説明

放電管理回路、及び電池パック

【課題】放電によって生じる二次電池の劣化を低減することが可能な放電管理回路、及びこれを備えた電池パックを提供する。
【解決手段】二次電池14の劣化を検出し、当該劣化の度合いを示す劣化情報を生成する劣化情報生成部215と、二次電池のSOCが、管理が必要な値として予め設定された管理値になったことを判定するための当該二次電池の端子電圧である管理電圧値を設定する管理電圧値設定部216,217と、二次電池14の端子電圧が、管理電圧値設定部216,217によって設定された判定電圧値Vj、放電終止電圧値Vdf以下になったとき、二次電池14の放電を終了させるための処理を実行する放電終了処理部218,219とを備え、管理電圧値設定部216,217は、劣化情報の示す二次電池14の劣化の度合いが大きいほど、判定電圧値Vj、放電終止電圧値Vdfを高くするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の放電を管理する放電管理回路、及びこれを備えた電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、鉛蓄電池等、二次電池の種類にかかわらず、充電を繰り返すことにより劣化する。また、二次電池の劣化が進むと、二次電池の内部抵抗が増加して二次電池内部の発熱が増加し、充電を繰り返すことによる劣化がますます促進されてしまうという不都合があった。
【0003】
そこで、劣化により生じる内部抵抗値の増大に応じて充電電流値を減少させることで、二次電池の劣化を低減する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−84277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二次電池は充電時のみならず、放電時にも劣化が生じる。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、充電時に生じる劣化は低減することができるものの、放電時に生じる劣化は低減することができないという、不都合があった。
【0006】
本発明の目的は、放電によって生じる二次電池の劣化を低減することが可能な放電管理回路、及びこれを備えた電池パックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る放電管理回路は、二次電池の端子電圧を検出する電圧検出部と、前記二次電池の劣化を検出し、当該劣化の度合いを示す劣化情報を生成する劣化情報生成部と、前記二次電池のSOCが、管理が必要な値として予め設定された管理値になったことを判定するための当該二次電池の端子電圧である管理電圧値を設定する管理電圧値設定部と、前記電圧検出部によって検出された端子電圧が、前記管理電圧値設定部によって設定された管理電圧値以下になったとき、前記二次電池の放電を終了させるための処理を実行する放電終了処理部とを備え、前記管理電圧値設定部は、前記劣化情報生成部によって生成された劣化情報の示す前記二次電池の劣化の度合いが大きいほど、前記管理電圧値が高くなるように当該管理電圧値を設定する。
【0008】
この構成によれば、劣化情報生成部によって、二次電池の劣化の度合いを示す劣化情報が生成され、当該劣化情報の示す前記二次電池の劣化の度合いが大きいほど、管理電圧値設定部によって、管理電圧値が高くなるように当該管理電圧値が設定される。そうすると、二次電池の劣化が進むほど、管理電圧値が上昇されることとなる。
【0009】
そして、電圧検出部によって検出された二次電池の端子電圧が、管理電圧値以下になると、放電終了処理部によって、二次電池の放電を終了させるための処理が実行される。このとき、二次電池の劣化が進むほど管理電圧値が上昇されているから、二次電池の劣化が進んで放電による劣化が生じやすくなるほど、端子電圧が高く、すなわち放電の程度が浅いうちに、二次電池の放電を終了させるための処理が実行されることとなる。その結果、放電による劣化が生じやすい状態で、深い放電が行われるおそれが低減されるので、放電によって生じる二次電池の劣化を低減することが可能となる。
【0010】
また、前記管理電圧値は、前記二次電池のSOCがゼロになったことを判定するための当該二次電池の端子電圧の値である放電終止電圧値を含み、前記管理電圧値設定部は、前記劣化情報生成部によって生成された劣化情報の示す前記二次電池の劣化の度合いが大きいほど、前記放電終止電圧値が大きくなるように、当該放電終止電圧値を設定する終止電圧設定部を含み、前記放電終了処理部は、前記電圧検出部によって検出された端子電圧が、前記終止電圧設定部によって設定された放電終止電圧以下になったとき、前記二次電池の放電を禁止する放電禁止部を含むことが好ましい。
【0011】
この構成によれば、二次電池の劣化が進んで、劣化情報生成部によって生成された劣化情報の示す二次電池の劣化の度合いが増大すると、終止電圧設定部によって、放電終止電圧値が増大される。そうすると、二次電池の劣化が進むほど、放電終止電圧値が上昇されることとなる。
【0012】
そして、電圧検出部によって検出された二次電池の端子電圧が、放電終止電圧値以下になると、放電禁止部によって、二次電池の放電が禁止される。このとき、二次電池の劣化が進むほど放電終止電圧値が上昇されているから、二次電池の劣化が進んで放電による劣化が生じやすくなるほど、端子電圧が高く、すなわち放電の程度が浅いうちに、二次電池の放電が禁止されることとなる。その結果、放電による劣化が生じやすい状態で、深い放電が行われるおそれが低減されるので、放電によって生じる二次電池の劣化を低減することができる。
【0013】
また、前記管理電圧値は、前記二次電池のSOCが、当該二次電池の放電を終了すべきSOCの値に予め設定された管理値になったことを判定するための当該二次電池の端子電圧の値である判定電圧値を含み、前記管理電圧値設定部は、前記劣化情報生成部によって生成された劣化情報の示す前記二次電池の劣化の度合いが大きいほど、前記判定電圧値が大きくなるように、当該判定電圧値を設定する判定電圧設定部を含み、前記放電終了処理部は、前記電圧検出部によって検出された端子電圧が、前記判定電圧設定部によって設定された判定電圧値以下になったとき、前記二次電池のSOCが前記管理値以下になったと判定し、前記二次電池の放電を終了させるべき旨を報知する警報部を含むことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、二次電池の劣化が進んで、劣化情報生成部によって生成された劣化情報の示す二次電池の劣化の度合いが増大すると、判定電圧設定部によって、判定電圧値が増大される。そうすると、二次電池の劣化が進むほど、判定電圧値が上昇されることとなる。
【0015】
そして、電圧検出部によって検出された二次電池の端子電圧が、判定電圧値以下になると、警報部によって、二次電池の放電を終了させるべき旨が報知される。このとき、二次電池の劣化が進むほど判定電圧値が上昇されているから、二次電池の劣化が進んで放電による劣化が生じやすくなるほど、端子電圧が高く、すなわち放電の程度が浅いうちに、二次電池の放電を終了させるべき旨が報知され、ユーザが、当該二次電池から電力供給を受けている装置の使用を停止することで、二次電池の放電が終了する。その結果、放電による劣化が生じやすい状態で、深い放電が行われるおそれが低減されるので、放電によって生じる二次電池の劣化を低減することが可能となる。
【0016】
また、前記二次電池に流れる電流を検出する電流検出部をさらに備え、前記劣化情報生成部は、前記電流検出部によって検出された、前記二次電池の、充電電流及び放電電流のうち少なくとも一方の積算値が増大するほど、前記劣化情報が示す劣化の度合いを増大させることが好ましい。
【0017】
二次電池は、充放電を行う過程における、充電電流及び放電電流のうち少なくとも一方の積算値が増大するほど劣化するから、劣化情報生成部は、電流検出部によって検出された、二次電池の、充電電流及び放電電流のうち少なくとも一方の積算値が増大するほど、劣化情報が示す劣化の度合いを増大させることで、二次電池の劣化を劣化情報に反映させることができる。
【0018】
また、前記二次電池の温度を検出する温度検出部と、前記温度検出部によって検出された前記二次電池の温度が、予め設定された高温閾値を超え、かつ前記電圧検出部によって検出された二次電池の端子電圧が、予め設定された高圧閾値を超えている時間を劣化積算時間として積算する劣化時間積算部とをさらに備え、前記劣化情報生成部は、前記劣化時間積算部により積算された劣化積算時間が増大するほど、前記劣化情報が示す劣化の度合いを増大させることが好ましい。
【0019】
二次電池は、温度条件と電圧条件とが、重なって高温高圧状態となった場合に、特に劣化が顕著になる。そこで、この構成によれば、二次電池の温度が高温閾値を超え、かつ二次電池の端子電圧が高圧閾値を超える高温高圧状態となって、劣化が顕著となっている時間が劣化時間積算部によって劣化積算時間として積算される。また、このようにして得られた劣化積算時間が増大するほど、すなわち劣化が顕著となる時間が長いほど、劣化情報生成部によって、劣化情報が示す劣化の度合いを増大されるので、二次電池の劣化を劣化情報に反映させることができる。
【0020】
また、前記二次電池の充電電流及び放電電流を積算して得られた蓄電電荷量に基づいて前記二次電池のSOCを算出するSOC算出部と、前記電圧検出部によって検出された端子電圧が、前記終止電圧設定部によって設定された放電終止電圧値と等しくなったとき、前記SOC算出部における前記蓄電電荷量をゼロに補正する残量補正部とをさらに備えることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、SOC算出部によって、二次電池の充電電流及び放電電流の積算値に基づいて二次電池のSOCが算出される。ここで、二次電池の端子電圧が放電終止電圧値と等しくなると、放電禁止部によって二次電池の放電が禁止され、それ以上の放電ができなくなるから、実使用上、二次電池の端子電圧が放電終止電圧値と等しくなったときが、二次電池の放電可能な蓄電電荷量がゼロになったとき、すなわちSOCが0%になったときに相当する。
【0022】
そこで、残量補正部は、二次電池の端子電圧が放電終止電圧値と等しくなったとき、SOC算出部における蓄電電荷量をゼロに補正することで、SOC算出部によって当該蓄電電荷量に基づき算出されるSOCを、二次電池の劣化に応じて変化する放電終止電圧値と連動させることができる結果、SOCの算出精度が向上する。
【0023】
また、前記二次電池の充電電流及び放電電流を積算して得られた蓄電電荷量に基づいて前記二次電池のSOCを算出するSOC算出部と、前記電圧検出部によって検出された端子電圧が、前記判定電圧設定部によって設定された判定電圧値と等しくなったとき、前記SOC算出部における前記蓄電電荷量を、前記管理値に相当する電荷量に補正する残量補正部とをさらに備えることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、SOC算出部によって、二次電池の充電電流及び放電電流の積算値に基づいて二次電池のSOCが算出される。ここで、二次電池の端子電圧が判定電圧値と等しくなると、二次電池のSOCが管理値になったと判定されるから、二次電池の端子電圧が判定電圧値と等しくなったときが、二次電池のSOCが放電を終了すべき管理値になったときに相当する。
【0025】
そこで、残量補正部は、二次電池の端子電圧が判定電圧値と等しくなったとき、SOC算出部における蓄電電荷量を、管理値に相当する電荷量に補正することで、SOC算出部によって当該蓄電電荷量に基づき算出されるSOCを、二次電池の劣化に応じて変化する判定電圧値と連動させることができる結果、SOCの算出精度が向上する。
【0026】
また、前記二次電池に流れる電流を検出する電流検出部を備え、前記管理電圧値設定部は、さらに、前記電流検出部によって検出された電流が大きいほど、前記管理電圧値が低くなるように当該管理電圧値を設定することが好ましい。
【0027】
二次電池の端子電圧は、放電電流値が大きいほど、二次電池の内部抵抗で生じる電圧降下によって低下する。そこで、管理電圧値設定部は、電流検出部によって検出された電流が大きいほど、管理電圧値が低くなるように当該管理電圧値を設定することで、電流値の影響を低減して管理電圧値の設定精度を向上させることができる。
【0028】
また、前記二次電池の温度を検出する温度検出部を備え、前記管理電圧値設定部は、さらに、前記温度検出部によって検出された温度が低いほど、前記管理電圧値が低くなるように当該管理電圧値を設定することが好ましい。
【0029】
放電時の二次電池の端子電圧は、温度が低いほど低下する。そこで、管理電圧値設定部は、温度検出部によって検出された温度が低いほど、管理電圧値が低くなるように当該管理電圧値を設定することで、温度の影響を低減して管理電圧値の設定精度を向上させることができる。
【0030】
また、本発明に係る電池パックは、上述の放電管理回路と、前記二次電池とを備える。
【0031】
この構成によれば、二次電池を備えた電池パックにおいて、放電によって生じる二次電池の劣化を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
このような構成の放電管理回路、及び電池パックは、劣化情報生成部によって、二次電池の劣化の度合いを示す劣化情報が生成され、当該劣化情報の示す前記二次電池の劣化の度合いが大きいほど、管理電圧値設定部によって、管理電圧値が高くなるように当該管理電圧値が設定される。そうすると、二次電池の劣化が進むほど、管理電圧値が上昇されることとなる。
【0033】
そして、電圧検出部によって検出された二次電池の端子電圧が、管理電圧値以下になると、放電終了処理部によって、二次電池の放電を終了させるための処理が実行される。このとき、二次電池の劣化が進むほど管理電圧値が上昇されているから、二次電池の劣化が進んで放電による劣化が生じやすくなるほど、端子電圧が高く、すなわち放電の程度が浅いうちに、二次電池の放電を終了させるための処理が実行されることとなる。その結果、放電による劣化が生じやすい状態で、深い放電が行われるおそれが低減されるので、放電によって生じる二次電池の劣化を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る放電管理回路を備えた電池パックの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図1に示す電池パックの動作の一例を示すフローチャートである。
【図3】図1に示す電池パックの動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】図1に示す放電管理回路を用いた場合の二次電池の劣化低減効果を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。図1は、本発明の一実施形態に係る放電管理回路4を備えた電池パック2、及び電池システム1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示す電池システム1は、電池パック2と、機器側回路3とが組み合わされて構成されている。
【0036】
電池システム1は、例えば、携帯型パーソナルコンピュータやデジタルカメラ、携帯電話機等の電子機器、電気自動車やハイブリッドカー等の車両、等の電池搭載機器システムである。そして、機器側回路3は、例えばこれら電池搭載機器システムの本体部分であり、負荷回路34は、これら電池搭載機器システムにおいて、電池パック2からの電力供給により動作する負荷回路である。
【0037】
電池パック2は、放電管理回路4、接続端子11,12,13、及び二次電池14を備えている。また、放電管理回路4は、制御部201、通信部203、電流検出抵抗202、温度センサ15、放電用スイッチング素子SW1、及び充電用スイッチング素子SW2を備えている。
【0038】
なお、電池システム1は、必ずしも電池パック2と機器側回路3とに分離可能に構成されるものに限られず、電池システム1全体で一つの放電管理回路4が構成されていてもよい。また、放電管理回路4を、電池パック2と機器側回路3とで分担して備えるようにしてもよい。また、二次電池14は、電池パックにされている必要はなく、例えば放電管理回路4が、車載用のECU(Electric Control Unit)として構成されていてもよい。
【0039】
機器側回路3は、接続端子31,32,33、負荷回路34、充電部35、通信部36、制御部37、及び表示部38を備えている。充電部35は、給電用の接続端子31,32に接続され、通信部36は、接続端子33に接続されている。
【0040】
また、電池パック2が、機器側回路3に取り付けられると、電池パック2の接続端子11,12,13と、機器側回路3の接続端子31,32,33とが、それぞれ接続されるようになっている。
【0041】
通信部203,36は、接続端子13,33を介して互いにデータ送受信可能に構成された通信インターフェイス回路である。
【0042】
表示部38は、例えば液晶表示器やLED等を用いて構成された表示装置である。
【0043】
充電部35は、制御部37からの制御信号に応じた電流、電圧を、接続端子31,32を介して電池パック2へ供給する電源回路である。充電部35は、例えば商用電源電圧から電池パック2の充電電流を生成する電源回路であってもよく、例えば太陽光、風力、あるいは水力といった自然エネルギーに基づき発電する発電装置や、内燃機関等の動力によって発電する発電装置等であってもよい。
【0044】
制御部37は、例えばマイクロコンピュータを用いて構成された制御回路である。そして、電池パック2における制御部201から通信部203によって送信された要求指示が、通信部36によって受信されると、制御部37は、通信部36によって受信された要求指示に応じて充電部35を制御することにより、電池パック2から送信された要求指示に応じた電流や電圧を、充電部35から接続端子11,12へ出力させる。
【0045】
また、制御部37は、二次電池14のSOCが0%に近いことを報知する警報信号が、制御部201から通信部36によって受信されると、その情報を表示部38によって表示させて、ユーザによる電池パック2の使用終了(二次電池14の放電終了)を促すようになっている。
【0046】
電池パック2では、接続端子11は、充電用スイッチング素子SW2と放電用スイッチング素子SW1とを介して二次電池14の正極に接続されている。放電用スイッチング素子SW1及び充電用スイッチング素子SW2としては、例えばpチャネルのFET(Field Effect Transistor)が用いられる。
【0047】
放電用スイッチング素子SW1は、寄生ダイオードのカソードが二次電池14の方向にされており、オフすると二次電池14の放電方向の電流のみを遮断するようになっている。また、充電用スイッチング素子SW2は、寄生ダイオードのカソードが接続端子11の方向にされており、オフすると二次電池14の充電方向の電流のみを遮断するようになっている。
【0048】
また、接続端子12は、電流検出抵抗202を介して二次電池14の負極に接続されており、接続端子11から充電用スイッチング素子SW2、放電用スイッチング素子SW1、二次電池14、及び電流検出抵抗202を介して接続端子12に至る電流経路が構成されている。
【0049】
なお、接続端子11,12,13,31,32,33は、電池パック2と機器側回路3とを電気的に接続するものであればよく、例えば電極やコネクタ、端子台等であってもよく、ランドやパッド等の配線パターンであってもよい。
【0050】
電流検出抵抗202は、二次電池14の充電電流および放電電流を電圧値に変換する。
【0051】
二次電池14は、例えば単電池であってもよく、例えば複数の二次電池が直列接続された組電池であってもよく、例えば複数の二次電池が並列接続された組電池であってもよく、直列と並列とが組み合わされて接続された組電池であってもよい。二次電池14としては、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池等、種々の二次電池が用いられる。
【0052】
温度センサ15は、例えばサーミスタや熱電対等を用いて構成された温度センサである。温度センサ15は、例えば二次電池14に密着して、あるいは二次電池14の近傍に配設されて、二次電池14の温度を検出し、その温度値を示す電圧信号を制御部201へ出力する。
【0053】
制御部201は、例えば所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)と、所定の制御プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)と、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、アナログデジタル変換回路と、タイマ回路と、これらの周辺回路等とを備えて構成されている。
【0054】
そして、制御部201は、ROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、電圧検出部204、温度検出部205、電流検出部206、電流積算部211、SOC算出部212、サイクル計数部213、劣化時間積算部214、劣化情報生成部215、判定電圧設定部216、終止電圧設定部217、警報部218、放電禁止部219、及び残量補正部220として機能する。
【0055】
電圧検出部204、温度検出部205、及び電流検出部206は、例えばアナログデジタル変換回路を用いて構成されている。
【0056】
電圧検出部204は、二次電池14の端子電圧を検出する。温度検出部205は、温度センサ15から出力された電圧信号に基づき、二次電池14の温度を示すデータを取得する。
【0057】
電流検出部206は、電流検出抵抗202の両端間の電圧Vrを検出し、この電圧Vrを電流検出抵抗202の抵抗値Rで除算することにより、二次電池14に流れる充放電電流値Icを取得する。また、電流検出部206は、充放電電流値Icについて、例えば二次電池14を充電する方向の電流値をプラスの値で、二次電池14を充電する方向の電流値をマイナスの値で表すようになっている。
【0058】
電流積算部211は、例えば、電流検出部206によって検出された電流値を、その値がプラスの電流値のみ単位時間毎に積算することによって、二次電池の充電電流のみを積算し、電流積算値Qiを算出する。
【0059】
なお、電流積算部211は、例えば、電流検出部206によって検出された電流値を、その値がマイナスの電流値のみ、その絶対値を単位時間毎に積算することによって、二次電池の放電電流のみを積算して電流積算値Qiを算出してもよく、充電電流及び放電電流の両方を、その電流値の絶対値で積算して電流積算値Qiを算出するようにしてもよい。
【0060】
SOC算出部212は、電流検出部206によって検出された電流値を、そのプラス、マイナスの符号も含めて積算することにより、二次電池14に蓄電されている蓄電電荷量Qcを算出する。そして、SOC算出部212は、このようにして得られた蓄電電荷量Qcを、二次電池14の満充電容量FCCに対する百分率であるSOC(State Of Charge)として表すようになっている。
【0061】
また、SOC算出部212は、このようにして算出した二次電池14のSOCを、通信部203によって、機器側回路3へ送信させるようになっている。これにより、機器側回路3では、通信部36により受信された二次電池14のSOCに基づいて、電池パック2の充放電を適宜制御したり、表示部38によってSOCを表示させたりすることが可能となる。
【0062】
サイクル計数部213は、二次電池14における充放電サイクルをサイクル数Ncycとして計数する。具体的には、サイクル計数部213は、例えば電流積算部211によって算出される電流積算値Qiの、電池パック2が初めて使用開始されてからの増加量、及び前回サイクル数Ncycが計数された後における増加量が、二次電池14の1つの充放電サイクルにおける充電電荷量に相当する電荷量として予め設定されたサイクル電気量Qcycになる都度、サイクル数Ncycに1を加算する。
【0063】
なお、電流積算部211の積算対象が、放電電流の積算による放電電荷量、又は充放電電流の積算による充放電電荷量である場合は、当該積算対象となっている電荷量について、1サイクルに相当する電荷量がサイクル電気量Qcycとして用いられる。
【0064】
二次電池14は、充放電の繰り返しにより充放電電荷量の積算値が増大するほど劣化するから、電流積算値Qiが増大するほど二次電池14の劣化が増大することとなる。従って、サイクル数Ncycは、二次電池14の劣化を推定する指標として適している。
【0065】
なお、二次電池14は、ライフサイクル全体を通してみれば、充電電流の積算値と放電電流の積算値とはほぼ等しくなるから、電流積算部211の積算対象は、充電電流、放電電流、及び充放電電流のいずれであってもよい。
【0066】
劣化時間積算部214は、温度検出部205によって検出された二次電池14の温度tが、予め設定された高温閾値thを超え、かつ電圧検出部204によって検出された二次電池14の端子電圧Vbが、予め設定された高圧閾値Vhを超えている時間を、例えば図略のタイマ回路を用いて劣化積算時間Tdとして積算する。高温閾値thとしては、例えば45℃が用いられ、高圧閾値Vhとしては、例えば4.1Vが用いられる。
【0067】
なお、温度tが高温閾値thを超えた場合、及び端子電圧Vbが高圧閾値Vhを超えた場合には、いずれの場合であっても二次電池14の劣化が生じるので、劣化時間積算部214は、温度検出部205によって検出された二次電池14の温度tが高温閾値thを超えている時間のみを劣化積算時間Tdとして積算してもよく、端子電圧Vbが高圧閾値Vhを超えている時間のみを劣化積算時間Tdとして積算してもよい。
【0068】
このようにして得られた劣化積算時間Tdであっても、二次電池14の劣化の程度を推定する指標として用いることができる。
【0069】
しかしながら、温度tが高温閾値thを超えることによる劣化や、端子電圧Vbが高圧閾値Vhを超えることによる劣化は、両方の条件が重なった場合と比べて劣化の程度が小さく、両方の条件が重なった場合に劣化が加速される。従って、二次電池14の劣化の程度を推定する指標としては、温度tが高温閾値thを超え、かつ端子電圧Vbが高圧閾値Vhを超えている時間を積算して得られる劣化積算時間Tdの方が、二次電池14の劣化の程度を推定する指標としてより適している。
【0070】
劣化情報生成部215は、二次電池14の劣化を検出し、当該劣化の度合いを示す劣化係数α(劣化情報)を生成する。劣化係数αは、二次電池14の劣化の度合いを数値化して表したもので、例えば、劣化の度合いが大きくなるほど劣化係数αの値が大きくなるようにされている。
【0071】
具体的には、劣化情報生成部215は、サイクル計数部213によって計数されたサイクル数Ncycが増大するほど、かつ劣化時間積算部214によって積算された劣化積算時間Tdが増大するほど、劣化係数αの値を増大させる。例えば、劣化情報生成部215は、サイクル数Ncyc及び劣化積算時間Tdから、下記の式(1)に基づいて、劣化係数αを算出する。
【0072】
α=M×Ncyc+P×Td ・・・(1)
但し、M、Pは、サイクル数Ncycと劣化積算時間Tdとの、二次電池14の劣化に及ぼす影響度がバランスよく劣化係数αに反映されるように、例えば実験的に求められた係数である。
【0073】
この場合、サイクル数Ncycは、二次電池14の充電電荷量、放電電荷量、及び充放電電荷量のうちいずれかの積算値を、1サイクルに相当する各電荷量で除算したものに相当するから、劣化情報生成部215は、上述のいずれかの積算値が増大するほど劣化係数αの値を増大させることになる。
【0074】
なお、劣化情報生成部215は、劣化積算時間Tdを用いず、サイクル数Ncycが増大するほど劣化係数αの値を増大させてもよく、サイクル数Ncycを用いず、劣化積算時間Tdが増大するほど劣化係数αの値を増大させるようにしてもよい。しかしながら、劣化情報生成部215は、サイクル数Ncycと劣化積算時間Tdとに基づいて劣化係数αを設定することで、二次電池14の劣化の程度を精度よく劣化係数αとして表すことができる。
【0075】
判定電圧設定部216は、劣化情報生成部215によって生成された劣化係数αの値が大きく、すなわち二次電池14の劣化の度合いが大きいほど、判定電圧値Vjが大きくなるように、判定電圧値Vjを設定する。
【0076】
判定電圧値Vjは、二次電池14のSOCが、ゼロより大きな値、例えば5%に設定された管理値SOC1になったことを判定するために用いられる、端子電圧Vbの判定値である。管理値SOC1は、二次電池14のSOCが0%になって放電できなくなる前に、ユーザ(機器側回路3)に警告を発するのに適当なSOCが設定されている。
【0077】
具体的には、判定電圧設定部216は、例えば、劣化していない二次電池14のSOCを、管理値SOC1(例えば5%)に充電したときの端子電圧Vbが、初期電圧値Vj0である場合に、下記の式(2)に基づいて判定電圧値Vjを算出、設定する。
【0078】
Vj=Vj0+α×A ・・・(2)
ここで、係数Aは、過度に二次電池14の放電電荷量を減少させることなく、ユーザ(機器側回路3)に警告を発して放電が停止されることで二次電池14の劣化を低減できる判定電圧値Vjが得られるように、例えば実験的に求められて予め設定された値である。
【0079】
ところで、二次電池14に電流が流れると、二次電池14の内部抵抗によって電圧降下が生じるため、SOCが等しい場合であれば、二次電池14の放電電流が大きいほど二次電池14の端子電圧Vbは低下する。
【0080】
そこで、判定電圧設定部216は、電流検出部206により検出された充放電電流値Ic(放電電流)の絶対値が大きいほど、判定電圧値Vjが低くなるように当該判定電圧値Vjを設定することで、放電電流の影響を排除して、判定電圧値Vjの精度を向上させることができる。
【0081】
具体的には、例えば二次電池14に流れる放電電流と電圧降下との対応関係を、予めデータテーブルとしてROMに記憶しておく。そして、判定電圧設定部216は、当該データテーブルを用いて、電流検出部206により検出された充放電電流値Icの絶対値に対応する電圧降下を取得し、例えば上述の式(2)により得られた値からさらにこの電圧降下を減算した値を、判定電圧値Vjとして設定するようにしてもよい。
【0082】
また、二次電池14がリチウムイオン二次電池であった場合の放電時の端子電圧Vbは、SOCが等しい場合、温度tが低いほど低下する。そこで、判定電圧設定部216は、温度検出部205により検出された温度tが低いほど、判定電圧値Vjが低くなるように当該判定電圧値Vjを設定することで、温度tの影響を排除して、判定電圧値Vjの精度を向上させることができる。
【0083】
具体的には、例えば二次電池14の温度tと、当該温度tのときに生じる端子電圧Vbの低下量との対応関係を、予めデータテーブルとしてROMに記憶しておく。そして、判定電圧設定部216は、当該データテーブルを用いて、温度検出部205により検出された温度tに対応する電圧低下量を取得し、例えば上述の式(2)により得られた値、あるいはその値に上述の充放電電流値Icに基づく補正がなされた値から、さらにこの電圧低下量を減算した値を、判定電圧値Vjとして設定するようにしてもよい。
【0084】
終止電圧設定部217は、劣化情報生成部215によって生成された劣化係数αの値が大きく、すなわち二次電池14の劣化の度合いが大きいほど、放電終止電圧値Vdfが大きくなるように、放電終止電圧値Vdfを設定する。
【0085】
放電終止電圧値Vdfは、二次電池14のSOCが0%になったことを判定するために用いられる、端子電圧Vbの判定値である。
【0086】
具体的には、終止電圧設定部217は、例えば、劣化していない二次電池14のSOCが0%になったときの端子電圧Vbが、初期放電終止電圧値Vdf0である場合に、下記の式(3)に基づいてVdfを算出、設定する。
【0087】
Vdf=Vdf0+α×B ・・・(3)
ここで、係数Bは、過度に二次電池14の放電電荷量を減少させることなく、放電禁止部219によって放電が禁止されることで二次電池14の劣化を低減できる放電終止電圧値Vdfが得られるように、例えば実験的に求められて予め設定された値である。
【0088】
なお、終止電圧設定部217は、判定電圧設定部216と同様にして、電流検出部206により検出された充放電電流値Ic(放電電流)の絶対値が大きいほど、放電終止電圧値Vdfが低くなるように当該放電終止電圧値Vdfを設定することで、放電電流の影響を排除して、放電終止電圧値Vdfの精度を向上させることができる。
【0089】
具体的には、例えば二次電池14に流れる放電電流と電圧降下との対応関係を、予めデータテーブルとしてROMに記憶しておく。そして、終止電圧設定部217は、当該データテーブルを用いて、電流検出部206により検出された充放電電流値Icの絶対値に対応する電圧降下を取得し、例えば上述の式(3)により得られた値からさらにこの電圧降下を減算した値を、放電終止電圧値Vdfとして設定するようにしてもよい。
【0090】
また、終止電圧設定部217は、判定電圧設定部216と同様にして、温度検出部205により検出された温度tが低いほど、放電終止電圧値Vdfが低くなるように当該放電終止電圧値Vdfを設定することで、温度tの影響を排除して、放電終止電圧値Vdfの精度を向上させることができる。
【0091】
具体的には、例えば二次電池14の温度tと、当該温度tのときに生じる端子電圧Vbの低下量との対応関係を、予めデータテーブルとしてROMに記憶しておく。そして、終止電圧設定部217は、当該データテーブルを用いて、温度検出部205により検出された温度tに対応する電圧低下量を取得し、例えば上述の式(3)により得られた値、あるいはその値に上述の充放電電流値Icに基づく補正がなされた値から、さらにこの電圧低下量を減算した値を、放電終止電圧値Vdfとして設定するようにしてもよい。
【0092】
ここで、管理電圧値設定部は、判定電圧設定部216と、終止電圧設定部217とで構成され、判定電圧値Vjと、放電終止電圧値Vdfとが、それぞれ管理値の一例に相当している。
【0093】
警報部218は、電圧検出部204によって検出された端子電圧Vbが、判定電圧設定部216によって設定された判定電圧値Vj以下になったとき、二次電池14の放電を終了させるべき旨を示す警報信号を、通信部203によって、機器側回路3へ送信させる。
【0094】
そうすると、当該警報信号が通信部36によって受信される。制御部37は、通信部36によって当該警報信号が受信されると、表示部38によって、二次電池14のSOCが0%に近い(例えば5%である)ことを表示させて、ユーザによる電池パック2の使用終了(二次電池14の放電終了)を促すようになっている。
【0095】
放電禁止部219は、電圧検出部204によって検出された端子電圧Vbが、終止電圧設定部217によって設定された放電終止電圧値Vdf以下になったとき、放電用スイッチング素子SW1をオフさせて、二次電池14の放電を禁止する。
【0096】
ここで、警報部218と、放電禁止部219とは、それぞれ放電終了処理部の一例に相当している。
【0097】
残量補正部220は、電圧検出部204によって検出された端子電圧Vbが、判定電圧設定部216によって設定された判定電圧値Vjと等しくなったとき、SOC算出部212により積算されている蓄電電荷量Qcを、管理値SOC1のSOCに相当する電荷量に補正する。このとき、残量補正部220は、例えばSOC算出部212によって積算されていた、補正前の蓄電電荷量Qcを、(100−SOC1)/100で除算した値を、新たな満充電容量FCCとすることで、満充電容量FCCを補正する構成としてもよい。
【0098】
また、残量補正部220は、電圧検出部204によって検出された端子電圧Vbが、終止電圧設定部217によって設定された放電終止電圧値Vdfと等しくなったとき、SOC算出部212により積算されている蓄電電荷量Qcを、ゼロに補正する。このとき、残量補正部220は、例えばSOC算出部212によって積算されていた、補正前の蓄電電荷量Qcを、新たな満充電容量FCCとすることで、満充電容量FCCを補正する構成としてもよい。
【0099】
次に、上述のように構成された電池パック2の動作について説明する。図2、図3は、図1に示す電池パック2の動作の一例を示すフローチャートである。まず、電流検出部206によって、充放電電流値Icが検出される(ステップS1)。
【0100】
そして、SOC算出部212によって、この充放電電流値Icが積算されて二次電池14の蓄電電荷量Qcが算出され(ステップS2)、さらにSOC算出部212によって、蓄電電荷量Qcに基づき二次電池14のSOCが算出される(ステップS3)。
【0101】
次に、電流積算部211によって、充放電電流値Icに基づき例えば充電電流のみが積算されて、電流積算値Qiが算出される(ステップS4)。そして、サイクル計数部213によって、電流積算値Qiに基づきサイクル数Ncycが算出される(ステップS5)。
【0102】
次に、電圧検出部204によって二次電池14の端子電圧Vbが検出され(ステップS6)、温度検出部205によって二次電池14の温度tが検出される(ステップS7)。
【0103】
次に、劣化時間積算部214によって、温度tと端子電圧Vbとが確認され、温度tが高温閾値thを超え、かつ端子電圧Vbが高圧閾値Vhを超えている時間が劣化積算時間Tdとして積算される(ステップS8)。
【0104】
次に、劣化情報生成部215によって、サイクル数Ncycと劣化積算時間Tdとに基づいて、式(1)を用いて劣化係数αが算出、設定される(ステップS9)。これにより、二次電池14の劣化の度合いが劣化係数αとして数値化される。
【0105】
次に、判定電圧設定部216によって、劣化係数αに基づいて、式(2)を用いて判定電圧値Vjが算出、設定される(ステップS10)。これにより、劣化係数αの値が大きくなるほど、判定電圧値Vjが増大される。
【0106】
次に、終止電圧設定部217によって、劣化係数αに基づいて、式(3)を用いて放電終止電圧値Vdfが算出、設定される(ステップS11)。これにより、劣化係数αの値が大きくなるほど、放電終止電圧値Vdfが増大される。
【0107】
以上、ステップS1〜S11の処理が、繰り返し実行されることで、蓄電電荷量Qc、二次電池14のSOC、サイクル数Ncyc、劣化積算時間Td、劣化係数α、判定電圧値Vj、及び放電終止電圧値Vdfが常時算出、更新される。
【0108】
次に、図3を参照して、警報部218、放電禁止部219、及び残量補正部220の動作の一例について説明する。なお、図3に記載の処理は、図2に記載のステップS1〜S11と並行して実行されており、ステップS1〜S11において常時更新される最新の判定電圧値Vj、及び放電終止電圧値Vdfが用いられるようになっている。
【0109】
まず、警報部218によって、端子電圧Vbと判定電圧値Vjとが比較され(ステップS101)、端子電圧Vbが判定電圧値Vjを超えていれば処理を終了する(ステップS101でNO)。その一方、端子電圧Vbが判定電圧値Vj以下であれば、警報部218によって、放電終了を促す警報信号が機器側回路3へ送信される(ステップS102)。
【0110】
そうすると、例えば機器側回路3において、表示部38によって、機器の使用停止(電池パック2の放電終了)を促すメッセージが表示され、ユーザが機器の使用を止めることにより、二次電池14の放電が終了する。
【0111】
ここで、判定電圧値Vjは、ステップS10において、劣化係数αの値が大きいほど、すなわち二次電池14の劣化の程度が大きいほど、高い電圧に設定されているから、二次電池14の劣化の程度が大きいほど、早期に(端子電圧が高いうちに、SOCが大きいうちに)、二次電池14の放電が終了することになる。
【0112】
そうすると、二次電池14の劣化が進んで放電による劣化が生じやすくなるほど、端子電圧Vbが高いうちに早く放電が終了される結果、放電時に生じる劣化を低減することが可能となる。
【0113】
次に、残量補正部220によって、端子電圧Vbと判定電圧値Vjとが比較され(ステップS103)、端子電圧Vbが判定電圧値Vjと等しくなければ(ステップS103でNO)ステップS105へ移行する。その一方、端子電圧Vbが判定電圧値Vjと等しければ、残量補正部220によって、新たな満充電容量FCCが算出され、以後SOC算出部212において、この新たな満充電容量FCCが用いられる。
【0114】
そして、SOC算出部212において積算されている蓄電電荷量Qcが、この新たな満充電容量FCCに対する管理値SOC1のSOCに相当する電荷量に補正される。
【0115】
二次電池14の劣化に伴い判定電圧値Vjが上昇されると、実質的にユーザが使用可能な二次電池14の電池容量が減少することになるが、SOC算出部212によって、当該減少した電池容量に応じて補正されたSOCが算出されるので、SOC算出部212によって算出されるSOCの算出精度が向上する。
【0116】
さらに、放電禁止部219によって、端子電圧Vbと放電終止電圧値Vdfとが比較され(ステップS105)、端子電圧Vbが放電終止電圧値Vdfを超えていれば処理を終了する(ステップS105でNO)。その一方、端子電圧Vbが放電終止電圧値Vdf以下であれば、放電禁止部219によって放電用スイッチング素子SW1がオフされて、二次電池14の放電が禁止される(ステップS106)。
【0117】
ここで、放電終止電圧値Vdfは、ステップS11において、劣化係数αの値が大きいほど、すなわち二次電池14の劣化の程度が大きいほど、高い電圧に設定されているから、二次電池14の劣化の程度が大きいほど、早期に(端子電圧が高いうちに、SOCが0%を下回らないうちに)、二次電池14の放電が終了することになる。
【0118】
そうすると、二次電池14の劣化が進んで放電による劣化が生じやすくなるほど、端子電圧Vbが高いうちに早く放電が終了される結果、放電時に生じる劣化を低減することが可能となる。
【0119】
次に、残量補正部220によって、端子電圧Vbと放電終止電圧値Vdfとが比較され(ステップS107)、端子電圧Vbが放電終止電圧値Vdfと等しくなければ(ステップS107でNO)、処理を終了する。その一方、端子電圧Vbが放電終止電圧値Vdfと等しければ、残量補正部220によって、新たな満充電容量FCCが算出され、以後SOC算出部212において、この新たな満充電容量FCCが用いられる。
【0120】
そして、SOC算出部212において積算されている蓄電電荷量Qcが、ゼロに補正される。
【0121】
これにより、二次電池14の劣化に伴い放電終止電圧値Vdfが上昇されることで、実質的にユーザが使用可能な二次電池14の電池容量が減少しても、SOC算出部212によって、当該減少した電池容量に応じて補正されたSOCが算出されるので、SOC算出部212によって算出されるSOCの算出精度が向上する。
【0122】
図4は、図1に示す放電管理回路4を用いた場合の二次電池14の劣化低減効果を説明するための説明図である。横軸はサイクル数Ncyc、縦軸は満充電容量FCCを示している。そして、図1に示す放電管理回路4を用いた場合の二次電池14のサイクル数Ncycと満充電容量FCCとの関係をグラフG1で示し、放電終止電圧が固定値となっている場合のサイクル数Ncycと満充電容量FCCとの関係をグラフG2で示している。
【0123】
なお、説明を容易にするため、充電時に生じる二次電池の劣化は考慮していない。
【0124】
放電終止電圧が固定値である場合、満充電容量FCCの減少は、二次電池の劣化によってのみ生じる。そのため、図4のグラフG2で示すように、劣化の少ない二次電池の使用を開始した初期の段階では、ほとんど満充電容量FCCは減少しない。しかしながら、サイクル数Ncycが増大し、二次電池の劣化の程度が増大すると、劣化していない初期状態のときと同じ放電終止電圧になるまで二次電池が放電されるため、放電終止電圧付近で劣化が加速されて、急激に満充電容量FCCが減少し、タイミングT1で二次電池が寿命を迎えることとなる。
【0125】
一方、図1に示す放電管理回路4を用いた場合、満充電容量FCCの減少は、二次電池の劣化によって生じる本来の減少量のみならず、判定電圧設定部216や終止電圧設定部217によって、二次電池14の劣化の程度が大きくなるほど判定電圧値Vjや放電終止電圧値Vdfが上昇される結果、実質的に使用可能な二次電池14の満充電容量FCCが減少する。
【0126】
そのため、図4のグラフG1に示すように、二次電池14の使用を開始した初期の段階では、放電終止電圧が固定されているグラフG2よりも、満充電容量FCCの減少が大きい。しかしながら、グラフG1においては、サイクル数Ncycの増加につれて、判定電圧値Vjや放電終止電圧値Vdfが上昇されるので、グラフG2の場合よりも放電が深くならないうちに放電が終了する結果、二次電池14の急激な劣化が抑制されて、タイミングT2においてグラフG2よりも満充電容量FCCが大きくなる。
【0127】
そして、グラフG1においては、二次電池14の劣化が低減されることにより、満充電容量FCCが急激に劣化する寿命を迎えるのがタイミングT3となって、グラフG2の場合よりも、二次電池14の寿命を延ばすことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明に係る放電管理回路及びこれを備えた電池パックは、携帯型パーソナルコンピュータやデジタルカメラ、携帯電話機等の電子機器、電気自動車やハイブリッドカー等の車両、太陽電池や発電装置と二次電池とを組み合わされた電源システム等、種々の電池搭載装置、システムにおいて、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0129】
1 電池システム
2 電池パック
3 機器側回路
4 放電管理回路
11,12,13,31,32,33 接続端子
14 二次電池
15 温度センサ
34 負荷回路
35 充電部
36 通信部
37 制御部
38 表示部
201 制御部
202 電流検出抵抗
203 通信部
204 電圧検出部
205 温度検出部
206 電流検出部
211 電流積算部
212 SOC算出部
213 サイクル計数部
214 劣化時間積算部
215 劣化情報生成部
216 判定電圧設定部
217 終止電圧設定部
218 警報部
219 放電禁止部
220 残量補正部
Ic 充放電電流値
Ncyc サイクル数
Qc 蓄電電荷量
Qcyc サイクル電気量
Qi 電流積算値
SOC1 管理値
SW1 放電用スイッチング素子
SW2 充電用スイッチング素子
Td 劣化積算時間
Vb 端子電圧
Vdf 放電終止電圧値
Vdf0 初期放電終止電圧値
Vh 高圧閾値
Vj 判定電圧値
Vj0 初期電圧値
th 高温閾値
α 劣化係数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の端子電圧を検出する電圧検出部と、
前記二次電池の劣化を検出し、当該劣化の度合いを示す劣化情報を生成する劣化情報生成部と、
前記二次電池のSOCが、管理が必要な値として予め設定された管理値になったことを判定するための当該二次電池の端子電圧である管理電圧値を設定する管理電圧値設定部と、
前記電圧検出部によって検出された端子電圧が、前記管理電圧値設定部によって設定された管理電圧値以下になったとき、前記二次電池の放電を終了させるための処理を実行する放電終了処理部とを備え、
前記管理電圧値設定部は、
前記劣化情報生成部によって生成された劣化情報の示す前記二次電池の劣化の度合いが大きいほど、前記管理電圧値が高くなるように当該管理電圧値を設定すること
を特徴とする放電管理回路。
【請求項2】
前記管理電圧値は、
前記二次電池のSOCがゼロになったことを判定するための当該二次電池の端子電圧の値である放電終止電圧値を含み、
前記管理電圧値設定部は、
前記劣化情報生成部によって生成された劣化情報の示す前記二次電池の劣化の度合いが大きいほど、前記放電終止電圧値が大きくなるように、当該放電終止電圧値を設定する終止電圧設定部を含み、
前記放電終了処理部は、
前記電圧検出部によって検出された端子電圧が、前記終止電圧設定部によって設定された放電終止電圧以下になったとき、前記二次電池の放電を禁止する放電禁止部を含むこと
を特徴とする請求項1記載の放電管理回路。
【請求項3】
前記管理電圧値は、
前記二次電池のSOCが、当該二次電池の放電を終了すべきSOCの値に予め設定された管理値になったことを判定するための当該二次電池の端子電圧の値である判定電圧値を含み、
前記管理電圧値設定部は、
前記劣化情報生成部によって生成された劣化情報の示す前記二次電池の劣化の度合いが大きいほど、前記判定電圧値が大きくなるように、当該判定電圧値を設定する判定電圧設定部を含み、
前記放電終了処理部は、
前記電圧検出部によって検出された端子電圧が、前記判定電圧設定部によって設定された判定電圧値以下になったとき、前記二次電池のSOCが前記管理値以下になったと判定し、前記二次電池の放電を終了させるべき旨を報知する警報部を含むこと
を特徴とする請求項1又は2記載の放電管理回路。
【請求項4】
前記二次電池に流れる電流を検出する電流検出部をさらに備え、
前記劣化情報生成部は、
前記電流検出部によって検出された、前記二次電池の、充電電流及び放電電流のうち少なくとも一方の積算値が増大するほど、前記劣化情報が示す劣化の度合いを増大させること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放電管理回路。
【請求項5】
前記二次電池の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部によって検出された前記二次電池の温度が、予め設定された高温閾値を超え、かつ前記電圧検出部によって検出された二次電池の端子電圧が、予め設定された高圧閾値を超えている時間を劣化積算時間として積算する劣化時間積算部とをさらに備え、
前記劣化情報生成部は、
前記劣化時間積算部により積算された劣化積算時間が増大するほど、前記劣化情報が示す劣化の度合いを増大させること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放電管理回路。
【請求項6】
前記二次電池の充電電流及び放電電流を積算して得られた蓄電電荷量に基づいて前記二次電池のSOCを算出するSOC算出部と、
前記電圧検出部によって検出された端子電圧が、前記終止電圧設定部によって設定された放電終止電圧値と等しくなったとき、前記SOC算出部における前記蓄電電荷量をゼロに補正する残量補正部とをさらに備えること
を特徴とする請求項2記載の放電管理回路。
【請求項7】
前記二次電池の充電電流及び放電電流を積算して得られた蓄電電荷量に基づいて前記二次電池のSOCを算出するSOC算出部と、
前記電圧検出部によって検出された端子電圧が、前記判定電圧設定部によって設定された判定電圧値と等しくなったとき、前記SOC算出部における前記蓄電電荷量を、前記管理値に相当する電荷量に補正する残量補正部とをさらに備えること
を特徴とする請求項3記載の放電管理回路。
【請求項8】
前記二次電池に流れる電流を検出する電流検出部を備え、
前記管理電圧値設定部は、さらに、
前記電流検出部によって検出された電流が大きいほど、前記管理電圧値が低くなるように当該管理電圧値を設定すること
を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の放電管理回路。
【請求項9】
前記二次電池の温度を検出する温度検出部を備え、
前記管理電圧値設定部は、さらに、
前記温度検出部によって検出された温度が低いほど、前記管理電圧値が低くなるように当該管理電圧値を設定すること
を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の放電管理回路。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の放電管理回路と、
前記二次電池と
を備えることを特徴とする電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−53097(P2011−53097A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202595(P2009−202595)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】