説明

放射線画像撮影システム

【課題】放射線の照射領域とFPDを移動させて複数の撮影領域での撮影を行う長尺撮影において、放射線画像データの読み取り動作を撮影領域の移動中に行わないように制御することにより良好な放射線画像データを得る。
【解決手段】長尺撮影の一連の撮影において、放射線画像生成装置は検出素子620からの電荷読み取り完了を示す読取完了信号を発信し、撮影制御部は読取完了信号を受信した後に第1移動手段による照射領域の移動、及び2移動手段による放射線画像生成装置の次の撮影領域への移動を行わせるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
デジタル方式の放射線画像生成装置を用いた長尺撮影を行う放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者に放射線を照射し、患者を透過した放射線を検出して放射線画像を得る方法としては、近年、デジタル方式の放射線画像生成装置が用いられている。このような放射線画像生成装置としては、いわゆるFPD(Flat Panel Detector)がある。
【0003】
FPDとは、基板上に複数の検出素子を2次元的に配列したものであり、患者を透過した放射線が蛍光体(シンチレータ)に照射され、照射された放射線量に応じて発光する可視光を検出素子により電荷に変換してコンデンサに蓄積し、コンデンサに蓄積した電荷を読み出すことにより放射線画像を得るものである。このようないわゆる間接型FPDに対し、被写体を透過した放射線が直接検出素子に照射され、照射された放射線量を電荷に変換する直接型FPDも知られている。
【0004】
また、FPDとしては近年、内部にバッテリを備えた可搬性のカセッテ型FPDが用いられるようになっており、カセッテ型FPDでは可搬性と、撮影した放射線画像データを即時確認するという点で有用な、放射線発生装置を制御する制御装置とカセッテ型FPDとを無線により通信する無線通信手段を備えた撮影システムが提案されている。その一方で無線通信手段を備えたFPDの新たな課題として、特許文献1においては、無線通信の通信動作にともなう、電源電圧、グランド電位変動の影響や、放射線ノイズの影響により、取得する放射線画像データに意図しない画像ノイズが発生することを課題としている。そしてこのような課題を解決するために、撮影部から電荷を読み出す際には、FPDの無線通信モジュールを停止させている。
【0005】
ところで、医用放射線画像において、主に骨の計測を目的とした下肢全長撮影や全脊椎撮影においては被写体全体(患部全体)を把握する目的のために長尺撮影が行われる。長尺撮影その撮影領域サイズよりも小さいサイズのFPDで行うためには、一つのFPDで撮影領域の一部を重複させた複数の撮影領域での撮影を行い、得られた一連の放射線画像データを合成して長尺の画像データを生成する方法がある(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−247102号公報
【特許文献2】米国特許第7177455号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2のような方法により長尺撮影を行うためには、被写体に対する放射線の照射領域とFPDを移動手段により移動させて撮影を行う必要がある。立位ブッキー装置にFPDを装填して撮影を行う場合、FPDはブッキー装置から電源供給を受けたり、ブッキー装置を介して有線で画像データ等の通信を行う場合がある。この場合に、一連の通電部は同一の電源系となり、通常、比較的重量の大きなパーツを移動させるこの移動手段の作動、停止にともない、特に起動時に電源電圧の変動が発生したり、放射ノイズを発したりするので、その影響により、画像データ読取時や通信時に、放射線画像データに意図しない画像ノイズが発生する虞があった。また、ブッキー装填時にも無線通信を行う場合は、当該放射ノイズの影響をうけ、やはり、放射線画像データに意図しない画像ノイズが発生する虞があった。
【0008】
本願発明はこのような問題に鑑み、放射線の照射領域とFPDを移動させて複数の撮影領域での撮影を行う長尺撮影において、放射線画像データの読み取り動作を撮影領域の移動中に行わないように制御することにより良好な放射線画像データを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、下記に記載する発明により達成される。
【0010】
1.放射線を照射し、被写体への照射領域を移動させる第1移動手段を有する放射線照射装置と、
前記放射線照射装置から照射され被写体を透過した放射線量に応じて電荷量に変換して蓄積する複数の検出素子を2次元矩形状に配置した撮像パネル、前記検出素子に蓄積された電荷の読み取りを行って放射線画像データを生成する放射線画像データ生成部、を備えた放射線画像生成装置と、
被写体を支持する支持部、前記放射線画像生成装置を保持する保持部、該放射線画像生成装置を該被写体の体軸方向に沿って移動させる第2移動手段、を備えた撮影台と、
前記第1移動手段により該被写体への照射領域を移動させるとともに、前記放射線画像生成装置を前記第2移動手段により移動させ、前記被写体に対し複数の撮影領域において一連の撮影を行わせる撮影制御部と、
前記一連の撮影で取得した複数の放射線画像データを合成して長尺画像データを生成する画像処理部と、を有し、
前記一連の撮影において、前記放射線画像生成装置は前記検出素子からの電荷読み取り完了を示す読取完了信号を発信し、前記撮影制御部は前記読取完了信号を受信した後に前記第1移動手段による次の照射領域への移動、及び前記第2移動手段による放射線画像生成装置の次の撮影領域への移動を行わせるように制御することを特徴とする放射線画像撮影システム。
【0011】
2.前記放射線画像生成装置、前記第1移動手段、及び前記第2移動手段は、同一の電源ラインから電源供給されることを特徴とする前記1に記載の放射線画像撮影システム。
【0012】
3.前記放射線画像生成装置は、次の撮影領域への移動中に前記検出素子のリセット動作を行うことを特徴とする前記1又は2に記載の放射線画像撮影システム。
【0013】
4.前記放射線画像生成装置は、前記一連の撮影における最後の撮影の後に、放射線を照射せずに撮影する暗画像撮影を行い、
前記画像処理部は、該暗画像撮影により得られた一又は複数の暗画像データに基づいてオフセット補正値を算出し、算出した該オフセット補正値により前記一連の撮影において取得した放射線画像データに対して補正処理を行うことを特徴とする前記1から3の何れかに記載の放射線画像撮影システム。
【発明の効果】
【0014】
本願発明によれば、放射線画像データの読み取り動作を撮影領域の移動中に行わないように制御することにより、移動手段の作動にともなう電源ラインの電圧変動による影響による画像ノイズを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】放射線画像撮影システムの概略構成を示す図である。
【図2】FPD6の斜視図である。
【図3】撮像パネル62及びその周辺の回路構成を示す模式図である。
【図4】放射線照射装置3と撮影台11を示す概略図である。
【図5】覆い板32の正面図である。
【図6】長尺画像データの生成過程を示す図である。
【図7】放射線画像撮影システムが実行する長尺撮影における制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。
【0017】
図1は、放射線画像撮影システムの概略構成を示す図である。同図に示すように放射線画像撮影システムは、放射線照射装置3、制御BOX4、アクセスポイント5、放射線画像生成装置6、コンソール7、撮影台11等からなる。放射線画像読取装置2、放射線照射装置3、撮影台11、は撮影室100の内部に設けられている。
【0018】
放射線画像生成装置6(以下、単にFPD6という)は基板上に2次元矩形状に配置された検出素子を内蔵する。放射線照射装置3から照射され患者P(被写体)を透過した放射線量に基づいて放射線画像データを直接取得することができる。撮影時には、撮影台11の装着口11aに装着して使用する。FPD6は可搬型であり、バッテリを内蔵し、無線通信を行うことが可能である。アクセスポイント5を経由して無線LAN(Local Area Network)によりネットワークNに接続する各端末と通信する。詳細については後述する。
【0019】
なお、FPD6を撮影台11の装着口11aに装着した場合には、当該装着台11を介して、コンソール7と有線接続されるように構成しても良い。
【0020】
ネットワークNには、コンソール7が接続されている。ネットワークNは当該システム専用の通信回線であってもよいが、システム構成の自由度が低くなってしまう等の理由のため、イーサネット(登録商標)等の既存の回線である方が好ましい。
【0021】
コンソール7、放射線照射装置3、及び制御BOX4とは、ネットワークN2を通じて接続されて構成されている。本実施形態においては、ネットワークN2は当該システム専用の通信回線であり、コンソール7を介して、またはコンソール7がプロトコル変換することにより間接、直接的にネットワークNの装置と通信することができる。本実施形態の構成とすることにより、CRカセッテを用いたネットワークN1を用いる既存のシステムに対して、ネットワークN2の通信回線を追加することにより、可搬型のFPDを混在して用いるシステムとすることができる。
【0022】
コンソール7では、患者や撮影患部等の情報からなる撮影オーダの入力を行ったり、FPD6で取得した放射線画像データに対して画像処理部により画像処理を行ったりする。また画像処理部では、長尺撮影(後述)を行う場合には、一連の複数枚の放射線画像データを合成して、1枚の長尺画像データを生成する。
【0023】
また、当該システムにおいては図示を照射しているが、患者診断情報や会計情報を一元管理するHIS(Hospital Information System)や放射線診療の情報を管理するRIS(Radiology Information System)とネットワークNを介して接続されている。
【0024】
放射線照射装置3は、放射線を照射する照射部31、照射領域を制限する覆い板32、操作部34、曝射ボタン35等から構成される。なお、図1では図示省略しているが、撮影室100は撮影を行う放射線が照射される本室と、照射による被爆を避けることができる前室とで構成されており、操作部34、曝射ボタン35は前室に配置されている。操作部34ではX線の照射範囲、照射するX線量等の設定を行う。曝射ボタン35を操作者が押し下げることにより、撮影台11上の患者Pに対してX線の照射が開始される。このとき曝射ボタン35を押し下げたことにより発生した信号により照射部31の回転陽極の回転が始まり、所定の回転数に到達し定常回転となった後に、フィラメントに高電圧を印加してX線の照射を開始する。なお曝射ボタン35を2段回押しできるようにして1回目の第1ストロークまでの押し下げ(半押し)では回転陽極の回転を開始し、続く2回目の第2ストローク(全押し)によりフィラメントに高電圧を印加してX線の照射を開始するようにしてもよい。
【0025】
[FPD6]
図2は、FPD6の斜視図である。図3は、撮像パネル62及びその周辺の回路構成を示す模式図である。図2、図3に示すようにFPD6は、CPU、ROM、RAM等から構成される制御部64、取得した各種の画像データを記憶する記憶部60、撮像パネル62、電源部67、縮小画像生成部68、無線通信部69等を備えている。
【0026】
無線通信部69は、IEEE802.11規格に準拠した無線LANにより、アクセスポイント5を介して、コンソール7、あるいは制御BOX4との間で各種情報の無線通信を行うものである。
【0027】
電源部67は、FPD6を構成する複数の駆動部(制御部64、撮像パネル62、記憶部60など)に電力を供給する。この電源部67は、例えば予備電池と充電自在な充電池とで構成されており、コネクタ605を図示しないクレードルに接続することにより、充電池を充電することが可能である。なお前述の撮影台11の装着口11aにFPD6を装着することにより、コネクタ605は装着口11aの内部に設けられたコネクタと接続され、商用電源PSから電源供給がなされる。なお、装着口11aにネットワークNと接続する通信コネクタを設け、FPD6を装着口11aに装着することにより、ネットワークNと有線通信するような構成にしてもよい。
【0028】
縮小画像生成部68では、記憶部60に記憶されている撮像パネル62の全域に対応する放射線画像データから、所定の間引き率で間引き処理を行う。
【0029】
FPD6は、内部を保護する筐体601を備えており、カセッテとして可搬可能に構成されている。筐体601の内部には、照射された放射線を電気信号に変換する撮像パネル62が層を成して形成されている。この撮像パネル62における放射線の照射面側には、入射された放射線の強度に応じて発光を行う発光層63が設けられている。
【0030】
発光層63は、一般にシンチレータ層と呼ばれるものであり、例えば、蛍光体を主たる成分とし、入射した放射線に基づいて、波長が300nmから800nmの電磁波、すなわち、可視光線を中心に紫外光から赤外光にわたる電磁波(光)を出力する。
【0031】
この発光層の放射線が照射される側の面と反対側の面には、発光層から出力された電磁波(光)を電気エネルギーに変換して蓄積し、蓄積された電気エネルギーに基づく画像信号の出力を行う光電変換部がマトリクス状に配列された撮像パネル62が形成されている。なお、1つの光電変換部から出力される信号が、放射線画像データを構成する最小単位となる1画素に相当する信号となる。また撮像パネル62は、蓄積された電気エネルギーを読み出す走査駆動回路609と、蓄積された電気エネルギーを画像信号として出力する信号選択回路608とを有する。
【0032】
ここで、図3に基づいて撮像パネル62の回路構成について説明する。同図に示すとおり撮像パネル62は光を電気信号に変換する複数の検出素子620が2次元配置されており、1つの検出素子(フォトダーオード)620は放射線画像の1画素に対応する。これらの画素は例えば200〜400dpi(dots per inch)の密度で、患者の撮影領域の大きさにわたって配置されている。
【0033】
また、検出素子620間には走査線(横ライン)623と信号線(縦ライン)624とが配設されており、同図では両者が直交するように格子状に配設されている。ここで、走査線623と信号線624とで囲まれた1つの区画を1画素とすると、撮像パネル62の画素数は、例えば、一方向にm個、もう一方向にn個配置してなる場合にはm×n個の画素数より構成されている。そして、撮像パネル62には、m×n個の画素数分に対応するフォトダイオード621−(1,1)〜621−(m,n)とスイッチング素子であるトランジスタ622−(1,1)〜622−(m,n)が配置され、画素間には、走査線623−1〜623−m及び信号線624−1〜624−nが直交するように配設されることになる。
【0034】
例えば、1つ目の受光素子内では、フォトダイオード621−(1,1)にシリコン積層構造あるいは有機半導体で構成されたスイッチング素子であるトランジスタ622−(1,1)が接続する。トランジスタ622−(1,1)は、例えば、電界効果トランジスタが使用される。トランジスタ622−(1,1)のドレイン電極あるいはソース電極が検出素子620−(1,1)に接続されるとともに、ゲート電極は走査線623−1と接続される。ドレイン電極が検出素子620−(1,1)と接続する時はソース電極が信号線624−1と接続し、ソース電極が検出素子620−(1,1)に接続する時はドレイン電極が信号線624−1と接続する。また、他の画素における検出素子620、フォトダイオード621及びトランジスタ622も同様に走査線623や信号線624と接続する。
【0035】
また、撮像パネル62は、図3に示す様に信号線624−1〜624−nにドレイン電極を接続した初期化トランジスタ632−1〜632−nを設けるものもあり、この初期化トランジスタ632−1〜632−nではソース電極を接地し、ゲート電極をリセット線631に接続する。
【0036】
撮像パネル62では、これらの回路を介して放射線画像をデジタルの画像信号に変換する。すなわち、「放射線画像データ生成部」としても機能する制御部64が、制御部64が、走査線623−1〜623−m各々に、走査駆動回路609を介して読取信号RSを供給して画像走査を行い、走査線毎のデジタル画像信号を取り込み、放射線画像をデジタルの画像信号に変換する。このことについて、以下詳述する。
【0037】
撮像パネル62の走査線623−1〜623−mとリセット線631は、図3に示す様に走査駆動回路609と接続する。走査駆動回路609から走査線623−1〜623−mのうち、任意の走査線623−p(pは1〜mのいずれかの値)に読取信号RSが供給されると、この走査線623−pに接続したトランジスタ622−(p,1)〜622−(p,n)がオンの状態になり、フォトダイオード621−(p,1)〜621−(p,n)に蓄積した電荷を信号線624−1〜624−n上に出力する。
【0038】
信号線624−1〜624−nは、信号選択回路608の信号変換器671−1〜671−nに接続し、信号変換器671−1〜671−nでは信号線624−1〜624−n上に出力された電荷量に応じた電圧信号SV−1〜SV−nを出力し、信号変換器671−1〜671−nで出力した電圧信号SV−1〜SV−nをレジスタ672に供給する。
【0039】
レジスタ672は、信号変換器671より供給された電圧信号を順次選択し、選択された電圧信号は、アナログ/デジタル(A/D)変換器673により、12ビット乃至14ビットの1つのデジタル画像信号に変換され、このデジタル画像信号は制御部64に供給されて、位置情報と画像信号情報に基づいて放射線画像データを生成する。撮像パネル62の検出素子620の電荷の読み取り終了(放射線画像データ生成終了)。
【0040】
[検出素子620のリセット動作]
放射線の照射がされていない場合にも、コンデンサに微量の電荷が蓄積する、いわゆる暗電流がある。この暗電流によりコンデンサに蓄積された電荷は、放射線画像を得る上ではノイズとなり画像に悪影響を及ぼす。この暗電流の影響を極力少なくするためには、撮影の直前に、暗電流に起因する電荷を消去するリセット動作を実行している。撮像パネル62の検出素子620のリセット動作を行う場合は、最初に、走査駆動回路609からリセット信号RTがリセット線631に供給されて初期化トランジスタ632−1〜632−nをオンの状態にした後、走査線623−1〜623−mに読取信号RSを供給してトランジスタ622−(1,1)〜622−(m,n)をオンの状態にする。そして、フォトダイオード621−(1,1)〜621−(m,n)に蓄えられていた電荷を初期化トランジスタ632−1〜632−nを介して放出することにより各検出素子620のリセット動作を行う。当該リセット動作は、撮影に先だって定期的に行うことが好ましい。
【0041】
[放射線照射装置3、撮影台11]
図4は、放射線照射装置3と撮影台11を示す概略図である。図5は、覆い板32を図4に示すX方向からみた正面図である。放射線照射装置3は、X線を発生する照射部31、X線の照射領域を制限する覆い板32、覆い板32を支持するガイド軸33、覆い板32を移動させる駆動モータM1から構成される。覆い板32は台座3dに設けられたガイド軸33に沿って上下移動する。
【0042】
覆い板32には開口wが設けられており、開口wを抜けた照射部31からのX線は患者Pを照射する。開口wの位置を上下(図示Z方向)に移動させることによりX線の照射領域を移動させることができる。
【0043】
撮影台11は、FPD6を装着する装着口11aと、装着口11aが設けられている可動部111、可動部111を支持するガイド軸112、被写体である患者Pを支持する支持部113、可動部111を移動させる駆動モータM2から構成される。装着口11aにはFPD6が装着されている。
【0044】
ガイド軸112は、支持部113に支持される患者Pの体軸方向(図示Z方向)に沿って伸びている。駆動モータM2を作動させることにより可動部111に装着されているFPD6はガイド軸に沿ってZ方向に上下移動される。
【0045】
駆動モータM1、覆い板32は被写体への照射領域を移動させる第1移動手段として機能し、駆動モータM2は保持部として機能する可動部111に保持されたFPD6を該被写体の体軸方向に沿って移動させる第2移動手段として機能する。また第1移動手段による照射領域への移動に対応するように、FPD6は第2移動手段により移動する。
【0046】
また外部の商用電源PSからの共通の電源ラインにより装着口11aに装填されているFPD6、駆動モータM1、駆動モータM2への電源供給が行われる。
【0047】
なお、図4等に示す例では、照射部の照射角度が被写体を十分カバーしうる画角を有しているものとして、覆い板32のみをZ方向に移動させることにより照射領域を移動させる例を示したが、画角が小さい場合には、照射部のZ方向位置は固定したまま照射角度を可変(首振りを行う)するとともに覆い板32をZ方向に移動させ照射領域を移動させる形態でもよく、あるいは照射部を覆い板とともにZ方向に移動させることにより照射領域を移動させるような構成としてもよい(例えば米国特許第7177455号明細書)。
【0048】
なお、照射部の首振り角度やZ方向移動量、覆い板32のZ方向移動量は、照射部〜覆い板〜FPD間の距離、FPDの撮影可能領域サイズ、重複領域寸法等に応じて、コンソール7により自動的に算出される。
【0049】
[長尺撮影]
図6は、長尺画像データの生成過程を示す図である。図6(a)は、一連の撮影により得られた3枚の放射線画像データを示しており、図6(b)は、図6(a)の画像を合成して1枚の長尺画像データを生成した例である。ここで長尺撮影とは、FPDにおいては、一度の撮影で撮影可能な撮影領域サイズよりも広い撮影領域の撮影を行うものであり、一の患者に対して撮影領域を少しずつ移動させて連続した撮影(一連の撮影という)を行い、得られた複数の放射線画像データを合成して、一の画像データ(長尺画像データ)を生成するものである。
【0050】
図6のG1は、大腿部を撮影領域としたものであり、第1移動手段により照射領域を領域301(図4参照)に移動させ、その領域に対応する位置に第2移動手段によりFPD6を移動させて撮影を行ったものである。G2、G3は、領域302、303に対応するものである。G1、G2、G3は一の患者に対して一連の連続した撮影により得られた放射線画像データであり。その撮影領域の一部は重複している。
【0051】
図6(a)で得られた放射線画像データは、無線通信部69によりコンソール7に送信される。コンソール7の画像処理部では、重複領域において濃度(放射線照射量)の違いによる画像信号値のプロファイル値またはプロファイル値の微分値に基づき、放射線照射部分または患部の辺縁のエッジを検出する。重複領域において検出したエッジ部のマッチングにより、隣接する放射線画像データ間の位置合わせを行って合成を行う。
【0052】
[制御フロー]
図7は、放射線画像撮影システムが実行する長尺撮影における制御フロー図である。同図の制御フローは撮影制御部とFPD6が実行するフローである。同図に示す例では、制御BOX4が放射線照射装置3、撮影台11とこれらの移動手段を制御する撮影制御部として機能する。
【0053】
撮影開始に先だって操作者は長尺撮影を行う撮影オーダを選択する。被写体に対する最初の撮影位置に撮影系をセットすると、撮影オーダに含まれる撮影部位の情報に基づいて、標準の放射線照射量、撮影領域(長さ)が自動的に選択され、以後の撮影位置を自動設定する。必要に応じて操作者は微調整を行う。
【0054】
曝射ボタン35(図1参照)を操作者が第一ストロークまで操作することによりステップS11では、撮影制御部はFPD6に一連の撮影における1枚目の撮影開始通知を発信する。撮影制御部は所定のタイミングを図り放射線照射装置3から放射線の照射を開始させる(ステップS12)。
【0055】
FPD6は、ステップS11の通知に基づいて、リセット動作を所定間隔で定期的行っていたので有れば、以降はリセット動作を中止して、電荷蓄積へ遷移し、操作者の第二ストロークまでの操作でX線照射が開始されると、電荷蓄積を開始する(ステップS21)。
【0056】
FPD6では放射線照射が終了した後に、検出素子620に蓄積した電荷の読み取りを開始する(ステップS22)。放射線照射の終了は、撮影開始通知からの所定時間経過により判断してもよく、FPD6に照射検知部が設けられている構成であれば、その照射検知部により自ら放射線照射の終了を検知するようにしてもよい。なお電荷の読み取り中は、第1移動手段、第2移動手段は作動させていない。
【0057】
FPD6では、電荷の読み取り終了後に読取完了信号を発信する(ステップS23)。また生成した放射線画像データは、記憶部60に記憶する。
【0058】
撮影制御部では、FPD6から発信された読取完了信号の受信を待ってから(ステップS13)、撮影領域の移動を行う(ステップS14)。撮影領域の移動は、第1移動手段、第2移動手段により行う。このときに駆動モータM1、M2の作動にともなう突入電流が流れ、それによる電源ラインの電圧変動が生じたとしても、FPD6による電荷読取は完了しているので、電源ラインの電圧変動が生じたとしても放射線画像データに対する影響はない。
【0059】
また、FPD6では、ステップS14の撮影領域の移動中に、各検出素子620のリセット動作を実行する。移動中のリセット動作は所定間隔で複数回実行するようにしてもよい(ステップS24)。
【0060】
一連の撮影において次の撮影領域へ移動が終了した後に、撮影制御部は一連の撮影における2枚目(あるいは3枚目以降)の撮影開始通知を発信する(ステップS15)。
【0061】
FPD6はステップS15の通知に基づいてステップS21以降の撮影(通常撮影)を再び実行する(ステップS25:撮影(通常))、この状態において、撮影制御部は放射線照射装置3から放射線の照射を開始させる(ステップS16)。
【0062】
一連の撮影が終了していないのであれば(ステップS17:No)、ステップS13以降の処理を繰り返す。一方で一連の撮影における最後の撮影が終了したのであれば(ステップS17:Yes)続く、ステップS18で暗画像の撮影開始通知を送信する。
【0063】
ここで暗画像とは、暗電流の影響を除去する目的で放射線を照射していない状態で各検出素子620を所定時間駆動し、蓄積した電荷により画像データを生成することであり、当該処理により得られた画像データを暗画像データという。なお暗画像データの撮影は、1回でもよく複数回撮影して、その平均値を用いて後述の補正処理するようにしてもよい。
【0064】
FPD6では、暗画像の撮影開始通知であれば(ステップ25:暗画像撮影)続く、ステップS31で暗画像データを取得し、ステップS32で、記憶部60に記憶している一連の複数枚の放射線画像データと暗画像データをコンソール7に無線通信、または撮影台を介した有線によりデータ送信する。コンソール7の画像処理部では受信した各放射線画像データに対してステップS31で取得した暗画像データを用いてオフセット補正等の画像処理を行い、画像処理後の画像を合成して長尺画像データを生成する。
【0065】
本実施形態によれば、放射線画像データの読み取り動作を撮影領域の移動中に行わないように制御することにより、移動手段の作動にともなう電源ラインの電圧変動による影響による画像ノイズを防止することが可能となる。また、移動手段による可動部111と覆い板32を移動させている最中にリセット動作を行わせること、及び暗画像撮影を一連の撮影が終了した後に行うことにより、効率良く長尺撮影を行うことができる。
【0066】
なお、各撮影の間に画像データを送信する場合には、移動開始時(駆動モータ起動時)は避けるとともに、できるだけ短時間で送信を終えて次の撮影に備える為、間引き画像のみを送信することとし、全データは最後の撮影終了後に送信することが好ましい。
【0067】
この間引き送信により、次の撮影のために操作者が前室へ移動して曝射ボタンを押す際に、前回の撮影に関するプレビュー画像をコンソールで同時に確認できるので、ポジショニング等を視認でき、再撮影要否も判断可能となり、好ましい。
【符号の説明】
【0068】
3 放射線照射装置
31 照射部
32 覆い板
33 ガイド軸
5 アクセスポイント
6 FPD
7 コンソール
M1、M2 駆動モータ
11 撮影台
11a 装着口
111 可動部
112 ガイド軸
113 支持部
PS 商用電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を照射し、被写体への照射領域を移動させる第1移動手段を有する放射線照射装置と、
前記放射線照射装置から照射され被写体を透過した放射線量に応じて電荷量に変換して蓄積する複数の検出素子を2次元矩形状に配置した撮像パネル、前記検出素子に蓄積された電荷の読み取りを行って放射線画像データを生成する放射線画像データ生成部、を備えた放射線画像生成装置と、
被写体を支持する支持部、前記放射線画像生成装置を保持する保持部、該放射線画像生成装置を該被写体の体軸方向に沿って移動させる第2移動手段、を備えた撮影台と、
前記第1移動手段により該被写体への照射領域を移動させるとともに、前記放射線画像生成装置を前記第2移動手段により移動させ、前記被写体に対し複数の撮影領域において一連の撮影を行わせる撮影制御部と、
前記一連の撮影で取得した複数の放射線画像データを合成して長尺画像データを生成する画像処理部と、を有し、
前記一連の撮影において、前記放射線画像生成装置は前記検出素子からの電荷読み取り完了を示す読取完了信号を発信し、前記撮影制御部は前記読取完了信号を受信した後に前記第1移動手段による次の照射領域への移動、及び前記第2移動手段による放射線画像生成装置の次の撮影領域への移動を行わせるように制御することを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項2】
前記放射線画像生成装置、前記第1移動手段、及び前記第2移動手段は、同一の電源ラインから電源供給されることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項3】
前記放射線画像生成装置は、次の撮影領域への移動中に前記検出素子のリセット動作を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項4】
前記放射線画像生成装置は、前記一連の撮影における最後の撮影の後に、放射線を照射せずに撮影する暗画像撮影を行い、
前記画像処理部は、該暗画像撮影により得られた一又は複数の暗画像データに基づいてオフセット補正値を算出し、算出した該オフセット補正値により前記一連の撮影において取得した放射線画像データに対して補正処理を行うことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の放射線画像撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−4857(P2011−4857A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149748(P2009−149748)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】