説明

放送用パケット生成装置、データ補完サーバ、受信端末、および、それらのプログラム

【課題】放送伝送路で伝送されるファイルを受信した受信端末における欠損データを通信回線を用いて補完するデジタル放送システムにおいて放送伝送路からIPパケットを効率よく伝送することができる技術を提供する。
【解決手段】高度衛星デジタル放送システム1において、ファイル送出装置(放送用パケット生成装置)11は、放送伝送路30を介して配信されるファイルを所定サイズのデータユニットに分割して放送用IPパケット50として伝送する際に、当該ファイル中のデータユニットを補完するためにデータ補完サーバ13が通信回線40で伝送する補完用IPパケット70のデータ部に格納されるデータサイズより大きくかつそのサイズに所定の整数値を乗じた規定サイズのデータユニットに分割してパケット化し、そのヘッダ部にデータユニットを特定するダウンロードヘッダ(特定情報)を含む放送用IPパケット50を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送の放送伝送路を介して配信されるファイルを受信した受信端末がファイル中の未取得のデータをデータ補完サーバから通信回線を介して取得するデジタル放送システムの技術に関し、特に、放送伝送路と通信回線とでそれぞれ伝送される情報のデータサイズを考慮した技術に関する。
【背景技術】
【0002】
通信の分野では、インターネットに代表される通信回線において、IP(Internet Protocol)パケットを用いて情報を伝送している。通信回線では、例えば、イーサネット(登録商標)のMTU(Maximum Transfer Unit:最大転送単位)を考慮し、また、パケットのロスが発生することを考慮すると、IPパケットは、1.5KB以下のサイズで伝送することが一般的である。これはイーサネット(登録商標)において、伝送するパケットを分割することなくMACフレームに格納可能な大きさが1500バイトであることが1つの要因である。
【0003】
IPパケットを例えば、UDP(User Datagram Protocol)を用いて送信する場合、図11(a)に示すIPv4/UDPパケット801では、ヘッダ部810に、IPv4ヘッダ(IPv4 Header)811と、UDPヘッダ(UDP Header)812とを備え、データ部(ペイロード)820には、データ821が格納される。また、図11(b)に示すIPv6/UDPパケット901では、ヘッダ部910に、IPv6ヘッダ(IPv6 Header)911と、UDPヘッダ(UDP Header)912と、拡張ヘッダ(IPv6_extension_header)913とを備え、データ部(ペイロード)920には、データ921が格納される。
【0004】
一方、放送の分野では、BSアナログ放送が終了する2011年以降に向けた新たなBSデジタル放送(高度衛星デジタル放送)の放送方式として、TLV(Type-Length-Value)多重化方式が提案されており、これを用いることで、IPパケットを通信回線だけではなく放送伝送路でも伝送することが可能になる(非特許文献1および非特許文献2参照)。放送伝送路上ではIPヘッダおよびUDPヘッダの情報を用いた経路制御を行う必要がないため、IPヘッダおよびUDPヘッダの圧縮を行うこともできる(非特許文献2参照)。また、一般に、衛星放送の伝送路品質は高く、受信C/N(Carrier to Noise Ratio)が確保できる状態では擬似エラーフリーの伝送が可能である(非特許文献3参照)。
【0005】
放送伝送路で伝送しようとするIPパケットについてのMTUを考慮するときには、放送伝送路では、もはやIPパケットが広域の通信回線網を通らないため、MTUを考慮する範囲は、復調するチューナーユニットから受信アプリケーションまでの範囲である。このため、放送伝送路で伝送しようとするIPパケットは、そのサイズを大きくすることも可能である。
【0006】
移動体端末向けの標準規格や標準仕様書(TS:Technical Specification)によれば、一方向であるが同報型の放送回線でコンテンツを配信後、コンテンツの一部の取り損ねや伝送路誤りにより発生する欠損部分を、通信回線を用いて要求することで、コンテンツの完全性の確保を行うプロトコルが示されている。
【0007】
例えば、ETSI(European Telecommunications Standards Institute:欧州電気通信標準化機構)が採択しているDVB−H(Digital Video Broadcasting - Handheld:移動体テレビの標準規格の一つ)におけるIPデータキャストはこれに当たる(非特許文献4参照)。また、3GPP(3rd Generation Partnership Project:第3世代移動体通信システムの標準化プロジェクト)における携帯端末向けのコンテンツ配信サービスを示すMBMS(Multimedia Broadcast / Multicast Service)もこれに当たる(非特許文献5参照)。
【0008】
DVB−HまたはMBMSのいずれも、放送伝送路でIPパケットを同報配信するものであるが、移動体端末向けであることもあり、伝送品質が固定端末向けほど良くない。したがって、放送伝送路に多重するIPパケットのサイズは共に小さく、例えば、DVB−Hでは、放送伝送路に多重するIPパケットのサイズは512バイトなどである(非特許文献6参照)
【0009】
また、固定端末としてのデジタル放送受信装置が、放送システムから放送伝送路を介して受信したデータが欠落していた際に、通信回線を用いて未取得データを取得する技術が知られている(特許許文献1参照)。この技術では、放送によって伝送するモジュール(ファイル)を、サイズが一定であるDDB(Download Data Block)に分割した後、DSM−CC(Digital Storage Media-Command and Control)のセクションに組み込んでデータカルーセルにより伝送している。セクションには、DDBからモジュールを再現するためのDII(Download Info Indication)が含まれている。DIIには、放送システムのサーバへのURL情報と、放送システムから伝送したモジュールのサイズ、およびそのモジュールを構成するDDBの数が記述されている。これにより、このデジタル放送受信装置は、未取得データがモジュールのどの範囲であるのかを算出し、算出したバイトレンジのデータ(例えば1200〜1250バイトの範囲の50バイトのデータ)を通信回線を用いて要求する。なお、特許許文献1に記載の技術では、それぞれの伝送路で伝送する情報のサイズについては考慮していない。
【特許文献1】特開2002−118812号公報(段落0070−0071、図9)
【非特許文献1】青木秀一、西村敏、青木勝典、木村武史、「高度BSデジタル放送におけるIPパケット伝送方式の一検討」、映像情報メディア学会、2007年冬季大会 第3部門放送技術3-3, Dec. 2007
【非特許文献2】社団法人電波産業会多重化作業班、“高度衛星デジタル放送 多重化方式報告書案(技術的条件)”、総務省情報通信審議会、2008年6月17日
【非特許文献3】社団法人映像情報メディア学会編、江藤良純・金子敏信監修、「誤り訂正符号とその応用」、オーム社、1996年
【非特許文献4】ETSI TS 102 472, “DVB ; IP Datacast over DVB-H : Content Delivery Protocols”, (2006-12)
【非特許文献5】3GPP TS 26.346, “Multimedia Broadcast / Multicast Service (MBMS) ; Protocols and codecs”
【非特許文献6】ETSI TS 102 591, ”DVB ; IP Datacast over DVB-H : Content Delivery Protocols (CDP) Implementation Guidelines”, (2007-10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のDVB−HやMBMSと同様に、衛星伝送路でコンテンツ(ファイル)を同報配信し、例えば伝送路誤りのため欠損した情報だけを通信回線を用いて補完するダウンロードアプリケーションを、高度衛星デジタル放送を用いて固定端末向けに行う方法が考えられている。高度衛星デジタル放送ではTLV多重化方式を用いることでIPパケットを分割することなく伝送可能である。このため、通信回線でのパケットの形式と、放送伝送路でのパケットの形式とを全く同一にすると、コンテンツの一部の取り損ねや伝送路誤りにより発生する欠損部分が生じたときに、特許文献1に記載の技術のようにファイルの先頭からのバイト位置と欠損サイズといった情報を用いる必要がなく、通信回線を用いて欠損部分の補完がパケット単位で容易に行うことができる。
【0011】
また、非特許文献1には、TLV多重化方式によると、パケット伝送においてはペイロードサイズが大きいほど、パケットごとに付加するヘッダ情報のオーバヘッドが小さくなることが記載されている。つまり、ペイロードサイズが大きいほど効率の良い伝送が可能となる。しかし、ペイロードサイズが大きいほど、パケットがロスしたときに欠損する情報が大きくなることになる。このため、利用する伝送路の品質を考慮して、伝送するパケットのペイロードサイズを決定する必要がある。例えば、衛星伝送路の伝送路品質は擬似エラーフリーに近く、衛星伝送路を伝送しようとするIPパケットのペイロードサイズを大きくすることができる。
【0012】
しかしながら、従来の技術では、通信回線を用いてパケット単位で補完する場合、放送伝送路で伝送するパケットのサイズも、通信回線で用いるバケットサイズも等しいものとして扱っている。したがって、放送伝送路から受信したファイルの取りこぼしを通信回線を用いて補完可能なダウンロードアプリケーションに対しては、放送伝送路で伝送しようとするIPパケットのサイズは、通信回線のMTUで制限される1.5KB程度のペイロードサイズしか用いることができない。つまり、伝送路品質の高い衛星伝送路を用いれば、放送により伝送しようとするIPパケットのペイロードサイズを大きくすることが可能であるにも関わらず、データの補完を考慮すると、放送伝送路では、通信回線のMTUで制限されるサイズのIPパケットしか伝送できず、放送により伝送しようとするIPパケットの伝送効率が低くなってしまうという問題がある。
【0013】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、放送伝送路で伝送されるファイルを受信した受信端末における欠損データを通信回線を用いて補完するデジタル放送システムにおいて放送伝送路からIPパケットを効率よく伝送することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記目的を達成するために創案されたものであり、まず、請求項1に記載の放送用パケット生成装置は、ファイルを分割したファイル断片毎にIPパケットとして放送伝送路を介して配信される放送用IPパケットを生成する放送用パケット生成装置と、前記放送用IPパケットとして伝送されるファイルを受信した受信端末が、受信したファイル中の未取得のファイル断片をデータ補完サーバから通信回線を介して取得することで前記放送伝送路を介して受信したファイルの完全性を確保するデジタル放送システムにおける前記放送用パケット生成装置であって、ファイル分割手段と、放送用パケット生成手段とを備える構成とした。
【0015】
かかる構成によれば、放送用パケット生成装置は、ファイル分割手段によって、ファイル毎に前記ファイル断片のサイズが前記データ補完サーバから前記受信端末に伝送されるパケットのデータ部に格納されるデータのサイズより大きくかつ前記サイズに所定の整数値を乗じた規定サイズとなるように前記ファイルを分割する。そして、放送用パケット生成装置は、放送用パケット生成手段によって、前記ファイルをダウンロードするために前記ファイル断片を特定する特定情報をヘッダ部に格納すると共に前記ファイル断片をデータ部に格納した前記放送用IPパケットを生成する。
【0016】
また、請求項2に記載の放送用パケット生成装置は、請求項1に記載の放送用パケット生成装置において、前記ファイル断片を特定する特定情報が、当該ファイル断片が含まれるファイルの識別子と、当該ファイル断片を含む複数のファイル断片からなるブロックの前記ファイル内の位置を示すブロック番号と、前記ブロック内の当該ファイル断片の位置を示すシーケンス番号とを有するダウンロードヘッダであることとした。
【0017】
かかる構成によれば、放送用パケット生成装置は、ファイルを複数のブロックに区切り、そのブロックをさらに区切った2階層目の単位でファイル断片を指定するので、ファイルを直接区切った1階層目の単位でファイル断片を指定する場合に比べると、ファイル断片を特定する特定情報からファイル全体の中において対象のファイル断片を迅速に特定することができる。
【0018】
また、請求項3に記載のデータ補完サーバは、請求項1または請求項2に記載の放送用パケット生成装置で生成された前記規定サイズのファイル断片をデータ部に含み当該ファイル断片を特定する特定情報をヘッダ部に含む放送用IPパケットとして伝送されるファイルを放送伝送路を介して受信した受信端末に対して、前記放送用IPパケットを補完するための補完用IPパケットを通信回線を介して前記受信端末に伝送するデータ補完サーバであって、補完要求用IPパケット受信手段と、補完用IPパケット生成手段と、補完用IPパケット送信手段とを備える構成とした。
【0019】
かかる構成によれば、データ補完サーバは、補完要求用IPパケット受信手段によって、前記受信端末から、前記ファイル中の未取得のファイル断片を特定する特定情報を含む補完要求用IPパケットを受信する。そして、データ補完サーバは、補完用IPパケット生成手段によって、前記未取得のファイル断片を特定する特定情報に基づいて、当該未取得のファイル断片を前記規定サイズを規定した所定の整数値の個数の均等なデータサイズの部分ファイル断片に分割し、前記分割された部分ファイル断片に当該ファイル断片内の位置を示す分割順序情報を付与し、当該ファイル断片を補完するために前記ファイル断片を特定する特定情報と前記分割順序情報とをヘッダ部に格納すると共に前記部分ファイル断片をデータ部に格納した前記補完用IPパケットを生成する。そして、データ補完サーバは、補完用IPパケット送信手段によって、前記補完用IPパケットを前記受信端末に送信する。
【0020】
また、請求項4に記載のデータ補完サーバは、請求項3に記載のデータ補完サーバにおいて、ファイル情報記憶手段と、分割数決定手段とをさらに備えることとした。
【0021】
かかる構成によれば、データ補完サーバは、ファイル情報記憶手段に、前記放送伝送路を介して伝送されるファイル毎に、当該ファイルに含まれる前記ファイル断片の規定サイズを記憶する。そして、データ補完サーバは、分割数決定手段によって、前記補完要求用IPパケットに含まれる前記未取得のファイル断片を特定する特定情報に基づいて、前記ファイル情報記憶手段から当該未取得のファイル断片の規定サイズを抽出し、前記抽出した規定サイズを規定した所定の整数値を当該ファイル断片の分割数として決定する。そして、データ補完サーバは、補完用IPパケット生成手段によって、前記決定された分割数で前記未取得のファイル断片を分割する。
【0022】
また、請求項5に記載の受信端末は、請求項1または請求項2に記載の放送用パケット生成装置で生成された前記規定サイズのファイル断片をデータ部に含み当該ファイル断片を特定する特定情報をヘッダ部に含む放送用IPパケットとして伝送されるファイルを放送伝送路を介して受信し、受信したファイル中の未取得のファイル断片を請求項3または請求項4に記載のデータ補完サーバから複数の補完用IPパケットとして通信回線を介して取得する受信端末であって、放送受信手段と、欠損判別手段と、補完要求用IPパケット生成手段と、補完要求用IPパケット送信手段と、補完用IPパケット受信手段と、補完ファイル断片構築手段と、ファイル修復手段とを備える構成とした。
【0023】
かかる構成によれば、受信端末は、放送受信手段によって、前記放送用IPパケットを受信する。そして、受信端末は、欠損判別手段によって、前記受信した放送用IPパケットのヘッダ部の情報に基づいて、受信した各放送用IPパケットに含まれるファイル断片を連結して前記ファイルを復元する際にファイル断片が欠損しているか否かを判別する。そして、受信端末は、補完要求用IPパケット生成手段によって、前記ファイル断片が欠損している場合に、未取得のファイル断片を特定する特定情報として、当該ファイル断片に対応した放送用IPパケットのヘッダ部に格納された情報を含む補完要求用IPパケットを生成する。そして、受信端末は、補完要求用IPパケット送信手段によって、前記生成した補完要求用IPパケットを前記データ補完サーバに送信する。そして、受信端末は、補完用IPパケット受信手段によって、前記データ補完サーバから、前記1つの補完要求用IPパケット当たり前記ファイル断片の規定サイズを規定した所定の整数値の個数だけ前記補完用IPパケットを受信する。そして、受信端末は、補完ファイル断片構築手段によって、前記受信した各補完用IPパケットに含まれるそれぞれの分割順序情報に基づいて、前記各部分ファイル断片を順番に連結して、前記未取得のファイル断片を構築する。そして、受信端末は、ファイル修復手段によって、前記ファイル断片が欠損しているファイル中の欠損位置に前記構築されたファイル断片を連結する。
【0024】
また、請求項6に記載の放送用パケット生成プログラムは、ファイルを分割したファイル断片毎にIPパケットとして放送伝送路を介して配信される放送用IPパケットを生成する放送用パケット生成装置と、前記放送用IPパケットとして伝送されるファイルを受信した受信端末が、受信したファイル中の未取得のファイル断片をデータ補完サーバから通信回線を介して取得することで前記放送伝送路を介して受信したファイルの完全性を確保するデジタル放送システムにおいて、前記放送用IPパケットを生成するために、前記放送用パケット生成装置を構成するコンピュータを、ファイル分割手段および放送用パケット生成手段として機能させることとした。
【0025】
かかる構成によれば、放送用パケット生成プログラムは、ファイル分割手段によって、ファイル毎に前記ファイル断片のサイズが前記データ補完サーバから前記受信端末に伝送されるパケットのデータ部に格納されるデータのサイズより大きくかつ前記サイズに所定の整数値を乗じた規定サイズとなるように前記ファイルを分割する。そして、放送用パケット生成プログラムは、放送用パケット生成手段によって、前記ファイルをダウンロードするために前記ファイル断片を特定する特定情報をヘッダ部に格納すると共に前記ファイル断片をデータ部に格納した前記放送用IPパケットを生成する。
【0026】
また、請求項7に記載のデータ補完プログラムは、請求項1または請求項2に記載の放送用パケット生成装置で生成された前記規定サイズのファイル断片をデータ部に含み当該ファイル断片を特定する特定情報をヘッダ部に含む放送用IPパケットとして伝送されるファイルを放送伝送路を介して受信した受信端末に対して、前記放送用IPパケットを補完するための補完用IPパケットを通信回線を介して前記受信端末に伝送するために、コンピュータを、補完要求用IPパケット受信手段、補完用IPパケット生成手段、補完用IPパケット送信手段として機能させることとした。
【0027】
かかる構成によれば、データ補完プログラムは、補完要求用IPパケット受信手段によって、前記受信端末から、前記ファイル中の未取得のファイル断片を特定する特定情報を含む補完要求用IPパケットを受信する。そして、データ補完プログラムは、補完用IPパケット生成手段によって、前記未取得のファイル断片を特定する特定情報に基づいて、当該未取得のファイル断片を前記規定サイズを規定した所定の整数値の個数の均等なデータサイズの部分ファイル断片に分割し、前記分割された部分ファイル断片に当該ファイル断片内の位置を示す分割順序情報を付与し、当該ファイル断片を補完するために前記ファイル断片を特定する特定情報と前記分割順序情報とをヘッダ部に格納すると共に前記部分ファイル断片をデータ部に格納した前記補完用IPパケットを生成する。そして、データ補完プログラムは、補完用IPパケット送信手段によって、前記補完用IPパケットを前記受信端末に送信する。
【0028】
また、請求項8に記載のファイル受信プログラムは、請求項1または請求項2に記載の放送用パケット生成装置で生成された前記規定サイズのファイル断片をデータ部に含み当該ファイル断片を特定する特定情報をヘッダ部に含む放送用IPパケットとして伝送されるファイルを放送伝送路を介して受信し、受信したファイル中の未取得のファイル断片を請求項3または請求項4に記載のデータ補完サーバから複数の補完用IPパケットとして通信回線を介して取得するために、前記放送用IPパケットを受信する放送受信手段を備えた受信端末のコンピュータを、欠損判別手段、補完要求用IPパケット生成手段、補完要求用IPパケット送信手段、補完用IPパケット受信手段、補完ファイル断片構築手段、ファイル修復手段として機能させることとした。
【0029】
かかる構成によれば、ファイル受信プログラムは、欠損判別手段によって、前記受信した放送用IPパケットのヘッダ部の情報に基づいて、受信した各放送用IPパケットに含まれるファイル断片を連結して前記ファイルを復元する際にファイル断片が欠損しているか否かを判別する。そして、ファイル受信プログラムは、補完要求用IPパケット生成手段によって、前記ファイル断片が欠損している場合に、未取得のファイル断片を特定する特定情報として、当該ファイル断片に対応した放送用IPパケットのヘッダ部に格納された情報を含む補完要求用IPパケットを生成する。そして、ファイル受信プログラムは、補完要求用IPパケット送信手段によって、前記生成した補完要求用IPパケットを前記データ補完サーバに送信する。そして、ファイル受信プログラムは、補完用IPパケット受信手段によって、前記データ補完サーバから、前記1つの補完要求用IPパケット当たり前記ファイル断片の規定サイズを規定した所定の整数値の個数だけ前記補完用IPパケットを受信する。そして、ファイル受信プログラムは、補完ファイル断片構築手段によって、前記受信した各補完用IPパケットに含まれるそれぞれの分割順序情報に基づいて、前記各部分ファイル断片を順番に連結して、前記未取得のファイル断片を構築する。そして、ファイル受信プログラムは、ファイル修復手段によって、前記ファイル断片が欠損しているファイル中の欠損位置に前記構築されたファイル断片を連結する。
【発明の効果】
【0030】
請求項1に記載の放送用パケット生成装置または請求項6に記載の放送用パケット生成プログラムによれば、ファイルを構成するファイル断片を放送伝送路からIPパケットとして伝送する際に、ファイル断片のサイズを、通信回線から伝送されるデータのサイズより大きくかつその整数倍とした放送用IPパケットを生成するので、ファイルを放送伝送路から効率よく伝送することができる。
【0031】
請求項2に記載の放送用パケット生成装置によれば、ファイル断片を特定する特定情報からファイル全体の中において対象のファイル断片を迅速に特定することができる。
【0032】
請求項3に記載のデータ補完サーバまたは請求項7に記載のデータ補完プログラムによれば、受信端末から要求された未取得のファイル断片を、その規定サイズを元にした所定の整数値の個数の均等なデータサイズの部分ファイル断片に分割し、分割順序情報を含む補完用IPパケットを通信回線を介して受信端末に送信する。したがって、受信端末が受信したファイルにおいて、放送用伝送路から放送用IPパケットとして効率よく伝送されたファイル断片に欠損が生じたとしても、通信回線から補完すべきデータを容易に生成し伝送することができる。
【0033】
請求項4に記載のデータ補完サーバによれば、ファイル断片の規定サイズが互いに異なるファイルにおける未取得のファイル断片がそれぞれ要求されたとしても、それらの要求に対応してその都度データを補完することができる。そのため、ファイルを構成する映像コンテンツや音楽コンテンツ等の種類に適したデータサイズのファイルにおける未取得データを1台で補完することができる。
【0034】
請求項5に記載の受信端末または請求項8に記載のファイル受信プログラムによれば、放送伝送路で伝送される放送用IPパケットとして受信したファイル中に欠損データが生じた場合に、不足している1つの放送用IPパケット当たり2個以上の整数個の補完用IPパケットを通信回線から取得する。したがって、非常時に備えての通信回線からのデータ補完を保証されつつ、通常は通信回線のMTUより大きくかつその整数倍のデータサイズのファイル断片が格納された放送用IPパケットを放送伝送路から効率よく受信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の放送用パケット生成装置、データ補完サーバおよび受信端末を実施するための最良の形態(以下「実施形態」という)について図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
[高度衛星デジタル放送システムの概要]
(高度衛星デジタル放送システムの構成)
まず、高度衛星デジタル放送システムの構成について図1ないし図3を適宜参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係るファイル送出装置、データ補完サーバおよび受信端末を含む高度衛星デジタル放送システムを模式的に示す構成図である。また、図2は、高度衛星デジタル放送システムにおいてデータ欠損発生時にその補完を行う動作を示すシーケンス図、図3は、データ欠損とその補完の様子の説明図である。
【0037】
図1に示すように、高度衛星デジタル放送システム1は、コンテンツ提供事業者10側に、ファイル送出装置(放送用パケット生成装置)11と、送信装置12と、データ補完サーバ13とを備え、視聴者20側に、受信端末21を備えていることとした。なお、図示は省略するが、視聴者20および受信端末21は複数存在するものとする。
【0038】
ファイル送出装置(放送用パケット生成装置)11は、放送しようとするコンテンツ(ファイル)を分割したデータユニット(ファイル断片)毎に放送伝送路30を介して配信される放送用IPパケット50を生成するものである。
【0039】
送信装置12は、ファイル送出装置11にコンテンツ(ファイル)として蓄積された放送用IPパケット50を放送伝送路30を介して配信するものである。本実施形態では、放送伝送路30は、人工衛星31を経由する衛星放送の伝送路であって、IPパケットをTLVとして多重することのできる新たなBSデジタル放送(高度衛星デジタル放送)の伝送路であるものとする(非特許文献1,2参照)。
【0040】
データ補完サーバ13は、受信端末21から通信回線40を介して補完要求用IPパケット60を受信した場合に、受信端末21において受信したファイル中の未取得のデータユニット(ファイル断片)を補完用IPパケット70として通信回線40を介して送信するものである。なお、図1では、データ補完サーバ13を1つだけ図示したが、台数に限定は無く、以下では、複数存在するものとする。
【0041】
このようにコンテンツ提供事業者10において配信されるIPパケットは、放送用IPパケット50と補完用IPパケット70との2種類がある。放送用IPパケット50のペイロードサイズは、補完用IPパケット70のペイロードサイズより大きくかつその整数倍で構成されている。図1においては、一例として、放送用IPパケット50のペイロードサイズは、補完用IPパケット70のペイロードサイズの3倍であるものとした。つまり、受信端末21において、1つの放送用IPパケット50を取り損ねた場合、データ補完サーバ13は、1つの放送用IPパケット50に対応したデータを補完するために、3つの補完用IPパケット70a,70b,70cを通信回線40を介して受信端末21へ送信する。なお、特に区別しない場合には補完用IPパケット70と表記する。
【0042】
受信端末21は、放送伝送路30と通信回線40とのいずれも利用可能に構成されている。受信端末21には、放送用IPパケット50を受信するために必要な情報と、補完用IPパケット70を受信するために必要な情報とが番組表などの形式で予め通知される。ここで、放送用IPパケット50を受信するために必要な情報とは、例えば、番組名、コンテンツ識別情報(ファイルのID)、配信開始時刻、配信終了時刻、放送チャンネルや配信されるグループアドレスなどを含む。また、補完用IPパケット70を受信するために必要な情報とは、放送の受信だけでコンテンツ(ファイル)が完全に受信できない場合に、欠損情報の補完を要求するための情報であり、例えば、データ補完サーバ13のリストを含む。このリストには、データ補完サーバ13のURLや補完するファイルの種類等を記載することができる。
【0043】
(高度衛星デジタル放送システムにおける処理の流れ)
図1に示す高度衛星デジタル放送システムにおける処理の流れについて図2を参照して説明する。まず、ファイル送出装置11は、コンテンツ(ファイル)を分割して放送用IPパケット50を生成する(ステップS1)。ファイル送出装置11は、生成した放送用IPパケット50を蓄積すると共に、所定のタイミングで送信装置12に出力する。そして、送信装置12は、取得した放送用IPパケット50を放送伝送路30を介して受信端末21に送信する。
【0044】
受信端末21は、受信した放送用IPパケット50に含まれるデータユニット(ファイル断片)を順番に連結することで、当該ファイルを構成する。例えば、伝送路誤りが発生しない場合には、受信端末21は、ファイルを正しく完全に受信することができる。しかし、伝送路誤りが発生した場合には、誤りが検出された放送用IPパケット50は廃棄されるので受信アプリケーションには到達しない。そのため、ファイルを構成する一部のデータユニットが欠損し、ファイルの一部あるいは全部が構成できないことが起こる。例えば、図3(a)に示すファイル80は、データ領域81,82,83で全体が構成されており、放送の再度の受信によって、欠損したデータユニットを補完した後、さらに、データ領域82に欠損が残存している。データ領域82では、図3(b)に示すように、データユニット群84が欠損している。このような場合には、受信端末21は、どのファイルのどのデータユニットの補完を要求するのかを示す補完要求用IPパケット60を生成する(ステップS2)。
【0045】
受信端末21は、生成した補完要求用IPパケット60を通信回線40を介してデータ補完サーバ13に送信する。データ補完サーバ13は、補完要求用IPパケット60を取得すると、要求されたデータユニットを補完するために、受信ファイルから欠落している放送用IPパケット50を何等分して送るかを示す分割数を決定する(ステップS3)。また、データ補完サーバ13は、要求されたデータユニットを補完するため、放送用IPパケット50を蓄積しているファイル送出装置11から当該放送用IPパケット50を取得し、そのデータユニットを分割して、補完用IPパケット70a,70b,70cを生成する(ステップS4)。例えば、図3(b)に示すように、3つの補完用IPパケット70a,70b,70cにより、欠落している1つの放送用IPパケット50を補う。そして、データ補完サーバ13は、生成した補完用IPパケット70a,70b,70cを通信回線40を介して受信端末21に送信する。
【0046】
受信端末21は、受信した補完用IPパケット70a,70b,70cのペイロードにそれぞれ含まれる同じサイズのデータユニットを連結した補完用のファイル断片(補完断片)を構築する(ステップS5)。そして、受信端末21は、欠落しているデータユニット群84の該当するデータ領域82に補完断片を順次挿入することで、伝送路誤りが発生したファイルを修復する(ステップS6)。これにより、図3(c)に示すように、データ領域82においても各データユニット(ファイル断片)が正常に記録され、ファイル全体を正常に構成することができるようになる。
【0047】
[高度衛星デジタル放送システムの各装置の構成]
図4は、本発明の実施形態に係るファイル送出装置およびデータ補完サーバの構成を模式的に示すブロック図であり、図5は、本発明の実施形態に係る受信端末の構成を模式的に示すブロック図である。
【0048】
(ファイル送出装置)
ファイル送出装置(放送用パケット生成装置)11は、CPU等の演算装置と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置と、マウスやキーボード等の外部から情報の入力を検出する入力装置と、外部との各種情報の送受信を行うインタフェース装置と、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置を備えたコンピュータと、このコンピュータにインストールされたプログラムとから構成される。
【0049】
ファイル送出装置11は、ハードウェア装置とソフトウェアとが協働することによって、前記したハードウェア資源がプログラムによって制御されることにより実現され、図4に示すように、ファイル入力手段111と、ファイル分割手段112と、放送用パケット生成手段113と、ファイル蓄積手段114とを備えている。
ファイル入力手段111は、放送しようとするコンテンツ(ファイル)を外部から入力するための所定の入力インタフェースである。
【0050】
ファイル分割手段112は、ファイル毎にデータユニット(ファイル断片)のサイズがデータ補完サーバ13から受信端末21に伝送されるパケット(補完用IPパケット70)のデータ部に格納されるデータのサイズより大きくかつそのサイズに所定の整数値を乗じた規定サイズとなるようにファイルを分割するものである。
【0051】
放送用パケット生成手段113は、受信端末21においてファイルをダウンロードするためにデータユニット(ファイル断片)を特定する特定情報をヘッダ部に格納すると共にデータユニット(ファイル断片)をデータ部に格納した放送用IPパケット50を生成するものである。本実施形態では、放送用IPパケット50は、ヘッダ部に特定情報としてダウンロードヘッダを含む。ダウンロードヘッダは、データ部のデータユニットが含まれていたファイルの識別子と、当該データユニットが属するブロック番号およびシーケンス番号とを備えている。ここで、ブロック番号は、複数のデータユニットを含むブロックのファイル内の位置を示すものであり、シーケンス番号は、当該ブロック内のデータユニットの位置を示すものである。なお、放送用IPパケット50は、ヘッダ部にダウンロードヘッダのほか、例えばIPヘッダおよびUDPヘッダを含んでいる。
【0052】
ファイル蓄積手段114は、放送用パケット生成手段113で生成された放送用IPパケット50を、受信端末21に伝送するコンテンツ(ファイル)として蓄積するものであり、例えば、一般的なハードディスク等から構成される。
【0053】
ここで、図6および図7を参照して放送用IPパケットの構造の具体例を説明する。図6は、放送用IPパケットの構造を示す図であり、図7は、ダウンロードヘッダの構造を示す図である。図6(a)に示すように、ファイル(コンテンツ)301は、数多くのデータユニット(Du:ファイル断片)401に分割される。このうち、所定数のデータユニット(Du:ファイル断片)401によりブロックが形成される。例えば、ファイル(コンテンツ)301は、複数(例えばK個)のブロックを備えている。
【0054】
図6(b)に示すように、データユニット(ファイル断片)401には、ダウンロードヘッダ421が付加される。ダウンロードヘッダ421は、図7に示すように、複数のフィールドとして、Transport File ID(ファイルの識別子)501と、Block Number(ブロック番号)502と、Sequence Number(シーケンス番号)503とを備えた合計8バイトのヘッダである。なお、Transport File ID(ファイルの識別子)501は、いずれのファイルを分割したデータユニットであるのかを示すものである。また、図7において、Block Number502と、Sequence Number503とは合計4バイトであれば、個々のフィールドのビット数は任意でよい。
【0055】
これにより、このダウンロードヘッダ421をヘッダ部に含む放送用IPパケット50を受信する受信端末21において、当該放送用IPパケット50のデータ部に格納された個別のデータユニット401を、ブロック番号502とブロック内のシーケンス番号503とで特定することができるようになる。なお、図6(b)において、データユニット401の右側に配置したダウンロードヘッダ421を、図7ではスタック状に階層化されたものとしてデータユニット401の上側に配置した。
【0056】
本実施形態では、ファイル送出装置11は、図6(c)に示す放送用IPパケット50Aを生成し、送出することとした。放送用IPパケット50Aは、データユニット401にダウンロードヘッダ421を加え、さらにIPヘッダおよびUDPヘッダ441(以下、IP/UDPヘッダ441という)を付加した形式である。なお、図7では、IP/UDPヘッダの図示を省略したが、図7においてIP/UDPヘッダ441はダウンロードヘッダ421の上側の階層に配置されることになる。
【0057】
また、本実施形態では、放送伝送路30を高度衛星デジタル放送の伝送路としているので、このような放送伝送路30上ではIP/UDPヘッダ441の情報を用いた経路制御を行う必要がない。そのため、非特許文献2などに示される方式でIP/UDPヘッダ441の圧縮を行うことができる。この場合には、ファイル送出装置11は、図6(d)に示す放送用IPパケット50Bを生成し、送出することとしてもよい。図6(d)に示す放送用IPパケット50Bは、データユニット401にダウンロードヘッダ421を加え、さらにIP/UDPヘッダを圧縮した圧縮ヘッダ461を付加した形式である。以下では、放送用IPパケット50Aおよび放送用IPパケット50Bを、特に区別しない限り、放送用IPパケット50と表記する。
【0058】
(送信装置)
送信装置12は、CPU等の演算装置と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置と、外部との各種情報の送受信を行うインタフェース装置とを備えたコンピュータと、このコンピュータにインストールされたプログラムと、このコンピュータに接続されたデジタル放送送信機とから構成される。この送信装置12は、ファイル送出装置11から取得した放送用IPパケットを、ファイルの送信開始時刻になると、放送伝送路30を介して放送波により送信する。
【0059】
(データ補完サーバ)
データ補完サーバ13は、CPU等の演算装置と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置と、外部との各種情報の送受信を行う入出力インタフェースおよび通信インタフェース装置とを備えたコンピュータと、このコンピュータにインストールされたプログラムとから構成される。このファイル送出装置11は、ハードウェア装置とソフトウェアとが協働することによって、前記したハードウェア資源がプログラムによって制御されることにより実現され、図4に示すように、ファイル情報記憶手段131と、補完要求用IPパケット受信手段132と、分割数決定手段133と、補完用IPパケット生成手段134と、補完用IPパケット送信手段135とを備えている。
【0060】
ファイル情報記憶手段131は、放送伝送路30を介して伝送されるファイル毎に、当該ファイルに含まれるデータユニット(ファイル断片)の規定サイズを記憶するものであり、例えば、一般的なメモリやハードディスク等から構成される。
【0061】
補完要求用IPパケット受信手段132は、受信端末21から、通信回線40を介して、受信ファイル中の未取得のデータユニット(ファイル断片)を特定する特定情報を含む補完要求用IPパケット60を受信するものである。本実施形態では、未取得のデータユニットを特定する特定情報をダウンロードヘッダ421の情報とした。すなわち、未取得のデータユニットを特定する情報は、図7に示すTransport File ID501と、Block Number502と、Sequence Number503である。
【0062】
分割数決定手段133は、受信端末21から受信した補完要求用IPパケット60に含まれるダウンロードヘッダ421の情報に基づいて、ファイル情報記憶手段131から当該未取得のデータユニットの規定サイズを抽出し、抽出した規定サイズを規定した所定の整数値を当該データユニットの分割数として決定するものである。つまり、分割数決定手段133は、補完要求用IPパケット60で要求される欠損データユニットを特定するTransport File IDのファイルを、送信装置12から放送伝送路30で送信した際のデータユニットの規定サイズを抽出し、分割数を決定する。
【0063】
補完用IPパケット生成手段134は、受信端末21から受信した補完要求用IPパケット60に含まれるダウンロードヘッダ421の情報に基づいて、当該未取得のデータユニットを規定サイズを規定した所定の整数値の個数の均等なデータサイズの部分ファイル断片(要求されたデータユニットの一部)に分割してパケット化して補完用IPパケット70を生成するものである。本実施形態では、補完用IPパケット生成手段は、分割数決定手段133で決定された分割数で未取得のデータユニットを分割することとした。また、補完用IPパケット生成手段134は、分割した部分ファイル断片(要求されたデータユニットの一部)に対して、要求されたデータユニット内の位置を示す分割順序情報を付与する。補完用IPパケット送信手段135は、生成された補完用IPパケットを通信回線40を介して受信端末21に送信するものである。
【0064】
前記補完用IPパケット生成手段134で生成される補完用IPパケット70は、図8に示すように、データ部に、生成されたデータユニットの一部601(部分ファイル断片)を含み、ヘッダ部にリペアヘッダ621(リペア用ヘッダ)を含む。なお、図8では、IP/UDPヘッダの図示を省略したが、図8においてIP/UDPヘッダ441はリペアヘッダ621の上側の階層に配置されることになる。
【0065】
リペアヘッダ621は、未取得のファイル断片を特定する特定情報と、分割順序情報とを含む。未取得のファイル断片を特定する特定情報は、ダウンロードヘッダ421の情報である。また、分割順序情報は、未取得のファイル断片内における部分ファイル断片の位置を示す情報である。具体的には、図8に示すリペアヘッダ621は、フィールドとして、Transport File ID501と、Block Number502と、Sequence Number503と、suffix641と、Reserved642とを備えた合計12バイトのヘッダである。
【0066】
Transport File ID501、Block Number502およびSequence Number503は、図7に示したダウンロードヘッダ421のフィールドと共通なので同じ符号を付している。suffixフィールド641は、分割順序情報が記載されるフィールドである。Reservedフィールド642は将来のための拡張領域である。なお、図8において、suffix641と、Reserved642とは合計4バイトであれば、個々のフィールドのビット数は任意でよい。ここで、分割数が3である場合のsuffixフィールド641の分割順序情報の具体例を図9に示す。
【0067】
図9(a)に示すように、放送伝送路30上の放送用IPパケット50のデータユニット(ファイル断片)のサイズが「4032バイト」であるとする。この場合、図9(b)に示すように、通信回線40上の補完用IPパケット70のデータユニット(放送用IPパケット50のデータユニットの一部、すなわち部分ファイル断片)のサイズはそれぞれ「1344バイト」となる。この際、分割前の放送用IPパケット50のデータユニットのブロック番号およびシーケンス番号を示すため、パケットごとにリペアヘッダ621a,621b,621cを付加する。放送用IPパケット50のデータユニット(ファイル断片)を分割した部分ファイル断片としてのデータユニット601a,601b,601c(それぞれは元のデータユニットの一部)が3等分され、付加されるリペアヘッダ621a,621b,621cにおいては、同一のブロック番号およびシーケンス番号を有することになる。
【0068】
さらに、1番目の補完用IPパケットのデータユニット601a(元のデータユニットの一部)に付加されるリペアヘッダ621aに対して「suffix=1」が付与される。また、2番目の補完用IPパケットのデータユニット601b(元のデータユニットの一部)に付加されるリペアヘッダ621bに対して「suffix=2」が付与される。同様に、3番目の補完用IPパケットのデータユニット601c(元のデータユニットの一部)に付加されるリペアヘッダ621cに対して「suffix=3」が付与される。なお、図9では、各パケットにおいて、IP/UDPヘッダの図示を省略した。
【0069】
(受信端末)
受信端末21は、CPU等の演算装置と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置と、リモコン等の入力装置と、外部との各種情報の送受信を行う通信インタフェース装置とを備えたコンピュータと、このコンピュータにインストールされたプログラムと、デジタル放送を受信するチューナと、LCD等のテレビモニタから構成される。
【0070】
受信端末21は、ハードウェア装置とソフトウェアとが協働することによって、前記したハードウェア資源がプログラムによって制御されることにより実現され、図5に示すように、放送受信手段211と、ファイル復元手段212と、欠損判別手段213と、ファイル蓄積手段214と、補完要求用IPパケット生成手段215と、補完要求用IPパケット送信手段216と、補完用IPパケット受信手段217と、補完断片構築手段218と、ファイル修復手段219と、再生手段220と、操作部221と、出力表示部222とを備えている。
【0071】
放送受信手段211は、例えばチューナから構成され、放送伝送路30を介して伝送される放送用IPパケット50をコンテンツ(ファイル)を構成するデータとして受信するものである。受信された放送用IPパケット50は、ファイル復元手段212に出力される。放送受信手段211は、番組表などにより予め通知された時刻に、放送伝送路30で伝送される放送用IPパケット50を受信する。
【0072】
ファイル復元手段212は、放送受信手段211で受信された各放送用IPパケット50のダウンロードヘッダ421(図7参照)のTransport File ID501により、復元すべきファイルを特定する。また、ファイル復元手段212は、ダウンロードヘッダ421のBlock Number502と、Sequence Number503とに基づいて、対象とするファイルを構成するデータユニット401を順番に連結することでコンテンツ(ファイル)を元通りに構成する(復元する)。データユニット401を順番に連結したデータは、欠損判別手段213に出力される。
【0073】
欠損判別手段213は、受信した放送用IPパケット50のヘッダ部の情報に基づいて、受信した各放送用IPパケット50に含まれるデータユニット(ファイル断片)を連結してファイルを元通りに構成する際にデータユニット401(ファイル断片)が欠損しているか否かを判別するものである。この欠損判別手段213は、ダウンロードヘッダ421のTransport File ID501で特定されるファイルにおいて、Block Number502毎に、Sequence Number503の連続する整数値のうち、数値が抜けている場合に、放送用IPパケット50が喪失してデータユニット401が欠損しているものと判定する。例えばシーケンス番号が「1」から「3」の連続する整数値を有するパケットのうち、シーケンス番号が「2」であるパケットが喪失していれば、該当するパケットに格納されたデータユニット401が欠損していることになる。
【0074】
データユニット401が欠損している場合、欠損判別手段213は、該当する放送用IPパケット50のダウンロードヘッダ421の情報を補完要求用IPパケット生成手段215に出力する。データユニット401が欠損していない場合、欠損判別手段213は、元通りに構成されたファイルをファイル蓄積手段214に格納する。なお、データユニット401が欠損していない場合、欠損判別手段213は、元通りに構成されたファイルを再生手段220を介して出力表示部222に出力するようにしてもよい。
【0075】
ファイル蓄積手段214は、元通りに構成されたファイルを蓄積するものであり、例えば、一般的なハードディスク等から構成される。このファイル蓄積手段214は、ファイル復元手段212により正確に完全に復元されたファイルを蓄積すると共に、ファイル修復手段219の処理により欠損データが補完されたファイルを蓄積する。
【0076】
補完要求用IPパケット生成手段215は、データユニット(ファイル断片)が欠損している場合に、未取得のデータユニットを特定する情報として、当該データユニットに対応した放送用IPパケット50のヘッダ部に格納された情報を含む補完要求用IPパケット60を生成するものである。本実施形態では、補完要求用IPパケット生成手段215は、放送の再度の受信により、欠損したデータユニット401を補完した後、さらに欠損が残存する場合に、補完要求用IPパケット60を生成する。生成された補完要求用IPパケット60は補完要求用IPパケット送信手段216に出力される。生成される補完要求用IPパケット60は、ヘッダ部に、補完対象の放送用IPパケット50のダウンロードヘッダ421の情報と、データ補完サーバ13を宛先、受信端末21を送信元とするIP/UDPヘッダとを含む。なお、補完要求用IPパケット60は、データ部に、補完を要求するメッセージを含む。
【0077】
補完要求用IPパケット送信手段216は、例えば通信インタフェース等から構成され、補完要求用IPパケット生成手段215で生成した補完要求用IPパケット60を通信回線40を介してデータ補完サーバ13に送信するものである。
【0078】
補完用IPパケット受信手段217は、例えば通信インタフェース等から構成され、データ補完サーバ13に送信した1つの補完要求用IPパケット60当たり、データユニット(ファイル断片)の規定サイズを規定した所定の整数値の個数(例えば3個)だけ補完用IPパケット70をデータ補完サーバ13から通信回線40を介して受信するものである。受信した補完用IPパケット70は補完断片構築手段218に出力される。
【0079】
なお、補完用IPパケット70のリペアヘッダ621に対応した各フィールド(Transport File ID501、Block Number502およびSequence Number503)の値が、補完要求用IPパケット60に含められたダウンロードヘッダ421の各フィールドの値とすべて同一であるような補完用IPパケット70の個数は、要求されたデータユニットの規定サイズを規定した所定の整数値の個数(例えば3個)だけ存在することになる。
【0080】
補完断片構築手段(補完ファイル断片構築手段)218は、補完用IPパケット受信手段217で受信した所定の整数値の個数(例えば3個)の補完用IPパケット70のリペアヘッダ621に含まれるそれぞれのsuffixフィールド641の分割順序情報(番号)に基づいて、各補完用IPパケット70に格納されたデータユニットの一部601(部分ファイル断片)を連結して、未取得のデータユニット401を補完断片として構築するものである。このとき、補完断片構築手段218は、データユニットの一部601(部分ファイル断片)を、suffixフィールド641の番号順に連結して、シーケンス番号503が同じ値であるデータユニットを構成する。同様に、シーケンス番号503が他の値であるデータユニットの一部601(部分ファイル断片)も連結する。なお、対象としている同一のTransport File ID501で特定されるファイルについて、ブロック番号502の単位で補完する場合は、ブロック番号502が同じ値であり、かつ、シーケンス番号503が連続するデータユニット401を連結して補完断片とする。構築された補完断片はファイル修復手段219に出力される。
【0081】
ファイル修復手段219は、未復元のファイル中の欠損位置に、補完断片構築手段218で構築された補完断片(データユニット)を連結するものである。このファイル修復手段219は、対象としている同一のTransport File ID501の、当該ブロック番号502および当該シーケンス番号503のデータユニット401を、放送伝送路30で受信した未復元のファイルの欠損箇所に挿入する。これら補完断片は、図3(b)および図3(c)を参照して説明したように、放送の再度の受信によって、欠損したデータユニットを補完した後、さらに、欠損が残存しているデータ領域82に連結される。補完断片が連結されたファイルはファイル蓄積手段214に格納される。
【0082】
再生手段220は、リモコン等の操作部221からの指示に基づいて、ファイル蓄積手段214に蓄積されているコンテンツ(ファイル)または、受信によりリアルタイムに取得したコンテンツ(ファイル)を再生して、LCDモニタ等の出力表示部222に出力するものである。
【0083】
なお、受信端末21は、ファイル復元手段212によって、各放送用IPパケット50を順番に連結しながらファイルを元通りに構成していく途中において、欠損判別手段213によって、欠損したデータユニットあるいは連続したデータユニット群の欠損を発見する度に逐次的に、補完を要求するように構成することもできる。この場合には、受信端末21は、ファイル修復手段219によって逐次的にファイルを修復するので、ファイル修復手段219の処理結果を欠損判別手段213に出力する。そして、欠損判別手段213によって、欠損したデータユニットが存在しないと判定されるまで一連の補完処理を繰り返す。このような構成でも受信ファイルの完全性を確保できる。
【0084】
[放送用IPパケットの具体例]
通信回線40として、例えば、イーサネット(登録商標)を利用する。イーサネット(登録商標)において、伝送するパケットを分割することなくMACフレームに格納可能な大きさは1500バイトである。ここでは、放送用IPパケット50Aとして、図11(b)に示したIPv6/UDPパケット901を伝送する場合を想定し、できるだけ大きなデータサイズをデータ部920(ペイロード)に確保するため、拡張ヘッダ913は無い(0バイト)ものとする。IPv6ヘッダ911のサイズは40バイトであり、UDPヘッダ912のサイズは8バイトなので、イーサネット(登録商標)を利用する場合、UDPペイロード(データ部920)の最大サイズは1452バイトとなる。さらに、本実施形態では、データ補完サーバ13において、補完用IPパケット70を生成するために、UDPペイロードに12バイトのリペアヘッダ621を付加する必要があるため、UDPペイロードの最大サイズからさらに12バイトを差し引く。その結果、補完用IPパケット70のデータ部に格納されるデータユニットの一部601として伝送可能な大きさは最大1440バイトとなる。以下、ファイルを構成するパケットについて3つの例を順番に示す。
【0085】
(第1例:タイムスタンプ付きTSの集合であるファイル)
図10は、本発明の実施形態に係るファイル送出装置で生成される放送用IPパケットの一例を示す図である。この例では、ファイル送出装置11で生成されるファイルは、タイムスタンプ付きTS(TTS:Timestamped Transport Stream)で構成されるコンテンツとする。タイムスタンプ付きTSは、図10(a)に示すように、188バイトのTSパケット710ごとに、4バイトのタイムスタンプ720を付加した合計192バイトのタイムスタンプ付きTSパケット700の集合である。タイムスタンプ付きTSについては、「社団法人電波産業会、“デジタル放送におけるデータ放送符号化方式と伝送方式”、第1分冊、ARIB STD−B.24、1999年」に規定されている。
【0086】
前記したように、IPv6/UDPパケット901としての補完用IPパケット70のデータ部に格納されるデータユニットの一部601として伝送可能な大きさは最大1440バイトである。192バイトのタイムスタンプ付きTSパケット700を仮に8個合わせると、1536バイトになってしまい、通信回線40で伝送可能な最大サイズを超えてしまう。そこで、タイムスタンプ付きTSを、通信回線40を用いて伝送する場合、1つのIPパケットに7個のタイムスタンプ付きTSパケット700を格納し伝送することとする。また、本実施形態では、一例として、放送用IPパケット50のペイロードサイズは、補完用IPパケット70のペイロードサイズの3倍であるものとした。このため、ファイル送出装置11で生成され、ファイル送出装置11から放送伝送路30を介して受信端末21に伝送される放送用IPパケット50のデータ部に格納されるデータユニット401のサイズを、(192×7)×3=4032バイトとした。このときのパケットサイズを図10(b)に模式的に示す。
【0087】
図10(b)において、601a,601b,601cは、データ補完サーバ13から通信回線40を介して受信端末21に伝送される補完用IPパケット70のデータ部(ペイロード)に格納されるデータユニット(部分ファイル断片、データユニット401の一部)に相当する。各データユニット601a,601b,601cのサイズは、(192×7)=1344バイトである。また、図10(b)において、データユニット401には、ダウンロードヘッダ421とIP/UDPヘッダ441とが付加されて放送用IPパケット50Aが構成されている。
【0088】
本実施形態では、便宜上、図10(c)に示すように、65536個の放送用IPパケット50Aで1つのブロック51を構成し、ブロック内のシーケンス番号を、「0〜65535」とした。なお、図10(d)において、ファイル301をK個のブロック51で構成し、ブロック番号を、「0〜K−1」とした。
【0089】
(第2例:TSの集合であるファイル)
この例では、ファイル送出装置11で生成されるファイルは、TS(Transport Stream)で構成されるコンテンツとする。TSは、188バイトのTSパケット710の集合である。188バイトのTSパケット710を仮に8個合わせると、1504バイトになってしまい、通信回線40で伝送可能な最大サイズ(1440バイト)を超えてしまう。そこで、TSを通信回線40を用いて伝送する場合、1つのIPパケットに7個のTSパケット710を格納し伝送することとする。
【0090】
また、本実施形態では、一例として、放送用IPパケット50のペイロードサイズは、補完用IPパケット70のペイロードサイズの3倍であるものとした。このため、ファイル送出装置11で生成され、ファイル送出装置11から放送伝送路30を介して受信端末21に伝送される放送用IPパケット50のデータ部に格納されるデータユニット401のサイズを、(188×7)×3=3948バイトとした。この場合、補完用IPパケット70のデータ部(ペイロード)に格納される部分ファイル断片(データユニットの一部)のサイズは、(188×7)=1316バイトである。
【0091】
(第3例:任意のサイズに分割できるファイル)
この例では、ファイル送出装置11で生成されるファイルは、任意のサイズに分割できるファイルとする。そこで、任意のサイズに分割できるファイルを通信回線40で伝送する場合、通信回線40で伝送できる最大サイズ(1440バイト)のファイル断片(データユニットの一部601)を格納し伝送することとする。また、本実施形態では、一例として、放送用IPパケット50のペイロードサイズは、補完用IPパケット70のペイロードサイズの3倍であるものとしたため、放送用IPパケット50のデータ部に格納されるデータユニット401のサイズを、(1440)×3=4320バイトとした。
【0092】
本実施形態によれば、ファイル送出装置11は、放送伝送路30で伝送される放送用IPパケット50のペイロードサイズが、データ補完サーバ13から通信回線40で受信端末21へ伝送される補完用IPパケット70のペイロードサイズより大きくかつその整数倍となるように、当該放送用IPパケット50を生成する。また、データ補完サーバ13は、複数の補完用IPパケット70のリペアヘッダ621のsuffixフィールドに分割順序情報を付加するので、複数の補完用IPパケット70を受信した受信端末21は、suffixフィールドに記述された分割順序情報を用いて各部分ファイル断片を連結することで、放送伝送路30で伝送されたものと同一のデータユニット401(補完断片)を構成することが可能となる。したがって、受信端末21は、連結した補完断片を欠損位置に挿入することで容易に補完を行うことができる。この際、欠損位置の特定は、放送伝送路30で伝送される放送用IPパケット50に付加したシーケンス番号等のダウンロードヘッダ421で行うことができる。そのため、従来のように欠損情報のバイト位置などの低レベルの情報を用いる必要がない。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、この実施形態には限定されない。例えば、本実施形態では、一例として、放送用IPパケット50のペイロードサイズは、補完用IPパケット70のペイロードサイズの3倍であるものとしたが、これに限定されるものではなく、2倍または4倍以上の整数倍であってもよい。表1に一例を記載する。放送用IPパケット50として、例えば、192バイトのTTSの集合であるファイルを伝送する例では、9408バイト(1344×7)や16128バイト(1344×12)等でもよい。これらのサイズは、受信端末21の処理能力あるいはチューナーユニットから受信アプリケーションまでのネットワーク環境などを考慮して決定するべきものである。
【0094】
【表1】

【0095】
また、本実施形態では、補完用IPパケット70は、リペアヘッダ621を付加した後、IP/UDPヘッダ441を付加し、UDPを用いて送信することとしたが、UDP以外に、TCP(Transmission Control Protocol)で応答することも可能である。この場合、リペアヘッダ621を付加した後、TCPヘッダおよびIPヘッダを付加したパケットとして応答することとなる。
【0096】
また、本実施形態では、放送伝送路30を高度BS伝送路として説明したが、これに限定されず、一般的な放送伝送路での配信に用いることが可能である。IPパケットを、放送伝送路を用いて伝送する方法として、MPE (Multi Protocol Encapsulation , ETSI EN 301 192)やULE(Unidirectional Lightweight Encapsulation, RFC 4326)等が知られる。これらを用いた場合にも、本発明を適用することが可能になる。ただし、MPEでは、IPパケットの上限サイズは4KBである。
【0097】
また、本実施形態のデータ補完サーバ13は、ファイル情報記憶手段131と、分割数決定手段133とを備えることとしたが、これらの構成要素は必須ではない。例えば、コンテンツ提供事業者10において、放送伝送路30で伝送する放送用IPパケット50を、各コンテンツ(ファイル)共通のデータサイズ(例えば、4032バイト)に固定しておけば分割数は一定(例えば、3)だからである。このように構成した場合、データ補完サーバは、受信端末21から要求される度に分割数を決定する必要がない。なお、ファイル情報記憶手段131と、分割数決定手段133とを備えるように構成した場合には、例えば、放送用IPパケット50において、音楽コンテンツは4032(=1344×3)バイトのペイロード長、映像コンテンツは16128(=1344×12)バイトのペイロード長のようにコンテンツ(ファイル)の種類に応じて変更された放送用IPパケット50を1台のデータ補完サーバ13で補完できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施形態に係るファイル送出装置、データ補完サーバおよび受信端末を含む高度衛星デジタル放送システムを模式的に示す構成図である。
【図2】図1に示す高度衛星デジタル放送システムにおいてデータ欠損発生時にその補完を行う動作を示すシーケンス図である。
【図3】図1に示す高度衛星デジタル放送システムにおけるデータ欠損とその補完の様子の説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係るファイル送出装置およびデータ補完サーバの構成を模式的に示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態に係る受信端末の構成を模式的に示すブロック図である。
【図6】本発明の実施形態に係るファイル送出装置で生成される放送用IPパケットの構造を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るファイル送出装置においてデータユニットに付加されるダウンロードヘッダの構造を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係るデータ補完サーバにおいてデータユニットに付加されるリペアヘッダの構造を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係るファイル送出装置で生成される放送用IPパケットと本発明の実施形態に係るデータ補完サーバにおいて生成される補完用IPパケットの一例を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係るファイル送出装置で生成される放送用IPパケットの一例を示す図である。
【図11】IPパケットの一般的な構成を示す図である。
【符号の説明】
【0099】
1 高度衛星デジタル放送システム
11 ファイル送出装置(放送用パケット生成装置)
111 ファイル入力手段
112 ファイル分割手段
113 放送用パケット生成手段
114 ファイル蓄積手段
12 送信装置
13 データ補完サーバ
131 ファイル情報記憶手段
132 補完要求用IPパケット受信手段
133 分割数決定手段
134 補完用IPパケット生成手段
135 補完用IPパケット送信手段
21 受信端末
211 放送受信手段
212 ファイル復元手段
213 欠損判別手段
214 ファイル蓄積手段
215 補完要求用IPパケット生成手段
216 補完要求用IPパケット送信手段
217 補完用IPパケット受信手段
218 補完断片構築手段
219 ファイル修復手段
220 再生手段
221 操作部
222 出力表示部
30 放送伝送路
31 人工衛星
40 通信回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイルを分割したファイル断片毎にIPパケットとして放送伝送路を介して配信される放送用IPパケットを生成する放送用パケット生成装置と、前記放送用IPパケットとして伝送されるファイルを受信した受信端末が、受信したファイル中の未取得のファイル断片をデータ補完サーバから通信回線を介して取得することで前記放送伝送路を介して受信したファイルの完全性を確保するデジタル放送システムにおける前記放送用パケット生成装置であって、
ファイル毎に前記ファイル断片のサイズが前記データ補完サーバから前記受信端末に伝送されるパケットのデータ部に格納されるデータのサイズより大きくかつ前記サイズに所定の整数値を乗じた規定サイズとなるように前記ファイルを分割するファイル分割手段と、
前記ファイルをダウンロードするために前記ファイル断片を特定する特定情報をヘッダ部に格納すると共に前記ファイル断片をデータ部に格納した前記放送用IPパケットを生成する放送用パケット生成手段と、
を備えることを特徴とする放送用パケット生成装置。
【請求項2】
前記ファイル断片を特定する特定情報は、
当該ファイル断片が含まれるファイルの識別子と、当該ファイル断片を含む複数のファイル断片からなるブロックの前記ファイル内の位置を示すブロック番号と、前記ブロック内の当該ファイル断片の位置を示すシーケンス番号とを有するダウンロードヘッダであることを特徴とする請求項1に記載の放送用パケット生成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放送用パケット生成装置で生成された前記規定サイズのファイル断片をデータ部に含み当該ファイル断片を特定する特定情報をヘッダ部に含む放送用IPパケットとして伝送されるファイルを放送伝送路を介して受信した受信端末に対して、前記放送用IPパケットを補完するための補完用IPパケットを通信回線を介して前記受信端末に伝送するデータ補完サーバであって、
前記受信端末から、前記ファイル中の未取得のファイル断片を特定する特定情報を含む補完要求用IPパケットを受信する補完要求用IPパケット受信手段と、
前記未取得のファイル断片を特定する特定情報に基づいて、当該未取得のファイル断片を前記規定サイズを規定した所定の整数値の個数の均等なデータサイズの部分ファイル断片に分割し、前記分割された部分ファイル断片に当該ファイル断片内の位置を示す分割順序情報を付与し、当該ファイル断片を補完するために前記ファイル断片を特定する特定情報と前記分割順序情報とをヘッダ部に格納すると共に前記部分ファイル断片をデータ部に格納した前記補完用IPパケットを生成する補完用IPパケット生成手段と、
前記補完用IPパケットを前記受信端末に送信する補完用IPパケット送信手段と、
を備えることを特徴とするデータ補完サーバ。
【請求項4】
前記放送伝送路を介して伝送されるファイル毎に、当該ファイルに含まれる前記ファイル断片の規定サイズを記憶したファイル情報記憶手段と、
前記補完要求用IPパケットに含まれる前記未取得のファイル断片を特定する特定情報に基づいて、前記ファイル情報記憶手段から当該未取得のファイル断片の規定サイズを抽出し、前記抽出した規定サイズを規定した所定の整数値を当該ファイル断片の分割数として決定する分割数決定手段とをさらに備え、
補完用IPパケット生成手段は、前記決定された分割数で前記未取得のファイル断片を分割することを特徴とする請求項3に記載のデータ補完サーバ。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の放送用パケット生成装置で生成された前記規定サイズのファイル断片をデータ部に含み当該ファイル断片を特定する特定情報をヘッダ部に含む放送用IPパケットとして伝送されるファイルを放送伝送路を介して受信し、受信したファイル中の未取得のファイル断片を請求項3または請求項4に記載のデータ補完サーバから複数の補完用IPパケットとして通信回線を介して取得する受信端末であって、
前記放送用IPパケットを受信する放送受信手段と、
前記受信した放送用IPパケットのヘッダ部の情報に基づいて、受信した各放送用IPパケットに含まれるファイル断片を連結して前記ファイルを復元する際にファイル断片が欠損しているか否かを判別する欠損判別手段と、
前記ファイル断片が欠損している場合に、未取得のファイル断片を特定する特定情報として、当該ファイル断片に対応した放送用IPパケットのヘッダ部に格納された情報を含む補完要求用IPパケットを生成する補完要求用IPパケット生成手段と、
前記生成した補完要求用IPパケットを前記データ補完サーバに送信する補完要求用IPパケット送信手段と、
前記データ補完サーバから、前記1つの補完要求用IPパケット当たり前記ファイル断片の規定サイズを規定した所定の整数値の個数だけ前記補完用IPパケットを受信する補完用IPパケット受信手段と、
前記受信した各補完用IPパケットに含まれるそれぞれの分割順序情報に基づいて、前記各部分ファイル断片を順番に連結して、前記未取得のファイル断片を構築する補完ファイル断片構築手段と、
前記ファイル断片が欠損しているファイル中の欠損位置に前記構築されたファイル断片を連結するファイル修復手段と、
を備えることを特徴とする受信端末。
【請求項6】
ファイルを分割したファイル断片毎にIPパケットとして放送伝送路を介して配信される放送用IPパケットを生成する放送用パケット生成装置と、前記放送用IPパケットとして伝送されるファイルを受信した受信端末が、受信したファイル中の未取得のファイル断片をデータ補完サーバから通信回線を介して取得することで前記放送伝送路を介して受信したファイルの完全性を確保するデジタル放送システムにおいて、前記放送用IPパケットを生成するために、前記放送用パケット生成装置を構成するコンピュータを、
ファイル毎に前記ファイル断片のサイズが前記データ補完サーバから前記受信端末に伝送されるパケットのデータ部に格納されるデータのサイズより大きくかつ前記サイズに所定の整数値を乗じた規定サイズとなるように前記ファイルを分割するファイル分割手段、
前記ファイルをダウンロードするために前記ファイル断片を特定する特定情報をヘッダ部に格納すると共に前記ファイル断片をデータ部に格納した前記放送用IPパケットを生成する放送用パケット生成手段、
として機能させることを特徴とする放送用パケット生成プログラム。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の放送用パケット生成装置で生成された前記規定サイズのファイル断片をデータ部に含み当該ファイル断片を特定する特定情報をヘッダ部に含む放送用IPパケットとして伝送されるファイルを放送伝送路を介して受信した受信端末に対して、前記放送用IPパケットを補完するための補完用IPパケットを通信回線を介して前記受信端末に伝送するために、コンピュータを、
前記受信端末から、前記ファイル中の未取得のファイル断片を特定する特定情報を含む補完要求用IPパケットを受信する補完要求用IPパケット受信手段、
前記未取得のファイル断片を特定する特定情報に基づいて、当該未取得のファイル断片を前記規定サイズを規定した所定の整数値の個数の均等なデータサイズの部分ファイル断片に分割し、前記分割された部分ファイル断片に当該ファイル断片内の位置を示す分割順序情報を付与し、当該ファイル断片を補完するために前記ファイル断片を特定する特定情報と前記分割順序情報とをヘッダ部に格納すると共に前記部分ファイル断片をデータ部に格納した前記補完用IPパケットを生成する補完用IPパケット生成手段、
前記補完用IPパケットを前記受信端末に送信する補完用IPパケット送信手段、
として機能させることを特徴とするデータ補完プログラム。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の放送用パケット生成装置で生成された前記規定サイズのファイル断片をデータ部に含み当該ファイル断片を特定する特定情報をヘッダ部に含む放送用IPパケットとして伝送されるファイルを放送伝送路を介して受信し、受信したファイル中の未取得のファイル断片を請求項3または請求項4に記載のデータ補完サーバから複数の補完用IPパケットとして通信回線を介して取得するために、前記放送用IPパケットを受信する放送受信手段を備えた受信端末のコンピュータを、
前記受信した放送用IPパケットのヘッダ部の情報に基づいて、受信した各放送用IPパケットに含まれるファイル断片を連結して前記ファイルを復元する際にファイル断片が欠損しているか否かを判別する欠損判別手段、
前記ファイル断片が欠損している場合に、未取得のファイル断片を特定する特定情報として、当該ファイル断片に対応した放送用IPパケットのヘッダ部に格納された情報を含む補完要求用IPパケットを生成する補完要求用IPパケット生成手段、
前記生成した補完要求用IPパケットを前記データ補完サーバに送信する補完要求用IPパケット送信手段、
前記データ補完サーバから、前記1つの補完要求用IPパケット当たり前記ファイル断片の規定サイズを規定した所定の整数値の個数だけ前記補完用IPパケットを受信する補完用IPパケット受信手段、
前記受信した各補完用IPパケットに含まれるそれぞれの分割順序情報に基づいて、前記各部分ファイル断片を順番に連結して、前記未取得のファイル断片を構築する補完ファイル断片構築手段、
前記ファイル断片が欠損しているファイル中の欠損位置に前記構築されたファイル断片を連結するファイル修復手段、
として機能させることを特徴とするファイル受信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−62977(P2010−62977A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228066(P2008−228066)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】