説明

放射線硬化性メタクリレートポリエステル

放射線硬化性組成物であって、式(I)または式(II)に対応する分子上に不飽和(メト)アクリル基を有する(メト)アクリル化ポリエステルを含み、





式中、
各Dが、それぞれ、エチレンまたはプロピレンを表し、
x、yが、1〜50の整数であり、
各Aが、それぞれ、水素、アルキル、アルケニルで、隣接するAが互いに結合して環を形成できるという条件付きであり、
各Bが、それぞれ、アルキレンまたはアルケニレン鎖を表し、場合により、1個以上のエーテル架橋を含み、
各Rが、それぞれ、水素またはメチルを表す放射線硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、放射線硬化性組成物の分野、特にコーティング剤、印刷インク、接着剤およびシーラント、エレクトロニクス、光ポリマー、および、歯科用材に有用な放射線硬化性(メト)アクリレート・ポリエステルに関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術)
放射線硬化性組成物は、好ましくは、環境に優しい性質による長所があるために、多くの表面処理用途に選択される。放射線硬化性組成物は、基本的に100%反応性固体系である。当該固体系は、揮発性有機化合物を含有せず、放出物をほぼ生じない。当該固体系は、低エネルギー消費量、高硬化速度および良好なプロセス管理で硬化され、品質が改良された製品を生じる。大半の放射線硬化性組成物は、紫外線または電子ビームによって開始される硬化反応に、アクリレート、メタクリレートの両方を含めたエチレン不飽和化合物を用いる。これらの化合物は、各種最終用途に向けて、炭化水素、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、シリコーン、アミノおよびエポキシなどの主鎖からも成り、所望の性能を付与する。放射線硬化性メタクリル化組成物は、そのアクリル化対応化合物に比較して、自動車塗装および歯科用材のような用途に望ましい改良された機械的強度、硬度増加など、当該組成物自体の独特な性状を有する。放射線硬化性メタクリル化組成物は、多くのエレクトロニクス用途でも、マイクロエレクトロニクスの加工において、パターン解像度を向上させるので、アクリル化製品よりも使用頻度が高い。また、保護フィルムの貼り付けなどの特殊処理が、酸素抑制によって起こるアクリレートとメタクリレートの間の硬化速度差を補う。
【0003】
しかし、放射線硬化性メタクリル化組成物は、比較的緩徐な速度で硬化し、これが、生産性に影響を与え、不十分な硬化を引き起こす可能性があることも知られている。緩徐な硬化を補うには、UV硬化用メタクリル化組成物は、高めのレベルの光重合開始剤で製造されることができる。しかし、高レベル光重合開始剤の使用は、多数の欠点を有する。硬化反応では、光重合開始剤が、全部ではないが、消費されるため、遊離光重合開始剤分子が、製品の性状を損ない、表面に移動し、最終製品への混入を引き起こす可能性がある。特定の光重合開始剤は、強い臭いも有する。
【0004】
放射線硬化性(メト)アクリレートは、本分野で既知の多数の化学的プロセスによって調製される。ヒドロキシル官能基を有するポリオールおよび樹脂は、時に、最も直接的な経路であるエステル化反応によって(メト)アクリル化樹脂に転換される。直接エステル化とエステル交換は、ともに、昇温で実施され、当該昇温で、反応混合物は、望ましくないラジカル重合に起因する安定性の問題に影響を受けやすいと思われる。アクリル酸またはメタクリル酸によるアルコールの直接エステル化は、典型的には、可燃性有機溶媒と触媒としての強酸の存在を必要とする。反応後の処理は、通常、溶媒および他の反応成分の除去後に行われる。これは、大量の有機および水性廃棄物をもたらし、環境への懸念と生産コストを増加させる。さらに、エステル化プロセスは、明らかに、当該プロセス自体の限界を有し、全ての系に適合するわけではない。例えば、一部の反応混合物は、溶解性および相溶性の問題により、エステル化後処理が困難な場合がある。
【0005】
米国特許第3,089,863号および第4,659,778号は、ポリオール、ジカルボン酸無水物およびモノエポキシドを含む反応によってポリエステルを製造するプロセスを提供した。米国特許第5,002,976号は、放射線硬化性利用のアクリル化ポリエステル組成物の調製にこの手法を採用した。その発明の組成物は、反応物質としてポリオキシテトラメチレン・グリコール、無水コハク酸または無水フタル酸、および、グリシジル・アクリレートを用いることによって調製された。米国特許第4,158,618号は、反応性ポリマー、ハロゲン化環式無水物およびグリシジル・エステルから調製される放射線硬化性(メト)アクリル化組成物を開示した。さらに、複数の他のポリエステル組成物の例が、特定アルコール、無水物およびエポキシ化合物の組合せで得られることができる。例えば、メタクリル化ポリエステル組成物は、米国特許第5,587,433号および日本特許第04154823 A2号に記述されているように、ヒドロキシ末端ポリブタジエンから製造された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機溶媒を使用せず、反応後処理を必要としない、より環境に優しいプロセスによって、アルコキシル化ビス−フェノールAポリオール、および、他の主要な反応物質に対して幅広い主鎖成分から生成される放射線硬化性(メト)アクリル化ポリエステルを提供するのが、本発明の目的である。多様な用途に性能が増強された放射線硬化性組成物を提供するのが、本発明のさらなる目的である。これらや他の目的は、以下の詳細な説明から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、放射線硬化性組成物であって、式(I)または式(II)に対応する分子上に不飽和(メト)アクリル基を有する(メト)アクリル化ポリエステルを含み、
【化1】


【化2】


式中、
各Dが、それぞれ、エチレンまたはプロピレンを表し、
x、yが、0〜50の整数であり、(x+y)は、1〜50の整数であり、
各Aが、それぞれ、水素、アルキル、アルケニルで、隣接するAが互いに結合して環を形成できるという条件付きであり、
各Bが、それぞれ、アルキレンまたはアルケニレン鎖を表し、場合により、1個以上のエーテル架橋を含み、
各Rが、それぞれ、水素またはメチルを表す放射線硬化性組成物に向けられたものである。
【0008】
別の態様では、本発明は、アルコキシル化ビス−フェノールAポリオールの環式無水物およびエポキシ基保持(メト)アクリレートとの反応生成物である(メト)アクリル化ポリエステルに関する。別の態様では、本発明は、5重量%以上の成分として前記(メト)アクリレートポリエステルを有する放射線硬化性組成物に関する。
【0009】
本発明の(メト)アクリル化ポリエステルは、不飽和(メト)アクリル基を含有し、好ましくは、アルコキシル化ビス−フェノールAポリオール、環式無水物およびエポキシ基保持(メト)アクリレートを反応させることによって製造される。本発明の(メト)アクリル化ポリエステルは、さらに好ましくは、環境に優しく、大抵の場合、有機溶媒を必要とせず、廃棄物が出ないワンポットプロセスで製造される。前記のポリオール、環式無水物およびエポキシ基保持(メト)アクリレートの比率は、通常、ポリオール上ヒドロキシ基1モル対無水物1モルおよびエポキシ基保持(メト)アクリレート1モルである。しかし、当該反応物質の比率は、アルコール上ヒドロキシ基1モル対無水物0.01〜1モルに対して、また、カルボキシル基1モル対エポキシ基保持(メト)アクリレート0.01〜1モルに対して任意に変動可能である。
【0010】
特定の用途に必要と思われる場合、前記のように得られる生成物中の二級アルコール基(エポキシ基とカルボキシル基の間の反応から発生した)が、さらに、エステルおよびカルボキシル基の生成に、無水物0.01〜1モルと反応されることができる。
【0011】
また、本発明の(メト)アクリル化ポリエステルの製造に使用されるポリオールは、エトキシル化およびプロポキシル化ポリオールの混合物であることができる。同じことが、環式無水物およびエポキシ基保持(メト)アクリレートに当てはまる。
【0012】
本発明の(メト)アクリル化ポリエステルが、他のエチレン不飽和放射線硬化性化合物および他の必要な成分と調合される場合、本発明の組成物は、コーティング剤、インク、接着剤、シーラント、エレクトロニクス、光ポリマーおよび歯科用組成物として利用されることができ、紫外光または電子ビームによって硬化されることができる。これらの組成物は、普通のプロセスで製造される(メト)アクリル化ポリエステルの速度よりも速い速度で硬化することが判明している。
【0013】
(発明の詳細な説明)
式(I)に対応する分子上に不飽和(メト)アクリル基を有する(メト)アクリル化ポリエステルでは、x+yは、好ましくは少なくとも2、さらに好ましくは少なくとも3である。x+yは、好ましくは100を越えず、さらに好ましくは30を越えない。式(I)に対応する分子上に不飽和(メト)アクリル基を有する(メト)アクリル化ポリエステルでは、各Aは、好ましくは、水素群から選択され、あるいは、隣接するAが結合されてアルキレンまたはアルケニレン環を形成する。後者の場合、アルキレンまたはアルケニレン環は、好ましくは5〜6個の炭素原子を含む。式(I)に対応する分子上に不飽和(メト)アクリル基を有する(メト)アクリル化ポリエステルでは、Bは、好ましくはアルキレンである。
【0014】
本発明の(メト)アクリル化ポリエステルは、好ましくは、米国特許第3,089,863号および第5,002,976号に記述されている化学反応と同様の化学反応を使ったワンポットプロセスによって調製される。当該両特許は、参照することによって本明細書に組み入れられている。当該調製は、同一反応容器内で、2段階で実施されることができる。その第一段階は、エステル基と末端カルボキシル基を形成する環式無水物とのアルコキシル化ビス−フェノールの反応を含む。第二段階は、第一段階で形成されたカルボキシル基を、反応混合物に導入されたエポキシ基保持(メト)アクリレートからのエポキシ基と反応させる段階である。当該調製を完了させる主な基準は、エポキシ1個当りの標的の酸価および重量を満たしていることである。そのようにして得られる反応生成物は、以下の式(I)または(II)によって説明されることができ、
【化3】


【化4】


式中、
各Dは、それぞれ、エチレンまたはプロピレンを表し、
x、yは、1〜50の整数であり、
各Aは、それぞれ、水素、アルキル、アルケニルで、隣接するAが互いに結合して環を形成することができるという条件付きで、
各Bは、それぞれ、アルキレンまたはアルケニレン鎖を表し、場合により、1個以上のエーテル架橋を含み、
各Rは、それぞれ、水素またはメチルを表す。
----に関して、
この式では、「A」は、前記無水物の残基を表し、
----は、二重または単結合を表し、
「B」は、使用エポキシ−メタクリレート化合物中のエポキシ基とメタクリレート基の間の残基を表す。
【0015】
1. アルコールと環式無水物の間の化学反応は、当該両反応物質が混合され、適温まで加熱されると、容易に起こる。しかし、一級アルコール>二級アルコール>三級アルコールという反応性の強さの順序から、一級および二級アルコールが、低反応性の三級アルコールに勝る良好な選択である。選択されるアルコールは、本発明の組成物に利用する場合、当該アルコールが保持する主鎖の有用性にも左右される。本発明の適切なアルコールの例は、アルコキシル化ビス−フェノールAポリオールであり、この場合、最も一般的であるのは、エトキシル化ビス−フェノールAポリオール、プロポキシル化ビス−フェノールAポリオール、または、両者の混合物である。好ましいのは、分子量約272〜5000を有するアルコキシル化ビス−フェノールAポリオール、さらに具体的には分子量約272〜5000またはヒドロキシ価約413〜22mg KOH/gを有するエトキシル化ビス−フェノールAポリオール、分子量約286〜5000またはヒドロキシ価約393〜22mg KOH/gを有するプロポキシル化ビス−フェノールAポリオール、または、これらのポリオールの2種類よりも多い混合物である。
【0016】
本発明において有用な環式無水物は、カルボキシル基が隣接炭素原子に結合しているジカルボン酸から誘導される。当該環式無水物は、好ましくは、式(III)または(IV)の一般構造に対応し、
【化5】


【化6】


式中、各Aは、それぞれ、水素、アルキル、アルケニルで、両Aが互いに結合されて、環を形成することができるという条件付きである。これらの環式無水物は、好ましくは、約98〜約375の分子量を有する。具体的な無水物の例は、無水コハク酸、無水オクテニルコハク酸、無水ドデセニルコハク酸、無水オクタデセニルコハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、グルタル酸無水物、メチルナディク酸無水物、クロレンド酸無水物、イタコン酸無水物などを含む。好ましいのは、無水コハク酸、無水フタル酸、および、無水ヘキサヒドロフタル酸である。
【0017】
本発明の(メト)アクリル化ポリエステルの製造に使用されるエポキシ基保持(メト)アクリレートは、少なくとも1個のエポキシと少なくとも1個の(メト)アクリレート基を含有する化合物である。次の一般構造に対応するエポキシ基保持(メト)アクリレートで、
【化7】


式中、Bが、アルキレンまたはアルケニレンを表し、好ましくは炭素原子1〜20個を有し、場合により、1個以上のエーテル架橋を含み、Rが、水素またはメチルであるのが好ましい。当該エポキシ基保持(メト)アクリレートの適切な例は、グリシジル・メタクリレート、メチルグリシジル・メタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル・メタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート・グリシジルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート・グリシジルエーテルなどを含む。好ましいのは、エポキシ・メタクリレートである。
【0018】
前記のポリオール、環式無水物およびエポキシ基保持(メト)アクリレートの比率は、通常、当該環式無水物1モルに対して、また、当該エポキシ基保持(メト)アクリレート1モルに対して、当該ポリオール上のヒドロキシ基1モルである。これらの3個の反応物質の比率は、ポリオール上のヒドロキシ基1モルに対して無水物0.01〜1モルで、また、遊離カルボキシル基1モルに対して、エポキシ基保持(メト)アクリレート0.01〜1モルで変動することもできる。
【0019】
特定の用途に必要と思われる場合、上記のように得られた生成物中の二級アルコール基(エポキシ基とカルボキシル基の間での反応から発生した)が、さらに、無水物0.01〜1モルと反応され、エステルおよびカルボキシル基を生じることができる。また、本発明の(メト)アクリレート・ポリエステルの製造に使用されるポリオールは、数個の異なるポリオールの混合物であることもできる。同じことは、環式無水物とエポキシ基保持(メト)アクリレートに当てはまる。
【0020】
好ましくは、反応時間を短縮し、副産物を減少させるために、本発明の(メト)アクリル化ポリエステルの調製に触媒が用いられる。アミン、トリフェニルフォスフィン、および、クロム、錫、亜鉛、鉄、ビスマスおよびジルコニウムの有機金属化合物が、すべて、当該反応を触媒するために使用されることができる。適切な触媒の例は、ブチル錫トリクロライド、ジブチル錫ジクロライド、トリブチル錫クロライド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアクリレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫オキサイド、テトラメチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル錫などである。
【0021】
本発明の(メト)アクリル化ポリエステルが調製される正確なプロセス条件は、どの時間と温度の組合せが当該調製に最も良く適するかによって、組成物ごとに変化する。普通、80〜140℃、好ましくは90〜120℃の範囲内の温度が維持され、当該反応は、用いられる各種反応物質に対して約4〜20時間の間隔で実施される。当該調製に関与する両反応は発熱性で、反応温度を上昇させる。プロセス温度のさらに良好に制御するために、前記エポキシ基保持(メト)アクリレートは、例えば1時間以上をかけて、徐々に増加されながら反応容器に導入されることができる。反応混合物から一定の時間間隔でプロセス内サンプルが採取され、滴定分析でモニターされることによって、当該エポキシ基保持(メト)アクリレートの変換が実質的に完了したと確認されると、当該調製は完了する。
【0022】
本発明の(メト)アクリル化ポリエステルは、調合され、本発明の放射線硬化性組成物になることができる。本発明の放射線硬化性組成物では、当該(メト)アクリル化ポリエステルは、必要な性能を提供するためには、少なくとも5重量%を占める。本放射線硬化性組成物には、他のエチレン不飽和放射線硬化性化合物および他の必要な成分が含まれる。
【0023】
本発明の放射線硬化性組成物は、好ましくは、(A)約5〜95重量%の(メト)アクリル化ポリエステル、(B)(A)とは異なる約0〜80重量%のエチレン不飽和放射線硬化性化合物、(C)約0〜50重量%のモノエチレン不飽和放射線重合性モノマー、(D)約0〜5重量%の1個から5個までの光重合開始剤、および、(E)約0〜20重量%の他の必要な添加剤および成分の混合物を含む。
【0024】
本発明の組成物は、コーティング剤、インクおよび接着組成物として利用されることができ、紫外光または電子ビームによって硬化されることができる。これらの組成物は、普通のプロセスで製造される(メト)アクリル化ポリエステルよりも速い速度で硬化することが検査上認められている。当該放射線硬化性組成物は、コーティング剤利用、インク利用、接着剤およびシーラント利用、エレクトロニクスのコーティング剤利用、光ポリマー利用、歯科利用に適している。
【0025】
(実施例)
以下の実施例は、本発明の詳細な内容を説明するものである。これらの実施例は、単に本発明を実証するために提示されるもので、いかなる方法によっても本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0026】
攪拌器、滴下漏斗および温度計を備えた反応容器に、ヒドロキシ価74.0mg KOH/gのエトキシル化ビス−フェノールAジオール2,501.8g、無水コハク酸330.2g、トリフェニルアンチモン3.3g、および、Hycat 2000(Dimension Technology Chemical Systems,Inc.,Fair Oaks,CA製のクロム系触媒)1.1gが添加された。次に、当該混合物は、攪拌され、115℃まで加熱され、反応された。当該反応は、115℃で2時間維持された。当該反応混合物は、この時点で均質溶液であった。
【0027】
次に、4−メトキシフェノール1.7gおよび2.2gのHycat 2000が前記反応容器に添加された。グリシジル・メタクリレート469.1gが、滴下漏斗から1時間かけて当該反応溶液に添加された。反応は、110℃で3.5時間維持され、その間、エポキシ−酸バランスの調整に、グリシジル・メタクリレート10.0gが添加された。
【0028】
生じた生成物は、33,500のエポキシ当量、および、1.9mg KOH/gの酸価、および、25℃で4,130cPのBrookfield粘度を有した。
【実施例2】
【0029】
メタクリル化ポリエステルは、実施例1で述べられた手順と同じ手順に従い、実施例1に述べられたものと同じ触媒、抑制剤および安定化剤を使って、ヒドロキシ価172mg KOH/gのエトキシル化ビス−フェノールAジオール2,312.1g、無水コハク酸709.0g、および、グリシジル・メタクリレート1,051.8gを反応させることによって調製された。
【0030】
生じた生成物は、33,700のエポキシ当量、および、0.9mg KOH/gの酸価、および、25℃で17,400cPのBrookfield粘度を有した。
【実施例3】
【0031】
メタクリル化ポリエステルは、実施例1で述べられた手順と同じ手順に従い、実施例1に述べられたものと同じ触媒、抑制剤および安定化剤を使って、ヒドロキシ価312mg KOH/gのエトキシル化ビス−フェノールAジオール1,726.2g、無水コハク酸960.7g、および、グリシジル・メタクリレート1,370.7gを反応させることによって調製された。
【0032】
生じた生成物は、30,500のエポキシ当量、および、1.5mg KOH/gの酸価、および、25℃で281,000cPのBrookfield粘度を有した。
【実施例4】
【0033】
メタクリル化ポリエステルは、実施例1で述べられた手順と同じ手順に従い、実施例1に述べられたものと同じ触媒、抑制剤および安定化剤を使って、ヒドロキシ価230mg KOH/gのエトキシル化ビス−フェノールAジオール1,952.0g、無水コハク酸800.6g、および、グリシジル・メタクリレート1,172.4gを反応させることによって調製された。
【0034】
生じた生成物は、42,700のエポキシ当量、および、1.8mg KOH/gの酸価、および、25℃で57,100cPのBrookfield粘度を有した。
【実施例5】
【0035】
攪拌器、滴下漏斗および温度計を備えた反応容器に、実施例2で生じた生成物1120.0gが添加され、内容物は、攪拌下で加熱された。温度が110℃に達すると、無水コハク酸195.1gが当該容器に導入され、反応は、110℃で3時間維持された。
【0036】
生じた生成物は、81.8mg KOH/gの酸価、および、25℃で139,800cPのBrookfield粘度を有した。
【実施例6】
【0037】
酸修飾メタクリル化ポリエステルは、実施例5で述べられた手順と同じ手順に従い、実施例3から生じた生成物1726.0g、および、無水コハク酸407.9gを反応させることによって調製された。
【0038】
生じた生成物は、107.8mg KOH/gの酸価、および、60℃で12,530cPのBrookfield粘度を有した。
【実施例7】
【0039】
メタクリル化ポリエステルは、実施例1で述べられた手順と同じ手順に従い、実施例1に述べられたものと同じ触媒、抑制剤および安定化剤を使って、ヒドロキシ価74.0mg KOH/gのエトキシル化ビス−フェノールAジオール1404.0g、無水コハク酸185.3g、および、グリシジル・メタクリレート271.7gを反応させることによって調製された。
【0040】
実施例6に述べられた手順と同じ手順に従って、前記反応容器中の全内容物は、無水コハク酸182.1gと配合され、反応に供された。
【0041】
生じた生成物は、51.2mg KOH/gの酸価、および、25℃で13,200cPのBrookfield粘度を有した。
【実施例8】
【0042】
この実施例は、本発明のメタクリル化ポリエステルが、アルコキシル化ビス−フェノールAジオールの直接エステル化プロセスによって製造された対応するメタクリレートに比較してより速い硬化速度を達成することを説明するものである。
【0043】
8個の放射線硬化性組成物が、それぞれ、下表に示されるメタクリル化化合物96.0重量部とIrgacure(登録商標)184(Ciba Specialties Corporation USA,Glen Ellyn,ILの製品)4.0重量部を混合し、均質溶液とすることによって調製された。放射線硬化性組成物I〜VIIIは、コートされ、典型的UV硬化法によってUV光を照射された。硬化速度も、下表に示される。表面の非擦傷状態は、指の爪または舌圧子を表面に通過させることによって決定され、表面に掻傷が現れない場合には、非擦傷性であるとされる。
【表1】


これらのメタクリレートは、Cytec Surface Specialties(Smyrna,GA)の製品であり、略語は、「エトキシル化およびジメタクリル化ビスフェノールA」を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線硬化性組成物であって、式(I)または式(II)に対応する分子上に不飽和(メト)アクリル基を有する(メト)アクリル化ポリエステルを含み、
【化1】


【化2】


式中、
各Dが、それぞれ、エチレンまたはプロピレンを表し、
x、yが、1〜50の整数であり、
各Aが、それぞれ、水素、アルキル、アルケニルで、隣接するAが互いに結合して環を形成できるという条件付きであり、
各Bが、それぞれ、アルキレンまたはアルケニレン鎖を表し、場合により、1個以上のエーテル架橋を含み、
各Rが、それぞれ、水素またはメチルを表す、
放射線硬化性組成物。
【請求項2】
放射線硬化性組成物であって、
(A)約272〜約5,000の分子量を有するアルコキシル化ビス−フェノールAポリオールと、
(B)ヒドロキシ基1モル対環式無水物約0.01〜1モルのモル比の環式無水物と、
(C)前記環式無水物のカルボキシル基1モル対エポキシ基保持(メト)アクリレート約0.01〜1モルのモル比のエポキシ基保持(メト)アクリレート
を反応させることによって製造されることを特徴とする請求項1に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項3】
前記反応生成物が、さらに、この生成物のヒドロキシル基1モル当たり環式無水物0.01〜1モルと反応されることを特徴とする請求項2に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項4】
前記ポリオールが、約272〜5000の分子量または約413〜22mg KOH/gのヒドロキシ価を有するエトキシル化ビス−フェノールAポリオール、約286〜5000の分子量または約393〜22mg KOH/gのヒドロキシ価を有するプロポキシル化ビス−フェノールAポリオール、または、前記ポリオールの2個以上の混合物であることを特徴とする請求項2または3に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項5】
前記環式無水物が、式IIIまたは(IV)の一般構造を有し、
【化3】


【化4】


式中、各Aが、それぞれ、水素、アルキル、アルケニルを表し、両Aが互いに結合して環を形成できるという条件付きであることを特徴とする請求項2または3に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項6】
前記環式無水物が、無水コハク酸、無水オクテニルコハク酸、無水ドデセニルコハク酸、無水オクタデセニルコハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、グルタル酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、クロレンド酸無水物、イタコン酸無水物、および、それらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項7】
前記環式無水物が、無水コハク酸、無水フタル酸または無水テトラヒドロフタル酸であることを特徴とする請求項6に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項8】
前記エポキシ基保持(メト)アクリレートが以下の一般構造を有し、
【化5】


式中、Bが、炭素原子1〜20個を有するアルキレンまたはアルケニレンを表し、場合により、1個以上のエーテル架橋を含み、Rが、水素またはメチルであることを特徴とする請求項2または3に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項9】
前記エポキシ基保持(メト)アクリレートが、グリシジル・メタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート・グリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチルメタクリレート・グリシジルエーテル、または、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート・グリシジルエーテルであることを特徴とする請求項8に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項10】
前記ポリオールが分子量約272〜5000またはヒドロキシ価約413〜22mg KOH/gを有するエトキシル化ビス−フェノールAポリオールであり、前記環式無水物が無水コハク酸であり、前記エポキシ基保持(メト)アクリレートがグリシジル・メタクリレートであることを特徴とする請求項2または3に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項11】
前記ポリオールが分子量約272〜5000またはヒドロキシ価約413〜22mg KOH/gを有するエトキシル化ビス−フェノールAポリオールであり、前記環式無水物が無水フタル酸であり、前記エポキシ基保持(メト)アクリレートがグリシジル・メタクリレートであることを特徴とする請求項2または3に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項12】
前記ポリオールが分子量約272〜5000またはヒドロキシ価約413〜22mg KOH/gを有するエトキシル化ビス−フェノールAポリオールであり、前記環式無水物が無水マレイン酸であり、前記エポキシ基保持(メト)アクリレートがグリシジル・メタクリレートであることを特徴とする請求項2または3に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項13】
前記ポリオールが分子量約272〜5000またはヒドロキシ価約413〜22mg KOH/gを有するエトキシル化ビス−フェノールAポリオールであり、前記環式無水物が無水ヘキサヒドロフタル酸であり、前記エポキシ基保持(メト)アクリレートがグリシジル・メタクリレートであることを特徴とする請求項2または3に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項14】
放射線硬化性組成物であって、
(A)約5〜95重量%の請求項1〜13に記載の(メト)アクリル化ポリエステルと、
(B)約0〜80重量%の(A)とは異なるエチレン不飽和放射線硬化性化合物と、
(C)約0〜50重量%のモノエチレン不飽和放射線重合性モノマーと、
(D)約0〜5重量%の1個から5個までの光重合開始剤と、
(E)約0〜20重量%の他の必要な添加剤および成分の混合物を含む
放射線硬化性組成物。
【請求項15】
放射線硬化性組成物であって、請求項14に記載の放射線硬化性組成物を紫外光または電子ビームで硬化することによって調製される放射線硬化性組成物。
【請求項16】
放射線硬化性組成物であって、コーティング剤利用、インク利用、接着剤およびシーラント利用、ドライフィルムフォトレジスト、デジタルバーサタイルディスク(DVD)接着剤およびプリント基板用絶縁保護コーティング剤を含むが、それらに制約されないエレクトロニクスのコーティング剤利用、光ポリマー利用、歯科利用のための請求項14に記載の放射線硬化性組成物。


【公表番号】特表2008−540710(P2008−540710A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509348(P2008−509348)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004012
【国際公開番号】WO2006/117157
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(505365965)サイテック サーフェース スペシャリティーズ、エス.エイ. (38)
【Fターム(参考)】