説明

放熱フィンとヒートパイプの接合部およびその接合方法

【課題】放熱フィンと、放熱フィンの切り欠き部に挿通されたヒートパイプの放熱部とが低い熱抵抗で接合され、高い放熱効率を有する放熱フィンとヒートパイプの接合部およびその接合方法を提供する。
【解決手段】放熱フィン群を形成する個々の放熱フィンの一方の端部に、ヒートパイプ放熱部の受け入れ用の切り欠き部を設け、放熱フィン群を形成する個々の別の放熱フィンの一方の端部に、ヒートパイプ放熱部の受け入れ用の別の切り欠き部を設け、前記切り欠き部および前記別の切り欠き部のそれぞれの内壁面に半田を塗布し、前記切り欠き部および前記別の切り欠き部に前記ヒートパイプの放熱部を接合する、放熱フィンとヒートパイプの接合方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種電気・電子機器に搭載される半導体素子などの発熱体の冷却用ヒートシンクにおける放熱フィンとヒートパイプの接合部およびその接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電気・電子機器に搭載された半導体素子等の発熱性の素子を冷却するために、放熱フィンおよびヒートパイプを備えたヒートシンクが各種提案され、また実用化されている。ヒートパイプを備えたヒートシンクによると、ヒートパイプによって、放熱すべき電気・電子部品の熱を別の場所に配置された放熱フィンに移動させ、その場所で放熱フィンを伝わって外部に放熱することができる。ヒートパイプは、大量の熱の移動に優れているので各種電気・電子機器において使用されている。
【0003】
ヒートパイプの内部には作動流体の流路となる空間が設けられ、その空間に収容された作動流体が、蒸発、凝縮等の相変化や移動をすることによって、熱の移動が行われる。即ち、ヒートパイプの吸熱(受熱)側において、ヒートパイプを構成する容器の材質中を熱伝導して伝わってきた被冷却部品が発する熱により、作動流体が蒸発し、その蒸気がヒートパイプの放熱側に移動する。放熱側においては、作動流体の蒸気は冷却され再び液相状態に戻る。このように液相状態に戻った作動流体は再び吸熱側に移動(還流)する。このような作動流体の相変態や移動によって熱の移動が行われる。
【0004】
半導体素子等の発熱性の素子を搭載する各種電気・電子機器は、発熱素子の発熱量が多くなり、高い放熱効率が要求されている。発熱素子は通常ベースプレート等の熱伝導性に優れた金属の一方の面に熱的に接続され、ベースプレートの他方の面には、ヒートパイプの受熱部が熱的に接続されている。発熱素子が発生する熱は、ベースプレートに熱伝導し、ベースプレートに伝わった熱は、更にヒートパイプの受熱部に移動する。
【0005】
放熱フィンは、通常所定間隔で複数の薄板が平行に配置され、ヒートパイプの放熱側の端部に熱的に接続される。放熱フィンは一般的に金属製の薄板で形成されている。ヒートシンクの放熱効率を高めるためには、発熱性の素子からヒートパイプの受熱部への熱移動、および、ヒートパイプによって放熱部に移動された熱の放熱フィンへの効果的な熱移動が必要である。特に、ヒートパイプの放熱部から放熱フィンへの熱移動が重要である。
【0006】
図5(a)は、従来のヒートパイプの放熱部と放熱フィンの接合部を説明する斜視図である。図5(b)は、個々の放熱フィンを示す断面図である。図5(a)に示すように、従来のヒートパイプの放熱部と放熱フィンの接合部100は、図5(b)に示す放熱フィン102(例えばバーニング加工されたスタックフィン)が所定間隔で複数並列配置され、放熱フィン102の孔部103にヒートパイプ101が挿通されている。
【0007】
放熱フィン102の孔部103には円筒状部105が一体的に形成され、複数の放熱フィン102が並列配置されたときの間隔は、円筒状部105の長さによって決まる。図5(a)および図5(b)に示す従来のヒートパイプの放熱部と放熱フィンの接合部は、半田を用いることなくヒートパイプ101の放熱部と放熱フィン102が接合されている。このため、放熱フィン102の孔部103の径よりも、ヒートパイプ101の放熱部の径の方が大きく(例えば、ヒートパイプ101の放熱部の径はφ6で、放熱フィン102の孔部103の径がφ5.9である)設定される。この接合方法は、半田を使用することなく、ヒートパイプ101を放熱フィン102の孔部103に圧入するだけでよいので、容易にヒートパイプ101の放熱部に放熱フィン102を接合することができる。
【0008】
図6は、従来のヒートパイプの放熱部と放熱フィンの他の接合部を説明する斜視図である。図6に示すように、従来の接合部においては、放熱フィン102の孔部103の上部に半田を収納する突起状部位104を設けて、そこに半田を充填する。このような半田を収容する突起状部位104を備えた放熱フィン102を複数並列配置し、孔部103にヒートパイプ101の放熱部を挿通して、ヒートパイプ101の放熱部と放熱フィン102を半田接合する。なお、放熱フィン102は、図5(b)を参照して説明したように、放熱フィン102の孔部103には円筒状部105が一体的に形成されていてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−246521号公報
【特許文献2】特開2001−274304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図5を参照して説明した、従来のヒートパイプの放熱部と放熱フィンの接合部においては、上述したように、半田を使用することなく、径の大きなヒートパイプの放熱部を孔部の径の小さい放熱フィンに圧入するだけで、容易に製造することができる利点があるものの、ヒートパイプの放熱部と放熱フィンの間の熱抵抗が大きく、熱伝導が不十分であり、発熱量の多い発熱部品の冷却に適さないという問題点があった。
【0011】
図6を参照して説明した、従来のヒートパイプの放熱部と放熱フィンの接合部においては、上述したように、放熱フィン102の孔部103の上部に半田を収納する突起状部位104を設けて、そこに半田を充填し、孔部103にヒートパイプ101の放熱部を挿通して、ヒートパイプ101の放熱部と放熱フィン102を半田接合すると、放熱フィンの孔部の内壁部の全域に均一に半田が行き届かず、半田が不均一になるという問題点があった。
【0012】
従って、この発明の目的は、放熱フィンと、放熱フィンの孔部に挿通されたヒートパイプの放熱部とが低い熱抵抗で接合され、高い放熱効率を有する放熱フィンとヒートパイプの接合部およびその接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者は上述した従来の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、放熱フィンを孔部で2つに切断し、孔部で切断した放熱フィンの一方の側の放熱フィン片に形成された切り欠き部片と、他方の側の放熱フィン片の放熱フィン片に形成された切り欠き部片のそれぞれの内壁面に半田を塗布し、ヒートパイプの放熱部に、半田を塗布した放熱フィン片を半田接合すると、放熱フィンの孔部の内壁部の全域に均一に半田接合を行うことができ、低い熱抵抗で、高い放熱効率を有する放熱フィンとヒートパイプの接合部が得られることが判明した。
【0014】
更に、上述した放熱フィン片の半円状の孔部片に半円筒部を、それぞれの放熱フィン片の平らな面に直角に一体的に形成し、半円筒部の内壁面に半田を塗布して接合すると、より強固に接合することができ、低い熱抵抗で、高い放熱効率を有する放熱フィンとヒートパイプの接合部が得られる。
【0015】
この発明の放熱フィンとヒートパイプの接合方法の第1の態様は、放熱フィン群を形成する個々の放熱フィンの一方の端部に、ヒートパイプ放熱部の受け入れ用の切り欠き部を設け、放熱フィン群を形成する個々の別の放熱フィンの一方の端部に、ヒートパイプ放熱部の受け入れ用の別の切り欠き部を設け、前記切り欠き部および前記別の切り欠き部のそれぞれの内壁面に半田を塗布し、前記切り欠き部および前記別の切り欠き部に前記ヒートパイプの放熱部を接合する、放熱フィンとヒートパイプの接合方法である。
【0016】
この発明の放熱フィンとヒートパイプの接合方法の第2の態様は、前記放熱フィン群を形成する個々の放熱フィンの一方の端部に設けた切り欠き部に、半円筒部が、それぞれの放熱フィンの平らな面に直角に一体的に形成されて、前記切り欠き部の内壁面と前記半円筒部の内壁面とが同一面を形成し、前記放熱フィン群を形成する個々の別の放熱フィンの一方の端部に設けた別の切り欠き部に、別の半円筒部が、それぞれの放熱フィンの平らな面に直角に一体的に形成されて、前記別の切り欠き部の内壁面と前記別の半円筒部の内壁面とが同一面を形成し、前記半円筒部および前記別の半円筒部のそれぞれの内壁面に半田を塗布し、前記半円筒部および前記別の半円筒部に前記ヒートパイプの放熱部を接合する、放熱フィンとヒートパイプの接合方法である。
【0017】
この発明の放熱フィンとヒートパイプの接合方法の第3の態様は、前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが、孔部で切断した1つの放熱フィンの一方の側の放熱フィン片と他方の側の放熱フィン片であり、前記切り欠き部と、前記別の切り欠き部が、孔部で切断した1つの孔部の一方の側の切り欠き部片と、他方の側の切り欠き部片であり、前記半円筒部と、前記別の半円筒部が、孔部で切断した1つの孔部の一方の側の半円筒部片と、他方の側の半円筒部片である、放熱フィンとヒートパイプの接合方法である。
【0018】
この発明の放熱フィンとヒートパイプの接合方法の第4の態様は、前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが同一形状の薄板状部材からなっており、前記放熱フィンの前記切り欠き部または半円筒部と前記別の放熱フィンの前記切り欠き部または半円筒部が相対して位置しており、前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが交互またはランダムに配置されている、放熱フィンとヒートパイプの接合方法である。
【0019】
この発明の放熱フィンとヒートパイプの接合方法の第5の態様は、前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが異なる形状および/または異なる厚さの薄板状部材からなっており、前記放熱フィンの前記切り欠き部または半円筒部と前記別の放熱フィンの前記切り欠き部または半円筒部が相対して位置しており、前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが交互またはランダムに配置されている、放熱フィンとヒートパイプの接合方法である。
【0020】
この発明の放熱フィンとヒートパイプの接合部の第1の態様は、ヒートパイプの放熱部と、前記放熱部の外周面に取り付けられる、内壁面に塗布された半田を備えた切り欠き部が一方の端部に形成された放熱フィンと、内壁面に塗布された半田を備えた別の切り欠き部が一方の端部に形成された別の放熱フィンとを備え、前記切り欠き部および前記別の切り欠き部に前記ヒートパイプの前記放熱部が半田接合されている放熱フィンとヒートパイプの接合部である。
【0021】
この発明の放熱フィンとヒートパイプの接合部の第2の態様は、放熱フィン群を形成する個々の放熱フィンの一方の端部に設けた放熱フィン片の切り欠き部片に、半円筒部が、それぞれの放熱フィン片の平らな面に直角に一体的に形成されて、前記切り欠き部片の内壁面と前記半円筒部の内壁面とが同一面を形成し、放熱フィン群を形成する個々の別の放熱フィンの一方の端部に設けた放熱フィン片の別の切り欠き部片に、別の半円筒部が、それぞれの放熱フィン片の平らな面に直角に一体的に形成されて、前記別の切り欠き部片の内壁面と前記別の半円筒部の内壁面とが同一面を形成し、前記半円筒部および前記別の半円筒部のそれぞれの内壁面に半田を塗布し、前記半円筒部および前記別の半円筒部に前記ヒートパイプの放熱部を接合する、放熱フィンとヒートパイプの接合部である。
【0022】
この発明の放熱フィンとヒートパイプの接合部の第3の態様は、前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが、孔部で切断した1つの放熱フィンの一方の側の放熱フィン片と他方の側の放熱フィン片であり、前記切り欠き部と前記別の切り欠き部が孔部で切断した1つの孔部の一方の側の切り欠き部片と他方の側の切り欠き部片である、放熱フィンとヒートパイプの接合部である。
【0023】
この発明の放熱フィンとヒートパイプの接合部の第4の態様は、前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが同一形状の薄板状部材からなっており、前記放熱フィンの前記切り欠き部または半円筒部と前記別の放熱フィンの前記切り欠き部または半円筒部が相対して位置しており、前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが交互またはランダムに配置されている、放熱フィンとヒートパイプの接合部である。
【0024】
この発明の放熱フィンとヒートパイプの接合部の第5の態様は、前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが異なる形状および/または異なる厚さの薄板状部材からなっており、前記放熱フィンの前記切り欠き部と前記別の放熱フィンの前記切り欠き部が相対して位置しており、前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが交互またはランダムに配置されている、請求項6〜9の何れか1項に記載の放熱フィンとヒートパイプの接合部である。
【発明の効果】
【0025】
この発明によると、放熱フィンを孔部で2つに切断し、孔部で切断した放熱フィンの一方の側の放熱フィン片に形成された切り欠き部片と、他方の側の放熱フィン片の放熱フィン片に形成された切り欠き部片のそれぞれの内壁面に半田を塗布し、ヒートパイプの放熱部に、半田を塗布した放熱フィン片を半田接合するので、放熱フィンの孔部の内壁部の全域に均一に半田接合を行うことができ、低い熱抵抗で、高い放熱効率を有する放熱フィンとヒートパイプの接合部を得ることができる。
【0026】
更に、この発明によると、それぞれの切り欠き部が相対して位置する放熱フィンと別の放熱フィンを薄板状部材によって形成し、相対した切り欠き部の内壁面に半田を塗布して、ヒートパイプの放熱部に半田接合するので、放熱フィンの切り欠き部の内壁部の全域に均一に半田接合を行うことができるとともに、放熱フィンの厚さ、放熱フィンの配置を自在に行うことができ、設計の自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1(a)は、この発明の放熱フィンとヒートパイプの接合部の1つの態様を説明する斜視図である。図1(b)は、放熱フィンを説明する斜視図である。図1(c)は、半田を塗布した放熱フィンの切り欠き部を説明する拡大断面図である。
【図2】図2(a)は、この発明の放熱フィンとヒートパイプの接合部の他の1つの態様を説明する斜視図である。図2(b)は、放熱フィンを説明する斜視図である。図2(c)は、半田を塗布した放熱フィンの半円筒部を説明する拡大断面図である。
【図3】図3(a)は、この発明の放熱フィンとヒートパイプの接合部の他の1つの態様を説明する斜視図である。図3(b)は、図3(a)の平面図である。
【図4】図4は、図3に示す放熱フィンの部分拡大図である。
【図5】図5(a)は、従来のヒートパイプの放熱部と放熱フィンの接合部を説明する斜視図である。図5(b)は、個々の放熱フィンを示す断面図である。
【図6】図6は、従来のヒートパイプの放熱部と放熱フィンの他の接合部を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の放熱フィンとヒートパイプの接合部およびその接合方法の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0029】
この発明の放熱フィンとヒートパイプの接合部の1つの態様は、ヒートパイプの放熱部と、放熱部の外周面に取り付けられる、内壁面に塗布された半田を備えた切り欠き部が一方の端部に形成された放熱フィンと、内壁面に塗布された半田を備えた別の切り欠き部が一方の端部に形成された別の放熱フィンとを備え、切り欠き部および別の切り欠き部にヒートパイプの放熱部が半田接合されている放熱フィンとヒートパイプの接合部である。
【0030】
図1(a)は、この発明の放熱フィンとヒートパイプの接合部の1つの態様を説明する斜視図である。図1(b)は、放熱フィンを説明する斜視図である。図1(c)は、半田を塗布した放熱フィンの切り欠き部(例えば、孔部)を説明する拡大断面図である。図1(b)および図1(c)に示すように、放熱フィン群3を形成する個々の放熱フィン3−1の一方の端部に、ヒートパイプ2の放熱部7の受け入れ用の切り欠き部4−1を設け、放熱フィン群3を形成する個々の別の放熱フィン3−2の一方の端部に、ヒートパイプ2の放熱部7の受け入れ用の別の切り欠き部4−2を設け、切り欠き部4−1および別の切り欠き部4−2のそれぞれの内壁面5−1、5−2に半田6−1、6−2を塗布する。
【0031】
この態様では、放熱フィンは平らな薄板状の放熱フィンであり、放熱フィン3−1と別の放熱フィン3−2が、孔部で切断した1つの放熱フィンの一方の側の放熱フィン片と他方の側の放熱フィン片であり、切り欠き部4−1と別の切り欠き部4−2が孔部で切断した1つの孔部の一方の側の切り欠き部片と他方の側の切り欠き部片である。
【0032】
上述したように、切り欠き部4−1および別の切り欠き部4−2のそれぞれの内壁面5−1、5−2に半田6−1、6−2を塗布した放熱フィン3−1、3−2を、ヒートパイプ2の放熱部7に装着し、放熱フィンとヒートパイプの放熱部を半田接合する。この態様の切り欠き部は半円形状であるが、ヒートパイプの放熱部の形状に対応した形状を適宜設定することができる。
【0033】
この発明の放熱フィンとヒートパイプの接合部は、上述したように、2つの放熱フィン3−1、3−2が、孔部で切断した1つの放熱フィンの一方の側の放熱フィン片と他方の側の放熱フィン片であり、2つの切り欠き部4−1、4−2が孔部で切断した1つの孔部の一方の側の切り欠き部片と他方の側の切り欠き部片であるので、孔部の内壁面に均一に半田6−1、6−2を塗布することができ、放熱フィンとヒートパイプの放熱部を低い熱抵抗で均一に半田接合することができる。なお、半田は少なくとも孔部の内壁面に均一に塗布すればよい。
【0034】
図2(a)は、この発明の放熱フィンとヒートパイプの接合部の他の1つの態様を説明する斜視図である。図2(b)は、放熱フィンを説明する斜視図である。図2(c)は、半田を塗布した放熱フィンの孔部を説明する拡大断面図である。
【0035】
図2(b)および図2(c)に示すように、放熱フィン群3を形成する個々の放熱フィン3−1の一方の端部に、ヒートパイプ2の放熱部7の受け入れ用の切り欠き部4−1を設け、放熱フィン群3を形成する個々の別の放熱フィン3−2の一方の端部に、ヒートパイプ2の放熱部7の受け入れ用の別の切り欠き部4−2を設け、更に、放熱フィン3−1、3−2の切り欠き部4−1、4−2と同一径の半円筒部8−1、8−2が、それぞれの放熱フィンの平らな面に直角に一体的に形成されて、孔部4−1、4−2の内壁面と半円筒部8−1、8−2の内壁面とが、それぞれ単一の面を形成している。
【0036】
このように形成された切り欠き部4−1、別の切り欠き部4−2と半円筒部8−1、8−2のそれぞれの内壁面5−1、5−2に半田6−1、6−2を塗布する。なお、放熱フィン3−1、3−2の切り欠き部4−1、4−2と、半円筒部8−1、8−2を別々の部材で形成して、それぞれの内壁面が同一面を形成するように、放熱フィン3−1、3−2の表面上に半円筒部8−1、8−2を接合してもよい。
【0037】
この態様においては、放熱フィン3−1、3−2の切り欠き部4−1、4−2に半円筒部8−1、8−2を備えているので、半田を塗布する内壁面5−1、5−2の面積が大きくなり、ヒートパイプの放熱部から放熱フィンへの熱移動面積が拡大して熱効率が向上する。
【0038】
この態様においては、放熱フィンは、薄板状の上面、垂直面および下面からなる断面略凹字形のフィンであり、放熱フィン3−1と別の放熱フィン3−2が、円筒部を備えた断面凹字形のフィンを中央部で切断して形成された1つの放熱フィンの一方の側の放熱フィン片と他方の側の放熱フィン片であり、半円筒部を備えた切り欠き部4−1と別の切り欠き部4−2が中央部で切断した1つの孔部の一方の側の孔部片と他方の側の孔部片である。放熱フィンの形状は上述した形状に限定されることはなく、例えば垂直面と底面からなる断面略L字形であってもよい。
【0039】
この態様の放熱フィンとヒートパイプの接合部においては、半円筒部によって拡大された孔部の内壁面に均一に半田6−1、6−2を塗布することができ、放熱フィンとヒートパイプの放熱部を低い熱抵抗で均一に半田接合することができる。この態様の孔部は半円形状であるが、ヒートパイプの放熱部の形状に対応した形状を適宜設定することができる。
【0040】
なお、図示しないが、図1および図2を参照して説明した複数の並列配置された放熱フィンを例えば金属板に固定して、それぞれ金属板に固定された2個の放熱フィン群を形成して、それぞれの切り欠き部の内壁面に半田を塗布して、ヒートパイプの放熱部に半田接合してもよい。
【0041】
図3(a)は、この発明の放熱フィンとヒートパイプの接合部の他の1つの態様を説明する斜視図である。図3(b)は、図3(a)の平面図である。図4は、図3に示す放熱フィンの部分拡大図である。この態様の接合部においては、放熱フィンと別の放熱フィンが同一形状の薄板状部材からなっており、放熱フィンの切り欠き部と別の放熱フィンの切り欠き部が相対して位置しており、放熱フィンと別の放熱フィンが交互に配置されている。なお、放熱フィンは同一形状に限定されることはない。別の形状の薄板状部材からなっていてもよい。放熱フィンの厚さ、フィンピッチも適宜設定することができる。フィンの間隔は均一でも不均一でもよく、放熱フィンと別の放熱フィンは交互でなくランダムに配置されても良い。
【0042】
即ち、図3(a)および図3(b)に示すように、ヒートパイプ2の放熱部7には、図4(a)に示すような、概ね同一形状の薄板状部材からなる放熱フィン3−1、3−2が交互あるいはランダムに配置される。放熱フィン3−1は、一方の端部に切り欠き部4−1を備えている。切り欠き部4−1の先端部は、ヒートパイプの放熱部の外周面と対応した形状を有している。切り欠き部4−1の奥行きは、ヒートパイプの放熱部に配置する形態に対応して適宜設定することができる。
【0043】
放熱フィン3−1と相対して交互あるいはランダムに配置される放熱フィン3−2は、放熱フィン3−1と相対する端部に切り欠き部4−2を備えている。切り欠き部4−2の先端部は、ヒートパイプ2の放熱部7の外周面と対応した形状を有している。切り欠き部4−2の奥行きは、ヒートパイプ2の放熱部7に配置する形態に対応して適宜設定することができる。
【0044】
このように切り欠き部4−1、4−2が形成された放熱フィン3−1、3−2の切り欠き部の内壁面5−1、5−2に半田を塗布し、ヒートパイプ2の放熱部7と半田接合される。なお、図4(b)に示すように、放熱フィン3−1、3−2の切り欠き部4−1、4−2にそれぞれ半楕円筒部9−1、9−2を設けてもよい。半楕円筒部9−1、9−2は、図2(b)を参照して説明した半円筒部と同様に形成することができる。即ち、放熱フィン3−1、3−2の切り欠き部4−1、4−2と同一断面の半楕円筒部9−1、9−2が、それぞれの放熱フィンの平らな面に直角に一体的に形成されて、切り欠き部4−1、4−2の内壁面と半楕円筒部9−1、9−2の内壁面とが、それぞれ単一の同一面を形成している。
【0045】
このように半楕円筒部を形成することによって、半楕円筒部によって拡大された孔部の内壁面5−1、5−2に均一に半田6−1、6−2を塗布することができ、放熱フィン3−1、3−2とヒートパイプ2の放熱部7を低い熱抵抗で均一に半田接合することができる。この態様によると、放熱フィンの厚さ、放熱フィンの配置を自在に行うことができ、設計の自由度が向上する。
【0046】
上述したように、この発明によると、放熱フィンと、放熱フィンの孔部に挿通されたヒートパイプの放熱部とが低い熱抵抗で接合され、高い放熱効率を有する放熱フィンとヒートパイプの接合部およびその接合方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 放熱フィンとヒートパイプの接合部
2 ヒートパイプ
3 放熱フィン群
3−1、3−2 放熱フィン
4−1、4−2 切り欠き部
5−1、5−2 内壁面
6−1、6−2 半田
7 ヒートパイプの放熱部
8−1、8−2 半円筒部
9−1、9−2 半楕円筒部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱フィン群を形成する個々の放熱フィンの一方の端部に、ヒートパイプ放熱部の受け入れ用の切り欠き部を設け、
放熱フィン群を形成する個々の別の放熱フィンの一方の端部に、ヒートパイプ放熱部の受け入れ用の別の切り欠き部を設け、
前記切り欠き部および前記別の切り欠き部のそれぞれの内壁面に半田を塗布し、
前記切り欠き部および前記別の切り欠き部に前記ヒートパイプの放熱部を接合する、放熱フィンとヒートパイプの接合方法。
【請求項2】
前記放熱フィン群を形成する個々の放熱フィンの一方の端部に設けた切り欠き部に、半円筒部が、それぞれの放熱フィンの平らな面に直角に一体的に形成されて、前記切り欠き部の内壁面と前記半円筒部の内壁面とが同一面を形成し、
前記放熱フィン群を形成する個々の別の放熱フィンの一方の端部に設けた別の切り欠き部に、別の半円筒部が、それぞれの放熱フィンの平らな面に直角に一体的に形成されて、前記別の切り欠き部の内壁面と前記別の半円筒部の内壁面とが同一面を形成し、
前記半円筒部および前記別の半円筒部のそれぞれの内壁面に半田を塗布し、
前記半円筒部および前記別の半円筒部に前記ヒートパイプの放熱部を接合する、放熱フィンとヒートパイプの接合方法。
【請求項3】
前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが、孔部で切断した1つの放熱フィンの一方の側の放熱フィン片と他方の側の放熱フィン片であり、前記切り欠き部と、前記別の切り欠き部が、孔部で切断した1つの孔部の一方の側の切り欠き部片と、他方の側の切り欠き部片であり、前記半円筒部と、前記別の半円筒部が、孔部で切断した1つの孔部の一方の側の半円筒部片と、他方の側の半円筒部片である、請求項1または2に記載の放熱フィンとヒートパイプの接合方法。
【請求項4】
前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが同一形状の薄板状部材からなっており、前記放熱フィンの前記切り欠き部または半円筒部と前記別の放熱フィンの前記切り欠き部または半円筒部が相対して位置しており、前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが交互またはランダムに配置されている、請求項1〜3の何れか1項に記載の放熱フィンとヒートパイプの接合方法。
【請求項5】
前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが異なる形状および/または異なる厚さの薄板状部材からなっており、前記放熱フィンの前記切り欠き部または半円筒部と前記別の放熱フィンの前記切り欠き部または半円筒部が相対して位置しており、前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが交互またはランダムに配置されている、請求項1〜4の何れか1項に記載の放熱フィンとヒートパイプの接合方法。
【請求項6】
ヒートパイプの放熱部と、
前記放熱部の外周面に取り付けられる、内壁面に塗布された半田を備えた切り欠き部が一方の端部に形成された放熱フィンと、内壁面に塗布された半田を備えた別の切り欠き部が一方の端部に形成された別の放熱フィンとを備え、
前記切り欠き部および前記別の切り欠き部に前記ヒートパイプの前記放熱部が半田接合されている放熱フィンとヒートパイプの接合部。
【請求項7】
放熱フィン群を形成する個々の放熱フィンの一方の端部に設けた放熱フィン片の切り欠き部片に、半円筒部が、それぞれの放熱フィン片の平らな面に直角に一体的に形成されて、前記切り欠き部片の内壁面と前記半円筒部の内壁面とが同一面を形成し、
放熱フィン群を形成する個々の別の放熱フィンの一方の端部に設けた放熱フィン片の別の切り欠き部片に、別の半円筒部が、それぞれの放熱フィン片の平らな面に直角に一体的に形成されて、前記別の切り欠き部片の内壁面と前記別の半円筒部の内壁面とが同一面を形成し、
前記半円筒部および前記別の半円筒部のそれぞれの内壁面に半田を塗布し、
前記半円筒部および前記別の半円筒部に前記ヒートパイプの放熱部を接合する、放熱フィンとヒートパイプの接合部。
【請求項8】
前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが、孔部で切断した1つの放熱フィンの一方の側の放熱フィン片と他方の側の放熱フィン片であり、前記切り欠き部と前記別の切り欠き部が孔部で切断した1つの孔部の一方の側の切り欠き部片と他方の側の切り欠き部片である、請求項6または7に記載の放熱フィンとヒートパイプの接合部。
【請求項9】
前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが同一形状の薄板状部材からなっており、前記放熱フィンの前記切り欠き部または半円筒部と前記別の放熱フィンの前記切り欠き部または半円筒部が相対して位置しており、前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが交互またはランダムに配置されている、請求項6〜9の何れか1項に記載の放熱フィンとヒートパイプの接合部。
【請求項10】
前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが異なる形状および/または異なる厚さの薄板状部材からなっており、前記放熱フィンの前記切り欠き部と前記別の放熱フィンの前記切り欠き部が相対して位置しており、前記放熱フィンと前記別の放熱フィンが交互またはランダムに配置されている、請求項6〜9の何れか1項に記載の放熱フィンとヒートパイプの接合部。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−163622(P2011−163622A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25724(P2010−25724)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】