説明

放電灯点灯装置及び照明器具

【課題】 電極加熱動作の継続時間を放電灯毎に適正な長さとすることができる放電灯点灯装置及び照明器具を提供する。
【解決手段】 放電灯Laに出力されるランプ電流が正負対称であるか否かを判定する対称判定部2と、放電灯Laへの出力電力を制御する制御部3とを備える。制御部3は、放電灯Laでの放電を開始させるための始動動作の後、放電灯Laの電極を加熱するための電極加熱動作を行い、その後、矩形波交流電力により放電灯Laの点灯を維持する定常動作に移行する。制御部3は、電極加熱動作中に対称判定部2によってランプ電流が正負対称であると判定されたときに、定常動作に移行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯装置及び照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、HID(High-intensity discharge lamp)とも呼ばれる高圧放電灯のような熱陰極型の放電灯を点灯させる放電灯点灯装置として、直流電力を入力されて交流電力を出力する電力変換部と、電力変換部を制御する制御部とを備える放電灯点灯装置が提供されている。
【0003】
さらに、この種の放電灯点灯装置として、制御部が、放電灯の始動時、電力変換部の出力電圧を比較的に高くして放電灯を始動させる始動動作の後、放電灯の点灯維持のための交流電力を電力変換部から放電灯に出力させる定常動作を開始する前に、放電灯の各電極の加熱のために、電力変換部の出力電力の周波数を比較的に高くする電極加熱動作を行うものが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記の放電灯点灯装置によれば、電極加熱動作が行われない場合に比べて定常動作への移行後の放電が安定し、立ち消えが抑制される。
【特許文献1】特表2005−507553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、図18(a)に示すように、始動動作が行われる始動期間P1の後の、電極加熱動作が行われる電極加熱期間P2が短いと、定常動作が行われる定常期間P3の開始前に、放電灯の電極が十分に加熱されず、放電灯への出力電流(以下、「ランプ電流」と呼ぶ。)が極性間で不均一となる。このように放電灯の電極が十分に加熱されないまま定常動作に移行すると、定常動作への移行後に放電が不安定となり立ち消えが発生する可能性がある。従って、図18(b)に示すように電極加熱期間P2を十分に長くする必要があるが、必要な電極加熱期間P2の長さ(電極加熱動作の継続時間)は、放電灯毎に異なる。
【0006】
しかし、接続が想定される放電灯のうち最も長時間の電極加熱動作を必要とする放電灯に合わせて電極加熱動作の継続時間を決定すると、その継続時間は他の放電灯に対しては過剰となる。電極加熱動作は、定常動作よりも大きい電力を電力変換部から出力させるものであるため、放電灯の寿命に対する悪影響を抑えるためには、電極加熱動作の継続時間を、なるべく短くする必要がある。
【0007】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、電極加熱動作の継続時間を放電灯毎に適正な長さとすることができる放電灯点灯装置及び照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、直流電力を入力されて交流電力を出力する電力変換部と、電力変換部の出力端間に放電灯とともに接続されて放電灯の始動のための高電圧を発生させる始動部と、電力変換部を制御する制御部とを備え、制御部は、放電灯の始動時、始動部が発生させる高電圧により放電灯を始動させる始動動作の後、放電灯の点灯維持のための交流電力を電力変換部から放電灯に出力させる定常動作を開始する前に、放電灯の各電極を加熱するために電力変換部の出力の周波数を定常動作中よりも高くする電極加熱動作を行うものであって、放電灯に出力される出力電力が正負対称であるか否かを判定する対称判定部を備え、制御部は、電極加熱動作中に、対称判定部により出力電力が正負対称であると判定されたときに定常動作に移行することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、電極加熱動作の継続時間を常に一定とする場合に比べ、電極加熱動作の継続時間を放電灯毎に適正な長さとすることができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、電力変換部は、入力された直流電力を降圧する降圧チョッパ回路と、降圧チョッパ回路が出力した直流電力を交番するフルブリッジ回路とからなることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、電力変換部はフルブリッジ回路からなり、制御部は、フルブリッジ回路を構成するスイッチング素子のオンオフのデューティ比によって電力変換部の出力電力を制御することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、電力変換部はハーフブリッジ回路からなり、制御部は、ハーフブリッジ回路を構成するスイッチング素子のオンオフのデューティ比によって電力変換部の出力電力を制御することを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの発明において、対称判定部は出力電力が正負対称であるか否かの判定を少なくとも電極加熱動作中には常時行うことを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1〜4のいずれかの発明において、対称判定部は出力電力が正負対称であるか否かの判定を電極加熱動作の開始後に所定のマスク時間が経過するまでには行わず、マスク時間の経過後に少なくとも電極加熱動作が終了するまでは出力電力が正負対称であるか否かの判定を常時行うことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、マスク時間が経過するまでは対称判定部の出力が制御部の動作に反映されないことにより、電極加熱動作の開始直後の放電灯での放電が不安定な状態で一時的にランプ電流が対称となった場合でも、制御部が定常動作に移行してしまうことがない。
【0016】
請求項7の発明は、請求項1〜4のいずれかの発明において、対称判定部は出力電力が正負対称であるか否かの判定を電極加熱動作の開始後に所定のマスク時間が経過するまでには行わず、マスク時間の経過後に少なくとも電極加熱動作が終了するまでは出力電力が正負対称であるか否かの判定を定期的に行うことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、マスク時間が経過するまでは対称判定部の出力が制御部の動作に反映されないことにより、電極加熱動作の開始直後の放電灯での放電が不安定な状態で一時的にランプ電流が対称となった場合でも、制御部が定常動作に移行してしまうことがない。
【0018】
請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれかの発明において、電極加熱動作の継続時間は所定の上限時間以下であることを特徴とする。
【0019】
請求項9の発明は、請求項8の発明において、制御部は、対称判定部によって出力電力が正負対称であると判定されないまま、電極加熱動作の継続時間が上限時間に達したとき、電力変換部からの交流電力の出力を停止させることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、電極加熱動作が際限なく継続されて放電灯や回路部品に過剰な電気的ストレスがかかることを避けることができる。
【0021】
請求項10の発明は、請求項8の発明において、制御部は、対称判定部によって出力電力が正負対称であると判定されないまま、電極加熱動作の継続時間が上限時間に達したとき、始動動作に戻ることを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、請求項9の発明に比べて始動性が改善される。
【0023】
請求項11の発明は、請求項8の発明において、制御部は、対称判定部によって出力電力が正負対称であると判定されないまま、電極加熱動作の継続時間が上限時間に達したとき、所定の停止時間にわたって電力変換部からの交流電力の出力を停止させた後、始動動作に戻ることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、請求項9の発明に比べて始動性が改善される。また、請求項10の発明に比べ、始動動作に戻った後での放電灯の始動までの時間が短縮される。
【0025】
請求項12の発明は、請求項10又は請求項11の発明において、制御部は、電極加熱動作から始動動作に戻った回数を計数し、該回数が所定の上限回数に達したとき、電力変換部からの交流電力の出力を停止させることを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、始動動作と電極加熱動作とが際限なく繰り返されて放電灯や回路部品に過剰な電気的ストレスがかかることを避けることができる。
【0027】
請求項13の発明は、請求項1〜12のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置と、放電灯点灯装置を保持する器具本体とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
請求項1の発明によれば、放電灯に出力される出力電力が正負対称であるか否かを判定する対称判定部を備え、制御部は、電極加熱動作中に、対称判定部により出力電力が正負対称であると判定されたときに定常動作に移行するので、電極加熱動作の継続時間を常に一定とする場合に比べ、電極加熱動作の継続時間を放電灯毎に適正な長さとすることができる。
【0029】
請求項6及び請求項7の発明によれば、それぞれ、マスク時間が経過するまでは対称判定部の出力が制御部の動作に反映されないことにより、電極加熱動作の開始直後の放電灯での放電が不安定な状態で一時的にランプ電流が対称となった場合でも、制御部が定常動作に移行してしまうことがない。
【0030】
請求項9の発明によれば、制御部は、対称判定部によって出力電力が正負対称であると判定されないまま、電極加熱動作の継続時間が上限時間に達したとき、電力変換部からの交流電力の出力を停止させるので、電極加熱動作が際限なく継続されて放電灯や回路部品に過剰な電気的ストレスがかかることを避けることができる。
【0031】
請求項10の発明によれば、制御部は、対称判定部によって出力電力が正負対称であると判定されないまま、電極加熱動作の継続時間が上限時間に達したとき、始動動作に戻るので、請求項9の発明に比べて始動性が改善される。
【0032】
請求項11の発明によれば、制御部は、対称判定部によって出力電力が正負対称であると判定されないまま、電極加熱動作の継続時間が上限時間に達したとき、所定の停止時間にわたって電力変換部からの交流電力の出力を停止させた後、始動動作に戻るので、請求項9の発明に比べて始動性が改善され、また、請求項10の発明に比べ、始動動作に戻った後での放電灯の始動までの時間が短縮される。
【0033】
請求項12の発明によれば、制御部は、電極加熱動作から始動動作に戻った回数を計数し、該回数が所定の上限回数に達したとき、電力変換部からの交流電力の出力を停止させるので、始動動作と電極加熱動作とが際限なく繰り返されて放電灯や回路部品に過剰な電気的ストレスがかかることを避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0035】
本実施形態の放電灯点灯装置1は、図1に示すように、HID(High-intensity discharge lamp)とも呼ばれる高圧放電灯のような熱陰極型の放電灯Laを点灯させるものであって、直流電源Eから入力された直流電力を交流電力に変換する電力変換部として、4個のスイッチング素子Q1〜Q4で構成されたフルブリッジ回路を備える。スイッチング素子Q1〜Q4として、本実施形態では電界効果トランジスタ(FET)を用いている。また、上記のフルブリッジ回路の一方の出力端、すなわち、それぞれ2個ずつのスイッチング素子Q1〜Q4で構成され直流電源Eの出力端間に互いに並列に接続された2個の直列回路のうち一方の直列回路を構成するスイッチング素子Q3,Q4の接続点は、第1インダクタL1とカレントトランスCT1の一次巻線との直列回路を介して放電灯Laの一端(つまり一方の電極)に接続されている。さらに、上記のフルブリッジ回路の他方の出力端、すなわち、他方の直列回路を構成するスイッチング素子Q1,Q2の接続点は、第2インダクタL2を介して放電灯Laの他端(つまり他方の電極)に接続されている。また、上記他方の直列回路を構成するスイッチング素子Q1,Q2の接続点と、カレントトランスCT1の一次巻線と第1インダクタL1との接続点との間には、第1コンデンサC3が接続されている。さらに、第2インダクタL2はタップが設けられたいわゆるオートトランスとなっており、このタップはコンデンサC4を介してグランドに接続されている。すなわち、第1インダクタL1と、第1コンデンサC3と、第2インダクタL2と、第2コンデンサC4とは、放電灯Laとともに、電力変換部の出力端間に接続された共振回路(以下、「負荷回路」と呼ぶ。)を構成する。
【0036】
さらに、本実施形態は、カレントトランスCT1の2次巻線に接続されて放電灯Laに出力される電流(以下、「ランプ電流」と呼ぶ。)Ilaが正負対称であるか否かを判定する対称判定部2と、各スイッチング素子Q1〜Q4をオンオフ駆動する制御部3とを備える。
【0037】
対称判定部2は、図2に示すように、それぞれ非反転入力端子がダイオードD1,D2を介してカレントトランスCT1の2次巻線の一端ずつに接続され反転入力端子には所定の対称判定電圧Vsが入力された2個のコンパレータCP1,CP2と、これら2個のコンパレータCP1,CP2の出力の論理積を制御部3へ出力する論理積回路ANDとを有する。カレントトランスCT1の2次巻線の中央にはタップが設けられており、このタップはグランドに接続されている。さらに、各コンパレータCP1,CP2の非反転入力端子とダイオードD1,D2との接続点は、それぞれコンデンサC1,C2を介してグランドに接続されている。すなわち、各コンデンサC1,C2の充電電圧Vb1,Vb2は、それぞれ、ダイオードD1,D2の出力電圧Va1,Va2のピーク値すなわちコンデンサC1,C2毎に対応する向き(極性)のランプ電流Ilaのピーク値に応じた電圧となるのであり、この充電電圧Vb1,Vb2がコンデンサC1,C2に対応するコンパレータCP1,CP2の非反転入力端子にそれぞれ入力される。図3(a)に示すようにランプ電流Ilaが対称である場合には、各コンデンサC1,C2の充電電圧Vb1,Vb2がともに対称判定電圧Vsを上回ることにより、論理積回路ANDの出力(すなわち対称判定部2の出力。以下、「判定出力」と呼ぶ。)VeはHレベルとなる。一方、図3(b)に示すようにランプ電流が非対称である場合には、一方のコンデンサC2の充電電圧Vb2が対称判定電圧Vsを下回ることにより、判定出力VeはLレベルとなる。つまり、判定出力VeがHレベルであることは、放電灯Laに出力される電力が対称であると対称判定部2によって判定されたことを意味し、逆に、判定出力VeがLレベルであることは、放電灯Laに出力される電力が非対称であると対称判定部2によって判定されたことを意味する。
【0038】
制御部3は、互いに対角に位置するスイッチング素子Q1〜Q4同士が同時にオンされ且つ互いに直列に接続されたスイッチング素子Q1〜Q4同士が交互にオンオフされるようにスイッチング素子Q1〜Q4をオンオフ駆動する。これにより、直流電源Eから入力された直流電力が交流電力に変換されるのであり、この交流電力の周波数は、上記のオンオフ駆動による極性反転の周波数(以下、「動作周波数」と呼ぶ。)となる。
【0039】
以下、制御部3の動作を、図4〜図6を用いてより具体的に説明する。ここで、図4は、各スイッチング素子Q1〜Q4に入力される駆動信号、具体的にはゲートソース間にかけられる電圧を示しており、各スイッチング素子Q1〜Q4はそれぞれ上記の駆動信号がHレベルである期間にオンされ、上記の駆動信号がLレベルである期間にオフされる。
【0040】
電源が投入される(S1)と、制御部3は、まず放電灯Laにおいて放電を開始させるための始動動作を開始する(S2)。始動動作を行う始動期間P1中には、制御部3は、動作周波数を数百kHzとして、数十kHz程度の幅を持った範囲内で動作周波数を周期的に変化させる。この始動期間P1中に、動作周波数が、第2インダクタL2のオートトランスとしての一次巻線部分すなわちスイッチング素子Q1,Q2の接続点とタップとの間の部位と、第2コンデンサC4とが構成する共振回路の共振周波数(またはその整数分の1)となり、このとき発生した共振電圧がオートトランスとしての第2インダクタL2によって昇圧されることで、放電灯Laに出力される電圧(以下、「ランプ電圧」と呼ぶ。)Vlaが、始動すなわち放電の開始に必要な電圧(例えば3〜4kV)に達し、放電灯Laが始動する。すなわち、第2インダクタL2と第2コンデンサC4とが請求項における始動部を構成している。図5の例では、上記の周期的な動作周波数の変化の3周期目で放電灯Laが始動してランプ電流Ilaが流れ始め、放電灯Laの始動に伴うインピーダンスの変化によりランプ電圧Vlaの振幅が低下している。
【0041】
制御部3は、上記の始動動作を所定時間継続した後、始動動作を終了し、始動動作中よりも動作周波数を小さく(例えば数十kHzに)する電極加熱動作を行う電極加熱期間P2に移行する(S3)。電極加熱動作中の動作周波数は、後述する定常動作中の動作周波数に比べ、フルブリッジ回路の出力端間に接続された負荷回路の共振周波数に近い、比較的に高い周波数であり、これにより、放電灯Laの各電極の加熱がなされる。制御部3は、電極加熱動作の開始後、所定のマスク時間が経過するまでは、対称判定部2の出力を動作に反映させない(S4)。そして、電極加熱動作中、上記のマスク時間が経過した後は、対称判定部2の出力を監視し(S6)、ランプ電流Ilaが対称であることが対称判定部2によって判定されたとき(すなわち判定出力VeがHレベルとなったときであり、S6においてYES)に電極加熱動作を終了して定常動作に移行する(S7)。上記のマスク時間は、放電灯Laにおける放電がある程度安定するような時間とされている。本実施形態では、上記のようにマスク時間が経過するまでは対称判定部2の出力が制御部3の動作に反映されないことにより、電極加熱動作の開始直後の放電灯Laでの放電が不安定な状態で一時的にランプ電流Ilaが対称となった場合でも、制御部3が定常動作に移行してしまうことがない。なお、制御部3による対称判定部2の出力の監視は、常時、つまり連続的に行われてもよいし、定期的に、つまり間欠的に行われてもよい。
【0042】
定常動作を行う定常期間P3中には、制御部3は、動作周波数を電極加熱動作中よりもさらに低く(例えば数百Hzに)することで、放電灯Laの点灯維持のための矩形波交流電力を放電灯Laに供給する。また、定常動作中には、制御部3は、一方の直列回路の各スイッチング素子Q3,Q4については対角に位置するスイッチング素子Q1,Q2がオンされている期間中にも常にはオンせず所定のデューティ比でオンオフすることで放電灯Laへの供給電力を調整するというPWM制御を行う。さらに、定常動作中には、制御部3は、例えばランプ電流Ilaに基いて放電灯Laの立ち消えを検出する(S8)とともに、立ち消えが検出されたときには定常動作を終了してステップS2の始動動作に戻る。
【0043】
また、制御部3は、電極加熱動作の継続時間を計時しており、ランプ電流が対称であることが対称判定部2によって判定されないまま(すなわち判定電圧VeがLレベルのまま)、電極加熱動作の継続時間が所定の上限時間に達した場合(S5においてYES)、例えば各スイッチング素子Q1〜Q4をそれぞれオフすることにより放電灯Laへの給電を停止させる(S9)。
【0044】
上記構成によれば、電極加熱動作を終了するタイミングを、対称判定部2によってランプ電流Ilaの対称性が判定されたタイミングとしていることにより、電極加熱動作の継続時間を、定常動作への移行後の立ち消えが発生しにくく且つ過剰に長くないような適正な長さとすることができる。
【0045】
また、電極加熱動作は上限時間以上は継続されないから、電極加熱動作が際限なく継続される場合に比べ、放電灯Laや回路部品にかかる電気的なストレスを抑えることができる。
【0046】
なお、回路構成は上記に限られず、図7に示すように、図1のようなフルブリッジ回路に代えて、一方の直列回路を構成する各スイッチング素子Q3,Q4をそれぞれコンデンサC5,C6に置換したようなハーフブリッジ回路を採用してもよい。この場合、図8に示すように、互いに直列に接続された2個のスイッチング素子Q1,Q2のオンオフ駆動は、始動期間P1と電極加熱期間P2とでは図1の例と共通であるが、定常期間P3では、極性を反転させない期間中にオンされるべきスイッチング素子Q1,Q2のオンオフのデューティ比によって放電灯Laへの出力電力を調整するPWM制御が行われる。
【0047】
または、図9に示すように、直流電源Eの出力電圧を降圧してフルブリッジ回路に出力する降圧チョッパ回路4を設けてもよい。この場合、請求項における電力変換回路は、4個のスイッチング素子Q1〜Q4が構成するフルブリッジ回路と上記の降圧チョッパ回路4とで構成される。図9の例では、降圧チョッパ回路4は、一端が直流電源Eの高電圧側の出力端に接続され他端がインダクタL0を介してフルブリッジ回路の入力端に接続されたスイッチング素子Q0と、カソードがスイッチング素子Q0とインダクタL0との接続点に接続されアノードがグランドに接続されたダイオードD0と、フルブリッジ回路の入力端間すなわち降圧チョッパ回路4の出力端間に接続されたコンデンサC0とを備える。また、図9の例では、負荷回路から第2インダクタL2と第2コンデンサC4とがそれぞれ省略されており、始動動作では、第1コンデンサC3と第1インダクタL1とからなる共振回路の共振により放電灯Laに始動用の高電圧が出力される。すなわち、第1コンデンサC3と第1インダクタL1とが請求項における始動部を構成している。さらに、図10に示すように、制御部3は、降圧チョッパ回路4のスイッチング素子Q0のオンオフのデューティ比によって放電灯Laへの供給電力を制御するので、定常期間P3中であってもフルブリッジ回路のスイッチング素子Q1〜Q4のオンオフによるPWM制御は行われない。
【0048】
または、図11に示すように始動動作中に放電灯Laの始動用の高電圧パルスを発生させる始動部としてのパルス発生回路(図示せず)を設けてもよい。この場合、始動動作中の動作周波数は電極加熱動作中の動作周波数と同じとすることができる。上記のようなパルス発生回路は周知技術で実現可能であるので、図示並びに詳細な説明は省略する。
【0049】
また、対称判定部2は図2に示すようなものに限られず、例えば図12に示すようなものとしてもよい。図12の対称判定部2は、コンパレータCP1,CP2に代えて、各コンデンサC1,C2の充電電圧Vb1,Vb2をそれぞれ入力されてその差の絶対値|Vb1−Vb2|を演算するとともに所定の判定閾値と比較する演算部21を備える。演算部21は、上記の絶対値|Vb1−Vb2|が判定閾値未満であればランプ電流Ilaは対称であると判定して制御部3への出力(判定出力)VeをHレベルとし、上記の絶対値|Vb1−Vb2|が判定閾値以上であればランプ電流Ilaは非対称であると判定して判定出力VeをLレベルとする。
【0050】
また、電極加熱動作の継続時間が上限時間に達したとき(ステップS5においてYESのとき)の動作として、図6のように放電灯Laへの給電を即座に停止させる代わりに、図13に示すようにステップS2の始動動作に戻るようにしてもよい。この構成を採用すれば、図6の例に比べて始動性を改善することができる。さらに、図13の例では、ステップS5からステップS2に戻った回数(以下、「再始動回数」と呼ぶ。)をステップS10において計数するとともにステップS11において所定の上限回数と比較しており、再始動回数が上限回数に達していればステップS2には戻らずステップS9に進んで放電灯Laへの給電を停止させている。すなわち上限回数以上は始動動作には戻らないのであり、これにより、上記のループが際限なく繰り返されて回路部品に不要な電気的ストレスがかかるようなことを防ぐことができる。
【0051】
さらに、図14に示すように、制御部3がステップS5からステップS2に戻る前に所定時間にわたって例えば各スイッチング素子Q1〜Q4をそれぞれオフすることで放電灯Laへの給電を停止させてもよい(S12)。この構成を採用すれば、再度の始動動作が開始される前に放電灯La内のガスが安定することにより、次の電極加熱動作では比較的に短時間でランプ電流Ilaが対称となって定常動作への移行が可能となる。
【0052】
上記の各種の放電灯点灯装置は、例えば図15〜図17に示すような照明器具5に用いることができる。図15〜図17の照明器具5は、それぞれ、放電灯点灯装置1を収納した器具本体51と、放電灯Laを保持した灯体52とを備える。また、図15の照明器具5と図16の照明器具5とは、それぞれ、放電灯点灯装置1と放電灯Laとを電気的に接続する給電線53を備える。上記のような各種の照明器具5は周知技術で実現可能であるので、詳細な説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態を示す回路ブロック図である。
【図2】同上の対称判定部を示す回路図である。
【図3】同上の対称判定部の動作の一例を示す説明図であり、(a)はランプ電流が対称である場合を示し、(b)はランプ電流が非対称である場合を示す。
【図4】同上において制御部から各スイッチング素子に入力される駆動信号の一例を示す説明図である。
【図5】同上の動作の一例を示す説明図である。
【図6】同上の動作の一例を示す流れ図である。
【図7】同上の変更例を示す回路ブロック図である。
【図8】図7の変更例において制御部から各スイッチング素子に入力される駆動信号の一例を示す説明図である。
【図9】同上の別の変更例を示す回路ブロック図である。
【図10】図9の変更例において制御部から各スイッチング素子に入力される駆動信号の一例を示す説明図である。
【図11】同上の更に別の変更例の動作を示す説明図である。
【図12】同上の対称判定部の変更例を示す回路図である。
【図13】同上の動作の変更例を示す流れ図である。
【図14】同上の動作の別の変更例を示す流れ図である。
【図15】同上を用いた照明器具の一例を示す斜視図である。
【図16】同上を用いた照明器具の別の例を示す斜視図である。
【図17】同上を用いた照明器具の更に別の例を示す斜視図である。
【図18】(a)(b)はそれぞれランプ電流の波形の例を示す説明図であり、(a)は電極加熱動作の継続時間が不足している場合を示し、(b)は電極加熱動作の継続時間が十分に長い場合を示す。
【符号の説明】
【0054】
1 放電灯点灯装置
2 対称判定部
3 制御部
4 降圧チョッパ回路
5 照明器具
51 器具本体
La 放電灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を入力されて交流電力を出力する電力変換部と、
電力変換部の出力端間に放電灯とともに接続されて放電灯の始動のための高電圧を発生させる始動部と、
電力変換部を制御する制御部とを備え、
制御部は、放電灯の始動時、始動部が発生させる高電圧により放電灯を始動させる始動動作の後、放電灯の点灯維持のための交流電力を電力変換部から放電灯に出力させる定常動作を開始する前に、放電灯の各電極を加熱するために電力変換部の出力の周波数を定常動作中よりも高くする電極加熱動作を行うものであって、
放電灯に出力される出力電力が正負対称であるか否かを判定する対称判定部を備え、
制御部は、電極加熱動作中に、対称判定部により出力電力が正負対称であると判定されたときに定常動作に移行することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
電力変換部は、入力された直流電力を降圧する降圧チョッパ回路と、降圧チョッパ回路が出力した直流電力を交番するフルブリッジ回路とからなることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
電力変換部はフルブリッジ回路からなり、制御部は、フルブリッジ回路を構成するスイッチング素子のオンオフのデューティ比によって電力変換部の出力電力を制御することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
電力変換部はハーフブリッジ回路からなり、制御部は、ハーフブリッジ回路を構成するスイッチング素子のオンオフのデューティ比によって電力変換部の出力電力を制御することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
対称判定部は出力電力が正負対称であるか否かの判定を少なくとも電極加熱動作中には常時行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
対称判定部は出力電力が正負対称であるか否かの判定を電極加熱動作の開始後に所定のマスク時間が経過するまでには行わず、マスク時間の経過後に少なくとも電極加熱動作が終了するまでは出力電力が正負対称であるか否かの判定を常時行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項7】
対称判定部は出力電力が正負対称であるか否かの判定を電極加熱動作の開始後に所定のマスク時間が経過するまでには行わず、マスク時間の経過後に少なくとも電極加熱動作が終了するまでは出力電力が正負対称であるか否かの判定を定期的に行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項8】
電極加熱動作の継続時間は所定の上限時間以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項9】
制御部は、対称判定部によって出力電力が正負対称であると判定されないまま、電極加熱動作の継続時間が上限時間に達したとき、電力変換部からの交流電力の出力を停止させることを特徴とする請求項8記載の放電灯点灯装置。
【請求項10】
制御部は、対称判定部によって出力電力が正負対称であると判定されないまま、電極加熱動作の継続時間が上限時間に達したとき、始動動作に戻ることを特徴とする請求項8記載の放電灯点灯装置。
【請求項11】
制御部は、対称判定部によって出力電力が正負対称であると判定されないまま、電極加熱動作の継続時間が上限時間に達したとき、所定の停止時間にわたって電力変換部からの交流電力の出力を停止させた後、始動動作に戻ることを特徴とする請求項8記載の放電灯点灯装置。
【請求項12】
制御部は、電極加熱動作から始動動作に戻った回数を計数し、該回数が所定の上限回数に達したとき、電力変換部からの交流電力の出力を停止させることを特徴とする請求項10又は請求項11記載の放電灯点灯装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置と、放電灯点灯装置を保持する器具本体とを備えることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−108657(P2010−108657A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277424(P2008−277424)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】