説明

改良型バンドギャップ基準電圧

ノイズおよび増幅器オフセットに対する感受性が低減された、バンドギャップ基準電圧が記載されている。バイアスが印加されたときに構成要素のトランジスタのベース幅が変化しないように回路を構成することにより、アーリー効果を取り除くことが可能となる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基準電圧回路に関し、特にバンドギャップ技術を用いて実装される基準電圧回路に関する。より詳細には本発明は、温度係数(TC)が非常に小さく、増幅器のノイズおよびオフセットに対する感受性が低減された基準電圧を提供する方法および回路に関する。
【背景技術】
【0002】
バンドギャップ基準電圧回路は、等しくかつ反対の温度係数を有する2つの電圧の加算に基づく。第1の電圧は、順方向バイアスされたバイポーラトランジスタのベースエミッタ間電圧である。この電圧は、約−2.2mV/℃の負のTCを有し、通常、「絶対温度に対して相補的な」電圧、またはCTAT電圧として示される。「絶対温度に対して比例的な」電圧、またはPTAT電圧の第2の電圧は、異なる電流密度で動作するバイポーラトランジスタの順方向バイアスされた2つのベースエミッタ接合の電位差(ΔVbe)を増幅することにより生成される。これらのタイプの回路は良く知られており、それらの動作の詳細は、非特許文献1に記載されている。参照により、この内容を本明細書に組み込む。
【0003】
このような基準電圧回路の古典的な構成は「ブローコーセル」(Brokaw Cell)として知られており、その一例を図1に示す。第1のトランジスタQ1、および第2のトランジスタQ2のコレクタは、それぞれ増幅器A1の非反転および反転入力端子に接続される。各トランジスタのベースは共通接続され、この共通ノードは抵抗r5を介して増幅器の出力端に接続される。この接続されたベースと抵抗r5の共通ノードは、別の抵抗r6を介して接地される。Q2のエミッタは、抵抗r1を介してトランジスタQ1のエミッタとの共通ノードに接続される。次いでこの共通ノードは、第2の抵抗r2を介して接地される。A1の出力端ノードから抵抗r3を介してQ2のコレクタに、抵抗r4を介してQ1のコレクタに、帰還ループが設けられる。
【0004】
図1においてトランジスタQ1に対して、トランジスタQ2にはより大きなエミッタ面積が設けられており、したがって2つのバイポーラトランジスタQ1およびQ2は、異なる電流密度で動作する。抵抗r1の両端間には、次の形の電圧ΔVbeが生じる。
【0005】
【数1】

【0006】
ただし、
kはボルツマン定数、
qは電子の電荷、
Tはケルビンで表される動作温度、
nは2つのバイポーラトランジスタのコレクタ電流密度の比である。
【0007】
通常、2つの抵抗r3およびr4は等しく、コレクタ電流密度の比は、Q2とQ1のエミッタ面積の比によって与えられる。プロセス変動による基準電圧の変動を低減させるために、Q2は、それぞれのトランジスタの面積がQ1と同じであるn個のトランジスタのアレイとして設けることもできる。
【0008】
電圧ΔVbeは電流I1を発生させ、これもPTAT電流である。
【0009】
Q1およびQ2の共通ベースノードの電圧は、次のようになる。
【0010】
【数2】

【0011】
抵抗比と電流密度を適切にスケーリングすることによって、電圧「Vb」は1次において温度の影響を受けなくなり、ベースエミッタ間電圧によって生じる湾曲を別として、補償されたままであると見なすことができる。電圧「Vb」はr5とr6の比により増幅器の出力端に、基準電圧Vrefとしてスケーリングされる。
【0012】
【数3】

【0013】
ここで、I(Q)およびI(Q)は、Q1およびQ2のベース電流である。
【0014】
ブローコーセルは広く用いられているが、依然としていくつかの欠点がある。式3の第2項は、ベース電流による誤差を表している。この誤差を低減するためには、r5はできるだけ小さくなければならない。r5を小さくするにつれて、基準電圧を介して電源電圧から抜き取られる電流が増加し、これが欠点となる。別の欠点は、動作温度が変化するにつれて2つのトランジスタのコレクタベース間電圧も変化することに関連している。アーリー効果(バイアス印加による実効ベース幅の変化がトランジスタ動作に及ぼす影響)の結果、2つのトランジスタの電流が影響を受ける。アーリー効果についてのさらなる情報は、前述の非特許文献1の15頁に見ることができ、その内容を参照により本明細書に組み込む。
【0015】
図1の2次の効果を無視すると、増幅器の入力オフセット電圧Voffは、次のように基準電圧ノードに反映される。
【0016】
【数4】

【0017】
増幅器のノイズも、同じ利得で入力端から基準ノードに反映される。
【0018】
【数5】

【0019】
式4および図1から、「ブローコーセル」中のオフセットおよびノイズ感受性を低減する簡単な方法は、r2に比べてr4を大きくすることであることは明らかである。しかしr4が大きくなるにつれて、Q1およびQ2のコレクタベース間電圧も大きくなり、アーリー効果が強調されてしまう。
【0020】
ブローコーセルはまた、すべての非補償型基準電圧源がそうであるように、ベースエミッタ間電圧の「湾曲」の影響を受けるという問題がある。
【0021】
バンドギャップ基準電圧中でCTAT電圧として用いられ、そしてPTAT特性のコレクタ電流によってバイアスされる、バイポーラトランジスタのベースエミッタ間電圧は、式6に示されるように温度に関連している。
【0022】
【数6】

【0023】
ただし、
be(T)は、動作温度におけるバイポーラトランジスタのベースエミッタ間電圧の温度依存性、
BE0は、基準温度におけるバイポーラトランジスタのベースエミッタ間電圧、
G0は、バンドギャップ電圧、すなわち温度0Kにおけるベースエミッタ間電圧、
は、基準温度、
σは、飽和電流の温度指数(コンピュータによるシミュレータでは、XTIと呼ばれることがある。)
図1の抵抗r2の両端間に生じるPTAT電圧は、式6の初めの2つの項を補償するだけである。産業用温度範囲(−40℃から85℃)において約2.5mV程度の「湾曲」を生じさせる最後の項は補償されないままであり、基準電圧中へは、利得係数G(式5)だけゲインが与えられる。
【0024】
「ブローコーセル」は良く平衡が取られているので、「湾曲」誤差を内部的に補償するのは容易ではない。この誤差を補償するための1つの試みは、本願の譲受人に譲渡された特許文献1に述べられており、その開示を参照により本明細書に組み込む。この米国特許においては、「湾曲」誤差は補償されるが、追加のバイポーラトランジスタを定電流でバイアスする別個の回路を用いるこの方法においては、この追加の回路を使用することが必要になる。
【0025】
バンドギャップ基準回路の他の例も知られており(例えば、特許文献2参照)、それには所定の値から離れる基準電位に応答して、第1および第2の出力端子間を流れる電流を制御するように適合された帰還を備える基準電圧回路が記載されている。この回路は、アーリー効果の低減を達成する簡単な実装形態である。
【0026】
【特許文献1】米国特許第5,352,973号明細書
【特許文献2】米国特許第4,399,398号明細書
【非特許文献1】Gray他、「Analysis and Design of Analog Integrated Circuits」、第4版、第4章
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
しかしながら、この回路はベース電流の効果を低減するように働くが、その代償として電力消費が増加する。その結果、この回路は比較的大電流の用途に限って適している。これは、トランジスタT1をトランジスタT2より大きい電流で動作させることによってベース電流の補償がもたらされるということに由来していることがわかり、電力が増加するにつれてRSの両端間の損失も増加する。また回路を調べることにより、得られる電源電圧除去も比較的、中程度であることを理解されたい。
【0028】
したがって、図1に示される回路ではオフセットおよびノイズ感受性は小さいものの、依然として、オフセットおよびノイズに対する感受性をさらに低減することが必要であることを理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0029】
したがって本発明の第1の実施形態は、従来技術の上記その他の不都合を克服するように適合された改良型の基準電圧回路を提供する。本発明は、異なる電流密度で動作する2つのトランジスタ間の電位差をスケーリングすることにより、増幅器の出力端で基準電圧が得られるバンドギャップ基準回路を提供する。本発明の回路はさらに、コレクタベース領域間の電位差を低減し、それによってアーリー効果を最小限に抑えるよう適合される。
【0030】
好ましい実施形態によれば、第1および第2の入力端を有しその出力端において基準電圧が得られる第1の増幅器を含む、バンドギャップ基準電圧回路が提供される。増幅器は、その第1の入力端において第1のトランジスタに接続され、第2の入力端において第2のトランジスタに接続され、第2のトランジスタは、第1のトランジスタよりも大きなエミッタ面積を持っている。第2のトランジスタは、そのエミッタで負荷抵抗に接続され、使用時に負荷抵抗は、バンドギャップ基準電圧の生成に用いるための第1および第2のトランジスタのベースエミッタ間電圧の差の測定値ΔVbeをもたらす。本発明によれば、第1および第2のトランジスタのベースが同電位となるように各トランジスタのベースは共通接続され、第1および第2のトランジスタの1つはダイオード接続構成を備えており、第1および第2のトランジスタの他方のベースコレクタ間電圧は、帰還ループ中でそれぞれのトランジスタのコレクタに接続された増幅器によって0に保たれ、これによってアーリー効果を低減させる。
【0031】
望ましくは、第3および第4のトランジスタをさらに含み、第3のトランジスタは第1のトランジスタのエミッタに接続され、第4のトランジスタは負荷抵抗を介して第2のトランジスタのエミッタに接続され、第4のトランジスタのエミッタ面積は第1または第3のトランジスタのエミッタ面積より大きく、第1および第3のトランジスタは第2および第4のトランジスタよりも高い電流密度で動作するようになり、帰還ループ中で抵抗を介して第2の入力端においてPTAT電圧が増幅器に供給され、増幅器の出力端で得られる電圧は、第1および第3のトランジスタのベースエミッタ間電圧にPTAT電圧を加えた組合せとなる。
【0032】
望ましくは、第3および第4のトランジスタは、ダイオード接続構成を備えている。好ましくは、第3のトランジスタのエミッタは、第2の抵抗を介して接地され、その抵抗値が、固有バンドギャップ電圧の2倍から所望の電圧への基準電圧のシフトをもたらし、これによって回路のオフセット調整が可能になる。
【0033】
第3および第4の抵抗は、通常、増幅器の出力端と、第1および第2のトランジスタのそれぞれのコレクタとの間の、それぞれの帰還ループ経路中に設けられる。
【0034】
それぞれの帰還ループ中に設けられる抵抗は、ほぼ同じ値とすることも、異なる値となるように選ぶこともできる。
【0035】
それに加えて回路は、非ダイオード接続トランジスタのベース電流を供給し、同じ電流を同じトランジスタのコレクタから抜き取り、それによって第1および第2のトランジスタのそれぞれのコレクタ電流を同じ値に保つように適合された回路を含むことができる。
【0036】
このような回路は、非ダイオード接続トランジスタと他方のトランジスタ間のベース電流の変化を補償する。これによってベース電流による回路中の誤差を低減させるように適合させることができる。
【0037】
通常、非ダイオード接続トランジスタは第1のトランジスタであり、第1のトランジスタのコレクタから電流を抜き取るように適合された回路は、第1および第3のトランジスタにより定義される回路の支脈(leg)の複製を含み、複製された支脈は回路の第5および第6のトランジスタを含み、第5のトランジスタのベースは第1のトランジスタのコレクタに接続され、第5のトランジスタのエミッタは第6のトランジスタのコレクタに接続される。第6のトランジスタのベースは第3のトランジスタのダイオード接続されたベースに接続され、それによってカレントミラーを形成し、第5のトランジスタによって第1のトランジスタのコレクタからベース電流が抜き取られる。
【0038】
第1および第2のトランジスタのベース電流は、第7および第8のトランジスタ、ならびにバイポーラミラーを介してさらにミラーリングすることができる。第6および第8のトランジスタのベース電流は増幅器の出力端から2倍カレントミラーによって供給され、第3、第6、および第8のトランジスタのそれぞれのコレクタ電流は同じになる。
【0039】
第5のトランジスタのコレクタは、通常、抵抗を介して増幅器の出力端に接続され、その抵抗値は第4の抵抗の値とほぼ等価であり、第5のトランジスタのベース電流は第1のトランジスタのベース電流に追従するようになる。
【0040】
第1および第2のトランジスタのベース電流は、第5および第7のトランジスタに接続された一連のミラーを介してさらにミラーリングすることができ、ミラーリングされた電流は第5および第7のトランジスタのエミッタから抜き取ることができ、それによって第5および第7のトランジスタのコレクタ電流がほぼ同じ値になることを確実となる。この電流は、第7のトランジスタのコレクタと増幅器の出力端の間に接続されたカレントミラーによってさらにミラーリングされ、それによってPTAT電流が得られる。
【0041】
いくつかの実施形態は、第1および第3のトランジスタの電圧の湾曲を補償するように適合された補正電圧を供給するように適合された回路をさらに含み、その補正電圧を組み込むことによって湾曲が打ち消される。
【0042】
通常、このような回路は、負荷抵抗においてPTAT電圧とCTAT電圧を混合したものを提供するように適合される。
【0043】
通常、補正電圧は、第4のトランジスタのベースエミッタ間電圧を抵抗の両端間にミラーリングし、MOSFETデバイスおよび増幅器を用いて絶対温度に対して相補的な(CTAT)電流の発生するように供給され、CTAT電流は少なくとも1つのカレントミラーによって第4のトランジスタに戻される。それによって負荷抵抗の両端間に逆の湾曲を持った電圧を複製し、この複製された電圧と前からある電圧(ΔVbe)を組み合わせることによって湾曲が打ち消される。
【0044】
逆の湾曲を持った電圧の大きさは、カレントミラーと第4のトランジスタによって得られる電流の勾配を変えることによって変更することができる。
【0045】
本発明の回路の変更形態としては、第3および第4のトランジスタに接続された複数の追加のトランジスタを含むことができる。複数の追加のトランジスタはスタック構成で設けられ、それによってより高い基準電圧を有する基準回路の利用が可能となる。
【0046】
本発明はまた、アーリー効果を補償するように適合されたバンドギャップ基準電圧回路を提供する方法であって、第1および第2のトランジスタを設けるステップであって、各トランジスタは異なる電流密度で動作するように適合され、第1のトランジスタはダイオード接続構成で設けられ、それぞれのトランジスタはさらに増幅器の入力端に接続されることと、この増幅器の出力端において基準電圧を得るために、異なる電流密度で動作する2つのトランジスタ間の電位差をスケーリングするステップと、帰還ループを設けるステップであって、増幅器の出力端において基準電圧を得るために、帰還ループは第1および第2のトランジスタのそれぞれをこの増幅器の出力端に接続し、第1および第2のトランジスタのそれぞれのベースコレクタ間電圧が0になることと、を備える方法を提供する。
【0047】
次に本発明について、添付の図面を参照しながら説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
従来技術については、図1を参照しながら既に説明をした。
【0049】
図2は、本発明によるバンドギャップ基準電圧の一例を示す。図2の回路は、主基準ブロック100、バイアス電流補償ブロック200、および湾曲補正ブロック300の3つのブロックに分けることができ、各ブロックは従来技術に伴う特有の問題を取り除くように適合されている。「背景技術」の項で詳しく述べたように、古典的なブローコーセルの従来技術における実装形態に伴い、いくつかの問題がある。これらは、アーリー効果による問題、ベース電流による感受性、オフセットによる感受性、基準電圧出力からの出力の1つまたは複数の抵抗の両端間への結合から生じる消費電力の要求条件、並びに湾曲を内部的に補正することができないこと、に要約することができる。図2に示される構成は、上記およびその他の問題を克服するように適合されており、それぞれの問題の解決策は、この回路中の特定の構成要素または機能へと、たどることができる。
【0050】
図2からわかるように、この回路は、バンドギャップ技術を用いた基準電圧の発生に基づいている。知られているように、異なる電流密度で動作する2つのトランジスタ間の差をスケーリングしたものを用いることによって、これらを増幅器において組み合わせ、その増幅器の出力端において基準電圧を得ることができる。本発明の回路によれば、主ブロック100は、反転入力端および非反転入力端を持った増幅器A1を含む。第1のトランジスタQ1は第1のエミッタ面積を持ち、第2のトランジスタQ2は第2のエミッタ面積を持つ。これは、Q1のエミッタ面積のn1倍である。Q2はダイオード接続構成で設けられており、コレクタはベースに接続されている。標準の動作によれば、増幅器A1はその2つの入力端をほぼ同じ電圧レベルに保ち、その結果、Q1もベースコレクタ間電圧は0で動作する。図1で説明したのと同様に、Q1およびQ2のベースは同電位で接続されている。しかし本発明によれば、増幅器の出力は、Q1およびQ2の共通ベース並びにQ1とQ2のコレクタへ、帰還構成により供給される。望ましくは、この帰還ループは、Q2のコレクタが抵抗r3を介して接続され、Q1のコレクタが抵抗r4を介して接続されるように設けられる。Q1およびQ2のコレクタベース間電圧は、0Vであることがわかる。すなわち、Q1はダイオード接続されたトランジスタであり、増幅器A1によりQ2のコレクタベース間電圧も0Vである。したがって、「アーリー」効果が除去される。この一連の回路は、図2の破線のブロック100A内に示されている。ブロック100A内の構成は、Q1のベースコレクタ間電圧が増幅器によって制御され、Q2のベースコレクタ間電圧についてはダイオード接続構成によるものとして示されている。しかし、等価的にQ1がダイオード接続され、Q2が増幅器によって制御されてもよいことを理解されたい。さらに、高いβを持っている応用例の場合などベース電流が無視できれば、ベース電流補償用の追加回路は不要であることを理解されたい。
【0051】
通常、トランジスタQ1およびQ2のそれぞれのエミッタは、他の2つの同じくダイオード接続されたトランジスタQ3およびQ4のコレクタにそれぞれ接続される。Q1の場合は直結であり、Q2については抵抗r1を介したものとなる。Q3は、Q1と同じエミッタ面積を持つ。Q4のエミッタ面積は、Q1およびQ3のエミッタ面積の「n2」倍である。したがってQ1およびQ3は、Q2およびQ4に比べて高い電流密度で動作し、抵抗r1の両端間に、PTAT電圧である電圧ΔVbeが発生する。これにより、増幅器の出力端からQ1を通りQ3へ、並びにQ2を通りr1を介してQ4へ流れるPTAT電流が生じる。Q3およびQ6の共通エミッタは、抵抗r2を介して接地ノードに接続される。この抵抗は、r2=0の場合の固有バンドギャップ電圧の2倍(≒−2.3V)から所望の値、例えば通常2.5Vまで、基準電圧をシフトさせる役割を持っている。
【0052】
バイアス電流補償ブロック200は、Q1にベース電流Ibを供給し、そのコレクタから同じ電流を抜き取る役割を有する。そうすると、r1およびr3を通る電流はほぼ同じとなり、これらはベース電流の影響を受けない。r4を通る電流は、Q1エミッタ電流と同じ電流である。その結果、r3およびr4の両端の電圧降下は、ΔVbe電圧のスケーリングされた複製となる。このブロックの回路は、ベース電流の寄与により誤差が導入され得るような、βが小さいかまたは中程度の応用例において有用であり、特にこれらの誤差を低減させるために設けられている。通常、r1およびr3は値が同じになるように選ばれるが、いくつかの応用例では、具体的に値が異なるように選ぶこともできることを理解されたい。バイアス電流補償ブロックを用いることの利点は、ベース電流を差し引いた後に、主ブロック100へ再導入することにより、r1およびr3の選定値に関わらずベース電流が補償されることである。
【0053】
Q5およびQ6を介して電流I2をミラーリングすることにより、Q1のコレクタからベース電流Ibが抜き取られる。これらのトランジスタは、Q1およびQ3により設けられているものと等価的な支脈(leg)を形成する。ブロック100中のQ3と、ブロック200中のQ6のベースエミッタ間電圧は同じであるので、それらのコレクタ電流もほぼ同じI2となる。ベース電流Ibも、Q8、Q7、および通常ダイオード接続されたバイポーラpnpトランジスタである典型的なバイポーラミラーIM1を介して、ミラーリングされる。Q8およびQ6のベース電流(2Ib)は、2倍カレントミラーIM2を介して戻される。このようにしてQ3、Q6、およびQ8は同じベース電流で動作するので、これらのコレクタ電流はまったく同じになる。Q1とQ5のベース電流の差を最小にするために、r4とほぼ同じ値の追加の抵抗r8が設けられ、それによってQ1およびQ5が、コレクタ電流が同じでありベースコレクタ間電圧がほぼ0の、同様の条件で動作することが確保される。その結果、Q5のベース電流はQ1のベース電流に追従するようになる。Q1/Q3およびQ5/Q6によって設けられる2つの支脈は類似していることにより、得られるベース電流の追従性能は非常に正確である。
【0054】
ベース電流Ibも、カレントミラーIM4から、通常、ダイオード接続されたバイポーラnpnトランジスタである「マスタ」ミラーIM5へミラーリングされる。この電流は、Q5とQ7のコレクタ電流がQ3のコレクタ電流すなわちI2とほぼ同じ電流となることを確実にするために、ミラーIM5およびIM7を介してQ5とQ7のエミッタから抜き取られる。PTAT電流I2は、基準電圧とQ7のコレクタ間に接続された「マスタ」ミラーIM8によってミラーリングされる。このようにして、図2によるセルは、PTAT電流も発生させることができる。
【0055】
ブロック200の回路構成要素の検討から、ベース電流を引き出す(pull)ために1組の回路が用いられ、ベース電流を発生させてブロック100に戻すためにもう1組の回路が用いられていることが、さらに理解されるであろう。2組の異なる回路構成要素を用いることにより、より正確にベース電流を抜き取る(extract)ことが可能になる。つまり、この抜取り回路は、追加的な機能すなわち特に再導入されるベース電流の発生に関連する機能を持たないからである。第2の組の回路は、そのベース電流を再供給するという固有の目的を持っている。ベース電流を抜き取る第1の組の構成要素は、複製された支脈によって与えられ、この支脈はQ5およびQ6を持つ。他の構成要素は、Q1とQ2の接続されたベースへ帰還させることができるベース電流を発生させる。
【0056】
ベース電流の抜取りとブロック100への再導入は、Q1のコレクタからベース電流を抜き取るために用いられる回路が、Q1とQ2のベースにベース電流を再供給する追加の機能をもつ、より簡単な構成を用いて実現できる。しかし、そのような回路は上記の構成を用いて可能となる、正確な抜取りを達成することはできない。
【0057】
通常のバンドギャップ電圧の2次の影響、すなわち「湾曲」は、ブロック300によって補償される。ブロック300の回路は、2003年2月27日出願の同時係属および本願の譲受人に譲渡された米国特許出願第10/375,359号に記載のものと同様にして負の「湾曲」電圧を生じるように適合されており、その内容を参照により本明細書に組み込む。「湾曲」補正は、Q4のベースエミッタ間電圧を抵抗r7の両端間にミラーリングし、MOSFETデバイスM1、カレントミラーIM9およびIM11を介してCTAT電流を発生させることによって行われる。CTAT電流は、その湾曲を強調するために、ダイオード接続されたトランジスタQ4に帰還され、それによって負電圧の「湾曲」を抵抗r1の両端間に複製する。この負電圧の「湾曲」は、Q4のコレクタ電流の勾配に依存し、Q3およびQ1の正電圧の「湾曲」を補償するために、比r3/r1だけゲインを持つことができる。
【0058】
r2を通る電流は、Q3、Q4、Q6、Q8から流れ出るPTAT電流と、r7およびIM11から流れ出るCTAT電流の組合せである。カレントミラーIM10から発生される追加のCTAT電流I4は、r2の両端の電圧降下が必要なシフト電圧になり、基準電圧が所望の補償された基準電圧になることを確実にする。発生されたCTAT電流の勾配は、カレントミラーIM11およびトランジスタQ4の選択によって変えることができることを理解されたい。CTAT電流、および負荷抵抗r1の両端間にすでにあるPTAT電流は、次いで負荷抵抗r1と帰還抵抗r3の比の選択によってゲインを持つことができる。
【0059】
Q2とQ4のエミッタ面積が同一であると見なせば、n1=n2=n、およびr3=r4、PTAT電圧であるΔVbeは、
【0060】
【数7】

【0061】
基準電圧Vrefは、
【0062】
【数8】

【0063】
ただし、Vshiftは、PTAT電圧とCTAT電圧の組合せであり、
shift=(4I+I+I+I)r (9)
ここで、Vbe1は、Q1およびQ3のベースエミッタ間電圧である。
【0064】
増幅器のオフセット電圧が基準電圧へ及ぼす影響を見るために、ベース電流を無視し、r3=r4、n1=n2=n、そして図2に示されるように増幅器Aの入力オフセット電圧をVoffとする。オフセット電圧が0の場合は、2つの電流I1とI2はバランスがとれている。
【0065】
所与のオフセット電圧Voffの場合は、式10に示されるように電流はバランスしなくなる。
【0066】
=I+Voff (10)
【0067】
図10が示すように、正のオフセット電圧の場合はI>Iとなる。高電流密度側(Q1、Q3)への電流Iが減少し、低電流密度側(Q2、Q4)への電流Iが増加するので、ΔVbeは減少する。これは電流I1を減少させる傾向があり、この本来的な負帰還は、主たるPTAT電圧であるr3の両端の電圧降下を再びバランスさせる役割を果たす。負のオフセット電圧の場合はI<Iとなり、ΔVbeは増加し、PTAT電圧が減少する。
【0068】
図1による回路から図2による回路への改善を見るために、2つの適切な回路についてシミュレーションを行なった。
【0069】
図1によりシミュレーションした回路においてそれぞれの抵抗値は、r1=20k、r2=56.5k、r3=r4=100k、r5=10.1k、r5=10kである。Q1は、基本の5μm×5μmのエミッタを持つトランジスタである。Q2は、同じエミッタ面積の基本トランジスタ50個分の面積を持っている。コレクタ電流I1およびI2は、室温で約5μAのPTAT電流である。シミュレーションした基準電圧を図3に示す。−40℃から85℃までの温度範囲において、基準電圧の変動は約3mVである。これは、約10ppm/℃のTCに相当する。
【0070】
図4は、利得抵抗(r5、r6)を通る電流、およびそれらの差、すなわち2つのベース電流の和を示す。係数「ベータ」すなわちコレクタ電流とベース電流の比はプロセス変動により大きな広がりをもつので、電流の差は誤差と見なすことができる。この誤差電流は、r5=10kの両端間に、約1.6mVの誤差電圧を生じさることがわかる。
【0071】
本発明の回路および方法を用いることによって可能となる改善のタイプを数値で表すために、図2による回路を設計し、シミュレーションを行なった。このシミュレーションした例示の回路では、それぞれの抵抗値は、r1=30k、r2=5k、r3=r4=r8=190k、r7=142kである。Q1、Q3、Q5、Q6、Q7、Q8は、基本面積バイポーラトランジスタ、Q2およびQ4は、それぞれ25個並列にした基本面積バイポーラトランジスタの領域上にある。基本バイポーラトランジスタの総数は近いので、面積の点では2つの回路(図1および図2)は同程度である。すなわち、図1中のQ2は50単位、図2中のQ2およびQ4はそれぞれ25単位である。r3、Q2、r1、およびQ4を通る電流は室温で約5μAのPTAT電流であり、図1による回路の場合と同じである。また、2つの回路中の増幅器は同じものである。
【0072】
図2によりシミュレーションした基準電圧を、図5に示す。図5による電圧の総変動量は、同じ温度範囲−40℃から85℃において約40μVである。これは約0.15ppm/℃のTCに相当し、10/0.15=68のTCの低減である。
【0073】
図2の回路の基準電圧の勾配が微調整によって補償された場合は、残留の電圧湾曲が残るだけとなり、これを図6に示す。図5に示されるように、残留の「湾曲」電圧は約0.025ppm/℃のTCに相当する。
【0074】
図7は、Q1とQ5のベース電流が、互いに追従する様子を示す。これらの電流は室温で約63nAであり、その差は温度範囲全体で30pA未満であることがわかる。この電流による図2のr4の両端間の電圧降下は、図1の回路中のベース電流による電圧誤差1.6mVと比べて、6μV未満である。
【0075】
増幅器の入力オフセット電圧が基準電圧に及ぼす影響を、この2つの回路についてシミュレーションした。図1による回路の場合、増幅器の入力への1mVのオフセット電圧は基準電圧中に1.88mVの誤差として反映される。図2による回路の場合は、1mVのオフセット電圧は0.57mVとして反映される。これは図1の回路から図2の回路に対して、オフセットおよびノイズ感受性において3倍を超える低減に相当する。
【0076】
図8は、図2の回路中において、オフセット電圧がどのようにQ1とQ2のコレクタ電流に影響するかを浮き彫りにしている。最初の図は、1mVのオフセット電圧による、Q1とQ3のコレクタ電流の変化を示す。下側の図は、同じオフセット電圧に対するQ2とQ4のコレクタ電流の変化を示す。オフセット電圧は主に高電流密度側(Q1とQ3)へ反映されることがわかり、これは前述のオフセット電圧に対する本来的な帰還によるものである。
【0077】
図2の第2の増幅器A2のオフセット電圧が、基準電圧へ及ぼす影響は小さい。A2のオフセット電圧が1mVの場合、図2による回路の基準電圧への誤差は30μV未満となる。
【0078】
図2による基準電圧は、より多くのバイポーラトランジスタを積み重ねることによって、より高い基準電圧値に適合させることができる。5Vの基準電圧を発生することを目的とした、そのような一例を図9に示す。図9は図2のものと非常に似ており、主基準ブロック100に構成要素が追加されている点と、それに伴い主基準ブロック100と他の2つのブロック200、300の間の接続構成が変更されている点だけが異なっている。
【0079】
図9において、追加のトランジスタQ9、Q10、Q11、およびQ12は、トランジスタQ3およびQ4に接続された積み重ね(stack)構成で設けられる。4個すべての新しいトランジスタはダイオード接続構成で設けられ、Q9のコレクタはQ3のエミッタに接続され、Q10のコレクタはQ9のエミッタに接続される。同様にQ11のコレクタはQ4のエミッタに接続され、Q12のコレクタはQ10のエミッタに接続される。Q11とQ12は、抵抗r2とトランジスタQ4の間に設けられる。第1のブロック100と第3のブロック300の接続は、Q11およびQ12、並びにQ12およびr2の共通ノードによりもたらされる。同様にブロック100とブロック200の接続は、Q10、Q12、およびr2の共通ノードに接続された接続によりもたらされる。当業者には明らかなように、トランジスタを積み重ねることによる効果は、より高い電圧での回路の動作が可能になることである。したがって、図示のトランジスタの数は、例示だけを目的としたものであり、等価的に、様々な特性のトランジスタを任意個数積み重ねたものを用いることもできる。
【0080】
図9はまた、湾曲を補正できる代替的な方法を示している。この実施形態では、図2の等価なブロック300中にあった増幅器とMOSFETの構成は、トランジスタqn17と抵抗r9の構成によって置き換えられる。qn17のベースはQ4のエミッタに、コレクタはカレントソースIM9に、エミッタは抵抗r9に接続されている。r9の第2の端子は、Q12のエミッタに接続されている。湾曲補正は、先に述べたのと同様にして備えられる。Q4のベースエミッタ間電圧は、Q12を介して抵抗r9の両端間に接続され、カレントミラーIM9およびIM11を用いてCTAT電流が発生される。CTAT電流は、その湾曲を強調するために、ダイオード接続されたトランジスタQ11に帰還され、それによって負電圧の「湾曲」をr1の両端間に複製する。この構成は、図9の実施形態において得られる多数の積み重ねられたトランジスタによって可能となり、湾曲補正ブロック300のブロック機能を得るためには任意個数の異なる構造のものを用いることができ、図9および図2に2つの例示的実施形態を示したが、これらは本発明の他のブロックと共に用いることができるタイプを示したものであり、したがって本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、修正することができることを理解されたい。
【0081】
図9による回路をシミュレーションし、そのシミュレーション結果を図10に示す。この回路の場合、抵抗値はr1=30k、r2=5k、r3=r4=r8=200k、r7=60k、バイポーラトランジスタQ1、Q3、Q5、Q7、Q8、Q9、Q10はそれぞれ5μ×5μの基本エミッタ面積であり、バイポーラトランジスタQ2、Q4、Q11、Q12はそれぞれ5μ×5μの基本エミッタ面積の12倍の面積である。図9による回路に対して、プロセス変動による基準電圧の広がりを調べるために、温度25℃にて1000回反復のモンテカルロ法による分析を行った。図10に示されるように、5Vの基準電圧における分布パラメータ「σ」は、1.25mVである。3σに対して、基準電圧の偏差は約0.075%である。
【0082】
本発明の回路によるバンドギャップ基準電圧はまた、追加調整を行う場合に必要となる、本来的なPTATおよびCTAT電流を発生するという利点を有する。
【0083】
以上、本発明を特定のNPNバイポーラトランジスタ構成について説明してきたが、本発明の適用例がこのような構成に限定されるものではないことを理解されたい。当業者には理解されるようにPNP構成などによって実装することにより、構成における多くの変更形態および変形形態を実現することが可能である。本明細書中で説明されたものは、本発明によるバンドギャップ基準電圧の例示的な実施形態であることを理解されたい。回路を詳細に説明するために、具体的な構成要素、特徴、および数値を用いたが、添付の特許請求の範囲に照らして必要と見なされ得る場合を除き、いかなる形においても本発明が限定されるものではない。さらに、本発明のいくつかの構成要素についてはそれらの通常の記号を用いて説明し、例えば増幅器がどのように構成されているかに関する実際の機能的な説明は省略したことを理解されたい。このような機能は当業者には周知であり、さらに詳細が必要な場合は多くの標準の教科書中に見ることができるであろう。
【0084】
同様に、含む(comprises/comprising)という語は本明細書中で用いられる場合は、記載された特徴、整数値、ステップ、または構成要素の存在を述べるものであるが、1つまたは複数の他の特徴、整数値、ステップ、構成要素、あるいはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】従来技術による、一般的な「ブローコー」セルの一例を示す図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態による回路の一例を示す図である。
【図3】従来技術による回路の性能のシミュレーションを示す図である。
【図4】図1の回路の出力分圧器(r5、r6)を通る電流、およびそれらの差(ベース電流)のシミュレーションを示す図である。
【図5】図2の回路による基準電圧のシミュレーションを示す図である。
【図6】図2の回路によるベース電流(Q1)、補正ベース電流(Q5)、およびそれらの差のシミュレーションを示す図である。
【図7】図2の回路のベース電流、補償ベース電流、およびそれらの差のシミュレーションを示す図である。
【図8】図2の回路中において、オフセット電圧がどのようにQ1およびQ2のコレクタ電流に影響するかを示す図である。
【図9】積み重ね構成で設けられた追加のトランジスタを含む、請求項1の回路の変更形態を示す図である。
【図10】図9の回路の性能のシミュレーションを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の入力端を有しその出力端に基準電圧を与える第1の増幅器を含むバンドギャップ基準電圧回路であって、前記増幅器は前記第1の入力端において第1のトランジスタに接続され、前記第2の入力端において第2のトランジスタに接続され、前記第2のトランジスタは前記第1のトランジスタより大きなエミッタ面積を有しており、
前記第2のトランジスタはそのエミッタにおいて負荷抵抗に接続され、使用時に前記負荷抵抗は、バンドギャップ基準電圧を生成するのに用いるための前記第1および前記第2のトランジスタのベースエミッタ間電圧の差ΔVbeの測定値を与え、
各トランジスタのベースは共通接続され、前記第1および前記第2のトランジスタのベースが同電位となり、
前記第1および前記第2のトランジスタの一方は、ダイオード接続構成で設けられ、
前記第1および前記第2のトランジスタの他方のベースコレクタ間電圧は、帰還ループの中でそれぞれの前記トランジスタのコレクタに接続された前記増幅器によって0に保たれ、これによってアーリー効果を低減させること、
を特徴とするバンドギャップ基準電圧回路。
【請求項2】
第3および第4のトランジスタをさらに含み、前記第3のトランジスタは前記第1のトランジスタのエミッタに接続され、前記第4のトランジスタは前記負荷抵抗を介して前記第2のトランジスタのエミッタに接続され、前記第4のトランジスタのエミッタ面積は前記第1または前記第3のトランジスタのエミッタ面積より大きく、前記第1および前記第3のトランジスタは前記第2および前記第4のトランジスタより高い電流密度で動作するようになり、前記帰還ループ中で抵抗を介して前記第2の入力端においてPTAT電圧が前記増幅器に供給され、前記増幅器の出力端において得られる電圧は前記第1および前記第3のトランジスタのベースエミッタ間電圧に前記PTAT電圧を加えた組合せとなることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記第3および前記第4のトランジスタのそれぞれがダイオード接続構成で設けられることを特徴とする請求項2に記載の回路。
【請求項4】
前記第3のトランジスタのエミッタは第2の抵抗を介して接地され、前記抵抗の値は固有バンドギャップ電圧の2倍の電圧から所望の電圧への基準電圧のシフトを生じさせ、これによって前記回路のオフセット調整が可能になることを特徴とする請求項2に記載の回路。
【請求項5】
前記増幅器の出力端と、前記第1および前記第2のトランジスタのそれぞれのコレクタとの間の、それぞれの帰還ループ経路中に設けられた第3および第4の抵抗をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の回路。
【請求項6】
前記それぞれの帰還ループ中に設けられた前記抵抗はほぼ同じ値であることを特徴とする請求項5に記載の回路。
【請求項7】
前記それぞれの帰還ループ中に設けられた前記抵抗は異なる値であることを特徴とする請求項5に記載の回路。
【請求項8】
非ダイオード接続トランジスタにベース電流を供給し、同じ電流を同じトランジスタのコレクタから抜き取り、それによって前記第1および第2のトランジスタのそれぞれのコレクタ電流を同じ値に保つように適合された回路をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の回路。
【請求項9】
前記非ダイオード接続トランジスタにベース電流を供給し、同じ電流を同じトランジスタのコレクタから抜き取り、前記回路は、前記非ダイオード接続トランジスタと他方のトランジスタとの間のベース電流の変動を補償し、それによってベース電流による回路中の誤差を低減させるように適合されていることを特徴とする請求項5に記載の回路。
【請求項10】
前記非ダイオード接続トランジスタは前記第1のトランジスタであり、前記第1のトランジスタのコレクタから電流を抜き取るように適合された回路は、前記第1および前記第3のトランジスタにより定義される回路の支脈(leg)の複製を含み、複製された前記支脈は回路の第5および第6のトランジスタを含み、前記第5のトランジスタのベースは前記第1のトランジスタのコレクタに接続され、前記第5のトランジスタのエミッタは前記第6のトランジスタのコレクタに接続され、前記第6のトランジスタのベースは前記第3のトランジスタのダイオード接続されたベースに接続され、これによってカレントミラーを形成し、前記第5のトランジスタによって前記第1のトランジスタのコレクタからベース電流が抜き取られることを特徴とする請求項8に記載の回路。
【請求項11】
第7および第8のトランジスタ並びにバイポーラミラーを介して、前記第1および前記第2のトランジスタのベース電流がさらにミラーリングされ、前記第6および前記第8のトランジスタのベース電流が前記増幅器の出力端から2倍カレントミラーによって供給され、前記第3、前記第6、および前記第8のトランジスタのそれぞれのコレクタ電流が同じになることを特徴とする請求項10に記載の回路。
【請求項12】
前記第5のトランジスタのコレクタは抵抗を介して前記増幅器の出力端に接続され、前記抵抗の値は前記第4の抵抗の値とほぼ等価であり、前記第5のトランジスタのベース電流が前記第1のトランジスタのベース電流に追従することを特徴とする請求項11に記載の回路。
【請求項13】
前記第5および前記第7のトランジスタに接続された一連のミラーによって、前記第1および前記第2のトランジスタのベース電流はさらにミラーリングされ、ミラーリングされた電流を前記第5および前記第7のトランジスタのエミッタから抜き取ることができ、それによって前記第5および前記第7のトランジスタのコレクタ電流がほぼ同じ値になることを確実にし、この電流が前記第7のトランジスタのコレクタと前記増幅器の出力端の間に接続されたカレントミラーを介してさらにミラーリングされ、それによってPTAT電流をもたらすことを特徴とする請求項11に記載の回路。
【請求項14】
前記第1および前記第3のトランジスタの電圧の湾曲を補償するように適合された補正電圧を供給するように適合された回路をさらに含み、前記補正電圧を組み込むことによって湾曲を打ち消させることを特徴とする請求項3に記載の回路。
【請求項15】
補正電圧を供給するように適合された前記回路は、前記負荷抵抗にPTAT電圧およびCTAT電圧を混合したものを供給するように適合されていることを特徴とする請求項14に記載の回路。
【請求項16】
前記補正電圧は、前記第4のトランジスタのベースエミッタ間電圧を抵抗の両端間にミラーリングし、MOSFETデバイスおよび増幅器を用いて絶対温度に対して相補的な(CTAT)電流を発生させることによって供給され、前記CTAT電流は少なくとも1つのカレントミラーを介して前記第4のトランジスタに戻され、それによって前記負荷抵抗の両端間に逆の湾曲を有する電圧を複製し、この複製された電圧と前から存在する電圧(ΔVbe)を組み合わせることによって湾曲を打ち消させることを特徴とする請求項14に記載の回路。
【請求項17】
前記カレントミラーおよび前記第4のトランジスタによって得られる電流の勾配を変えることにより、逆の湾曲を有する前記電圧の大きさを変更することができることを特徴とする請求項15に記載の回路。
【請求項18】
前記第3および前記第4のトランジスタに接続された複数の追加のトランジスタをさらに含み、前記複数の追加のトランジスタはスタック構成で備えられ、これによってより高い基準電圧を有する基準回路の使用が可能であること特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項19】
第1および第2の入力端を有しその出力端に基準電圧を与える第1の増幅器を含むバンドギャップ基準電圧回路であって、前記増幅器は前記第1の入力端において第1のトランジスタに接続され、前記第2の入力端において第2のトランジスタに接続され、帰還ループ中において前記増幅器は前記トランジスタのそれぞれのコレクタに接続され、前記第2のトランジスタは前記第1のトランジスタより大きなエミッタ面積を有し、それぞれがダイオード接続構成を備えた第3および第4のトランジスタをさらに含み、
前記第2のトランジスタはそのエミッタにおいて負荷抵抗に接続され、使用時に前記負荷抵抗は、バンドギャップ基準電圧を生成するのに用いるための前記第1および前記第2のトランジスタのベースエミッタ間電圧の差ΔVbeの測定値を与え、
各トランジスタのベースは共通接続され、前記第1および前記第2のトランジスタのベースは同電位となり、
前記第1および前記第2のトランジスタの一方は、ダイオード接続構成を備え、
前記第3のトランジスタは前記第1のトランジスタのエミッタに接続され、前記第4のトランジスタは前記負荷抵抗を介して前記第2のトランジスタに接続され、前記第4のトランジスタのエミッタ面積は前記第1または前記第3のトランジスタのエミッタ面積より大きく、前記第1および前記第3のトランジスタは前記第2および前記第4のトランジスタより高い電流密度で動作し、PTAT電圧が前記増幅器の帰還ループ中で抵抗を介して前記増幅器への前記第2の入力端において供給され、前記増幅器の前記出力端において得られる電圧は前記第1および前記第3のトランジスタのベースエミッタ間電圧に前記PTAT電圧を加えた組合せとなり、
前記第1および前記第2のトランジスタの他方のベースコレクタ間電圧は、帰還ループ中でそれぞれのトランジスタのコレクタに接続された前記増幅器によって最小にされ、これによってアーリー効果を低減させること、
を特徴とするバンドギャップ基準電圧回路。
【請求項20】
アーリー効果を補償するように適合されたバンドギャップ基準電圧回路を提供する方法であって、
第1および第2のトランジスタを設けるステップであって、各トランジスタは異なる電流密度で動作するように適合され、前記第1のトランジスタはダイオード接続構成で設けられ、前記トランジスタはさらに増幅器の入力端に接続されることと、
前記増幅器の出力端において基準電圧を得るために、異なる電流密度で動作する前記2つのトランジスタ間の電位差をスケーリングするステップと、
帰還ループを設けるステップであって、前記増幅器の前記出力端において基準電圧を得るために、前記帰還ループは前記第1および前記第2のトランジスタのそれぞれを前記増幅器の出力端に接続し、前記第1および前記第2のトランジスタのそれぞれのベースコレクタ間電圧が0になることと、
を備えることを特徴とする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2007−514225(P2007−514225A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543541(P2006−543541)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/053306
【国際公開番号】WO2005/057313
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(501144003)アナログ・デバイシズ・インコーポレーテッド (51)
【Fターム(参考)】