器を引き出して、容器を開き、容器の内部にアクセスできると共に、容器を戻せば容器は閉じられて、ここで、貯蔵室は容器を引き出すための少なくともひとつの開口を具備し、容器は、構造体に関連付けられた枢軸などの支持体を中心として容器を回動させることで開かれる。
【0021】
容器は、容器が貯蔵室の内部にあるときには、その開口が閉じられることが好ましく、平面図において、例えば四分円形状などの円形の一部分にすると良い。容器の壁は、垂直な枢軸を中心とする半径を適当に形成し、これらの壁は互いに垂直にするのが好ましい。
枢軸は、垂直であるのが有利であり、各開口に隣接していることが好ましい。第1の開口と第2の開口とがある場合には、枢軸は、2つの開口の間に適宜設けられ、容器はいずれかの開口を通ってピボットできるようにする。例えば、貯蔵室は平面図において矩形形状になっていて、枢軸は、長方形の角部に又は角部付近に設けられる。いずれにせよ、枢軸は貯蔵室の内部に、又は貯蔵室の境界部に適切に設けられる。
本発明をさらに良く理解できるように、以下、添付図面を参照して例示的に説明することにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
まず、図1(a)、図1(b)、図1(c)、及び図1(d)を参照すると、例えば冷蔵庫などの、引き出し式の貯蔵機器は、略水平に固定された蓋1などの閉止部材と、蓋に対して水平に可動であって、上部が開放された引き出し2などの容器とから構成されている。実際には、通常は、こうした蓋と引き出しとの組み合わせを2以上設けて、複数貯蔵室の機器を構成する。引き出し2は、図1(a)に示したような、蓋1から完全に開け放たれて完全に開いた位置、つまり引き出し2に品物の出し入れのために自由にアクセスできる位置から、図1(d)に示したような、蓋1によって閉じられ完全に閉じた位置にまでにわたって全範囲にて可動になっている。
【0023】
スカート3は、蓋1から延設されていて、周囲に連続した下向きの蓋シールである、第1のループ状シール4を支持している。スカート3と蓋シール4とは、引き出し2の略垂直な壁によって形成される上部周辺リムのまわりに連続した、上向きの密封面である、第2のループ状シール5に対応し協働すべく形成されている。蓋シール4は、弾性的で可撓性のものであり、密封面5は比較的硬くて、ループ状シール同士が密封接触する際の偏位は、実質的に蓋シール4に制限される。
構造を逆にして、固定された引き出しに対して蓋を摺動させ、それに応じた類似のシール構成にすることも、もちろん可能である。
蓋シール4と密封面5とは、連続的なループになっているが、これらのループに若干の中断や不連続があっても本発明から逸脱するものではないことは明らかである。さらに、蓋シール4と密封面5とは、後述する些細な面取りを除き、概略平面になっていて、これらの平面は実質的に平行であり、実際の実施例では、同一平面で、実質的に水平になっている。引き出し2は水平に動くので、引き出し2を動かして使用するとき、密封面5はその平面内に維持される。引き出し2が使用時に開閉されると、ループ状シールは摺動接触しつつ互いにすれ違う。
【0024】
図示の好ましい実施形態においては、蓋シール4と密封面5の双方が形成するループ状シールは略矩形になっていて、この矩形は、引き出しが動く方向について、これを横切る(つまり直交する)方向の2本の平行で直線状の部分と、引き出しが動く方向について、これに整列された(つまり平行な)方向の2本の平行で直線状の部分とのそれぞれから構成される。ループ状シールにおける連続した部分は、曲がった角部によって結合される。引き出しが動く方向と引き出し2の向きに関して、本願においては、引き出しの動きに対して横方向の2本の平行な部分については、前方部分及び後方部分と称し、引き出しの動きに対して整列された2本の平行な部分については、側部部分と称することとする。従って、蓋シール4と密封面5とはそれぞれ、前方部分と後方部分と2つの側部部分とを具備し、蓋シールにおけるこれらの部分は、密封面における対応部分と鏡像関係になっている。
引き出し2が、図1(a)に示す如く、完全に開いた位置にあるときには、蓋シール4と密封面5との間には、全く整列した部分がないので、これらのループ状シール間にはさほどの磁気吸引は生じない。図1(b)に示す如く、途中まで閉じられる際には、引き出しの密封面5における後方部分は、蓋シール4の前方部分に対して整列される。これらの位置においては、整列されたループ状シールの部分間には磁気吸引が生じるけれども、引き出し2の上部後方縁部は下向きに面取りされていて(図示せず)、蓋シール4の下側にクリアランスを保っており、もって引き出しの後部が蓋シール4の前方部分を通り抜けるときに引っかかることを防いでいる。
【0025】
引き出し2をさらに閉じていくと、図1(c)に示した中間的な位置になって、この位置においては、密封面5の側部部分における後方の部分と、蓋シール4の側部部分における対応する前方の部分との間には整列関係が生じる。しかしながら、密封面5や蓋シール4における前方部分及び後方部分については、これに関わる整列は存在しない。従って、引き出し2を閉じるとき、側部部分の関わりが増えるにつれて磁気吸引が生じるが、密封面5と蓋シール4とにおける前方部分と後方部分とについては、図1(d)に示す如く引き出し2がほぼ完全に閉じられて、ループ状シールが互いに完全に整列して、これらの部分が互いに整列されるまで、磁気吸引に全く貢献することがない。
【0026】
蓋シール4における側部部分は、整列された位置において、密封面5における側部部分に対して摺動接触するが、接触面積は小さいので、引き出し2を続けて閉じる動きに対しては、ほとんど妨害にならない。この点に関して、留意したいのは、シールの境界面に対して平行である、または、該境界面内にあるような摺動運動において、磁石シールが発生させる抵抗力は、かかる面を横切りないし直交する引き離しの動きに比べて、実質的に小さな力であることである。テストによれば、摺動に対する代表的な抵抗力は、引き離す場合の抵抗力のおよそ1/3の大きさである。また、摺動接触の大部分を受けるループ状シールの部分、すなわち側部部分は、引き出しの動きの方向に対し、つまり側部部分が延びる方向に対し、整列した摩擦力の下において、構造的安定性を保つべく最良の向きになっていることに留意されたい。このことは、使用時に、可撓性の蓋シール4の完全性を維持する上で、特に有効である。
【0027】
図1(a)〜図1(d)に示した矩形状であるループ状シールについてのテストによれば、引き出しを開く際に、最初に離れるのは、蓋シール4の連続部分を結合している角部であることが示唆された。事実上、これに助けられて、蓋シール4における隣接部分が、引き出しの密封面5から徐々に剥離する。この剥離作用はさらに、蓋シール4に働く応力と引き出しを開くための労力を低下させるが、引き出し2が閉じられるときに密封の完全性に損傷を与えることはない。
要するに、ループ状シールが完全に整列されるとき、ループ状シール間に生じる総合的な磁気吸引はピークになり、これは固定された蓋に対して引き出しを完全に閉じるときに生じ、また逆も同様である。ループ状シールが完全には整列されていないとき、これは、完全に閉じたときを除く、引き出し又は蓋の動きの範囲における実質的にすべてにわたるが、そうしたときには、総合的な磁気吸引は著しく減少する。
【0028】
次に、図2及び図3を参照すると、蓋シール4と、対向する密封面5と、これらの周囲の蓋及び引き出しの構造について詳しく示している。
スカート3は蓋1から延設されており、U字形のチャネル状になっていて、その平坦な底部面には、中央に細長いアンダーカット溝が設けられ、溝の長手中心面について対称的である、断面が三角形の拡大した細長い凹部が形成されている。蓋1と、そのスカート3とは、実質的に中実であるが、断熱材料から作られている。
引き出し2において、対向する密封面5は、引き出し2の略垂直な壁6の上面としての平坦面であって、引き出しの壁は中空になっていて断熱材7にて充填されている。断面が長方形である帯磁石8は、壁の上面9の中央に沿って、上壁9の中空断面内における下面に設けられた、逆さT字形の溝の上部に配設されていて、帯8は上部壁9の下側から隠ぺいされている。炭素鋼からなる細長い反磁束板10は、逆さT字形の溝の底部に沿って延在し、帯磁石8の下側に配置されていて、帯8をT字形の上部に保持すると共に、壁6の中空断面を満たしている断熱材7によって支えられている。反磁束板10は、腐食に耐えられるように表面保護を備えている。
【0029】
図2及び図3によれば、引き出しの側壁の両側からはフランジ11が延びているが、これらのフランジ11は支持を与える目的のもので、本発明とは関係がない。
図2及び図3に示した蓋シール4は、弾性的で可撓性な帯であり、押出成形やモールド成形に適していて、中央の長手平面を中心として対称的になっている。図示の如く、上から見おろすと、シールが備えているアンカー部分12は、やじり頭部形の断面形状を有していて、スカート3の底面に設けたアンダーカット溝の中にスナップ嵌着される。その下側では、やじり形のアンカー部分12の基部から横方向へ、テーパの付いたフランジ13が延びていて、スカート3の底面に弾性的に当接し、シール4がスカート3に安定して保持されるようになっている。フランジ13の下側においては、帯は中空の横断面になっていて、幅狭のウエスト部分14を、広がった基部部分の上方にて、フランジの下側内方へ延在させて備えている。基部部分に設けられた丸い突出部15は、ウエスト部分14から外方へ、そして下方へ向けて屈曲し、さらに内方へ、そして若干上方へ延びて、互いに一緒になって、中央の略平坦なウェブ16を支えている。従って、ウェブ16は、突出部15によって形成された一対の丸い密封隆起部の間にて、若干上方に配置されていて、蓋シール4における最低レベルをこれらの隆起部が一緒に形成しており、引き出し2の対向する密封面に対して、シール境界を形成する。
【0030】
蓋シールにおける平坦なウェブ16は、シールの長さにわたって延びる通路を備え、シール4におけるこの中空の横断面の中には、別の帯磁石17を保持している。使用時には、この帯17は、引き出し2の密封面に関連付けられた帯磁石8に引き寄せられて、可撓性の蓋シール4を引っ張って、密封面5に対して密封係合させる。反磁束板10を設けた目的は、帯磁石間における磁極の反発を防ぎないし軽減して、もってシールの変形を軽減し、使用時のシールの整列を助けることである。もちろん、片方の帯だけを磁石として、他方は、特に鉄材料など、帯磁石を引き付けないし引き寄せられるような材料にすることも可能であろう。
【0031】
図3の拡大図から明らかなように、蓋シールにおける中央ウェブ16の両側にある突出部15によって、ウェブは蓋の密封面5から離れて保持されるので、密封面5と接触するのは、2本の平行な接触線だけに限られて、これらはそれぞれ、蓋シール4の各突出部15の下側に位置する。その結果、蓋シール4と引き出し2とが相対的に摺動して動くとき、これに対する摩擦抵抗力は最小になる。しかしながら、密封の効力は維持され、というのは、比較的小さな面接触領域にわたって磁気吸引力が働くので、密封圧力は高くことと併せて、実際にはひとつだけでなく、2つの密封領域が存在していることからである。その結果、片方のシールが、例えばゴミの堆積物などで良好に密封できなくとも、同じ不具合を受けていない他方のシールによって、有効に密封がなされる見込みは高い。
本発明によって実現されるシール構造は、ある種の事例では、予想もしなかった別の利点をもたらす。例えば、従来の冷蔵、特に冷凍庫において、磁石の密封面にトレースヒータを配置して、凝縮と着氷を防ぐことは一般的である。本出願人は、磁石シールについて、運用中に遭遇するであろう、全範囲の貯蔵及び周辺環境の条件について試験を行った。この試験は、本出願人による先願WO 01/020237号、WO 02/073104号、WO 02/073105号、及びWO 02/073107号において開示した機器との文脈において実施したが、これらの機器では、引き出しのほとんどの外部が、もって引き出し/蓋の境界の外側が周辺温度の空気に曝されていた。着氷は、普通はシールを固着させるため一目瞭然の問題点になるが、かかる着氷の問題点は見られず、代わりに、本出願人は、シールの表面間に、氷というよりむしろほとんど液体の水分のままの、概ね受容可能な凝縮の形成を見い出した。驚いたことに、この水分は本発明の目的を助け、相対的な摺動運動のための潤滑剤として働いて、水分を介在させたワイパー的な作用によって密封面を清潔に保つ助けになることが見い出された。従って、本発明によれば、トレースヒータを必要としない、自己潤滑式で、自己浄化式のシールを提供することができる。
【0032】
さらに、図1(a)〜(d)に関連して上述した通り、蓋シール4と密封面5との間に生じる総合的な磁気吸引は、これらのループ状シールの整列具合に依存する。大まかに言えば、総合的な吸引力は引き出しが開かれた直後に半減するが、というのは、各ループ状シールにおける前方部分と後方部分とが互いの整列から外れるためである。本出願人は、いくらか直感的に反するものの、かかる特性を可能にして活用するには、磁石シールのもつ弾性が、当該シールの磁気要素を、これに対向する密封面から遠ざけるように付勢すべくデザインすれば良いことを理解した。さらに、シールのデザインにおいては、ループ状シールが全体として整列から外れたときには、かかる弾性が、弱まった総合的な磁気吸引に打ち勝つ一方、ループ状シールが全体として整列したときには、強くなった総合的な磁気吸引が、かかる弾性に打ち勝つようにすれば良い。こうすれば、引き出しが完全に閉じていないとき、とりわけ開閉に自由な動きが求められる場合、シール部分間の接触領域は小さくなって、また逆に、引き出しが完全に閉じられたとき、つまり密封が求められるときに、最大になる。言い換えれば、慎重にデザインすれば、シールは(i)引き出しが完全に閉じられたとき、対向する密封面との完全な密封接触が得られ、しかも、(ii)引き出しの開閉途中などのその他の位置においては、対向する密封面との摺動接触が小さくなって、あるいは完全に非接触にすることができる。
【0033】
本発明の概念の範囲内において、様々な変形例が可能である。いくつかの変形例について、図4、図5、及び図6を参照して説明する。
例えば図4に示した代替的なシール構造では、図2及び図3とは異なった蓋シールの輪郭を採用している。しかしながら、類似点もあるので、対応する部材には共通する参照符号を付している。
図4に示したシール18は、弾性的で可撓性の帯であり、押出成形やモールド成形に適していて、中央の長手平面を中心として(完全にではないものの)大体において対称的になっている。図示の如く、上から見おろすと、シール18が備えているアンカー部分12は、先ほどと同様にやじり頭部形の断面形状を有しているが、この実施形態では、アンカー部分12がスナップ嵌着されるチャネル断面のフレーム部材19は、容易に交換可能な堅固な矩形組立体として、シール18を支持している。フレーム部材19は、蓋1から延びたスカート3の底面に設けた溝部20に嵌着されていて、これにより、フレームとシールとの組立体を蓋1に取り付けている。
【0034】
アンカー部分12の下側においては、シール18は中空の横断面になっていて、図2及び図3に比べてやや幅広ではあるが、幅狭のウエスト部分14を、広がった基部部分の上方にて、内方へ延在させて備えている。先の例と同様に、基部部分に設けられた丸い突出部15は、ウエスト部分14から外方へ、そして下方へ向けて屈曲し、さらに内方へ延びて、互いに一緒になって、中央の略平坦なウェブ16を支えている。ウェブ16は、一体的なチャネル21の内部に隠すように、帯磁石17を覆っていて、引き出し2が閉じられたとき、帯磁石17は、引き出し2の上部密封面5の下側に設けられた、対向する帯磁石8を吸引する。図4からは明らかではないけれども、引き出し2が閉じられると、磁気吸引によって、シール18のウェブ16は下向きに引っ張られ、突出部15は、図2及び図3と同様に、内方へ屈曲すると共にわずかに上方へ屈曲する。引き出し2が開かれて磁気吸引が消失すると、ウェブ16は、突出部15の最低レベルよりも若干上方へと動く。
【0035】
内部については、シール18の輪郭はさらに、弾性的なウェブ22を具備し、その断面は波形に曲がりくねっていて、アンカー部分12とチャネル21との間に延びている。ウェブ22は、シール18の歪に抵抗して、帯磁石17をチャネル21の内部で安定させる助けとなる。
シール18の更なる特徴は、トレースヒータであって、絶縁された抵抗ワイヤ23が、チャネル21横の輪郭内に隠ぺいされ、シール18の筐体外方側における突出部15の内部に収容されている。機器の使用時には、ワイヤ23は低電圧、低電力(代表的にはシール1m当たり4〜5ワットの消費電力)にて連続的に加熱されて、シール18の露出した外面に凝縮が生じることを防いでいる。
図4に示すように、シール18が、蓋1及び引き出し2の外側縁部からかなりの距離、筐体内方側にあるとき、凝縮は問題になり得る。この位置のために、周辺空気の流れはシール18の外側に限られ、露出したシール面にわたって境界空気層が形成される。境界層によって、表面は、凝縮が生じる露点以下に冷やされて、シールの接触面から溢れて凍り付いて、引き出しが閉まったまま動かなくなる。
【0036】
筐体内方のシール位置は、例えば、矩形であるフレーム/シールの組立体から、蓋1へと至り、ここで蓋1と引き出し2とは平面視において単純な曲線の角部になっている。筐体内方の位置は、その場合に必要になるが、というのは、フレーム/シールの組立体の角部が、蓋1及び引き出し2の角部からオーバーハングしないためである。
冷蔵技術の分野においては、シールのトレースヒータは周知であるけれども、これは代表的に、1m当たり30〜40ワットで動作する、高出力の「ムリオンヒータ」を必要とする。さらに、そうしたヒータは代表的に、冷蔵機器のキャビネットの中に組み込まれ、例えば、ドアや蓋の開口部のまわりの断熱発泡材に埋設され、従って、決して交換できるものではない。これとは対照的に、図4に示した構造にあっては、トレースヒータはシール18に直接適用され、シール18における最も傷つきやすい部分に直接設けられ、よって低消費電力を可能にしている。さらに、図4に示したトレースヒータは、シール18及びフレーム部材19と共にユニットとして、わずか数分以内に、容易に交換可能である。
【0037】
次に図5及び図6を参照すると、図示の実施形態においては、シール24が有利な筐体外方の位置に配置され、周辺空気流により良く曝されて、表面温度を露点以上に保てるようになっている。その結果、シールの輪郭は、図4に示したものと同一であるけれども、図4におけるトレースヒータのワイヤ23は、必要ならば残せるとはいえ、省略することが可能になる。
この実施形態においては、シール24は意図的に周辺空気流に曝されているが、シールの輪郭の最外縁には蒸気バリアが形成されて、水分がシール24を迂回するのを防ぎ、シール24の下側やまわりに凝縮や着氷が形成されることを防ぐ。
図6の斜視図には、蓋の裏側を斜視図にて示していて、矩形のシール24は、蓋1の丸められた膨出角部25のおかげで、筐体外方の位置に収まっている。更なる変形箇所は、図6と、図5の断面図とから明らかであるが、断熱フランジないしスカート26がシール24の筐体内方に設けられていることである。これは、シール24を、引き出し2の内部の低温から保護する助けになる。温度勾配に基づく原理から、フランジないしスカート26のすぐ内側では、引き出し2の内部は−20℃であって、シール24のすぐ外側では周辺温度になる。かかる温度勾配を横切って配置される様々なリム境界要素についての、位置、厚み、及び伝導率に従って、温度が摂氏ゼロ度を下回るサブゼロ領域の範囲、つまり着氷の危険性がある範囲が定まる。設計の目的は、サブゼロ領域が断熱フランジないしスカート26を越えないことであり、シールの輪郭は常に凍結点以上であって、氷が形成することはない。
【0038】
本発明の概念の範囲内において、他にも様々な変形例が可能である。例えば、電気抵抗ワイヤなどの電気要素によるトレースヒータは便利ではあるけれども、トレースヒータに置き換えて、ダクトを用いて、その中に、機器の蒸発器からの高温冷媒などを流しても良い。
本発明による改良された磁気シールの構造には、上述したような多くの利益がある。それらはまた、特に冷蔵機器などの貯蔵機器の構成において、その他の利益をもたらす。例えば、図7に示した冷蔵機器27においては、引き出し28が支持構造に対して開閉すべく可動になっていて、かかる支持構造に対して2方向に開くことができる。同様な構造は、本出願人による先願WO 01/020237号にも示唆されている。こうすれば、機器27の両側に立っている作業者は、いずれも収容物にアクセスすることができ、例えば、レストランにおいて、機器27によってキッチンをパブリックな領域とプライベートな領域とに分割しているような場合、「仕切の後ろ側」と「仕切の前側」とに居る作業者がいずれもアクセス可能である。また、作業者が、機器27の上に設けられるキッチンカウンターの両側の調理台に立っていることもある。そうした状況において、機器27の両側に立っている作業者は、同等な便利さで、引き出しの中身にアクセスできる。
図7に示した機器27においては、2つの冷蔵引き出し28が、カウンターないし配膳台の下側に、並列式に配置されている。引き出しの数は重要ではなく、ひとつだけの引き出しでも、2以上の引き出しでも、互いに横並びに、または、互いに積み重ねて、配置することができる。ファンコイルユニット29は、固定された蓋(図示せず)を介して引き出しに冷気を供給し、引き出し28を摺動させて機器27の構造の中に収めたときには、蓋は引き出し28を密封する。ファンコイルユニット29は、伝統的には後部に取り付けられるが、この例においては引き出し28の側部に配置されていて、このため、構造に対して前後に摺動させて引き出し28が開けるようになっている。一般的な冷蔵圧縮機30もまた、側部に取り付けられ、回路内の冷媒をポンプ送出し、これは、ファンコイルユニット29への分岐配管も具備している。
それぞれの引き出し28毎にひとつずつのファンコイルユニット29を図示しているけれども、(温度制御の観点から不利益があるとはいえ)、両方の引き出し28を単一のファンコイルユニット29で、または、その他の冷凍手段で、冷却することもできる。また、空間の利用効率から不利益はあるとはいえ、ファンコイルユニット29と冷蔵圧縮機30を引き出し28の上方又は下方に配置しても良い。
【0039】
図8乃至図10は、どのような新規なやり方によって、本発明を、台所キャビネットなどの家具と統合するのかを示している。ここで、代表的な正方形の平面輪郭をもつキャビネット31は、四分円形の断熱引き出し32を収容していて、四分円の半径はキャビネット31の垂直な壁に対応しているけれども、キャビネット31の内径に比べてわずかに短くなっていて、キャビネット31に対して引き出し32が動けるためのクリアランスを与えている。
半径は、キャビネット31の角部にある枢軸33にて集められ、引き出し32は垂直軸線を中心として、キャビネット31から出し入れされて、図10の破線に示す如く、引き出し32を開閉するようになっている。引き出し32がキャビネット31の内部に完全に閉じられるとき、引き出し32の上部は、蓋(図示せず)によって密封される。
図8から明らかであるように、(図示の如く右上の角部へ向かう)キャビネット31の内部のかなりの体積は、冷蔵のためには冗長であり、ピボット式の引き出し32を収容するには必要ではない。しかしながら、本発明の好ましい実施形態においては、かかる空間は有利に用いられ、図9及び図10に示すように、ファンコイル及び/又は冷蔵圧縮機のユニットなどの補助的な機器が配置される。例えば、図9においては、キャビネット31の右上の角部は切り取られ、細長いファンコイルユニット34がキャビネット31の隣接壁面に対して、この例においては45度だけ傾斜しており、四分円型の引き出し32の外側における利用可能な空間を最適に用いている。キャビネット31を壁に隣接させて、または、他のキャビネットに接して設置する場合には、この切り取り構造によって、ファンコイルユニット34の外部に更なる空間が残されて、かかる空間は、様々な目的、例えばサービス機器や、1又は複数の冷蔵引き出し32のための冷蔵圧縮機35のために用いられる。
【0040】
図8乃至図10に示したキャビネット31は、複合的な配置において、他の同様なキャビネットと併用するのに適しており、それらのうちのいくつかを図11乃至図16に示している。図11乃至図16を検討すると、同一のキャビネット31を異なる向きに配置して、異なる目的を達成できることが明らかであるこれは、図8乃至図10に示したキャビネットのデザインの一層の利益である。
まず、図11、図12、及び図13を見ると、キャビネット31を対にして横並びにする、様々な方法が示されている。例えば図11においては、キャビネット31は同じ方向に向けて配置されている。図12においては、キャビネット31は、切り取られた角部が離されるように、90度の向きに配置されている。興味深くて潜在的に有用な結果としては、対にされたキャビネット31は、共通の枢軸33を共有して、四分円として独立して、または、半円形の全体として出し入れできることである。他方において、図13において、キャビネット31を90度離しているが、この例においては、切り取られた角部が結合されて、キャビネット31の間の後方に大きな空間を確保している。この大きな空間は、1又は複数のファンコイルユニット34を収容したり、及び/又は、冷蔵圧縮機ユニット35を収容するのに適していて、必要に応じて、これらは両方のキャビネット31にて兼用される。
図14及び図15は、3台のキャビネット31をL字形配列に配置したものである。図14は、角の内側に配置36したもので、互いに180度離れた対角線上に対向するキャビネット31が、両端のキャビネットからそれぞれ90度の位置にある、中央のキャビネット31を結合している。本質的には、図14の配置は、図12に示した2台のキャビネットに、第3のキャビネットを付け加えて、同一の枢軸33を共有させたものである。すなわち、すべての3台のキャビネット31は、中央の枢軸33を共有していて、これを中心として、引き出し32が(隣接する引き出しからクリアランスが得られることを条件に)独立して、または、一緒にピボットする。
図15は、角の外側に配置37したもので、図13の2台のキャビネットに第3のキャビネットを付け加えて、追加されたキャビネット31における切り取られた角部は他の2台のキャビネットの切り取られた角部と結合され、ファンコイルユニット34や冷蔵圧縮機ユニット35などの補助機器のためのさらに広い空間が得られている。ここでも、斜めに対向している端部キャビネット31は、互いに180度をなし、中央のキャビネット31は各端部キャビネット31に対して90度の向きになっている。しかしながら、図15におけるすべてのキャビネット31は、図14のキャビネット31と比べると、180度回転した向きにある。
図16は、4台のキャビネット31を配置して、正方形の「孤島型」の形式38としていて、各キャビネット31は隣接するキャビネットに対して90度回転していて、キャビネット31における切り取られた角部は、大きな正方形の中心空間39を作り出している。空間39は、流し台や、調理コンロ、ゴミ捨て排水、換気扇、又はその他の用途に用いられる。支柱(図示せず)などの構造部材を受け入れて、柱のまわりに孤島型38を形成しても良い。
最後に、図17においては、この例では調理コンロ40にて例示される別の台所機器の両側に、キャビネット31を配置している。台所ユニットを連続させるようにビルトイン型に示しているけれども、図17に示したキャビネット31は横に開くこともできることは明らかであって、その場合には、必要に応じ、引き出し32は、図示の枢軸33を筐体外方に配置することで、前方と側方との両方に開かれる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1a】図1(a)は、固定蓋と、可動な引き出しとについて、引き出しの4つの異なる位置を示した下方から見た斜視図である。
【図1b】図1(b)は、固定蓋と、可動な引き出しとについて、引き出しの4つの異なる位置を示した下方から見た斜視図である。
【図1c】図1(c)は、固定蓋と、可動な引き出しとについて、引き出しの4つの異なる位置を示した下方から見た斜視図である。
【図1d】図1(d)は、固定蓋と、可動な引き出しとについて、引き出しの4つの異なる位置を示した下方から見た斜視図である。
【図2】図2は、図1(a)、図1(b)、図1(c)、及び図1(d)に示した蓋と引き出しとに設けられた、対向するシール部分を破断して示した斜視図である。
【図3】図3は、図2に示したシール部分について、これを拡大して示した断面図である。
【図4】図4は、代替例によるシール構造を示した横断面図であって、蓋及び引き出しに対して、シールは筐体内方に取り付けられ、オプションのトレースヒータが組み込まれている。
【図5】図5は、さらに別の代替例によるシール構造を示した横断面図であって、蓋及び引き出しに対して、シールは筐体外方に取り付けられ、シールの輪郭は図4と同じだがトレースヒータは設けられず、シールの筐体内方において下方へ突設された断熱フランジがこれを補っている。
【図6】図6は、図5の蓋を裏返して示した斜視図であって、蓋に設けられた断熱フランジに対して筐体外方位置に取り付けられたシールと、シールの筐体外方位置に適合するための膨出角部とを備えている。
【図7】図7は、冷蔵機器を示した平面図であって、引き出しは開閉すべく支持構造に対して可動に設けられ、構造体に対して2以上の方向に開くことができるものである。
【図8】図8は、台所キャビネットを示した平面図であって、引き出しは垂直軸を中心として、ピボットして開かれる。
【図9】図9は、図8に対応する平面図であって、引き出しによって空間が占拠されない様子を示している。
【図10】図10は、図9に対応する平面図であって、引き出しが動く範囲について、全開状態と半開状態とを示している。
【図11】図11は、図8〜10に示したキャビネットを様々に組み合わせた様子を示した平面図である。
【図12】図12は、図8〜10に示したキャビネットを様々に組み合わせた様子を示した平面図である。
【図13】図13は、図8〜10に示したキャビネットを様々に組み合わせた様子を示した平面図である。
【図14】図14は、図8〜10に示した3つのキャビネットを、L字形配列において、様々に組み合わせた様子を示した平面図である。
【図15】図15は、図8〜10に示した3つのキャビネットを、L字形配列において、様々に組み合わせた様子を示した平面図である。
【図16】図16は、図8〜10に示した4つのキャビネットを、正方形配列において組み合わせた様子を示した平面図である。
【図17】図17は、図8〜10に示したキャビネットを、コンロで例示される別の台所機器において配置している様子を示した平面図である。
【図1(a)】
【図1(b)】
【図1(c)】
【図1(d)】
【技術分野】
【0001】
本発明は貯蔵に関し、好ましい実施態様にあっては、食料品及びその他の生鮮食品を貯蔵するための冷蔵庫及び冷凍庫などの機器を含む冷蔵技術に関する。本発明の他の応用例は、化学薬品及び医療検体又は生物試料の貯蔵を含む。また、本発明は、例えば生鮮食品の輸送や貯蔵などの、搬送を伴う用途においても使用される。より一般的には、本発明の用途は、引き出しの使用に関わる一切の貯蔵形態において見い出されるが、特に、引き出しを閉鎖時に密封する必要がある場合に採用される。
【背景技術】
【0002】
本発明が特に利益を発揮するのは、本出願人が同時係属中のWO 01/020237号、WO 02/073104号、WO 02/073105号、及びWO 02/073107号に開示した、複数貯蔵室型の冷蔵機器と関連して用いる場合であるから、これらの出願の内容をここで参照して引用するが、本願ではそれらの明細書に記載されたある種の特徴を発展させ追加をしつつ、別の特徴についてはこれを省略している。以上の明細書に記載されるように、本発明は、冷却環境におけるあらゆる品物の貯蔵に適用することができる。
【0003】
したがって、用語「機器」は、家庭内に固定的に設置される装置を超えて、産業上の用途、科学的用途及び搬送に関わる用途まで拡張される幅広い意味で解釈されるものとする。しかしながら、本明細書では、食料品を貯蔵する家庭用又は商業用の冷蔵機器について具体的に説明する。
本出願人がWO 01/020237号、WO 02/073104号、WO 02/073105号、及びWO 02/073107号において開示した貯蔵機器は、互いにシールされた引き出しであって、交差汚染や、エネルギー浪費、及び結霜を防ぐものである。任意的事項として、異なる貯蔵室毎に異なる温度を設定し、異なる食料品その他の収容物に適合させたり、摂氏ゼロ度を若干上回る温度における半冷凍冷蔵や、摂氏ゼロ度よりもはるかに低温における冷凍貯蔵に適合させたりすることができる。実際に、特定の貯蔵室を冷蔵室から冷凍室に切り換えたり戻したりすることが容易に可能になって、機器全体における冷蔵スペースと冷凍スペースとの比率を変更できる。このように、冷蔵のニーズに応じて機器設定を変えることができる。
【0004】
WO 01/020237号の導入部を簡潔に要約すると、食料品及びその他の生鮮食品を分離して冷蔵状態で貯蔵することの利点は、ずいぶん前から知られており、それらは、すなわち、冷蔵によってそうした品物の劣化を遅らせるとともに、分離によって交差汚染の予防を手助けすることである。従って、効果的でない場合もあるとはいえ通常は、冷蔵庫や冷凍庫などの最新の冷蔵機器は、複数の貯蔵室に仕切られており、ユーザは、それぞれの貯蔵室に異なる種類の食品を貯蔵できる。このような機器のすべてには、最高のエネルギー効率を達成するという別の目的もある。
【0005】
本発明及び、本出願人による上記先願WO 01/020237号、WO 02/073104号、WO 02/073105号、及びWO 02/073107号は、典型的な冷蔵機器の背景に対抗して発明されたものであって、このような冷蔵機器の大部分は、垂直に密封されるヒンジ付きドアを正面にそれぞれ有する1又は複数の直立型キャビネットから構成されている。実質的には、このキャビネット内部の全体によって貯蔵容量が定められ、キャビネット内部は、貯蔵食品を収容する棚又は引き出しによって区切られるのが最も一般的である。ドアを開ければ、キャビネット内のすべての棚又は引き出しにアクセスできる。
【0006】
冷却ユニットはキャビネット内に循環ループを作り出し、この循環ループにおいて、冷却ユニットで冷却された空気はキャビネットの底に向かって下降し、この空気が下降移動中に熱を吸収するため、空気は暖まって冷却ユニットまで上昇し、そこで再び冷却される。また、ファンをキャビネット内に設けるか、キャビネットと連通させることにより、空気を強制循環させることも可能である。棚又は引き出しは代表的に針金で作られているため、このような空気の循環に対してほとんど抵抗を与えない。
WO 01/020237号、WO 02/073104号、WO 02/073105号は、直立型の冷蔵庫と冷凍庫、すなわち、直立型ドアの主な問題点に触れており、こうした直立型ドアは、開放時にキャビネットから冷気を自由に流出させ、上部から流入する暖かい周囲空気と入れ替えてしまう。このように周辺空気がキャビネットに流入するとキャビネット内の温度が上昇するため、冷却ユニットを稼動させてこの温度上昇を修正することに多くのエネルギーが消費される。流入する周辺空気は空中浮遊物質による汚染の可能性をもたらすと共に、この空気中の水分はキャビネット内で凝縮と着氷を発生させる。特に商業用の冷蔵機器に起こり得るように、キャビネットを開く頻度が増えれば増えるほど、これらの問題は悪化する。
【0007】
直立型ドアの構成において、垂直密封部の境界部分では、ドアが閉鎖されている時でさえ、冷気の損失と暖気の侵入が起こり得る。最も冷たい空気は、暖かい空気よりも密度が高いためキャビネットの底に集まって、封止界面に圧力を加えることになり、そのため、密封材がドアとキャビネットの間を完全に密封しない限り、その空気が漏れることになる。
WO 01/020237号、WO 02/073104号、WO 02/073105号に開示した機器はまた、周知の横置き型冷凍庫に固有の諸問題にも触れており、そうした横置き型冷凍庫においては代表的に、上部が開放されたキャビネットが、水平にヒンジ付けされ上方向に開く蓋で閉じられる。このような横置き型冷凍庫は、蓋を開けることができるように冷凍庫の真上の空間を残しておかなければならず、その空間を利用できないので、不便であり空間を無駄にしている。上方向に開く蓋の代わりにスライド式の蓋を用いたとしても、蓋の上には品物を便宜的に置くことができない。さらに、大型の横置き型冷凍庫では、冷凍室の底にある品物を手にするために、身をかがめて、重たくて手が痛くなるほど冷えた品物をたくさん移動させる必要があり、内容物へのアクセスが極めて困難であることも良く知られている。
【0008】
最後に、WO 01/020237号、WO 02/073104号、WO 02/073105号に開示した機器においては、交差汚染を防ぐべく、異なる種類の食料品や他の生鮮食品を分離する上での問題点に触れている。代表的な冷蔵機器において、食品の分離は、それらの冷蔵機器が依存する対流原理及び/又は強制空気循環の原理によって害される。貯蔵室間の空気の対流循環を促進するよう設計された実質的に開放型のバスケットや棚は、水分、酵素及び有害な細菌の循環も合わせて促進する。さらに、開放型のバスケットや棚では、未加熱の肉から出る肉汁などの、こぼれたり漏れたりする恐れのある液体を受け止められないだろう。
直立型冷蔵庫や横置き型冷凍庫に例示される従来の冷蔵機器は、関心のある従来技術の開示に限られない。例えば、1つの冷蔵庫を複数の貯蔵室に区切り、それぞれに専用のドア又は蓋を設けることは長年知られている。このアイデアは、いずれもキャビネット型の冷蔵庫に関する特許である、Earleの英国特許GB602,590号、GB581,121号、及びGB579,071号に開示されている。
【0009】
これらのEarleの文献において、キャビネット前部には引き出しを収容するための複数の矩形開口部が設けられる。各引き出しの前面パネルはそれぞれの開口部より大きくされており、引き出しが閉鎖位置にあるときに重なる部分の周囲には垂直密封材が形成される。引き出し及びその内容物は、すでに説明された種類の冷蔵庫と同様に、対流によって冷気をキャビネット内で循環させる冷却ユニットによって冷却される。この空気の循環をすべての引き出しの間で促進するために、引き出しの上部は開放され、底部には穴が設けられる。また、各引き出しの後部が冷却ユニットから下降する冷気流に曝されるように、引き出しは階段状に配置され、冷蔵庫上段の引き出しは、下段の引き出しよりもキャビネット内の奥行きが短い。
引き出しは一度に一つしか開ける必要がないけれども、開いた引き出しの底部に設けられた穴から冷気は自由に流出して、この冷気は湿った暖かい周辺空気と入れ替わり、エネルギー効率の損失と交差汚染の可能性の上昇を招く。実際に、一つの引き出しが開かれると、その引き出しの高さより上ではキャビネット内の冷気が流れ出し、周辺空気がキャビネット内に引き込まれる。さらに、引き出しは開放と同時に周辺空気を冷蔵庫のキャビネット内部に引き込むピストンとして作用するため、周辺空気の冷蔵庫内部への流入を助長する。暖気は一旦キャビネットの中に入ると、本来そこにあったはずの冷気と同等に自由に循環する。
閉鎖時であっても、キャビネット底部に向かう冷気の蓄積により、最下部の引き出しの垂直封止材にはより大きな圧力がかかり、密封材に欠陥があれば漏れの可能性が高くなる。
上述したタイプの冷蔵庫の別の例は、Earleによる英国特許GB602,329号に開示されている。これに開示される冷蔵庫は上記諸問題の多くをかかえているが、冷却されたキャビネット内部に設けられる個々の引き出しが断熱された側部と基部からなる点でさらに興味深い。先に概説した変形形態とは対照的に、この側部と基部は、空気が通過できないよう中実で穴が形成されていない。引き出しが閉じられたとき、キャビネット内の水平部材が引き出しと一緒に貯蔵室を画定し、このようにして水平部材が引き出しの蓋となる。この貯蔵室には、水平部材の真下に専用の冷却コイルが設けられる。
【0010】
水平部材は下方に突出する後端部を有し、斜めの端縁が引き出しの後壁とぴったり嵌合するらしいが、この点を除けば、引き出しと水平部材の間に形成される密封材についての詳細はほとんど開示されていない。引き出しと水平部材の間の接合部についても、引き出しが閉鎖位置にあるとき水平部材に対して「相当ぴったりと」当て嵌まるようになされているという一般的な陳述以外には何も言われていない。引き出しと水平部材が互いに当接しているだけであるということは、推論としてしか言えない。この構造は、引き出し内外への空気の通過を妨げるが、不浸透性の封止部は形成しないだろう。さらに、蒸気を封じるものではないので、引き出しが閉じているときでさえ、着氷や交差汚染が発生する可能性が高い。
開示された引き出し構成によって作られる貯蔵室には、冷蔵庫の残りの部分に本質的に共通する温度とは別の温度を設定することが可能である。特に、その引き出しは冷凍室として機能できると予想される。ここで、冷凍庫の引き出しが閉じられ、冷却された内部にあるとき、キャビネット内の引き出しの外面が冷蔵庫の温度まで冷却されることを、出願人はこの配置の欠点として理解している。したがって、引き出しが開かれると、冷却された外面は水分を含む周辺空気に曝され、この水分が冷却された表面で凝縮して、望まれない水分の蓄積につながる。凝縮は水蒸気から引き出しへの潜熱の移動を伴なうので、引き出しがキャビネット内の閉鎖位置に戻されたときに、引き出しを再冷却する負担が増す。
さらに、引き出しが閉じられたとき、凝縮した水分は冷蔵庫内部に運ばれる。上述したように、水の存在は細菌の活動を促進する。また、水が冷蔵庫内部に運び込まれることには、その水が凍結するかもしれないというもう一つの欠点がある。つまり、周囲を囲まれた貯蔵室の引き出しが断熱された上部と接する場合、氷が形成されると、引き出しを永久に閉鎖位置に固定する密着部となるため、特に問題となりうる。Earleはこの欠点を認識していたらしく、GB602,329号には、密封部に形成される氷、又は引き出しのレールや他の支持面に形成される氷を破砕するためのカム機構が述べられている。また、氷の蓄積は、接合する密封面の正しい接合を妨げて、密封材の密封能力に影響を及ぼす可能性もある。また、引き出し機構の可動部への氷の蓄積が引き出しの移動を妨げるので望ましくないことは勿論である。
【0011】
WO 01/020237号に対する背景技術として引用された別の興味深い先行技術文献として、Ewenによる米国特許第1,337,696号がある。Ewenは、周囲を包囲するキャビネットに収容される冷蔵状態の引き出し同士を分離することに触れており、使用する冷蔵ユニットは「各引き出しの真上に密接に配置され、引き出しが事実上冷蔵ユニットに当たって閉鎖されると言ってもよい」ものである。しかしながら、引き出しを開けるならば、引き出しと冷蔵ユニットの間に隙間を残しておく必要がある。Earleと同様に、この隙間によって、キャビネット内の湿り空気が引き出しの中へ移動し、水蒸気が凝縮して凍結するので、着氷が促進されることになる。この隙間が小さければ小さいほど、蓄積する氷は一層短時間のうちに引き出しの動きを妨げることになる。また、仮に隙間を大きくするならば、より多くの空気が漏れるため、冷蔵庫のエネルギー効率が低くなり、さらに交差汚染を受け易くなる。
【0012】
さらにEwenにおいては、冷気が漏れることにより、キャビネット内の温度が引き出しの周囲で下がり、その結果、開放時に引き出しに凝縮が起こる可能性が高くなる。また、このようにして漏れる冷気は、キャビネット内で引き出しの後ろを自由に下降することができ、引き出しの外側を実質的に周辺温度より低い温度に曝すことができることに留意されたい。Ewenにおける細部の具体的な設計は、この効果を悪化させている。例えば、Ewenのユニットの底壁は、引き出しの表面温度を大きく下げる効率的な断熱材である。また、引き出し間の内部間仕切りは、引き出しに周囲の熱を伝達させず、引き出し間の熱伝達のみを可能にしており、このようにして引き出し同士の温度の均等化を長期にわたって促進する。各引き出しの外面の大部分は、長時間あるいはわずか一晩放置するだけで、周囲の露点を大きく下回る温度まで下がるだろう。したがって、引き出しが開かれるや否や、その表面には凝縮又は着氷が発生し、また同様に、引き出しを取り外して機器の外に放置した場合、引き出しは凝縮により「汗」をかき始める。
【0013】
Earleと同様に、Ewenの密封キャビネット内での引き出しの開閉は、ピストンのように作用し、隣接する部分に正圧と負圧の両方を交互に与える。これによって、キャビネット前部で引き出し開口部を通じて空気の移動が促進され、引き出しの中やキャビネット自体の中の冷却された空気が追い出される可能性がある。サイズが過大なキャビネットであればピストン効果が小さくなるが、空間の無駄にもなるだろう。逆に、空間効率が良く密接に嵌合するキャビネットは、冷却処理された空気の移動を減らして、この冷気と入れ替わる暖気を冷却する負担を軽くするかもしれないが、引き出しの開閉に対する抵抗が大きくなるだろう。
冷気の漏れを別にしても、先行技術の構成において、引き出しとそれに関連する蓋の間に必然的に残される隙間は、酵素、胞子及び他の空中を浮遊する汚染物質を通過させるのに十分な大きさである。また、Ewenは、互いに連結された共通の排水管を開示しているが、これも、特に上記ピストン作用の下に、引き出し同士の間で汚染物質の自由な移動を許すだろう。
Ewenは引き出し毎に温度を異ならせることに触れているが、複数の冷却蓋は直列に連結されており、各引き出しを独立して温度管理するための手段は設けられていない。温度を異ならせることは、一部の引き出しに他の引き出しよりも多くの冷却要素を設けることによって設計に組み込まれている。また、これ以前の先行技術の貯蔵室と同様に、Ewenの各引き出しは機能的に固定されており、すなわち、冷凍庫又は冷蔵庫のどちらかになる。
【0014】
以上の説明から分かるように、直立型の冷蔵庫や冷凍庫に例示される垂直な密封材を備えた機器においても、横置き型冷凍庫に例示される水平な密封材を備えた機器においても、効率的な冷蔵貯蔵のためには、効果的な密封を行うことが不可欠である。
従来の冷蔵技術においては、密封のために磁石のシールを用いており、ドアや、蓋、又はその他の冷蔵貯蔵室の閉止部材が閉じられるときには、代表的に、アクセス開口の周囲に設けられる密封材に関連付けられた帯状磁石が、弾性的な密封部分を吸引することによって密封接触させている。シールは、開口のまわりに対応する形状にて閉止位置に延設された、互いに協働するループ状シールとして考えることができ、蓋を閉じると、ループが合わさって整列される。一般的には、片方のループ状シールは弾性的で可撓性のシールであり、他方のループ状シールは硬質の密封面であって、ドアや、蓋、又はその他の閉止部材を閉じたとき、当該密封面に対して弾性的で可撓性のシールが着座する。しかしながら、ループ状シールの両方を弾性的で可撓性のシールとし、又はしないことも可能である。また、ループ状シールの双方に関連する磁石手段を設けたり、ループ状シールの片方だけに磁石手段を設けたり、他方には、ループまわりに延びる帯状鋼片など、磁石で吸引される材料を含めたりすることも可能である。
周知の如く、既存の磁石シールは、互いに押し当てたり引き剥したりするようにデザインされているので、この特性は、引き出しの上部周囲を密封するのには適していない。引き出しの場合には、引き出しを開閉して動かすと、ループ状シールの少なくとも一部分において、相対的な摺動運動が生じることは明らかである。この理由は、蓋と引き出しの上縁とが、たとえ相対的に並進移動させられるとしても、当初の平面内になお位置していることにあり、この点で、従来のヒンジ式の蓋やドアにおいて、平面から離れるように回動が生じるのとは異なるためである。代表的な弾性磁石シールをそうした状態で用いるならば、変形し摩耗することはやむを得ず、また、引き出しの動きに過大な摩擦抵抗を与えることになる。
【0015】
本出願人は当初、WO 01/020237号、WO 02/073104号、WO 02/073105号、及び、WO 02/073107号、並びにEarleやEwenが開示した一般的タイプの引き出し式の機器においては、弾性磁石シールは不適切であると考えていた。実際に、本出願人の目的は、磁石であれ何であれ、シール部品間に生じる相対的な摺動運動を回避し最低限にすることであった。そのため、WO 01/020237号及びWO 02/073104号において提案した変形例によるシール構造においては、引き出しに(代表的には垂直である)副次的な動きをさせて、引き出しを固定された蓋から離間させ、もってループ状シールを離した後、引き出しに(代表的には水平である)主たる動きをさせて、引き出しを完全に開き、収容物にアクセスすることとした。引き出しを閉じるときには、主たる動きに続いて副次的な動きが生じて、ループ状シールを互いに押し付け合うように戻す。この2成分による動きは、ループ状シールの部品間に生じる相対的な摺動運動を回避し最低限にするものである。
【0016】
【特許文献1】WO 01/020237号
【特許文献2】WO 02/073104号
【特許文献3】WO 02/073105号
【特許文献4】WO 02/073107号
【特許文献5】GB602,590号
【特許文献6】GB581,121号
【特許文献7】GB579,071号
【特許文献8】GB602,329号
【特許文献9】米国特許第1,337,696号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
引き出しに2成分の動きをさせるというアイデアは、極めて効果的であることが判明したけれども、本出願人は、代替例の模索を続けていた。かかる努力は、本出願人による上記先願WO 01/020237号、WO 02/073104号、WO 02/073105号、及びWO 02/073107号において開示した機器に注目して注がれたが、これらの機器では、引き出しのほとんどの外部が、もって引き出し/蓋の境界の外側が周辺温度の空気に曝されていた。その結果、本出願人は、引き出しタイプの環境にあっても、とりわけ本出願人による上記先願に開示した環境にあっても、摺動磁石シールが上手く機能させられることを見い出した。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明の広義における貯蔵室は、蓋によって閉じることができる、アクセス用の開口を形成してなる容器であって、蓋は、開口のまわりにて容器を密封できると共に、容器と蓋とを開口に対し横方向に相対的に動かすと蓋が開かれ、容器は、開口のまわりに第1のループ状シールを備え、蓋は、蓋が開口を閉じるとき、第1のループ状シールに対して整列され、協働して密封状態を維持するような、第2のループ状シールを備え、容器と蓋との前記相対的な動きによって、ループ状シールは互いに係合及び係脱し、ループ状シールの少なくとも片方は、他方のループ状シールを引き付けるための磁気手段を具備し、ループ状シールが互いに整列されたときに密封状態を維持することを特徴としている。
相対的な動きについて、開口に対する横方向であるとしたのは、開口の片側から他方へ、開口を横切って蓋を並進させて閉じるような、横方向の相対的な動きを包含することを意図している。
【0019】
開示される実施形態においては、容器と蓋とを相対的に動かすと、ループ状シール同士が摺動接触する。このためにループ状シールは実質的に平面状になっていることが好ましく、但し、ループ状シールにおける副次的部分は、面取りによるクリアランスなどで、ループの残余の平面から逸脱していても良い。ループ状シールは、実質的に平行平面内にて移動するもので、実際にはループ状シールは、実質的に同一平面上にある。
好ましい実施形態においては、ループ状シールは、移動方向に対して横向きの部分と、移動方向に対して整列された部分とを備えている。ループ状シールは略矩形状になっていて、前方部分と、後方部分と、2つの側部分とが連続的に隅部で結合されているなど、これらの各部分は実質的に直線状になっている。
ループ状シールは好ましくは連続的になっていて、両方のループ状シールが磁気手段を具備しているか、あるいは、ループ状シールの片方は磁気手段を具備し、ループ状シールの他方は磁気手段によって引き付けられる素材を具備している。
少なくともひとつのループ状シールは、弾性的で可撓性のシールを備えていることが好ましい。この場合、シールは、ウェブで隔てられた略平行な隆起部を形成してなる細長い部材であって、使用時には、隆起部は、ウェブと、これと協働する密封面との間にクリアランスを維持する。より望ましくは、ウェブに沿って磁石又は磁気吸引片が延在し、使用時には、隆起部を、これに協働する密封面に対して密封接触させるように押し付けると良い。
弾性的で可撓性のシールは、他方のループ状シールを磁気吸引するための手段を具備し、シールは、前記手段を他方のループ状シールから離間させるように付勢する。使用時には、シールに働く磁気吸引が強くなり前記付勢力に打ち勝ってシールを働かせて、例えば、ループ状シールが整列すると、磁気吸引が強くなり付勢力に打ち勝ってシールが働く。
ループ状シールにおける磁気手段に関連して、反磁束手段を具備しても良い。
少なくともひとつのループ状シールに関連して、さらにトレースヒータを備えるようにして、凝縮や着氷を抑制しても良い。少なくともひとつのループ状シールは、弾性的で可撓性のシールを備えている場合には、トレースヒータは当該シールに熱を直接加える。例えばトレースヒータはシールの内部に設けることができる。加熱効果を局所化させて、トレースヒータが、シールにおける筐体外方側を加熱するのが有利である。
保守及び修理を容易にするため、少なくともひとつのループ状シールは、弾性的で可撓性のシールを備える場合には、シールは、容器又は蓋に固定された、着脱可能な比較的硬質であるフレームに取り付けられるのが良い。
少なくともひとつのループ状シールの筐体内方側には断熱障壁を備えると有利である。断熱障壁は、容器が冷凍貯蔵に使用されるとき、実質的にすべての関連するループ状シールが、摂氏ゼロ度以上に維持されるように構成される。これにより、ループ状シールへの着氷を解決できる。
【0020】
ループ状シールが矩形状である場合には、容器又は蓋は実質的に矩形状であることが好ましいが、丸められた膨出角部を有していて、容器又は蓋に対して筐体外方にループ状シールを配置させると好ましい。これにより、ループ状シールを周辺空気流に最大に露出させて、凝縮と着氷とのリスクを低減する。
また、本発明に包含される弾性的で可撓性の細長いシールにおいては、ウェブで隔てられた略平行な隆起部を形成しており、ウェブに沿って磁石又は磁気吸引片が延在し、使用時には、隆起部を、これに協働する密封面に対して密封接触させるように押し付けると共に、隆起部は、ウェブと、これと協働する密封面との間にクリアランスを維持する。この構成によれば、摺動運動時の摩擦を最小化できると共に、良好な密封状態を維持できる。
本発明の観点は、好ましくは冷蔵貯蔵機器などの機器に関しているが、調理機器や洗濯機や乾燥機などにも適用できる。機器は、少なくともひとつの容器と、容器内にアクセスすべく容器を引き出して開くことができると共に、容器を戻して容器を閉じられるような、貯蔵室を形成してなる構造体とを具備し、貯蔵室は、容器が貯蔵室から横方向に引き出される第1の開口と第2の開口と備えてなる。別言すれば、本発明が提供する機器は、少なくともひとつの容器と、構造体とを具備し、構造体が形成する貯蔵室から容器を引き出して、容器を開き、容器の内部にアクセスできると共に、容器を戻せば容器は閉じられて、ここで、貯蔵室は容器を引き出すための少なくともひとつの開口を具備し、容器は、構造体に関連付けられた枢軸などの支持体を中心として容器を回動させることで開かれる。
【0021】
容器は、容器が貯蔵室の内部にあるときには、その開口が閉じられることが好ましく、平面図において、例えば四分円形状などの円形の一部分にすると良い。容器の壁は、垂直な枢軸を中心とする半径を適当に形成し、これらの壁は互いに垂直にするのが好ましい。
枢軸は、垂直であるのが有利であり、各開口に隣接していることが好ましい。第1の開口と第2の開口とがある場合には、枢軸は、2つの開口の間に適宜設けられ、容器はいずれかの開口を通ってピボットできるようにする。例えば、貯蔵室は平面図において矩形形状になっていて、枢軸は、長方形の角部に又は角部付近に設けられる。いずれにせよ、枢軸は貯蔵室の内部に、又は貯蔵室の境界部に適切に設けられる。
本発明をさらに良く理解できるように、以下、添付図面を参照して例示的に説明することにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
まず、図1(a)、図1(b)、図1(c)、及び図1(d)を参照すると、例えば冷蔵庫などの、引き出し式の貯蔵機器は、略水平に固定された蓋1などの閉止部材と、蓋に対して水平に可動であって、上部が開放された引き出し2などの容器とから構成されている。実際には、通常は、こうした蓋と引き出しとの組み合わせを2以上設けて、複数貯蔵室の機器を構成する。引き出し2は、図1(a)に示したような、蓋1から完全に開け放たれて完全に開いた位置、つまり引き出し2に品物の出し入れのために自由にアクセスできる位置から、図1(d)に示したような、蓋1によって閉じられ完全に閉じた位置にまでにわたって全範囲にて可動になっている。
【0023】
スカート3は、蓋1から延設されていて、周囲に連続した下向きの蓋シールである、第1のループ状シール4を支持している。スカート3と蓋シール4とは、引き出し2の略垂直な壁によって形成される上部周辺リムのまわりに連続した、上向きの密封面である、第2のループ状シール5に対応し協働すべく形成されている。蓋シール4は、弾性的で可撓性のものであり、密封面5は比較的硬くて、ループ状シール同士が密封接触する際の偏位は、実質的に蓋シール4に制限される。
構造を逆にして、固定された引き出しに対して蓋を摺動させ、それに応じた類似のシール構成にすることも、もちろん可能である。
蓋シール4と密封面5とは、連続的なループになっているが、これらのループに若干の中断や不連続があっても本発明から逸脱するものではないことは明らかである。さらに、蓋シール4と密封面5とは、後述する些細な面取りを除き、概略平面になっていて、これらの平面は実質的に平行であり、実際の実施例では、同一平面で、実質的に水平になっている。引き出し2は水平に動くので、引き出し2を動かして使用するとき、密封面5はその平面内に維持される。引き出し2が使用時に開閉されると、ループ状シールは摺動接触しつつ互いにすれ違う。
【0024】
図示の好ましい実施形態においては、蓋シール4と密封面5の双方が形成するループ状シールは略矩形になっていて、この矩形は、引き出しが動く方向について、これを横切る(つまり直交する)方向の2本の平行で直線状の部分と、引き出しが動く方向について、これに整列された(つまり平行な)方向の2本の平行で直線状の部分とのそれぞれから構成される。ループ状シールにおける連続した部分は、曲がった角部によって結合される。引き出しが動く方向と引き出し2の向きに関して、本願においては、引き出しの動きに対して横方向の2本の平行な部分については、前方部分及び後方部分と称し、引き出しの動きに対して整列された2本の平行な部分については、側部部分と称することとする。従って、蓋シール4と密封面5とはそれぞれ、前方部分と後方部分と2つの側部部分とを具備し、蓋シールにおけるこれらの部分は、密封面における対応部分と鏡像関係になっている。
引き出し2が、図1(a)に示す如く、完全に開いた位置にあるときには、蓋シール4と密封面5との間には、全く整列した部分がないので、これらのループ状シール間にはさほどの磁気吸引は生じない。図1(b)に示す如く、途中まで閉じられる際には、引き出しの密封面5における後方部分は、蓋シール4の前方部分に対して整列される。これらの位置においては、整列されたループ状シールの部分間には磁気吸引が生じるけれども、引き出し2の上部後方縁部は下向きに面取りされていて(図示せず)、蓋シール4の下側にクリアランスを保っており、もって引き出しの後部が蓋シール4の前方部分を通り抜けるときに引っかかることを防いでいる。
【0025】
引き出し2をさらに閉じていくと、図1(c)に示した中間的な位置になって、この位置においては、密封面5の側部部分における後方の部分と、蓋シール4の側部部分における対応する前方の部分との間には整列関係が生じる。しかしながら、密封面5や蓋シール4における前方部分及び後方部分については、これに関わる整列は存在しない。従って、引き出し2を閉じるとき、側部部分の関わりが増えるにつれて磁気吸引が生じるが、密封面5と蓋シール4とにおける前方部分と後方部分とについては、図1(d)に示す如く引き出し2がほぼ完全に閉じられて、ループ状シールが互いに完全に整列して、これらの部分が互いに整列されるまで、磁気吸引に全く貢献することがない。
【0026】
蓋シール4における側部部分は、整列された位置において、密封面5における側部部分に対して摺動接触するが、接触面積は小さいので、引き出し2を続けて閉じる動きに対しては、ほとんど妨害にならない。この点に関して、留意したいのは、シールの境界面に対して平行である、または、該境界面内にあるような摺動運動において、磁石シールが発生させる抵抗力は、かかる面を横切りないし直交する引き離しの動きに比べて、実質的に小さな力であることである。テストによれば、摺動に対する代表的な抵抗力は、引き離す場合の抵抗力のおよそ1/3の大きさである。また、摺動接触の大部分を受けるループ状シールの部分、すなわち側部部分は、引き出しの動きの方向に対し、つまり側部部分が延びる方向に対し、整列した摩擦力の下において、構造的安定性を保つべく最良の向きになっていることに留意されたい。このことは、使用時に、可撓性の蓋シール4の完全性を維持する上で、特に有効である。
【0027】
図1(a)〜図1(d)に示した矩形状であるループ状シールについてのテストによれば、引き出しを開く際に、最初に離れるのは、蓋シール4の連続部分を結合している角部であることが示唆された。事実上、これに助けられて、蓋シール4における隣接部分が、引き出しの密封面5から徐々に剥離する。この剥離作用はさらに、蓋シール4に働く応力と引き出しを開くための労力を低下させるが、引き出し2が閉じられるときに密封の完全性に損傷を与えることはない。
要するに、ループ状シールが完全に整列されるとき、ループ状シール間に生じる総合的な磁気吸引はピークになり、これは固定された蓋に対して引き出しを完全に閉じるときに生じ、また逆も同様である。ループ状シールが完全には整列されていないとき、これは、完全に閉じたときを除く、引き出し又は蓋の動きの範囲における実質的にすべてにわたるが、そうしたときには、総合的な磁気吸引は著しく減少する。
【0028】
次に、図2及び図3を参照すると、蓋シール4と、対向する密封面5と、これらの周囲の蓋及び引き出しの構造について詳しく示している。
スカート3は蓋1から延設されており、U字形のチャネル状になっていて、その平坦な底部面には、中央に細長いアンダーカット溝が設けられ、溝の長手中心面について対称的である、断面が三角形の拡大した細長い凹部が形成されている。蓋1と、そのスカート3とは、実質的に中実であるが、断熱材料から作られている。
引き出し2において、対向する密封面5は、引き出し2の略垂直な壁6の上面としての平坦面であって、引き出しの壁は中空になっていて断熱材7にて充填されている。断面が長方形である帯磁石8は、壁の上面9の中央に沿って、上壁9の中空断面内における下面に設けられた、逆さT字形の溝の上部に配設されていて、帯8は上部壁9の下側から隠ぺいされている。炭素鋼からなる細長い反磁束板10は、逆さT字形の溝の底部に沿って延在し、帯磁石8の下側に配置されていて、帯8をT字形の上部に保持すると共に、壁6の中空断面を満たしている断熱材7によって支えられている。反磁束板10は、腐食に耐えられるように表面保護を備えている。
【0029】
図2及び図3によれば、引き出しの側壁の両側からはフランジ11が延びているが、これらのフランジ11は支持を与える目的のもので、本発明とは関係がない。
図2及び図3に示した蓋シール4は、弾性的で可撓性な帯であり、押出成形やモールド成形に適していて、中央の長手平面を中心として対称的になっている。図示の如く、上から見おろすと、シールが備えているアンカー部分12は、やじり頭部形の断面形状を有していて、スカート3の底面に設けたアンダーカット溝の中にスナップ嵌着される。その下側では、やじり形のアンカー部分12の基部から横方向へ、テーパの付いたフランジ13が延びていて、スカート3の底面に弾性的に当接し、シール4がスカート3に安定して保持されるようになっている。フランジ13の下側においては、帯は中空の横断面になっていて、幅狭のウエスト部分14を、広がった基部部分の上方にて、フランジの下側内方へ延在させて備えている。基部部分に設けられた丸い突出部15は、ウエスト部分14から外方へ、そして下方へ向けて屈曲し、さらに内方へ、そして若干上方へ延びて、互いに一緒になって、中央の略平坦なウェブ16を支えている。従って、ウェブ16は、突出部15によって形成された一対の丸い密封隆起部の間にて、若干上方に配置されていて、蓋シール4における最低レベルをこれらの隆起部が一緒に形成しており、引き出し2の対向する密封面に対して、シール境界を形成する。
【0030】
蓋シールにおける平坦なウェブ16は、シールの長さにわたって延びる通路を備え、シール4におけるこの中空の横断面の中には、別の帯磁石17を保持している。使用時には、この帯17は、引き出し2の密封面に関連付けられた帯磁石8に引き寄せられて、可撓性の蓋シール4を引っ張って、密封面5に対して密封係合させる。反磁束板10を設けた目的は、帯磁石間における磁極の反発を防ぎないし軽減して、もってシールの変形を軽減し、使用時のシールの整列を助けることである。もちろん、片方の帯だけを磁石として、他方は、特に鉄材料など、帯磁石を引き付けないし引き寄せられるような材料にすることも可能であろう。
【0031】
図3の拡大図から明らかなように、蓋シールにおける中央ウェブ16の両側にある突出部15によって、ウェブは蓋の密封面5から離れて保持されるので、密封面5と接触するのは、2本の平行な接触線だけに限られて、これらはそれぞれ、蓋シール4の各突出部15の下側に位置する。その結果、蓋シール4と引き出し2とが相対的に摺動して動くとき、これに対する摩擦抵抗力は最小になる。しかしながら、密封の効力は維持され、というのは、比較的小さな面接触領域にわたって磁気吸引力が働くので、密封圧力は高くことと併せて、実際にはひとつだけでなく、2つの密封領域が存在していることからである。その結果、片方のシールが、例えばゴミの堆積物などで良好に密封できなくとも、同じ不具合を受けていない他方のシールによって、有効に密封がなされる見込みは高い。
本発明によって実現されるシール構造は、ある種の事例では、予想もしなかった別の利点をもたらす。例えば、従来の冷蔵、特に冷凍庫において、磁石の密封面にトレースヒータを配置して、凝縮と着氷を防ぐことは一般的である。本出願人は、磁石シールについて、運用中に遭遇するであろう、全範囲の貯蔵及び周辺環境の条件について試験を行った。この試験は、本出願人による先願WO 01/020237号、WO 02/073104号、WO 02/073105号、及びWO 02/073107号において開示した機器との文脈において実施したが、これらの機器では、引き出しのほとんどの外部が、もって引き出し/蓋の境界の外側が周辺温度の空気に曝されていた。着氷は、普通はシールを固着させるため一目瞭然の問題点になるが、かかる着氷の問題点は見られず、代わりに、本出願人は、シールの表面間に、氷というよりむしろほとんど液体の水分のままの、概ね受容可能な凝縮の形成を見い出した。驚いたことに、この水分は本発明の目的を助け、相対的な摺動運動のための潤滑剤として働いて、水分を介在させたワイパー的な作用によって密封面を清潔に保つ助けになることが見い出された。従って、本発明によれば、トレースヒータを必要としない、自己潤滑式で、自己浄化式のシールを提供することができる。
【0032】
さらに、図1(a)〜(d)に関連して上述した通り、蓋シール4と密封面5との間に生じる総合的な磁気吸引は、これらのループ状シールの整列具合に依存する。大まかに言えば、総合的な吸引力は引き出しが開かれた直後に半減するが、というのは、各ループ状シールにおける前方部分と後方部分とが互いの整列から外れるためである。本出願人は、いくらか直感的に反するものの、かかる特性を可能にして活用するには、磁石シールのもつ弾性が、当該シールの磁気要素を、これに対向する密封面から遠ざけるように付勢すべくデザインすれば良いことを理解した。さらに、シールのデザインにおいては、ループ状シールが全体として整列から外れたときには、かかる弾性が、弱まった総合的な磁気吸引に打ち勝つ一方、ループ状シールが全体として整列したときには、強くなった総合的な磁気吸引が、かかる弾性に打ち勝つようにすれば良い。こうすれば、引き出しが完全に閉じていないとき、とりわけ開閉に自由な動きが求められる場合、シール部分間の接触領域は小さくなって、また逆に、引き出しが完全に閉じられたとき、つまり密封が求められるときに、最大になる。言い換えれば、慎重にデザインすれば、シールは(i)引き出しが完全に閉じられたとき、対向する密封面との完全な密封接触が得られ、しかも、(ii)引き出しの開閉途中などのその他の位置においては、対向する密封面との摺動接触が小さくなって、あるいは完全に非接触にすることができる。
【0033】
本発明の概念の範囲内において、様々な変形例が可能である。いくつかの変形例について、図4、図5、及び図6を参照して説明する。
例えば図4に示した代替的なシール構造では、図2及び図3とは異なった蓋シールの輪郭を採用している。しかしながら、類似点もあるので、対応する部材には共通する参照符号を付している。
図4に示したシール18は、弾性的で可撓性の帯であり、押出成形やモールド成形に適していて、中央の長手平面を中心として(完全にではないものの)大体において対称的になっている。図示の如く、上から見おろすと、シール18が備えているアンカー部分12は、先ほどと同様にやじり頭部形の断面形状を有しているが、この実施形態では、アンカー部分12がスナップ嵌着されるチャネル断面のフレーム部材19は、容易に交換可能な堅固な矩形組立体として、シール18を支持している。フレーム部材19は、蓋1から延びたスカート3の底面に設けた溝部20に嵌着されていて、これにより、フレームとシールとの組立体を蓋1に取り付けている。
【0034】
アンカー部分12の下側においては、シール18は中空の横断面になっていて、図2及び図3に比べてやや幅広ではあるが、幅狭のウエスト部分14を、広がった基部部分の上方にて、内方へ延在させて備えている。先の例と同様に、基部部分に設けられた丸い突出部15は、ウエスト部分14から外方へ、そして下方へ向けて屈曲し、さらに内方へ延びて、互いに一緒になって、中央の略平坦なウェブ16を支えている。ウェブ16は、一体的なチャネル21の内部に隠すように、帯磁石17を覆っていて、引き出し2が閉じられたとき、帯磁石17は、引き出し2の上部密封面5の下側に設けられた、対向する帯磁石8を吸引する。図4からは明らかではないけれども、引き出し2が閉じられると、磁気吸引によって、シール18のウェブ16は下向きに引っ張られ、突出部15は、図2及び図3と同様に、内方へ屈曲すると共にわずかに上方へ屈曲する。引き出し2が開かれて磁気吸引が消失すると、ウェブ16は、突出部15の最低レベルよりも若干上方へと動く。
【0035】
内部については、シール18の輪郭はさらに、弾性的なウェブ22を具備し、その断面は波形に曲がりくねっていて、アンカー部分12とチャネル21との間に延びている。ウェブ22は、シール18の歪に抵抗して、帯磁石17をチャネル21の内部で安定させる助けとなる。
シール18の更なる特徴は、トレースヒータであって、絶縁された抵抗ワイヤ23が、チャネル21横の輪郭内に隠ぺいされ、シール18の筐体外方側における突出部15の内部に収容されている。機器の使用時には、ワイヤ23は低電圧、低電力(代表的にはシール1m当たり4〜5ワットの消費電力)にて連続的に加熱されて、シール18の露出した外面に凝縮が生じることを防いでいる。
図4に示すように、シール18が、蓋1及び引き出し2の外側縁部からかなりの距離、筐体内方側にあるとき、凝縮は問題になり得る。この位置のために、周辺空気の流れはシール18の外側に限られ、露出したシール面にわたって境界空気層が形成される。境界層によって、表面は、凝縮が生じる露点以下に冷やされて、シールの接触面から溢れて凍り付いて、引き出しが閉まったまま動かなくなる。
【0036】
筐体内方のシール位置は、例えば、矩形であるフレーム/シールの組立体から、蓋1へと至り、ここで蓋1と引き出し2とは平面視において単純な曲線の角部になっている。筐体内方の位置は、その場合に必要になるが、というのは、フレーム/シールの組立体の角部が、蓋1及び引き出し2の角部からオーバーハングしないためである。
冷蔵技術の分野においては、シールのトレースヒータは周知であるけれども、これは代表的に、1m当たり30〜40ワットで動作する、高出力の「ムリオンヒータ」を必要とする。さらに、そうしたヒータは代表的に、冷蔵機器のキャビネットの中に組み込まれ、例えば、ドアや蓋の開口部のまわりの断熱発泡材に埋設され、従って、決して交換できるものではない。これとは対照的に、図4に示した構造にあっては、トレースヒータはシール18に直接適用され、シール18における最も傷つきやすい部分に直接設けられ、よって低消費電力を可能にしている。さらに、図4に示したトレースヒータは、シール18及びフレーム部材19と共にユニットとして、わずか数分以内に、容易に交換可能である。
【0037】
次に図5及び図6を参照すると、図示の実施形態においては、シール24が有利な筐体外方の位置に配置され、周辺空気流により良く曝されて、表面温度を露点以上に保てるようになっている。その結果、シールの輪郭は、図4に示したものと同一であるけれども、図4におけるトレースヒータのワイヤ23は、必要ならば残せるとはいえ、省略することが可能になる。
この実施形態においては、シール24は意図的に周辺空気流に曝されているが、シールの輪郭の最外縁には蒸気バリアが形成されて、水分がシール24を迂回するのを防ぎ、シール24の下側やまわりに凝縮や着氷が形成されることを防ぐ。
図6の斜視図には、蓋の裏側を斜視図にて示していて、矩形のシール24は、蓋1の丸められた膨出角部25のおかげで、筐体外方の位置に収まっている。更なる変形箇所は、図6と、図5の断面図とから明らかであるが、断熱フランジないしスカート26がシール24の筐体内方に設けられていることである。これは、シール24を、引き出し2の内部の低温から保護する助けになる。温度勾配に基づく原理から、フランジないしスカート26のすぐ内側では、引き出し2の内部は−20℃であって、シール24のすぐ外側では周辺温度になる。かかる温度勾配を横切って配置される様々なリム境界要素についての、位置、厚み、及び伝導率に従って、温度が摂氏ゼロ度を下回るサブゼロ領域の範囲、つまり着氷の危険性がある範囲が定まる。設計の目的は、サブゼロ領域が断熱フランジないしスカート26を越えないことであり、シールの輪郭は常に凍結点以上であって、氷が形成することはない。
【0038】
本発明の概念の範囲内において、他にも様々な変形例が可能である。例えば、電気抵抗ワイヤなどの電気要素によるトレースヒータは便利ではあるけれども、トレースヒータに置き換えて、ダクトを用いて、その中に、機器の蒸発器からの高温冷媒などを流しても良い。
本発明による改良された磁気シールの構造には、上述したような多くの利益がある。それらはまた、特に冷蔵機器などの貯蔵機器の構成において、その他の利益をもたらす。例えば、図7に示した冷蔵機器27においては、引き出し28が支持構造に対して開閉すべく可動になっていて、かかる支持構造に対して2方向に開くことができる。同様な構造は、本出願人による先願WO 01/020237号にも示唆されている。こうすれば、機器27の両側に立っている作業者は、いずれも収容物にアクセスすることができ、例えば、レストランにおいて、機器27によってキッチンをパブリックな領域とプライベートな領域とに分割しているような場合、「仕切の後ろ側」と「仕切の前側」とに居る作業者がいずれもアクセス可能である。また、作業者が、機器27の上に設けられるキッチンカウンターの両側の調理台に立っていることもある。そうした状況において、機器27の両側に立っている作業者は、同等な便利さで、引き出しの中身にアクセスできる。
図7に示した機器27においては、2つの冷蔵引き出し28が、カウンターないし配膳台の下側に、並列式に配置されている。引き出しの数は重要ではなく、ひとつだけの引き出しでも、2以上の引き出しでも、互いに横並びに、または、互いに積み重ねて、配置することができる。ファンコイルユニット29は、固定された蓋(図示せず)を介して引き出しに冷気を供給し、引き出し28を摺動させて機器27の構造の中に収めたときには、蓋は引き出し28を密封する。ファンコイルユニット29は、伝統的には後部に取り付けられるが、この例においては引き出し28の側部に配置されていて、このため、構造に対して前後に摺動させて引き出し28が開けるようになっている。一般的な冷蔵圧縮機30もまた、側部に取り付けられ、回路内の冷媒をポンプ送出し、これは、ファンコイルユニット29への分岐配管も具備している。
それぞれの引き出し28毎にひとつずつのファンコイルユニット29を図示しているけれども、(温度制御の観点から不利益があるとはいえ)、両方の引き出し28を単一のファンコイルユニット29で、または、その他の冷凍手段で、冷却することもできる。また、空間の利用効率から不利益はあるとはいえ、ファンコイルユニット29と冷蔵圧縮機30を引き出し28の上方又は下方に配置しても良い。
【0039】
図8乃至図10は、どのような新規なやり方によって、本発明を、台所キャビネットなどの家具と統合するのかを示している。ここで、代表的な正方形の平面輪郭をもつキャビネット31は、四分円形の断熱引き出し32を収容していて、四分円の半径はキャビネット31の垂直な壁に対応しているけれども、キャビネット31の内径に比べてわずかに短くなっていて、キャビネット31に対して引き出し32が動けるためのクリアランスを与えている。
半径は、キャビネット31の角部にある枢軸33にて集められ、引き出し32は垂直軸線を中心として、キャビネット31から出し入れされて、図10の破線に示す如く、引き出し32を開閉するようになっている。引き出し32がキャビネット31の内部に完全に閉じられるとき、引き出し32の上部は、蓋(図示せず)によって密封される。
図8から明らかであるように、(図示の如く右上の角部へ向かう)キャビネット31の内部のかなりの体積は、冷蔵のためには冗長であり、ピボット式の引き出し32を収容するには必要ではない。しかしながら、本発明の好ましい実施形態においては、かかる空間は有利に用いられ、図9及び図10に示すように、ファンコイル及び/又は冷蔵圧縮機のユニットなどの補助的な機器が配置される。例えば、図9においては、キャビネット31の右上の角部は切り取られ、細長いファンコイルユニット34がキャビネット31の隣接壁面に対して、この例においては45度だけ傾斜しており、四分円型の引き出し32の外側における利用可能な空間を最適に用いている。キャビネット31を壁に隣接させて、または、他のキャビネットに接して設置する場合には、この切り取り構造によって、ファンコイルユニット34の外部に更なる空間が残されて、かかる空間は、様々な目的、例えばサービス機器や、1又は複数の冷蔵引き出し32のための冷蔵圧縮機35のために用いられる。
【0040】
図8乃至図10に示したキャビネット31は、複合的な配置において、他の同様なキャビネットと併用するのに適しており、それらのうちのいくつかを図11乃至図16に示している。図11乃至図16を検討すると、同一のキャビネット31を異なる向きに配置して、異なる目的を達成できることが明らかであるこれは、図8乃至図10に示したキャビネットのデザインの一層の利益である。
まず、図11、図12、及び図13を見ると、キャビネット31を対にして横並びにする、様々な方法が示されている。例えば図11においては、キャビネット31は同じ方向に向けて配置されている。図12においては、キャビネット31は、切り取られた角部が離されるように、90度の向きに配置されている。興味深くて潜在的に有用な結果としては、対にされたキャビネット31は、共通の枢軸33を共有して、四分円として独立して、または、半円形の全体として出し入れできることである。他方において、図13において、キャビネット31を90度離しているが、この例においては、切り取られた角部が結合されて、キャビネット31の間の後方に大きな空間を確保している。この大きな空間は、1又は複数のファンコイルユニット34を収容したり、及び/又は、冷蔵圧縮機ユニット35を収容するのに適していて、必要に応じて、これらは両方のキャビネット31にて兼用される。
図14及び図15は、3台のキャビネット31をL字形配列に配置したものである。図14は、角の内側に配置36したもので、互いに180度離れた対角線上に対向するキャビネット31が、両端のキャビネットからそれぞれ90度の位置にある、中央のキャビネット31を結合している。本質的には、図14の配置は、図12に示した2台のキャビネットに、第3のキャビネットを付け加えて、同一の枢軸33を共有させたものである。すなわち、すべての3台のキャビネット31は、中央の枢軸33を共有していて、これを中心として、引き出し32が(隣接する引き出しからクリアランスが得られることを条件に)独立して、または、一緒にピボットする。
図15は、角の外側に配置37したもので、図13の2台のキャビネットに第3のキャビネットを付け加えて、追加されたキャビネット31における切り取られた角部は他の2台のキャビネットの切り取られた角部と結合され、ファンコイルユニット34や冷蔵圧縮機ユニット35などの補助機器のためのさらに広い空間が得られている。ここでも、斜めに対向している端部キャビネット31は、互いに180度をなし、中央のキャビネット31は各端部キャビネット31に対して90度の向きになっている。しかしながら、図15におけるすべてのキャビネット31は、図14のキャビネット31と比べると、180度回転した向きにある。
図16は、4台のキャビネット31を配置して、正方形の「孤島型」の形式38としていて、各キャビネット31は隣接するキャビネットに対して90度回転していて、キャビネット31における切り取られた角部は、大きな正方形の中心空間39を作り出している。空間39は、流し台や、調理コンロ、ゴミ捨て排水、換気扇、又はその他の用途に用いられる。支柱(図示せず)などの構造部材を受け入れて、柱のまわりに孤島型38を形成しても良い。
最後に、図17においては、この例では調理コンロ40にて例示される別の台所機器の両側に、キャビネット31を配置している。台所ユニットを連続させるようにビルトイン型に示しているけれども、図17に示したキャビネット31は横に開くこともできることは明らかであって、その場合には、必要に応じ、引き出し32は、図示の枢軸33を筐体外方に配置することで、前方と側方との両方に開かれる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1a】図1(a)は、固定蓋と、可動な引き出しとについて、引き出しの4つの異なる位置を示した下方から見た斜視図である。
【図1b】図1(b)は、固定蓋と、可動な引き出しとについて、引き出しの4つの異なる位置を示した下方から見た斜視図である。
【図1c】図1(c)は、固定蓋と、可動な引き出しとについて、引き出しの4つの異なる位置を示した下方から見た斜視図である。
【図1d】図1(d)は、固定蓋と、可動な引き出しとについて、引き出しの4つの異なる位置を示した下方から見た斜視図である。
【図2】図2は、図1(a)、図1(b)、図1(c)、及び図1(d)に示した蓋と引き出しとに設けられた、対向するシール部分を破断して示した斜視図である。
【図3】図3は、図2に示したシール部分について、これを拡大して示した断面図である。
【図4】図4は、代替例によるシール構造を示した横断面図であって、蓋及び引き出しに対して、シールは筐体内方に取り付けられ、オプションのトレースヒータが組み込まれている。
【図5】図5は、さらに別の代替例によるシール構造を示した横断面図であって、蓋及び引き出しに対して、シールは筐体外方に取り付けられ、シールの輪郭は図4と同じだがトレースヒータは設けられず、シールの筐体内方において下方へ突設された断熱フランジがこれを補っている。
【図6】図6は、図5の蓋を裏返して示した斜視図であって、蓋に設けられた断熱フランジに対して筐体外方位置に取り付けられたシールと、シールの筐体外方位置に適合するための膨出角部とを備えている。
【図7】図7は、冷蔵機器を示した平面図であって、引き出しは開閉すべく支持構造に対して可動に設けられ、構造体に対して2以上の方向に開くことができるものである。
【図8】図8は、台所キャビネットを示した平面図であって、引き出しは垂直軸を中心として、ピボットして開かれる。
【図9】図9は、図8に対応する平面図であって、引き出しによって空間が占拠されない様子を示している。
【図10】図10は、図9に対応する平面図であって、引き出しが動く範囲について、全開状態と半開状態とを示している。
【図11】図11は、図8〜10に示したキャビネットを様々に組み合わせた様子を示した平面図である。
【図12】図12は、図8〜10に示したキャビネットを様々に組み合わせた様子を示した平面図である。
【図13】図13は、図8〜10に示したキャビネットを様々に組み合わせた様子を示した平面図である。
【図14】図14は、図8〜10に示した3つのキャビネットを、L字形配列において、様々に組み合わせた様子を示した平面図である。
【図15】図15は、図8〜10に示した3つのキャビネットを、L字形配列において、様々に組み合わせた様子を示した平面図である。
【図16】図16は、図8〜10に示した4つのキャビネットを、正方形配列において組み合わせた様子を示した平面図である。
【図17】図17は、図8〜10に示したキャビネットを、コンロで例示される別の台所機器において配置している様子を示した平面図である。
【図1(a)】
【図1(b)】
【図1(c)】
【図1(d)】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋によって閉じることができる、アクセス用の開口を形成してなる容器であって、蓋は、開口のまわりにて容器を密封できると共に、容器と蓋とを開口に対し横方向に相対的に動かすと蓋が開かれ、容器は、開口のまわりに第1のループ状シールを備え、蓋は、蓋が開口を閉じるとき、第1のループ状シールに対して整列され、協働して密封状態を維持するような、第2のループ状シールを備え、容器と蓋との前記相対的な動きによって、ループ状シールは互いに係合及び係脱し、ループ状シールの少なくとも片方は、他方のループ状シールを引き付けるための磁気手段を具備し、ループ状シールが互いに整列されたときに密封状態を維持することを特徴とする貯蔵室。
【請求項2】
容器と蓋とを相対的に動かすと、ループ状シール同士が摺動接触することを特徴とする請求項1に記載の貯蔵室。
【請求項3】
ループ状シールは実質的に平面状になっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の貯蔵室。
【請求項4】
ループ状シールにおける副次的部分は、ループの残余の平面から逸脱していることを特徴とする請求項3に記載の貯蔵室。
【請求項5】
ループ状シールは、実質的に平行平面内にて移動することを特徴とする請求項3又は4に記載の貯蔵室。
【請求項6】
ループ状シールは、実質的に同一平面上にあることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項7】
ループ状シールは、移動方向に対して横向きの部分と、移動方向に対して整列された部分とを備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項8】
各部分は実質的に直線状になっていることを特徴とする請求項7に記載の貯蔵室。
【請求項9】
ループ状シールは略矩形状になっていて、前方部分と、後方部分と、2つの側部分とが連続的に隅部で結合されていることを特徴とする請求項8に記載の貯蔵室。
【請求項10】
ループ状シールが連続的になっていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項11】
両方のループ状シールが磁気手段を具備していることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項12】
ループ状シールの片方は磁気手段を具備し、ループ状シールの他方は磁気手段によって引き付けられる素材を具備していることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項13】
少なくともひとつのループ状シールは、弾性的で可撓性のシールを備えていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項14】
シールは、ウェブで隔てられた略平行な隆起部を形成してなる細長い部材であって、使用時には、隆起部は、ウェブと、これと協働する密封面との間にクリアランスを維持することを特徴とする請求項13に記載の貯蔵室。
【請求項15】
ウェブに沿って磁石又は磁気吸引片が延在し、使用時には、隆起部を、これに協働する密封面に対して密封接触させるように押し付けることを特徴とする請求項14に記載の貯蔵室。
【請求項16】
弾性的で可撓性のシールは、他方のループ状シールを磁気吸引するための手段を具備し、前記手段を他方のループ状シールから離間させるように付勢して、使用時には、シールに働く磁気吸引が強くなり前記付勢力に打ち勝ってシールを働かせることを特徴とする請求項13乃至15のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項17】
ループ状シールが整列すると、磁気吸引が強くなり付勢力に打ち勝ってシールを働かせることを特徴とする請求項16に記載の貯蔵室。
【請求項18】
ループ状シールにおける磁気手段に関連して、反磁束手段を具備していることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項19】
少なくともひとつのループ状シールに関連して、さらにトレースヒータを備えていることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項20】
少なくともひとつのループ状シールは、弾性的で可撓性のシールを備え、シールに熱を直接加えるトレースヒータを備えていることを特徴とする請求項19に記載の貯蔵室。
【請求項21】
トレースヒータはシールの内部に設けられていることを特徴とする請求項20に記載の貯蔵室。
【請求項22】
トレースヒータは、シールにおける筐体外方側を加熱することを特徴とする請求項20又は21に記載の貯蔵室。
【請求項23】
少なくともひとつのループ状シールは、弾性的で可撓性のシールを備え、シールは、容器又は蓋に固定される、着脱可能な比較的硬質であるフレームに取り付けられることを特徴とする請求項1乃至22のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項24】
少なくともひとつのループ状シールの筐体内方側に断熱障壁を備えていることを特徴とする請求項1乃至23のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項25】
断熱障壁は、容器が冷凍貯蔵に使用されるとき、実質的にすべての関連するループ状シールが、摂氏ゼロ度以上に維持されるように構成されていることを特徴とする請求項24に記載の貯蔵室。
【請求項26】
ループ状シールは矩形状であり、容器又は蓋は実質的に矩形状であって、丸められた膨出角部を有していることを特徴とする請求項1乃至25のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項27】
添付図面のいずれかを参照して説明され、又は添付図面のいずれかに図示されたものと実質的に同一であることを特徴とする貯蔵室。
【請求項1】
蓋によって閉じることができる、アクセス用の開口を形成してなる容器であって、蓋は、開口のまわりにて容器を密封できると共に、容器と蓋とを開口に対し横方向に相対的に動かすと蓋が開かれ、容器は、開口のまわりに第1のループ状シールを備え、蓋は、蓋が開口を閉じるとき、第1のループ状シールに対して整列され、協働して密封状態を維持するような、第2のループ状シールを備え、容器と蓋との前記相対的な動きによって、ループ状シールは互いに係合及び係脱し、ループ状シールの少なくとも片方は、他方のループ状シールを引き付けるための磁気手段を具備し、ループ状シールが互いに整列されたときに密封状態を維持することを特徴とする貯蔵室。
【請求項2】
容器と蓋とを相対的に動かすと、ループ状シール同士が摺動接触することを特徴とする請求項1に記載の貯蔵室。
【請求項3】
ループ状シールは実質的に平面状になっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の貯蔵室。
【請求項4】
ループ状シールにおける副次的部分は、ループの残余の平面から逸脱していることを特徴とする請求項3に記載の貯蔵室。
【請求項5】
ループ状シールは、実質的に平行平面内にて移動することを特徴とする請求項3又は4に記載の貯蔵室。
【請求項6】
ループ状シールは、実質的に同一平面上にあることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項7】
ループ状シールは、移動方向に対して横向きの部分と、移動方向に対して整列された部分とを備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項8】
各部分は実質的に直線状になっていることを特徴とする請求項7に記載の貯蔵室。
【請求項9】
ループ状シールは略矩形状になっていて、前方部分と、後方部分と、2つの側部分とが連続的に隅部で結合されていることを特徴とする請求項8に記載の貯蔵室。
【請求項10】
ループ状シールが連続的になっていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項11】
両方のループ状シールが磁気手段を具備していることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項12】
ループ状シールの片方は磁気手段を具備し、ループ状シールの他方は磁気手段によって引き付けられる素材を具備していることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項13】
少なくともひとつのループ状シールは、弾性的で可撓性のシールを備えていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項14】
シールは、ウェブで隔てられた略平行な隆起部を形成してなる細長い部材であって、使用時には、隆起部は、ウェブと、これと協働する密封面との間にクリアランスを維持することを特徴とする請求項13に記載の貯蔵室。
【請求項15】
ウェブに沿って磁石又は磁気吸引片が延在し、使用時には、隆起部を、これに協働する密封面に対して密封接触させるように押し付けることを特徴とする請求項14に記載の貯蔵室。
【請求項16】
弾性的で可撓性のシールは、他方のループ状シールを磁気吸引するための手段を具備し、前記手段を他方のループ状シールから離間させるように付勢して、使用時には、シールに働く磁気吸引が強くなり前記付勢力に打ち勝ってシールを働かせることを特徴とする請求項13乃至15のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項17】
ループ状シールが整列すると、磁気吸引が強くなり付勢力に打ち勝ってシールを働かせることを特徴とする請求項16に記載の貯蔵室。
【請求項18】
ループ状シールにおける磁気手段に関連して、反磁束手段を具備していることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項19】
少なくともひとつのループ状シールに関連して、さらにトレースヒータを備えていることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項20】
少なくともひとつのループ状シールは、弾性的で可撓性のシールを備え、シールに熱を直接加えるトレースヒータを備えていることを特徴とする請求項19に記載の貯蔵室。
【請求項21】
トレースヒータはシールの内部に設けられていることを特徴とする請求項20に記載の貯蔵室。
【請求項22】
トレースヒータは、シールにおける筐体外方側を加熱することを特徴とする請求項20又は21に記載の貯蔵室。
【請求項23】
少なくともひとつのループ状シールは、弾性的で可撓性のシールを備え、シールは、容器又は蓋に固定される、着脱可能な比較的硬質であるフレームに取り付けられることを特徴とする請求項1乃至22のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項24】
少なくともひとつのループ状シールの筐体内方側に断熱障壁を備えていることを特徴とする請求項1乃至23のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項25】
断熱障壁は、容器が冷凍貯蔵に使用されるとき、実質的にすべての関連するループ状シールが、摂氏ゼロ度以上に維持されるように構成されていることを特徴とする請求項24に記載の貯蔵室。
【請求項26】
ループ状シールは矩形状であり、容器又は蓋は実質的に矩形状であって、丸められた膨出角部を有していることを特徴とする請求項1乃至25のいずれか一項に記載の貯蔵室。
【請求項27】
添付図面のいずれかを参照して説明され、又は添付図面のいずれかに図示されたものと実質的に同一であることを特徴とする貯蔵室。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2007−504427(P2007−504427A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525176(P2006−525176)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003659
【国際公開番号】WO2005/024315
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(501225634)アプライド デザイン アンド エンジニアリング リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003659
【国際公開番号】WO2005/024315
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(501225634)アプライド デザイン アンド エンジニアリング リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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