説明

放送受信装置および放送受信制御プログラム

【課題】それぞれの装置に装着した放送再生用カードを他装置と共有することのできる放送受信装置および放送受信制御プログラムを得ること。
【解決手段】第1および第2のデジタル放送受信装置2011、2012は、それぞれのカードスロット部2221、2222に放送再生用カード2131、2132を装着している。たとえば第1のデジタル放送受信装置2011は、情報通信路202を経て第2のデジタル放送受信装置2012と通信を行うことで、両放送再生用カード2131、2132の視聴契約の範囲で視聴する番組を選択できる。視聴する番組が第1および第2のデジタル放送受信装置2011、2012間で競合した場合には優先順位による調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送受信装置および放送受信制御プログラムに係わり、特別のカードを使用することを条件として、スクランブルを解除して視聴を可能にする限定受信方式の放送受信装置および放送受信制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル放送を受信するデジタル放送受信装置に特別のIC(Integrated Circuit)カード等のカードを装着させることで、正規のデジタル放送受信装置のみを使用可能にするシステムが広く導入されている。著作権保護の観点からとも言われており、B−CAS(BS-Conditional Access System)カードがその例である。本明細書では、このような限定受信方式のためのカードを便宜的に放送再生用カードと呼ぶことにする。
【0003】
デジタル放送への移行に伴って、各家庭ではテレビジョン受信機や録画装置のような複数のデジタル放送受信装置が使用されるようになっている。これらのデジタル放送受信装置は、放送再生用カードを装着して、視聴する番組データのスクランブル(scramble)の解除あるいは暗号の解除を行うことが必要となっている。これは、たとえば有料放送やある種の公共放送を正規のデジタル放送受信装置を使用して受信することを確保するためのものである。
【0004】
したがって、たとえばある家庭でテレビジョン受信機と録画装置といった2台のデジタル放送受信装置を所有しているような場合、それぞれのデジタル放送受信装置ごとに視聴サービスに係わる放送再生用カードを個別に装着して使用してもよいし、1枚の放送再生用カードを使用対象のデジタル放送受信装置にその都度、装着して、その視聴サービスを受けるようにしてもよい。
【0005】
ところが、それぞれのデジタル放送受信装置ごとに1枚ずつ放送再生用カードを用意するようにすると、その家庭でデジタル放送受信装置を新しく購入するたびに、視聴サービス用の放送再生用カードを所持するための視聴契約を繰り返し行う必要があり、煩雑であり、また経済的な問題となる場合もある。このような問題を解消するために、1枚の放送再生用カードを使用機器ごとに「たらい回し」にすることも可能である。ところが、この後者の場合にはデジタル放送受信装置の使用を代えるたびに、1枚の放送再生用カードを装置にセットし直す手間が必要になる。この作業は面倒であるだけでなく、放送再生用カードを移動途中で紛失させたり、破損させる危険性もある。放送再生用カードが紛失したり、破損すると、再発行までデジタル放送受信装置を番組の視聴のために使用できなくなるだけでなく、カードの再発行についての経済的な負担が掛かることになる。
【0006】
そこで、放送再生用カードを管理サーバ側に共有物としてセットしておくことで、それぞれのデジタル放送受信装置でデジタル放送を視聴できるようにしたデジタル放送受信システムが第1の提案として提示されている(たとえば特許文献1参照)。この第1の提案では、複数の視聴契約に基づく複数のデジタル放送受信装置を使用する場合に、相互に視聴契約情報を融通するようにして、視聴者の使用状況に応じて適切な視聴環境を実現する。
【0007】
図11は、この第1の提案のデジタル放送受信システムの概要を表わしたものである。デジタル放送受信システム100を構成する第1〜第3のデジタル放送受信装置101〜103は、視聴契約情報管理サーバ104と共に、LAN(Local Area Network)を構成する通信ケーブル105に接続されている。視聴契約情報管理サーバ104には、複数のIC(Integrated Circuit)カードスロット106〜108が配置されており、ICカードからなる第1〜第3の放送再生用カード111〜113をセットするようになっている。
【0008】
視聴契約情報管理サーバ104は、第1〜第3のデジタル放送受信装置101〜103のいずれかから番組の視聴の要求を受けると、第1〜第3の放送再生用カード111〜113のそれぞれ契約した放送局で視聴する番組が重複しないように第1〜第3の放送再生用カード111〜113を選択する。そして、第1〜第3のデジタル放送受信装置101〜103のうちの視聴の要求があった装置に対して、該当する番組のスクランブルの解除を行うようになっている。同一の番組について、第1〜第3のデジタル放送受信装置101〜103のうちの複数から番組の視聴の要求があった場合には、第1〜第3の放送再生用カード111〜113が同一時間帯で全体として許可される数だけの番組の視聴が可能になり、これらについてスクランブルの解除が行われる。このようにして、第1〜第3の放送再生用カード111〜113を共有する形で第1〜第3のデジタル放送受信装置101〜103は番組の視聴が可能になる。
【0009】
ところが、この第1の提案では、視聴契約情報管理サーバ104という特別の装置が必要になる。しかも、この視聴契約情報管理サーバ104にすべての放送再生用カード111〜113をセットするようにしているので、放送再生用カードの数が多くなっていくと、これに対応させて視聴契約情報管理サーバ104を大型のものに交換するといった手間が必要となる。
【0010】
一方、複数のデジタル放送受信装置のうちの1つの装置が放送再生用カードを装着するようにし、他のデジタル放送受信装置も装置間の通信によってこの放送再生用カードを共有することが第2の提案として提案されている(たとえば特許文献2参照)。この第2の提案によれば、第1の提案で必要とされた視聴契約情報管理サーバ104を不要にすることができる。
【特許文献1】特開2002−064798号公報(第0052段落〜第0058段落、図1)
【特許文献2】特開2006−148481号公報(第0020段落、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この第2の提案では、複数のデジタル放送受信装置が1つの放送再生用カードを共有するようになっている。ところが、この第2の提案によれば、放送再生用カードをなんら具備していないデジタル放送受信装置でも放送の受信ができてしまい、製品の購入時に放送再生用カードが備えられていない規格外のデジタル放送受信装置に受信を許すことになるという問題がある。また、それぞれ異なった番組(放送局)に対して視聴契約を行っている複数の放送再生用カードをユーザが所持している場合には、番組の視聴内容に応じてこれらの放送再生用カードを差し替える必要が生じる。この場合には、差し替えに起因する放送再生用カードの破損や紛失の恐れがある。
【0012】
そこで本発明の目的は、それぞれの装置に装着した放送再生用カードを他装置と共有することのできる放送受信装置および放送受信制御プログラムを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明では、(イ)再生可能な放送の範囲をカード単位で特定するための放送再生用カードのいずれかを任意で選択して装着するために自装置に配置された放送再生用カード装着手段と、(ロ)この放送再生用カード装着手段に放送再生用カードが装着されているかどうかを判別する自装置放送再生用カード装着有無判別手段と、(ハ)伝送路を介して接続された1または複数の他装置に放送再生用カードのいずれかが装着されているかどうかをそれぞれ判別する他装置放送再生用カード装着有無判別手段と、(ニ)自装置放送再生用カード装着有無判別手段が自装置に放送再生用カードが装着されていると判別した状態で他装置放送再生用カード装着有無判別手段が前記した他装置の少なくとも1つについて放送再生用カードの装着を判別したとき、自装置および装着を判別された全部の他装置の放送再生用カードの特定した放送の全部を再生対象として選択可能にする放送選択手段とを放送受信装置に具備させる。
【0014】
すなわち本発明では、放送受信装置が放送再生用カード装着手段を備えており、ここに再生可能な放送の範囲をカード単位で特定するための放送再生用カードのいずれかを放送の選局のために装着するようにしている。この放送受信装置は伝送路を介して1または複数の他の放送受信装置と接続可能になっている。そして、接続された他の放送受信装置が同様に放送再生のために放送再生用カードのいずれかを装着しているかどうかを他装置放送再生用カード装着有無判別手段で判別するようになっている。自装置放送再生用カード装着有無判別手段が自装置に放送再生用カードが装着されていると判別したときで他装置放送再生用カード装着有無判別手段が前記した他装置の少なくとも1つについて放送再生用カードの装着を判別したときには、放送選択手段が自装置および装着を判別された全部の他装置の放送再生用カードの特定した放送の全部を再生対象として選択可能にするようにしている。これにより、放送再生用カードの差し替えを行うことなく、視聴契約の異なる放送再生用カードを共有することによる視聴サービスの拡大が可能になる。
【0015】
ただし、放送再生用カードを共有した場合であっても、他装置の放送再生用カードを伝送路を介して接続されたこれら他装置のいずれかが使用していれば直ちには使用することができない。このような場合には、他装置使用状況判別手段が判別した前記した他装置と自装置の放送の再生に関する優先順位を優先順位判別手段で判別して、自装置の方が優先順位が高いと判別したときのみ、その選択した放送を放送再生手段が再生することになる。
【0016】
請求項2記載の発明では、(イ)再生可能な放送の範囲をカード単位で特定するための放送再生用カードのいずれかを任意で選択して装着するために自装置に配置された放送再生用カード装着手段と、(ロ)この放送再生用カード装着手段に放送再生用カードが装着されているかどうかを判別する自装置放送再生用カード装着有無判別手段と、(ハ)伝送路を介して接続された1または複数の他装置に放送再生用カードのいずれかが装着されているかどうかを判別する他装置放送再生用カード装着有無判別手段と、(ニ)自装置放送再生用カード装着有無判別手段が自装置に放送再生用カードが装着されていると判別した状態で他装置放送再生用カード装着有無判別手段が他装置の少なくとも1つについて放送再生用カードの装着を判別したとき、自装置あるいは前記した他装置に装着されている放送再生用カードが伝送路を介して接続された1または複数の他装置のいずれかによって使用されているかどうかを判別する他装置使用状況判別手段と、(ホ)この他装置使用状況判別手段が伝送路を介して接続された1または複数の他装置のいずれかが放送再生用カードを使用していると判別したとき、自装置と使用していると判別されたその他装置の放送の再生に関する優先順位を判別する優先順位判別手段と、(へ)この優先順位判別手段が自装置の方が優先順位が高いと判別したとき、それぞれの放送再生用カードの特定した放送の全部を再生対象として選択可能にし、前記したその他装置の方が優先順位が高いと判別したとき、前記したその他装置の放送再生用カードの特定した放送分を除いてこれらの放送再生用カードによって特定した放送の全部を再生対象として選択可能にする放送選択手段とを放送受信装置に具備させる。
【0017】
すなわち本発明では、放送受信装置が放送再生用カード装着手段を備えており、ここに再生可能な放送の範囲をカード単位で特定するための放送再生用カードのいずれかを放送の選局のために装着するようにしている。この放送受信装置は伝送路を介して1または複数の他の放送受信装置と接続可能になっている。そして、接続された他の放送受信装置が同様に放送の選局のために放送再生用カードのいずれかを装着しているかどうかを他装置放送再生用カード装着有無判別手段で判別するようになっている。自装置放送再生用カード装着有無判別手段が自装置に放送再生用カードが装着されていると判別した状態で他装置放送再生用カード装着有無判別手段が他装置の少なくとも1つについて放送再生用カードの装着を判別したとき、他装置使用状況判別手段は、自装置あるいは他装置に装着されている放送再生用カードが伝送路を介して接続された1または複数の他装置のいずれかによって使用されているかどうかを判別する。自装置の放送再生用カードも判別の対象としたのは、他装置がこれを使用している可能性があるからである。この他装置使用状況判別手段が伝送路を介して接続された1または複数の他装置のいずれかが放送再生用カードを使用していると判別したときには、優先順位判別手段が自装置と使用していると判別されたその他装置の放送の再生に関する優先順位を判別する。そして、優先順位判別手段が自装置の方が優先順位が高いと判別したとき、それぞれの放送再生用カードの特定した放送の全部を再生対象として選択可能にする。また、前記したその他装置の方が優先順位が高いと判別したときには、前記したその他装置の放送再生用カードの特定した放送分を除いてこれらの放送再生用カードによって特定した放送の全部を再生対象として選択可能にするようにしている。これにより、放送再生用カードの差し替えを行うことなく、視聴契約の異なる放送再生用カードを共有することによる視聴サービスの拡大が可能になる。しかも、他装置との関係で自装置が選択できない再生対象は除外される。
【0018】
請求項4記載の発明では、再生可能な放送の範囲をカード単位で特定するための放送再生用カードのいずれかを任意で選択して装着するための放送再生用カード装着手段を備えた放送受信装置のコンピュータに、放送受信制御プログラムとして(イ)自装置の放送再生用カード装着手段に放送再生用カードが装着されているかどうかを判別する自装置放送再生用カード装着有無判別処理と、(ロ)伝送路を介して接続された1または複数の他装置に放送再生用カードのいずれかが装着されているかどうかをそれぞれ判別する他装置放送再生用カード装着有無判別処理と、(ハ)自装置放送再生用カード装着有無判別処理で自装置に放送再生用カードが装着されていると判別した状態で他装置放送再生用カード装着有無判別処理で前記した他装置の少なくとも1つについて放送再生用カードの装着を判別したとき、自装置および装着を判別された全部の他装置の放送再生用カードの特定した放送の全部を再生対象として選択可能にする放送選択処理とを実行させることを特徴としている。
【0019】
すなわち本発明では、まず自装置の放送再生用カード装着手段に放送再生用カードが放送再生のために装着されているかどうかを自装置放送再生用カード装着有無判別処理で判別し、装着されている場合には、次に、伝送路を介して接続された1または複数の他装置に放送再生のために放送再生用カードのいずれかが装着されているかどうかを他装置放送再生用カード装着有無判別処理で判別する。前記した他装置の少なくとも1つについて装着されている場合には、放送選択処理で自装置および装着を判別された全部の他装置の放送再生用カードの特定した放送の全部を再生対象として選択可能にするようにしている。これにより、放送再生用カードの差し替えを行うことなく、視聴契約の異なる放送再生用カードを共有することによる視聴サービスの拡大が可能になる。
【0020】
ただし、放送再生用カードを共有した場合であっても、他装置の放送再生用カードを伝送路を介して接続されたこれら他装置のいずれかが使用していれば直ちには使用することができない。このような場合には、他装置使用状況判別処理で判別した前記した他装置と自装置の放送の再生に関する優先順位を優先順位判別処理で判別して、自装置の方が優先順位が高いと判別したときのみ、その選択した放送を放送再生手段が再生することになる。
【0021】
請求項5記載の発明では、再生可能な放送の範囲をカード単位で特定するための放送再生用カードのいずれかを任意で選択して装着するための放送再生用カード装着手段を備えた放送受信装置のコンピュータに、放送受信制御プログラムとして(イ)自装置の放送再生用カード装着手段に放送再生用カードが装着されているかどうかを判別する自装置放送再生用カード装着有無判別処理と、(ロ)伝送路を介して接続された1または複数の他装置に放送再生用カードのいずれかが装着されているかどうかを判別する他装置放送再生用カード装着有無判別処理と、(ハ)自装置放送再生用カード装着有無判別処理で自装置に放送再生用カードが装着されていると判別した状態で他装置放送再生用カード装着有無判別処理によって他装置の少なくとも1つについて放送再生用カードの装着を判別したとき、自装置あるいは前記他装置に装着されている放送再生用カードが前記伝送路を介して接続された1または複数の他装置のいずれかによって使用されているかどうかを判別する他装置使用状況判別処理と、(ニ)この他装置使用状況判別処理で伝送路を介して接続された1または複数の他装置のいずれかが放送再生用カードを使用していると判別したとき、自装置と使用していると判別されたその他装置の放送の再生に関する優先順位を判別する優先順位判別処理と、(ホ)この優先順位判別処理で自装置の方が優先順位が高いと判別したとき、それぞれの放送再生用カードの特定した放送の全部を再生対象として選択可能にし、前記したその他装置の方が優先順位が高いと判別したとき、前記したその他装置の放送再生用カードの特定した放送分を除いてこれらの放送再生用カードによって特定した放送の全部を再生対象として選択可能にする放送選択処理とを実行させることを特徴としている。
【0022】
すなわち本発明では、まず自装置の放送再生用カード装着手段に放送再生用カードが放送の選局のために装着されているかどうかを自装置放送再生用カード装着有無判別処理で判別し、装着されている場合には、次に、伝送路を介して接続された1または複数の他装置に放送の選局のために放送再生用カードのいずれかが装着されているかどうかを他装置放送再生用カード装着有無判別処理で判別する。他装置の少なくとも1つについて放送再生用カードの装着を判別したとき、自装置あるいは他装置に装着されている放送再生用カードが伝送路を介して接続された1または複数の他装置のいずれかによって使用されているかどうかを他装置使用状況判別処理で判別し、使用していると判別したとき、自装置と使用していると判別されたその他装置の放送の再生に関する優先順位を優先順位判別処理によって判別することにしている。放送選択処理では、優先順位判別処理で自装置の方が優先順位が高いと判別したとき、それぞれの放送再生用カードの特定した放送の全部を再生対象として選択可能にし、前記したその他装置の方が優先順位が高いと判別したとき、前記したその他装置の放送再生用カードの特定した放送分を除いてこれらの放送再生用カードによって特定した放送の全部を再生対象として選択可能にする。これにより、放送再生用カードの差し替えを行うことなく、視聴契約の異なる放送再生用カードを共有することによる視聴サービスの拡大が可能になる。しかも、他装置との関係で自装置が選択できない再生対象は除外される。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明によれば、複数の放送受信装置がそれぞれの装置に放送再生の条件として放送再生用カードを装着させた状態で、これらの放送再生用カードによって得られる視聴サービスを共有することができる。したがって、装置間でのICカード等の放送再生用カードの入れ替えといった面倒な作業を省略することができ、放送再生用カードの破損や紛失を防止することができる。また、新たに追加した放送受信装置も視聴契約を追加することなく、既存の全放送再生用カードによるサービスを受けることができる。更に、放送再生用カードに適合する規格の放送受信装置にのみ放送の受信を許すことができる。
【0024】
更に、本発明ではいずれの場合であっても、複数の放送再生用カードを特別の装置に物理的に集中させてそれぞれの放送受信装置を個別に管理するものではなく、それぞれの放送受信装置が再生可能な放送の範囲を分散管理することにしている。したがって、図11に示した視聴契約情報管理サーバのような特別の装置が不要であり、システムを安価に構築することができる。また、システムが何らかの障害で一時的に運用できなくなったような場合にも、各放送受信装置は自装置に放送再生用カードをそれぞれ装着しているので、その再生可能な放送の範囲で最低限の受信環境を確保することができる。このため、災害時等の異常時においても放送再生を確保する強固な通信システムとして機能することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下実施例につき本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、本実施例のデジタル放送受信システムの回路構成の概要を表わしたものである。このデジタル放送受信システム200は、第1および第2のデジタル放送受信装置2011、2012と、これらの間で情報通信を行うための情報通信路202によって構成されている。第1のデジタル放送受信装置2011は、メイン制御部2111を備えている。メイン制御部2111は、図示しないがCPU(Central Processing Unit)と、このCPUが実行する制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)や作業用メモリとしてのRAM(Random Access Memory)等の記憶媒体を備えている。メイン制御部2111は、カード情報の読み取りを行うカードリーダ部2121を接続している。カードリーダ部2121には、ICカードとしての第1の放送再生用カード2131が装着されている。この第1の放送再生用カード2131は、番組データのスクランブルを解除するためのものであり、前記したB−CASカードが代表的なものである。
【0027】
第2のデジタル放送受信装置2012は、第1のデジタル放送受信装置2011と要部が基本的に同一の構成となっている。したがって、これらの各部品については、部品を表わす符号の添え字の「1」の代わりに「2」を付している。図2以降についても同様である。また、第2の放送再生用カード2132についても受信する放送の範囲は異なるが、その構成は第1の放送再生用カード2131と同様である。本実施例で情報通信路202は、通信ケーブルを使用している。有線による通信の代わりに無線による通信も可能である。
【0028】
図2は、第1および第2のデジタル放送受信装置の構成を具体的に表わしたものである。ここでも第1のデジタル放送受信装置2011を中心に説明を行う。カードリーダ部2121は、ICカード制御部2211とカードスロット部2221から構成されている。ICカード制御部2211には、ICカード用信号の入出力を行うICカード入出力I/F(インターフェイス)部2231と制御通信部2241が配置されている。ICカード制御部2211は、メイン制御部2111と同様に図示しないがCPUと、このCPUが実行する制御プログラムを格納したROMや作業用メモリとしてのRAM等の記憶媒体を備えている。
【0029】
第1のデジタル放送受信装置2011の内部で、メイン制御部2111と第1の放送再生用カード2131は、ICカード制御部2211とカードスロット部2221を介して第1のICカード情報23111の通信を行うようになっている。同様に、第2のデジタル放送受信装置2012の内部で、メイン制御部2112と第2の放送再生用カード2132は、ICカード制御部2212とカードスロット部2222を介して第2のICカード情報23122の通信を行うようになっている。
【0030】
また、第1のデジタル放送受信装置2011のメイン制御部2111と第2のデジタル放送受信装置2012に装着されている第2の放送再生用カード2132は、カードリーダ部2121内の制御通信部2241およびICカード入出力I/F部2231と、情報通信路202、カードリーダ部2122内のICカード入出力I/F部2232および制御通信部2242と、カードスロット部2222を介して第1第2のICカード情報23112の通信を行うようになっている。同様に、第2のデジタル放送受信装置2012のメイン制御部2112と第1のデジタル放送受信装置2011に装着されている第1の放送再生用カード2131は、カードリーダ部2122内の制御通信部2242およびICカード入出力I/F部2232と、情報通信路202、カードリーダ部2121内のICカード入出力I/F部2231および制御通信部2241と、カードスロット部2221を介して第2第1のICカード情報23121の通信を行うようになっている。
【0031】
図3は、本実施例のデジタル放送受信システムでのデジタル放送受信装置同士の接続の様子を表わしたものである。第1および第2のデジタル放送受信装置2011、2012は、それぞれ液晶ディスプレイ2411、2412を備えており、装置間は通信ケーブルによる情報通信路202で接続されている。第1のデジタル放送受信装置2011の方には、第1の放送再生用カード2131が装着されており、第2のデジタル放送受信装置2012の方には、第2の放送再生用カード2132が装着されている。
【0032】
これにより、第1のデジタル放送受信装置2011で第1の放送再生用カード2131を使用してこれに対応する範囲の放送局の番組を受信することができるだけでなく、第2の放送再生用カード2132を使用してこれに対応する範囲の放送局の番組を受信することができる。第2のデジタル放送受信装置2012でも、第2の放送再生用カード2132を使用してこれに対応する範囲の放送局の番組を受信することができるだけでなく、第1の放送再生用カード2131を使用してこれに対応する範囲の放送局の番組を受信することができる。
【0033】
図4は、第1のデジタル放送受信装置の番組選択処理の流れを表わしたものである。第2のデジタル放送受信装置2012側の処理も第1のデジタル放送受信装置2011と基本的に同一なので、その図示および説明は省略する。図2および図3と共に説明する。
【0034】
ユーザが第1のデジタル放送受信装置2011の電源を投入して、デジタル放送についての番組視聴モードを選択したとする(ステップS301:Y)。なお、これ以外のモードが選択されたときには(ステップS301:N)、選択された他のモードの実行処理が行われる。なお、この場合には第1および第2の放送再生用カード2131の使用が問題となることはないので、その説明は省略する。デジタル放送についての番組視聴モードが選択されると(ステップS301:Y)、メイン制御部2111はカードスロット部2221に第1の放送再生用カード2131が装着されているかどうかを判断する(ステップS302)。本実施例のデジタル放送受信システム200では、第1のデジタル放送受信装置2011自体が放送再生用カード213を装着していない場合(N)、デジタル放送についての番組を視聴することができない。したがって、この場合には第1のデジタル放送受信装置2011の液晶ディスプレイ2411に、どの番組も視聴が不可能であることが表示されて(ステップS303)、処理が終了する(エンド)。この場合、購入したディスクで映画を見る等の他のモードへの移行が催促されるか、第1の放送再生用カード2131の装着が催促されることになる。
【0035】
第1のデジタル放送受信装置2011に第1の放送再生用カード2131が正しく装着されていた場合(ステップS302:Y)、メイン制御部2111は制御通信部2241を用いて、他の装置(ここでは、第2のデジタル放送受信装置2012)と通信が可能であるかどうかを判別する(ステップS304)。第2のデジタル放送受信装置2012と通信が可能でない場合には(N)、第1のデジタル放送受信装置2011である自装置の第1の放送再生用カード2131によって視聴できる番組(放送局)に対して選択を可とする表示がチューナ等の所定位置に行われる(ステップS305)。
【0036】
一方、他の装置としての第2のデジタル放送受信装置2012との通信が可能な場合(ステップS304:Y)、メイン制御部2111は第1第2のICカード情報23112の通信によって、第2のデジタル放送受信装置2012のカードスロット部2222に第2の放送再生用カード2132が装着されているかどうかを判別する(ステップS306)。第2の放送再生用カード2132が装着されていない場合には(N)、これを活用とすることができないので、ステップS305に処理が移行する。
【0037】
第2の放送再生用カード2132が装着されている場合には(ステップS306:Y)、これが第2のデジタル放送受信装置2012で使用中であるかどうかの判別が行われる(ステップS307)。第1のデジタル放送受信装置2011および第2のデジタル放送受信装置2012は、それぞれ自装置の放送再生用カード2131あるいは2132が使用中であるか否かをフラグのオン・オフによって管理している。第2のデジタル放送受信装置2012が第2の放送再生用カード2132を使用していない場合、すなわちそのフラグがオフとなっている場合(ステップS307:N)、第1のデジタル放送受信装置2011はこれを使用することができる。したがって、この場合には第1の放送再生用カード2131と第2の放送再生用カード2132の双方によって視聴できる番組(放送局)に対して選択を可とする表示が第1のデジタル放送受信装置2011のチューナ等の所定位置に対して行われることになる(ステップS308)。
【0038】
これに対して、第2のデジタル放送受信装置2012が第2の放送再生用カード2132を使用していた場合には(ステップS307:Y)、この第2のデジタル放送受信装置2012に対して通信を行って(ステップS309)、第1のデジタル放送受信装置2011が第2の放送再生用カード2132を使用できるかどうかを判別する(ステップS310)。本実施例では、両装置2011、2012に事前に設定されている優先順位を比較することによってこの判別を行うようにしている。
【0039】
図5は、ステップS309の通信処理を具体的に表わしたものである。まず、第1のデジタル放送受信装置2011は、第2の放送再生用カード2132の使用についての第2のデジタル放送受信装置2012側で設定している優先度の取得を要求する(ステップS321)。第2のデジタル放送受信装置2012のメイン制御部2112はこの要求を受け取ると、図示しない不揮発性メモリにユーザが書き込んでいる第2のデジタル放送受信装置2012用の優先順位を読み出して第1のデジタル放送受信装置2011へ返信する。したがって、第1のデジタル放送受信装置2011は第2のデジタル放送受信装置2012からこの優先順位を受信すると(ステップS322:Y)、自装置の不揮発性メモリにユーザが書き込んでいる第1のデジタル放送受信装置2011用の優先順位を読み出して両者を比較する(ステップS323)。
【0040】
なお、両装置2011、2012に設定されている優先順位は、いつでもユーザあるはシステムの管理者が変更することができるようになっている。優先順位は数値で表わされ、たとえば5段階のうちのいずれかの値を装置ごとに重複しないように採用している。ここでは、数値が大きいほど優先順位が高いものとし、第1のデジタル放送受信装置2011の優先順位は「4」であり、第2のデジタル放送受信装置2012の優先順位は「2」であるものとする。この例の場合、第1のデジタル放送受信装置2011の方が第2のデジタル放送受信装置2012よりも優先順位が高いことになる。
【0041】
図4に戻って説明を続ける。前記した例では第1のデジタル放送受信装置2011が第2のデジタル放送受信装置2012の第2の放送再生用カード2132を使用できることになる。したがって、ステップS310の判別は、他装置の番組を選択可能ということになる。この場合には(Y)、ステップS308に進んで、第1の放送再生用カード2131と第2の放送再生用カード2132の双方によって視聴できる番組(放送局)に対して選択を可とする表示が第1のデジタル放送受信装置2011のチューナ等の所定位置に対して行われる。
【0042】
ステップS310で他装置の番組を選択不可能であると判別された場合には(N)、ステップS305に進んで第1の放送再生用カード2131によって視聴できる番組(放送局)に対して選択を可とする表示がチューナ等の所定位置に行われることになる。
【0043】
このように実施例では、第1の放送再生用カード2131を装着した第1のデジタル放送受信装置2011を番組視聴モードに設定すると、情報通信路202を介して接続された第2のデジタル放送受信装置2012の第2の放送再生用カード2132との関係で選択できる番組(あるいは放送局)が表示されることになる。したがって、ユーザは、状況によって、選択可とされた番組の中から所望のものを選択して視聴することになる。
【0044】
図6は、第1のデジタル放送受信装置側でユーザが番組を選択した場合の処理の流れを表わしたものである。第2のデジタル放送受信装置2012側の処理も第1のデジタル放送受信装置2011と基本的に同一なので、その図示および説明は省略する。図2および図3と共に説明する。
【0045】
第1のデジタル放送受信装置2011側でユーザが第1の放送再生用カード2131によって選択可とされた番組の1つを選択した場合には(ステップS341:Y)、その番組の視聴が開始され(ステップS342)、自装置カードとしての第1の放送再生用カード2131について使用中を示すフラグがオンとなる(ステップS343)。
【0046】
第2のデジタル放送受信装置2012側のユーザが第1の放送再生用カード2131によって選択可とされた番組の1つを選択した場合には、第1のデジタル放送受信装置2011に対して第1の放送再生用カード2131の使用要求が送られてくることになる。この使用要求を第1のデジタル放送受信装置2011側が受信すると(ステップS344:Y)、第1の放送再生用カード2131が第1のデジタル放送受信装置2011側で使用中であるかどうかの判別が行われる(ステップS345)。使用中であるとは、第1のデジタル放送受信装置2011側が第1の放送再生用カード2131を使用して番組を見ていることを意味する。
【0047】
第1の放送再生用カード2131を第1のデジタル放送受信装置2011側が使用中でない場合には(ステップS345:N)、第2のデジタル放送受信装置2012は第1の放送再生用カード2131の使用が可能である。そこで使用を確保するために、ステップS343に進んで、第1の放送再生用カード2131についての使用中を示すフラグをオンにする。たとえば、第1のデジタル放送受信装置2011側が第2の放送再生用カード2132を使用して番組を見ている場合も、これに該当する。
【0048】
これに対して、第1のデジタル放送受信装置2011側が第1の放送再生用カード2131を使用中に第2のデジタル放送受信装置2012からこの第1の放送再生用カード2131の使用を要求してくる場合があり得る。これは、優先順位が第1のデジタル放送受信装置2011よりも第2のデジタル放送受信装置2012の方が高いような場合である。この状況で、第1のデジタル放送受信装置2011側のユーザは第1の放送再生用カード2131を使用して番組を視聴している(ステップS345:Y)。したがって、この例の場合には第1のデジタル放送受信装置2011側の液晶ディスプレイ2411に、「優先順位の高い装置側が視聴しますので、番組の受信を終了します。」といったような表示が行われて(ステップS346)、その番組の視聴が終了する(エンド)。これは、第1のデジタル放送受信装置2011と第2のデジタル放送受信装置2012の双方で第1の放送再生用カード2131を同時に使用して番組の視聴を行うことが禁じられているからである。
【0049】
これとは逆に、第1のデジタル放送受信装置2011側が図4のステップS308で第2の放送再生用カード2132によって視聴できる番組を選択した場合を考える(ステップS347:Y)。この場合、第1のデジタル放送受信装置2011は第2のデジタル放送受信装置2012に対して第2の放送再生用カード2132の使用要求を送信する(ステップS348)。第2のデジタル放送受信装置2012は前記した「優先順位の高い装置側が視聴しますので、番組の受信を終了します。」といったような表示を行って、第2の放送再生用カード2132の使用要求に応答を送信する。第1のデジタル放送受信装置2011はこの応答を受信すると(ステップS349:Y)、第2の放送再生用カード2132を使用した番組の視聴を開始する(ステップS350)。
【0050】
以上説明した実施例では、第1のデジタル放送受信装置2011と第2のデジタル放送受信装置2012がそれぞれの契約に基づいた放送再生用カード2131、2132を装着したままの状態であり、これらを入れ替える必要がない。したがって、入れ替えに起因する放送再生用カード2131、2132の破損や紛失を防止することができる。また、サーバ等の統括装置を使用していないので、システム構成が単純となる。
【0051】
また、番組あるいは放送局についての競合が生じたときに優先順位によって視聴できるデジタル放送受信装置を決定することにしたので、ユーザ間で調整を図るよりも迅速な対応が可能となる。また、優先順位の高いデジタル放送受信装置側に録画装置等の付属機器を集中的に備えるようにしておけば、他の装置で契約した番組あっても必要なときには優先して受信し付属機器を活用することができる。
【0052】
なお、以上説明した実施例では、図4のステップS302で第1のデジタル放送受信装置2011のカードスロット部2221に第1の放送再生用カード2131(あるいは第2の放送再生用カード2132)が装着されていないとき、いずれの番組も視聴ができないものとした(ステップS303)。しかしながら、たとえば公共放送やコマーシャルやショッピング番組のみを放送する専門チャネルが、これらの放送再生用カード2131、2132の装着の有無に係わらず、これらの番組(あるいは放送局)にスクランブルを掛けず視聴を許可している場合には、これらの番組について視聴を可とする表示を行ってもよいことは当然である。
【0053】
<発明の第1の変形例>
【0054】
図7は、本発明の第1の変形例によるデジタル放送受信システムを表わしたものである。この第1の変形例のデジタル放送受信システム200Aでは、第1のデジタル放送受信装置201A1が通信ケーブルとしての情報通信路20212を介して第2のデジタル放送受信装置201A2と接続されている。第2のデジタル放送受信装置201A2は情報通信路20223を介して第3のデジタル放送受信装置201A3とも接続されている。すなわち、このデジタル放送受信システム200Aでは、情報通信路20212、20223、……をシリアルに接続していくことで、3台以上の任意の数のデジタル放送受信装置201Aを直列接続することができる。
【0055】
図8は、この第1の変形例における第2のデジタル放送受信装置の回路構成の概要を表わしたものである。図8で図2と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。また、第1のデジタル放送受信装置201A1および第3のデジタル放送受信装置201A3は、第2のデジタル放送受信装置201A2と要部が基本的に同一の回路構成となっているので、これらの図示および説明を省略する。ただし、直列に複数接続されたデジタル放送受信装置201A1、201A2、201A3、……のうちで両端部に位置する2台のデジタル放送受信装置201A(図7に示す例では、第1のデジタル放送受信装置201A1および第3のデジタル放送受信装置201A3)の回路構成は、図2に示した回路構成と要部が基本的に同一であってもよい。
【0056】
第2のデジタル放送受信装置201A2のカードリーダ部212A2は、ICカード制御部221A2とカードスロット部2222から構成されている。ICカード制御部221A2には、ICカード用信号の入出力を行う第1のICカード入出力I/F(インターフェイス)部223A21と、同様にICカード用信号の入出力を行う第2のICカード入出力I/F部223A22と、これらの制御を行う制御通信部224A2が配置されている。
【0057】
このように第2のデジタル放送受信装置201A2は、第1のICカード入出力I/F部223A21と第2のICカード入出力I/F部223A22の2つのICカード入出力I/F部を備えている。したがって、たとえば第1のICカード入出力I/F部223A21を、情報通信路20212を介して図7に示した第1のデジタル放送受信装置201A1と接続すると共に、第2のICカード入出力I/F部223A22を、情報通信路20223を介して図7に示した第3のデジタル放送受信装置201A3と接続することができる。
【0058】
ICカード制御部221A2と接続されるメイン制御部211A2は、自装置の第2の放送再生用カード2132に関する情報だけでなく、複数の情報通信路20212、20223を介して図7に示した他装置としての第1のデジタル放送受信装置201A1の第1の放送再生用カード2131に関する情報と、第3のデジタル放送受信装置201A3の第3の放送再生用カード2133に関する情報を取得することができる。
【0059】
したがって、デジタル放送受信システム200Aを構成する全放送再生用カード2131〜2133を第1〜第3のデジタル放送受信装置201A1〜201A3が共有することができる。また、第1〜第3のデジタル放送受信装置201A1〜201A3に優先順位を定めることで、放送再生用カード2131〜2133の使用について競合が発生したときにこれを自動的に調整することができることになる。
【0060】
<発明の第2の変形例>
【0061】
図9は、本発明の第2の変形例によるデジタル放送受信システムを表わしたものである。この第2の変形例のデジタル放送受信システム200Bでは、第1のデジタル放送受信装置201B1がLAN(Local Area Network)ケーブル4011の一端に接続されており、他端が集中結線装置としてのハブ(HUB)402の1つのポートに接続されている。第2のデジタル放送受信装置201B2もLANケーブル4012の一端に接続されており、他端がハブ402の他のポートに接続されている。
【0062】
この図9ではLANを構成する最もシンプルな場合として第1のデジタル放送受信装置201B1と第2のデジタル放送受信装置201B2がLANに接続されている場合を示しているが、更に多くのデジタル放送受信装置201Bを接続することができる。この第2の変形例では、実施例の図2に示したICカード入出力I/F部223をイーサネット(登録商標)のパケット通信用のインターフェイス回路に変更すればよい。
【0063】
デジタル放送受信システム200BでLANに第1〜第Nのデジタル放送受信装置201B1〜201BNが接続されているとする。ここでNは2以上の整数である。この場合、たとえば第1のデジタル放送受信装置201B1は、残りの第2〜第Nのデジタル放送受信装置201B2〜201BNのそれぞれが送出したパケットが第1のデジタル放送受信装置201B1を宛先としていない場合でも傍受することができる。したがって、第1〜第Nのデジタル放送受信装置201B1〜201BNによって共有される第1〜第Nの放送再生用カード213B1〜213BNの使用状況を簡単に把握することができる。これにより、第1〜第Nの放送再生用カード213B1〜213BNのうちの使用されていないカードの有効活用を図ることができる。また、第1〜第Nのデジタル放送受信装置201B1〜201BNが固有の優先順位を有するようにすることで、第1〜第Nの放送再生用カード213B1〜213BNの使用管理を簡素化することができる。
【0064】
<発明の第3の変形例>
【0065】
図10は、本発明の第3の変形例によるデジタル放送受信システムを表わしたものである。この第3の変形例のデジタル放送受信システム200Cでは、第1のデジタル放送受信装置201C1と第2のデジタル放送受信装置201C2が無線411で通信するようになっている。通信の形態は、実施例で説明したような1対1の無線通信であってもよいし、第1の変形例で説明したような2台以上の複数装置間の無線通信であってもよい。また、第2の変形例で説明したようなLANを無線化したものであってもよい。
【0066】
更に、実施例および各変形例の組み合わせとして、本発明のデジタル放送受信システムは、複数の通信形態が混合されたものであってもよい。また、実施例では放送再生用カードとしてICカードを使用したが、スクランブルや暗号を解除するための一部または全部の情報を所持するものであればよく、ICカードに限定されるものでないことは当然である。
【0067】
また、実施例では他装置が番組(放送局)の視聴中であった場合には優先順位との関係で自装置が優位に立っているかどうかを判別して、優位に立っているときのみその他装置の番組(放送局)も選択可能にしたが、他装置が番組(放送局)の視聴中であった場合にはそれを無条件に視聴の対象から除外してもよい。また、反対に他装置が番組(放送局)の視聴中であるか否かに係わらず、すべてを視聴のための選択対象とし、自装置のユーザがその他装置の番組(放送局)を選択したときのみ、その他装置との間で視聴の調整を行うようにしてもよい。この場合には、1つの放送受信装置のユーザが通信手段によって連携したすべての放送受信装置の受信できる番組(放送局)を把握することができるので、その番組(放送局)を視聴するための方策を考察することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施例におけるデジタル放送受信システムの回路構成の概要を表わしたブロック図である。
【図2】本実施例の第1および第2のデジタル放送受信装置の構成を具体的に表わしたブロック図である。
【図3】本実施例のデジタル放送受信システムでのデジタル放送受信装置同士の接続の様子を表わしたシステム構成図である。
【図4】本実施例で第1のデジタル放送受信装置の番組選択処理を表わした流れ図である。
【図5】ステップS309の通信処理を具体的に表わした流れ図である。
【図6】本実施例で第1のデジタル放送受信装置側でユーザが番組を選択した場合の処理を示す流れ図である。
【図7】本発明の第1の変形例によるデジタル放送受信システムを表わしたシステム構成図である。
【図8】第1の変形例における第2のデジタル放送受信装置の回路構成の概容を表わしたブロック図である。
【図9】本発明の第2の変形例によるデジタル放送受信システムの簡易化された構成図である。
【図10】本発明の第3の変形例によるデジタル放送受信システムの簡易化された構成図である。
【図11】従来の第1の提案におけるデジタル放送受信システムの概要を表わしたブロック図である。
【符号の説明】
【0069】
200、200A、200B、200C デジタル放送受信システム
201、201A、201B、201C デジタル放送受信装置
202 情報通信路
211、211A メイン制御部
212、212A カードリーダ部
213 放送再生用カード
222 カードスロット部
223、223A ICカード入出力I/F部
224、224A 制御通信部
401 LANケーブル
411 無線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能な放送の範囲をカード単位で特定するための放送再生用カードのいずれかを任意で選択して装着するために自装置に配置された放送再生用カード装着手段と、
この放送再生用カード装着手段に前記放送再生用カードが装着されているかどうかを判別する自装置放送再生用カード装着有無判別手段と、
伝送路を介して接続された1または複数の他装置に前記放送再生用カードのいずれかが装着されているかどうかをそれぞれ判別する他装置放送再生用カード装着有無判別手段と、
前記自装置放送再生用カード装着有無判別手段が自装置に放送再生用カードが装着されていると判別した状態で前記他装置放送再生用カード装着有無判別手段が前記他装置の少なくとも1つについて放送再生用カードの装着を判別したとき、自装置および装着を判別された全部の他装置の前記放送再生用カードによって特定された放送の全部を再生対象として選択可能にする放送選択手段
とを具備することを特徴とする放送受信装置。
【請求項2】
再生可能な放送の範囲をカード単位で特定するための放送再生用カードのいずれかを任意で選択して装着するために自装置に配置された放送再生用カード装着手段と、
この放送再生用カード装着手段に前記放送再生用カードが装着されているかどうかを判別する自装置放送再生用カード装着有無判別手段と、
伝送路を介して接続された1または複数の他装置に前記放送再生用カードのいずれかが装着されているかどうかを判別する他装置放送再生用カード装着有無判別手段と、
前記自装置放送再生用カード装着有無判別手段が自装置に放送再生用カードが装着されていると判別した状態で前記他装置放送再生用カード装着有無判別手段が他装置の少なくとも1つについて放送再生用カードの装着を判別したとき、自装置あるいは前記他装置に装着されている放送再生用カードが前記伝送路を介して接続された1または複数の他装置のいずれかによって使用されているかどうかを判別する他装置使用状況判別手段と、
この他装置使用状況判別手段が前記伝送路を介して接続された1または複数の他装置のいずれかが前記放送再生用カードを使用していると判別したとき、自装置と使用していると判別されたその他装置の放送の再生に関する優先順位を判別する優先順位判別手段と、
この優先順位判別手段が自装置の方が優先順位が高いと判別したとき、それぞれの放送再生用カードの特定した放送の全部を再生対象として選択可能にし、前記その他装置の方が優先順位が高いと判別したとき、前記その他装置の放送再生用カードの特定した放送分を除いてこれらの放送再生用カードによって特定した放送の全部を再生対象として選択可能にする放送選択手段
とを具備することを特徴とする放送受信装置。
【請求項3】
前記放送選択手段で選択した放送が前記他装置のいずれかに装着された放送再生用カードによる放送であるとき、前記伝送路を介して接続された他装置のいずれによってその放送再生用カードが使用されているかを判別する他装置使用状況判別手段と、
この他装置使用状況判別手段が判別した前記他装置と自装置の放送の再生に関する優先順位を判別する優先順位判別手段と、
この優先順位判別手段が自装置の方が優先順位が高いと判別したときのみ、その選択した放送を再生する放送再生手段
とを具備することを特徴とする請求項1記載の放送受信装置。
【請求項4】
再生可能な放送の範囲をカード単位で特定するための放送再生用カードのいずれかを任意で選択して装着するための放送再生用カード装着手段を備えた放送受信装置のコンピュータに、
自装置の前記放送再生用カード装着手段に前記放送再生用カードが装着されているかどうかを判別する自装置放送再生用カード装着有無判別処理と、
伝送路を介して接続された1または複数の他装置に前記放送再生用カードのいずれかが装着されているかどうかをそれぞれ判別する他装置放送再生用カード装着有無判別処理と、
前記自装置放送再生用カード装着有無判別処理で自装置に放送再生用カードが装着されていると判別した状態で前記他装置放送再生用カード装着有無判別処理で前記他装置の少なくとも1つについて放送再生用カードの装着を判別したとき、自装置および装着を判別された全部の他装置の前記放送再生用カードの特定した放送の全部を再生対象として選択可能にする放送選択処理
とを実行させることを特徴とする放送受信制御プログラム。
【請求項5】
再生可能な放送の範囲をカード単位で特定するための放送再生用カードのいずれかを任意で選択して装着するための放送再生用カード装着手段を備えた放送受信装置のコンピュータに、
自装置の前記放送再生用カード装着手段に前記放送再生用カードが装着されているかどうかを判別する自装置放送再生用カード装着有無判別処理と、
伝送路を介して接続された1または複数の他装置に前記放送再生用カードのいずれかが装着されているかどうかを判別する他装置放送再生用カード装着有無判別処理と、
前記自装置放送再生用カード装着有無判別処理で自装置に放送再生用カードが装着されていると判別した状態で前記他装置放送再生用カード装着有無判別処理によって他装置の少なくとも1つについて放送再生用カードの装着を判別したとき、自装置あるいは前記他装置に装着されている放送再生用カードが前記伝送路を介して接続された1または複数の他装置のいずれかによって使用されているかどうかを判別する他装置使用状況判別処理と、
この他装置使用状況判別処理で前記伝送路を介して接続された1または複数の他装置のいずれかが前記放送再生用カードを使用していると判別したとき、自装置と使用していると判別されたその他装置の放送の再生に関する優先順位を判別する優先順位判別処理と、
この優先順位判別処理で自装置の方が優先順位が高いと判別したとき、それぞれの放送再生用カードの特定した放送の全部を再生対象として選択可能にし、前記その他装置の方が優先順位が高いと判別したとき、前記その他装置の放送再生用カードの特定した放送分を除いてこれらの放送再生用カードによって特定した放送の全部を再生対象として選択可能にする放送選択処理
とを実行させることを特徴とする放送受信制御プログラム。
【請求項6】
前記放送選択処理によって選択した放送が前記他装置のいずれかに装着された放送再生用カードによる放送であるとき、前記伝送路を介して接続された他装置のいずれによってその放送再生用カードが使用されているかを判別する他装置使用状況判別処理と、
この他装置使用状況判別処理で判別した前記他装置と自装置の放送の再生に関する優先順位を判別する優先順位判別処理と、
この優先順位判別処理によって自装置の方が優先順位が高いと判別したときのみ、その選択した放送を再生する放送再生処理
とを更に実行させることを特徴とする請求項4記載の放送受信制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−54039(P2008−54039A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228034(P2006−228034)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】