説明

放射線画像検出装置

【課題】放射線画像の信号からノイズ成分を確実に除去する。
【解決手段】FPD36には、画素37の複数列のグループ62毎に、画素37で蓄積された信号電荷を電気信号に変換して出力する信号処理回路40とノイズ検出素子63が配されている。ノイズ検出素子63は、画素37と同様の構成であるが電荷蓄積機能を有さず、その出力電圧信号Dnzはノイズ成分を表す。減算器64は、信号処理回路40から出力された画素37の電圧信号Diからノイズ検出素子63の電圧信号Dnzを減算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を受けて放射線画像を検出する放射線画像検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線撮影システム、例えばX線撮影システムは、X線を発生するX線発生装置と、X線を受けてX線画像を撮影するX線撮影装置とからなる。X線発生装置は、X線を被検体に向けて照射するX線源、X線源の駆動を制御する線源制御装置、およびX線の照射開始指示を入力するための照射スイッチを有している。X線撮影装置は、被検体を透過したX線を受けてX線画像を検出するX線画像検出装置、およびX線画像検出装置の駆動を制御する撮影制御装置を有している。
【0003】
X線画像検出装置には、X線フイルムやイメージングプレート(IP)に代わり、フラットパネルディテクタ(FPD;flat panel detector)を検出器として用いたものが最近普及している。FPDには、X線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する画素がマトリックス状に配列されている。FPDは、画素毎に信号電荷を蓄積し、蓄積した信号電荷を信号処理回路で電圧信号に変換することで、被検体の画像情報を表すX線画像を検出し、これをデジタルな画像データとして出力する。
【0004】
FPDを直方体形状の筐体に内蔵した可搬型のX線画像検出装置(以下、電子カセッテという)も実用化されている。電子カセッテは、フイルムカセッテやIPカセッテ用の撮影台に取り付けて使用される他、据え置き型では撮影困難な部位を撮影するために被検体自身に持たせて使用される。また、自宅療養中の高齢者や、事故、災害等による急病人を撮影するため、撮影台の設備がない病院外に持ち出して使用されることもある。
【0005】
一般に電気部品の出力は、部品自体の内的要因、または周囲環境等の外的要因によるノイズの影響を受ける。多くの電気部品が搭載されたX線画像検出装置も例外ではなく、被検体や放射線技師が意図せずぶつかる等して衝撃が与えられると、その衝撃による振動でノイズが発生する。このノイズが画像データの信号に乗るとX線画像上で偽像となるため、診断ミスを誘発し兼ねない。
【0006】
そこで、従来ノイズによるX線画像の画質劣化を防ぐ様々な方法が提案されている(特許文献1、2参照)。特許文献1は、FPDに設けられたTFTの走査線の電位ゆらぎによるノイズを除去するため、X線に基づく信号電荷を蓄積する機能を有しないダミー画素を設け、有効画素の出力信号からダミー画素の出力信号を差し引いている。特許文献2は、FPD全体に印加されるバイアス電圧のゆらぎによるノイズを除去するため、FPDとバイアス電源の間にフィルタ回路およびバッファ回路を接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−081443号公報
【特許文献2】特開2009−128186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
画素で蓄積した信号電荷を電圧信号に変換する信号処理回路には、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)といった専用の集積回路が用いられる。ASICは画素の複数列(例えば256列)のグループ毎に設けられている。ASICには個体差があり、各ASICが担うグループ単位でノイズの乗り方も変わる。また、ASIC自身がノイズの発生源でもある。
【0009】
各ASICが担うグループ単位でノイズの乗り方が変わることから、特許文献1のように有効画素の出力信号からダミー画素の出力信号を一律に差し引くだけでは、ノイズ成分の除去が不十分であったり、ノイズ成分でない本来の画像成分まで除去してしまうことになる。特許文献2の方法では、バイアス電圧のゆらぎによるノイズ成分の除去はできるが、ASIC自身の発するノイズ成分の除去はできない。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、放射線画像の信号からノイズ成分を確実に除去することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の放射線画像検出装置は、放射線源から照射された放射線を受けて信号電荷を蓄積する複数の配列画素と、前記画素の複数列のグループ毎に設けられ、前記画素で蓄積された信号電荷を電気信号に変換して出力する信号処理回路と、前記信号処理回路と同じくグループ毎に設けられ、前記画素と同様の構成であるが電荷蓄積機能を有さないノイズ検出素子と、同じグループの前記画素と前記ノイズ検出素子の電気信号の差分をとる減算器とを備えることを特徴とする。
【0012】
前記ノイズ検出素子は、ある列の前記画素の電荷蓄積機能を無効化したものである。
【0013】
前記減算器はアナログの電気信号同士を減算する。デジタル化された電気信号同士を減算してもよい。
【0014】
前記信号処理回路は、電荷を一定期間積分する積分アンプ、前記積分アンプから出力された電気信号を増幅する増幅器、電気信号のレベルを保持するサンプルホールド部、および前記サンプルホールド部に保持された電気信号を順次選択してA/D変換器に出力するマルチプレクサを有する。
【0015】
前記信号処理回路はASICからなることが好ましい。
【0016】
可搬型の筐体に収容された電子カセッテであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、画素の複数列のグループ毎にノイズ検出素子を設け、同じグループの画素とノイズ検出素子の電気信号の差分をとるので、各グループに適したノイズ成分の除去を行うことができる。従って、放射線画像の信号からノイズ成分を確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】X線撮影システムの構成を示す概略図である。
【図2】FPDの電気的な構成を示す図である。
【図3】FPDと信号処理回路の具体的構成を示す図である。
【図4】FPDと信号処理回路の具体的構成の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1において、X線撮影システム10は、X線発生装置11と、X線撮影装置12とからなる。X線発生装置11は、X線源13と、X線源13の駆動を制御する線源制御装置14と、照射スイッチ15とで構成される。X線源13は、X線を放射するX線管13aと、X線管13aが放射するX線の照射野を限定する照射野限定器(コリメータ)13bとを有する。
【0020】
X線管13aは、熱電子を放出するフィラメントからなる陰極と、陰極から放出された熱電子が衝突してX線を放射する陽極(ターゲット)とからなる。ターゲットは円板形状をしており、回転により円周軌道上で焦点が移動して、熱電子が衝突する焦点の発熱が分散する回転陽極である。照射野限定器13bは、X線を遮蔽する複数枚の鉛板を井桁状に配置し、X線を透過させる照射開口が中央に形成されたものであり、鉛板の位置を移動することで照射開口の大きさを変化させて、照射野を限定する。
【0021】
線源制御装置14は、X線源13に対して高電圧を供給する高電圧発生器と、X線源13が照射するX線のエネルギースペクトルを決める管電圧、単位時間当たりの照射量を決める管電流、およびX線の照射時間を制御する制御部とからなる。高電圧発生器は、トランスによって入力電圧を昇圧して高圧の管電圧を発生し、高電圧ケーブル16を通じてX線源13に駆動電力を供給する。本例のX線発生装置11は、X線撮影装置12との通信機能を持たないものであり、管電圧、管電流、照射時間といった撮影条件は、線源制御装置14の操作パネルを通じて放射線技師により手動で設定される。
【0022】
照射スイッチ15は、放射線技師によって操作され、線源制御装置14に信号ケーブル17で接続されている。照射スイッチ15は二段階押しのスイッチであり、一段階押しでX線源13のウォームアップを開始させるためのウォームアップ開始信号を発生し、二段階押しでX線源13に照射を開始させるための照射開始信号を発生する。これらの信号は信号ケーブル17を通じて線源制御装置14に入力される。
【0023】
線源制御装置14は、照射スイッチ15からの制御信号に基づいて、X線源13の動作を制御する。ウォームアップ開始信号を受けた場合、線源制御装置14は、ヒータを作動させてフィラメントの予熱を行わせる他、ターゲットの回転を開始させて目標の回転速度に到達させる。ウォームアップに必要な時間は、約200msec〜1500msec程度である。放射線技師は、照射スイッチ15の一段階押しでウォームアップの開始指示を入力した後、ウォームアップに必要な間をおいて二段階押しして照射開始指示を入力する。
【0024】
照射開始信号を受けた場合、線源制御装置14は、X線源13への電力供給を開始するとともに、タイマを作動させてX線の照射時間の計測を開始する。そして、撮影条件で設定された照射時間が経過すると、X線の照射を停止させる。X線の照射時間は、撮影条件に応じて変化するが、静止画撮影の場合には、X線の最大照射時間が約500msec〜約2s程度の範囲に定められている場合が多く、照射時間はこの最大照射時間を上限として設定される。
【0025】
X線撮影装置12は、電子カセッテ21、撮影台22、撮影制御装置23、およびコンソール24から構成される。電子カセッテ21は、照射検出センサ25と、FPD36(図2参照)と、照射検出センサ25およびFPD36を収容する可搬型の筐体とからなり、X線源13から照射されて被検体Hを透過したX線を受けてX線画像を出力する。電子カセッテ21は、略矩形状で偏平な形状を有し、平面サイズはフイルムカセッテやIPカセッテと略同様の大きさである。
【0026】
撮影台22は、電子カセッテ21が着脱自在に取り付け可能なスロットを有し、X線が入射する入射面をX線源13と対向する姿勢で電子カセッテ21を保持する。電子カセッテ21は、筐体のサイズがフイルムカセッテやIPカセッテと略同様の大きさであるため、フイルムカセッテやIPカセッテ用の撮影台にも取り付け可能である。なお、撮影台22として、被検体Hを立位姿勢で撮影する立位撮影台を例示しているが、被検体Hを臥位姿勢で撮影する臥位撮影台でもよい。
【0027】
図2において、FPD36は、TFTアクティブマトリクス基板を有し、この基板上にX線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素37を配列してなる撮像領域38と、画素37を駆動して信号電荷の読み出しを制御するゲートドライバ39と、画素37から読み出された信号電荷をデジタルデータに変換して出力する信号処理回路40と、ゲートドライバ39と信号処理回路40を制御して、FPD36の動作を制御する制御回路41とを備えている。複数の画素37は、所定のピッチで二次元にn行(x方向)×m列(y方向)のマトリクス状に配列されている。
【0028】
FPD36は、X線を可視光に変換するシンチレータ(蛍光体)を有し、シンチレータによって変換された可視光を画素37で光電変換する間接変換型である。シンチレータは、画素37が配列された撮像領域38の全面と対向するように配置されている。なお、X線を直接電荷に変換する変換層(アモルファスセレン等)を用いた直接変換型のFPDを用いてもよい。
【0029】
画素37は、可視光の入射によって電荷(電子−正孔対)を発生する光電変換素子であるフォトダイオード42、フォトダイオード42が発生した電荷を蓄積するキャパシタ(図示せず)、およびスイッチング素子として薄膜トランジスタ(TFT)43を備える。
【0030】
フォトダイオード42は、電荷を発生する半導体層(例えばPIN型)とその上下に上部電極および下部電極を配した構造を有している。フォトダイオード42は、下部電極にTFT43が接続され、上部電極にはバイアス線44が接続されており、バイアス線44を通じてバイアス電圧Vbが印加される。バイアス電圧Vbの印加により半導体層内に電界が生じ、光電変換により半導体層内で発生した電荷(電子−正孔対)は、一方がプラス、他方がマイナスの極性を持つ上部電極と下部電極に移動し、キャパシタに電荷が蓄積される。
【0031】
TFT43は、ゲート電極が走査線45に、ソース電極が信号線46に、ドレイン電極がフォトダイオード42にそれぞれ接続される。走査線45と信号線46は格子状に配線されており、走査線45は撮像領域38内の画素37の行数分(n行分)、信号線46は画素37の列数分(m列分)それぞれ設けられている。走査線45はゲートドライバ39に接続され、信号線46は信号処理回路40に接続される。
【0032】
ゲートドライバ39は、TFT43を駆動することにより、X線の入射量に応じた信号電荷を画素37に蓄積する蓄積動作と、画素37から信号電荷を読み出す読み出し(本読み)動作と、リセット(空読み)動作とを行わせる。制御回路41は、通信部53を通じて入力される撮影制御装置23からの制御信号に基づいて、ゲートドライバ39によって実行される上記各動作の開始タイミングを制御する。
【0033】
蓄積動作ではTFT43がオフ状態にされ、その間に画素37に信号電荷が蓄積される。読み出し動作では、ゲートドライバ39から同じ行のTFT43を一斉に駆動するゲートパルスG1〜Gnを順次発生して、走査線45を一行ずつ順に活性化し、走査線45に接続されたTFT43を一行分ずつオン状態とする。画素37のキャパシタに蓄積された電荷は、TFT43がオン状態になると信号線46に読み出されて、信号処理回路40に入力される。
【0034】
フォトダイオード42の半導体層には、X線の入射の有無に関わらず暗電荷が発生する。この暗電荷はバイアス電圧Vbが印加されているためにキャパシタに蓄積される。画素37において発生する暗電荷は、画像データに対してはノイズ成分となるので、これを除去するためにリセット動作が行われる。リセット動作は、画素37において発生する暗電荷を、信号線46を通じて掃き出す動作である。
【0035】
リセット動作は、例えば、一行ずつ画素37をリセットする順次リセット方式で行われる。順次リセット方式では、信号電荷の読み出し動作と同様、ゲートドライバ39から走査線45に対してゲートパルスG1〜Gnを順次発生して、画素37のTFT43を一行ずつオン状態にする。TFT43がオン状態になっている間、画素37から暗電荷が信号線46を通じて積分アンプ47に流れる。リセット動作では、読み出し動作と異なり、マルチプレクサ(MUX)48による積分アンプ47に蓄積された電荷の読み出しは行われず、各ゲートパルスG1〜Gnの発生と同期して、制御回路41からリセットパルスRSTが出力され、積分アンプ47がリセットされる。電荷の読み出しが行われない分、リセット動作に掛かる時間は読み出し動作に掛かる時間よりも短くなる。
【0036】
信号処理回路40は、積分アンプ47、MUX48、およびA/D変換器49等を備える。積分アンプ47は、各信号線46に対して個別に接続される。積分アンプ47は、オペアンプとオペアンプの入出力端子間に接続されたキャパシタとからなり、信号線46はオペアンプの一方の入力端子に接続される。積分アンプ47のもう一方の入力端子はグランド(GND)に接続される。積分アンプ47は、信号線46から入力される電荷を積算し、電圧信号D1〜Dmに変換して出力する。各列の積分アンプ47の出力端子には、増幅器50、サンプルホールド(S/H)部51を介してMUX48が接続される。MUX48の出力側には、A/D変換器49が接続される。
【0037】
MUX48は、パラレルに接続される複数の積分アンプ47から順に一つの積分アンプ47を選択し、選択した積分アンプ47から出力される電圧信号D1〜DmをシリアルにA/D変換器49に入力する。A/D変換器49は、入力された電圧信号D1〜Dmをデジタルデータに変換して、電子カセッテ21の筐体に内蔵されるメモリ52に出力する。なお、MUX48とA/D変換器49の間に増幅器を接続してもよい。
【0038】
MUX48によって積分アンプ47から一行分の電圧信号D1〜Dmが読み出されると、制御回路41は、積分アンプ47に対してリセットパルスRSTを出力し、積分アンプ47のリセットスイッチ47aをオンする。これにより、積分アンプ47に蓄積された一行分の信号電荷がリセットされる。積分アンプ47がリセットされると、ゲートドライバ39から次の行のゲートパルスが出力され、次の行の画素37の信号電荷の読み出しを開始させる。これらの動作を順次繰り返して全行の画素37の信号電荷を読み出す。
【0039】
全行の読み出しが完了すると、一画面分のX線画像を表す画像データがメモリ52に記録される。この画像データは、メモリ52から読み出され、通信部53、通信ケーブル26(図1参照)を通じて撮影制御装置23に出力される。こうして被検体HのX線画像が検出される。
【0040】
図3に示すように、信号処理回路40の積分アンプ47、増幅器50、S/H部51、およびMUX48は、複数列(例えば256列)の画素37毎に一つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)61にまとめて設けられている。
【0041】
一つのASIC61が担う画素37のグループ62には、一列または複数列分(図では一列を例示)のハッチングで示すノイズ検出素子63が含まれる。例えばノイズ検出素子63は各グループ62の端の列に配される。ノイズ検出素子63は、その出力電圧信号が、X線の非照射時の画素37の出力電圧信号と同じ値となるよう設計されており、例えば光電変換機能をもつ半導体層とキャパシタとが電気的に切断されている、あるいは半導体層が遮光されている。このためノイズ検出素子63にはX線に基づく信号電荷は蓄積されず、その出力電圧信号Dnzは主にノイズ成分を表す。
【0042】
各グループ62のMUX48とA/D変換器49の間には減算器64が設けられている。ノイズ検出素子63の列の信号線46はMUX48を介さず減算器64に直接繋がれている。減算器64は、画素37の出力電圧信号Di(i=1〜m)からノイズ検出素子63の出力電圧信号Dnzを差し引き、減算結果Di’(=Di−Dnz)をA/D変換器49に出力する。このためメモリ52に記録されるデータは電圧信号Di’をデジタル化したものである。なお、読み出し動作ではx方向に並ぶ同じ行の画素37の信号電荷が一斉に読み出されるので、一行の読み出し毎に減算器64で扱われる電圧信号Di、Dnzも同じ行の画素37とノイズ検出素子63の出力となる。
【0043】
蓄積動作や読み出し動作中に、放射線技師や被検体Hが撮影台22に意図せずぶつかる等して、電子カセッテ21に衝撃が加わり電子カセッテ21が振動することが有り得る。あるいは、電子カセッテ21を被検体Hが持ったり、被検体Hのうえに電子カセッテ21を載せたりして撮影する場合、被検体Hが乗降する毎に揺れる回診車内で撮影する場合、病院外で発電機を電源として撮影を行う場合等、電子カセッテ21が振動するシチュエーションは多々考えられる。
【0044】
電子カセッテ21が振動すると、その振動ノイズによってバイアス電圧Vbがゆらいで誘導電荷が発生する。そして、このノイズ成分が特に信号処理回路40や信号線46に乗り、ノイズ成分が電圧信号に加算されてしまうということが起きる。電圧信号にノイズ成分が加算されてしまうと、X線画像の画質が劣化し診断に支障を来す。
【0045】
振動によるノイズは突発的なものであるため、暗電荷に起因するノイズ成分を除去するいわゆるオフセット補正では対応することができない。このため本例では、一つのASIC61に属する画素37のグループ62毎にノイズ検出素子63と減算器64を設け、減算器64で画素37の電圧信号Diからノイズ検出素子63の電圧信号Dnzを差し引いている。従って、ノイズが発生して電圧信号にノイズ成分が重畳されたとしても、画素37の電圧信号からノイズ成分が確実に除去され、X線画像の画質を良好に保つことができる。
【0046】
照射検出センサ25は、FPD36の撮像領域38の近傍に配置される。照射検出センサ25は、X線の照射を受けてX線の入射量に応じた照射検出信号を出力する。照射検出信号は、通信ケーブル26を通じて撮影制御装置23に入力される。撮影制御装置23は、照射検出信号の信号レベルを監視して、X線源13によるX線の照射が開始されたことを検出する。
【0047】
制御回路41は、照射検出センサ25の照射検出信号の信号レベルが閾値以上となったとき、X線の照射が開始されたことを検出する。そして、FPD36の動作をリセット動作から蓄積動作へ移行させる。制御回路41は、蓄積動作を開始してからの経過時間をタイマにより計時する。そして、経過時間が撮影条件で設定された時間に達したら、FPD36を蓄積動作から読み出し動作に移行させる。
【0048】
撮影制御装置23は、通信ケーブル26による有線方式、あるいは無線方式により電子カセッテ21と通信可能に接続されており、電子カセッテ21を制御する。具体的には、電子カセッテ21に対して撮影条件を送信して、FPD36の信号処理の条件(増幅器50のゲイン等)を設定させるとともに、FPD36の前記各動作を間接的に制御し、また、電子カセッテ21からの画像データをコンソール24に送信する。
【0049】
図1において、撮影制御装置23は、装置を統括的に制御するCPU23aと、電子カセッテ21と有線方式または無線方式により通信するとともに、コンソール24と通信ケーブル27を介して通信する通信部23bと、メモリ23cとを有する。通信部23b、メモリ23cはCPU23aに接続されている。メモリ23cには、CPU23aが実行する制御プログラムが格納される他、照射検出センサ25の照射検出信号の信号レベルと比較される閾値等の各種情報が格納される。
【0050】
コンソール24は、撮影制御装置23に対して撮影条件を送信するとともに、撮影制御装置23から送信されるX線画像のデータに対してオフセット補正やゲイン補正等の各種画像処理を施す。画像処理にはノイズ検出素子37aの電圧信号Dnzを周囲の画素37の電圧信号Diで補間する処理も含まれる。画像処理済みのX線画像はコンソール24のディスプレイに表示される他、そのデータがコンソール24内のハードディスクやメモリ、あるいはコンソール24とネットワーク接続された画像蓄積サーバといったデータストレージデバイスに格納される。
【0051】
コンソール24は、患者の性別、年齢、撮影部位、撮影目的といった情報が含まれる検査オーダの入力を受け付けて、検査オーダをディスプレイに表示する。検査オーダは、HIS(病院情報システム)やRIS(放射線情報システム)といった患者情報や放射線検査に係る検査情報を管理する外部システムから入力されるか、放射線技師により手動入力される。放射線技師は、検査オーダの内容をディスプレイで確認し、その内容に応じた撮影条件をコンソール24の操作画面を通じて入力する。
【0052】
以下、上記構成による作用について説明する。X線撮影システム10で撮影を行う場合には、まず、撮影台22にセットされた電子カセッテ21の高さを調節して、被検体Hの撮影部位と位置を合わせる。また、電子カセッテ21の高さおよび撮影部位の大きさに応じて、X線源13の高さや照射野の大きさを調整する。
【0053】
次いで、電子カセッテ21の電源を投入する。このとき、電源回路からバイアス電圧VbがFPD36の画素37に供給されるが、ゲートドライバ39および信号処理回路40は動作を停止している。続いてコンソール24から撮影条件を入力し、撮影制御装置23を介して電子カセッテ21に撮影条件を設定する。また、線源制御装置14にも撮影条件を設定する。撮影条件の設定後、FPD36はリセット動作を開始する。
【0054】
以上の撮影準備が完了すると、放射線技師によって照射スイッチ15が一段階押しされる。これにより線源制御装置14にウォームアップ開始信号が送信されて、X線源13のウォームアップが開始される。所定時間経過後に照射スイッチ15が二段階押しされて線源制御装置14に照射開始信号が送信され、X線の照射が開始される。
【0055】
FPD36ではリセット動作を繰り返し行いつつ、照射検出センサ25でX線の照射開始を検出している。照射検出センサ25によりX線の照射開始が検出されると、制御回路41はFPD36を蓄積動作へ移行させる。蓄積動作の間、被検体Hを透過したX線がFPD36の撮像領域38に入射し、画素37にはX線の入射量に応じた信号電荷が蓄積される。一方ノイズ検出素子63には信号電荷は蓄積されない。
【0056】
線源制御装置14は、撮影条件で設定された照射時間が経過するとX線の照射を停止する。また、FPD36も撮影条件で設定された照射時間に相当する所定時間経過後、蓄積動作を終了して読み出し動作へ移行する。読み出し動作では、先頭行から順に一行ずつ画素37に蓄積された信号電荷が読み出される。そして、積分アンプ47、増幅器50、S/H部51を通じてMUX48に入力される。一方ノイズ検出素子63の電荷はMUX48を介さずに減算器64に入力される。
【0057】
減算器64では、MUX48から出力される画素37による電圧信号Diとノイズ検出素子63からの電圧信号Dnzとの減算が実行されて、電圧信号Di’が出力される。この電圧信号Di’は、電子カセッテ21の振動等によるノイズ成分をグループ62単位で除去したものである。
【0058】
電圧信号Di’はA/D変換器49でデジタル化されてX線画像データとしてメモリ52に格納される。全行の読み出し動作が終了すると、メモリ52には一画面分のX線画像データが記録される。読み出し動作後、FPD36は、次の撮影条件が設定されていない場合は電源投入直後の状態に戻り、設定されていた場合はリセット動作を再開する。
【0059】
メモリ52の画像データは撮影制御装置23を介してコンソール24に送信される。画像データはコンソール24でオフセット補正、ゲイン補正、画素補間等の各種画像処理を施された後、コンソール24のディスプレイに表示されたりデータストレージデバイスに格納される。
【0060】
以上説明したように、本発明は、信号処理回路40を構成するASIC61が担う画素37のグループ62毎にノイズ検出素子63を設け、グループ62毎にノイズ成分を除去するので、ASIC61の個体差を吸収することができ、ASIC61自身が発するノイズ成分の除去も可能となる。
【0061】
ある列の画素37をノイズ検出素子63として用いるので、FPD36の製造プロセスや動作制御手順を従来の手法から大幅に変更する必要がない。
【0062】
アナログ電圧信号同士を減算してノイズ成分を除去するので、減算処理を短時間で済ませることができる。また、ノイズ検出素子63の出力電圧信号Dnzを記録する領域をメモリ52に確保しなくても済む。
【0063】
なお、図4に示すように、A/D変換後のデジタル化した電圧信号からノイズ成分を除去してもよい。この場合はノイズ検出素子63の列の信号線46もMUX48に接続して、且つ一台の減算器71を用意し、減算器71からメモリ52にアクセスしてグループ62毎に画素37の電圧信号Diとノイズ検出素子63の電圧信号Dnzを読み出して減算を行い、減算結果Di’をメモリ52に返す。上記実施形態の如くグループ62毎に減算器を設ける必要がないので、部品コストを抑えることができる。
【0064】
ノイズ検出素子63を複数列設けた場合は、各列の電圧信号Dnzの単純平均、あるいは電圧信号Dnzの最大値と最小値を除いた平均を減算に用いてもよい。一列の電圧信号Dnzで減算するよりも複数列の電圧信号Dnzで減算した方がノイズ除去の妥当性が増す。
【0065】
なお、本発明に係るX線撮影システムは、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0066】
X線撮影システム10は病院の撮影室に据え置かれるタイプに限らず、回診車に搭載されるタイプや、X線源13、線源制御装置14、電子カセッテ21、撮影制御装置23等を事故、災害等の緊急医療対応が必要な現場や在宅診療を受ける患者の自宅に持ち運んでX線撮影を行うことが可能な可搬型のシステムに適用してもよい。特に回診車に搭載されるタイプや可搬型のシステムは、病院の撮影室に据え置かれるタイプに比べて電子カセッテ21が衝撃を受けやすいため、本発明を適用すれば格別の効果を得られる。
【0067】
照射検出センサ25をFPD36の撮像領域38の近傍に設けた例で説明したが、FPD36と被検体Hの間に配置されるフォトタイマを照射検出センサとして利用してもよい。周知のように、フォトタイマは、FPD36の自動露出制御(AEC)を行うためにX線の照射量を測定する装置であり、FPD36と組み合わせて使用されるものである。フォトタイマを照射検出センサとして流用すれば、部品コストを抑えることができる。
【0068】
線源制御装置14と撮影制御装置23を有線接続し、照射スイッチ15の照射開始信号を線源制御装置14から撮影制御装置23に送信することで、X線源13からX線が照射されるタイミングとFPD36が信号電荷の蓄積動作を開始するタイミングとを同期させてもよい。
【0069】
上記実施形態の順次リセット方式に代えて、配列画素の複数行を一グループとしてグループ内で順次リセットを行い、グループ数分の行の暗電荷を同時に掃き出す並列リセット方式や、全行にゲートパルスを入れて全画素の暗電荷を同時に掃き出す全画素リセット方式を用いてもよい。並列リセット方式や全画素リセット方式によりリセット動作を高速化することができる。
【0070】
X線源の中には、陽極が回転しない固定陽極型のものや、予熱が不要な冷陰極型の線源等、ウォームアップが不要なものもある。このため、照射スイッチとしては照射開始信号を発生する機能のみを有するものでもよい。また、ウォームアップが必要なX線源の場合でも、照射スイッチから線源制御装置に対して照射開始信号を入力し、線源制御装置が照射開始信号に基づいてウォームアップを開始させ、ウォームアップ終了後、照射を開始させるようにすれば、照射スイッチにウォームアップ開始信号を発生する機能を設ける必要もない。
【0071】
上記実施形態では、電子カセッテと撮影制御装置を別体で構成した例で説明したが、撮影制御装置の機能を電子カセッテの制御回路に内蔵する等、電子カセッテと撮影制御装置を一体化してもよい。また、コンソールで画像処理を行うとしているが、撮影制御装置で行ってもよい。
【0072】
上記実施形態では、可搬型のX線画像検出装置である電子カセッテを例に説明したが、据え置き型のX線画像検出装置に本発明を適用してもよい。
【0073】
本発明は、X線に限らず、γ線等の他の放射線を使用する撮影システムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
10 X線撮影システム
11 X線発生装置
12 X線撮影装置
13 X線源
14 線源制御装置
21 電子カセッテ
23 撮影制御装置
23a CPU
24 コンソール
36 FPD
37 画素
40 信号処理回路
41 制御回路
47 積分アンプ
48 マルチプレクサ(MUX)
49 A/D変換器
50 増幅器
51 サンプルホールド(S/H)部
61 ASIC
62 グループ
63 ノイズ検出素子
64、71 減算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源から照射された放射線を受けて信号電荷を蓄積する複数の配列画素と、
前記画素の複数列のグループ毎に設けられ、前記画素で蓄積された信号電荷を電気信号に変換して出力する信号処理回路と、
前記信号処理回路と同じくグループ毎に設けられ、前記画素と同様の構成であるが電荷蓄積機能を有さないノイズ検出素子と、
同じグループの前記画素と前記ノイズ検出素子の電気信号の差分をとる減算器とを備えることを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項2】
前記ノイズ検出素子は、ある列の前記画素の電荷蓄積機能を無効化したものであることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像検出装置。
【請求項3】
前記減算器はアナログの電気信号同士を減算することを特徴とする請求項1または2に記載の放射線画像検出装置。
【請求項4】
前記減算器はデジタル化された電気信号同士を減算することを特徴とする請求項1または2に記載の放射線画像検出装置。
【請求項5】
前記信号処理回路は、電荷を一定期間積分する積分アンプ、前記積分アンプから出力された電気信号を増幅する増幅器、電気信号のレベルを保持するサンプルホールド部、および前記サンプルホールド部に保持された電気信号を順次選択してA/D変換器に出力するマルチプレクサを有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置。
【請求項6】
前記信号処理回路はASICからなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置。
【請求項7】
可搬型の筐体に収容された電子カセッテであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−119956(P2012−119956A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268143(P2010−268143)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】