説明

放熱構造

【課題】十分な熱伝達性を確保するとともに、交換作業時における作業性が良好な放熱構造を得る。
【解決手段】発熱体1が取り付けられる冷却用放熱体2に凹状に彫りこまれた伝熱用中間材収納部21を形成して、この伝熱用中間材収納部21内にその凹型形状に合わせて塊状に形成された、冷却用放熱体2よりも大きい熱膨張率を有する伝熱用中間材3を埋め込むように配置し、さらにこの伝熱用中間材3を覆うように接触させて、発熱体1を冷却用放熱体2に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発熱体に対して十分な熱伝達性を確保するとともに、交換作業時における作業性が良好な放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等における小型軽量化や高機能化に伴い、機器内には発熱量の多い電子部品等が高密度に実装されるようになり、その放熱技術が重要となっている。多くの場合、高発熱の電子部品等に放熱器を直接取りつけたり、電子部品等を放熱材としての機能を兼ねた基材に取りつけ、かつこれら取りつけ面における熱伝達率を低下させないよう伝熱シート等を介在させ、両者間での良好な熱伝達性を確保して所望の放熱特性を得ている。また、伝熱シート等に換えて導熱材等を塗布した事例もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−164174号公報(第7ページ、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発熱量の多い部品の一例として、電力増幅等を行うアクティブ素子が上げられる。この種の素子は、例えば小型のユニットとして機能モジュール化されて、厳しい熱環境条件の中での動作を要求されることもあって、比較的交換頻度の高い部品である。このような電子部品を含み高密度に実装する場合にも、例えば上述したように、放熱材、あるいは冷却層としての基板などに、良好な熱伝達性を確保するために伝熱シートや導熱材等を介して取りつける場合が多い。
【0005】
しかしながら、これら伝熱シートや導熱材は、流動性を有していたり、粘性を有しているものが多い。このため、高発熱の電子部品等の取り付けや使用時の姿勢によっては垂れることもある。また、粘性のために、その交換作業時に伝熱シートと対象の電子部品等とが固着して容易に取り外すことができない等、作業性に劣り、交換作業時間やコストに悪影響を及ぼしていた。従って、高発熱部品等に対して十分な熱伝達性を有し、且つその取り付け、取り外し等の交換作業における作業性が良好な放熱構造が望まれていた。
【0006】
本発明は、上述の事情を考慮してなされたものであり、発熱体に対して十分な熱伝達性を確保するとともに、交換作業時における作業性が良好な放熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本実施形態の放熱構造は、発熱体と、この発熱体が取り付けられるとともに、その取り付け接触面に凹状に彫りこまれた伝熱用中間材収納部を有する冷却用放熱体と、前記伝熱用中間材収納部の形状に合致した形状をなし、前記発熱体と前記冷却用放熱体との両者に接触するように前記伝熱用中間材収納部内に配置された伝熱用中間材とを有し、前記伝熱用中間材の熱膨張率は前記冷却用放熱体の熱膨張率よりも大きいことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の放熱構造の一例を示す断面図。
【図2】発熱体1の発熱時の様子をモデル化して示す断面図。
【図3】発熱体1の発熱時の放熱経路をモデル化して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本実施形態の放熱構造について、図1乃至図3を参照して説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本実施形態の放熱構造の一例を示す断面図である。図1に例示したように、この放熱構造は、発熱体1と、この発熱体が固定された冷却用放熱体2と、この冷却用放熱体に設けられた伝熱用中間材収納部21内に配置された伝熱用中間材3から構成されている。発熱体1は、発熱量の大きい、例えば電力増幅用の半導体素子等であり、本実施例ではネジ4により冷却用放熱体2にネジ止めされているものとしている。冷却用放熱体2にはこの発熱体1が取り付けられ、発熱体1からの発熱を熱伝導により放熱し冷却する。また冷却用放熱体2には、発熱体1の取り付け接触面となる部位に断面が凹状に彫りこまれた伝熱用中間材収納部21が形成されている。
【0011】
伝熱用中間材3は、冷却用放熱体2の伝熱用中間材収納部21の凹型形状と対をなす塊状に形成されており、冷却用放熱体2の伝熱用中間材収納部21内に埋め込むように配置される。伝熱用中間材3が冷却用放熱体2の伝熱用中間材収納部21内に配置された状態においては、伝熱用中間材3の表面の高さは、発熱体1の取り付け面となる冷却用放熱体2の表面と凹凸なく一体化して同一の平面をなしている。そして、上記した発熱体1は、伝熱用中間材収納部21に埋め込まれるように配置されたこの伝熱用中間材3を覆うように接触させて冷却用放熱体2に取り付け固定され、また伝熱用中間材3は、発熱体1及び冷却用放熱体2の両者に接触して伝熱用中間材収納部21に埋め込まれる。
【0012】
ここで、塊状に形成された伝熱用中間材3の熱膨張率は、冷却用放熱体2の熱膨張率よりも大きいものとしている。本実施例におけるそれぞれの材料は、冷却用放熱体2は、熱伝導性プラスチックとして軽量化し、また伝熱用中間材3は、それよりも熱膨張率の大きくかつ良好な熱伝達性を有するアルミニウム、またはアルミニウムを含む合金としている。なお、これらの材料については、冷却用放熱体2と伝熱用中間材3との熱膨張率の大小関係が維持できれば他の材料を組み合わせることが可能である。
【0013】
次に、前出の図1、ならびに図2及び図3を参照して上述した本実施形態の放熱構造の作用について放熱経路を中心に説明する。
【0014】
まず、発熱体1は、伝熱用中間材収納部21内に埋め込まれるように配置された伝熱用中間材3を覆うように接触させて冷却用放熱体2に固定されて取り付けられる。発熱体1の取り付け直後など、発熱体1が発熱していない初期状態では、発熱体1と伝熱用中間材3、及び冷却用放熱体2と伝熱用中間材3は、互いに接触する程度で固定されている。なお、この状態においてそれぞれの間にごく微少な隙間が存在していても良い。
【0015】
発熱体1が発熱を開始すると、この熱は発熱体1と伝熱用中間材3との接触面から伝熱用中間材3に伝わり、伝熱用中間材3がしだいに熱せられてその温度が上昇する。このときに冷却用放熱体2にも熱伝導するが、両者の熱膨張率には差異があり、伝熱用中間材3がより大きな熱膨張率を有しているので、伝熱用中間材3の温度上昇に伴って伝熱用中間材3が伝熱用中間材収納部21内で膨張を始める。
【0016】
さらに発熱体1が発熱することによって、伝熱用中間材収納部21内で伝熱用中間材3が膨張を続け、発熱体1及び冷却用放熱体3との間の微少な隙間がしだいに埋まり、伝熱用中間材3は、図2に例示したように、発熱体1及び冷却用放熱体2のそれぞれを強く押しつけるようになる。そして、発熱体1と伝熱用中間材3との間、及び伝熱用中間材3と冷却用放熱体2との間の熱伝達率が良好になって、図3に矢線で例示したように放熱経路が確立され、発熱体1からの発熱は伝熱用中間材3を介して冷却用放熱体2に伝導され放熱される。
【0017】
一方、発熱体1からの発熱が停止すると、伝熱用中間材3は、熱膨張状態からしだいに初期状態に戻りはじめ、伝熱用中間材収納部21内において周囲を強く押しつけていた状態から、やがて発熱体1取り付け直後と同様に、周囲と接触する程度に固定された状態へと戻る。
【0018】
発熱体1の交換の際は、この取り付け時の初期状態、すなわち発熱体1が発熱していない状態において行う。発熱体1を冷却用放熱体2に固定しているのは、本実施例においてはネジ4だけであり、しかも例えば粘性や流動性を有する伝熱シートや導熱材を用いていない。このため、発熱体1の交換作業にあたっては、発熱体1は冷却用放熱体2に固着することなく、発熱体1を冷却用放熱体2に固定しているネジ4を外すだけで冷却用放熱体2から取り外すことが可能である。また、発熱体1の取り付け面となる冷却用放熱体2の表面と伝熱用中間材3の表面とは、凹凸なく同一の平面をなしているので、再取り付けも容易に行うことができる。
【0019】
従って、発熱体1の交換作業において、良好な作業性を確保することができる。特に、発熱量が大きいために比較的交換頻度の高い電子部品、例えば電力増幅用の半導体素子等が高密度に多数個実装された装置等においては、作業時間も大幅に短縮され、装置等の整備に要する時間の短縮にも寄与する。
【0020】
以上説明したように、本実施例においては、発熱体1が取り付けられる冷却用放熱体2に凹状に彫りこまれた伝熱用中間材収納部21を形成して、この伝熱用中間材収納部21内にその凹型形状に合わせて塊状に形成された、冷却用放熱体2よりも大きい熱膨張率を有する伝熱用中間材3を埋め込むように配置し、さらにこの伝熱用中間材3を覆うように接触させて、発熱体1を冷却用放熱体2に取り付けている。そして、発熱体1が発熱すると、この熱による伝熱用中間材3の温度上昇によって伝熱用中間材3が膨張し、発熱体1から冷却用放熱体2への放熱経路が確立されて、発熱体1を冷却するための十分な熱伝達性を確保している。
【0021】
一方、発熱体1と冷却用放熱体2、及び伝熱用中間材3との間には、例えば伝熱シートや導熱材等を用いていないので、発熱体1の交換作業においては、発熱体1と冷却用放熱体2、及び伝熱用中間材3とは固着することなく、良好な作業性のもとで容易かつ短時間で作業を実施することができる。これにより、本実施例によれば、発熱体に対して十分な熱伝達性を確保するとともに、交換作業時における作業性が良好な放熱構造を得ることができる。加えて、本実施例においては、冷却用放熱体2を熱伝導性プラスチックとし、放熱構造全体を軽量化されたものとしている。
【0022】
なお、本実施形態は、上述したそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 発熱体
2 冷却用放熱体
3 伝熱用中間材
4 ネジ
21 伝熱用中間材収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と、
この発熱体が取り付けられるとともに、その取り付け接触面に凹状に彫りこまれた伝熱用中間材収納部を有する冷却用放熱体と、
前記伝熱用中間材収納部の形状に合致した形状をなし、前記発熱体と前記冷却用放熱体との両者に接触するように前記伝熱用中間材収納部内に配置された伝熱用中間材と
を有し、
前記伝熱用中間材の熱膨張率は前記冷却用放熱体の熱膨張率よりも大きいことを特徴とする放熱構造。
【請求項2】
前記伝熱用中間材はアルミニウムまたはこれを含む合金とし、前記冷却用放熱体は熱伝導性プラスチックとしたことを特徴とする請求項1に記載の放熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−134255(P2012−134255A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283753(P2010−283753)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】