説明

改良型のシリンダおよびベアリングを有する航空機用緩衝支柱

航空機用緩衝支柱(12)は、チタンシリンダ(32)、および、上記チタンシリンダ(32)内を伸縮自在に変位し得るピストン(30)を含む。第1ベアリング(40)は、ピストン(30)に取り付けられており、チタンシリンダ(32)との滑り嵌合を行うための非金属ベアリング面(50)を含んでいる。上記航空機用緩衝支柱(12)は、耐久性を備え、かつ、軽量化を実現するものである。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔類似文献〕
本発明は、US仮出願番号60/758,689(2006年1月13日出願)の利点を主張するものであり、当該出願は、その全文を参照することにより本願明細書に援用される。
【0002】
〔本発明の分野〕
本発明は、着陸、地上走行、または離陸の際などに衝撃力を吸収および制動するための航空機用緩衝支柱に関するものであり、より具体的には、チタンシリンダおよびそれに適合するベアリングを有する航空機用緩衝支柱に関する。
【0003】
〔発明の背景〕
緩衝装置は、車両の動作および地面に対するそのタイヤの動作を制御するための様々な車両サスペンションシステムにおいて使用されており、地面から車両に一時的な力が伝わるのを低減させるために使用される。緩衝支柱は、ほとんどの航空機の着陸装置アセンブリにおいて、一般的かつ必要な構成材である。航空機における着陸装置に使用される緩衝支柱は、一般的に、すべての地上車における緩衝支柱とは言わないまでも、ほとんどの地上車のそれよりも多くの性能要件が求められる傾向がある。具体的には、緩衝支柱は、着陸装置の動作を制御し、着陸、地上走行、および離陸の際に、当該装置にかかる荷重を吸収および制動すべきものである。
【0004】
緩衝支柱は、一般的に、中空のテレスコープ型シリンダによって形成された密閉チェンバ内において流体を圧縮することによって、これらの機能を実現する。典型的には、少なくとも2つのベアリングアセンブリが、滑り嵌合したテレスコープ型シリンダを備えている。流体は、一般的に、作動液や油圧油のように、気体および液体の両方を含む。緩衝支柱の1つのタイプとして、一般的に、エアオーバーオイル(air-over-oil)構造が利用されている。当該構造において、緩衝支柱が軸方向に圧迫されるにつれて封入された気体の容積は圧縮され、オイルの量はオリフィスを通して測定される。気体がバネのようにエネルギー蓄積装置の役割を果たすので、圧縮力が収まると緩衝支柱は元の長さに戻るようになっている。また、緩衝支柱は、オイルがオリフィスを通過することによってエネルギーを消散させるので、緩衝吸収材が圧迫または延伸されているとき、緩衝吸収材の動作率は、オリフィスおよびオイルの相互作用から生じた制動作用によって制限される。
【0005】
航空機用着陸装置の設計者は、設計、性能、コストなどを改善する方法を常に模索している。1つの望ましい改善点としては、着陸装置内の緩衝支柱の総量を減らすことが挙げられる。緩衝支柱の中により軽量の材料を内蔵するための努力が成されているが、より軽量の材料は早期磨耗を引き起こしやすく、頻繁に交換が必要となり、結果として整備コストが増加することになる。
【0006】
〔発明の要約〕
本発明は、チタンシリンダ、および、上記チタンシリンダ内を伸縮自在に変位し得るピストンを含む航空機用緩衝支柱を提供する。ピストンの上にあるベアリングは、非金属ベアリング面を含んでおり、上記ベアリング面はチタンシリンダとの滑り嵌合を行う。上記ベアリングによって、シリンダの過剰あるいは早期磨耗、および/またはシリンダに対するダメージが引き起こされることはない。本航空機用緩衝支柱は、耐久性を損なうことなく減量を行っている。
【0007】
したがって、本発明の1つの形態に係る航空機用緩衝支柱は、チタンを含むシリンダ、上記シリンダ内を伸縮自在に変位し得るピストン、および、上記ピストンの上にあるベアリングを特徴とし、上記ベアリングは、シリンダの内面との滑り嵌合を行う非金属ベアリング面を有している。
【0008】
本発明に係る他の形態によると、少なくとも1つの緩衝支柱を含む航空機用着陸装置の減量をするための方法が提供されている。少なくとも1つの緩衝支柱は、シリンダ、および上記シリンダ内を伸縮自在に変位し得るピストンを含んでいる。方法は、チタンシリンダを備えること、および、ピストンに第1ベアリングを取り付けることを含んでおり、第1ベアリングはチタンシリンダにおける内面との滑り嵌合を行うための非金属ベアリング面を有する。
【0009】
本発明に係る上記および他の特徴は、請求項、下記の説明、および、本発明に係る特定の例示された実施形態を詳述する添付の図面の中で説明され、具体的に示唆されている。しかしながら、本実施形態は、本発明の本質を利用した様々な形態のうちの1つを表示するものである。
【0010】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本発明に係る緩衝支柱を内蔵する、簡略化された着陸装置アセンブリの概略正面図である。
【0011】
図2は、図1における緩衝支柱の横断面図の一部であり、図1のライン2−2に沿って抜き出した部分を示す。
【0012】
図3は、本発明に係るベアリングの斜視図である。
【0013】
図4は、本発明に係る模範的な上部ベアリングアセンブリの斜視図である。
【0014】
図5は、図4のライン5−5に沿って抜き出した部分を示す横断面図である。
【0015】
図6は、他の模範的なベアリングの断面図である。
【0016】
図7は、図6のベアリングの一部を拡大した断面図である。
【0017】
〔詳細な説明〕
図1は、簡略化された航空機用着陸装置アセンブリ10、例えば、主着陸装置アセンブリ、前脚アセンブリ、胴体着陸装置アセンブリ、主翼着陸アセンブリ、中心線着陸アセンブリ、または同様のものなどを示すものであり、模範的な航空機用緩衝支柱12が、上端において接着部材20によって航空機用構造体16に取り付けられていることを示す。ここで言う緩衝支柱または航空機用緩衝支柱とは、航空機用着陸装置に設置された緩衝支柱を指す。緩衝支柱12における下端は、車輪アセンブリ24に接続されている。緩衝支柱を明示するために、航空機用構造体16、接着部材20、および車輪アセンブリ24は簡略化、または、概略化された形状で示されており、ロック装置や引込装置などの他の装置は図1には図示されていない。そのような装置における様々な配置は上記技術分野において知られており、本発明の説明や理解にとって重要なものではない。
【0018】
緩衝支柱12はピストン30およびシリンダ32を備えており、シリンダ32は、従来のように円筒型であってもよいし、必要であれば他の形状であってもよい。ピストンが車輪アセンブリ24に力を伝達し、かつ、車輪アセンブリ24から力を伝達されるように、緩衝支柱は、航空機の構造体16および車輪アセンブリ24と連結して構成されている。シリンダ32とピストン30との間の相対的に伸縮自在な変位によって、航空機の構造体16に伝達される衝撃力を吸収および制振できるように、シリンダ32はピストン30を収容する。以下に、より詳細に示されるように、シリンダ32はチタンまたはチタン合金を含んでおり、本発明に係る1つ以上のベアリングが、チタンシリンダ32とピストン30との間に滑り嵌合を行うように、チタンシリンダ32とピストン30との間に設置されている。
【0019】
航空機用緩衝支柱が少なくとも1つのベアリングを備えている場合、本発明は、様々なタイプおよび配置の航空機用緩衝支柱に応用できる。当業者であれば、航空機の典型的な緩衝支柱の詳細な動作原理について理解できるため、緩衝支柱の動作は簡潔に示す。ピストン30およびシリンダ32は、一般的に、密封された細長いチェンバを規定しており、当該チェンバは、作業液または油圧油といった液体で少なくとも部分的に満たされている。チェンバの一部、例えばチェンバの上部は、気体、例えばエアーオーバーオイルタイプの緩衝支柱において一般的である窒素で満たされていてもよい。
【0020】
運転中、緩衝支柱12が圧迫されることにより、ピストン30がシリンダ32の中に変位する。それによって密封されたチェンバの容積が減少し、気体で満たされた部分が圧縮される。圧縮された気体は、ばねと同様の原理でエネルギーを蓄積する。シリンダの中への、ピストンの相対的に伸縮自在な変位は、緩衝支柱12が圧縮されるときに、概してより低い位置にある動的な液体チェンバから、典型的にはオリフィス板を介して、空気圧室の中に液体を送り込む。それによって圧縮に対する抵抗力を高め、さらに同時に、圧縮エネルギーを消散させる。ピストン30がシリンダ32の中に変位するにつれて、測定ピンがオリフィス板におけるオリフィス開口の中に変位し、オリフィス開口を介した流量範囲を実質的に低減させ、さらなる圧縮に対する抵抗力を高める。
【0021】
緩衝支柱12を圧縮するのに費やされた動作の一部は、気体によって満たされた部分に、回復可能なバネエネルギーのように蓄積される。蓄積された動作は、航空機が地上走行する際に、航空機の構造体16を弾性的に浮遊させ、また、例えば離陸後など、圧縮力が取り除かれた後には、ピストンおよびシリンダが、伸長した位置に戻ることを可能にさせる。
【0022】
ここで図2を参照すると、航空機用緩衝支柱12の一部、例えば下部が示されている。図示されたように、緩衝支柱12はピストン30および内面34を有するシリンダ32を含む。上記内面34は、シリンダ32とピストン30との間で相対的に伸縮自在な変位が可能となるように、かつ、液体および気体によって満たされた細長いチェンバ36の間を規定するように、ピストン30を収容する。ある実施形態において、シリンダ30はスチールから構成される。あるいは、ピストンはチタンから構成される。さらなる他の実施形態において、ピストンは、クロムまたはタングステンカーバイドなどの適した材料によってメッキまたはコーティングされる。
【0023】
好ましい実施形態において、シリンダ32はチタンから構成される。ここで用いられる用語「チタン」(titanium)は、チタンに加えて、当業者が航空機用着陸装置の緩衝支柱に使用するのに適するとみなす全てのチタン合金も含むことを意図している。適したチタン合金とは、限定されないが、α/ニアα(near-α)合金、α+β合金、β合金および同様のものなどを含んでもよい。ある実施例において、シリンダはTi6−22−22またはTi10−2−3から構成される。当業者であれば、上述のチタン合金が一般的な名称で呼ばれていることは明らかであろう。例えば、当業者であれば、「Ti6−22−22」が、Ti−6Al−2Zr−2Sn−2Mo−2Cr−0.25Siの一般名であることは明らかであろう。上述のように、本発明の範囲内において、シリンダは他の適したチタンを含み得る。さらに、シリンダは、当業者が航空機用着陸装置の緩衝支柱に使用するのに適しているとみなす、他の軽量材料から成り得る。
【0024】
例えば上部ベアリングである、第1ベアリング40は、ピストン30とシリンダ32との間に設置されている。図示された実施形態において、第1ベアリング40は、第1ベアリングキャリア42を介してピストン30に取り付け、または連結されており、さらに、シリンダ32と接触し、かつシリンダ32との滑り嵌合を行うベアリング表面を備えている。図示されたように、例えば下部ベアリングである、第2ベアリング46は、第2ベアリングキャリア48を介してシリンダ32に取り付け、または連結されており、さらに、ピストン30と接触し、かつピストン30との滑り嵌合を行うベアリング面を備えている。下記により詳細に記載されているように、第1ベアリング40は非金属複合材料を含んでおり、上記材料は、チタンシリンダ32における内面34を過剰磨耗させることなく、ピストン30とチタンシリンダ32の内面34との間に滑り嵌合を行うことができる。当業者であれば、用語「過剰磨耗」または「過剰磨耗する」は、従来のアセンブリにおいて見られた磨耗(例えば、メッキされた、またはむき出しのスチールシリンダに対して、アルミ青銅ベアリングが滑る際の磨耗)よりもずっと甚大な磨耗に言及し得ることは明らかである。また、「過剰磨耗」は、所定のベアリング−シリンダの連結を商業な実現性に足りなくする磨耗に言及し得る。
【0025】
ある実施形態において、第2ベアリングは非金属複合材料をも含んでおり、上記材料は、第1ベアリングが含んでいる非金属複合材料と同じか、または、異なっている。また、下記の記載のように、第2ベアリングは、他の材料、例えば無鉛ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、アルミ青銅、鉛系のPTFE、または他の適した材料などを含み得る。
【0026】
本発明において使用される用語「上部」および「下部」、例えば「上部ベアリング」や「下部ベアリング」などは、相対的な位置を示すものであり、本発明の説明を容易にするためのものである。指示されない限りは、本発明における航空機用緩衝支柱を特定の配置に限定するものではない。
【0027】
図示された実施形態において、第1ベアリング40および第2ベアリング46は、一般的に円筒形状をしており、一般的な円筒型のシリンダ32およびピストン30に対応している。しかしながら、本発明の範囲内において、シリンダおよびピストンが他の形状または配置である場合、第1および/または第2ベアリングは他の形状または配置であり得る。
【0028】
加えて、図2に図示された実施形態は、第1ベアリング40がピストン30に取り付けられており、第2ベアリング46がシリンダ32に取り付けられていることを示すが、本発明はこの形態に限定されるものではない。むしろ、本発明の範囲内において、第1ベアリング40および第2ベアリング46のうちの1つ、または両方が、ピストン30またはシリンダ32に取り付けられ得る。
【0029】
ここで図3〜5を参照すると、本発明に係る模範的なベアリング50が図示されている。図示された実施形態において、ベアリング50は概して円筒形、例えば、スリーブ形状であって、ベアリングキャリア52に取り付けられているか、または上記キャリア上に装着されるように構成される。ベアリングキャリア52に取り付けられたベアリング50は、ベアリングアセンブリ54と称される。ベアリング50は、ベアリングキャリア52に対して半径方向外向き、すなわち、ベアリングキャリアの外径上に設置されている。図示された実施形態において、ベアリング50は、ベアリングキャリア52を介して緩衝支柱におけるピストンに取り付けられるよう構成された上部ベアリングである。ベアリング50のベアリング面は、チタンシリンダの内面との滑り嵌合を行う。
【0030】
本発明の範囲を逸脱することなく、ベアリングキャリア52は任意の適した配置または構成をとり得ることを理解されたい。例えば、図示された実施形態において、ベアリングキャリア52は、凹部56を含んでおり、凹部56は固定器具として機能するか、または、固定器具を収容する。ベアリングキャリアは、アルミニウム、非金属複合材または同様のものなど、任意の適した材料から作られることができる。図示された実施形態において、ベアリング50は、ベアリングキャリア52に取り付け可能な円筒形スリーブとして構成される。ベアリングキャリア52に取り付け可能なスリーブとしてベアリング50を構成することによって、磨耗部品のコストを相対的に低く抑えることができ、さらに、複雑なベアリングキャリア構造が可能となる。あるいは、ベアリングは、同材料から作られた1つの均質な部材であり得る。すなわち、ベアリング50およびベアリングキャリア52は、1つの材料から作られた1つの部材として形成され得る。
【0031】
好ましい実施形態において、ベアリングは非金属複合材料からなり、上記材料は、チタンシリンダの内面の過剰磨耗を引き起こすことなく、チタンシリンダの内面に滑り嵌合することができる。ある実施形態において、重合イミドまたはポリイミドを形成するために用いられる単量体混合物から作られたポリプレグなどの、ポリイミド樹脂から構成される。そのような複合物の1つの例として、グッドリッチコーポレーション製のスペルマイド(Superlmide)(登録商標)として市販されているものがある。本発明に係るベアリングを形成するのに用いられる、好ましいスペルマイドブランドの複合材料の例が2つあり、SM438およびSC415という名称でグッドリッチコーポレーションから販売されている。適したポリイミド材料のうちの一方の例が、US特許番号5,338,827(Serafini他)の中に記載されており、全文を参照することによって本明細書に組み込まれる。他の一方のスペルマイドブランドの複合物のほかに、さらに他のポリイミド複合物もまた、本発明の範囲から逸脱することなく用いられてもよい。
【0032】
他の実施形態において、ベアリングは、ポリケトン熱可塑性材料などのエンジニアリングプラスチックから構成される。適したポリケトン熱可塑性材料の一例として、Greene,Tweedによってアーロン(Arlon)(登録商標)という商標で市販されているものが挙げられる。ある模範的なアーロンブランドの複合物は、Arlon1286の名称で市販されている。他のアーロンブランドの複合物のほかに、他のポリケトン熱可塑性材料もまた、本発明の範囲から逸脱することなく使用されてもよい。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、他の適した非金属複合材料を検討し得ることは理解されるだろう。
【0033】
図2に戻ると、好ましい実施形態において、チタンシリンダ32の内面34は剥き出しである。ここに使用される用語「剥き出し」(bare)は、他の金属または他の耐磨耗材料によってメッキあるいはコーティングされていない表面を含む。1つ以上の上記非金属複合物を含むベアリングの使用は、過剰磨耗が生じることなく、剥き出しのチタンシリンダの内面と滑り嵌合することを可能にすると考えられる。あるいは、チタンシリンダ32の内面34は、耐磨耗材料によってメッキまたはコーティングされてもよい。適した耐磨耗材料の例として、無電解ニッケルおよびニッケルホウ素が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の範囲から逸脱することなく、他の耐磨耗材料が用いられてもよい。
【0034】
ある実施形態において、上部ベアリングは上述の非金属複合物のうちの1つから成り、一方、下部ベアリングはシリンダ32に固定されており、かつピストン30との滑り嵌合を行う。上記滑り嵌合は、上記ピストンは、GGB(前Glacier Garlock Bearings)によってDPT4(登録商標)の商標で販売されている無鉛PTFE材料を含むベアリング面を介している。あるいは、下部ベアリングは他の適した材料によって形成されたベアリング面を含み得る。他の代替物として、上部ベアリングも、GGBによってDP4の名称で販売されている無鉛PTFE材料、または、他の適した材料によって形成されるベアリング面を含み得る。
【0035】
ここで、図6および7を参照すると、典型的な下部ベアリング60が図示されている。下部ベアリング60は、支持構造体62、支持構造体62上にある例えば多孔質層などの中間層64、ならびに、中間層64の上の、および/または中間層64の中に含浸された、ベアリング表面層66(単にベアリング面とも呼ばれる)を備えている。好ましい実施形態において、中間層64は多孔質層であり、また、ベアリング表面層66は、多孔質層の上の、および/または多孔質層の中に含浸された、無鉛ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料から形成されている。図示された実施形態において、多孔質層64は、例えば支持構造体62に対して半径方向内向きになるように、ベアリング面66と共に支持構造体62の内面上に示されており、ベアリング面66は、多孔質層64における内面上にあるか、または、内面の中に含浸されている。しかしながら、ベアリング面は、支持構造体62に対して半径方向外向きに設置されていてもよいことを理解されたい。
【0036】
好ましい実施形態において、支持構造体62はアルミ青銅から構成される。支持構造体がアルミ青銅から構成される場合の1つの利点は、ベアリング面が欠損した場合に、シリンダおよび/またはピストンに対する損傷が少ないことにある。しかしながら、支持構造体は、多孔質層64を支持し、かつ、ベアリング材料の層66を含浸および焼結する過程に耐えることができる任意の材料によって構成されていてもよいことに留意されたい。例えば、支持構造体は低炭素鋼、金属メッキ材料、非金属材料または同様のものなど、他の金属から構成されていてもよい。
【0037】
多孔質層64は、ベアリング面材料層66を支持構造体62に掛けるか、または、接続することのできる、任意の材料から成ってもよい。当該材料には、限定されないが、支持構造体に焼結された青銅粒子、および支持構造体に焼結された銅粒子等が挙げられる。
【0038】
ベアリング表面層66は無鉛PTFE材料からなり、当該材料は、多孔質層64の上にあるか、および/または当該層の中に含浸されている。ここに記載されている無鉛PTFEベアリング表面層によって、摩擦係数を十分に低くでき、スティックスリップすなわち静摩擦を最小限に抑えることができ、緩衝支柱内にある作業液または油圧油の腐食または汚染を抑えることができることに留意されたい。
【0039】
ある実施形態において、無鉛PTFE材料は、持続的なPTFEマトリクス、および無鉛の添加材料の離散粒子を含む、持続的な固結構造を有する。粒子は、PTFEポリマーマトリクスに、微視的および巨視的に均質的に分布されていてもよい。
【0040】
ある実施形態において、添加材料は、押出非焼結テープの中に取り込まれるのに適した材料を含んでもよい。当該テープは、支持構造体上に設置された多孔質層の中に含浸できるものであり、かつ、ベアリング面の材料層を固結するのに用いられる工程温度に耐えることのできるものである。
【0041】
テープは、支持構造体上に設置された多孔質層の中に含浸することができ、多孔質層における孔を圧縮すること、または、閉じることなしに、含浸し得るものである。ベアリング材料層の中には、任意の量の添加材料が含まれ得る。ある実施形態において、ベアリング材料層に含まれる添加材料の量は、持続的な固結層を形成するのに十分なPTFEが存在するような量である。
【0042】
ある実施形態において、添加材料は、限定されないが、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、およびフッ化スズを含むフッ化イオン;酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化チタン、および酸化亜鉛を含む金属酸化物;ならびに、水酸化アルミニウムを含む金属水酸化物;などの無機微粒子充填材を含む。他の実施形態において、添加材料は、フッ化カルシウムを有する無機微粒子充填材を含む。無機微粒子充填材の粒子の大きさは、望ましい低摩擦性を維持したままで耐キャビテーション浸食性および耐摩擦性を向上させることのできる大きさによって決定されてもよい。添加材料がフッ化カルシウムを含む場合の実施形態によると、フッ化カルシウムは平均粒子径が10ミクロン以下であってもよい。他の実施形態において、フッ化カルシウムは、平均粒子径が2ミクロン以下であってもよい。他の実施形態において、ベアリング材料層における無機微粒子充填材の量は、容量で10〜30%の間である。もちろん、本発明の範囲内で、他の粒子径および濃度が検討されてもよい。
【0043】
ある実施形態において、添加材料はポリフェニレンサルファイドの粒子を含んでいてもよい。ある実施形態において、ベアリング材料層におけるポリフェニレンサルファイドの量は、容量で30〜70%の間である。他の実施形態において、ポリフェニレンサルファイドの量は、容量で50%である。他の実施形態において、ポリフェニレンサルファイドは、平均粒子径が60ミクロン以下である。他の実施形態において、ポリフェニレンサルファイドは、平均粒子径が20ミクロン以下である。
【0044】
他の実施形態において、ベアリング材料層は、限定されないが、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロポリピレン共重合体、テトラフルオロエチレンプロピレンエーテル重合物、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン重合物、ポリクロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ヘキサフルオロイソブチレン重合物、ヘキサフルオロイソブチレン−ビニリデンフルオロイド重合体、または、ヘキサフルオロポリピレン重合物を含む、有機充填材料をさらに含んでもよい。上記に挙げたような溶融加工可能な有機充填材料は、押し出し非焼結テープおよび/またはベアリング材料層におけるPTFEの結晶化度を改善するために含まれていてもよい。
【0045】
ベアリング表面層を構成している押し出し非焼結テープは、US5,697,390に記載された方法を含む、任意の適した方法によって製造されればよく、当該文献を参照することにより本明細書に援用される。当該文献において、PTFE粒子および付加粒子は、空気衝突式粉砕機を用いて混合され、その後、押出されてテープを形成する。
【0046】
押し出し非焼結テープは、例えば圧延装置によって多孔質層の中に含浸されてもよい。含浸の工程は、テープを焼結せず、かつ、テープにおけるどんなポリマー材料でも溶融しないような状況および温度下で実施される。
【0047】
押し出し非焼結テープを多孔質層の中に含浸させてベアリング面材料層を形成した後で、ベアリング面材料層は、焼結されて、持続的な固結ベアリング材料層を含む3層組成材料を生成する。ある実施形態では、ベアリング材料層におけるPTFEのすべてが焼結される。
【0048】
本発明において用いられているように、テープまたはベアリング面材料層を焼結または固結するということは、PTFEをその融点まで、またはそれ以上まで熱するということを指す。PTFEを融点より上、すなわち350℃から425℃の間で熱する場合、PTFEは固結されるか、または、圧縮される。PTFEを融点より上まで熱する前に、PTFEは相対的に柔らかくなっており、熱を使用せずとも、最低限の力を加えることによって、多孔質層などの構造体の中へ操作され得る。
【0049】
ここに記載されたベアリングおよびその製造方法の利点は、ベアリング面に気泡がないことであり得る。押し出し非焼結テープは、テープを焼結する際の状況下で気泡を発生させ得る量の液体潤滑剤を必要としないからである。
【0050】
無鉛PTFEベアリング面材料層を生成するための構成および過程に関する詳細は、WO2004/079217に記載されており、当該文献を参照することにより本明細書に援用される。
【0051】
本発明は、図示された特定の実施形態に関して示され記載されているが、本明細書および添付の図面を読んで理解した当業者が、同等の変更および修正を行うだろう。例えば、本実施形態においては航空機用緩衝支柱が記載されているが、本発明によって提供された緩衝装置は、航空応用以外に応用されてもよい。特に、上述された完全体(構成材、アセンブリ、装置、複合材等)によって実施される様々な機能に関して、そのような完全体を指すのに用いられた用語(「手段」(means)への言及を含む)は、完全体に対応することを意図している。上記完全体のすべては、特定されない限り、本発明における実施形態で示された機能を実施する開示された構造と構造的に同等でなかったとしても、特定の機能(機能的に同等である)を実施するものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る緩衝支柱を内蔵する、簡略化された着陸装置アセンブリの概略正面図である。
【図2】図1における緩衝支柱の横断面図の一部であり、図1のライン2−2に沿って抜き出した部分を示す図である。
【図3】本発明に係るベアリングの斜視図である。
【図4】本発明に係る模範的な上部ベアリングアセンブリの斜視図である。
【図5】図4のライン5−5に沿って抜き出した部分を示す横断面図である。
【図6】他の模範的なベアリングの断面図である。
【図7】図6のベアリングの一部を拡大した断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタンを含むシリンダ(32)であって、内面(34)を有する上記シリンダと、
上記シリンダ(32)内に伸縮自在に移動可能なピストン(30)と、
上記ピストン(30)上にあるベアリング(40)であって、上記シリンダ(32)の上記内面(34)との滑り嵌合を行う非金属ベアリング面(50)を有する上記ベアリング面とを備える、航空機用緩衝支柱(12)。
【請求項2】
上記シリンダ(30)の上記内面(34)は、剥き出しのチタンである、請求項1に記載の航空機用緩衝支柱(12)。
【請求項3】
上記ベアリング(40)は、非金属複合材料より構成される、請求項1または2に記載の航空機用緩衝支柱(12)。
【請求項4】
上記ベアリング面(50)は、重合イミド材料によって形成される、請求項1から3のいずれか1項に記載の航空機用緩衝支柱(12)。
【請求項5】
上記ベアリング面(50)は、重合イミドを形成するために使用される単量体混合物から作られたプリプレグによって形成される、請求項1から3のいずれか1項に記載の航空機用緩衝支柱(12)。
【請求項6】
上記ベアリング面(50)は、ポリケトン熱可塑性材料によって形成される、請求項1から3のいずれか1項に記載の航空機用緩衝支柱(12)。
【請求項7】
上記ベアリングは上部ベアリング(40)である、請求項1から6のいずれか1項に記載の航空機用緩衝支柱(12)。
【請求項8】
上記シリンダ(32)に取り付けられた下部ベアリング(46)であって、上記ピストン(30)の外面との滑り嵌合を行う下部ベアリング面(66)を有する上記下部ベアリング(46)を、さらに備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の航空機用緩衝支柱(12)。
【請求項9】
上記下部ベアリング面(66)は、無鉛ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料層によって形成される、請求項8に記載の航空機用緩衝支柱(12)。
【請求項10】
上記下部ベアリング(46)は、支持構造体(62)、上記支持構造体(62)上にある多孔質層(64)、および、上記多孔質層(64)の中に含浸された上記無鉛PTFE材料層(66)を含む、請求項8または9に記載の航空機用緩衝支柱(12)。
【請求項11】
上記支持構造体(62)はアルミ青銅から構成され、無鉛PTFE材料層はフッ化カルシウムの粒子を含む、請求項10に記載の航空機用緩衝支柱(12)。
【請求項12】
上記下部ベアリング(46)は、アルミ青銅支持構造体(66)および上記支持構造体(66)上にある多孔質層(64)を備えており、上記下部ベアリング面(66)は、上記多孔質層の中に含浸された押し出しベアリング材料層によって形成されており、上記ベアリング材料層は、持続的なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)マトリクスおよび添加材料の離散粒子を含む持続的な固結構造であって、上記ベアリング材料層の一部は上記多孔質層(64)の上方にある、請求項8に記載の航空機用緩衝支柱(12)。
【請求項13】
上記チタンシリンダ(32)の上記内面(34)は、耐磨耗性皮膜によって覆われる、請求項1から12のいずれか1項に記載の航空機用緩衝支柱(12)。
【請求項14】
上記耐磨耗性皮膜は、無電解ニッケルより構成される、請求項13に記載の航空機用緩衝支柱(12)。
【請求項15】
上記耐摩耗性皮膜は、ニッケルホウ素より構成される、請求項13に記載の航空機用緩衝支柱(12)。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の航空機用緩衝支柱(12)を備える航空機用着陸装置アセンブリ(10)。
【請求項17】
上記着陸装置アセンブリ(10)は、前脚アセンブリである、請求項16に記載の着陸装置アセンブリ(10)。
【請求項18】
上記着陸装置アセンブリ(10)は、主着陸装置アセンブリである、請求項16に記載の着陸装置アセンブリ(10)。
【請求項19】
少なくとも1つの緩衝支柱(12)を含む航空機用着陸装置(10)を減量するための方法であって、上記少なくとも1つの緩衝支柱(12)は、シリンダ(32)、および、上記シリンダ(32)内に伸縮自在に移動可能なピストン(30)を有しており、上記方法は:
チタンシリンダ(32)を備える工程;
上記ピストン(30)に第1ベアリングを取り付ける工程;を含んでおり、
上記第1ベアリング(40)は、上記チタンシリンダ(32)の内面(34)との滑り嵌合を行う非金属ベアリング面(50)を有する方法。
【請求項20】
上記第1ベアリング(40)の上記非金属ベアリング面(50)は、上記チタンシリンダ(32)の上記内面(34)の過剰磨耗を引き起こさずに、上記チタンシリンダ(32)の上記内面(34)との滑り嵌合を行う、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
上記第1ベアリング(40)は、非金属複合材料より構成される、請求項19または20に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−523642(P2009−523642A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550439(P2008−550439)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/000904
【国際公開番号】WO2008/048335
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(501348092)グッドリッチ コーポレイション (17)
【Fターム(参考)】